(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020756
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】伸縮アーム装置
(51)【国際特許分類】
B25J 18/02 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B25J18/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126302
(22)【出願日】2021-07-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 令和2年12月25日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/channel/UCkPjO0sVM0FMDDu1Pvkfgkg/featured ウェブサイトの掲載日 令和2年12月25日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=_yRAsaY6KnY ウェブサイトの掲載日 令和3年1月19日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=x6WfndmN_h4 ウェブサイトの掲載日 令和3年5月28日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=-LaaTSB464I ウェブサイトの掲載日 令和3年5月28日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=xTo8NVpBxsc ウェブサイトの掲載日 令和3年5月28日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=vb3WH7m1CEE ウェブサイトの掲載日 令和3年6月1日 ウェブサイトのアドレス https://cutlandjapan.co.jp/ https://cutlandjapan.co.jp/cara-curi-mark2.html 発行日 令和3年1月20日 刊行物 日刊工業新聞 令和3年1月20日日刊,第14面 発行日 令和3年1月20日 刊行物 日刊工業新聞 令和3年1月20日日刊 第6面 発行日 令和3年2月1日 刊行物 溶接新報 令和3年2月1日日刊,第6面 展示会開催日 令和3年1月20日から令和3年1月22日まで 開催した場所 東京ビックサイト「第5回ロボデックス」 展示会開催日 令和3年7月2日 公開した場所 大田区産業プラザ(PiO)「大田区加工技術展示商談会」 https://www.pio-ota.jp/ota-tech/2021/exhibitors/
(71)【出願人】
【識別番号】512057460
【氏名又は名称】株式会社 カットランドジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS11
3C707BT01
3C707CU03
3C707HS27
3C707HT22
3C707HT24
3C707HT25
3C707HT30
3C707MT07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アームに偏荷重が掛かり難く、コンパクトで、ハンドを自在且つ確実に回動させることができるロボットアームを提供する。
【解決手段】第一モータのみを駆動させると、アーム部が第一水平軸を中心に回動するとともに、第一乃至第三入力ギアに対して第一水平軸に伝達されたトルクと同方向同回転数のトルクが伝達されるので、第一乃至第三中継ギアは自転しない。第一モータと第二乃至第四モータのいずれか又は全て同時に駆動させた場合、第一水平軸を回転させるとともに、第一乃至第三入力ギアに対して第一水平軸に伝達されたトルクと差動があるトルクが伝達されるように構成されるので、基体の第一乃至第四モータによりアーム部を第一水平軸を中心に回動させ、その伸縮や手首部の回動に必要なトルクを伝達でき、手首部やアーム部にモータを設置する必要がなく、アーム部に偏荷重が掛かり難く、コンパクトで、ハンド部を自在且つ確実に回動させられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、該基体に連結された伸縮可能なアーム部と、該アーム部の先端側に連結された手首部を有する伸縮アーム装置であって、
前記基体は、無通電時に回転しないように構成された第一乃至第四モータ、回動可能に軸支された第一水平軸、及び該第一水平軸上に回転可能に配設された第一乃至第三入力ギアを具え、
前記アーム部は、前記第一水平軸と連結されており、前記アーム部に軸支され、前記第一入力ギアからトルクが伝達される第一中継ギアを具えた前記第一水平軸と平行な第二水平軸と、前記第二水平軸上に回転可能に配設された第二・第三中継ギアを具え、
前記第一モータのみが駆動したとき、前記第一水平軸を回転させるとともに、前記第一乃至第三入力ギアに対して、前記第一水平軸に伝達されたトルクと同方向同回転数のトルクを伝達し、
前記第二モータのみが駆動したとき、前記第一入力ギアにトルクが伝達され、
前記第三モータのみが駆動したとき、前記第二・第三入力ギアに同方向のトルクが伝達され、
前記第四モータのみが駆動したとき、前記第二・第三入力ギアに逆方向のトルクが伝達され、
前記第一モータと前記第二乃至第四モータのいずれか又は全てが同時に駆動したとき、前記第一水平軸を回転させるとともに、前記第一乃至第三入力ギアに対して、前記第一水平軸に伝達されたトルクと差動があるトルクが伝達されるように構成されている、
伸縮アーム装置。
【請求項2】
前記基体が、
第一かさ歯車、該第一かさ歯車に対して相対回転可能且つ対向する第一対向かさ歯車、前記第一かさ歯車及び第一対向かさ歯車と噛合う第一ピニオンギア、並びに、前記第一ピニオンギアを軸支し、前記第一かさ歯車及び第一対向かさ歯車と相対回転可能に設けられた第一ピニオンキャリアを具えた第一デファレンシャルギア機構、
第二かさ歯車、該第二かさ歯車に対して相対回転可能且つ対向する第二対向かさ歯車、前記第二かさ歯車及び第二対向かさ歯車と噛合う第二ピニオンギア、並びに、前記第二ピニオンギアを軸支し、前記第二かさ歯車及び第二対向かさ歯車と相対回転可能に設けられた第二ピニオンキャリアを具えた第二デファレンシャルギア機構、
第三かさ歯車、該第三かさ歯車に対して相対回転可能且つ対向する第三対向かさ歯車、前記第三かさ歯車及び第三対向かさ歯車と噛合う第三ピニオンギア、並びに、前記第三ピニオンギアを軸支し、前記第三かさ歯車及び第三対向かさ歯車と相対回転可能に設けられた第三ピニオンキャリアを具えた第三デファレンシャルギア機構、
第一サンギア、該第一サンギアに対して相対回転可能且つ同軸上の第一リングギア、前記第一サンギア及び前記第一リングギアに噛合う第一プラネタリギア、並びに、該第一プラネタリギアを軸支し、前記第一サンギア及び第一リングギアと相対回転可能に設けられた第一プラネタリキャリアを具えた第一遊星歯車機構、
第二サンギア、該第二サンギアに対して相対回転可能且つ同軸上の第二リングギア、前記第二サンギア及び前記第二リングギアに噛合う第二プラネタリギア、並びに、該第二プラネタリギアを軸支し、前記第二サンギア及び第二リングギアと相対回転可能に設けられた第二プラネタリキャリアを具えた第二遊星歯車機構を具え、
前記第一対向かさ歯車からのトルクが前記第一入力ギアに伝達され、
前記第二対向かさ歯車からのトルクが前記第二入力ギアに伝達され、
前記第三対向かさ歯車からのトルクが前記第三入力ギアに伝達され、
前記第一プラネタリキャリアからのトルクが前記第二ピニオンキャリアに伝達され、
前記第二プラネタリキャリアからのトルクが前記第三ピニオンキャリアに伝達され、
前記第一モータからのトルクが、前記第一水平軸に伝達されるとともに、前記第一乃至第三かさ歯車に伝達され、
前記第二モータからのトルクが、前記第一ピニオンキャリアに伝達され、
前記第三モータからのトルクが、前記第一・第二サンギアに同方向で伝達され、
前記第四モータからのトルクが、前記第一・第二リングギアに逆方向で伝達されるように構成されている、
請求項1の伸縮アーム装置。
【請求項3】
前記第一中継ギアに伝達されたトルクによって、前記アーム部が伸縮するように構成されている、請求項1又は2の伸縮アーム装置。
【請求項4】
前記手首部は、基部と、該基部に回転自在に設けられた第一手首部かさ歯車と、該第一手首部かさ歯車と対向して前記基部に回転自在に設けられた第二手首部かさ歯車と、前記第一手首部かさ歯車と第二手首部かさ歯車に噛合うハンド部かさ歯車と、該ハンド部かさ歯車に連結されているハンド部取付部を具え、
前記第二中継ギアからのトルクが前記第一手首部かさ歯車に、前記第三中継ギアからのトルクが前記第二手首部かさ歯車にそれぞれ伝達されるように構成されている、請求項1から3のいずれかの伸縮アーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮可能なアーム部に手首部が装着されたロボットアーム装置(以下、「伸縮アーム装置」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の駆動装置のトルクによって、アーム部を伸縮させ、アーム部の先に、ワークを把持等するためのハンド部が取付けられるロボットアーム装置が開発されている。アーム部とハンド部の間には、ハンド部をアーム部に対して回動させる手首部が設けられることもある。その例として、以下に挙げるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-203289号公報
【特許文献2】特開2019-196775号公報
【0004】
特許文献1の装置は、ワークを把持するためのハンド部がアーム部に連結されたロボットアーム装置であって、アーム部の基端側に位置するモータが駆動することにより、ワイヤが送り出され、又は、巻き取られ、アーム部を伸縮させるというものである。
【0005】
特許文献2の装置は、ハンド部がアーム部に連結されたロボットアーム装置であって、モータによって、連結された複数のプレートから構成される第1コマ列と連結された複数の断面コ字状部材で構成される第二コマ列が送り出され、又は巻き戻され、第1コマ列と第2コマ列が接合し又は分解することにより、アーム部を伸縮させるというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の伸縮アーム装置は、基端側に設置されるモータによって、アーム部を伸縮させ、ハンド部の把持機構を作動させることができるが、ハンド部を回動させる手首部は設けられておらず、ハンド部を自在に回動させることはできない。
【0007】
一方、特許文献2の伸縮アーム装置は、第1コマ列と第2コマ列が接合し又は分解するという構成であるため、第1コマ列と第2コマ列を収納しておくスペースを要するから、大型化する傾向にあり、手首部を回動させるための駆動装置が手首部に連結されるため、アーム部に偏荷重が掛かり易く、手首部も大型化してしまう傾向にある。
【0008】
そこで、本発明は、前述した点に鑑み、アーム部に偏荷重が掛かり難く、コンパクトで、ハンド部を自在且つ確実に回動させることができる伸縮アーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基体と、該基体に連結された伸縮可能なアーム部と、該アーム部の先端側に連結された手首部を有する伸縮アーム装置であって、
前記基体は、無通電時に回転しないように構成された第一乃至第四モータ、回動可能に軸支された第一水平軸、及び該第一水平軸上に回転可能に配設された第一乃至第三入力ギアを具え、
前記アーム部は、前記第一水平軸と連結されており、前記アーム部に軸支され、前記第一入力ギアからトルクが伝達される第一中継ギアを具えた前記第一水平軸と平行な第二水平軸と、前記第二水平軸上に回転可能に配設された第二・第三中継ギアを具え、
前記第一モータのみが駆動したとき、前記第一水平軸を回転させるとともに、前記第一乃至第三入力ギアに対して、前記第一水平軸に伝達されたトルクと同方向同回転数のトルクを伝達し、
前記第二モータのみが駆動したとき、前記第一入力ギアにトルクが伝達され、
前記第三モータのみが駆動したとき、前記第二・第三入力ギアに同方向のトルクが伝達され、
前記第四モータのみが駆動したとき、前記第二・第三入力ギアに逆方向のトルクが伝達され、
前記第一モータと前記第二乃至第四モータのいずれか又は全てが同時に駆動したとき、前記第一水平軸を回転させるとともに、前記第一乃至第三入力ギアに対して、前記第一水平軸に伝達されたトルクと差動があるトルクが伝達されるように構成されている伸縮アーム装置によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明の伸縮アーム装置によれば、上記構成を具えることにより、第一モータを駆動させてアーム部を第一水平軸を中心に回動させることができる。ここで、第一モータのみを駆動させたとき、第一乃至第三入力ギアに対して、第一水平軸に伝達されたトルクと同方向同回転数のトルクが伝達されるので、第一乃至第三中継ギアは自転しない。逆に、第一モータと第二乃至第四モータのいずれか又は全てを同時に駆動させたときは、第一水平軸を回転させるとともに、第一乃至第三入力ギアに対して、第一水平軸に伝達されたトルクと差動があるトルクが伝達されるように構成されている。すなわち、基体に設けた第一乃至第四モータによって、アーム部を第一水平軸を中心に回動させることができ、アーム部の伸縮や手首部の回動に必要なトルクを伝達させることができるので、手首部やアーム部にモータを設置する必要がない。よって、アーム部に偏荷重が掛かり難く、コンパクトで、ハンド部を自在且つ確実に回動させることができる。
【0011】
また、基体が、第一乃至第三デファレンシャルギア機構と第一・第二遊星歯車機構を具え、第一対向かさ歯車からのトルクが第一入力ギアに伝達され、第二対向かさ歯車からのトルクが第二入力ギアに伝達され、第三対向かさ歯車からのトルクが第三入力ギアに伝達され、第一プラネタリキャリアからのトルクが第二ピニオンキャリアに伝達され、第二プラネタリキャリアからのトルクが第三ピニオンキャリアに伝達され、第一モータからのトルクが、第一水平軸に伝達されるとともに、第一乃至第三かさ歯車に伝達され、第二モータからのトルクが、第一ピニオンキャリアに伝達され、第三モータからのトルクが、第一・第二サンギアに同方向で伝達され、第四モータからのトルクが、第一・第二リングギアに逆方向で伝達されるように構成すれば、第一乃至第四モータの複雑な制御が不要な伸縮アーム装置とすることができる。
【0012】
また、第一中継ギアに伝達されたトルクによって、アーム部が伸縮するように構成すれば、アーム部の伸縮や手首部の回動の制御がし易い。
【0013】
また、手首部は、基部と、該基部に回転自在に設けられた第一手首部かさ歯車と、第一手首部かさ歯車と対向して基部に回転自在に設けられた第二手首部かさ歯車と、第一手首部かさ歯車と第二手首部かさ歯車に噛合うハンド部かさ歯車と、ハンド部かさ歯車に連結されているハンド部取付部を具え、第二中継ギアからのトルクが第一手首部かさ歯車に、第三中継ギアからのトルクが第二手首部かさ歯車にそれぞれ伝達されるように構成すれば、ハンド部が取付けられるハンド部取付部を第一手首部かさ歯車と第二手首部かさ歯車の軸とハンド部かさ歯車の軸をそれぞれ中心として回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】第一モータからのトルク伝達経路を説明する図。
【
図4】第二モータからのトルク伝達経路を説明する図。
【
図5】第三モータからのトルク伝達経路を説明する図。
【
図6】第四モータからのトルク伝達経路を説明する図。
【
図7】アーム部伸縮機構へのトルク伝達を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例について
図1~10を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1,2に示すとおり、伸縮アーム装置10は、基体12と、基体12に連結されている伸縮可能なアーム部20と、アーム部20の先端側に連結されている手首部30を具えている。手首部30の先端側には、さらに、ハンド部40が連結されている。アーム部20は、
図1と
図2に示すように、伸縮可能に構成されている。基体12は、第一乃至第四モータM1~M4と垂直軸方向旋回用モータM5を具えている。第一乃至第四モータM1~M4は、ロック機能を具える等して、無通電時に回転しないように構成されている。垂直軸方向旋回用モータM5を駆動させることにより、基体12が垂直軸14を中心として回動するように構成されている。
【0017】
基体12は、第一水平軸16を回動可能に軸支している。第一水平軸16は、
図3に示すように、アーム部20と連結されている。よって、第一水平軸16が回動すると、アーム部20も第一水平軸16を中心として回動する。第一水平軸16は、第一水平軸上に固定された第一水平軸回動用歯車52と、第一水平軸16上に回転可能に配設された第一乃至第三入力ギア54,56,58を具えている。
【0018】
アーム部20は、第一水平軸16と平行な第二水平軸22を軸支している。第二水平軸22上には、第一中継ギア64が固定されており、第二・第三中継ギア66,68が回転可能に配設されている。第一中継ギア64は第一入力ギア54と、第二中継ギア66は第二入力ギア56と、第三中継ギア68は第三入力ギア58とそれぞれ噛み合っている。第一乃至第三中継ギア64,66,68に伝達されたトルクは、アーム部20の伸縮や手首部30の回動に必要なトルクとして利用することができる。
【0019】
第一モータM1が駆動すると、第一モータM1からのトルクは、基体12内部に配設された歯車等のトルク伝達機構を通じて第一水平軸回動用歯車52に伝達される。よって、第一モータM1の回転方向に応じて第一水平軸回動用歯車52及び第一水平軸16の回動方向が変わり、アーム部20の回動方向も変わる。
【0020】
一方で、基体12は、第一デファレンシャルギア機構70を有している。第一デファレンシャルギア機構70は、第一かさ歯車72、第一かさ歯車72に対して相対回転可能且つ対向する第一対向かさ歯車74、第一かさ歯車72及び第一対向かさ歯車74と噛合う第一ピニオンギア76、並びに、第一ピニオンギア76を軸支し、第一かさ歯車72及び第一対向かさ歯車74と相対回転可能に設けられた第一ピニオンキャリア78を具えている。第一モータM1からのトルクは、第一かさ歯車72にも伝達されるように構成されている(
図3参照。)。
【0021】
図4に示すように、第二モータM2が駆動すると、第二モータM2からのトルクは、基体12内部に配設された歯車等のトルク伝達機構を通じて第一デファレンシャルギア機構70の第一ピニオンキャリア78に伝達される。第一ピニオンキャリア78にトルクが伝達されると、第一ピニオンギア76が自転しながら公転し、第一対向かさ歯車74にトルクを伝達する。第一デファレンシャルギア機構70の第一対向かさ歯車74は、第一入力ギア54にトルクを伝達するように構成されているので、第二モータM2が駆動すると、第一入力ギア54にトルクが伝達されることになる。
【0022】
また、
図5に示すように、基体12は、第二デファレンシャルギア機構80、第三デファレンシャルギア機構90、第一遊星歯車機構100、及び第二遊星歯車機構110を有している。第二デファレンシャルギア機構80は、第二かさ歯車82、第二かさ歯車82に対して相対回転可能且つ対向する第二対向かさ歯車84、第二かさ歯車82及び第二対向かさ歯車84と噛合う第二ピニオンギア86、並びに、第二ピニオンギア86を軸支し、第二かさ歯車82及び第二対向かさ歯車84と相対回転可能に設けられた第二ピニオンキャリア88を具え、第三デファレンシャルギア機構90は、第三かさ歯車92、第三かさ歯車92に対して相対回転可能且つ対向する第三対向かさ歯車94、第三かさ歯車92及び第三対向かさ歯車94と噛合う第三ピニオンギア96、並びに、第三ピニオンギア96を軸支し、第三かさ歯車92及び第三対向かさ歯車94と相対回転可能に設けられた第三ピニオンキャリア98を具えている。
【0023】
第一遊星歯車機構100は、第一サンギア102、第一サンギア102に対して相対回転可能且つ同軸上の第一リングギア104、第一サンギア102及び第一リングギア104に噛合う第一プラネタリギア106、並びに、第一プラネタリギア106を軸支し、第一サンギア102及び第一リングギア104と相対回転可能に設けられた第一プラネタリキャリア108を具え、第二遊星歯車機構110は、第二サンギア112、第二サンギア112に対して相対回転可能且つ同軸上の第二リングギア114、第二サンギア112及び第二リングギア114に噛合う第二プラネタリギア116、並びに、第二プラネタリギア116を軸支し、第二サンギア112及び第二リングギア114と相対回転可能に設けられた第二プラネタリキャリア118を具えている。
【0024】
第三モータM3が駆動すると、第三モータM3からのトルクは、基体12内部に配設された歯車等のトルク伝達機構を通じて第一遊星歯車機構100の第一サンギア102と第二遊星歯車機構110の第二サンギア112に同方向のトルクとしてそれぞれ伝達される。第一サンギア102と第二サンギア112にトルクが伝達されると、第一プラネタリギア106と第二プラネタリギア116が自転しながら公転するので、第一プラネタリキャリア108と第二プラネタリキャリア118が回転する。
【0025】
第一プラネタリキャリア108と第二プラネタリキャリア118に伝達されたトルクは、第二デファレンシャルギア機構80の第二ピニオンキャリア88と第三デファレンシャルギア機構90の第三ピニオンキャリア98にそれぞれ伝達される。第二ピニオンキャリア88と第三ピニオンキャリア98にトルクが伝達されると、第二ピニオンギア86と第三ピニオンギア96がそれぞれ自転しながら公転し、第二対向かさ歯車84と第三対向かさ歯車94にトルクを伝達する。第二対向かさ歯車84は第二入力ギア56に、第三対向かさ歯車94は第三入力ギア58にトルクをそれぞれ伝達するように構成されているので、第三モータM3が駆動すると、第二入力ギア56と第三入力ギア58に同方向のトルクが伝達されることになる。
【0026】
なお、第二デファレンシャルギア機構80の第二かさ歯車82と第三デファレンシャルギア機構90の第三かさ歯車92には、基体12内部に配設された歯車等のトルク伝達機構を通じて、第一モータM1からのトルクが同方向のトルクとしてそれぞれ伝達されるように構成されている。
【0027】
図6に示すように、第四モータM4が駆動すると、第四モータM4からのトルクは、基体12内部に配設された歯車等のトルク伝達機構を通じて第一遊星歯車機構100の第一リングギア104と第二遊星歯車機構110の第二リングギア114にそれぞれ伝達される。ここで、第一リングギア104に対する第四モータM4からのトルクは、遊び歯車18を介して伝達されるため、第一リングギア104と第二リングギア114には、互いに逆方向(相対方向)のトルクがそれぞれ伝達されることになる。第一リングギア104と第二リングギア114に逆方向のトルクが伝達されると、第一プラネタリギア106と第二プラネタリギア116が逆方向に自転しながら公転するので、第一プラネタリキャリア108と第二プラネタリキャリア118が逆方向に回転する。
【0028】
第一プラネタリキャリア108と第二プラネタリキャリア118に伝達された逆方向のトルクは、第二デファレンシャルギア機構80の第二ピニオンキャリア88と第三デファレンシャルギア機構90の第三ピニオンキャリア98にそれぞれ伝達される。第二ピニオンキャリア88と第三ピニオンキャリア98に逆方向のトルクが伝達されると、第二ピニオンギア86と第三ピニオンギア96がそれぞれ逆方向に自転しながら公転し、第二対向かさ歯車84と第三対向かさ歯車94に逆方向のトルクを伝達する。第二対向かさ歯車84は第二入力ギア56に、第三対向かさ歯車94は第三入力ギア58にトルクをそれぞれ伝達するように構成されているので、第四モータM4が駆動すると、第二入力ギア56と第三入力ギア58に逆方向のトルクが伝達されることになる。
【0029】
伸縮アーム装置10は、以上に説明したトルク伝達経路を具えるので、第一モータM1からのトルクは、第一水平軸16に伝達されるとともに、第一乃至第三かさ歯車72,82,92にそれぞれ伝達される。第一乃至第三かさ歯車72,82,92に伝達されたトルクは、第一乃至第三ピニオンギア76,86,96を介して、第一乃至第三対向かさ歯車74,84,94に伝達され、第一乃至第三入力ギア54,56,58に伝達される。
【0030】
ここで、第一モータM1のみが駆動したとき、第一水平軸16を回転させるとともに、第一乃至第三入力ギア54,56,58に対して、第一水平軸16に伝達されたトルクと同方向同回転数のトルクを伝達するように、基体12のトルク伝達機構のギア比を調整する。こうすることにより、第一モータM1のみを駆動させたとき、第一乃至第三入力ギア54,56,58に対して、第一水平軸16に伝達されたトルクと同方向同回転数のトルクが伝達されるので、第一乃至第三入力ギア54,56,58と噛合う第一乃至第三中継ギア64,66,68は自転しない。逆に、第一モータM1と第二乃至第四モータM2~M4のいずれか又は全てが同時に駆動したとき、第一水平軸16を回転させるとともに、第一乃至第三入力ギア54,56,58に対して、第一水平軸16に伝達されたトルクと差動があるトルクが伝達される。よって、基体12に設けた第一乃至第四モータM1~M4によって、アーム部20を第一水平軸16を中心に回動させることができ、アーム部20の伸縮や手首部30の回動に必要なトルクを伝達させることができるので、手首部30やアーム部20にモータを設置する必要がない。このため、アーム部20に偏荷重が掛かり難く、コンパクトで、手首部30を通じてハンド部40を自在且つ確実に回動させることができる。
【0031】
伸縮アーム装置10の上記構成とすれば、第一乃至第四モータM1~M4の複雑な制御が不要な伸縮アーム装置10とすることができる。しかし、第一乃至第四モータM1~M4から第一水平軸16及び第一乃至第三入力ギア54,56,58へのトルク伝達に関する構成は、これに限られるものではない。すなわち、第一モータM1のみが駆動したとき、第一水平軸16を回転させるとともに、第一乃至第三入力ギア54,56,58に対して、第一水平軸16に伝達されたトルクと同方向同回転数のトルクを伝達し、第二モータM2のみが駆動したとき、第一入力ギア54にトルクが伝達され、第三モータM3のみが駆動したとき、第二・第三入力ギア56,58に同方向のトルクが伝達され、第四モータM4のみが駆動したとき、前記第二・第三入力ギア56,58に逆方向のトルクが伝達され、第一モータM1と第二乃至第四モータM2~M4のいずれか又は全てが同時に駆動したとき、第一水平軸16を回転させるとともに、第一乃至第三入力ギア54,56,58に対して、第一水平軸16に伝達されたトルクと差動があるトルクが伝達されるように構成すればよい。
【0032】
第一乃至第三入力ギア54,56,58から第一乃至第三中継ギア64,66,68に伝達されたトルクは、アーム部20内部に配設された歯車等のトルク伝達機構を通じて、
図7に示すように、アーム伸縮軸122、第一手首操作軸124、及び第二手首操作軸126にそれぞれ伝達される。
【0033】
アーム部20は、
図8に示すように、第一プレート142,第二プレート144,第三プレート146,及び第四プレート148を具えている。第一プレート142側に基体10が連結され、第四プレート148側に手首部30が連結される。第一プレート142は、アーム伸縮軸122、第一手首操作軸124、及び第二手首操作軸126をそれぞれ軸支している。アーム伸縮軸122上には、第一ボールねじ機構123が設けられ、第一ボールねじ機構123は第二プレート144に連結されている。このため、アーム伸縮軸122が回転すると、その回転方向により、第一ボールねじ機構123のアーム伸縮軸122上の進退動に伴い、第二プレート144が第一プレート142に対して離間し又は接近する。また、同時に、アーム伸縮軸122に伝達されるトルクは、スプライン軸である伸縮トルク伝達軸128にも伝達されるように構成されており、第二プレート144に回転可能に設けられ、伸縮トルク伝達軸128に噛合うスプラインナット129を介して、アーム伸縮中間軸132にも伝達される。第三プレート146には、アーム伸縮中間軸132に螺合する第二ボールねじ機構133が設けられているので、アーム伸縮中間軸132が回転することにより、第三プレート146が第二プレート144に対して離間し又は接近する。図示は省略するが、第三プレート146と第四プレート148の間にも同様の構成を適用することができる。このように、伸縮アーム装置10では、第一中継ギア64に伝達されたトルクによって、第二プレート144や第3プレート146を同速度で同方向に動かすことができるので、アーム部20を伸縮させることができる。
【0034】
第一手首操作軸124及び第二手首操作軸126は、スプライン軸である。第一手首操作軸124及び第二手首操作軸126に伝達されたトルクは、第二プレート144に回転可能に設けられ、第一手首操作軸124及び第二手首操作軸126にそれぞれ噛合う第一・第二手首操作スプラインナット125,127を介して第一手首操作中間軸134及び第二手首操作中間軸136にそれぞれ伝達される。第一手首操作中間軸134及び第二手首操作中間軸136もスプライン軸であり、第三プレート146に回転可能に設けられ、第一手首操作中間軸134及び第二手首操作中間軸136にそれぞれ噛合う第三・第四手首操作スプラインナット135,137を介して最終的に第四プレート148が軸支する第一手首操作入力軸154及び第二手首操作入力軸156に伝達される。なお、プレートの数は任意に決定すればよく、プレート同士を離間又は接近させる手段は、ボールねじ機構に限られるものではない。
【0035】
図9に示すように、手首部30は、基部32と、基部32に回転自在に設けられた第一手首部かさ歯車34と、第一手首部かさ歯車34と対向して基部32に回転自在に設けられた第二手首部かさ歯車36と、第一手首部かさ歯車34と第二手首部かさ歯車36に噛合うハンド部かさ歯車38と、ハンド部かさ歯車38に連結されているハンド部取付部39を具えている。ハンド部取付部39には、ハンド部40が取付けられている。
【0036】
第二中継ギア66からのトルクは、第一手首操作軸124、第一手首操作中間軸134、第一手首操作入力軸154(
図8参照。)を介して、第一手首部かさ歯車34に伝達される。一方、第三中継ギア68からのトルクは、第二手首操作軸126、第二手首操作中間軸136、第二手首操作入力軸156(
図8参照。)を介して、第二手首部かさ歯車36に伝達されるように構成されている。
【0037】
第一手首部かさ歯車34と第二手首部かさ歯車36が同方向同回転数で回動すると、ハンド部かさ歯車38、ハンド部取付部39、及びハンド部40は、第一手首部かさ歯車34と第二手首部かさ歯車36の軸を中心に回動する。一方、第一手首部かさ歯車34と第二手首部かさ歯車36が逆方向同回転数で回動すると、ハンド部かさ歯車38がその軸を中心に回動し、ハンド部取付部39とハンド部40も同様に回動する。他方、第三モータM3と第四モータM4を同時に駆動したとき等、第一手首部かさ歯車34と第二手首部かさ歯車36が異なる回転数で回動すると、第一手首部かさ歯車34、第二手首部かさ歯車36、及びハンド部かさ歯車38のそれぞれがその軸を中心に回動するので、これに伴い、ハンド部取付部39とハンド部40も回動する。よって、第一手首部かさ歯車34と第二手首部かさ歯車36の回動を制御することにより、ハンド部を直交する2軸を中心に回動させることができる。すなわち、第三モータM3と第四モータM4の駆動を制御することによって、ハンド部を直交する2軸を中心に自在に回動させることができる。
【0038】
図10に示すように、ハンド部40は、ワークを把持する把持機構42を具えることができる。把持機構42は、ワイヤ等によって作動するように構成すればよい。
【0039】
以上に説明したように、本発明によれば、アーム部に偏荷重が掛かり難く、コンパクトで、手首部を自在且つ確実に回動させることができる伸縮アーム装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 伸縮アーム装置
12 基体
16 第一水平軸
20 アーム部
22 第二水平軸
30 手首部
32 基部
34 第一手首部かさ歯車
36 第一手首部かさ歯車
38 ハンド部かさ歯車
39 ハンド部取付部
54 第一入力ギア
56 第二入力ギア
58 第三入力ギア
64 第一中継ギア
66 第二中継ギア
68 第三中継ギア
70 第一デファレンシャルギア機構
72 第一かさ歯車
74 第一対向かさ歯車
76 第一ピニオンギア
78 第一ピニオンキャリア
80 第二デファレンシャルギア機構
82 第二かさ歯車
84 第二対向かさ歯車
86 第二ピニオンギア
88 第二ピニオンキャリア
90 第三デファレンシャルギア機構
92 第三かさ歯車
94 第三対向かさ歯車
96 第三ピニオンギア
98 第三ピニオンキャリア
100 第一遊星歯車機構
102 第一サンギア
104 第一リングギア
106 第一プラネタリギア
108 第一プラネタリキャリア
110 第二遊星歯車機構
112 第二サンギア
114 第二リングギア
116 第二プラネタリギア
118 第二プラネタリキャリア
M1 第一モータ
M2 第二モータ
M3 第三モータ
M4 第四モータ