(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020807
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
F16F 3/00 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
F16F3/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172306
(22)【出願日】2021-10-21
(62)【分割の表示】P 2021560260の分割
【原出願日】2021-07-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】519366237
【氏名又は名称】NatureArchitects株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏目 大彰
【テーマコード(参考)】
3J059
【Fターム(参考)】
3J059AC01
3J059BA19
3J059BB02
3J059DA12
3J059EA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造体のサイズ(特に枠部のサイズ)を大きくすることなく、弾性部を支持する枠部が弾性部の変位に伴って変位することを抑制し、受圧部の所定の変位範囲でそれ以外の変位範囲よりも絶対値が十分に低い剛性(例えば、略ゼロ剛性)を実現する。
【解決手段】外部からの押圧力または押圧力による反力を受ける受圧部21を備える構造体20であって、枠部22と、押圧力(荷重)を受ける受圧部21に繋がると共に枠部22に繋がり且つ受圧部21の任意の変位範囲で正剛性を有する弾性部26と、受圧部21に繋がると共に枠部22に繋がり且つ受圧部21の所定の変位範囲で負剛性を有する弾性部30と、枠部22に繋がり且つ受圧部21の変位による弾性部30の変形に伴う枠部22の変形を抑制する変形抑制部34とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの押圧力または前記押圧力による反力を受ける受圧部を備える構造体であって、
枠部と、
前記受圧部に繋がると共に前記枠部に繋がり、前記受圧部の任意の変位範囲で正剛性を有する第1弾性部と、
前記受圧部に繋がると共に前記枠部に繋がり、前記受圧部の所定の変位範囲で負剛性を有する第2弾性部と、
前記枠部に繋がり、前記受圧部の変位による前記第2弾性部の変形に伴う前記枠部の変形を抑制する変形抑制部と、
を備える構造体。
【請求項2】
請求項1記載の構造体であって、
前記変形抑制部は、前記受圧部の変位による前記第2弾性部の変形に伴って前記第2弾性部から前記枠部に第1力が作用するときに、前記第1力の少なくとも一部をキャンセルする第2力を前記枠部に作用させて前記枠部の変形を抑制する、
構造体。
【請求項3】
請求項1または2記載の構造体であって、
前記変形抑制部は、前記受圧部に繋がるように形成されている、
構造体。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つの請求項に記載の構造体であって、
前記変形抑制部は、前記第1弾性部と兼用される、
構造体。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つの請求項に記載の構造体であって、
前記第2弾性部は、サイン波状に形成されている、
構造体。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つの請求項に記載の構造体であって、
前記枠部と前記第1弾性部と前記第2弾性部と前記変形抑制部とを有する弾性要素を、前記受圧部の第1位置と前記枠部の第2位置とを通る軸線周りに複数備える、
構造体。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れか1つの請求項に記載の構造体であって、
前記枠部と前記第1弾性部と前記第2弾性部と前記変形抑制部とを形成するための断面を、所定軸線周りに回転させて得られる回転体の構造である、
構造体。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つの請求項に記載の構造体であって、
前記構造体は、一体成形部材である、
構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、質量体と、質量体と底部とに接続されるコイルばねと、質量体とフレームとに接続されると共に互いに逆の剛性を有する第1、第2弾性梁と、を備える構造体が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の段落0017には、「運動質量体2の所定の行程範囲内で、質量体2が予め定められた剛性を経験するように構成されており、この所定の剛性は、ゼロ剛性又はほぼゼロの剛性であることが好ましい。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された上述の構造体においては、第1、第2弾性梁を支持するフレームが第1、第2弾性梁の変位に伴って変位しうることは考慮されていない。質量体が受ける力による第1、第2弾性梁の変位に伴ってフレームが変形すると、第1、第2弾性梁の剛性が本来の剛性から変化してしまい、その結果として、質量体の所定の行程範囲内で質量体がゼロ剛性またはほぼゼロの剛性をもたらすことが困難となる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
外部からの押圧力または前記押圧力による反力を受ける受圧部を備える構造体であって、
枠部と、
前記受圧部に繋がると共に前記枠部に繋がり、前記受圧部の任意の変位範囲で正剛性を有する第1弾性部と、
前記受圧部に繋がると共に前記枠部に繋がり、前記受圧部の所定の変位範囲で負剛性を有する第2弾性部と、
前記枠部に繋がり、前記受圧部の変位による前記第2弾性部の変形に伴う前記枠部の変形を抑制する変形抑制部と、
を備える構造体が提供される。
【0006】
本開示の他の特徴事項および利点は、例示的且つ非網羅的に与えられている以下の説明および添付図面から理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】比較例の各構造体20A~20Dの正面図である。
【
図4】比較例の各構造体20A~20Dにおける、外部から受圧部21が受ける下向きの押圧力と受圧部21の初期位置からの変位との関係の一例を示す説明図である。
【
図5】構造体20Bの変形の様子を示す説明図である。
【
図6】構造体20の変形の様子を示す説明図である。
【
図7】実施例および比較例の各構造体20,20A,20Bにおける、外部から受圧部21が受ける下向きの押圧力と受圧部21の初期位置からの変位との関係の一例を示す説明図である。
【
図8】構造体20Bの変形の様子を示す説明図である。
【
図10】変形例の構造体120における、外部から受圧部21が受ける下向きの押圧力(荷重)と受圧部21の初期位置からの変位との関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本開示を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【0009】
図1は、本開示の一実施例としての構造体20の外観斜視図であり、
図2は、実施例の構造体20の正面図である。なお、実施例において、左右方向(X軸方向)、前後方向(Y軸方向)、上下方向(Z軸方向)は、
図1や
図2に示した通りとする。
【0010】
実施例の構造体20は、例えば、樹脂材料の射出成形、ブロー成形、押出し成形、3D印刷や、金属材料の鋳造、鍛造、プレス、切削、押出し成形、3D印刷などにより一体成形された一体成形部材として構成されている。一例として、この構造体20は、
図2に示すように、ベース部材10により支持される。
【0011】
構造体20は、
図1や
図2に示すように、受圧部21と、枠部22と、一対の弾性部(第1弾性部)26と、一対の弾性部(第2弾性部)30と、一対の梁部(変形抑制部)34とを備える。この構造体20は、構造体20の重心を通るYZ平面である所定平面Pyz(
図2参照)に対して鏡像(面対称)となるように、且つ、各部の奥行き(前後方向における長さ)が一定となるように形成されている。
【0012】
受圧部21は、構造体20の左右方向における中央部に位置しており、受圧部21の上面21aは、左右方向に延在する平坦面として形成されている。この上面21aは、外部から下向きの押圧力(荷重)を受ける受圧面として機能する。枠部22は、底部23と、一対の側壁部24とを有する。底部23は、左右方向に延在するように形成されており、底部23の下面23aは、ベース部材10に載置(当接)または固定される。一対の側壁部24は、それぞれ、底部23の左右方向における対応する端部から上側に延出されるように形成されている。
【0013】
一対の弾性部26は、それぞれ、受圧部21の下端部から延出されると共に底部23の左右方向における中央部から延出され、上下方向に見て受圧部21との繋がり部(上端部)および底部23との繋がり部(下端部)から中央部に向かうにつれて半円状に所定平面Pyzから離間して延在するように形成されている。
【0014】
一対の弾性部30は、それぞれ、受圧部21の下端部から延出されると共に対応する側壁部24の上端部から延出され、受圧部21との繋がり部から側壁部24との繋がり部に向かうにつれてサイン波状に斜め下側に延在するように形成されている。
【0015】
一対の梁部34は、それぞれ、第1梁部35と、第2梁部36と、2個の連絡部37とを有する。第1梁部35は、受圧部21の側部から左右方向に延出されて側壁部24よりも所定平面Pyzから若干遠い位置まで延在するように形成されている。第2梁部36は、対応する第1梁部35の受圧部21から遠い側の端部から下側に延出されるように形成されている。2個の連絡部37は、対応する第2梁部36の下端部と、対応する側壁部24の上端部近傍(弾性部30との繋がり部近傍)と、を上下方向に間隔をおいて左右方向で繋ぐように形成されている。なお、連絡部37の数は、2個に限定されるものではなく、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。
【0016】
次に、実施例や比較例の各構造体20,20A~20Dの動作について説明する。
図3(A)~(D)は、比較例の各構造体20A~20Dの正面図であり、
図4は、比較例の各構造体20A~20Dにおける、外部から受圧部21が受ける下向きの押圧力(荷重)と受圧部21の初期位置からの変位との関係の一例を示す説明図である。
図3(A)の構造体20Aは、実施例の構造体20から一対の梁部34を除くと共に枠部22を剛体(力を加えても変形しない物体)とみなした構造であり、
図3(B)の構造体20Bは、実施例の構造体20から一対の梁部34を除いた構造であり、
図3(C)、
図3(D)の各構造体20C,20Dは、
図3(B)の構造体20Bに対して枠部22の側壁部24の厚み(左右方向における長さ)を2倍程度、4倍程度にした構造である。
【0017】
最初に、
図3(A)の比較例の構造体20Aの動作について説明する。比較例の構造体20Aでは、外部から受圧部21(上面21a)に下向きの押圧力(荷重)が作用すると、受圧部21の下側への移動に伴って、一対の弾性部26および一対の第2弾性部が変形する。一対の弾性部26は、受圧部21の任意の変位範囲で正剛性を有し、一対の弾性部30は、受圧部21の変位範囲Rzs1で負剛性を有すると共にそれ以外の変位範囲で正剛性を有する。一対の弾性部26と一対の弾性部30とは並列に接続されており、これら2つの弾性部26,30の剛性の和により構造体20Aの剛性が決定される。これにより、構造体20Aは、
図4の実線に示すように、受圧部21の変位範囲Rzs1でそれ以外の変位範囲よりも絶対値が十分に低い剛性(例えば、略ゼロ剛性)を実現することができる。これに対して、
図4の各々の線の傾きで表現される各構造の剛性に関し、
図3(B)の構造体20Bの場合、
図4の破線に示すように、受圧部21の変位範囲Rzs1とそれ以外の変位範囲とで破線の傾きの差(すなわち剛性の差)が小さくなっており、受圧部21の変位範囲Rzs1で絶対値が十分に低い剛性を実現できているとは言い難い。この理由として、以下のことが考えられる。
図5は、構造体20Bの変形の様子を示す説明図である。図中、破線は、構造体20Bが変形していないときの様子であり、実線は、構造体20Bが変形しているときの様子である。
図5に示すように、構造体20Bでは、受圧部21の下側への移動に伴って一対の弾性部30が変形するときに、一対の弾性部30から一対の側壁部24の上端部に外向き(所定平面Pyzから離間する向き)の力F1が作用し、一対の側壁部24の上端部が外側に比較的大きく変形する。このため、受圧部21の変位範囲Rzs1で、一対の弾性部30が適切な負剛性を発揮できずに、構造体20Bとして絶対値が十分に低い剛性を実現できていないと考えられる。これを踏まえて、
図3(C)や
図3(D)の各構造体20C,20Dのように、枠部22の側壁部24の厚みを厚くすると、受圧部21の下側への移動に伴って一対の弾性部30が変形するときに、その変形に伴って一対の側壁部24の上端部が変形するのを抑制することができる。これにより、構造体20C,20Dでは、構造体20Bに比して、受圧部21の変位範囲Rzs1で、一対の弾性部30が適切な負剛性を発揮することできる。この結果、
図4の一点鎖線、点線に示すように、構造体20C,20Dの特性を、構造体20Bの特性(破線参照)に比して、構造体20Aの特性(実線参照)に近づけることができる。しかし、これらの場合、構造体20C,20Dのサイズが大きくなってしまうため、例えば、構造体を設置ないし埋め込むための設計空間に制約があるケースにおいては構造体の実装ができない場合が生じ得る。
【0018】
次に、実施例の構造体20の動作について説明する。
図6は、構造体20の変形の様子を示す説明図であり、
図7は、実施例および比較例の構造体20,20A,20Bにおける、外部から受圧部21が受ける下向きの押圧力(荷重)と受圧部21の初期位置からの変位との関係の一例を示す説明図である。
図6中、破線は、構造体20が変形していないときの様子であり、実線は、構造体20が変形しているときの様子である。
図6に示すように、実施例の構造体20では、受圧部21の下側への移動に伴って一対の弾性部30が変形するときに、比較例の構造体20Bと同様に(
図5参照)、一対の弾性部30から一対の側壁部24の上端部に外向き(所定平面Pyzから離間する向き)の力F1が作用するものの、受圧部21と一対の側壁部24の上端部とに繋がる一対の梁部34の撓みを伴った変形により、一対の梁部34から一対の側壁部24の上端部に力F1の少なくとも一部をキャンセルする力F2が作用し、一対の側壁部24の上端部が外側に変形するのを抑制することができる。これにより、受圧部21の変位範囲Rzs2で、一対の弾性部30が適切な負剛性を発揮することできる。この結果、
図7の実線、破線に示すように、実施例の構造体20では、比較例の構造体20Bに比して、受圧部21の変位範囲Rzs2でそれ以外の変位範囲よりも絶対値が十分に低い剛性(例えば、略ゼロ剛性)を実現することができる。なお、実施例の構造体20では、一対の弾性部26に加えて、一対の梁部34も、受圧部21の任意の変位範囲で正剛性を有する。このため、実施例の構造体20と比較例の構造体20Aとでトータルの正剛性の値が異なり、これに起因して実施例の構造体20における変位範囲Rzs2と比較例の構造体20Aにおける変位範囲Rzs1とが異なる。なお、十分に低い剛性を実現し得る変位範囲は、弾性部26,30および梁部34の各々の剛性を適宜設定してそれらを構成することによって調節することが可能である。
【0019】
また、比較例の構造体20Bでは、製造ばらつきなどにより受圧部21が所定平面Pyzに対して鏡像から若干ずれているときや、外部から受圧部21に作用する押圧力が下向きに対してY軸周りに若干傾いているときなどに、外部から受圧部21に作用する押圧力により、受圧部21の意図しない変位が生じ、一対の弾性部26や一対の弾性部30の意図しない変形が生じる場合がある。例えば、
図8の構造体20Bの変形の様子に示すように、受圧部21がY軸周りに回転し、一対の弾性部26や一対の弾性部30がそれぞれ互いに異なる変形を生じる場合がある。この場合、構造体20Bの弾性部30で正剛性と負剛性との切り替わりが適切に生じずに、受圧部21の変位範囲Rzs1で絶対値が十分に低い剛性をより実現しにくくなると考えられる。構造体20A,20C,20Dについても同様に考えることができる。これらに対して、実施例の構造体20では、一対の側壁部24の上端部に繋がる一対の梁部34がそれぞれ受圧部21の側部にも繋がっているから、受圧部21の意図しない変位が生じるのを抑制し、一対の弾性部26や一対の弾性部30の意図しない変形が生じるのを抑制することができる。この結果、構造体20では、所定平面Pyzに対して鏡像から若干ずれているときや、外部から受圧部21に作用する押圧力が下向きに対してY軸周りに若干傾いているときなどでも、比較例の構造体20A~20Dに比して、受圧部21の変位範囲Rzs2でそれ以外の変位範囲よりも絶対値が十分に低い剛性(例えば、略ゼロ剛性)を安定して実現することができる。
【0020】
以上説明した実施例の構造体20では、受圧部21と枠部22と一対の弾性部26と一対の弾性部30とを備えるのに加えて、それぞれ、受圧部21の側部に繋がると共に対応する側壁部24の上端部近傍(弾性部30との繋がり部近傍)に繋がる、一対の梁部34を備える。これにより、構造体20のサイズ(特に枠部22のサイズ)を大きくすることなく、弾性部30を支持する枠部22が弾性部30の変位に伴って変位することを抑制し、受圧部21の変位範囲Rzs2でそれ以外の変位範囲よりも絶対値が十分に低い剛性(例えば、略ゼロ剛性)を実現することができる。
【0021】
実施例では、構造体20は、
図1や
図2の向きに配置され、枠部22の底部23の下面23aがベース部材10に載置(当接)または固定され、受圧部21の上面21aが外部から下向きの押圧力(荷重)を受けるものとした。しかし、これに代えて、構造体20は、
図1や
図2の向きに配置され、受圧部21の上面21aが他のベース部材(不図示)に当接または固定され、底部22の下面が外部から上向きの押圧力を受けるものとしてもよい。この場合、受圧部21は、外部からの押圧力による反力を受けることになる。また、構造体20は、
図1や
図2の向きとは上下反対の向きに配置されるものとしてもよい。この場合、受圧部21は、外部からの押圧力を受けるものとしてもよいし、外部からの押圧力による反力を受けるものとしてもよい。
【0022】
実施例では、構造体20は、受圧部21と枠部22と一対の弾性部26と一対の弾性部30と一対の梁部34とを備えるものとした。しかし、
図9の変形例の構造体120に示すように、実施例の構造体20から一対の弾性部26を除いた構造としてもよい。
図10は、変形例の構造体120における、外部から受圧部21が受ける下向きの押圧力(荷重)と受圧部21の初期位置からの変位との関係の一例を示す説明図である。上述したように、構造体20において、一対の弾性部26だけでなく、一対の梁部34も、受圧部21の任意の変位範囲で正剛性を有する。したがって、構造体20から一対の弾性部26を除いた構造体120でも、梁部34の正剛性と弾性部30の負剛性とを合成した剛性がゼロまたは実質的にゼロとなるように梁部34および弾性部30を構成することで、実施例と同様の効果を奏することができる。即ち、
図10に示すように、受圧部21の変位範囲Rzs3でそれ以外の変位範囲よりも絶対値が十分に低い剛性(例えば、略ゼロ剛性)を実現することができる。また、構造体120は、構造体20から一対の弾性部26を除いた構造であるから、構造体20に比して、構造の簡素化やサイズの小型化を図ることができる。さらに、構造体120は、構造体20に比して、一対の側壁部24の上下方向における長さを短くすることにより、受圧部21の下側への移動に伴って一対の弾性部30が変形するときにその変形に伴って一対の側壁部24の上端部が変形するのをより抑制することができ、受圧部21の変位範囲Rzs3で、一対の弾性部30がより適切な負剛性を発揮することできる。
【0023】
実施例や変形例では、構造体20,120の一対の梁部34のそれぞれにおいて、第1梁部35は、受圧部21の側部から左右方向に延出されて側壁部24よりも所定平面Pyzから若干遠い位置まで延在するように形成され、第2梁部36は、対応する第1梁部35の端部から下側に延出されるように形成され、連絡部37は、対応する第2梁部36の下端部と対応する側壁部24の上端部近傍とを繋ぐように形成されるものとした。しかし、これに限定されるものではない。例えば、
図11の変形例の構造体220に示すように、一対の梁部234において、第1梁部235は、受圧部21の側部から左右方向に延出されて側壁部24よりも所定平面Pyzに近い位置まで延在するように形成され、第2梁部236は、対応する第1梁部235の端部から延出されて所定平面Pyzから離間しつつ下側に延在するように形成され、連絡部237は、対応する第2梁部236の下端部と対応する側壁部24の上端部近傍とを繋ぐように形成されるものとしてもよい。また、
図12の変形例の構造体320に示すように、一対の梁部334において、第1梁部335は、受圧部21の側部から左右方向に延出されて側壁部24よりも所定平面Pyzからある程度遠い位置まで延在するように形成され、第2梁部336は、対応する第1梁部335の端部から延出されて所定平面Pyzに接近しつつ下側に延在して対応する側壁部24の上端部近傍に繋がるように形成されるものとしてもよい。なお、構造体220,320から一対の弾性部26を除いた構造としてもよい。
【0024】
実施例や変形例では、各構造体20,120,220,320の一対の梁部34は、それぞれ、受圧部21の側部に繋がるものとした。しかし、一対の梁部34は、受圧部21に繋がらずに互いに繋がるものとしてもよい。
【0025】
実施例や変形例では、各構造体20,120,220,320の一対の弾性部26は、それぞれ、上下方向に見て受圧部21との繋がり部(上端部)および底部23との繋がり部(下端部)から中央部に向かうにつれて半円状に所定平面Pyzから離間して延在するように形成されるものとした。しかし、弾性部26は、これに限定されるものではなく、受圧部21の任意の変位範囲で正剛性を有するものであればよい。例えば、弾性部26は、一対(2個)でなく1個で且つコイルばね状などに形成されるものとしてもよい。
【0026】
実施例や変形例では、各構造体20,120,220,320の一対の弾性部30は、それぞれ、受圧部21との繋がり部から側壁部24との繋がり部に向かうにつれてサイン波状に斜め下側に延在するように形成されるものとした。しかし、弾性部30は、これに限定されるものではなく、受圧部21の所定の変位範囲で負剛性を有すると共にそれ以外の変位範囲で正剛性を有するものであればよい。例えば、弾性部30は、直線状の梁で形成されるものとしてもよい。
【0027】
実施例や変形例では、各構造体20,120,220,320は、各構造体20,120の重心を通るYZ平面である所定平面Pyzに対して鏡像(面対称)となるように形成されるものとした。即ち、構造体20,120は、所定平面Pyzに対して一方側(例えば右側)の弾性要素を、構造体20,120の重心を通る上下方向の直線(受圧部21の左右方向および前後方向における中心と、底部23の左右方向および前後方向における中心と、を通る直線)である軸線Lzの周りに180°の間隔をおいて回転対称となるように2個備えるものとした。しかし、この弾性要素を、軸線Lzの周りに120°や90°などの間隔をおいて回転対称となるように3個や4個など備える構造としてもよい。また、構造体20,120における、重心(軸線Lz)を通るXZ平面である所定平面Pxzの断面(
図2や
図9の構造体20,120の正面図と同一形状の断面)を、軸線Lzの周りに180°回転させて得られる回転体の構造としてもよい。
【0028】
実施例や変形例では、各構造体20,120は、樹脂材料や金属材料などにより一体成形された一体成形部材として構成されるものとした。しかし、複数部品として成形され、互いに接合されて構成されるものとしてもよい。
【0029】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した開示の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、枠部22が「枠部」に相当し、弾性部26が「第1弾性部」に相当し、弾性部30が「第2弾性部」に相当し、梁部34が「変形抑制部」に相当する。
【0030】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した開示の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した開示を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した開示の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した開示についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した開示の具体的な一例に過ぎないものである。
【0031】
以上、本開示を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本開示はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【0032】
[付記]
本開示の構造体は、外部からの押圧力または前記押圧力による反力を受ける受圧部を備える構造体であって、枠部と、前記受圧部に繋がると共に前記枠部に繋がり、前記受圧部の任意の変位範囲で正剛性を有する第1弾性部と、前記受圧部に繋がると共に前記枠部に繋がり、前記受圧部の所定の変位範囲で負剛性を有する第2弾性部と、前記枠部に繋がり、前記受圧部の変位による前記第2弾性部の変形に伴う前記枠部の変形を抑制する変形抑制部と、を備える。本開示の構造体によれば、受圧部の変位により第2弾性部が変形するときに、その変形に伴って枠部が変形するのを抑制することができるから、受圧部の所定の変位範囲で第2弾性部が適切な負剛性を発揮することができ、受圧部の所定の変位範囲でそれ以外の変位範囲よりも絶対値が十分に低い剛性(例えば、略ゼロ剛性)を実現することができる。即ち、枠部のサイズを大きくすることなく、弾性部を支持する枠部が弾性部の変位に伴って変位することを抑制し、受圧部の所定の変位範囲でそれ以外の変位範囲よりも絶対値の低い剛性を実現することができる。
【0033】
本開示の構造体において、前記変形抑制部は、前記受圧部の変位による前記第2弾性部の変形に伴って前記第2弾性部から前記枠部に第1力が作用するときに、前記第1力の少なくとも一部をキャンセルする第2力を前記枠部に作用させて前記枠部の変形を抑制するものとしてもよい。
【0034】
本開示の構造体において、前記変形抑制部は、前記受圧部に繋がるように形成されているものとしてもよい。こうすれば、外部から受圧部に押圧力が作用したときに、受圧部の意図しない変位(例えば、押圧力の向きに直交する直交軸周りの回転)が生じるのを抑制し、第1弾性部や第2弾性部の意図しない変形が生じるのを抑制することができる。
【0035】
本開示の構造体において、前記変形抑制部は、前記第1弾性部と兼用されるものとしてもよい。こうすれば、構造の簡素化やサイズの小型化を図ることができる。
【0036】
本開示の構造体において、前記第2弾性部は、サイン波状に形成されているものとしてもよい。また、前記枠部と前記第1弾性部と前記第2弾性部と前記変形抑制部とを有する弾性要素を、前記受圧部の第1位置と前記枠部の第2位置とを通る軸線周りに複数備えるものとしてもよい。さらに、前記枠部と前記第1弾性部と前記第2弾性部と前記変形抑制部とを形成するための断面を、所定軸線周りに回転させて得られる回転体の構造であるものとしてもよい。加えて、前記構造体は、一体成形部材であるものとしてもよい。