(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020786
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】発音機構
(51)【国際特許分類】
G10H 7/00 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
G10H7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021143562
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】517232419
【氏名又は名称】長谷川 真之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真之
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478AA11
(57)【要約】
【課題】20kHzから100kHzの非可聴高域成分を多く含有する楽曲は、人体に有益なハイパーソニック・エフェクトを発現させるが、この帯域の成分を含む楽器音でデジタル・オーディオワークステーションや、MIDIコントローラで演奏・楽曲作成を行う手段がなく、コンサート会場での演奏やコンテンツ作成が困難である。
【解決手段】非可聴高域成分音声信号を発生させるソフトウエア音源データを、約200kHz以上のサンプリング周波数を扱えるデジタル・オーディオワークステーションやMIDI音源モジュールに記憶させ、MIDIコントローラやシーケンサー機能によってコントロールし、非可聴高域成分を含有する楽曲を演奏・作成することを実現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル・オーディオ・ワークステーションに、20kHzを超える非可聴高域成分音声信号を出力させるソフトウエア音源データを記憶させ、シーケンサー機能を用いて、非可聴高域成分を含む楽器音の音声信号を発生させる機構。
【請求項2】
MIDI信号等で制御する音源モジュールに、請求項1のソフトウエア音源データを記憶させ、キーボード型MIDIコントローラーや、MIDIシーケンサー等を用いて、非可聴高域成分を含む楽器音の音声信号を発生させる機構。
【請求項3】
デジタル・ワークステーションや、MIDI音源モジュールにおいて、20kHzを超える非可聴高域成分に、イコライズ、フィルタリング、コンプレッション、フェイズシフト、モジュレーションなどのエフェクト処理を施すことを特徴とする発音機構。
【請求項4】
デジタル・ワークステーションや、MIDI音源モジュールから、非可聴高域成分だけを含む音声信号を出力させ、可聴域の音声信号とは別系統の増幅回路とスピーカーを通して再生することを特徴とする発音機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽曲作成に使用されるデジタル・オーディオ・ワークステーション(以下DAWと記載)のシーケンサー機能や、MIDI信号等でコントロールして楽器音を出力する音源モジュールの発音機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の研究によって、人間の耳には聞こえない20kHzから100kHzの非可聴高域成分を含有する楽曲や自然音は、間脳を刺激して脳内にアルファ波を誘起して心地よさや感動を感じさせ、また視床下部を刺激して免疫系・神経系を活性化せ、人体に良好な影響を与えることが明らかとなっており、この効果はハイパーソニック・エフェクトと名付けられている。このような楽曲や自然音は、鬱病や認知症に対する改善効果もあると言われており、医療用の療法として実用化されている。
【0003】
ハイパーソニック・エフェクトを発現させる既存の音源は、ジャングルの環境音や、ガムランや、尺八、チェンバロなど、ごく限られた楽器であるため西洋音楽の楽曲を演奏するには適さない。しかし、ピアノやギターなどの高域成分を含まない西洋楽器であっても、非可聴高域成分を合成することによってもとの音色を保ちながら高域成分も併せ持つ電子楽器として構成することは可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】社団法人日本機械工業連合会 財団法人デジタルコンテンツ協会、平成17年度 ハイパーソニックデジタル音響システム に関する調査研究報告書
【0005】
【非特許文献2】ハイパーソニック・エフェクト 大橋力著 株式会社岩波新書 2017年9月22日第1刷
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の元となる、特開2019-003164は、例えばピアノ音の場合、鍵盤1つに対して、可聴域音と非可聴高域成分をアナログ信号として発生させて合成し、各鍵盤で発生したアナログ音声信号をミキシングして出力する電子楽器であった。
【0008】
この場合、ピアノ演奏技能を備えた演奏者は、演奏して楽曲を作成・演奏することは可能であるが、DAWのシーケンサー機能を使用して楽曲を作成することができない。
【0009】
また、楽器の演奏データを機器間で送受するMIDIなどのデータで演奏を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
各音階ごとに、可聴域音(
図1a.)の音声信号に、非可聴高域成分を追加(
図1b.)した音声信号を作成し、非可聴高域成分を損なわない高いサンプリング周波数で復調可能なように符号化することにより、ソフトウエア音源データを作成する(
図1c.)。
【0011】
上記ソフトウエア音源データは、非可聴高域帯域の約2倍以上のサンプリング周波数で駆動されるDAWのシーケンサー機能によって、非可聴高域成分を含んだ楽器音を発音し、演奏をアナログ音声信号として出力することができる。
【0012】
さらに、DAWの波形編集機能によってこの演奏の非可聴高音域に、イコライズ、フィルタリング、コンプレッション、フェイズシフト、モジュレーションなどのエフェクトをかけることで、ハイパーソニック・エフェクトの効果度合いを調整することが可能となる。さらにDAW内で他の楽器音とミキシングして楽曲のマスタリングを行い、デジタル信号として記録・保存できる。
【0013】
また、上記ソフトウエア音源データをメモリーに記憶したMIDI音源モジュールは、MIDIなどの外部信号で制御することによって、非可聴高域成分を含んだ楽器音を発音させ、キーボード型MIDIコントローラーによる演奏や、シーケンサーによる同期演奏などが可能となる。
【0014】
これらのソフトウエア音源データは可聴域の発音情報を含まない構成にすることで、非可聴高域成分のみの音声信号を発生させることが可能となる。可聴音域部分の楽器音は別のソフトウエア音源データで発音させ、または、楽器の生音を合成することができる。この場合、可聴音域部は従来の音響システム上で演奏会場に流し、非可聴高音域のみを広帯域アンプと広帯域スピーカーで演奏会場に流すことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
DAW上で作業することにより、楽器の演奏技術を持たないオペレーターでも、楽器の音色と非可聴高域成分を含んだ楽曲を作成する事が可能となる。またDAWに付属するMIDIインターフェースを介し、キーボード型MIDIコントローラーを用いて演奏することも可能となる。
【0016】
MIDI音源モジュールに、このソフトウエア音源データを組み込んだ場合、可搬性に優れた小型の非可聴高域音源装置を作ることが可能で、キーボード型MIDIコントローラーと接続することで、場所を選ばず、非可聴高域成分を含んだ楽器音を演奏することが可能となる。
【0017】
上記により、非可聴高域成分を含んだ楽曲の演奏が容易になり、コンサート会場での演奏が可能となる。また、非可聴高域成分を含んだ楽曲コンテンツの種類が豊富となり、大量に作成することが可能となる。
【0018】
ハイパーソニック・エフェクトを発現させる楽曲コンテンツが増大することで、免疫系や神経系の治療、認知症発生予防などに用途への適用が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【発明を実施するための形態】
【0020】
約200kHz以上のサンプリング周波数で楽曲データを作成できるDAWに、非可聴高域成分を発生させるソフトウエア音源データを読み込ませ、シーケンサー機能によって非可聴高域成分を含む楽器音を発音させて演奏・楽曲作成を行う。
【0021】
ハードウエア音源装置の内部メモリーに非可聴高域成分を発生させるソフトウエア音源データを記憶させ、接続したMIDIコントローラーで制御して非可聴高域成分を含む楽器音を発音させて演奏を行う。
【実施例0022】
図2は、本発明の第1実施例である。
音源テータは、非可聴高音域成分を含んでいる自然音や楽器、例えばチェンバロの各音階を100kHz以上の帯域まで録音し、可聴帯域の音源成分を既存の音源、例えばピアノ音と差し替え、更にイコライズやコンプレッションなどの処理を加えた後、デジタルデータ化して作成する。
【0023】
音源データは、192kHzのサンプリング周波数を取り扱えるDAW(2.)のプラグインとしてDAWのメインフレームコンピューターのハードディスク(3.)に記録され、シーケンサー機能によって指定される、音階・発音タイミング・キーベロシティー等の情報によって、非可聴高域成分を含む楽器音を発生させる。
【0024】
更にDAWのマスタリング機能で、非可聴高域成分に対してイコライザー、フェースシフターやモジュレーションなどのエフェクト処理を行う機能を備え、ハイパーソニック・エフェクトの効果調節を図ることができる。
【0025】
DAWにより、192kHzサンプリング周波数のPCM録音で書き出し処理をすることで、ハイパーソニック・エフェクトに最も効果的な70~90kHzの成分を含んだ楽曲をデジタル保存することができる。
【0026】
図3は、本発明の第2実施例である。
メモリー(4)内に非可聴高音域の成分を作るソフトウエア音源データを記録したMIDI音源モジュール(5)。キーボード型のMIDIコントローラー(6)からMIDIインターフェース(7)で制御されることにより、非可聴高音域の成分を含む楽器音のアナログ音声信号を出力端子から送出する。
【0027】
図3は、本発明の第2実施例である。
MIDI音源モジュール(5)は、メモリー(4)内に非可聴高音域の成分を作るソフトウエア音源データを記録されており、キーボード型のMIDIコントローラー(6)からMIDIインターフェース(7)で制御されることにより、非可聴高音域の成分を含む楽器音のアナログ音声信号を出力端子から送出する。
【0028】
非可聴高音域成分を演奏会場内に出すために、100kHzまでの周波数特性を有するミキサー(8)とアンプ(9)とスピーカー(10)の設備を備える。
【0029】
図4は、本発明の第3実施例である。
MIDI音源モジュール(5)は、第2実施例のキーボード型MIDIコントローラーに変わって、ギター型のMIDIコントローラー(11)によって制御し、可聴音と非可聴高音域の成分を出力端子から送出する。この場合、音源装置から出力される可聴部分の音声信号は、エレクトリックギターや、クラッシックギターなど、弦楽器の演奏方法にマッチする音色を設定する。
【0030】
図5は、本発明の第4実施例である。
MIDI音源モジュール(5)は、第3実施例同様、ギター型のMIDIコントローラー(11)によって制御するが、非可聴高音域の成分だけを出力端子から送出する。
【0031】
可聴音域部分は、ギター型のMIDIコントローラー(11)自体が発するギターの音色をピックアップで集音し、演奏会場内の音響装置(12)から会場内に送出する。
【0032】
MIDI音源モジュール(5)からは、非可聴高域成分のみを出力し、会場内に既設の従来の音響設備とは別に、100kHz以上の音声を取り扱えるミキサー(13)、アンプ(14)、スピーカー(15)を経由して会場内に送出する。
本発明は、人間の耳には聞こえない20kHzから100kHzの非可聴高域成分音声信号を含有する楽曲や自然音が人体に良好な影響を与えるハイパーソニック・エフェクトを応用して、感動や興奮を呼び起こす演奏・楽曲作成を可能とする。更にハイパーソニック・エフェクトを発現するコンテンツを容易に作成することが可能となり、セラピーや治療が容易となる。更に、都市の音響環境の改善に寄与する。