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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020743
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】病理業務支援システムおよびAR機器
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20230202BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20230202BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20230202BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20230202BHJP
   G16H 15/00 20180101ALI20230202BHJP
   G16H 10/40 20180101ALI20230202BHJP
【FI】
G06T19/00 600
G01N1/28 Z
G01N1/28 J
G06F3/16 620
G06F3/0481
G16H15/00
G16H10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126280
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】504473946
【氏名又は名称】正晃テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 雅史
(72)【発明者】
【氏名】田川 文隆
【テーマコード(参考)】
2G052
5B050
5E555
5L099
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB16
2G052GA31
2G052HC04
2G052HC06
2G052HC42
2G052JA07
5B050AA02
5B050BA18
5B050CA08
5B050DA04
5B050EA07
5B050EA19
5B050FA02
5B050FA10
5B050FA13
5E555AA25
5E555AA64
5E555BA22
5E555BA38
5E555BA82
5E555BA86
5E555BA87
5E555BA88
5E555BB22
5E555BC17
5E555BE17
5E555CA42
5E555CA43
5E555CA47
5E555CC01
5E555DA08
5E555DA09
5E555DB51
5E555DC09
5E555DC13
5E555DC14
5E555DC60
5E555DD07
5E555EA14
5E555EA22
5E555EA23
5E555FA00
5L099AA03
(57)【要約】
【課題】病理業務を効率化することができる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様による病理業務支援システムは、病理診断業務を支援する病理業務支援システムにおいて、AR機器と、サーバ装置とを備える。AR機器は、現実空間を撮像するカメラと、現実空間に画像を重畳して表示する表示部と、を有する。サーバ装置は、AR機器を制御する。また、サーバ装置およびAR機器の少なくとも一方は、タグ情報取得部と、検体情報取得部と、検体情報表示部と、を有する。タグ情報取得部は、カメラの視野内にあり、病理診断の対象となる検体を前処理する際に用いられる部材に印されるタグ情報をカメラから取得する。検体情報取得部は、取得されたタグ情報に付随する検体に関する検体情報を取得する。検体情報表示部は、表示部において、タグ情報が印される部材に検体情報を重畳して表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病理診断業務を支援する病理業務支援システムにおいて、
現実空間を撮像するカメラと、前記現実空間に画像を重畳して表示する表示部と、を有するAR機器と、
前記AR機器を制御するサーバ装置と、
を備え、
前記サーバ装置および前記AR機器の少なくとも一方は、
前記カメラの視野内にあり、病理診断の対象となる検体を前処理する際に用いられる部材に印されるタグ情報を前記カメラから取得するタグ情報取得部と、
取得された前記タグ情報に付随する検体に関する検体情報を取得する検体情報取得部と、
前記表示部において、前記タグ情報が印される前記部材に前記検体情報を重畳して表示する検体情報表示部と、
を有する病理業務支援システム。
【請求項2】
前記AR機器は、
音声を出力する音声出力部をさらに有し、
前記サーバ装置および前記AR機器の少なくとも一方は、
前記タグ情報が印される前記部材に前記検体情報を重畳して表示する際に、前記検体情報を音声出力部から出力する読上部、をさらに有する
請求項1に記載の病理業務支援システム。
【請求項3】
前記サーバ装置および前記AR機器の少なくとも一方は、
前記タグ情報が印される前記部材の前記検体情報と、前記タグ情報が印される別の前記部材の前記検体情報とが一致しない場合、前記検体情報が一致しない旨を作業者に報知する報知部、をさらに有する
請求項1または2に記載の病理業務支援システム。
【請求項4】
前記検体情報表示部は、
前記タグ情報が印される前記部材と前記タグ情報が印されていない前記部材とが前記カメラの視野内で接近または接触した際に、前記タグ情報が印されていない前記部材に前記タグ情報が印される前記部材の検体情報を重畳して表示する
請求項1~3のいずれか一つに記載の病理業務支援システム。
【請求項5】
前記検体情報表示部は、
前記タグ情報が印される前記部材と前記タグ情報が印されていない前記部材とが前記カメラの視野内で接近または接触した際に、前記タグ情報が印される前記部材と前記タグ情報が印されていない前記部材とが前記カメラの視野内で接近または接触した旨を報知した後に、前記タグ情報が印されていない前記部材に前記タグ情報が印される前記部材の検体情報を重畳して表示する
請求項4に記載の病理業務支援システム。
【請求項6】
前記部材は、検体に関する病理診断の病理検査依頼書、検体を収容する容器、検体を前処理するためのカセット、および検体を前処理するためのピンセットのうち少なくとも1つである
請求項1~5のいずれか一つに記載の病理業務支援システム。
【請求項7】
前記タグ情報は、前記部材に印されるバーコードである
請求項1~6のいずれか一つに記載の病理業務支援システム。
【請求項8】
前記AR機器は、頭部装着型のAR機器である
請求項1~7のいずれか一つに記載の病理業務支援システム。
【請求項9】
現実空間を撮像するカメラと、
前記現実空間に画像を重畳して表示する表示部と、
各部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記カメラの視野内にあり、病理診断の対象となる検体を前処理する際に用いられる部材に印されるタグ情報を前記カメラから取得するタグ情報取得部と、
取得された前記タグ情報に付随する検体に関する検体情報を取得する検体情報取得部と、
前記表示部において、前記タグ情報が印される前記部材に前記検体情報を重畳して表示する検体情報表示部と、
を有するAR機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、病理業務支援システムおよびAR機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡検査部門などに患者の病理診断を依頼された病理部門において、かかる病理診断の業務(以下、「病理業務」とも呼称する。)を効率よく行うことができる技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-5313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術では、病理業務を効率化するという点でさらなる改善の余地があった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、病理業務を効率化することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による病理業務支援システムは、病理診断業務を支援する病理業務支援システムにおいて、AR機器と、サーバ装置とを備える。AR機器は、現実空間を撮像するカメラと、前記現実空間に画像を重畳して表示する表示部と、を有する。サーバ装置は、前記AR機器を制御する。また、前記サーバ装置および前記AR機器の少なくとも一方は、タグ情報取得部と、検体情報取得部と、検体情報表示部と、を有する。タグ情報取得部は、前記カメラの視野内にあり、病理診断の対象となる検体を前処理する際に用いられる部材に印されるタグ情報を前記カメラから取得する。検体情報取得部は、取得された前記タグ情報に付随する検体に関する検体情報を取得する。検体情報表示部は、前記表示部において、前記タグ情報が印される前記部材に前記検体情報を重畳して表示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、病理業務を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る病理業務支援方法の概要を説明するための図である。
図2図2は、実施形態に係る病理業務支援システムの構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、実施形態に係るAR機器の構成を示す機能ブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る検体情報記憶部の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る撮像データ記憶部の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る検体の前処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、実施形態に係る病理業務支援処理の一例を示す図である。
図8図8は、実施形態に係る病理業務支援処理の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態に係る病理業務支援処理の一例を示す図である。
図10図10は、実施形態に係る病理業務支援処理の一例を示す図である。
図11図11は、実施形態に係る病理業務支援処理の一例を示す図である。
図12図12は、実施形態に係る病理業務支援処理の一例を示す図である。
図13図13は、実施形態に係る病理業務支援処理の一例を示す図である。
図14図14は、別の実施形態に係るAR機器の構成を示す機能ブロック図である。
図15図15は、実施形態に係る病理業務支援システムが実行する病理業務支援処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する病理業務支援システムおよびAR機器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0010】
<病理業務支援方法の概要>
最初に、実施形態に係る病理業務支援方法の概要について、図1を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る病理業務支援方法の概要を説明するための図である。
【0011】
実施形態に係る病理業務支援方法は、以下のステップS01~S04を含んでいる。また、かかる病理業務支援方法は、図1に示すように、病理業務を行う際に、AR(Augmented Reality:拡張現実)機器50を装着する作業者Xを支援する。
【0012】
このAR機器50は、AR表示が可能な機器である。なお、本開示において、「AR表示」とは、ユーザから見て、各種の画像があたかも現実空間に存在する現実物体であるかのように知覚させる表示を行うことを意味する。
【0013】
実施形態に係る病理業務支援方法では、まず、サーバ装置10が、作業者Xが装着するAR機器50のカメラ55(図3参照)で、検体S(図11参照)の前処理の際に用いられる部材(以下、「前処理用部材」とも呼称する。)に印されるタグ情報を取得する(ステップS01)。
【0014】
ここで、前処理用部材とは、たとえば、検体Sに関する病理診断の病理検査依頼書、検体Sを収容する容器61(図7参照)、検体Sを前処理するためのカセット62(図10参照)、検体Sを前処理するためのピンセット63(図10参照)などである。
【0015】
なお、実施形態に係る前処理用部材は、病理検査依頼書、容器61、カセット62およびピンセット63に限られない。また、前処理用部材に印されるタグ情報は、たとえば、2次元バーコードなどのバーコードであり、個別のIDなどが含まれる。
【0016】
なお、かかるステップS01の処理は、作業者Xが前処理用部材を目視することで、かかる前処理用部材がカメラ55の視野内に入りこむことにより行われる。すなわち、実施形態では、AR機器50に搭載されるカメラ55を用いることにより、ステップS01の処理を作業者Xが意識することなく行うことができる。
【0017】
次に、サーバ装置10は、取得されたタグ情報に付随する検体Sに関する情報(以下、「検体情報」とも呼称する。)を取得する(ステップS02)。かかる検体情報は、タグ情報に紐付けられてサーバ装置10の記憶部30(図2参照)にあらかじめ記憶されている。また、実施形態に係る検体情報には、たとえば、検体Sが採取された患者のIDや氏名などが含まれる。
【0018】
次に、サーバ装置10は、AR機器50の表示部54(図3参照)において、ステップS01の処理でタグ情報を取得した前処理用部材に、ステップS02の処理で取得した検体情報を重畳して表示する(ステップS03)。
【0019】
たとえば、図1の例では、病理検査依頼書に印されるタグ情報に付随する検体情報として、「ID:XXX-YYYY ○○ 太郎」という情報を記憶部30から取得した場合に、病理検査依頼書の近傍にかかる検体情報を重畳して表示する。
【0020】
これにより、AR機器50を装着した作業者Xは、前処理用部材を目視するだけで、かかる前処理用部材に紐付けられる検体情報を確認することができる。したがって、実施形態によれば、バーコードリーダやパソコンなどを用いて検体情報を前処理用部材ごとに確認する手間を省くことができることから、病理業務を効率化することができる。
【0021】
また、実施形態では、頭部装着型のAR機器50を用いることにより、前処理用部材に紐付けられる検体情報を、バーコードリーダやキーボード、マウスなどを触ることなく確認することができる。したがって、実施形態によれば、検体Sの前処理において検体Sによって機器などが汚染されることを抑制することができる。
【0022】
なお、本開示のAR機器50は、頭部装着型のAR機器に限られず、スマートフォンやタブレット端末などであってもよい。これによっても、病理業務を効率化することができる。
【0023】
次に、サーバ装置10は、作業者Xからの合図に沿って、カメラ55で撮像される現実空間の様子を記録する(ステップS04)。たとえば、図1の例では、あらかじめ設定されたキーワード(たとえば、「録画開始」)を作業者Xが発声することで、サーバ装置10は、作業者Xが目視する作業台の様子を動画として記録する。
【0024】
またこの場合、あらかじめ設定された別のキーワード(たとえば、「録画終了」)を作業者Xが発声することで、サーバ装置10は、かかる記録を終了するとよい。
【0025】
このように、実施形態では、作業者Xからの合図に沿って現実空間の様子を記録することにより、エビデンスとして残す必要性が高い作業(たとえば、容器61などから検体Sを取り出して各種処理を施す作業)を簡便かつ精度よく記録することができる。したがって、実施形態によれば、病理業務を効率化することができる。
【0026】
また、実施形態では、頭部装着型のAR機器50を用いて現実空間の様子を記録することにより、作業時の視点とカメラ55の視野とを一致させることができる。したがって、実施形態によれば、最適な視点で記録されたエビデンスを残すことができる。
【0027】
また、実施形態では、頭部装着型のAR機器50を用いることにより、スイッチなどを触ることなく作業の様子を記録することができる。したがって、実施形態によれば、検体Sの前処理において検体Sによって機器などが汚染されることを抑制することができる。
【0028】
また、実施形態では、前処理作業の様子をエビデンスとして残す際に、ステップS02の処理ですでに検体情報が取得されていることから、作業者Xが意識することなくエビデンス記録と検体情報とを紐付けすることができる。したがって、実施形態によれば、病理業務をさらに効率化することができる。
【0029】
また、実施形態では、AR機器50を用いて検体情報の確認処理および作業の記録処理を行うことにより、病理業務に必要な機器を削減することができる。したがって、実施形態によれば、病理業務を省スペース化することができる。
【0030】
なお、図1の例では、作業者Xが目視する作業台の様子を動画として記録する例について示したが、本開示はかかる例に限られない。たとえば、あらかじめ設定されたさらに別のキーワード(たとえば、「撮影」)を作業者Xが発声することで、サーバ装置10は、作業者Xが目視する作業台の様子を静止画として記録してもよい。
【0031】
また、図1の例では、作業者Xが所定のキーワードを発声することで、作業者Xが目視する作業台の様子を記録する例について示したが、本開示はかかる例に限られない。たとえば、サーバ装置10は、作業者Xが行う所定のジェスチャを合図として、作業者Xが目視する作業台の様子を動画または静止画として記録してもよい。これによっても、病理業務を効率化することができる。
【0032】
<病理業務支援システムの構成例>
次に、病理業務支援システム1の構成例について、図2図6を参照しながら説明する。図2は、実施形態に係る病理業務支援システム1の構成を示す機能ブロック図である。
【0033】
図2に示すように、病理業務支援システム1には、サーバ装置10と、AR機器50とが含まれる。なお、図2には、病理業務支援システム1に2つのAR機器50が含まれる場合について示したが、病理業務支援システム1に含まれるAR機器50の数は、図示した例に限られることはなく、任意の数のAR機器50を含むことができる。
【0034】
また、サーバ装置10とAR機器50との間は、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続される。かかるネットワークNには、有線または無線を問わず、たとえば、インターネットを始め、LAN(Local Area Network)やVPN(Virtual Private Network)などの任意の種類の通信網を用いることができる。
【0035】
サーバ装置10は、AR機器50に上述の病理業務支援サービスを提供するコンピュータである。AR機器50は、サーバ装置10から上述の病理業務支援サービスの提供を受ける機器である。図3は、実施形態に係るAR機器50の構成を示す機能ブロック図である。
【0036】
図3に示すように、AR機器50は、通信部51と、制御部52と、記憶部53と、表示部54と、カメラ55と、マイク56と、スピーカ57とを有する。カメラ55およびマイク56は、受取部の一例であり、スピーカ57は、音声出力部の一例である。
【0037】
通信部51は、有線または無線を問わず、サーバ装置10など、その他のコンピュータなどとの通信を制御する。通信部51は、たとえばNIC(Network Interface Card)などの通信インタフェースなどである。
【0038】
制御部52は、AR機器50の全体的な処理を司る処理部である。制御部52は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などによって、内部の記憶装置に記憶されているプログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0039】
また、制御部52は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路により実現されるようにしてもよい。
【0040】
記憶部53は、たとえば制御部52が実行するプログラムなどの各種データなどを記憶する。記憶部53は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子や、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置に対応する。
【0041】
表示部54は、現実空間に画像を重畳して表示する。なお、表示部54は、いわゆる光学シースルー型の表示装置であってもよいし、いわゆるビデオシースルー型の表示装置であってもよい。
【0042】
ここで、光学シースルー型とは、レンズ越しに眺められる実際の景色に、プリズムやハーフミラーといった光学系を用いて電子的な画像を重畳する方式のことである。また、ビデオシースルー型とは、カメラ55でリアルタイムに撮像される景色の画像に電子的な画像を重畳する方式のことである。
【0043】
カメラ55は、AR機器50を装着するユーザと略等しい向きを向いており、かかるユーザの視野と略等しい現実空間を撮像する。また、カメラ55は、作業者Xが行うジェスチャを撮像する。マイク56は、AR機器50を装着するユーザの発声などの音声を取得する。スピーカ57は、AR機器50を装着するユーザに対して音声を出力する。
【0044】
図2に戻り、実施形態におけるサーバ装置10の機能構成について説明する。サーバ装置10は、通信部20と、記憶部30と、制御部40とを備える。
【0045】
通信部20は、有線または無線を問わず、AR機器50など、その他のコンピュータなどとの通信を制御する。通信部20は、たとえばNICなどの通信インタフェースなどである。
【0046】
記憶部30は、たとえば制御部40が実行するプログラムなどの各種データなどを記憶する。記憶部30は、RAM、ROM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子や、HDDなどの記憶装置に対応する。また、記憶部30は、検体情報記憶部31と、撮像データ記憶部32とを有する。
【0047】
検体情報記憶部31は、病理診断の対象となる検体Sの管理履歴を記憶する。図4は、実施形態に係る検体情報記憶部31の一例を示す図である。図4に示す検体情報記憶部31は、「タグ情報」、「検体情報」といった項目を有する。
【0048】
「タグ情報」は、病理診断が依頼された検体Sごとに個別に付されるタグ情報を示す。「検体情報」は、病理診断が依頼された検体Sに関する各種の情報を示す。かかる検体情報には、たとえば、検体Sが採取された患者のIDや氏名などが含まれる。
【0049】
撮像データ記憶部32は、検体Sが前処理される際に記録される撮像データの管理履歴を記憶する。図5は、実施形態に係る撮像データ記憶部32の一例を示す図である。図5に示す撮像データ記憶部32は、「タグ情報」、「撮像データ情報」といった項目を有する。
【0050】
「タグ情報」は、病理診断が依頼された検体Sごとに個別に付されるタグ情報を示す。「撮像データ情報」は、検体Sに対する前処理の様子を記録したデータに関する情報(たとえば、撮像データのファイル名など)を示す。
【0051】
ここで、病理診断のために検体Sに施される前処理の手順の一例について、図6を参照しながら説明する。図6は、実施形態に係る検体Sの前処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0052】
検体Sの前処理では、まず、検体Sおよび病理検査依頼書の受付処理が行われる(ステップS11)。かかる受付処理では、たとえば、検体Sが収容されたホルマリン入りの容器61(図7参照)に印されるタグ情報、およびかかる検体Sに関する病理診断の病理検査依頼書に印されるタグ情報が、バーコードリーダなどで読み取られる。
【0053】
なお、容器61にバーコードでなく手書きのラベルが貼られている場合、ステップS11の処理では、病理検査依頼書に記されるタグ情報を読み込み、病理検査依頼書に記されている容器61の数や手書きのラベルの情報とを照合する。
【0054】
次に、検体Sにホルマリンを所定の時間(たとえば、数時間)染みこませることにより、検体Sの腐食を抑制する固定処理が行われる(ステップS12)。かかる固定処理は、検体Sが収容されたホルマリン入りの容器61の内部で行われる。
【0055】
次に、検体Sの中から、病理診断の対象となる部位を切り出す切出し処理が行われる(ステップS13)。かかる切出し処理では、たとえば、容器61から検体Sが作業台の上に取り出され、病理診断の対象となる部位が切り出された後に、切り出された部位がカセット62(図10参照)の内部に収容される。なお、かかる切出し処理では、検体Sが容器61から取り出されることから、この時点でも取り違えのリスクがある。
【0056】
次に、カセット62の内部に収容された検体Sを、薄くスライスしても崩れないようにするための処置処理が行われる(ステップS14)。かかる処置処理では、たとえば、検体Sの脱灰処理などがカセット62の内部で行われる。
【0057】
次に、処置処理が行われた検体Sをロウで固める包埋処理が行われる(ステップS15)。かかる包埋処理では、たとえば、カセット62から検体Sが作業台の上に取り出され、かかる検体Sがロウで固められる。なお、かかる包埋処理では、検体Sがカセット62から取り出されることから、この時点でも取り違えのリスクがある。
【0058】
次に、検体Sを顕微鏡などで観察可能にするため、包埋処理が施された検体Sを薄くスライスする薄切処理が行われる(ステップS16)。なお、かかる薄切処理では、検体Sが薄くスライスされることから、この時点でも取り違えのリスクがある。
【0059】
次に、検体Sを顕微鏡で視認容易にするため、薄切処理が施された検体Sを染色する染色処理が行われる(ステップS17)。最後に、染色処理が施された検体Sをカバーガラスに挟む封入処理が行われて(ステップS18)、病理診断用の標本の準備が終了する。
【0060】
ここまで説明したように、検体Sが前処理される際(すなわち、ステップS11~S18の処理の際)には、容器61やカセット62から検体Sを取り出して各種の処理を施す必要があることから、前処理の際に検体Sの取り違えを抑制することは非常に重要である。
【0061】
図2の説明に戻る。制御部40は、サーバ装置10の全体的な処理を司る処理部である。制御部40は、たとえば、CPUやMPU、GPUなどによって、内部の記憶装置に記憶されているプログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部40は、たとえば、ASICやFPGAなどの集積回路により実現されるようにしてもよい。
【0062】
制御部40は、部材検出部41と、タグ情報取得部42と、検体情報取得部43と、検体情報表示部44と、読上部45と、報知部46と、記録部47とを有し、以下に説明する制御処理の機能や作用を実現または実行する。なお、制御部40の内部構成は、図2に示した構成に限られず、後述する制御処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。
【0063】
部材検出部41は、AR機器50におけるカメラ55の視野内に存在する前処理用部材およびその位置を検出する。部材検出部41は、たとえば、検体Sに関する病理診断の病理検査依頼書、検体Sが収容された容器61、検体Sを前処理するためのカセット62、および前処理の際に検体Sを取り扱うピンセット63(図10参照)などの位置を、拡張現実空間における座標データとして検出する。
【0064】
部材検出部41は、たとえば、R-CNN(Region Convolutional Neural Network)、YOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot multibox Detector)などの物体検出技術を用いて、前処理用部材の検出とその座標を取得する。
【0065】
タグ情報取得部42は、カメラ55の視野内に存在する前処理用部材に印されるタグ情報を取得する。タグ情報取得部42は、たとえば、部材検出部41で検出された視野内の前処理用部材にタグ情報が印されているか否かを判定し、前処理用部材にタグ情報が印されている場合には、かかるタグ情報を取得する。
【0066】
検体情報取得部43は、タグ情報取得部42で取得されたタグ情報に付随する検体情報を、記憶部30の検体情報記憶部31から取得する。
【0067】
検体情報表示部44は、検体情報取得部43で取得された検体情報を、AR機器50の表示部54において、かかる検体情報に付随するタグ情報が印される前処理用部材に重畳して表示する。
【0068】
読上部45は、表示部54において検体情報を前処理用部材に重畳して表示する際に、かかる検体情報をスピーカ57から出力する。
【0069】
報知部46は、タグ情報が印される前処理用部材の検体情報と、タグ情報が印される別の前処理用部材の検体情報とが一致しない場合、検体情報が一致しない旨を作業者Xに報知する。
【0070】
記録部47は、AR機器50のカメラ55で撮像される、検体Sの前処理が行われる現実空間の様子を記録する。また、記録部47は、記録された撮像データを記憶部30に記憶する。
【0071】
<病理業務支援処理の具体例>
つづいて、実施形態に係る病理業務支援処理の具体例について、図7図13を参照しながら説明する。図7図13は、実施形態に係る病理業務支援処理の一例を示す図である。なお、以降では、AR機器50を装着する作業者Xが目視する表示部54の表示状態を図示しながら、一連の病理業務支援処理について説明する。
【0072】
まず、図7に示すように、検体Sの前処理を行う作業者X(図1参照)は、前処理用部材である容器61を目視する。すると、制御部40(図2参照)の部材検出部41(図2参照)は、AR機器50(図3参照)のカメラ55(図3参照)で撮像される容器61を検出する。
【0073】
そして、部材検出部41は、前処理用部材が検出されている旨を表示部54に表示する。たとえば、部材検出部41は、図7に示すように、前処理用部材の輪郭を太い破線などで縁取ることにより、前処理用部材が検出されている旨を表示部54に表示する。これにより、作業者Xは、前処理用部材が検出されている旨を容易に認識することができる。
【0074】
次に、タグ情報取得部42(図2参照)は、検出された前処理用部材にタグ情報が印されているか否かを判定し、前処理用部材にタグ情報が印されている場合には、かかるタグ情報を取得する。
【0075】
図7の例では、検出された容器61にタグ情報が印されている。この場合、タグ情報取得部42は、容器61に印されるタグ情報を取得する。
【0076】
また、図10の例では、検出された容器61、カセット62およびピンセット63のうち、容器61にのみタグ情報が印されている。この場合、タグ情報取得部42は、容器61に印されるタグ情報を取得する。
【0077】
なお、本開示において、容器61にもタグ情報が付されていない場合、容器61にタグ情報を付する処理が必要となる。この場合、たとえば、病理検査依頼書に付されているタグ情報をAR機器50によって認識させた後、ユーザによる所定の操作によって、容器61にタグ情報を付することができる。
【0078】
また、図10に示すように、表示部54内にタグ情報が印されている前処理用部材とタグ情報が印されていない前処理用部材とが含まれる場合、かかるタグ情報の有無を前処理用部材の輪郭表示の違いで明示してもよい。
【0079】
たとえば、部材検出部41は、タグ情報が印されている前処理用部材の縁取りとタグ情報が印されていない前処理用部材の縁取りとの色を変えて表示してもよいし、図10に示すように、縁取り線の種類(たとえば、破線と一点鎖線など)を変えて表示してもよい。
【0080】
図7の説明に戻る。次に、検体情報取得部43(図2参照)は、タグ情報取得部42で取得されたタグ情報に付随する検体情報を、記憶部30(図2参照)の検体情報記憶部31(図2参照)から取得する。たとえば、図7の例では、取得された容器61のタグ情報に付随する検体情報として、「ID:XXX-YYYY ○○ 太郎」という情報が取得される。
【0081】
次に、検体情報表示部44(図2参照)は、検体情報取得部43で取得された検体情報を、AR機器50の表示部54において、かかる検体情報に付随するタグ情報が印される前処理用部材に重畳して表示する。
【0082】
たとえば、図7の例では、検体情報表示部44が、「ID:XXX-YYYY ○○ 太郎」という検体情報を、容器61に重畳する重畳情報A1として表示する。
【0083】
これにより、AR機器50を装着した作業者Xは、前処理用部材を目視するだけで、かかる前処理用部材に紐付けられる検体情報を視覚によって確認することができる。
【0084】
したがって、実施形態によれば、バーコードリーダやパソコンなどを用いて検体情報を前処理用部材ごとに確認する手間を省くことができることから、病理業務を効率化することができる。
【0085】
また、実施形態では、頭部装着型のAR機器50を用いることにより、前処理用部材に紐付けられる検体情報を、バーコードリーダやキーボード、マウスなどを触ることなく確認することができる。したがって、実施形態によれば、検体Sの前処理において検体Sによって機器などが汚染されることを抑制することができる。
【0086】
なお、検体情報表示部44は、複数の前処理用部材にそれぞれ付随する複数の検体情報を表示する場合、すべての検体情報を表示してもよいし、表示する検体情報を作業者Xに選択させてもよい。
【0087】
たとえば、作業者Xは、発声やジェスチャ、視線などに基づいて検体情報を表示する前処理用部材を選択し、検体情報表示部44は、選択された前処理用部材に検体情報を重畳して表示してもよい。
【0088】
次に、読上部45(図2参照)は、表示部54において検体情報を前処理用部材に重畳して表示する際に、かかる検体情報をスピーカ57(図3参照)から出力する。たとえば、図7の例では、読上部45が、「ID:XXX-YYYY ○○ 太郎」というメッセージM1をスピーカ57から出力し、作業者Xに対して読み上げる。
【0089】
これにより、AR機器50を装着した作業者Xは、検体情報を視覚で確認する際に、かかる前処理用部材に紐付けられる検体情報を音声によって再確認することができる。したがって、実施形態によれば、検体Sを前処理する際にかかる検体Sの取り違えを抑制することができる。
【0090】
また、実施形態では、図8に示すように、前処理用部材に印されるタグ情報に付随する各種の検体情報をAR表示することができる。たとえば、作業者Xは、発声やジェスチャ、視線などに基づいて表示する検体情報(たとえば、検体Sの病理診断に関する病理検査依頼書や画像、カルテなど)をサーバ装置10に指示する。すると、サーバ装置10は、かかる指示に基づいて、各種の検体情報を重畳情報A2~A4として表示部54に表示する。
【0091】
さらに、実施形態では、図9に示すように、作業者Xが発声やジェスチャ、視線などに基づいて拡大表示したい重畳情報A2~A4を選択し、サーバ装置10は、選択された重畳情報A2~A4(図では重畳情報A4)を表示部54で拡大して表示してもよい。
【0092】
このように、実施形態では、前処理用部材に印されるタグ情報に付随する各種の検体情報をAR表示することにより、病理業務を効率化することができるとともに、病理業務を省スペース化することができる。
【0093】
次に、図10に示すように、病理診断の対象となる部位を切り出す切出し処理などにおいて、容器61内の検体Sがカセット62に移される作業が行われる。この際、部材検出部41は、作業者Xに目視されるとともにカメラ55で撮像される容器61、カセット62およびピンセット63を前処理用部材として検出する。
【0094】
そして、部材検出部41は、容器61、カセット62およびピンセット63が検出されている旨を、縁取りとして表示部54に表示する。さらに、検体情報表示部44は、容器61に印されるタグ情報に付随する検体情報を、容器61に重畳して表示する。
【0095】
なお、図10の例では、カセット62およびピンセット63にはタグ情報が印されていないことから、タグ情報に付随する検体情報も表示されていない。
【0096】
また、図10に示すように、検体Sの前処理において検体Sを容器61やカセット62から取り出す際などに、記録部47(図2参照)は、作業者Xからの合図に沿って、カメラ55で撮像される現実空間の様子を記録する。
【0097】
これにより、エビデンスとして残す必要性が高い作業を簡便かつ精度よく記録することができることから、病理業務を効率化することができる。
【0098】
また、実施形態では、頭部装着型のAR機器50を用いて現実空間の様子を記録することにより、作業時の視点とカメラ55の視野とを一致させることができる。したがって、実施形態によれば、最適な視点で記録されたエビデンスを残すことができる。
【0099】
また、実施形態では、前処理作業の様子をエビデンスとして残す際に、すでに検体情報が取得されていることから、作業者Xが意識することなくエビデンス記録と検体情報とを紐付けすることができる。したがって、実施形態によれば、病理業務をさらに効率化することができる。
【0100】
次に、図11に示すように、検体Sの前処理において、容器61内の検体Sを取り出すために、かかる容器61にピンセット63を近づける作業が行われる。この際、検体情報表示部44は、タグ情報が印されていない前処理用部材に、タグ情報が印される前処理用部材の検体情報を重畳して表示する。
【0101】
たとえば、検体情報表示部44は、タグ情報が印されていないピンセット63が、タグ情報が印される容器61に一定時間、一定距離内に近づいた場合に、容器61のタグ情報に付随する検体情報をピンセット63に紐付ける。そして、検体情報表示部44は、紐付けられた検体情報を重畳情報A5としてピンセット63に重畳して表示する。
【0102】
これにより、容器61に紐付いた検体情報と同じ情報がピンセット63に紐付いていることを視覚的に表示することができる。したがって、実施形態によれば、ピンセット63でつまんだ検体Sが容器61から取り出されたものであることを作業者Xが確信することができる。
【0103】
なお、検体情報表示部44は、たとえば、タグ情報が印されていないピンセット63がタグ情報が印される容器61に近づいた際に、かかる近づいた旨を作業者Xに報知するとよい。たとえば、検体情報表示部44は、タグ情報が印されていないピンセット63がタグ情報が印される容器61に近づいた際に、容器61およびピンセット63の輪郭を点滅させることによって、かかる近づいた旨を作業者Xに報知するとよい。
【0104】
そして、容器61とピンセット63とが近づいた旨を作業者Xに報知した後に、かかる前処理用部材同士が一定時間、一定距離内で維持された場合、検体情報表示部44は、タグ情報が印されていないピンセット63に、タグ情報が印される容器61の検体情報を重畳して表示するとよい。
【0105】
これにより、容器61に紐付いた検体情報と同じ情報がピンセット63に紐付こうとしていることを視覚的に認識しやすくすることができる。なお、上記近づいた旨を作業者Xに報知する方法は、対象となる前処理用部材の輪郭を点滅させる場合に限られず、たとえば、対象となる前処理用部材の輪郭の色を変化させてもよい。
【0106】
次に、図12に示すように、検体Sの前処理において、ピンセット63で取り出した検体Sをカセット62に収容するために、かかるカセット62にピンセット63を近づける作業が行われる。この際、検体情報表示部44は、タグ情報が印されていない前処理用部材に、検体情報が付与された前処理用部材の検体情報を重畳して表示する。
【0107】
たとえば、検体情報表示部44は、タグ情報が印されていないカセット62に、検体情報が付与されたピンセット63が一定時間、一定距離内に近づいた場合に、ピンセット63に付与された検体情報をカセット62に紐付ける。そして、検体情報表示部44は、紐付けられた検体情報を重畳情報A6としてカセット62に重畳して表示する。
【0108】
これにより、容器61に紐付いた検体情報と同じ情報がカセット62に紐付いていることを視覚的に表示することができる。したがって、実施形態によれば、カセット62に収容された検体Sが容器61から取り出されたものであることを作業者Xが確信することができる。
【0109】
なお、図12の例においても、上述した図11の例と同様に、検体情報表示部44は、タグ情報が印されていないカセット62にタグ情報が印されるピンセット63が近づいた際に、かかる近づいた旨を作業者Xに報知するとよい。
【0110】
そして、カセット62とピンセット63とが近づいた旨を作業者Xに報知した後に、かかる前処理用部材同士が一定時間、一定距離内で維持された場合、検体情報表示部44は、タグ情報が印されていないカセット62に、タグ情報が印されるピンセット63の検体情報を重畳して表示するとよい。
【0111】
これにより、ピンセット63に紐付いた検体情報と同じ情報がカセット62に紐付こうとしていることを視覚的に認識しやすくすることができる。
【0112】
一方で、図13に示すように、容器61から付与されたピンセット63の検体情報と、カセット62の検体情報とが一致しない場合、報知部46は、検体情報が一致しない旨を作業者Xに報知する。
【0113】
たとえば、報知部46は、互いに異なる検体情報が付与されたカセット62およびピンセット63が一定時間、一定距離内に近づいた場合に、検体情報が一致しない旨をメッセージM2としてスピーカ57から出力し、作業者Xに対して報知する。これにより、前処理する際における検体Sの取り違えを抑制することができる。
【0114】
なお、本開示では、報知部46が検体情報が一致しない旨を音声情報として作業者Xに報知する場合に限られず、報知部46が検体情報が一致しない旨を検体情報表示部44に視覚情報として表示してもよい。
【0115】
また、図7図13に示した病理業務支援処理において、サーバ装置10は、作業者Xからの指示に基づいて、AR機器50のカメラ55で撮像される前処理の様子を別の場所にある端末に送信し、かかる端末のユーザからのアドバイスを、作業者XがAR機器50を通じて受け取ることができるようにしてもよい。
【0116】
これにより、異なる場所にいる識者からのアドバイスを作業者Xが簡便に受け取ることができることから、病理業務を効率化することができる。
【0117】
なお、サーバ装置10は、別の場所にある端末のユーザからのアドバイスを、AR機器50のスピーカ57から出力される音声情報によって取得できるようにしてもよいし、AR機器50の表示部54に表示される視覚情報によって取得できるようにしてもよい。
【0118】
<別の実施形態>
ここまで説明した実施形態では、病理業務支援処理の主な処理をサーバ装置10が実行する例について示したが、本開示はかかる例に限られない。たとえば、サーバ装置10の制御部40が実行する処理の少なくとも一部をAR機器50の制御部52が代わりに実行してもよい。
【0119】
さらに、本開示では、実施形態に係る病理業務支援処理のすべての処理をAR機器50が実行してもよい。図14は、別の実施形態に係るAR機器50の構成を示す機能ブロック図である。この別の実施形態のAR機器50は、たとえば、ネットワークN(図2参照)に接続されていないスタンドアローン型のAR機器である。
【0120】
図14に示すように、別の実施形態に係るAR機器50は、制御部52と、記憶部53と、表示部54と、カメラ55と、マイク56と、スピーカ57とを有する。なお、別の実施形態に係る表示部54、カメラ55、マイク56およびスピーカ57は、上記の実施形態(図3参照)と同様であることから、詳細な説明は省略する。
【0121】
そして、AR機器50の記憶部53は、検体情報記憶部53aと、撮像データ記憶部53bとを有する。
【0122】
検体情報記憶部53aは、病理診断の対象となる検体Sの管理履歴を記憶する。なお、別の実施形態に係る検体情報記憶部53aは、図4に示した実施形態に係る検体情報記憶部31と同様の構成であることから、詳細な説明は省略する。
【0123】
撮像データ記憶部53bは、検体Sが前処理される際に記録される撮像データの管理履歴を記憶する。なお、別の実施形態に係る撮像データ記憶部53bは、図5に示した実施形態に係る撮像データ記憶部32と同様の構成であることから、詳細な説明は省略する。
【0124】
また、AR機器50の制御部52は、部材検出部52aと、タグ情報取得部52bと、検体情報取得部52cと、検体情報表示部52dと、読上部52eと、報知部52fと、記録部52gとを有する。
【0125】
部材検出部52aは、AR機器50におけるカメラ55の視野内に存在する前処理用部材およびその位置を検出する。なお、別の実施形態に係る部材検出部52aは、上記の実施形態で示した部材検出部41(図2参照)と同様の機能を有することから、詳細な説明は省略する。
【0126】
タグ情報取得部52bは、カメラ55の視野内に存在する前処理用部材に印されるタグ情報を取得する。なお、別の実施形態に係るタグ情報取得部52bは、上記の実施形態で示したタグ情報取得部42(図2参照)と同様の機能を有することから、詳細な説明は省略する。
【0127】
検体情報取得部52cは、タグ情報取得部52bで取得されたタグ情報に付随する検体情報を、記憶部30の検体情報記憶部53aから取得する。なお、別の実施形態に係る検体情報取得部52cは、上記の実施形態で示した検体情報取得部43(図2参照)と同様の機能を有することから、詳細な説明は省略する。
【0128】
検体情報表示部52dは、検体情報取得部52cで取得された検体情報を、AR機器50の表示部54において、かかる検体情報に付随するタグ情報が印される前処理用部材に重畳して表示する。なお、別の実施形態に係る検体情報表示部52dは、上記の実施形態で示した検体情報表示部44(図2参照)と同様の機能を有することから、詳細な説明は省略する。
【0129】
読上部52eは、表示部54において検体情報を前処理用部材に重畳して表示する際に、かかる検体情報をスピーカ57から出力する。なお、別の実施形態に係る読上部52eは、上記の実施形態で示した読上部45(図2参照)と同様の機能を有することから、詳細な説明は省略する。
【0130】
報知部52fは、タグ情報が印される前処理用部材の検体情報と、タグ情報が印される別の前処理用部材の検体情報とが一致しない場合、検体情報が一致しない旨を作業者Xに報知する。なお、別の実施形態に係る報知部52fは、上記の実施形態で示した報知部46(図2参照)と同様の機能を有することから、詳細な説明は省略する。
【0131】
記録部52gは、AR機器50のカメラ55で撮像される、検体Sの前処理が行われる現実空間の様子を記録する。また、記録部52gは、記録された撮像データを記憶部53に記憶する。なお、別の実施形態に係る記録部52gは、上記の実施形態で示した記録部47(図2参照)と同様の機能を有することから、詳細な説明は省略する。
【0132】
このように、別の実施形態では、スタンドアローン型のAR機器50において、制御部52および記憶部53が上記の実施形態に係る制御部40および記憶部30と同様の構成を有する。
【0133】
これにより、別の実施形態に係るAR機器50は、上記の実施形態で説明した各種の病理業務支援処理を実行可能である。したがって、別の実施形態によれば、病理業務を効率化することができる。
【0134】
なお、図14の例では、AR機器50に検体情報記憶部が設けられる例について示したが、本開示はかかる例に限られず、たとえば、検体情報記憶部がサーバ装置10(図2参照)の記憶部30(図2参照)に設けられていてもよい。
【0135】
<病理業務支援方法の処理手順>
つづいて、実施形態に係る病理業務支援方法の処理手順について、図15を参照しながら説明する。図15は、実施形態に係る病理業務支援システム1が実行する病理業務支援処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0136】
実施形態に係る病理業務支援処理では、最初に、サーバ装置10が、AR機器50のカメラ55の視野内に存在する前処理用部材を検出する(ステップS101)。そして、サーバ装置10は、カメラ55の視野内に存在する前処理用部材に印されるタグ情報を、カメラ55から取得する(ステップS102)。
【0137】
次に、サーバ装置10は、ステップS102の処理で取得されたタグ情報に付随する検体情報を、記憶部30から取得する(ステップS103)。そして、サーバ装置10は、ステップS103の処理で取得された検体情報を、AR機器50の表示部54において、かかる検体情報に付随するタグ情報が印される前処理用部材に重畳して表示する(ステップS104)。
【0138】
次に、サーバ装置10は、タグ情報が印されている前処理用部材に対して、タグ情報が印されていない前処理用部材が接近または接触しているか否かを判定する(ステップS105)。
【0139】
そして、タグ情報が印されていない前処理用部材が接近または接触している場合(ステップS105,Yes)、サーバ装置10は、タグ情報が印されていない前処理用部材に、接近または接触している前処理用部材の検体情報を重畳して表示する(ステップS106)。
【0140】
一方で、タグ情報が印されていない前処理用部材が接近または接触していない場合(ステップS105,No)、上述したステップS106の処理をスキップし、次のステップS107の処理に移行する。
【0141】
次に、サーバ装置10は、異なる検体情報が付与される前処理用部材同士が接近または接触しているか否かを判定する(ステップS107)。
【0142】
そして、異なる検体情報が付与される前処理用部材同士が接近または接触している場合(ステップS107,Yes)、サーバ装置10は、前処理部材同士の検体情報が一致しない旨を作業者Xに報知する(ステップS108)。
【0143】
一方で、異なる検体情報が付与される前処理用部材同士が接近または接触していない場合(ステップS107,No)、上述したステップS108の処理をスキップし、次のステップS109の処理に移行する。
【0144】
次に、サーバ装置10は、検体Sの前処理が終了しているか否かを判定する(ステップS109)。そして、検体Sの前処理が終了している場合(ステップS109,Yes)、一連の病理業務支援処理を終了する。一方で、検体Sの前処理が終了していない場合(ステップS109,No)、ステップS101の処理に戻る。
【0145】
また、サーバ装置10は、上述したステップS101~S108の処理と並行して、作業者Xからの合図に沿って、AR機器50のカメラ55で撮像される、検体Sの前処理が行われる現実空間の様子を記録する(ステップS110)。
【0146】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0147】
以上のように、実施形態に係る病理業務支援システム1は、病理診断業務を支援する病理業務支援システムにおいて、AR機器50と、サーバ装置10と、を備える。AR機器50は、現実空間を撮像するカメラ55と、現実空間に画像を重畳して表示する表示部54と、を有する。サーバ装置10は、AR機器50を制御する。また、サーバ装置10およびAR機器50の少なくとも一方は、タグ情報取得部42と、検体情報取得部43と、検体情報表示部44と、を有する。タグ情報取得部42は、カメラ55の視野内にあり、病理診断の対象となる検体Sを前処理する際に用いられる部材(前処理用部材)に印されるタグ情報をカメラ55から取得する。検体情報取得部43は、取得されたタグ情報に付随する検体Sに関する検体情報を取得する。検体情報表示部44は、表示部54において、タグ情報が印される部材(前処理用部材)に検体情報を重畳して表示する。これにより、病理業務を効率化することができる。
【0148】
また、実施形態に係る病理業務支援システム1において、AR機器50は、音声を出力する音声出力部(スピーカ57)をさらに有する。また、サーバ装置10およびAR機器50の少なくとも一方は、読上部45をさらに有する。読上部45は、タグ情報が印される部材(前処理用部材)に検体情報を重畳して表示する際に、検体情報を音声出力部(スピーカ57)から出力する。これにより、検体Sを前処理する際にかかる検体Sの取り違えを抑制することができる。
【0149】
また、実施形態に係る病理業務支援システム1において、サーバ装置10およびAR機器50の少なくとも一方は、報知部46をさらに有する。報知部46は、タグ情報が印される部材(前処理用部材)の検体情報と、タグ情報が印される別の部材(前処理用部材)の検体情報とが一致しない場合、検体情報が一致しない旨を作業者Xに報知する。これにより、前処理する際における検体Sの取り違えを抑制することができる。
【0150】
また、実施形態に係る病理業務支援システム1において、検体情報表示部44は、タグ情報が印される部材(前処理用部材)とタグ情報が印されていない部材(前処理用部材)とがカメラ55の視野内で接近または接触した際に、タグ情報が印されていない部材(前処理用部材)にタグ情報が印される部材(前処理用部材)の検体情報を重畳して表示する。これにより、カセット62に収容された検体Sが容器61から取り出されたものであることを作業者Xが確信することができる。
【0151】
また、実施形態に係る病理業務支援システム1において、検体情報表示部44は、タグ情報が印される部材(前処理用部材)とタグ情報が印されていない部材(前処理用部材)とがカメラ55の視野内で接近または接触した際に、タグ情報が印される部材(前処理用部材)とタグ情報が印されていない部材(前処理用部材)とがカメラ55の視野内で接近または接触した旨を報知した後に、タグ情報が印されていない部材(前処理用部材)にタグ情報が印される部材(前処理用部材)の検体情報を重畳して表示する。これにより、前処理用部材に紐付いた検体情報と同じ情報が別の前処理用部材に紐付こうとしていることを視覚的に認識しやすくすることができる。
【0152】
また、実施形態に係る病理業務支援システム1において、部材(前処理用部材)は、検体Sに関する病理診断の病理検査依頼書、検体Sを収容する容器61、検体Sを前処理するためのカセット62、および検体Sを前処理するためのピンセット63のうち少なくとも1つである。これにより、前処理する際における検体Sの取り違えを抑制することができる。
【0153】
また、実施形態に係る病理業務支援システム1において、タグ情報は、部材(前処理用部材)に印されるバーコードである。これにより、前処理用部材に簡便にタグ情報を印すことができる。
【0154】
また、実施形態に係る病理業務支援システム1において、AR機器50は、頭部装着型のAR機器である。これにより、検体Sの前処理において検体Sによって機器などが汚染されることを抑制することができる。
【0155】
また、実施形態に係るAR機器50は、現実空間を撮像するカメラ55と、現実空間に画像を重畳して表示する表示部54と、各部を制御する制御部52と、を備える。また、制御部52は、タグ情報取得部52bと、検体情報取得部52cと、検体情報表示部52dと、を有する。タグ情報取得部52bは、カメラ55の視野内にあり、病理診断の対象となる検体Sを前処理する際に用いられる部材(前処理用部材)に印されるタグ情報をカメラ55から取得する。検体情報取得部52cは、取得されたタグ情報に付随する検体Sに関する検体情報を取得する。検体情報表示部52dは、表示部54において、タグ情報が印される部材(前処理用部材)に検体情報を重畳して表示する。これにより、病理業務を効率化することができる。
【0156】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0157】
1 病理業務支援システム
10 サーバ装置
20 通信部
30 記憶部
31 検体情報記憶部
32 撮像データ記憶部
40 制御部
41 部材検出部
42 タグ情報取得部
43 検体情報取得部
44 検体情報表示部
45 読上部
46 報知部
47 記録部
50 AR機器
52 制御部
52a 部材検出部
52b タグ情報取得部
52c 検体情報取得部
52d 検体情報表示部
52e 読上部
52f 報知部
52g 記録部
53 記憶部
53a 検体情報記憶部
53b 撮像データ記憶部
54 表示部
55 カメラ(受取部の一例)
56 マイク(受取部の一例)
57 スピーカ(音声出力部の一例)
61 容器(部材の一例)
62 カセット(部材の一例)
63 ピンセット(部材の一例)
S 検体
X 作業者
図1
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