(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020729
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】横編機のループプレッサーベッド
(51)【国際特許分類】
D04B 15/00 20060101AFI20230202BHJP
D04B 15/06 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
D04B15/00 101
D04B15/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126261
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(72)【発明者】
【氏名】北原 健治
(72)【発明者】
【氏名】島崎 宜紀
(72)【発明者】
【氏名】山野 浩稔
【テーマコード(参考)】
4L054
【Fターム(参考)】
4L054AA01
4L054AB02
4L054AB03
4L054KA22
(57)【要約】
【課題】繊維塵がループプレッサー溝内で堆積するのを遅らせて清掃作業を行うインターバルをより長くすることができるループプレッサーベッドを提供する
【構成】ループプレッサーベッド1を、ベッド基板2と、前記ベッド基板2のプレート溝6に装着され、ループプレッサー溝8としてループプレッサー50を支持する支持プレート10で構成するとともにループプレッサー50との摺接面にループプレッサー50の進退方向に延びるとともにループプレッサー50が後退位置にあるときのループプレッサーの分岐部58と重なる位置に第1切欠溝17を前記支持プレート10に形成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部の前方にループ押さえ部を有し、本体部と分岐部で分岐して本体部の下方後方に延びるレッグ部を有するループプレッサーを前後に対向配置したニードルベッドの少なくとも一方の上方に歯口に対し進退自在に装着させた横編機のループプレッサーベッドにおいて、
前記ループプレッサーベッドを、
支持プレートを装着するための多数のプレート溝を列設したベッド基板と、
前記ベッド基板のプレート溝に装着され、ループプレッサー溝としてループプレッサーを支持する支持プレートで構成するとともに、
前記支持プレートには、ループプレッサーとの摺接面にループプレッサーの進退方向に延びるとともにループプレッサーが後退位置にあるときのループプレッサーの分岐部と重なる位置に第1切欠溝が形成されていることを特徴とする横編機のループプレッサーベッド。
【請求項2】
前記支持プレートに形成した第1切欠溝は、厚み方向を貫通する貫通溝としたことを特徴とする請求項1に記載の横編機のループプレッサーベッド。
【請求項3】
前記支持プレートに形成した第1切欠溝は、ループプレッサーのループ押さえ部に向けて延びていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の横編機のループプレッサーベッド。
【請求項4】
前記支持プレートには、前記第1切欠溝と間隔を空けて後方側に支持プレートの上面に開口する第2切欠溝が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の横編機のループプレッサーベッド。
【請求項5】
前記第1切欠溝は、後方に延びて支持プレートの上面に開口することを特徴とする請求項1~請求項3の何れかに記載の横編機のループプレッサーベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機のループプレッサーベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、後針床の上方に設けたループプレッサーベッドにループプレッサー溝を切削加工により形成し、その溝にループプレッサーを歯口に向けて進退自在に支持するようにしたループプレッサーベッドを開示している。横編機を長期に稼働させると編成領域となる歯口付近に付着した編糸の繊維塵や埃等(以下、繊維塵)がループプレッサーの進退動によって溝内に引き込まれ堆積してループプレッサーの動きを重くする。そのため定期的に清掃しないとループプレッサーが破損してしまう恐れがあった。
【0003】
図9に特許文献1に記載のループプレッサーベッドを改良したものを示す。
図9(a)はループプレッサー50を装着した状態のループプレッサーベッド60を示す。
図9(b)と
図9(c)はループプレッサー50とベッド基板62の単体をそれぞれ示す。なお
図9(a)は後退位置にあるループプレッサー50を示す。
【0004】
ループプレッサー50は、本体部52の前方にループ押さえ部54、その後方の分岐部56で分岐して本体部52の下方後方に延びるレッグ部58を有する。本体部52の上面には操作バット55が設けられ、不図示のキャリッジに設けたカムの作用を受けてループプレッサー50を進退動させる。
【0005】
ループプレッサーベッド60は、ベッド基板62に切削加工を施すことで形成される。ベッド基板62には、ループプレッサー50を装着するためのループプレッサー溝66が紙面奥行き方向に多数削設される。ループプレッサーベッド60の上面には紙面奥行き方向に延びる溝64が形成され、この溝64に帯金70を挿通してループプレッサー50がループプレッサー溝66から脱落するのを防ぐ。切欠溝68は、紙面奥行き方向にループプレッサー溝66を貫通する。切欠溝68が形成する空間はループプレッサー溝66内に引き込まれた繊維塵を排出してループプレッサー溝66内に堆積するのを遅らせる作用を発揮する。
【0006】
繊維塵はループプレッサー50の本体部52とレッグ部58間の後ろ向きに開いた分岐部56付近となる領域Aに溜まりやすい。加えてループ押さえ部54の後縁で引き込まれる繊維塵は、レッグ部58下方の空間部(領域B)にも堆積する。ところが切削加工により形成するループプレッサーベッド60では繊維塵を収容するための切欠溝68は
図9(c)に示すような単純な限られた形状にしかできず十分な効果が期待できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国公告特許公報 CN100462493C
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、繊維塵がループプレッサー溝内で堆積するのを遅らせて清掃作業を行うインターバルをより長くすることができるループプレッサーベッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、本体部の前方にループ押さえ部を有し、本体部と分岐部で分岐して本体部の下方後方に延びるレッグ部を有するループプレッサーを、前後に対向配置したニードルベッドの少なくとも一方の上方に歯口に対し進退自在に装着させた横編機のループプレッサーベッドにおいて、前記ループプレッサーベッドを、支持プレートを装着するための多数のプレート溝を列設したベッド基板と、前記ベッド基板のプレート溝に装着され、ループプレッサー溝としてループプレッサーを支持する支持プレートで構成するとともに、前記支持プレートには、ループプレッサーとの摺接面にループプレッサーの進退方向に延びるとともにループプレッサーが後退位置にあるときのループプレッサーの分岐部と重なる位置に第1切欠溝が形成されている。
【0010】
好ましくは前記支持プレートに形成した第1切欠溝は、厚み方向を貫通する貫通溝とした。
【0011】
より好ましくは前記支持プレートに形成した第1切欠溝は、ループプレッサーのループ押さえ部に向けて延びている。
【0012】
また前記支持プレートには、前記第1切欠溝と間隔を空けて後方側に支持プレートの上面に開口する第2切欠溝が形成されている。
【0013】
好ましくは前記第1切欠溝が後方に延びて支持プレートの上面に開口する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、支持プレートをベッド基板とは別体の板材として形成するとともにループプレッサーが後退位置にあるときのループプレッサーの分岐部と重なる位置に第1切欠溝を形成することで第1切欠溝を分岐部が引き込んだ繊維塵の排出空間に利用し、ループプレッサー溝内への繊維塵の堆積を遅らせることができる。
【0015】
第1切欠溝を貫通溝として形成したのでより多くの繊維塵を収容でき、ループプレッサー溝内への繊維塵の堆積をより遅らせることができる。
【0016】
第1切欠溝がループ押さえ部に向けて延びているのでループ押さえ部で引き込んだ繊維塵の排出空間として働き、ループプレッサー溝内への繊維塵の堆積を遅らせることができる。
【0017】
支持プレート上面の開口部からエアーをブローまたはサッキング、あるいは洗浄液を噴射することで切欠溝内に堆積した繊維塵を効率よく取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1に係るループプレッサーベッドを示した図である。
【
図4】
図4は、実施例2に係るループプレッサーベッドを示した図である。
【
図8】
図8は、実施例3に係るループプレッサーベッドを示した図である。
【
図9】
図9は、従来のループプレッサーベッドを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る横編機のループプレッサーベッドの実施形態を
図1~
図8に基づいて説明する。なおループプレッサーベッドには
図9に示したループプレッサー50が装着されるのでその説明は省略する。
【0020】
<実施形態>
図1に実施例1に係るループプレッサーベッド1を示す。ループプレッサーベッド1は主にベッド基板2、支持プレート10で構成される。
図1(a)はベッド基板2に支持プレート10を取り付けてループプレッサー溝8を形成した状態を示し、
図1(b)と
図1(c)は、支持プレート10、ベッド基板2を単体で示す。
【0021】
ベッド基板2には支持プレート10を装着するための多数のプレート溝6が切削加工によって形成される。プレート溝6の底面は支持プレート10の下面の形状に沿うように形成される。支持プレート10をプレート溝6に固定するために歯口側に支持プレート10の突出係止部18を受け入れる傾斜面5と中央側に凹状係止部4が形成されている。ベッド基板2の上面はループプレッサー50の支持面7となる。
【0022】
支持プレート10には、上面に帯金22を挿通するための2つの溝12、下面に歯口側から順に下向きに突出する突出係止部18、中央切欠14、後方切欠16が形成される。注目すべきは支持プレート10には、歯口側に平坦部17cから前方下向きに傾斜して延びる前方傾斜部17d、平坦部17cから後方上向きに延びて開口部17aに連絡する後方傾斜部17bで形成された第1切欠溝17を備える。第1切欠溝17は支持プレート10の厚み方向に貫通する貫通孔で形成される。第1切欠溝17の平坦部17cは、ループプレッサー50の後退位置における分岐部56と重なった位置に形成され、前方傾斜部17dはループ押さえ部54の後方まで延びるように形成されている。支持プレート10は、ベッド基板2とは別体の板材として形成されるので切削加工で製作される従来のループプレッサーベッドのような制約を受けることなく切欠溝17を設計することができる。
【0023】
支持プレート10のベッド基板2への固定は、支持プレート10に形成した突出係止部18をプレート溝6の傾斜面5に嵌めてから支持プレート10を後側に寄せ、中央切欠14と凹状係止部4の位置合わせを行った後、ワイヤ20を多数のプレート溝6を貫通させるよう紙面奥行き方向に貫挿する。次に支持プレート10の後方切欠16を尖端部材で叩いてかしめることで、くさび効果によりベッド基板2に固定する。これによりベッド基板2のプレート溝6に装着された支持プレート10,10間にループプレッサー50を装着するためのループプレッサー溝が形成される。なお支持プレート10とベッド基板2の固定については後述する他の実施例においても上記と同様なのでその説明は省略する。
【0024】
次にこのように構成されたループプレッサーベッド1の作用について説明する。支持プレート10に形成した第1切欠溝17の平坦部17cはループプレッサー50の分岐部56で引き込まれる繊維塵の排出空間として働き、また前方傾斜部17dはループ押さえ部54で引き込まれる繊維塵の排出空間として働くのでループプレッサー溝内の
図9に示す領域Aと領域Bへの繊維塵の堆積を遅らせることができる。
【0025】
ループプレッサーベッド1の清掃は、ループプレッサーベッド1の上面からエアーをブローまたはサッキングすることでループプレッサー溝に堆積した繊維塵はもとより支持プレート10の第1切欠溝17内に堆積した繊維塵も開口部17aを通じて効率よく取り除くことができる。またはエアーに替えて洗浄液を噴射してもよい。
【0026】
図2及び
図3は実施例1の変形例を示し、
図1と異なるところのみを符号で示す。
図2の支持プレート10aは、第1切欠溝17の開口傾斜部17bと平坦部17cとの間に後方に延びる後方傾斜部17eが追加されている。この後方傾斜部17eはベッド基板2のループプレッサー支持面7まで延びている。そのため領域Bに堆積する繊維塵の排出がより効果的に行われる。
【0027】
図3に示す支持プレート10bでは、第1切欠溝17の前方傾斜部17dから先端にかけて薄肉の凹溝19を形成している。これによりループ押さえ部54によって繊維塵が引き込まれるのを抑える効果や、開口部17aからエアーをブローまたは洗浄液を噴射した際に第1切欠溝17の平坦部17cや前方傾斜部17d内に堆積した繊維塵を排出する効果が期待できる。
【0028】
図4に実施例2に係るループプレッサーベッドを示す。支持プレート10cには第1切欠溝25が後退位置にあるときのループプレッサー50の分岐部56と重なるとともにループ押さえ部54の後方へ延びる形状の貫通孔として形成されている。さらに第1切欠溝25と間隔を空けて後方側に支持プレート10cの上面に開口する第2切欠溝27が形成されている。この実施例2の場合でも実施例1と同等の効果を発揮することができる。
【0029】
図5~
図7は実施例2の変形例を示す。
図5の支持プレート10dは第2切欠溝33の形状が異なり、断面図に示すように第2切欠溝33をV字型にしてその尖端部を僅かに貫通させている。これによりループプレッサー50の分岐部56付近までエアーや洗浄液を導くことができる。
【0030】
図6の支持プレート10eは第1切欠溝35が下方に開口した形状として形成し、ベッド基板2の尖端部で切欠溝35と連通する。これにより引き込んだ繊維塵を第1切欠溝35の開口からベッド基板2の尖端部を経て下方に排出させることができる。
【0031】
図7の支持プレート10fは第1切欠溝37の後方部分と繋がる薄肉の第2切欠溝39を形成した例を示す。ループプレッサーベッドの上面からエアーをブローまたは洗浄液を噴射した際に第2切欠溝39から第1切欠溝37を経てベッド基板2の尖端部から繊維塵を排出させることができる。
【0032】
図8に実施例3に係るループプレッサーベッドを示す。
図8の支持プレート10gは第1切欠溝41を上面の開口へと一直線上に延びる薄肉の傾斜溝で形成した例を示す。この場合も第1切欠溝41を経てベッド基板2の尖端部から繊維塵を排出させることができる。
【0033】
なお
図8を除きループプレッサー50の分岐部56と重なる位置に形成した支持プレートの第1切欠溝を貫通溝として形成したが、支持プレートの厚みを薄肉にした溝として形成しても構わない。ただ貫通溝とした方が溝内に形成される収容空間により多くの繊維塵を収容できる。また第1切欠溝や第2切欠溝は貫通溝、薄肉溝あるいはこれらの組み合わせで形成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ループプレッサーベッド
2 ベッド基板
4 凹状係止部
5 傾斜面
6 プレート溝
7 支持面
8 ループプレッサー溝
10 支持プレート
12 溝
14 中央切欠
16 後方切欠
18 突出係止部
17 第1切欠溝
17a 開口部
17b 開口傾斜部
17c 平坦部
17d 前方傾斜部
17e 後方傾斜部
19 凹溝
20 ワイヤ
22 帯金
25,35,37,41 第1切欠溝
27,33,39 第2切欠溝
50 ループプレッサー
52 本体部
54 ループ押さえ部
55 操作バット
56 分岐部
58 レッグ部
60 ループプレッサーベッド
62 ベッド基板
64 溝
66 ループプレッサー溝
68 切欠溝
70 帯金