(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020727
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】吐出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/62 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B65D83/62 BRL
B65D83/62 BSF
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126259
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】山田 賢
(72)【発明者】
【氏名】菅原 信也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 公雄
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PC03
3E014PC07
3E014PD01
3E014PE02
3E014PE04
3E014PE06
3E014PF03
3E014PF04
(57)【要約】
【課題】使用後に容器本体11から内部容器12を簡単に取り外して分別できる二重タイプの吐出容器10を提供する。
【解決手段】容器本体11と、容器本体11の首部11dに螺着されるバルブ13と、原液が充填される内部容器12、12A、24とを備え、内部容器12、12A、24が容器本体11内に収容されると共に、容器本体11と内部容器12、12A、24の間に加圧剤Pが充填されており、内部容器12、12A、24がバルブ13と共回りするように連結されている。バルブ13と内部容器12、12A、24を連結する装着筒部26aおよびバルブ連結部22、24bが非円筒形である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、容器本体の開口部に螺着されるバルブと、原液が充填される内部容器とを備えている吐出容器であって、
内部容器が容器本体内に収容されると共に、容器本体と内部容器の間に加圧剤が充填されており、
内部容器がバルブと共回りするように連結されている、吐出容器。
【請求項2】
内部容器が、バルブと連結されるバルブ連結部を備えており、バルブ連結部と、バルブ連結部に連結されるバルブの装着筒部との連結部が非円筒形である、請求項1記載の吐出容器。
【請求項3】
内部容器が、バルブと連結されるバルブ連結部を備えており、バルブ連結部が並行する2つの平坦面を有する、請求項1記載の吐出容器。
【請求項4】
内部容器が、バルブと連結されるバルブ連結部を備えており、バルブ連結部と、バルブ連結部に嵌合されるバルブの装着筒部のうち、外側の部材がレーザー透過性樹脂からなり、内側の部材がレーザー不透過性樹脂からなる、請求項1記載の吐出容器。
【請求項5】
容器本体が、筒状の胴部と、胴部の上端から上に向かって縮径する肩部と、肩部の上端に設けられる円筒状の首部とを備えており、
内部容器がパウチを有し、パウチの側部が、バルブを外す回転方向に湾曲して容器本体の内面と面接触するように配置されている、請求項1~4のいずれかに記載の吐出容器。
【請求項6】
前記パウチの幅が容器本体の胴部の内径より大きく、パウチの側部が湾曲して容器本体の胴部の内面と面接触している請求項5記載の吐出容器。
【請求項7】
前記内部容器が、バルブに連結される連結部材と、その連結部材に溶着されるパウチとを有し、
前記パウチの高さが容器本体の肩部の上端より高く、パウチの首部が容器本体の首部に内挿されている請求項1~6のいずれかに記載の吐出容器。
【請求項8】
内部容器が、連結部材と、その連結部材に固着されたパウチとを有し、
連結部材の上部がバルブと連結されるバルブ連結部とされ、
連結部材の下部に流路部材が設けられている請求項1記載の吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体と内部容器の間に充填した加圧剤の圧力で内部容器内の原液を吐出する吐出容器に関し、特に、使用後に容器本体から空の内部容器を取り外せる吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の吐出容器では、分別廃棄やリサイクルのため、容器本体から内部容器を取り出し易くすることが望まれる。特許文献1には、容器本体と、容器本体に螺着したハウジングと、ハウジングに取り付けた、容器本体内の内容物を取り出すバルブと、バルブとは別個にハウジングに取り付けた、容器本体の内部に収容されるパウチと、パウチにガスを注入するエアゾール缶と、容器本体とパウチの間に充填した内容物とからなる飲料容器が開示されている。この飲料容器はエアゾール缶からパウチ内にガスを注入し、パウチを膨張させ、バルブを操作して内容物を吐出する。
【0003】
特許文献2には、合成樹脂製の容器本体と、容器本体の開口部に螺着した蓋と、蓋に取り付けたエアゾールバルブと、エアゾールバルブの下端に接続した懸垂袋とを備えたエアゾール容器が開示されている。エアゾールバルブは蓋を介して容器本体に螺着されているため、使用後に外すことができる。
【0004】
特許文献3には、バルブアッセンブリ(弁組立体)にパウチ(プロダクト・バッグ)を固着した吐出容器が開示されている。特許文献4には、パウチを円筒状に丸めてテープで固定することにより、外部容器に挿入しやすくする手法が記載されている。特許文献5には、パウチと流路部材とからなる内部容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2557006号公報
【特許文献2】特開平9-193981号公報
【特許文献3】特開平6-286778公報
【特許文献4】特開2012-250755号公報
【特許文献5】特開2017-128352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の吐出容器は、内容物がなくなるとパウチが最も膨張した状態となり、ハウジングを外す方向に回してもパウチを取り出しにくい。特許文献2の吐出容器は、懸垂袋に充填されている原液によっては、懸垂袋の接続部分が膨潤などによりエアゾールバルブから外れる場合がある。また、懸垂袋の収縮形状によっては容器本体から引き出しにくい場合がある。特許文献3~5の吐出容器では、金属製のマウンティングカップを塑性変形させることによってバルブアッセンブリを容器本体に固着しているため、バルブアッセンブリを容器本体から取り外すことができず、内部容器と容器本体を分別することができない。
【0007】
本発明は使用後に容器本体から内部容器を簡単に取り外すことができる二重タイプの吐出容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吐出容器10、10Aは、容器本体11と、容器本体11の開口部(首部11d)に螺着されるバルブ13と、原液Cが充填される内部容器12、12A、24とを備えている吐出容器10であって、内部容器12、12A、24が容器本体11内に収容されると共に、容器本体11と内部容器12、12A、24の間に加圧剤Pが充填されており、内部容器12がバルブ13と共回りするように連結されていることを特徴としている。
【0009】
このような吐出容器10、10Aにおいては、内部容器12、12A、24が、バルブ13と連結されるバルブ連結部22、24bを備えており、バルブ連結部22、24bと、バルブ連結部22、24bに連結されるバルブ13の装着筒部26aとの連結部が非円筒形であるものが好ましい。
【0010】
このような吐出容器10、10Aにおいては、内部容器12、12Aが、バルブ13と連結されるバルブ連結部22、24bを備えており、バルブ連結部22、24bが並行する2つの平坦面を有するものが好ましい。
【0011】
このような吐出容器10、10Aにおいては、内部容器12、12Aが、バルブ13と連結されるバルブ連結部22、24bを備えており、バルブ連結部22、24bと、バルブ連結部に嵌合されるバルブの装着筒部26aのうち、外側の部材がレーザー透過性樹脂からなり、内側の部材がレーザー不透過性樹脂からなるものが好ましい。
【0012】
また、容器本体11が、筒状の胴部11bと、胴部11bの上端から上に向かって縮径する肩部11cと、肩部11cの上端に設けられる円筒状の首部11dとを備えており、内部容器12、12Aがパウチ16、16Aを有し、パウチ16Aの側部16fが、バルブ13を外す回転方向に湾曲して容器本体11の内面と面接触するように配置されているものが好ましい。その場合、前記パウチの幅Bが容器本体11の胴部11bの内径D1より大きく、パウチ16Aの側部16fが湾曲して容器本体11の胴部11bの内面と面接触しているものが好ましい。また、前記内部容器12、12Aが、バルブ13に連結される連結部材17と、その連結部材17に溶着されるパウチ16、16Aとを有し、パウチ16、16Aの高さHが容器本体11の肩部11cの上端より高く、パウチ16、16Aの首部16dが容器本体11の首部11dに内挿されるものであってもよい。
【0013】
内部容器12、12Aが、連結部材17と、その連結部材17に固着されたパウチ16、16Aとを有し、連結部材17の上部がバルブ13と連結されるバルブ連結部22とされ、連結部材17の下部に流路部材23が設けられているものが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吐出容器は、内部容器がバルブと共回りするように連結されているので、使用終了後に、消費者がバルブを外す方向に回すと加圧剤が外部に排出され、バルブと一緒に内部容器を取り出して容器本体と分別することができる。原液は内部容器内に収容されていたため、容器本体は洗浄が不要あるいは容易であり、リサイクルしやすい。
【0015】
このような吐出装置において、内部容器が、バルブと連結されるバルブ連結部を備えており、バルブ連結部と、バルブ連結部に連結されるバルブの装着筒部との連結部が非円筒形である場合は、原液の浸透などにより連結部の嵌合が弱くなっても、確実に共回りさせることができる。
【0016】
このような吐出装置において、内部容器が、バルブと連結されるバルブ連結部を備えており、バルブ連結部が並行する2つの平坦面を有する場合は、それらの平坦面をその内側に挿入されるバルブの装着筒部と溶着することができ、バルブと内部容器を確実に共回りさせることができる。そのため、さらに内部容器を取り出しやすい。
【0017】
このような吐出装置において、内部容器が、バルブと連結されるバルブ連結部を備えており、バルブ連結部と、バルブ連結部に嵌合されるバルブの装着筒部のうち、外側の部材がレーザー透過性樹脂からなり、内側の部材がレーザー不透過性樹脂からなる場合は、バルブ連結部とバルブの装着筒部とをレーザー溶着することができ、バルブと内部容器を確実に共回りさせることができる。そのため、さらに内部容器を取り出しやすい。
【0018】
容器本体が、筒状の胴部と、胴部の上端から縮径する肩部と、肩部の上端に設けられる円筒状の首部とを備えており、内部容器がパウチであり、パウチの側部が、バルブを外す回転方向に湾曲して容器本体の内面と面接触するように配置されている場合は、バルブを回したときにパウチが縮径しやすく、取り出し易い。
【0019】
前記パウチの幅が容器本体の胴部の内径より大きく、パウチの側部が湾曲して容器本体の胴部の内面と面接触している場合は、パウチが容器本体によって安定して保持される。前記内部容器が、バルブに連結される連結部材と、その連結部材に溶着されるパウチとを有し、パウチの高さが容器本体の肩部の上端より高く、パウチの首部が容器本体の首部に内挿されている場合は、内部容器を取り出すときにバルブを回すことによって、パウチと連結部材の溶着部を破損することなくパウチを容器本体の首部および肩部に沿ってスムーズに縮小させることができる。
【0020】
内部容器が、連結部材と、その連結部材に固着されたパウチとを有し、連結部材の上部がバルブと連結されるバルブ連結部とされ、連結部材の下部に流路部材が設けられている場合は、内部容器を取り外すためにバルブを回転させるとき、流路部材がパウチを巻き取って縮小させるため、容器本体の首部からの抜き取りが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図5】
図5Aは内部容器の他の実施形態を容器本体に収容した状態で示す正面図、
図5Bは
図5AのV-V線断面図である。
【
図7】吐出容器の他の実施形態を示す組み立て前の断面図である。
【
図8】
図7の吐出容器の組み立て後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1Aの吐出容器10は、容器本体11と、その容器本体11内に収容される内部容器12と、その内部容器12の開口部に連結され、容器本体11に螺着されるバルブ(エアゾールバルブ)13とからなる。
【0023】
容器本体11は、底部11aと、円筒状の胴部11bと、その上端に形成される上に向かって縮径するテーパ状の肩部11cと、その上端に形成される円筒状の首部11dとからなる。首部11dの上端は開口しており、首部11dの外周に雄ねじ11eが形成されている。また、首部11dの下部外周に形成されたOリング溝にOリング11fが装着されている。このOリング11fはバルブ13と容器本体11の間をシールするものである。
【0024】
このような容器本体11は、合成樹脂で一体成型することができる。たとえば熱可塑性樹脂からプリフォームを射出成形し、ついで底部11a、胴部11b、肩部11cをブロー成形するインジェクション・ブロー成形により成形することができる。金属や耐圧ガラス等の他の材料で成形してもよい。いずれの場合も0.5~1.0MPaの圧力に耐えうる耐圧性を有するものが好ましい。容器本体11の胴部11bの内径D1は、首部11dの内径D2の1.2~5倍、特に、1.3~4倍となっている。肩部11cの内面の傾斜角度θは、水平線に対して30~70°程度である。具体的には、容器本体11の口部および首部11dの内径は、8~35mm、特に、10~30mmが好ましい。容器本体の胴部11bの内径は、20~80mm、特に、25~70mmが好ましい。
【0025】
内部容器12は、2枚の可撓性のシート12aを貼り合わせることにより成形される袋状のパウチ16と、その開口部16aに取り付けられる筒状の連結部材17とからなる。この実施形態では、連結部材17の下部に一体に連続して流路部材23が設けられている。
【0026】
パウチ16は、
図2A~Cに示すように、2枚のシート12aの周縁同士を貼り合わせた貼代18と、その貼代18によって囲まれる略矩形状の収納部19とからなり、上部の中央に2枚のシート12aの隙間からなる開口部16aが設けられている。この実施形態では、パウチ16の上端16bの左右の角は縦線と斜め線で切り欠かれており、これにより首部16dと肩部16cが形成される。パウチ16の下端の左右の角は斜め線で切り欠かれ、切り欠き部16eとされている。
【0027】
図1Aに戻って、この実施形態ではパウチ16の横幅Bは容器本体11の胴部11bの内径D1より小さく、たとえば胴部11bの内径D1の0.8~0.98倍程度である。また、容器本体11の首部11dの内径D2よりは大きく、たとえば首部11dの内径D2の2~3倍程度である。パウチ16の高さH(
図2A参照)は、容器本体11の底部11aの内面から首部11dの下端までの高さより3~15mm程度高くしている。パウチ16の上端を左右の縦線でカットしてできる首部16dは、容器本体11の首部11dの内径より小さく、首部11dの下端から首部内に入り込んでいる。それによりパウチ16を容器本体11内に挿入し、バルブ13を容器本体11に取り付けたとき、パウチ16の首部下の両角(肩部16c)が容器本体11の肩部11cの内面によって折り曲げられるか、内面と当接する。
【0028】
パウチ16に用いるシート12aとしては、合成樹脂からなる単層または積層シート、あるいは、金属箔層および合成樹脂層からなる積層シートが挙げられる。特に、金属箔としては、アルミニウム箔などの軽金属が挙げられる。アルミニウム箔は、厚さ5~20μm程度のものが強度および保形性の点で好ましい。
【0029】
合成樹脂としては、耐薬品性に優れたポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ガスバリア性に優れたナイロンやエバールなどが挙げられ、内容物に応じて選択し、組み合わせて用いてもよい。なお、金属箔層の代わりに、炭素、シリカ、アルミナなどを合成樹脂層に蒸着させて被膜を形成する蒸着層としてもよい。また、シート12a同士の貼着は、金属箔に積層した熱可塑性樹脂層による溶着や接着剤等によって行われる。特に、金属箔(層)を有する積層シートを用いる場合は、水分の透過を防止する効果や遮光する効果が高く、様々な内容物を安定して保存することができる。
【0030】
連結部材17は、
図2A~Cに示すように、パウチ16の開口部16aに固定される筒状の貼着部21と、その貼着部21の上方に同軸上に設けられ、後述するバルブ13の下端の装着筒部26aと連結される筒状のバルブ連結部22と、貼着部21の下方に連続する流路部材23とからなる。貼着部21、流路部材23およびバルブ連結部22の中心孔は、連通している。連結部材17および流路部材23は一体成形品である。なお、流路部材23は別部品とすることもでき、さらに必ずしも設ける必要はない。シート12aの曲げ強度や張りの強さによっては、流路部材23なしでも原液の残量を少なくすることができ、パウチ16の巻き取りも可能である。
【0031】
貼着部21は、外周面が略菱形柱状を呈している(
図2B参照)。この貼着部21の外周面にパウチ16のシート12aが貼着される。また、貼着部21の上端にフランジ部21bが形成されている。このフランジ部21bは、パウチ16の貼着位置を特定するものであり、これによりパウチ16を貼着部21に確実に貼着することができる。貼着部21の内部は円筒状の空洞からなる内部通路21aであり、パウチ16の収納部19の原液の流出路となる。
【0032】
バルブ連結部22は、筒状を呈し、一部に軸心と平行の平坦面22aが設けられた断面略D字状を呈している。それにより外形の輪郭および内部の平面視の輪郭はいずれも略D字状を呈している。そのためバルブ13の装着筒部26aと連結したとき、回転方向に滑りを生じさせず、バルブ13と内部容器12は共回りすることになる。平坦面22aを並列に2か所に設けて断面略オーバル状ないし陸上競技のトラック状にすることもできる(
図6B参照)。2つの平坦面22aを熱板や超音波を発振するホーンで押圧することで、バルブ連結部22をバルブの装着筒部26aと溶着することができる。この場合、バルブの装着筒部26aをバルブ連結部と略同形状にして内接させてもよいが、断面円形にしてもよい。また、連結部材17(バルブ連結部22)をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタールなどのレーザーを透過する合成樹脂で成形し、ハウジング13a(装着筒部26a)を、顔料を混ぜてレーザーが透過しないようにした同材質の合成樹脂で成形し、両者を連結した状態で外部からレーザーを照射することにより、両者をレーザー溶着することができる。この場合は、バルブ連結部22とバルブの装着筒部26aを共に断面円形にすることができ、連結しやすい。
【0033】
貼着部21の内部通路21aは、パウチ16の収納部19内で開口しており、その開口17aを介して内部通路21aと収納部19とが連通している。流路部材23はパウチ16内の内容物(原液)を吐出してパウチ16が収縮するとき、パウチ16が折れ曲がったり密着したりすることを防止し、それにより原液Cの吐出通路を確保し、残存量をできるだけ少なくするものである。そのため、パウチ16のシート12a同士の密着をできるだけ妨げないように、薄い板状で上下に長い形状である。
【0034】
他方、シート12a同士が密着したときでも、流路部材23の周囲に原液の流路を確保するため、正面視では幅が広い半円状の部位と狭い部位が交互に連続し(
図2A参照)、表面および裏面には凹凸部が設けられており、凸部の両側部に原液を上下に通す溝が複数本形成されている。このような連結部材17および流路部材23は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミドなどの合成樹脂製のものが挙げられる。バルブ13を回して外すとき、連結部材17が共回りし、半円状の部位によりパウチ16を巻き取りやすい。
【0035】
パウチ16は、
図3A、
図3Bに示すように、容器本体11の首部11d内に容易に挿入できるように、さらに容器本体11の内部で容易に拡がるように、断面S字状に丸めて容器本体11に挿入される。断面Z字状に折り畳んで挿入してもよい。丸めた状態や折り畳んだ状態を維持するため、上下2か所にテープTを貼り付けてもよい。このようなテープTとしては、内部容器12に原液を充填してパウチ16が膨れたとき、容易に剥がれる程度の接着性や粘着性を有するものを用いる。丸める方向としては特に限定されないが、キャップ13fの雌ねじ13gが右ねじの場合は、パウチ16を右巻きの渦に沿うように丸めるのが好ましい。それによりキャップ13fを左に回して外すときに、パウチ16の側縁が容器本体11の内面から摺動抵抗を受け、パウチ16を流路部材23に巻き取りやすくなる。ただし逆に左巻きの渦のように丸めてもよい。
【0036】
図3Aに示すように、バルブ13は、筒状のハウジング13aと、そのハウジング13a内に上下移動自在に収容されるステム13bと、そのステム13bを常時上向きに付勢するばね13cと、ステム13bのステム孔を塞ぐステムラバー13eと、全体を容器本体11の首部11dに螺着するカップ状のキャップ13fとからなる。キャップ13fの内周には容器本体11の首部11dの雄ねじ11eと螺合する雌ねじ13gが形成され、下部の内面は容器本体11のOリングと当接する平滑な円筒状とされている。キャップ13fの上面には、ステムラバー13eとハウジング13aを固定するハウジング固定部13hが設けられている。
【0037】
ハウジング13aの下端には、下方に突出し、ハウジング13a内部とパウチの収容部19とを連通させる筒状の装着筒部26aが形成されている。装着筒部26aの外周面は連結部材17のバルブ連結部22の内面と嵌合する断面略D字状とされている。この装着筒部26aをバルブ連結部22内に挿入することにより、バルブ13と内部容器12とは回転できない状態、すなわち共回り状態に連結される。なお、バルブ連結部22と装着筒部26aの嵌合は、軸方向に抜けにくい強い嵌合が好ましい。
【0038】
次に吐出容器10の組み立て手順および吐出容器10への加圧剤および原液の充填工程を説明する。初めに、内部容器12のバルブ連結部22にバルブ13の装着筒部26aを挿入して両者を連結し、連結体20を組み立てる。内部容器12のパウチ16は、あらかじめ円筒状に丸められ、テープTでその形状に保持されている(
図4B参照)。これにより挿入工程を簡素化できる。ついで容器本体11内に内部容器12を挿入する(
図3参照)。
【0039】
内部容器12を深く挿入し、キャップ13fが容器本体11の首部11dにあたる位置からは、キャップ13fを容器本体11の首部11dの雄ねじ11eに螺合していく。そのとき、キャップ13fはOリング11gまでは被せない。パウチ16の下端は容器本体11の底部11aに載置されていてもよく、バルブ13による吊り下げ状態であってもよい。この状態では容器本体11の内部と外気の間はシールされていない。
【0040】
このようにバルブ13は、容器本体11との間に隙間を空けて配置されるため、加圧剤Pを容器本体11と内部容器12との間に充填することができる(アンダーカップ充填)。バルブ13のキャップ13fは容器本体11の首部11dに途中まで螺合しているので、バルブ13を持ち上げておく必要はない。
【0041】
加圧剤充填機構で加圧剤Pを充填した後、バルブ13のキャップ13fをネジ締め方向に回転し、Oリング11fの周囲にキャップ13fの下部の平滑な内面を被せるまでねじを締め付けることにより、容器本体11とバルブ13を結合する。最後に、原液Cをバルブ13のステム13bから内部容器12内に充填する。原液Cを充填すると共に丸められていたパウチ16がほどけるように広がり、収納部19は原液Cで膨らんで容積が大きくなる。
【0042】
パウチ16が広がってもパウチ16の側縁は容器本体11の胴部11bの内面まで届かない。そのためパウチ16の変形が少なく、特に折れ曲がりがないため、パウチ16はスムーズに膨らむことができ、原液Cを確実に所定量充填することができる。
【0043】
上記の充填方法は、加圧剤Pとして圧縮ガスを用いる場合に好ましく、加圧剤(圧縮ガス)を0.2MPa~0.4MPaで充填し、その後、原液Cを充填することにより、収納部19の容積が増大すると共に、容器本体11と内部容器12との間の空間が減少し、製品時の圧力を0.5~1.0MPaまで増大させることができる。しかし、原液Cは、加圧剤Pを充填する前に充填してもよい。
【0044】
上記のように製造された吐出容器10は、ステム13bに押しボタン(記載していない)などの公知の操作部材を装着して使用する。この状態で押しボタンを押し下げると、バルブ13が開き、加圧剤Pによる圧力でパウチ16内の原液Cが連結部材17、ハウジング13a、ステム13bおよび押しボタンのノズルを通って外部に吐出される。押しボタンを押すことをやめると、バルブ13が閉じて吐出が止まる。
【0045】
パウチ16から原液Cが吐出されていくに従って、パウチ16は扁平になっていくが、流路部材23があるため、全量を吐出する前にパウチ16が密着して折れ曲がり、それ以上吐出できなくなるといったトラブルを起こさず、ほぼ全量を吐出することができる。吐出後は、パウチ16は2つのシート12aの大部分が重なって密着し、扁平になる。
【0046】
使用後の吐出容器10は、内部容器12を容器本体11から抜き取るため、バルブ13のキャップ13fを外す方向に回転すると、バルブ13の装着筒部26aと連結部材17のバルブ連結部22とが共回りする。そのためキャップ13fの回転と共にパウチ16も一緒に回転しながら、引き上げられる。なお、キャップ13fが外れた後も、バルブ13を回転させて流路部材23でパウチ16を巻き取りながら引き上げる。
【0047】
パウチ16は、首部16dが容器本体の首部11dに内挿されて接触していないため、連結部材17の回転に伴い回転しても、首部16dは容器本体11から抵抗を受けない。そのため、首部16dと貼着部21の溶着部が破損しにくく、パウチ16が回転しやすい。また、パウチ16が回転しながら上昇するときは、首部16dより下の肩部16cが容器本体11の肩部11cや首部11dの内面に沿って巻き取られるように、巻物のように収縮するため、容器本体11からの内部容器12の引き抜きは容易である。
【0048】
なお上記実施形態では、内部容器12のパウチ16の首部16dは原液Cの充填後も容器本体11の首部11d内に留まっており、胴部11b内のようには拡がっていない。そのため、パウチ16の引き上げ始めでも、パウチ16の肩部16cは容器本体11の肩部11cのテーパ状の内面に沿って湾曲している。そのため、パウチ16は、肩部11cの内面によって案内され、スムーズに引き上げることができる。
【0049】
容器本体11から内部容器12を引き抜いた後は、容器本体11には原液Cが付着していないので、洗浄が不要もしくは簡単な洗浄でよく、リサイクルが容易である。特にこの実施形態では、Oリング11fを外せば単一材料から形成されているので、合成樹脂材料として資源リサイクルが可能であり、環境保全に役立つ。
【0050】
図5A、
図5Bは、内部容器12Aの他の実施形態を容器本体11に挿入した状態で示している。容器本体11は、
図1Aの容器本体11と実質的に同一である。内部容器12Aは、パウチ16Aの幅Bが大きいが、それ以外は連結部材23を含めて
図1Aの内部容器12と実質的に同一である。
【0051】
この実施形態では、パウチ16Aは、想像線で示す拡げた状態における幅Bが、容器本体の胴部11bの内径D1より大きくなるように構成されている。特に、容器本体の胴部11bの内径D1の1.1~2倍、好ましくは、1.2~1.8倍とするのが好ましい。これにより、パウチ16Aを容器本体11内に挿入したとき、巻物のように巻かれていたパウチ16Aが平面視でS字状ないし略円弧状に広がり、パウチ16Aの側部16fが確実に容器本体11の胴部11bの内面と面接触する。そしてそのときの弾性復帰力により、パウチ16Aは容器本体11内で水平方向および半径方向に安定して支持される。なお、パウチ16Aの側部16fの外面にゴムや樹脂のライニングを設けると、容器本体11の胴部11bの内面からの抵抗が増大し、巻き取り方向に一層収縮しやすくなり、取り出しやすくなる。
【0052】
この実施形態においても、パウチ16Aの高さHは、容器本体11の底部11aの内面から肩部11cの上端までの高さより高い。つまり、首部11dの途中まで達する高さにしている。ただし肩部11cの上端より低い高さにしてもよく、さらに胴部11b内に収容されるように胴部11bより低く構成してもよい。
【0053】
このようなパウチ16Aを用いると、
図5Aのように、パウチ16Aの側部16fが胴部11bの内面と確実に面接触する。そのためバルブ13を外すとき、上から見た状態で反時計方向(矢印N方向)に回転すると、パウチ16が流路部材23によって安定して巻き取られていく。そしてパウチ16Aの肩部16cやそれに続く胴部は容器本体11の肩部11cの内面によって案内されるので、パウチ16Aをスムーズに引き抜くことができる。
【0054】
前記実施形態では、バルブ13のハウジング13aの下端に設ける装着筒部26aと、内部容器12、12Aのバルブ連結部22が断面略D字状の形状であるが、共回りするように嵌合していればよく、たとえば
図6Aあるいは
図6Bに示すような四角形あるいは陸上競技のトラック状の装着筒部26aおよびバルブ連結部22を採用することもできる。四角形のほか、六角形、五角形などでもよい。平坦面22aが偶数個ある場合は、並列する平坦面22aを同時に熱板や超音波を発振するホーンで押圧することで、バルブ連結部22をバルブの装着筒部26aと溶着することができる。
【0055】
図7、
図8に示す吐出容器10Aは、内部容器としてプリーツ24a付きの内袋24を採用した以外は、
図1の吐出容器10と実質的に同一である。容器本体11およびバルブ13は
図1Aに記載されているものと実質的に同一である。内袋24は、バルブ13の装着筒部26aに嵌合される筒状のバルブ連結部(首部)24bと、縦方向に延び、放射状に多数設けられるプリーツ24aによって膨縮自在とされた胴部24cとを有する。この実施形態では
図1Aの連結部材17や流路部材23を設けていないが、設けることもできる。
【0056】
バルブ連結部24bおよび装着筒部26aの断面形状は、
図1Bと同様の略D字状、あるいは
図6Aの四角形、
図6Bのトラック状あるいは他の共回り可能に嵌合される形状としている。内袋24は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エバール、ポリアミドなどのレーザーを透過する合成樹脂からブロー成形で成形したものなどを用いることができる。この場合、ハウジング13a(装着筒部26a)を、顔料を混ぜてレーザーが透過しないようにした連結部材17と同材質の合成樹脂で成形し、両者をレーザー溶着することができる。また、2つの平坦面22aを熱板や超音波を発振するホーンで押圧することで、バルブ連結部24bをバルブの装着筒部26aと溶着してもよい。
【0057】
この吐出容器10Aにおいても、前述と同様に組み立てることができる。すなわち、
図7のように窄んでいる状態で内袋24を容器本体11に挿入し、バルブ13のキャップ13fを容器本体11の首部11dの途中まで螺合し、キャップ13fと首部11dの間から加圧剤Pを容器本体11内に充填する。その後、キャップ13fを首部11dの雄ねじ11eに最後までしっかりと螺合する。最後にバルブ13のステム13bおよび装着筒部26aを介して内袋24に原液Cを充填する。それにより内袋24は
図8のように膨らむ。
【0058】
使用者が吐出容器10Aを使用して原液Cを吐出し終わった後は、内袋24は元の形状(
図7参照)に収縮する。ついでキャップ13fを反対側に回して容器本体11から取り外し、空になった内袋24を取り出す。それにより容器本体11のリサイクルが容易になる。このようなプリーツタイプの内袋24は、原液Cを使い終わると細くなり、容器本体11から取り出すときに容器本体11の胴部11bや肩部11cの内面にほとんど接触しない。しかし原液Cがバルブ連結部24bを膨潤させるなどにより嵌合力が低下していることがあり、それによりキャップを回転させるときに内袋24が空回りし、滑りやすくなってバルブ13から脱落することがある。
図7、
図8の吐出容器10Aは、内部容器24のバルブ連結部24がハウジング13aの装着筒部26aと共回りするので、内袋24が空回りせず、バルブ13から脱落するのを防止することができる。
【0059】
以上、図面を参照しながら好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を採用することができる。たとえば前記実施形態では容器本体11として合成樹脂製の容器本体11を開示しているが、アルミニウムなどの金属板からインパクト加工、絞り・しごき加工、ねじ成形加工等によって成形される金属缶を採用することもできる。
【0060】
図1Aの吐出容器10では、流路部材23の下部はパウチ16内でフリーとされているが、流路部材23の下端をパウチ16の2枚のシート16aの間に挟み込んでパウチ16に固定してもよい。その場合は、流路部材23の回転によるパウチ16の巻き取りが容易になる。また、
図1Aの吐出容器10は、パウチが2枚のシートの周縁を貼り合わせたものであったが、前後のシートの側縁同士の間にガセットを介在させてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10、10A 吐出容器
11 容器本体
11a 底部
11b 胴部
11c 肩部
11d 首部
11e 雄ねじ
11f Oリング
D1 胴部の内径
D2 首部の内径
B パウチの幅
H パウチの高さ
T テープ
12、12A 内部容器
P 加圧剤
C 原液
12a シート
13 バルブ
13a ハウジング
13b ステム
13c ばね
13e ステムラバー
13f キャップ
13g 雌ねじ
13h ハウジング固定部
16、16A パウチ
16a 開口部
16b パウチの上端
16c パウチの肩部
16d パウチの首部
16e 切り欠き部
16f 側部
17 連結部材
17a 開口
18 貼代
19 収納部
20 連結体
21 貼着部
21a 内部通路
21b フランジ部
22 バルブ連結部
22a 平坦面
23 流路部材(流路部)
24 内袋
24a プリーツ
24b 首部(バルブ連結部)
24c 胴部
26a 装着筒部