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特開2023-20745処理装置、プログラム、記録媒体および処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020745
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】処理装置、プログラム、記録媒体および処理方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20230202BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230202BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20230202BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20230202BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20230202BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/16 C
B60W40/08
B60W30/08
B60W40/02
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126282
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】小澤 富士典
(72)【発明者】
【氏名】飯澤 高志
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241CE05
3D241DD05Z
5H181AA01
5H181BB16
5H181CC04
5H181FF10
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181MB02
(57)【要約】
【課題】対象物の出現から運転者の対象物に対する危険回避動作の検出までの時間に基づいて、運転者の認知機能の衰えを判定する。
【解決手段】車両の周辺画像を取得する画像取得部10と、取得された周辺画像から対象物の出現を検知する検知部20と、車両の運転者の対象物に対する危険回避動作を検出する検出部30と、検知部20による対象物の出現から検出部30による運転者の対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測する計測部40と、計測部40の計測結果と、予め定めた閾値とから運転者の認知機能の衰えを判定する判定部50と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺画像を取得する画像取得部と、
該取得された前記周辺画像から対象物の出現を検知する検知部と、
前記車両の運転者の前記対象物に対する危険回避動作を検出する検出部と、
前記検知部による前記対象物の出現から前記検出部による前記運転者の前記対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測する計測部と、
該計測部の計測結果と、予め定めた閾値とから前記運転者の認知機能の衰えを判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記計測部の計測結果と、統計的な反応時間とから前記運転者の認知機能の衰えを判定することを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
車両走行におけるリスク要因を取得する取得部と、
前記取得部により検知された前記リスク要因と、前記判定部による判定結果とを紐づけて記憶する記憶部と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記リスク要因が前記車両の車体情報であることを特徴とする請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記リスク要因が前記車両の周辺における他の車両の状況であることを特徴とする請求項3に記載の処理装置。
【請求項6】
前記リスク要因が前記車両の走行時における天候であることを特徴とする請求項3に記載の処理装置。
【請求項7】
前記リスク要因が前記車両の走行時刻であることを特徴とする請求項3に記載の処理装置。
【請求項8】
前記リスク要因のうち、前記判定結果が得られていない前記リスク要因がある場合に、既に、前記リスク要因に対して判定されている他者の前記判定結果に基づいて、前記判定結果が得られていない前記リスク要因に対する前記判定結果を推定する推定部を備え、
前記判定部から、前記判定結果が得られていない前記リスク要因に対する前記判定結果が得られるまでは、前記推定部により推定された前記判定結果を一時的に前記判定部による前記判定結果とすることを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項9】
画像取得部と、検知部と、検出部と、計測部と、判定部と、を備えた処理装置における処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記画像取得部が、車両の周辺画像を取得する第1の工程と、
前記検知部が、該取得された前記周辺画像から対象物の出現を検知する第2の工程と、
前記検出部が、前記車両の運転者の前記対象物に対する危険回避動作を検出する第3の工程と、
前記計測部が、前記検知部による前記対象物の出現から前記検出部による前記運転者の前記対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測する第4の工程と、
前記判定部が、該計測部の計測結果と、予め定めた閾値とから前記運転者の認知機能の衰えを判定する第5の工程と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9のプログラムを格納する記録媒体。
【請求項11】
画像取得部と、検知部と、検出部と、計測部と、判定部と、を備えた処理装置における処理方法であって、
前記画像取得部が、車両の周辺画像を取得する第1の工程と、
前記検知部が、該取得された前記周辺画像から対象物の出現を検知する第2の工程と、
前記検出部が、前記車両の運転者の前記対象物に対する危険回避動作を検出する第3の工程と、
前記計測部が、前記検知部による前記対象物の出現から前記検出部による前記運転者の前記対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測する第4の工程と、
前記判定部が、該計測部の計測結果と、予め定めた閾値とから前記運転者の認知機能の衰えを判定する第5の工程と、
を備える処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、プログラム、記録媒体および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両を運転する運転者の認知度の低下が要因と考えられる事故事案が増加傾向にあり、社会問題となっている。こうしたことから、特に、高齢運転者を対象に、認知機能を指標とした運転適性検査が、運転免許証の更新時に実施されている。
【0003】
ところが、認知機能を指標とした運転適性検査では、検査間隔が長く、現状の認知機能を適切に把握できない。そのため、日常的な車両の運転に基づき、認知症リスクの観点から運転者の運転可否を判定することを目的に、道路情報と、車両の走行情報とに基づいて、車両の運転状況を判定すると共に、その運転状況が、認知機能が低下している場合に行われやすい所定の交通違反に該当するか否かを判定し、所定の交通違反に該当する場合、車両の運転者の情報と違反履歴に基づき、その運転者に認知症リスクがあるか否かを判定し、その運転者に認知症リスクがあると判定された場合には、その情報を出力する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、安全運転の支援をより適切に行うことを目的に、車両の状態を表す車両情報、車両の交通環境を表す環境情報、車両を運転するドライバの生体情報を取得し、車両情報、及び環境情報を用いて、車両が危険状態か否か判定し、車両情報、及び生体情報を用いて、ドライバの認知力状態を推定し、危険状態の判定結果、及び認知力状態の推定結果に基づいて、車両に搭載されている1つ以上の機器を制御して、安全運転を支援するための刺激をドライバに与える技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-124975号公報
【特許文献2】特開2019-200544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、運転者の運転状況が、認知機能が低下している場合に行われやすい所定の交通違反に該当するか否かを判定し、所定の交通違反に該当する場合、車両の運転者の情報と違反履歴に基づき、その運転者に認知症リスクがあるか否かを判定している。
つまり、特許文献1に記載の技術では、運転者の運転状況が、認知機能が低下している場合に行われやすい所定の交通違反に該当していない場合には、その運転者の認知症リスクについては判断されない。
しかしながら、例えば、認知機能が著しく衰えている場合には、運転者の運転状況が、認知機能が低下している場合に行われやすい所定の交通違反に該当していない場合であっても、事故を誘発させる可能性が非常に高いにも拘わらず、その対応手段が講じられていない。
【0007】
特許文献2に記載の技術では、車両情報、及び生体情報を用いて、ドライバの認知力状態を推定することが記載されているが、どのようにドライバの認知力状態を推定するのかについての具体的な手法は示されておらず、また、認知力の回復に関して、多く記載されていることから、特許文献2に記載の技術におけるドライバの認知力状態を推定とは、平時においては、十分な認知力を有する運転者が眠気や疲労、注意力の減退に伴い、一時的に、認知力が低下している場合の認知状態を推定するものであって、平時において、認知力が衰えている運転者の認知力を把握するものでない。
【0008】
そのため、特許文献1および特許文献2の技術では、運転者の認知機能の衰えを適切に判定することができないという問題があった。そこで、本発明が解決しようとする課題には、上述した問題が一例として挙げられる。
【0009】
本発明は、上述の一例として挙げられた問題に鑑みてなされたものであり、対象物の出現から運転者の対象物に対する危険回避動作の検出までの時間に基づいて、運転者の認知機能の衰えを判定する処理装置、プログラム、記録媒体および処理方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、車両の周辺画像を取得する画像取得部と、該取得された前記周辺画像から対象物の出現を検知する検知部と、前記車両の運転者の前記対象物に対する危険回避動作を検出する検出部と、前記検知部による前記対象物の出現から前記検出部による前記運転者の前記対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測する計測部と、該計測部の計測結果と、予め定めた閾値とから前記運転者の認知機能の衰えを判定する判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項9に記載の発明は、画像取得部と、検知部と、検出部と、計測部と、判定部と、を備えた処理装置における処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記画像取得部が、車両の周辺画像を取得する第1の工程と、前記検知部が、該取得された前記周辺画像から対象物の出現を検知する第2の工程と、前記検出部が、前記車両の運転者の前記対象物に対する危険回避動作を検出する第3の工程と、前記計測部が、前記検知部による前記対象物の出現から前記検出部による前記運転者の前記対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測する第4の工程と、前記判定部が、該計測部の計測結果と、予め定めた閾値とから前記運転者の認知機能の衰えを判定する第5の工程と、をコンピュータに実行させるためのプログラムであることを特徴とする。
【0012】
請求項11に記載の発明は、画像取得部と、検知部と、検出部と、計測部と、判定部と、を備えた処理装置における処理方法であって、前記画像取得部が、車両の周辺画像を取得する第1の工程と、前記検知部が、該取得された前記周辺画像から対象物の出現を検知する第2の工程と、前記検出部が、前記車両の運転者の前記対象物に対する危険回避動作を検出する第3の工程と、前記計測部が、前記検知部による前記対象物の出現から前記検出部による前記運転者の前記対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測する第4の工程と、前記判定部が、該計測部の計測結果と、予め定めた閾値とから前記運転者の認知機能の衰えを判定する第5の工程と、を備える処理方法であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1に係る処理装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施例1に係る処理装置の記憶部に格納された判定閾値を例示した図である。
図3】本発明の実施例1に係る処理装置の記憶部に格納されるデータベースを例示した図である。
図4】本発明の実施例1に係る処理装置の処理フロー図である。
図5】本発明の実施例2に係る処理装置の構成を示す図である。
図6】本発明の実施例2に係る処理装置の記憶部に格納されるデータベースを例示した図である。
図7】本発明の実施例2に係る処理装置における推定部の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本実施形態に係る処理装置は、画像取得部と、検知部と、検出部と、計測部と、判定部と、を含んで構成されている。
【0015】
画像取得部は、例えば、車両内部に配置された撮像装置から車両の周辺画像を取得する。ここで、撮像装置は、車両前方(走行方向)の周辺画像を撮像するビデオカメラ等であってもよいし、車両前方、車両後方、車両の左右方向の周辺画像を撮像する個別のビデオカメラ等であってもよい。また、車両の中央部に配置された360度カメラであってもよい。
【0016】
検知部は、画像取得部において取得された車両の周辺画像から対象物の出現を検知する。ここで、対象物とは、例えば、他車両や人、動物等の動的な対象物、ガードレールや道路標識、外壁等の障害物のような静的な対象物を例示することができる。
【0017】
検出部は、車両の運転者の対象物に対する危険回避動作を検出する。ここで、危険回避動作としては、例えば、急ブレーキや急ハンドル等を例示することができる。また、検出部は、運転者の危険回避動作を、例えば、車両のECUからの信号により検出する。
【0018】
計測部は、検知部による対象物の出現から検出部による運転者の対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測する。計測部は、例えば、タイマーで構成され、計測結果は、後述する判定部に出力される。
【0019】
判定部は、計測部の計測結果と、予め定めた閾値とから運転者の認知機能の衰えを判定する。ここで、予め定めた閾値としては、統計的な反応時間を例示することができる。なお、統計的な反応時間とは、予め認知機能レベルが明らかな人が、対象物の出現から運転者の対象物に対する危険回避動作までに要した時間を統計的に分析して得られた認知機能レベルごとの反応時間を例示することができる。
【0020】
上述のように、本実施形態に係る処理装置の検知部は、画像取得部において取得された車両の周辺画像から対象物、例えば、他車両や人、動物等の動的な対象物、ガードレールや道路標識、外壁等の障害物のような静的な対象物の出現を検知する。そのため、計測部は、車両の通常走行時に想定され得るあらゆる対象物の出現から運転者の対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測することができる。
【0021】
また、本実施形態に係る処理装置の判定部は、計測部の計測結果と、予め定めた閾値としての予め認知機能レベルが明らかな人が、対象物の出現から運転者の対象物に対する危険回避動作までに要した時間を統計的に分析して得られた認知機能レベルごとの反応時間とから運転者の認知機能の衰えを判定する。そのため、車両の通常走行時に想定され得るあらゆる対象物の出現に対する運転者の現在の認知機能レベルを的確に判定することができる。
【0022】
<実施例1>
図1から図4を用いて、本実施例1について説明する。
【0023】
<処理装置1の構成>
図1に示すように、本実施例に係る処理装置1は、画像取得部10と、検知部20と、検出部30と、計測部40と、判定部50と、取得部60と、記憶部70と、を含んで構成されている。
【0024】
画像取得部10は、例えば、車室内に設けられ、車両の走行方向、左右方向を含む方向の画像を撮像する撮像装置から、車両の周辺画像を取得する。
撮像装置としては、例えば、ビデオカメラやドライブレコーダであり、少なくとも、車両走行時の画像を撮像する装置を例示することができる。
【0025】
検知部20は、画像取得部10において取得された車両の周辺画像から対象物の出現を検知する。具体的には、例えば、画像取得部10において取得された車両の周辺画像を画像解析して、撮像画角の領域外から現れる対象物を検知する。検知部20は、対象物の種別によらず、対象物の出現タイミングを後述する計測部40に出力する。
ここで、対象物とは、例えば、他車両や人、動物等の動的な対象物に限らず、ガードレールや道路標識、外壁等の障害物のような静的な対象物を含む、車両走行に影響を及ぼす可能性を有する物である。
【0026】
検出部30は、車両の運転者の対象物に対する危険回避動作を検出する。
危険回避動作は、対象物の出現を検知することにより生じた危険回避行動であり、例えば、急ブレーキ操作や急ハンドル操作等を例示することができる。
また、検出部30は、運転者の危険回避動作を、例えば、車両のECUからの信号により検出する。より具体的には、例えば、検出部30は、車両に搭載された加速度センサからのセンサ出力信号をモニタする車両のECUからの信号により、短時間に急激な加減速を感知した場合や車両のステアリング近傍に搭載された舵角センサからのセンサ出力信号をモニタする車両のECUからの信号により、短時間に急激な舵角の変化を感知した場合等に、車両の運転者の対象物に対する危険回避動作を検出する。
なお、検出部30における検出信号は、後述する計測部40に出力される。
【0027】
計測部40は、検知部20による対象物の出現から検出部30による運転者の対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測する。
具体的には、計測部40は、例えば、タイマー等により構成され、検知部20における検知信号の入力によりタイマーを起動し、検出部30における検知信号を入力するまでの時間を計測する。
なお、計測部40の計測結果は、後述する判定部50に出力される。
【0028】
判定部50は、計測部40の計測結果と、予め定めた閾値とから運転者の認知機能の衰えを判定する。ここで、予め定めた閾値としては、統計的な反応時間を例示することができる。なお、統計的な反応時間とは、予め認知機能レベルが明らかな人が、対象物の出現から運転者の対象物に対する危険回避動作までに要した時間を統計的に分析して得られた認知機能レベルごとの反応時間を例示することができる。
なお、研究結果によれば、反応時間は、予期せぬ事象に対する驚愕反応時間と、予め経験則により予測できる出来事に対する予測反応時間とに大別され、これらの統計的な反応時間は、「驚愕反応時間」が1.5秒、「予測反応時間」が0.75秒とされている。そのため、本実施例における判定部50は、図2に示すように、これらの指標に基づいて、判定結果をSレベル、Aレベル、Bレベルの3段階で判定する。
一方で、後述するリスク要因によっても反応時間は、影響を受けることから、各リスク要因ごとに重みを設定し、数式により数値化し、同条件における他の運転者の反応時間から、判定対象者の判定レベルを算出するようにしてもよい。
また、重みについては、図3に示すようなデータを膨大に収集して、各リスク要因が反応時間に与える影響を分析し、リスク要因ごとの重みを導き出すようにしてもよい。
判定部50の判定結果は、計測部40の計測結果とともに、後述する記憶部70に格納される。
【0029】
取得部60は、外部装置から得られる車両走行におけるリスク要因を取得する。
ここで、車両走行におけるリスク要因とは、車両の車体情報や車両の周辺における他の車両の状況、車両の走行時における天候、車両の走行時刻等や属性情報等を例示することができる。
【0030】
記憶部70は、取得部60により検知されたリスク要因と、判定部50による判定結果とを紐づけて記憶する。具体的には、図3に示すように、例えば、判定日時、車体情報としての車幅余裕度情報、車両の周辺における他の車両の状況としての車両走行量、車両の走行時における天候情報、車両の走行時刻としての走行時間帯情報等を判例レベルと紐付けて記憶する。ここで、「車幅余裕度」とは、道幅に対する車幅の余裕度をいい、例えば、「広い」、「中程度」、「狭い」の3段階で示される尺度である。
なお、上記情報に加え、運転者の属性情報としての性別、年齢、居住地等を付加してもよい。
【0031】
<処理装置1の処理>
図2から図4を用いて、本実施例に係る処理装置1の処理について説明する。
【0032】
図4に示すように、画像取得部10は、車両の周辺画像を取得する(ステップS110)。画像取得部10において取得された車両の周辺画像は、検知部20に出力される。
【0033】
検知部20は、画像取得部10において取得された周辺画像から対象物の出現を検知する。例えば、検知部20は、車両右前方からの歩行者の飛び出しを画像解析により検出する(ステップS120)。検知部20の検知情報、具体的には、歩行者の出現タイミングは、計測部40に出力される。
【0034】
検出部30は、車両の運転者の対象物に対する危険回避動作を検出する。具体的には、対象物としての歩行者の飛び出しに対する運転者の危険回避動作としての急ハンドル操作のタイミングを検出する(ステップS130)。検出部30の検出情報、具体的には、急ハンドル操作のタイミングは、計測部40に出力される。
【0035】
計測部40は、検知部20による対象物の出現から検出部30による運転者の対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測する(ステップS140)。計測部40の計測結果は、判定部50に出力される。
【0036】
判定部50は、計測部40の計測結果と、予め定めた閾値とから運転者の認知機能の衰えを判定する(ステップS150)。具体的には、判定部50は、計測部40の計測結果を、例えば、図2に示すチャートに当てはめて、認知機能レベルを判断する。つまり、計測部40の計測結果tが、「t≦0.75秒」である場合には、認知機能レベルを「S」と判定し、「0.75秒<t≦1.5秒」である場合には、認知機能レベルを「A」と判定し、「t>1.5秒」である場合には、認知機能レベルを「B」と判定して、一連の処理を終了する。
【0037】
なお、判定部50の判定結果は、取得部60が外部装置から取得する判定時のリスク要因とともに、図3に示すようなデータベースの形式で記憶部70に記憶される。
【0038】
<作用・効果>
以上、説明したように、本実施例に係る処理装置1においては、検知部20は、画像取得部10において取得された車両の周辺画像から対象物の出現を検知し、検出部30は、車両の運転者の対象物に対する危険回避動作を検出する。そして、計測部40は、検知部20による対象物の出現から検出部30による運転者の対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測し、判定部50は、計測部40の計測結果と、予め定めた閾値とから運転者の認知機能の衰えを判定する。
つまり、検知部20は、画像取得部10において取得された車両の周辺画像から対象物、例えば、他車両や人、動物等の動的な対象物、ガードレールや道路標識、外壁等の障害物のような静的な対象物の出現を検知する。
そのため、計測部40は、車両の通常走行時に想定され得るあらゆる対象物の出現から運転者の対象物に対する危険回避動作の検出までの時間を計測することができる。
また、判定部50は、計測部40の計測結果と、予め定めた閾値としての予め認知機能レベルが明らかな人が、対象物の出現から運転者の対象物に対する危険回避動作までに要した時間を予め定めた閾値に基づいて評価し、運転者の認知機能の衰えを判定する。
そのため、車両の通常走行時に想定され得るあらゆる対象物の出現に対する運転者の現在の認知機能レベルを的確に判定することができる。
【0039】
また、本実施例に係る処理装置1において、判定部50は、計測部40の計測結果と、統計的な反応時間とから運転者の認知機能の衰えを判定する。
ここで、統計的な反応時間とは、学術研究に基づき得られた反応時間である。
そのため、判定部50は、統計的、学術的な分析により得られた認知機能レベルごとの反応時間により、運転者の認知機能の衰えを判定することから、車両の通常走行時に想定され得るあらゆる対象物の出現に対する運転者の現在の認知機能レベルを定性的に、的確な判定をすることができる。
【0040】
また、本実施例に係る処理装置1は、さらに、車両走行におけるリスク要因を取得する取得部60と、取得部60により検知されたリスク要因と、判定部50による判定結果とを紐づけて記憶する記憶部70と、備える。
具体的には、記憶部70は、例えば、判定日時、車体情報としての車幅余裕度情報、車両の周辺における他の車両の状況としての車両走行量、車両の走行時における天候情報、車両の走行時刻としての走行時間帯情報等を判定部50の判定結果である判例レベルと紐付けて記憶する。
つまり、記憶部70に格納される上記データベースを解析すれば、どのようなリスク要因が運転者の認知機能の衰えに対して、どの程度の影響を与えるのかを把握することができるため、この情報を予め定めた閾値に反映することによって、さらに、正確に、運転者の認知機能の衰え度合いを判定することができる。
【0041】
また、記憶部70には、判定日時を付したデータがデータベース形式で格納されることから、同一の運転者に関する判定日時のみが異なる複数のデータも含まれる。
そのため、同一の運転者に対する同条件時の判定結果の推移を検証することにより、当該運転者の認知機能レベルの低下度合い等を正確に把握することができる。
【0042】
<実施例2>
図5から図7を用いて、本実施例2について説明する。
【0043】
<処理装置1Aの構成>
図5に示すように、本実施例に係る処理装置1Aは、画像取得部10と、検知部20と、検出部30と、計測部40と、判定部50と、取得部60と、記憶部70と、推定部80と、を含んで構成されている。
なお、実施例1と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
【0044】
推定部80は、リスク要因のうち、判定部50による判定結果が得られていないリスク要因がある場合に、既に、このリスク要因に対して判定されている他者の判定部50による判定結果に基づいて、判定部50による判定結果が得られていないリスク要因に対する判定部50による判定結果を推定する。
【0045】
具体的には、記憶部70に、図6にしめすようなデータベースが格納されている場合、運転者D2について判定日時が示されていない下記4つについて、推定部80は、この下記4つに対して判定されている他者としての運転者D1の判定部50による判定結果に基づいて、判定部50による判定結果が得られていない運転者D2の下記4つに対する判定部50による判定結果を推定する。
【0046】
<処理装置1Aの処理>
図6図7を用いて、本実施例に係る処理装置1Aの処理について説明する。
【0047】
図7に示すように、推定部80は、記憶部70に格納されたデータベース内のデータから、判定結果を推定する運転者と類似のデータを有する他の運転者のデータを検索する(ステップS210)。
図6を用いて説明すると、今、判定結果を推定する運転者を「運転者D2」とすると、「運転者D2」において、判定結果が出ているのは、「車幅余裕度;中程度」、「走行量;普通」、「天候;晴」、「時間帯;昼」の条件では、判定レベルが「S」であり、「車幅余裕度;中程度」、「走行量;少」、「天候;晴」、「時間帯;昼」の条件では、判定レベルが「S」であるため、同条件で同程度の判定レベルである運転者のデータとして、「運転者D1」のデータを類似のデータとして検索する。
【0048】
次いで、推定部80は、「運転者D2」のデータと、「運転者D1」のデータとの類似度を判定する(ステップS220)。ここでは、類似度が予め定められた所定値以上であるか否かの判定を行う。なお、予め定められた所定値とは、判定レベルに対する精度等の諸条件により、任意に定めるようにしてもよい。
【0049】
推定部80が、類似度が所定値よりも低いと判定した場合(ステップS220の「NO」)には、処理をステップS220に戻し、次の類似のデータを検索する。
【0050】
一方で、推定部80が、類似度が所定値以上であると判定した場合(ステップS220の「YES」)には、検索したデータを一時データとして、記憶部70に格納し(ステップS230)、処理をステップS240に進める。
【0051】
推定部80は、記憶部70に格納した一時データに判定部50による判定結果データが含まれているのか否かを判定する(ステップS240)。
そして、推定部80は、記憶部70に格納した一時データに判定部50による判定結果データが含まれていないと判定した場合(ステップS240の「NO」)には、処理をステップS220に戻し、次の類似のデータを検索する。
【0052】
一方で、推定部80は、記憶部70に格納した一時データに判定部50による判定結果データが含まれていると判定した場合(ステップS240の「YES」)には、一時データで、判定結果を推定する運転者の判定結果を補完して(ステップS250)、すべての処理を終了する。
【0053】
<作用・効果>
以上、説明したように、本実施例に係る処理装置1Aにおいて、推定部80は、リスク要因のうち、判定部50による判定結果が得られていないリスク要因がある場合に、既に、このリスク要因に対して判定されている他者の判定部50による判定結果に基づいて、判定部50による判定結果が得られていないリスク要因に対する判定部50による判定結果を推定する。
そのため、当該処理装置1Aにおける判定結果を運転制御等に用いる場合であっても、運転制御を有効に機能させることができる。
なお、推定部80によるデータ補完を行った後に、同一の条件における判定部50による判定結果が得られた場合には、補完データを真値に置き換え、補完データと真値との差分をフィードバックして、推定部80による推定精度を高めるようにしてもよい。
【0054】
<変形例1>
実施例2においては、記憶部70に格納されたデータベースのデータから所定値以上の類似度を有するデータ検索し、検索したデータに基づいて、判定部50による判定結果を補完する手法について説明した。
しかしながら、判定部50による判定結果を数値データで管理する方式において、データベースに膨大なデータが蓄積されている場合には、ニューラルネットワークを用いた機械学習を実行することにより判定部50による判定結果を導き出してもよい。
この場合には、抽出された判定結果の数値データに対して、ニューラルネットワークが導き出したスコアを参照して、更に、判定結果の精度を向上させてもよい。
【0055】
<変形例2>
実施例1においては、判定部50は、計測部40の計測結果と、統計的な反応時間とから運転者の認知機能の衰えを判定すると説明した。
しかしながら、運転者が対象物を見逃した場合等には、計測部40の計測結果が想定の範囲よりもかなり長くなり、当該計測結果に基づいた判定結果は、実態を反映しないため、このような場合は、判定部50による判定処理を中止してもよいし、計測部40からの計測結果の送信を制限するようにしてもよい。
また、画像取得部10が取得する画像データだけでなく、運転者の視線の動きを検知するための機能ブロックを追加し、双方の画像データに基づいて、運転者の視線が対象物を捉えていると判断できる場合にのみ、判定部50による判定処理を実行するようにしてもよい。
【0056】
<変形例3>
また、通常走行時の車両周辺の画像データと車両の速度データとから、車両が他車両の流れに沿って走行しているかを判定することにより、運転者の車両走行時における注意力を判定し、この判定要素を判定部50における判定処理に反映させるようにしてもよい。
一般に、車両が他車両の流れに沿わず、ゆっくりとノロノロ走行している場合には、認知機能が仮に低下していても、実際よりも高い判定結果が得られることも想定されるが、上記のように、運転者の車両走行時における注意力も判定するようにすることにより、より現実的な判定結果を得ることができる。
【0057】
<変形例4>
また、例えば、夜間や降雨時等辺りが暗い条件において、判定部50における判定結果が、昼間や晴れの時に比べて、相当程度劣る場合には、単に、認知機能だけではなく、暗所視認性の低下が原因であることも考えられる。
このような場合には、判定部50は、暗所視認性の低下をも考慮に入れて、判定を行うようにしてもよい。
また、暗所視認性の低下が疑われる場合には、他の装置を介して、運転者にその旨を報知してもよい。
さらに、暗所視認性に限らず、判定部50の判定結果が明らかに悪化していなくとも、過去の同一人の判定結果に対して、ある条件下において、判定結果の悪化が認められる場合には、注意喚起を行ってもよい。
【0058】
なお、処理装置1、1Aの処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを推定装置に読み込ませ、実行することによって本発明の処理装置1、1Aを実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0059】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページの提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0060】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0061】
以上、この発明の実施形態および実施例につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態あるいは実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1;処理装置
10;画像取得部
20;検知部
30;検出部
40;計測部
50;判定部
60;取得部
70;記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7