(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020709
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】塗料組成物および塗膜
(51)【国際特許分類】
C09D 133/00 20060101AFI20230202BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230202BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20230202BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D5/02
C09D7/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126232
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000230054
【氏名又は名称】日本ペイントホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515096952
【氏名又は名称】日本ペイント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】小谷 誠之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘一
(72)【発明者】
【氏名】川上 晋也
(72)【発明者】
【氏名】梅田 真紗子
(72)【発明者】
【氏名】奥田 知哉
(72)【発明者】
【氏名】高木 洋二
(72)【発明者】
【氏名】高見 浩輔
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG001
4J038HA216
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA03
4J038NA05
4J038NA09
4J038PB02
4J038PB05
4J038PB07
4J038PB08
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC06
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】抗ウイルス性および抗菌性と、耐光劣化変色性と、耐クラック性とを有する塗膜を形成可能な塗料組成物を提供すること。
【解決手段】アクリル樹脂エマルションと、光触媒型酸化チタンと、顔料と、を含む塗料組成物であって、前記アクリル樹脂エマルションのアクリル樹脂中の芳香族ビニル単量体単位の割合が、0~52質量%であり、前記光触媒型酸化チタンは、金属担持アナターゼ型酸化チタンを含み、前記金属担持アナターゼ型酸化チタンの含有量は、前記塗料組成物の全固形分100質量部に対して、0.05~2.90質量部であり、前記顔料の顔料体積濃度(PVC)が、35~65%である、塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂エマルションと、
光触媒型酸化チタンと、
顔料と、を含む塗料組成物であって、
前記アクリル樹脂エマルションのアクリル樹脂中の芳香族ビニル単量体単位の割合が、0~52質量%であり、
前記光触媒型酸化チタンは、金属担持アナターゼ型酸化チタンを含み、
前記金属担持アナターゼ型酸化チタンの含有量は、前記塗料組成物の全固形分100質量部に対して、0.05~2.90質量部であり、
前記顔料の顔料体積濃度(PVC)が、35~65%である、塗料組成物。
【請求項2】
前記アクリル樹脂が、前記芳香族ビニル単量体単位を含まない、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記芳香族ビニル単量体単位の割合が、前記塗料組成物の全固形分の0~16質量%である、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記光触媒型酸化チタンが、金属担持ルチル型酸化チタンをさらに含む、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の塗料組成物を用いた、塗膜。
【請求項6】
請求項5に記載の塗膜を有する、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物および塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光触媒型酸化チタンを含む塗料を用いて形成される塗膜は、その酸化チタンが紫外光などの光照射を受けて強い酸化還元作用を発現するため、抗菌性および抗ウイルス性に優れることが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-011417号公報
【特許文献2】特開2019-011418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、光触媒型酸化チタンを含む塗料では、光を受けたその酸化チタンによる酸化還元作用によって塗膜の劣化が促進され、塗膜の色が所期の色から変色(退色を含む)してしまう。
【0005】
塗料の顔料体積濃度(PVC)を増やすと、塗膜中の樹脂成分の量が減り、樹脂成分で十分に覆われずに露出した光触媒が多くなるため、抗菌性および抗ウイルス性を向上させることができる。しかし、その場合、塗膜中の樹脂成分の量が減るため、成膜時に塗膜にクラックが発生しやすくなる。クラックは塗膜の外観に問題があるだけでなく、塗膜の被塗物に対する密着性を低下させる。塗膜の被塗物に対する密着性が低下すると、密着性が低下した部分の塗膜が脱落するおそれもあり、塗膜が脱落した部分では光触媒効果を得られなくなる。
【0006】
そこで、本発明は、抗ウイルス性および抗菌性と、光触媒型酸化チタンを含む塗膜の光劣化に対する耐変色性と(以下、「耐光劣化変色性」という)、耐クラック性とを有する塗膜を形成可能な塗料組成物を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明の別の目的は、抗ウイルス性および抗菌性と、耐光劣化変色性と、耐クラック性とを有する塗膜を提供することである。
【0008】
また、本発明の別の目的は、抗ウイルス性および抗菌性と、耐光劣化変色性と、耐クラック性とを有する塗膜を有する物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る塗料組成物は、
アクリル樹脂エマルションと、
光触媒型酸化チタンと、
顔料と、を含む塗料組成物であって、
前記アクリル樹脂エマルションのアクリル樹脂中の芳香族ビニル単量体単位の割合が、0~52質量%であり、
前記光触媒型酸化チタンは、金属担持アナターゼ型酸化チタンを含み、
前記金属担持アナターゼ型酸化チタンの含有量は、前記塗料組成物の全固形分100質量部に対して、0.05~2.90質量部であり、
前記顔料の顔料体積濃度(PVC)が、35~65%である、塗料組成物である。これにより、抗ウイルス性および抗菌性と、光触媒型酸化チタンを含む塗膜の光劣化に対する耐変色性と、耐クラック性とを有する塗膜を形成可能である。
【0010】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、前記アクリル樹脂が、前記芳香族ビニル単量体単位を含まない。
【0011】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、前記芳香族ビニル単量体単位の割合が、前記塗料組成物の全固形分の0~16質量%である。
【0012】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、前記光触媒型酸化チタンが、金属担持ルチル型酸化チタンをさらに含む。
【0013】
本発明に係る塗膜は、上記いずれかの塗料組成物を用いた、塗膜である。これにより、抗ウイルス性および抗菌性と、光触媒型酸化チタンを含む塗膜の光劣化に対する耐変色性と、耐クラック性とを有する。
【0014】
本発明に係る物品は、上記塗膜を有する、物品である。これにより、抗ウイルス性および抗菌性と、耐光劣化変色性と、耐クラック性とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、抗ウイルス性および抗菌性と、耐光劣化変色性と、耐クラック性とを有する塗膜を形成可能な塗料組成物を提供することができる。本発明によれば、抗ウイルス性および抗菌性と、耐光劣化変色性と、耐クラック性とを有する塗膜を提供することができる。本発明によれば、抗ウイルス性および抗菌性と、耐光劣化変色性と、耐クラック性とを有する塗膜を有する物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0017】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0018】
本発明において、塗料と塗料組成物は相互互換的に用いることができる。
【0019】
本発明において、用語「固形分」は、固形分と不揮発分を含む概念である。
【0020】
本明細書において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、0~52%は、0%以上52%以下を意味する。
【0021】
本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群より選択される1種以上を意味する。本明細書において、(メタ)アクリロニトリルは、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルからなる群より選択される1種以上を意味する。本明細書において、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミドおよびメタクリルアミドからなる群より選択される1種以上を意味する。
【0022】
本明細書において、芳香族ビニル単量体単位は、芳香族ビニル単量体を重合して形成される構造単位を意味する。本明細書において、(メタ)アクリロニトリル単量体単位は、(メタ)アクリロニトリル単量体を重合して形成される構造単位を意味する。本明細書において、多官能単量体単位は、多官能単量体を重合して形成される構造単位を意味する。多官能単量体とは、加熱またはエネルギー線の照射により、重合中または重合後に架橋構造を形成しうる官能基を2以上有する単量体である。本明細書において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合して形成される構造単位を意味する。本明細書において、カルボキシ基含有単量体単位は、カルボキシ基を有する単量体を重合して形成される構造単位を意味する。
【0023】
本明細書において、2種以上の単量体を共重合して製造されるアクリル樹脂において、ある単量体を重合して形成される構造単位のそのアクリル樹脂中の割合は、別段の記載がない限り、通常は、そのアクリル樹脂の重合に用いる全単量体、反応性乳化剤および重合開始剤の質量に占める当該ある単量体の質量の比率(仕込み比)と一致する。
【0024】
本明細書において、結晶構造がアナターゼ型の酸化チタンをアナターゼ型酸化チタンといい、結晶構造がルチル型の酸化チタンをルチル型酸化チタンという。
【0025】
本明細書において、光触媒型酸化チタン、金属担持アナターゼ型酸化チタン、金属担持ルチル型酸化チタンおよび金属担持酸化チタン以外の、用語「酸化チタン」は、光触媒型酸化チタンではなく、顔料としての酸化チタンを指す。
【0026】
(塗料組成物)
本発明に係る塗料組成物は、
アクリル樹脂エマルションと、
光触媒型酸化チタンと、
顔料と、を含む塗料組成物であって、
前記アクリル樹脂エマルションのアクリル樹脂中の芳香族ビニル単量体単位の割合が、0~52質量%であり、
前記光触媒型酸化チタンは、金属担持アナターゼ型酸化チタンを含み、
前記金属担持アナターゼ型酸化チタンの含有量は、前記塗料組成物の全固形分100質量部に対して、0.05~2.90質量部であり、
前記顔料の顔料体積濃度(PVC)が、35~65%である、塗料組成物である。
【0027】
以下、本発明に係る塗料組成物のアクリル樹脂エマルション、光触媒型酸化チタンおよび顔料について説明する。
【0028】
・アクリル樹脂エマルション
アクリル樹脂エマルションは、塗膜形成成分であるアクリル樹脂を含む成分である。
【0029】
アクリル樹脂エマルションのアクリル樹脂中の芳香族ビニル単量体単位の割合は、0~52質量%である。芳香族ビニル単量体単位の割合を0~52質量%とすることで、光触媒型酸化チタンを含む塗膜の光劣化に対する耐変色性を向上させる。
【0030】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ブトキシスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。一実施形態では、芳香族ビニル単量体は、スチレンである。
【0031】
アクリル樹脂中の芳香族ビニル単量体単位の割合は、0~52質量%である。アクリル樹脂中の芳香族ビニル単量体単位の割合が、アクリル樹脂の総質量に対して、52質量%を超えると、光触媒型酸化チタンを含む塗膜の光劣化に対する耐変色性を向上させることができない。一実施形態では、アクリル樹脂中の芳香族ビニル単量体単位の割合は、0質量%以上、10.0質量%以上、20.0質量%以上、30.0質量%以上または40.0質量%以上である。別の実施形態では、アクリル樹脂中の芳香族ビニル単量体単位の割合は、52.0質量%以下、50.0質量%以下、40.0質量%以下、30.0質量%以下、25.0質量%以下、21.0質量%以下、20.0質量%以下または10.0質量%以下である。
【0032】
芳香族ビニル単量体単位の割合が異なる2種以上のアクリル樹脂を組み合わせて用いる場合、その芳香族ビニル単量体単位の割合の加重平均の値が0~52質量%であればよい。
【0033】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、前記アクリル樹脂が、前記芳香族ビニル単量体単位を含まない、すなわち、アクリル樹脂中の芳香族ビニル単量体単位の割合が0質量%である。
【0034】
アクリル樹脂中の芳香族ビニル単量体単位の割合が0~52質量%を満たす限り、塗料組成物の全固形分に対する芳香族ビニル単量体単位の割合は、適宜調節すればよい。芳香族ビニル単量体単位の割合は、例えば、塗料組成物の全固形分の0~20質量%である。一実施形態では、芳香族ビニル単量体単位の割合は、塗料組成物の全固形分の0質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、5.0質量%以上、6.0質量%以上、7.0質量%以上、8.0質量%以上、9.0質量%以上、10.0質量%以上または15.0質量%以上である。別の実施形態では、芳香族ビニル単量体単位の割合は、塗料組成物の全固形分の20.0質量%以下、16.0質量%以下、15.0質量%以下、10.0質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下または1.0質量%以下である。
【0035】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、前記芳香族ビニル単量体単位の割合が、前記塗料組成物の全固形分の0~16質量%である。
【0036】
アクリル樹脂を構成し得る他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、カルボキシ基含有単量体、多官能単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体、(メタ)アクリルアミド単量体、塩化ビニル系単量体、酢酸ビニル系単量体、ビニルアミン系単量体、ビニルアミド系単量体、(メタ)アクリル酸誘導体単量体、不飽和カルボン酸無水物単量体、マレイミド誘導体単量体、ジエン系単量体などが挙げられる。アクリル樹脂は、1種または2種以上の単量体に由来する単量体を含んでいてもよい。一実施形態では、アクリル樹脂は、芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシ基含有単量体、多官能単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体単位、塩化ビニル系単量体単位、酢酸ビニル系単量体単位、ビニルアミン系単量体単位、ビニルアミド系単量体単位、(メタ)アクリル酸誘導体、不飽和カルボン酸無水物単量体単位、マレイミド誘導体単量体単位およびジエン系単量体からなる群より選択される1種以上に由来する単量体単位を含む。別の実施形態では、アクリル樹脂は、芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシ基含有単量体、多官能単量体および(メタ)アクリロニトリル単量体単位からなる群より選択される1種以上に由来する単量体単位を含む。さらに別の実施形態では、アクリル樹脂は、芳香族ビニル単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群より選択される1種以上に由来する単量体単位を含む。さらに別の実施形態では、アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む。さらに別の実施形態では、アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含み、さらに、カルボキシ基含有単量体、多官能単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体単位、塩化ビニル系単量体単位、酢酸ビニル系単量体単位、ビニルアミン系単量体単位、ビニルアミド系単量体単位、(メタ)アクリル酸誘導体、不飽和カルボン酸無水物単量体単位、マレイミド誘導体単量体単位およびジエン系単量体からなる群より選択される1種以上に由来する単量体単位を含む。さらに別の実施形態では、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位のみを含む。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ミリスチル、メタクリル酸ミリスチル、アクリル酸パルミチル、メタクリル酸パルミチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸イソペンチル、メタクリル酸イソペンチル、アクリル酸オキチル、メタクリル酸オキチル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ドデセニル、メタクリル酸ドデセニル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸2-フェニルエチル、メタクリル酸2-フェニルエチル、アクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸4-メトキシブチル、メタクリル酸4-メトキシブチルなどが挙げられる。
【0038】
アクリル樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、適宜調節すればよいが、例えば、5~100質量%である。一実施形態では、アクリル樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または100質量%である。別の実施形態では、アクリル樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下または10質量%以下である。
【0039】
カルボキシ基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0040】
アクリル樹脂中のカルボキシ基含有単量体単位の割合は、適宜調節すればよいが、例えば、0~95質量%である。一実施形態では、アクリル樹脂中のカルボキシ基含有単量体単位の割合は、0質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または95質量%である。別の実施形態では、アクリル樹脂中のカルボキシ基含有単量体単位の割合は、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下または0質量%である。
【0041】
多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、メタクリル酸アリル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0042】
アクリル樹脂中の多官能単量体単位の割合は、適宜調節すればよいが、例えば、0~95質量%である。一実施形態では、アクリル樹脂中の多官能単量体単位の割合は、0質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または95質量%である。別の実施形態では、アクリル樹脂中の多官能単量体単位の割合は、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下または0質量%である。
【0043】
(メタ)アクリロニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、その他の(メタ)アクリロニトリル誘導体などが挙げられる。
【0044】
アクリル樹脂中の(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合は、適宜調節すればよいが、例えば、0~95質量%である。一実施形態では、アクリル樹脂中の(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合は、0質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または95質量%である。別の実施形態では、アクリル樹脂中の(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合は、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下または0質量%である。
【0045】
(メタ)アクリルアミド単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
【0046】
アクリル樹脂中の(メタ)アクリルアミド単量体単位の割合は、適宜調節すればよいが、例えば、0~95質量%である。一実施形態では、アクリル樹脂中の(メタ)アクリルアミド単量体単位の割合は、0質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または95質量%である。別の実施形態では、アクリル樹脂中の(メタ)アクリルアミド単量体単位の割合は、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下または0質量%である。
【0047】
塩化ビニル系単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどが挙げられる。
【0048】
酢酸ビニル系単量体としては、例えば、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0049】
ビニルアミン系単量体としては、例えば、ビニルアミンなどが挙げられる。
【0050】
ビニルアミド系単量体としては、例えば、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミドなどが挙げられる。
【0051】
不飽和カルボン酸無水物単量体としては、例えば、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0052】
ジエン系単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
【0053】
アクリル樹脂中の塩化ビニル系単量体単位、酢酸ビニル系単量体単位、ビニルアミン系単量体単位、ビニルアミド系単量体単位、不飽和カルボン酸無水物単量体単位およびジエン系単量体単位の割合は、それぞれ、例えば、0~95質量%である。一実施形態では、アクリル樹脂中の塩化ビニル系単量体単位、酢酸ビニル系単量体単位、ビニルアミン系単量体単位、ビニルアミド系単量体単位、不飽和カルボン酸無水物単量体単位およびジエン系単量体単位の割合は、それぞれ、0質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または95質量%である。別の実施形態では、アクリル樹脂中の塩化ビニル系単量体単位、酢酸ビニル系単量体単位、ビニルアミン系単量体単位、ビニルアミド系単量体単位、不飽和カルボン酸無水物単量体単位およびジエン系単量体単位の割合は、それぞれ、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下または0質量%である。
【0054】
アクリル樹脂の上述した単量体は、それぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、適宜調節すればよいが、例えば、-50~50℃である。一実施形態では、アクリル樹脂のTgは、-50℃以上、-40℃以上、-30℃以上、-20℃以上、-10℃以上、0℃以上、10℃以上、20℃以上、30℃以上または40℃以上である。別の実施形態では、アクリル樹脂のTgは、50℃以下、40℃以下、30℃以下、20℃以下、10℃以下、0℃以下、-10℃以下、-20℃以下、-30℃以下または-40℃以下である。さらに別の実施形態では、アクリル樹脂のTgは、-35~30℃である。
【0056】
本発明において、アクリル樹脂のTgは、以下の式から算出する。
1/Tg=M1/T1+M2/T2+・・・Mn/Tn
式中、M1、M2、・・・Mnは、各単量体の質量%であり、T1、T2、・・・Tnは、各単量体の単独重合体のTg(絶対温度)である。各単量体の質量%は、各単量体の配合量(質量部)×100/単量体の合計配合量(質量部)から求める。
【0057】
アクリル樹脂の分子量は、適宜調節すればよいが、例えば、数平均分子量が5,000~300,000である。一実施形態では、アクリル樹脂の数平均分子量は、5,000以上、10,000以上、50,000以上、100,000以上、150,000以上、200,000以上または250,000以上である。別の実施形態では、アクリル樹脂の数平均分子量は、300,000以下、250,000以下、200,000以下、150,000以下、100,000以下、50,000以下または10,000以下である。
【0058】
数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、測定溶媒としてテトラヒドロフランまたはクロロホルムを用いた、標準ポリスチレン換算の分子量より算出した値である。
【0059】
アクリル樹脂は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
塗料組成物おけるアクリル樹脂(固形分)の量は、後述する金属担持アナターゼ型酸化チタンの所定の含有量範囲と、顔料のPVCの所定の含有量範囲を満たせば特に限定されず、適宜調節すればよい。塗料組成物におけるアクリル樹脂(固形分)の量は、例えば、塗料組成物の全固形分100質量部に対して、5~30質量部である。一実施形態では、アクリル樹脂(固形分)の量は、塗料組成物の全固形分100質量部に対して、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上または25質量部以上である。別の実施形態では、アクリル樹脂(固形分)の量は、塗料組成物の全固形分100質量部に対して、30質量部以下、25質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下または5質量部以下である。
【0061】
アクリル樹脂エマルションは、アクリル樹脂の他、溶媒、重合開始剤、乳化剤、連鎖移動剤などを含んでいてもよい。これらの成分は、それぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
溶媒としては、例えば、脱イオン水、イオン交換水、純水、蒸留水、精製水、水道水などの水;メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1、3-オクチレングリコールなどのグリコール類;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメチレンなどのハロゲン系溶媒などが挙げられる。一実施形態では、溶媒は、水を含む。別の実施形態では、溶媒は、水である。
【0063】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどが挙げられる。この他、重合開始剤としては、例えば、特許第6058843号公報、特開平01-098652号公報などに記載の重合開始剤を用いてもよい。
【0064】
乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエステルなどが挙げられる。この他、乳化剤としては、例えば、特許第6058843号公報、特開平01-098652号公報などに記載の乳化剤を用いてもよい。
【0065】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、チオグリコール酸-2-エチルへキシル、2-メチル-5-t-ブチルチオフェノール、四臭化炭素、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。この他、乳化剤としては、例えば、特開2015-193779号公報などに記載の連鎖移動剤を用いてもよい。
【0066】
アクリル樹脂エマルションの調製方法は、アクリル樹脂中の芳香族ビニル単量体単位の割合が0~50質量%であれば、特に限定されず、公知の調製方法を用いることができる。アクリル樹脂エマルションの調製方法としては、例えば、特開2015-193779号公報の水性エマルション(A)の調製方法などが挙げられる。
【0067】
アクリル樹脂エマルションの調製方法の一例としては、以下のとおりである。滴下ロート、還流冷却器、撹拌装置および温度計付きガラス製反応器に、脱イオン水および乳化剤を入れ、内容物温度を85℃とする。その混合物に(メタ)アクリル酸エステルなどの単量体、乳化剤および脱イオン水からなるプレ乳化液と、重合開始剤を滴下ロートで滴下し、その混合物を反応させる。反応温度を85℃に保つ。滴下終了後、生成物を3時間85℃に保つ。次いで生成物を30℃に冷却して、反応器から取り出して、アクリル樹脂エマルションを得る。
【0068】
塗料組成物はアクリル樹脂エマルション以外の樹脂エマルションを含んでいてもよい。アクリル樹脂エマルション以外の樹脂エマルションとしては、例えば、酢酸ビニル樹脂エマルション、塩化ビニル樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション、これらの複合系などの樹脂成分からなる合成樹脂エマルションなどが挙げられる。アクリル樹脂エマルション以外の樹脂エマルションは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
一実施形態では、アクリル樹脂エマルション以外の樹脂エマルションは、酢酸ビニル樹脂エマルションおよびウレタン樹脂エマルションからなる群より選択される1種以上である。
【0070】
塗料組成物おけるアクリル樹脂以外の樹脂(固形分)の量は、金属担持アナターゼ型酸化チタンの所定の含有量範囲と、顔料のPVCの所定の含有量範囲を満たせば特に限定されず、適宜調節すればよい。塗料組成物おけるアクリル樹脂以外の樹脂(固形分)の量は、例えば、塗料組成物の全固形分100質量部に対して、0~35質量部である。
【0071】
・光触媒型酸化チタン
光触媒型酸化チタンは、本発明の塗料組成物を用いた塗膜に抗菌性または抗ウイルス性を付与する成分である。本発明では、光触媒型酸化チタンは、後述する顔料には含まれない。
【0072】
光触媒型酸化チタンは、金属担持アナターゼ型酸化チタンを含む。金属担持アナターゼ型酸化チタンに含まれる金属成分の存在形態としては、アナターゼ型酸化チタンに接触している状態であることを前提とし、金属成分の一部が単独で分散して存在している状態が挙げられる。光触媒型酸化チタンの結晶構造は、例えば、粉末X線回折により同定することができる。
【0073】
金属担持アナターゼ型酸化チタンが担持する金属としては、公知の金属担持酸化チタンの金属を選択して用いることができる。金属担持アナターゼ型酸化チタンが担持する金属としては、例えば、バナジウムV、鉄Fe、コバルトCo、ニッケルNi、銅Cu、亜鉛Zn、ルテニウムRu、ロジウムRh、パラジウムPd、銀Ag、白金Pt、金Auなどの金属、酸化銀(Ag2O)などの銀化合物、Cu(OH)2、Cu2O、CuOなどの銅化合物などが挙げられる。このような金属ないし金属化合物は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
一実施形態では、金属担持アナターゼ型酸化チタンが担持する金属は、銀、銅、銀化合物および銅化合物からなる群より選択される1種以上である。別の実施形態では、金属担持アナターゼ型酸化チタンが担持する金属は、銀、銅、酸化銀(Ag2O)、Cu(OH)2、Cu2OおよびCuOからなる群より選択される1種以上である。
【0075】
金属担持アナターゼ型酸化チタンは、市販品を用いてもよく、金属担持アナターゼ型酸化チタンの市販品としては、例えば、石原産業社製の商品名ST-01、ST-21、ST-31、ST-41などのSTシリーズ;テイカ社製の商品名AMT-100、AMT-600;堺化学工業社製の商品名SSP-N、SSP-20、SPP-Mなどが挙げられる。
【0076】
金属担持アナターゼ型酸化チタンは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
光触媒型酸化チタン中の金属担持アナターゼ型酸化チタンの割合は、例えば、0.5~100質量%である。一実施形態では、光触媒型酸化チタン中の金属担持アナターゼ型酸化チタンの割合は、0.5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上または90質量%以上である。別の実施形態では、光触媒型酸化チタン中の金属担持アナターゼ型酸化チタンの割合は、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下または10質量%以下である。好適な実施形態では、光触媒型酸化チタン中の金属担持アナターゼ型酸化チタンの割合は、10~100質量%である。
【0078】
金属担持アナターゼ型酸化チタンの含有量は、塗料組成物の全固形分100質量部に対して、0.05~2.90質量部である。0.05質量部以上であることによって、塗膜の抗菌性または抗ウイルス性が高まり、2.90質量部以下であることによって、光触媒型酸化チタンを含む塗膜の光劣化に対する耐変色性を抑えることができる。
【0079】
光触媒型酸化チタンは、金属担持アナターゼ型酸化チタンに加えて、金属担持ルチル型酸化チタンをさらに含んでいてもよい。金属担持ルチル型酸化チタンに含まれる金属成分の存在形態としては、ルチル型酸化チタンに金属成分が接触している状態が挙げられる。
【0080】
金属担持ルチル型酸化チタンが担持する金属としては、金属担持アナターゼ型酸化チタンが担持する金属として例示した金属が挙げられる。担持される金属ないし金属化合物は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
一実施形態では、金属担持ルチル型酸化チタンが担持する金属は、銀、銅、銀化合物および銅化合物からなる群より選択される1種以上である。別の実施形態では、金属担持ルチル型酸化チタンが担持する金属は、銀、銅、酸化銀(Ag2O)、Cu(OH)2、Cu2OおよびCuOからなる群より選択される1種以上である。さらに別の実施形態では、金属担持ルチル型酸化チタンが担持する金属は、少なくとも1種の2価銅化合物である。
【0082】
一実施形態では、金属担持ルチル型酸化チタンが担持する銅化合物は、水に対して不溶性ないし難溶性の銅化合物である。別の実施形態では、金属担持ルチル型酸化チタンが担持する銅化合物は、溶解度積が1.5×10-10よりも小さい銅化合物である。溶解度積は、化学実験ハンドブック編集委員会「第四版化学実験ハンドブック」技報堂出版、1984年に基づいて求める。
【0083】
また、金属担持ルチル型酸化チタンとしては、例えば、特許文献1に記載の金属担持ルチル型酸化チタンなどを用いてもよい。
【0084】
金属担持ルチル型酸化チタンは、市販品を用いてもよく、金属担持ルチル型酸化チタンの市販品としては、例えば、石原産業社製の商品名フォトぺーク MPT-623;堺化学工業社製の商品名STR-100C、STR-100Wなどが挙げられる。
【0085】
金属担持ルチル型酸化チタンは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
金属担持ルチル型酸化チタンを含む場合、光触媒型酸化チタン中の金属担持ルチル型酸化チタンの割合は、例えば、1~99.5質量%である。一実施形態では、金属担持ルチル型酸化チタンを含む場合、光触媒型酸化チタン中の金属担持ルチル型酸化チタンの割合は、1質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上または90質量%以上である。別の実施形態では、金属担持ルチル型酸化チタンを含む場合、光触媒型酸化チタン中の金属担持ルチル型酸化チタンの割合は、99.5質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下または10質量%以下である。好適な実施形態では、光触媒型酸化チタン中の金属担持ルチル型酸化チタンの割合は、0~90質量%である。
【0087】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、前記光触媒型酸化チタンが、金属担持ルチル型酸化チタンをさらに含む。
【0088】
塗料組成物の全固形分100質量部に対する光触媒型酸化チタンの含有量は、例えば、0.05~2.85質量部である。一実施形態では、塗料組成物の全固形分100質量部に対する光触媒型酸化チタンの含有量は、0.1質量部以上、0.50質量部以上、1.00質量部以上、1.10質量部以上、1.20質量部以上、1.30質量部以上、1.40質量部以上、1.50質量部以上、1.60質量部以上、1.70質量部以上、1.80質量部以上、1.90質量部以上、2.00質量部以上、2.10質量部以上、2.20質量部以上、2.30質量部以上、2.40質量部以上、2.50質量部以上、2.60質量部以上、2.70質量部以上または2.80質量部以上である。別の実施形態では、塗料組成物の全固形分100質量部に対する光触媒型酸化チタンの含有量は、2.85質量部以下、2.80質量部以下、2.70質量部以下、2.60質量部以下、2.50質量部以下、2.40質量部以下、2.30質量部以下、2.20質量部以下、2.10質量部以下、2.00質量部以下、1.90質量部以下、1.80質量部以下、1.70質量部以下、1.60質量部以下、1.50質量部以下、1.40質量部以下、1.30質量部以下、1.20質量部以下、1.10質量部以下、1.00質量部以下または0.50質量部以下である。
【0089】
・顔料
顔料は、本発明の塗料組成物を用いた塗膜に意匠性を付与する成分である。
【0090】
顔料としては、特に限定されず、公知の塗料組成物の顔料を用いることができる。顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、艶消し材などが挙げられる。したがって、本発明において、用語「顔料」は、着色顔料、体質顔料および艶消し材を含む概念である。
【0091】
着色顔料としては、例えば、有機系着色顔料、無機系着色顔料などが挙げられる。
【0092】
有機系着色顔料としては、例えば、アゾレーキ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料などが挙げられる。
【0093】
無機系着色顔料としては、例えば、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタンなどが挙げられる。
【0094】
着色顔料の色は、特に限定されず、白色を含め、公知の色を採用することができる。
【0095】
着色顔料は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
体質顔料としては、例えば、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイトなどが挙げられる。
【0097】
艶消し材は、塗膜の表面積の増大に寄与する成分である。塗膜の表面積が増える程、塗膜が光を吸収しやすくなり、光触媒型酸化チタンの効果が発現しやすくなる。
【0098】
艶消し材としては、例えば、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、長石、ワラストナイト、珪藻土、ゼオライト、霞石閃長岩(Nepheline syenite)などの無機系艶消し材、有機微粒子からなる有機系の艶消し材などが挙げられる。
【0099】
艶消し材は、微粒子の形態であることが好ましく、より好ましくは平均粒子径0.1~100μmの微粒子であることが好ましい。平均粒子径が0.1μm以上であることによって、塗膜の表面積を増大させる効果が得られやすくなる。平均粒子径が100μm以下であることによって、塗膜の良好な美感を得やすい。
【0100】
また、艶消し材は、無機または有機の多孔質顔料であってもよい。多孔質顔料の好ましい平均粒子径は、上述したとおりである。多孔質顔料が有する細孔の径(細孔径)は、例えば、0.1~50nmである。好適な実施形態では、多孔質顔料の細孔径は、0.2~50nmであり、別の好適な実施形態では、多孔質顔料の細孔径は、0.2~10nmである。
【0101】
無機多孔質顔料としては、例えば、珪藻土、ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイト、メソポーラスシリカなどが挙げられる。一実施形態では、無機多孔質顔料は、珪藻土およびゼオライトからなる群より選択される1種以上である。
【0102】
一実施形態では、顔料は、無機多孔質顔料を含む。
【0103】
顔料における多孔質顔料の量は、適宜調節すればよいが、例えば、顔料100質量部に対して、0.1~50質量部、または2.0~22質量部である。
【0104】
一実施形態では、顔料は、無機多孔質顔料を含み、無機多孔質顔料の量が、顔料100質量部に対して、0.1~50質量部である。
【0105】
本発明において、顔料体積濃度(PVC)は、樹脂成分、光触媒型酸化チタンおよび顔料の合計固形分体積に対する、顔料の体積の割合を表す。本発明において、PVCは、35~65%である。上述したように、光触媒の量が一定であってもPVCを増やすと、塗膜中の樹脂成分の量が減り、樹脂成分で十分に覆われずに露出した光触媒が多くなるため、抗菌性および抗ウイルス性を向上させることができる。しかし、その場合、塗膜の耐クラック性が低下してしまう。また、逆にPVCが減ると、塗膜の耐クラック性は高まるが、光触媒が樹脂成分によって覆われて露出した光触媒が減るため、塗膜の抗ウイルス性および抗菌性が低下してしまう。これに対して、本発明では、PVCを35~65%とすることによって、塗膜の抗ウイルス性および抗菌性と、耐クラック性とを高めることができる。
【0106】
一実施形態では、PVCは、35.0%以上、40.0%以上、45.0%以上、46.0%以上、47.0%以上、48.0%以上、49.0%以上、50.0%以上、51.0%以上、52.0%以上、53.0%以上、54.0%以上、55.0%以上または60.0%以上である。別の実施形態では、PVCは、65.0%以下、60.0%以下、55.0%以下、54.0%以下、53.0%以下、52.0%以下、51.0%以下、50.0%以下、49.0%以下、48.0%以下、47.0%以下、46.0%以下、45.0%以下または40.0%以下である。
【0107】
PVCは、例えば、樹脂成分、光触媒型酸化チタンおよび顔料のそれぞれの固形分の密度と固形分の質量から、それぞれの体積を求め、顔料の体積×100/(樹脂成分の体積、光触媒型酸化チタンの体積および顔料の体積の合計)から求めることができる。樹脂成分の密度(比重)は例えば、以下のように測定する:比重カップでエマルション溶液の比重を測定する。次にエマルションNVを測定する。比重カップで測定したエマルション溶液の比重からエマルション溶液中の水の割合を除いた比重を計算し、これをエマルション比重とする。エマルションNVは、JIS K 6833-1:2008に準拠して、サンプル量:1.0±0.2g、乾燥温度:105±2℃、乾燥時間:60分の条件で測定する。エマルション比重は、JIS K 6833-1:2008に準拠して測定する。
【0108】
あるいは、PVCは、樹脂成分、光触媒型酸化チタンおよび顔料のそれぞれの固形分の体積を直接求めて、顔料の体積×100/(樹脂成分の体積、光触媒型酸化チタンの体積および顔料の体積の合計)から求めてもよい。
【0109】
・その他の成分
塗料組成物は、任意に、アクリル樹脂エマルション、光触媒型酸化チタンおよび顔料以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、骨材、繊維、可塑剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、粘性調整剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、吸着剤などが挙げられる。これらの成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
塗料組成物の形態は特に限定されず、1液型であってもよいし、2液型であってもよい。
【0111】
・塗料組成物の調製方法
塗料組成物の調製方法は、金属担持アナターゼ型酸化チタンの含有量とPVCが所定範囲となるように、上述したアクリル樹脂エマルション、光触媒型酸化チタンおよび顔料を混合すればよく、公知の塗料組成物の調製方法を用いることができる。例えば、樹脂エマルション、光触媒型酸化チタンおよび顔料ならびに任意にその他の成分を、ディスパー、ボールミル、S.G.ミル、ロールミル、プラネタリーミキサーなどで混合して、塗料組成物を調製することができる。
【0112】
(塗膜)
本発明に係る塗膜は、上記いずれかの塗料組成物を用いた、塗膜である。
【0113】
塗膜の厚さは、特に限定されず、適宜調節すればよい。塗膜の厚さ(乾燥膜厚)は、例えば、10μm~200μmである。
【0114】
塗膜の形成方法は、特に限定されず、従来公知の塗装方法を用いることができる。例えば、アプリケータ、バーコーター、刷毛、スプレー、ローラー、ロールコーター、カーテンコーターなどを用いて塗布することができる。あるいは、塗料浴への浸漬によって塗布することができる。
【0115】
塗料組成物を塗布した後の乾燥温度は、溶媒などに応じて適宜調節すればよい。例えば、10秒~30分などの短時間での乾燥が必要な場合には、30~200℃とすることができ、40~160℃が好ましい。短時間での乾燥が必要な場合には、2液型硬化反応、紫外線などのエネルギー線を用いてもよい。また、短時間での乾燥が必要でない場合には、例えば室温などで乾燥してもよい。
【0116】
(物品)
本発明に係る物品は、上記いずれかの塗膜を有する、物品である。
【0117】
塗膜を有する物品は、特に限定されず、自動車、電車、バス、タクシーなどの車両;車両のタイヤ;船;飛行機、ヘリコプターなどの航空機;戸建住宅、マンションなどの集合住宅、オフィスビル、公共施設、商業施設、研究施設、軍事施設、トンネルなどの建築物ないし建造物の外装面、内装面、例えば、壁面、床面、天井、屋根、柱、看板、電子看板(デジタルサイネージ)、ドア、門;橋;自動販売機;道路標識;信号;街灯;LED方式、液晶方式、電球方式などの電光掲示板;作業機械、建築機械;石碑;墓石;衣類;靴などの履物;傘、カッパなどの雨具;包装材;メガネなどのレンズ;鏡などが挙げられる。
【0118】
塗膜を有する物品の基材としては、例えば、モルタル、コンクリート、石膏ボード、サイディングボード、押出成形板、スレート板、石綿セメント板、繊維混入セメント板、ケイ酸カルシウム板、ALC板、金属、木材、ガラス、陶磁器、焼成タイル、磁器タイル、プラスチック板、壁紙、合成樹脂等、あるいはこれらの基材上に形成された塗膜などが挙げられる。
【実施例0119】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0120】
実施例で使用した材料および装置は以下のとおりである。
ポリウレタン樹脂エマルション:三洋化成工業社製の商品名「ユーコート(登録商標)UX-485」、密度1.1(g/cm3)
酢酸ビニルエマルション:日信化学工業社製の商品名「VINYBLAN(登録商標)A68J1」、密度1.1(g/cm3)
金属担持アナターゼ型酸化チタン:光触媒型酸化チタン、酸化銀、酸化銅を担持したアナターゼ型酸化チタン、密度4.1(g/cm3)
金属担持ルチル型酸化チタン:光触媒型酸化チタン、溶解度積が1.5×10-10よりも小さい2価銅化合物を担持した酸化チタン、密度4.1(g/cm3)
酸化チタン:着色顔料、石原産業社製の商品名「TIPAQUE(登録商標)CR-97」、密度4.1(g/cm3)
炭酸カルシウム:体質顔料、丸尾カルシウム社製の商品名「スペシャルライス SSS」、密度2.7(g/cm3)
珪藻土:無機多孔質顔料、丸東社製の商品名「ラヂオライト#100」、平均粒子径12.8μm、密度0.44(g/cm3)
ゼオライト:無機多孔質顔料、東ソー社製の商品名「ゼオラム(登録商標)F-9」、X型ゼオライト、細孔径0.9nm、密度1.8(g/cm3)
反応性乳化剤:アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、花王社製の商品名「ペレックスSS-H」、固形分50%
重合開始剤:過硫酸アンモニウム、5.0%水溶液
基板:ソーダガラス板、寸法50mm×50mm×2mm、TP技研社製の商品名「フロートガラス」
基板:モルタル、寸法70mm×70mm×20mm、TP技研社製の商品名「モルタル」、水:セメント:砂=0.6:1:2(質量比)
白色蛍光灯:20W、東芝ライテック社製の商品名「ネオライン FL20SW」
紫外線カットフィルター:日東樹脂工業社製のアクリル樹脂板、商品名「CLAREX(登録商標)N-169」
照度計:デジタル照度計、トプコン社製の商品名「IM-5」、抗菌性および抗ウイルス性評価で使用
促進耐候性試験機:スガ試験機社製の商品名「スーパーキセノンウェザーメーターSX2-75」
色彩色差計:コニカミノルタ社製の商品名「CR-400」
石膏ボード:吉野石膏社製の商品名「タイガーボード」、JIS A 6901のせっこうボード GB-Rに該当
下地調整剤:メーコー社製の商品名「フィールドパテ」
【0121】
・アクリル樹脂エマルション1~4の調製
滴下ロート、還流冷却器、撹拌装置および温度計付きガラス製反応器に、脱イオン水50.50質量部および反応性乳化剤1.50質量部を入れ、内容物の温度を85℃とした。その混合物に表1に示す配合のプレ乳化液と重合開始剤を滴下ロートで2時間かけて一定速度で滴下し、反応させた。滴下終了後、生成物を3時間85℃に保った。次いで生成物を30℃に冷却して、反応器から取り出し、不揮発分47%のアクリル樹脂エマルション1~4をそれぞれ得た。各アクリル樹脂中に反応性乳化剤と重合開始剤が取り込まれているため、アクリル樹脂中のスチレン単位の割合は、反応性乳化剤と重合開始剤を含むアクリル樹脂の質量に対する割合である。
【0122】
【0123】
(実施例1~17および比較例1~6)
表2~3に示す配合(質量部)で各成分を混合して、塗料組成物を得た。
【0124】
・試験板の作製
予め洗浄したソーダガラス板の表面に塗料組成物を、塗着量が200g/m2(乾燥膜厚50μm)となるようにエアースプレーで塗布した。塗布後、そのガラス板を23℃で7日間乾燥させて、ガラス試験板を作製した。
【0125】
・試験板の作製
モルタル板の表面に塗料組成物を、塗着量が200g/m2(乾燥膜厚50μm)となるようにコテで塗布した。塗布後、そのモルタル板を23℃で7日間乾燥させて、モルタル試験板を作製した。
【0126】
・抗菌性評価
作製したガラス試験板を用いて、JIS R1752に準拠して、黄色ブドウ球菌を用いて抗菌試験を実施した。白色蛍光灯を光源として用い、紫外線カットフィルターを通して、380nm以上の可視光を、照度500ルクスで8時間照射した。コントロールは、抗菌加工されていない、すなわち塗料組成物を塗布していないソーダガラス板とした。TB:光照射後の試験板あたりの生菌数(cfu)、UB:光照射後のコントロールあたりの生菌数(cfu)とし、抗菌活性値RをR=Log10(UB/TB)から求めた。そして、各塗膜の抗菌性を以下の評価基準で評価した。評点が大きいほど抗菌性に優れることを示す。評点3~5が合格である。評価結果を表2~3に合わせて示す。
(評価基準)
評点5:Rが4以上
評点4:Rが3以上4未満
評点3:Rが2以上3未満
評点2:Rが1以上2未満
評点1:Rが1未満
【0127】
・抗ウイルス性評価
作製したガラス試験板を用いて、JIS R 1756(2013)に準拠して、バクテリオファージQβを用いて、抗ウイルス試験を実施した。白色蛍光灯を光源として用い、紫外線カットフィルターを通して、380nm以上の可視光を、照度500ルクスで4時間照射した。TV:光照射後の試験板あたりのバクテリオファージ感染価(pfu)、UV:光照射後のコントロールあたりのバクテリオファージ感染価(pfu)とし、明所の抗ウイルス活性値VをV=Log10(UV/TV)から求めた。そして、各塗膜の抗ウイルス性を以下の評価基準で評価した。評点が大きいほど抗ウイルス性に優れることを示す。評点3~5が合格である。評価結果を表2~3に合わせて示す。
(評価基準)
評点5:Vが4以上
評点4:Vが3以上4未満
評点3:Vが2以上3未満
評点2:Vが1以上2未満
評点1:Vが1未満
【0128】
・耐光劣化変色性評価
作製したモルタル試験板を用いて、JIS K 5600-7-7に記載のキセノンランプ法に従って、促進耐候性試験機で促進耐候性試験を実施した。試験時間は250時間とし、試験時間経過後の塗膜外観をL*a*b*表色系で色彩色差計を用いて数値化した。L*値、a*値、b*値を測色し、試験前の試験板との明度の差(ΔE)を以下の評価基準で評価した。評点が大きいほど塗膜の光劣化による変色が小さく、耐光劣化変色性に優れることを示す。評点2以上が合格である。評価結果を表2~3に合わせて示す。
(評価基準)
評点5:ΔEが2未満
評点4:ΔEが2以上4未満
評点3:ΔEが4以上6未満
評点2:ΔEが6以上8未満
評点1:ΔEが8以上
【0129】
・耐クラック性評価
石膏ボードに下地調整剤を2mmの厚さでコテを用いて塗装し、室温で1日乾燥させる。その後、塗着量が140g/m2となるように塗料組成物をローラーで塗布し、室温で風をあてながら乾燥させる。完全に乾燥したのちの塗膜のワレの具合を目視評価する。クラックなしを5点、クラック有りを1点とする。軽微のクラックもクラック有りと判断し1点とする。評価結果を表2~3に合わせて示す。
【0130】
【0131】
本発明によれば、抗ウイルス性および抗菌性と、耐光劣化変色性と、耐クラック性とを有する塗膜を形成可能な塗料組成物を提供することができる。本発明によれば、抗ウイルス性および抗菌性と、耐光劣化変色性と、耐クラック性とを有する塗膜を提供することができる。本発明によれば、抗ウイルス性および抗菌性と、耐光劣化変色性と、耐クラック性とを有する塗膜を有する物品を提供することができる。