(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000207
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】ボールねじ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20221222BHJP
B60T 13/138 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
F16H25/22 J
B60T13/138 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100899
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼市 峻佑
(72)【発明者】
【氏名】中島 正人
【テーマコード(参考)】
3D048
3J062
【Fターム(参考)】
3D048BB02
3D048CC54
3D048HH15
3D048HH18
3D048NN02
3D048QQ16
3J062AA01
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA16
3J062CD04
3J062CD23
3J062CD45
3J062CD64
(57)【要約】
【課題】シャットダウントルクがねじ軸に作用しても連結部材の破損を回避できるボールねじ装置を提供する。
【解決手段】ボールねじ装置は、ハウジングと、ナットと、長手方向の一部に被連結部を有するねじ軸と、複数のボールと、被連結部の外周側に配置され、周方向に延びる弾性体と、弾性体の外周側に嵌合する環状の連結部を有する連結部材と、を備え、前記ナットが第1回転方向に回転するとねじ軸が第1方向に移動してナットから前記ねじ軸が突出する突出量が増加し、ナットが第1回転方向と逆方向である第2回転方向に回転するとねじ軸は第1方向とは逆方向の第2方向に移動して突出量が低減し、被連結部の外周面には、径方向外側に突出し、第2回転方向から弾性体に当接するねじ軸用突起が設けられ、連結部の内周面には、径方向内側に突出し、第1回転方向から弾性体に当接する連結部用突起が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに回転自在に支持されるナットと、
長手方向の一部に被連結部を有し、前記ナットを貫通するねじ軸と、
前記ナットと前記ねじ軸との間に配置される複数のボールと、
前記被連結部の外周側に配置され、周方向に延びる弾性体と、
前記弾性体の外周側に嵌合する環状の連結部を有する連結部材と、
を備え、
前記ナットが第1回転方向に回転すると前記ねじ軸が第1方向に移動して、前記ナットから前記ねじ軸が突出する突出量が増加し、
前記ナットが前記第1回転方向と逆方向である第2回転方向に回転すると前記ねじ軸は前記第1方向とは逆方向の第2方向に移動して、前記突出量が低減し、
前記被連結部の外周面には、径方向外側に突出し、前記第2回転方向から前記弾性体に当接するねじ軸用突起が設けられ、
前記連結部の内周面には、径方向内側に突出し、前記第1回転方向から前記弾性体に当接する連結部用突起が設けられている
ボールねじ装置。
【請求項2】
前記ねじ軸用突起は、前記第1回転方向から前記連結部用突起に当接している
請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記ナットは、前記第1方向を向く第1端面から突出するナット用突起を有し、
前記連結部材は、前記連結部の外周面から突出する突出部を有し、
前記ねじ軸が原点に位置している場合、前記ナット用突起は、前記第2回転方向から前記突出部に当接する
請求項1又は請求項2に記載のボールねじ装置。
【請求項4】
前記連結部用突起と前記ねじ軸用突起と前記弾性体は、複数設けられている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のボールねじ装置。
【請求項5】
前記弾性体は、周方向に圧縮された状態で前記ねじ軸用突起と前記連結部用突起との間に配置されている
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のボールねじ装置。
【請求項6】
前記弾性体の周方向の少なくとも一部は、径方向の厚みが前記連結部の内周面から前記被連結部の外周面までの幅よりも小さい
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のボールねじ装置。
【請求項7】
前記連結部材は、前記ねじ軸と平行な軸方向に移動自在、かつ回転不能に前記ハウジングに支持されたアンチローテーションである
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のボールねじ装置。
【請求項8】
前記連結部材は、前記ハウジングから離隔し、前記ハウジングに支持されていないストッパである
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のボールねじ装置。
【請求項9】
前記ねじ軸の前記第1方向の端部に連結されるピストンを備える
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のボールねじ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキブースタは、モータと、ボールねじ装置と、ピストンと、シリンダとを備える。ブレーキペダルが踏まれると、ブレーキブースタのモータが駆動し、ボールねじ装置のナットが回転する。また、ボールねじ装置のねじ軸は、軸方向に移動してピストンを押圧する。ピストンは、シリンダ内のブレーキフルードを押圧し、ブレーキフルードの液圧が上昇する。上昇した液圧は、ブレーキブーストの外部に配置されたブレーキシステムに伝達される。これにより、ディスクブレーキ又はドラムブレーキが作動し、車両の走行速度が減速する。このようにボールねじ装置は、ブレーキブースタに搭載されることがある。また、ブレーキブースタにおいて、運転者によりブレーキペダルが踏まれていない場合、ボールねじ装置のねじ軸の突出量は最も小さい状態となっている。
【0003】
以下の説明において、ブレーキペダルが踏まれていない場合、ねじ軸の初期位置(ねじ軸の突出量は最も小さい状態)を原点と称する場合がある。また、ねじ軸の移動方向において、ピストンを押圧する方向に移動することを前進と称し、前進と反対方向に移動することを後退と称する場合がある。ナットの回転方向のうち、ねじ軸を前進させる方向の回転を順回転と称し、ねじ軸を後退させる方向の回転を逆回転と称する場合がある。
【0004】
また、下記の特許文献のボールねじ装置では、ナットの一端面(ピストンがある方を向く端面)に突起が設けられている。ねじ軸の一端部(ピストンがある方の端部)には、ねじ軸に回転不能に固定されたストッパが設けられている。そして、ねじ軸が後退して原点に復帰した時、ストッパが突起に接触する。これにより、ブレーキペダルが踏まれていない場合、ねじ軸が原点に位置するように位置決めされる。さらに、下記の特許文献のストッパは、突起と接触する部分に弾性体が設けられている。これにより、突起から受ける衝突荷重が低減する。
【0005】
そのほか、ボールねじ装置のねじ軸は、アンチローテーションなどの部品に回転不能に連結している。アンチローテーションは、ハウジング等に回転不能かつ軸方向に移動自在に支持されている。このため、ナットが回転しても、ねじ軸はナットと供回りすることなく軸方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ブレーキブースタにおいて、ブレーキフルードの液圧がピストンに常に作用している。また、ピストンに作用する液圧の向きは、ねじ軸の後退する方向である。ここで、仮に電源失陥が発生し、モータへの電力供給が停止すると、モータのロータが空転する。ねじ軸が前進している状態で電源失陥が発生すると、ブレーキフルードの反力を受け、ねじ軸が後退する。これに伴い、ナットが逆回転し、モータのロータも回転運動を行う。そして、ねじ軸が原点に復帰した時点で、ストッパがナットの突起に接触し、ナットの逆回転が停止する。しかしながら、モータのロータは、イナーシャにより回転運動を継続する。よって、ねじ軸が原点に復帰した直後、モータは、逆回転方向であり、かつ比較的大きなトルクをナットに与える。以下、電源失陥時にイナーシャによってモータがナットに与えるトルクをシャットダウントルクと称する。
【0008】
上記したようにナットにシャットダウントルクが作用するため、ナットからねじ軸に供回り方向(逆回転方向)のトルクが作用する。また、アンチローテーションやストッパなどの連結部材のうちねじ軸と回転不能に連結する連結部分に、シャットダウントルクに伴う比較的大きなトルクが入力して破損する可能性がある。これに対応すべく、ねじ軸のほうに連結部分に回り止めされる突起を設け、さらに上記の特許文献のように突起に弾性体を設ける方法が考えられる。しかしながら、突起は周方向の幅が短い。つまり、突起に弾性体を設けたとしても、弾性体の周方向の長さが短く制限される。よって、上記の特許文献の構造を適用しても、連結部材の連結部分の破損を回避できない可能性がある。以上から、シャットダウントルクがねじ軸に作用しても、ねじ軸に連結する連結部材の破損を回避できるボールねじ軸装置の開発が望まれている。
【0009】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、シャットダウントルクがねじ軸に作用しても連結部材の破損を回避できるボールねじ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るボールねじ装置は、ハウジングと、ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、弾性体と、連結部材と、を備える。ナットは、前記ハウジングに回転自在に支持される。ねじ軸は、長手方向の一部に被連結部を有し、前記ナットを貫通する。複数のボールは、前記ナットと前記ねじ軸との間に配置される。弾性体は、前記被連結部の外周側に配置され、周方向に延びる。連結部材は、前記弾性体の外周側に嵌合する環状の連結部を有する。前記ナットが第1回転方向に回転すると前記ねじ軸が第1方向に移動して、前記ナットから前記ねじ軸が突出する突出量が増加する。前記ナットが前記第1回転方向と逆方向である第2回転方向に回転すると前記ねじ軸は前記第1方向とは逆方向の第2方向に移動して、前記突出量が低減する。前記被連結部の外周面には、径方向外側に突出し、前記第2回転方向から前記弾性体に当接するねじ軸用突起が設けられる。前記連結部の内周面には、径方向内側に突出し、前記第1回転方向から前記弾性体に当接する連結部用突起が設けられている。
【0011】
前記構成によれば、ねじ軸がピストンを押圧した状態(第1方向に移動した状態)でモータの電源が失陥すると、ナットには第2回転方向のシャットダウントルクが入力する。また、ねじ軸には、ナットから第2回転方向のトルクが作用する。そして、ねじ軸用突起は、第2回転方向へ回転し、弾性体を押し潰す。よって、ねじ軸用突起から連結部用突起に作用する荷重は、弾性体により吸収される。ここで、弾性体は、ねじ軸用突起と連結用突起との間に介在し、周方向の長さが比較的大きい。つまり、ねじ軸用突起から連結部用突起に作用する荷重は、弾性体により大きく低減する。以上から、連結部用突起(連結部材)の破損が回避される。
【0012】
上記のボールねじ装置の望ましい態様として、前記ねじ軸用突起は、前記第1回転方向から前記連結部用突起に当接している。
【0013】
ねじ軸用突起は、第1回転方向から連結部用突起に支持されている。よって、ねじ軸は、連結部材に対し、第1回転方向に回転しないように連結している。
【0014】
上記のボールねじ装置の望ましい態様として、前記ナットは、前記第1方向を向く第1端面から突出するナット用突起を有する。前記連結部材は、前記連結部の外周面から突出する突出部を有する。前記ねじ軸が原点に位置している場合、前記ナット用突起は、前記第2回転方向から前記突出部に当接する。
【0015】
前記構成によれば、ねじ軸が原点に復帰した場合、ナット用突起が連結部材の突出部に当接し、ナットの第2回転方向への回転が規制される。よって、ねじ軸の初期位置が原点に位置決めされる。
【0016】
上記のボールねじ装置の望ましい態様として、前記連結部用突起と前記ねじ軸用突起と前記弾性体は、複数設けられている。
【0017】
前記構成によれば、ねじ軸から連結部材に作用する荷重は、複数の連結部用突起やねじ軸用突起に分散する。よって、ねじ軸用突起と連結部用突起が破損し難くなる。
【0018】
上記のボールねじ装置の望ましい態様として、前記弾性体は、周方向に圧縮された状態で前記ねじ軸用突起と前記連結部用突起との間に配置されている。
【0019】
前記構成によれば、弾性体は、ねじ軸用突起と連結部用突起との間に圧入される。このため、弾性体は、ねじ軸用突起と連結部用突起との間から軸方向に位置ずれし難い。また、ねじ軸用突起が第1回転方向から連結部用突起に当接している場合においては、弾性体は、連結部用突起にねじ軸用突起を押し付けるような弾性変形力を発揮する。このため、ねじ軸用突起と連結部用突起との当接が解除され難く、ねじ軸用突起と連結部用突起との接触音が発生し難い。
【0020】
上記のボールねじ装置の望ましい態様として、前記弾性体の周方向の少なくとも一部は、径方向の厚みが前記連結部の内周面から前記被連結部の外周面までの幅よりも小さい。
【0021】
前記構成によれば、弾性体の内周面と被連結部の外周面との間、又は弾性体の外周面と連結部の内周面との間の、周方向の少なくとも一部に隙間が生じる。仮に、隙間がない場合、弾性体は、ねじ軸用突起と連結部用突起との間から軸方向に飛び出すように変形する。そして、弾性体の抜け止めを図るカバー部材を弾性体が押圧して破損する可能性がある。一方で、本開示によれば、弾性体は、ねじ軸用突起から押圧された場合、その隙間を埋めるように変形する。つまり、弾性体がねじ軸用突起と連結部用突起との間から軸方向に飛び出す可能性が低い。
【0022】
上記のボールねじ装置の前記連結部材は、前記ねじ軸と平行な軸方向に移動自在、かつ回転不能に前記ハウジングに支持されたアンチローテーションであってもよい。
【0023】
上記のボールねじ装置の前記連結部材は、前記ハウジングから離隔し、前記ハウジングに支持されていないストッパであってもよい。
【0024】
上記のボールねじ装置は、前記ねじ軸の前記第1方向の端部に連結されるピストンを備えてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本開示のボールねじ装置によれば、シャットダウントルクがねじ軸に作用しても連結部材の破損が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、実施形態1のブレーキブースタであってねじ軸が原点に位置する状態を軸方向に切った断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の被連結部とその近傍を拡大した拡大図である。
【
図6】
図6は、シャットダウントルクに伴うトルクがねじ軸に入力した場合の断面図である。
【
図7】
図7は、変形例1のボールねじ装置における弾性体の断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態2のボールねじ装置において第1方向から視た側面図である。
【
図10】
図10は、実施形態3のボールねじ装置において第1方向から視た側面図である。
【
図12】
図12は、実施形態4のボールねじ装置において第1方向から視た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0028】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のブレーキブースタであってねじ軸が原点に位置する状態を軸方向に切った断面図である。
図2は、
図1のII-II線矢視断面図である。
図3は、
図1のIII-III線矢視断面図である。
図4は、
図1の被連結部とその近傍を拡大した拡大図である。
図5は、
図2のV-V線矢視断面図である。
図6は、シャットダウントルクに伴うトルクがねじ軸に入力した場合の断面図である。
【0029】
ブレーキブースタ100は、車両に搭載され、ブレーキペダルの踏み込み量に対応した液圧を生成するための装置である。
図1に示すように、実施形態1のブレーキブースタ100は、モータ101と、減速装置102と、ボールねじ装置1と、ピストン110と、ハウジング120と、を備える。説明の都合上、ボールねじ装置1のねじ軸3と平行な方向を軸方向と称する。また、軸方向のうち、ボールねじ装置1のナット2から視てピストン110が配置される方向を第1方向X1と称し、第1方向と反対方向を第2方向X2と称する。
【0030】
モータ101は、ステータ(不図示)と、ロータ(不図示)と、出力軸101aと、を備える。モータ101は、電源(不図示)から電力が供給されてロータ及び出力軸101aが回転する。また、モータ101は、ハウジング120に支持され、出力軸101aがねじ軸3と平行となっている。
【0031】
減速装置102は、モータ101の出力軸101aに嵌合する第1歯車103と、ボールねじ装置1のナット2の外周側に嵌合する第2歯車104と、を備える。第2歯車104は、第1歯車103よりも大径の歯車である。よって、減速装置102は、モータ101で生成された回転運動を減速してナット2に伝達する。
【0032】
ボールねじ装置1は、ナット2と、ねじ軸3と、ボール4と、弾性体5と、連結部材であるアンチローテーション6と、を備える。ナット2は、ハウジング120の内周面に嵌合する2つの軸受7に支持されている。これにより、ナット2は、ねじ軸3の軸心Oを中心に回転自在となっている。
【0033】
以下、ナット2の回転方向は、第1方向Xから視た場合のナット2の回転方向を基準とする。具体的に、
図2に示すように、第1方向Xから視てナット2が左回り方向(反時計回り方向)に回転する場合、その回転方向を第1回転方向L1(
図2の矢印参照)と称する。また、第1方向Xから視てナット2が右回り方向(時計回り方向)に回転する場合、その回転方向を第2回転方向L2(
図2の矢印参照)と称する。
【0034】
図1に示すように、ナット2の内周面には、内周軌道面2aが設けられている。内周軌道面2a及び外周軌道面3aは、互いに対向する螺旋状の軌道面である。内周軌道面2aの螺旋方向は、第1回転方向L1に向かうにつれて第2方向X2に移動する。同様に、外周軌道面3aの螺旋方向も、第2回転方向L2に向かうにつれて第1方向X1に移動する。内周軌道面2aと外周軌道面3aの間に、複数のボール4が配置されている。よって、ナット2が第1回転方向L1に回転すると、ねじ軸3は第1方向X1に移動し、ナット2からねじ軸3が突出する突出量が増加する。一方、ナット2が第2回転方向L2に回転すると、ねじ軸3は第2方向X2に移動し、ナット2からねじ軸3が突出する突出量が低減する。
【0035】
ナット2は、第1方向X1を向く第1端面20を有している。第1端面20には、第1方向X1に突出するナット用突起21が設けられている。
図2に示すように、ナット用突起21は、ねじ軸3の軸心Oを中心に円弧状を成している。また、ナット用突起21は、第2回転方向L2を向く側面21aを有している。
【0036】
図1に示すように、ねじ軸3は、ナット2を貫通している。ねじ軸3は、外周面に外周軌道面3aが設けられたねじ軸本体30と、ねじ軸本体30の第1方向X1に配置された被連結部31と、ピストン110を押圧する押圧部32と、を備える。
【0037】
ねじ軸本体30は、ナット2の軸方向の長さよりも長い。ねじ軸本体30は、ねじ軸3が原点にある状態で、ナット2から第2方向X2に大きく突出した状態で配置される。言い換えると、ねじ軸3は、ナット2の第1回転方向L1への回転により、第1方向X1へ移動可能にナット2に支持されている。
【0038】
被連結部31は、ねじ軸3の長手方向の一部であり、アンチローテーション6が嵌合する部位である。実施形態1の被連結部31は、ねじ軸本体30の第1方向X1に隣接している。つまり、被連結部31は、ねじ軸3が原点にある状態で、ナット2よりも第1方向X1に配置されている。
【0039】
図3に示すように、被連結部31の外周面33は、軸方向から視て円形状を成している。また、被連結部31の外周面33には、径方向外側に突出するねじ軸用突起34が設けられている。ねじ軸用突起34は、180°間隔で2つ設けられている。ねじ軸用突起34は、軸方向から視て略台形状を成している。よって、ねじ軸用突起34は、径方向外側の向く頂面35と、第1回転方向L1を向く第1側面36と、第2回転方向L2を向く第2側面37と、を備える。
【0040】
図4に示すように、被連結部31の外周面33の外径r33は、ねじ軸本体30の外径よりも小さい。よって、ねじ軸本体30と被連結部31との境界には、第1方向X1を向く段差面38が設けられている。また、段差面38は、アンチローテーション6の連結部60の端面60aが当接している。よって、ねじ軸3は、アンチローテーション6に対し、相対的に第1方向X1に移動しないように規制されている。
【0041】
図1に示すように、押圧部32は、被連結部31から第1方向X1に延出している。押圧部32の第1方向X1の端部は、ハウジング120のシリンダ121の内部に配置されている。押圧部32の第1方向X1の端部は、ピストン110と連結している。よって、ねじ軸3とピストン110は、軸方向に一体に移動する。
【0042】
ピストン110は、シリンダ121の内周面に摺動自在に嵌合している。シリンダ121の内部には、図示しないブレーキフルードが入っている。シリンダ121には、貫通孔121aが設けられている。この貫通孔121aは、ブレーキフルードの液圧を、ブレーキブースタ100の外部に伝達させるための孔である。
【0043】
図2に示すように、アンチローテーション6は、弾性体5の外周側に嵌合する環状の連結部60と、連結部60の外周面から径方向外側に延出する第1腕部61及び第2腕部62と、を備える。
【0044】
連結部60の外周面63は、軸方向から視て円形状を成している。第1腕部61と第2腕部62は、180°間隔で連結部60の外周面63に配置されている。なお、説明の都合上、第1方向X1から視て、連結部60から左方に延出する方を第1腕部61と称し、連結部60から右方に延出する方を第2腕部62と称する。
【0045】
第1腕部61の先端部61aと第2腕部62の先端部62aは、それぞれ、ハウジング120の内周面に設けられたガイド溝122に嵌合している。このため、アンチローテーション6は、軸心O周りのトルクが作用しても、第1腕部61及び第2腕部62がガイド溝122の側面に引っ掛かり、回転しない。
【0046】
なお、ガイド溝122は軸方向に延在している(
図1参照)。また、第1腕部61の先端部61aと第2腕部62の先端部62aは、それぞれ、ガイド溝122に軸方向に摺動自在に嵌合している。このため、アンチローテーション6は、ガイド溝122に沿って軸方向に移動自在となっている。
【0047】
図5に示すように、第2腕部62の軸方向の長さは、第1腕部61の軸方向の長さよりも長い。このため、第2腕部62の背面62cは、第1腕部61の背面61cよりも第2方向X2に位置している。ねじ軸3が原点にある状態で、第2腕部62の背面62cは、突起部21の第1方向X1の端面21bよりも第2方向X2に位置している。一方で、第1腕部61の背面61cは、突起部21の端面21bよりも第1方向X1に位置している。このため、ねじ軸3が原点にある状態で、突起部21は、第2腕部62に対し周方向に接触可能となっているものの、第1腕部61とは周方向に接触しないようになっている。
【0048】
また、
図2に示すように、第2腕部62は、第1回転方向L1を向く第1側面62bを有している。第2腕部62の第1側面62bは、ねじ軸3が原点にある状態で、ナット2のナット用突起21の側面21a当接している。つまり、第2腕部62は、第2回転方向L2からナット用突起21に当接している。このため、ブレーキフルードの液圧を受けてねじ軸3が原点よりもさらに第2方向X2に移動しないように(ナット2が第2回転方向L2に回転しないように)規制される。
【0049】
図3に示すように、連結部60の内周面64は、軸方向から視て円形状を成している。連結部60の内周面64には、ねじ軸用突起34の頂面35が対向している。ここで、ねじ軸用突起34の外径(軸心Oから頂面35までの距離)r34は、連結部60の内周面64の内径r64よりも僅かに小さい。よって、連結部60の内周面64とねじ軸用突起34の頂面35との間には微小の隙間(不図示)が設けられている。
【0050】
連結部60の内周面64には、径方向内側に突出する連結部用突起65が設けられている。連結部用突起65は、180°間隔で2つ設けられている。連結部用突起65は、軸方向から視て略台形状を成している。よって、連結部用突起65は、径方向内側を向く頂面66と、第1回転方向L1を向く第1側面67と、第2回転方向L2を向く第2側面68と、を備える。
【0051】
連結部用突起65の頂面66は、被連結部31の外周面33に対向している。連結部用突起65の内径(軸心Oから頂面66までの距離)r65は、被連結部31の外周面33の外径r33よりも僅かに大きい。よって、被連結部31の外周面33と連結部用突起65の頂面66の間には微小の隙間(不図示)が設けられている。以上から、ねじ軸3とアンチローテーション6は、相対回転可能となっている。
【0052】
図3に示すように、連結部用突起65の第2側面68は、ねじ軸用突起34の第1側面36と当接している。つまり、連結部用突起65は、ねじ軸用突起34に対し第1回転方向L1から当接している。よって、ねじ軸用突起34(ねじ軸3)は、第1回転方向L1から連結部用突起65に支持されている。
【0053】
一方で、連結部用突起65の第1側面67は、ねじ軸用突起34の第2側面37と離隔している。つまり、連結部用突起65の第1側面67とのねじ軸用突起34の第2側面37との間であり、かつ連結部60の内周面64と被連結部31の外周面との間には、収容空間Qが設けられている。また、収容空間Qの周方向の長さはMとなっている。また、収容空間Qの周方向の長さMは、ねじ軸用突起34や連結部用突起65の周方向の幅よりも大きい。
【0054】
弾性体5は、例えばゴムや樹脂など、弾性変形可能な材料で製造されている。弾性体5は2つ設けられている。言い換えると、ねじ軸用突起34と連結部用突起65の弾性体5は、同数となっている。弾性体5は、軸方向から視て円弧状になっている。弾性体5は、収容空間Qに配置されている。弾性体5の内周面50は、被連結部31の外周面33に当接している。弾性体5の周方向の長さは、収容空間Qの周方向の長さMと同じである。つまり、弾性体5は、ねじ軸用突起34や連結部用突起65の周方向の幅よりも長い。弾性体5の第1回転方向L1の一端部51は、ねじ軸用突起34の第2側面37に当接している。弾性体5の第2回転方向L2の他端部52は、連結部用突起65の第1側面67に当接している。以上から、ねじ軸用突起34(ねじ軸3)は、弾性体5を介して、第2回転方向L2から連結部用突起65(アンチローテーション6)に支持されている。
【0055】
また、ボールねじ装置1に取り付けられる前の弾性体5の周方向の長さは、収容空間Qの周方向の長さMよりも長い。つまり、弾性体5は、周方向に圧縮された状態で収容空間Qに配置されている。このため、弾性体5は、当接するねじ軸用突起34及び連結部用突起65を周方向に離隔するような弾性変形力を発揮している。この結果、弾性体5は、当接するねじ軸用突起34及び連結部用突起65との摩擦力が高い。よって、弾性体5が軸方向に移動して収容空間Qから脱落し難くなっている。なお、収容空間Qの第2方向X2は段差面38により閉塞されている。よって、弾性体5は、収容空間Qから第2方向X2へ移動しない。
【0056】
弾性体5の弾性変形力により、ねじ軸用突起34の第1側面36と連結部用突起65の第2側面68との摩擦力が非常に高くなっている。また、上記したように、弾性体5は、当接するねじ軸用突起34及び連結部用突起65との摩擦力が高い。つまり、ねじ軸用突起34及び連結部用突起65は、相対的に軸方向に移動し難い。これにより、アンチローテーション6とねじ軸3とは、軸方向に分離不能に連結している。
【0057】
なお、本開示において、アンチローテーション6とねじ軸3との連結は上記した例に限定されない。例えば、ねじ軸用突起34の外径r34を、連結部60の内周面64の内径r64よりも僅かに大きくし、ねじ軸用突起34が連結部60の内周面64に締め代を有するようにしてもよい。これによれば、連結部60の内部に被連結部31が圧入(軽圧入)され、アンチローテーション6とねじ軸3とが連結される。または、連結部用突起65の内径r65を、被連結部31の外周面33の外径r33よりも僅かに小さくし、連結部用突起65が被連結部31の外周面33に対し締め代を有するようにしてもよい。さらには、ねじ軸用突起34と連結部用突起65の両方が締め代を有するようにしてもよい。但し、アンチローテーション6とねじ軸3との相対回転を可能とするため、ねじ軸用突起34又は連結部用突起65の締め代を非常に小さく設定する必要がある。
【0058】
弾性体5の径方向の厚みNは、収容空間Qの径方向の幅Pよりも小さい。このため、弾性体5の外周面54と連結部60の内周面64との間には、円弧状の隙間Sが生じている。
【0059】
次に、実施形態1のブレーキブースタ100の動作例を説明する。ブレーキブースタ100において、ねじ軸3には、ピストン110を介してブレーキフルードの液圧(第2方向X2の荷重)が常時作用している。ねじ軸3に作用する第2方向X2への荷重は、外周軌道面3aに当接するボール4から反力を受け、第1回転方向L1のトルクに変換される。この結果、ねじ軸3は、ボール4から第1回転方向L1のトルクが作用する。以上から、ねじ軸3は、軸方向に位置に関わらず、第1回転方向L1のトルクが作用している。
【0060】
一方で、ねじ軸3は、アンチローテーション6により第1回転方向L1に回転しないように支持されている。このため、ねじ軸3は、ブレーキフルードの液圧により回転しないようになっている。なお、ねじ軸3が第1方向X1に移動すると、ブレーキフルードの液圧が大きくなり、ボール4から受ける第1回転方向L1のトルクも大きくなる。一方で、ねじ軸3が第2方向X2に移動すると、ブレーキフルードの液圧が小さくなり、ボール4から受ける第1回転方向L1のトルクも小さくなる、という関係にある。
【0061】
また、図示しないブレーキペダルが踏まれていない場合、モータ101は駆動していない。よって、
図1に示すように、ねじ軸3は原点に位置している。また、ナット2のナット用突起21は、アンチローテーション6の第2腕部62に当接している(
図2参照)。
【0062】
図示しないブレーキペダルが踏まれた場合、モータ101が駆動する。モータ101で生成された回転運動は、減速装置102で減速されてナット2に伝達される。ナット2は、第1回転方向L1に回転する。ねじ軸3は、アンチローテーション6により第1回転方向L1に回転しないように支持されている。このため、ねじ軸3は、ナット2と供回りすることなく、第1方向X1に移動する。そして、ピストン110は、ブレーキフルードを押圧する。これにより、液圧が上昇し、ブレーキシステムが駆動する。
【0063】
図示しないブレーキペダルを踏んだ状態が解除された場合、モータ101のロータ(不図示)が逆回転し、ナット2は第2回転方向L2に回転する。一方で、ねじ軸3は、ブレーキフルードの液圧によってボール4から第1回転方向L1のトルクを受けている。よって、ねじ軸3には、第1回転方向L1のトルクのみが作用する。また、ねじ軸3は、アンチローテーション6により第1回転方向L1に回転しないように支持されている。従って、ねじ軸3は、ナット2と供回りすることなく、第2方向X2に移動する。
【0064】
そして、ねじ軸3が原点に復帰した時点で、モータ101の駆動が停止する。なお、ねじ軸3が原点に復帰したか否かは、図示しない回転センサにより検出している。また、ナット2のナット用突起21がアンチローテーション6の第2腕部62に当接し、ねじ軸3は原点に位置決めされる。
【0065】
また、ねじ軸3が原点から第1方向X1に移動している状態で、モータ101への電源が失陥した場合、モータ101のステータ(不図示)は回転磁場を生成せず、ロータ(不図示)が空転状態となる。そして、ねじ軸3に作用する荷重はブレーキフルードの液圧のみとなるため、ねじ軸3が第2方向X2に移動する。これに伴い、ナット2は第2回転方向L2に回転し、減速装置102及びロータ(不図示)も回転運動する。
【0066】
ねじ軸3が原点に復帰した時点で、ナット2のナット用突起21がアンチローテーション6の第2腕部62に接触する。これにより、ナット2は第2回転方向L2への回転が一旦停止する。また、減速装置102の回転運動も停止する。一方、ロータ(不図示)は、イナーシャにより回転運動を継続する。これにより、ねじ軸3が原点に復帰した直後、ナット2には、第2回転方向L2のシャットダウントルクが作用する。また、ねじ軸3には、シャットダウントルクに伴うトルクがナット2から伝達される。
【0067】
図6に示すように、ねじ軸3のねじ軸用突起34は、第2回転方向L2に移動し、弾性体5を押圧する。これにより、弾性体5は周方向に圧縮するように変形する。よって、ねじ軸用突起34から連結部用突起65に作用するトルク(荷重)は、弾性体5に吸収される。また、弾性体5は周方向に長いため、ねじ軸用突起34から連結部用突起65に作用するトルク(荷重)は大きく低減する。
【0068】
また、弾性体5の外周側に隙間Sがあり、弾性体5が変形可能なスペースが設けられている。よって、ねじ軸用突起34に押圧された弾性体5は、厚みが増加するように変形する。つまり、変形後の弾性体5の厚みN1は、ねじ軸用突起34に押圧される前の厚みN(
図4参照)よりも大きい。なお、隙間Sが設けられていない場合、弾性体5は、収容空間Qから軸方向に飛び出すように変形する可能性がある。つまり。弾性体5が段差面38を押圧して弾性体5が第1方向X1に移動し、弾性体5が収容空間Qから脱落する可能性がある。よって、実施形態1では、弾性体5が収容空間Qから脱落する可能性が低くなっている。
【0069】
そして、ねじ軸3に作用するトルクがなくなった後、弾性体5がねじ軸用突起34を第1回転方向L1に押圧する。これにより、ねじ軸用突起34は、第1回転方向L1に回転し、連結部用突起65に当接する。
【0070】
以上から、ねじ軸3にシャットダウントルクに伴うトルクが作用しても、連結部用突起65(アンチローテーション6)が破損し難い。また、ねじ軸用突起34は、弾性体5の弾性変形力を受けて第1回転方向L1に押圧されている。このため、連結部用突起65との当接が保持される。よって、ねじ軸用突起34と連結部用突起65との接触音が発生し難い。
【0071】
以上、実施形態1のボールねじ装置1は、ハウジング120と、ナット2と、ねじ軸3と、複数のボール4と、弾性体5と、連結部材と、を備える。ナット2は、ハウジング120に回転自在に支持される。ねじ軸3は、長手方向の一部に被連結部31を有し、ナット2を貫通する。複数のボール4は、ナット2とねじ軸3との間に配置される。弾性体5は、被連結部31の外周側に配置され、周方向に延びる。連結部材は、弾性体5の外周側に嵌合する環状の連結部60を有する。ナット2が第1回転方向L1に回転するとねじ軸3が第1方向X1に移動して、ナット2からねじ軸3が突出する突出量が増加する。ナット2が第1回転方向L1と逆方向である第2回転方向L2に回転するとねじ軸3は第1方向X1とは逆方向の第2方向X2に移動して、突出量が低減する。被連結部31の外周面33には、径方向外側に突出し、第2回転方向L2から弾性体5に当接するねじ軸用突起34が設けられる。連結部60の内周面64には、径方向内側に突出し、第1回転方向L1から弾性体5に当接する連結部用突起65が設けられている。また、実施形態1の連結部材は、ねじ軸3と平行な軸方向に移動自在、かつ回転不能にハウジング120に支持されたアンチローテーション6である。
【0072】
上記した実施形態1のボールねじ装置1によれば、シャットダウントルクに伴うトルクがねじ軸3に作用した場合、弾性体5に吸収される。よって、連結部用突起65に作用する荷重が小さく、連結部用突起65(連結部60)の破損が回避される。
【0073】
また、実施形態1のボールねじ装置1のねじ軸用突起34は、第1回転方向L1から連結部用突起65に当接している。
【0074】
上記した構成によれば、ねじ軸3が第1回転方向L1に回転しない。よって、ねじ軸3は、ナット2と供回りすることなく軸方向に移動する。
【0075】
また、実施形態1のナット2は、第1方向X1を向く第1端面20から突出するナット用突起21を有する。連結部材(アンチローテーション6)は、連結部60の外周面63から突出する突出部(第2腕部62)を有する。ねじ軸3が原点に位置している場合、ナット用突起21は、第2回転方向L2から突出部(第2腕部62)に当接する。
【0076】
上記した構成によれば、ねじ軸3が原点に復帰した場合、ナット用突起21が連結部材の突出部(第2腕部62)に当接する。よって、ねじ軸3の初期位置が原点に位置決めされる。
【0077】
また、実施形態1のねじ軸用突起34と連結部用突起65と弾性体5は、複数設けられている。
【0078】
上記した構成によれば、ねじ軸3から連結部材(アンチローテーション6)に作用するトルクは、複数のねじ軸用突起34と連結部用突起65に分散する。よって、ねじ軸用突起34と連結部用突起65が破損し難くなる。
【0079】
実施形態1の弾性体5は、周方向に圧縮された状態でねじ軸用突起34と連結部用突起65との間に配置されている。
【0080】
上記した構成によれば、弾性体5は、ねじ軸用突起34と連結部用突起65との間に圧入される。このため、弾性体5は、ねじ軸用突起34と連結部用突起65との間から軸方向に位置ずれし難い。また、ねじ軸用突起34は、弾性体5に押圧されるため、第2回転方向L2に移動し難い。よって、ねじ軸用突起34と連結部用突起65との接触音が発生し難い。
【0081】
実施形態1の弾性体5の周方向の少なくとも一部は、径方向の厚みNが連結部60の内周面64から被連結部31の外周面33までの幅Pよりも小さい。
【0082】
実施形態1のボールねじ装置1によれば、弾性体5が隙間Sに入り込むように変形するよって、弾性体5が連結部60と被連結部31との間から軸方向に飛び出す可能性が低い。
【0083】
以上、実施形態1について説明したが、本開示は実施形態1に示したもの限定されない。次に弾性体5の形状を変形させた変形例1を説明する。
【0084】
(変形例1)
図7は、変形例1のボールねじ装置における弾性体の断面図である。
図7に示すように、変形例1のボールねじ装置1Aは、弾性体5に代えて弾性体5Aを備える点で、実施形態1のボールねじ装置1と相違する。以下、相違点に絞って説明する。
【0085】
弾性体5Aは、円弧状を成している。弾性体5Aは、実施形態1の弾性体5と同様に、周方向に圧縮された状態で収容空間Qに配置されている。また、弾性体5Aの径方向の厚みは、ボールねじ装置1に取り付けられる前の状態で、収容空間Qの径方向の幅Pよりも大きい。よって、弾性体5Aは、周方向以外に、径方向にも圧縮された状態で収容空間Qに配置されている。
【0086】
以上、変形例1のボールねじ装置1Aによれば、弾性体5Aの内周面50は、被連結部31の外周面33に当接している。また、弾性体5Aの外周面54は、連結部60の内周面64に当接している。さらに、弾性体5Aは、被連結部31の外周面33と連結部60の内周面64を径方向に離隔するような弾性変形力を発揮している。このため、弾性体5Aは、被連結部31の外周面33と連結部60の内周面64に対する摩擦力が高い。よって、変形例1の弾性体5Aは、実施形態1の弾性体5よりも、軸方向に移動し難い。この結果、弾性体5Aが収容空間Qから脱落する、ということが抑制される。
【0087】
なお、変形例1の弾性体5Aは、被連結部31の外周面33と連結部60の内周面64に径方向に挟持され、周方向に移動し難く(変形し難く)なっている。言い換えると、ねじ軸用突起34が第2回転方向L2に回転し、弾性体5Aの一端部51を押圧した場合、弾性体5Aの一端部51のみが弾性変形し、残りの部分が弾性変形しないおそれがある。このため、弾性体5Aで吸収されるトルクが、実施形態1の弾性体5よりも低減する可能性がある。よって、本開示においては、外周側に隙間Sが設けられた実施形態1の弾性体5の方が、ねじ軸用突起34から受けるトルクを周方向の全体で吸収でき、変形例1の弾性体5Aよりも好ましい形態である。
【0088】
以上、実施形態1と変形例1について説明したが、本開示の弾性体は、実施形態1及び変形例の弾性体5、5Aに限定されない。例えば、実施形態1のボールねじ装置1では、弾性体5の外周側に隙間Sが設けられているが、本開示は、弾性体5の内周側に隙間Sが設けられていてもよい。また、弾性体5の径方向の厚みは、ボールねじ装置1に取り付けられる前の状態で、収容空間Qの径方向の幅Pと同一となっているものであってもよい。つまり、弾性体5が径方向に圧縮されることなく、収容空間Qに配置されていてもよい。このような弾性体によれば、被連結部31の外周面33と連結部60の内周面64に径方向に挟持されないため、弾性体5の周方向の全体が変形する。また、弾性体5の周方向の長さは、収容空間Qの周方向の長さMと同一であってもよい。また、弾性体5の断面形状は、円弧状となっているものに限定されない。例えば、弾性体5の断面形状が波形状であってもよい。このような波形状であれば、ねじ軸用突起34からトルクを受けた場合、変形し易い。
【0089】
また、実施形態1と変形例1の弾性体5、5Aは、圧入によりねじ軸3とアンチローテーション6との間に固定されているが、本開示のボールねじ装置はこれに限定されない。以下、他の固定方法による実施形態2及び実施形態3のボールねじ装置1B、1Cについて説明する。
【0090】
(実施形態2)
図8は、実施形態2のボールねじ装置において第1方向から視た側面図である。
図9は、
図8のIX-IXの矢視断面図である。
図8、
図9に示すように、実施形態2のボールねじ装置1Bは、カバー部材70とクリップ71とを備えている点で、実施形態1のボールねじ装置1と相違する。
【0091】
図9に示すように、カバー部材70は、収容空間Qを第1方向X1から閉塞する部品である。なお、収容空間Qの第2方向X2は、実施形態1と同様に、段差面38によって閉塞されている。カバー部材70は、中央部に貫通孔72が設けられている。そして、貫通孔72にねじ軸の押圧部32が挿入されている。カバー部材70の外径は、連結部60の内周面64よりも大径となっている。よって、連結部60の第1方向の端面60bと当接している。
【0092】
クリップ71は、軸方向から視てC字状を成す止め輪である。
図9に示すように、クリップ71は、押圧部32の外周面に設けられた溝32aに嵌合している。これにより、クリップ71は、第1方向X1からカバー部材70に当接し、カバー部材70が第1方向に移動しないように規制される。
【0093】
以上、実施形態2のボールねじ装置1Bによれば、収容空間Qがカバー部材70によって閉塞される。よって、弾性体5が収容空間Qから脱落しないように規制される。この結果、弾性体5を圧入により収容空間Qに固定する必要がなくなり、弾性体5の形状の自由度が高まる。さらに、カバー部材70がアンチローテーション6に第1方向X1から当接するため、第1方向X1に位置ずれしない。
【0094】
(実施形態3)
図10は、実施形態3のボールねじ装置において第1方向から視た側面図である。
図11は、
図10のXI-XIの矢視断面図である。
図10、
図11に示すように、実施形態3のボールねじ装置1Cは、クリップ71に代えてナット74を備えている点で、実施形態2のボールねじ装置1Bと相違する。
【0095】
図11に示すようにおいて、ねじ軸3の押圧部32の外周面には、ねじ溝32bが設けられている。よって、押圧部32が雄ねじ部となっている。ナット74は、ねじ溝32bに螺合し、カバー部材70を第2方向X2に締め付けている。これにより、カバー部材70は、第1方向X1に移動することなく、収容空間Qが閉塞される。よって、弾性体5が収容空間Qから脱落しない。また、アンチローテーション6が第1方向X1に位置ずれしない。
【0096】
以上、実施形態2及び実施形態3について説明したが、実施形態2及び実施形態3は一例であり、本開示は他の固定方法により弾性体5の第1方向X1への抜け止めを規制してもよい。なお、実施形態1では、アンチローテーション6がねじ軸3に対し第1方向X1に位置ずれしないように、ねじ軸用突起34と連結部用突起65が小さな締め代を有しているものの、実施形態2及び実施形態3で示したようにカバー部材70でアンチローテーション6の第1方向X1への位置ずれを規制する場合、ねじ軸用突起34及び連結部用突起65は締め代を有していなくてもよい。つまり、本開示は、ねじ軸用突起34の外径r34が連結部60の内径r63と同一であってもよい(
図3参照)。同様に、連結部用突起65の内径r65が被連結部31の外径r33と同一であってもよい(
図3参照)。そして、このような変形例によれば、ねじ軸用突起34及び連結部用突起65の摺動抵抗が低減する。よって、ねじ軸3にシャットダウントルクに伴うトルクが作用した場合、ねじ軸3が円滑に回転し、弾性体5の変形量が増加する。つまり、弾性体5によって吸収される荷重が大きくなり、より連結部用突起65が破損し難くなる。
【0097】
また、上記した実施形態及び変形例では、連結部材としてアンチローテーション6に適用した例を挙げて説明したが、本開示においては、連結部材としてストッパに適用してもよい。以下、実施形態4においては、ストッパに適用した例を説明する。
【0098】
(実施形態4)
図12は、実施形態4のボールねじ装置において第1方向から視た側面図である。
図12に示すように、実施形態4のボールねじ装置1Cは、アンチローテーション6に代えてストッパ8を備えている点が、実施形態1のボールねじ装置1と相違する。なお、特に図示しないが、ねじ軸3は他の部品により回転不能かつ軸方向に移動自在にハウジング120に支持されている。
【0099】
ストッパ8は、弾性体5を外周側から嵌合する連結部80と、連結部80の径方向外側に突出する規制部81と、を備える。なお、連結部80は、実施形態1のアンチローテーション6の連結部60と同一形状である。つまり、連結部80は、内周面82から径方向内側に突出する2つの連結部用突起83を有している。連結部用突起83の頂面84は、被連結部31の外周面33に当接している。連結部用突起83の第1回転方向L1を向く第1側面85は、弾性体5の他端部52と当接している。連結部用突起83の第2回転方向L2を向く第2側面86は、ねじ軸用突起34の第1側面36に当接している。
【0100】
実施形態4のボールねじ装置1Dによれば、ねじ軸3が原点に復帰した場合、ストッパ8の規制部81に、第2回転方向L2からナット2のナット用突起21が接触する。よって、ストッパ8は、第2回転方向L2のトルクを受ける。しかしながら、ストッパ8の連結部用突起83がねじ軸用突起34に当接し、ストッパ8は第2回転方向L2に回転しない。
【0101】
また、ねじ軸3が原点に復帰した直後、ナット2にシャットダウントルクが入力され、ねじ軸3に第2回転方向L2のトルクが作用する。そして、ねじ軸用突起34は、第2回転方向L2に回転する。弾性体5は、一端部51がねじ軸用突起34に押圧され、周方向に圧縮するように変形する。これにより、ねじ軸用突起34から連結部用突起83に作用する荷重が低減し、連結部用突起83の破損が回避される。
【0102】
以上、各実施形態及び変形例について説明したが、ねじ軸用突起、連結部用突起、及び弾性体の数に関し、ねじ軸用突起、連結部用突起、及び弾性体は、それぞれ1個ずつであっても、3つ以上であってもよく、本開示において特に限定はない。また、本開示は、アンチローテーション6とストッパ8の両方を備えてもよい。そして、アンチローテーション6とストッパ8を備える場合、アンチローテーション6とストッパ8の連結部(連結部用突起)の破損を回避するために、実施形態や変形例で示した構成をそれぞれに適用してもよい。
【符号の説明】
【0103】
1、1A、1B、1C、1D ボールねじ装置
2 ナット
3 ねじ軸
4 ボール
5、5A 弾性体
6 アンチローテーション(連結部材)
8 ストッパ(連結部材)
21 ナット用突起
30 ねじ軸本体
31 被連結部
34 ねじ軸用突起
60 連結部
61 第1腕部
62 第2腕部(突出部)
65 連結部用突起
70 カバー部材
71 クリップ
74 ナット
81 規制部(突出部)
83 連結部用突起
100 ブレーキブースタ
101 モータ
102 減速装置
110 ピストン
120 ハウジング
121 シリンダ