(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020828
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】アツバノリ属抽出物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9717 20170101AFI20230202BHJP
A61K 36/04 20060101ALI20230202BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20230202BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230202BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230202BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230202BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230202BHJP
【FI】
A61K8/9717
A61K36/04
A61Q19/02
A61P43/00 111
A61P17/00
A61P37/08
A23L33/10
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203731
(22)【出願日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】110127731
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】505171997
【氏名又は名称】國立中山大學
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】温志宏
(72)【発明者】
【氏名】張誌益
(72)【発明者】
【氏名】陳佩津
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD67
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC02
4C083EE16
4C083FF01
4C088AA14
4C088AC15
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA06
4C088CA08
4C088CA09
4C088CA10
4C088MA02
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB13
4C088ZC41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗炎症及び皮膚美白のための、アツバノリ属抽出物を含む組成物の使用を提供する。
【解決手段】組成物の使用であって、該組成物はアツバノリ属抽出物を含み、該アツバノリ属抽出物の製造方法は、メタノール又はエタノールでアツバノリ属を抽出して、アツバノリ属アルコール系抽出物を取得するステップ、および前記アツバノリ属アルコール系抽出物を分配抽出することで有機溶媒層と水性層を形成したあと、前記水性層を採取するステップを含む、使用である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アツバノリ属抽出物の製造方法であって、
(a)アルコール系溶媒でアツバノリ属を抽出して、アツバノリ属アルコール系抽出物を取得し、前記アルコール系溶媒はメタノール又はエタノールであり、
(b)有機溶液又は超臨界抽出により前記アツバノリ属アルコール系抽出物を分配抽出することで有機溶媒層と水性層を形成したあと、前記水性層を採取し、前記有機溶液は、有機溶媒又は水と有機溶媒の混合液であり、前記有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルエーテル、エチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム又は四塩化炭素であり、
(c)ステップ(b)で取得した水性層を1-ブタノールで分配抽出することで1-ブタノール層と水性層を形成し、続いて、前記水性層を採取することで前記アツバノリ属抽出物を取得する、とのステップを含む方法。
【請求項2】
前記アルコール系溶媒はエタノールである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒は酢酸エチルである請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
皮膚美白のための組成物の製造におけるアツバノリ属抽出物の使用であって、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、
(a)アルコール系溶媒でアツバノリ属を抽出して、アツバノリ属アルコール系抽出物を取得し、前記アルコール系溶媒はメタノール又はエタノールである、とのステップを含む使用。
【請求項5】
前記アツバノリ属抽出物は、メラニン生成を抑制するか、メラニンを減少させる請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物には、化粧品組成物、食品又は薬物が含まれる請求項4に記載の使用。
【請求項7】
抗炎症のための薬物の製造における組成物の使用であって、前記組成物はアツバノリ属抽出物を含み、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、
(a)アルコール系溶媒でアツバノリ属を抽出して、アツバノリ属アルコール系抽出物を取得し、前記アルコール系溶媒はメタノール又はエタノールである、とのステップを含む使用。
【請求項8】
前記抗炎症には炎症性因子の抑制が含まれる請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記炎症性因子には、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)及び誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)が含まれる請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記薬物は、抗炎症によりアレルギー性皮膚炎を治療する請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記アレルギー性皮膚炎にはアトピー性皮膚炎が含まれる請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、更に、ステップ(a)の後にステップ(b)を含み、前記ステップ(b)では、有機溶液又は超臨界抽出により前記アツバノリ属アルコール系抽出物を分配抽出することで有機溶媒層と水性層を形成し、続いて、前記水性層を採取することでアツバノリ属水性抽出物を取得し、前記有機溶液は、有機溶媒又は水と有機溶媒の混合液であり、前記有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルエーテル、エチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム又は四塩化炭素である請求項4又は7に記載の使用。
【請求項13】
前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、更に、ステップ(b)の後にステップ(c)を含み、前記ステップ(c)では、ステップ(b)で取得した水性層を1-ブタノールで分配抽出することで1-ブタノール層と水性層を形成し、続いて、前記水性層を採取することで前記アツバノリ属抽出物を取得する請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記アルコール系溶媒はエタノールである請求項4又は7に記載の使用。
【請求項15】
前記有機溶媒は酢酸エチルである請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アツバノリ属抽出物の新規な使用に関し、特に、抗炎症及び皮膚美白のための組成物の製造における前記アツバノリ属抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アツバノリ属(Sarcodia)は、主としてインド洋及び西太平洋地域に分布している。アツバノリ属は、従属栄養型(heterotroph)の海洋大型藻類であり、微量栄養素の含有量が高い。そのため、日本では長寿食材とも呼ばれており、欧米ではアツバノリ属が海の野菜の代表格とみなされている。現在、アツバノリ属の用途の多くは、そのまま食用とするか、食品添加物とされている。食用としてのアツバノリ属の歴史は長いが、その効果に関する研究は極めて少ない。
【0003】
昨今の美容医療の飛躍的な発展に伴って、スキンケア用品市場が急成長している。消費者にスキンケア用品を購入させる要素には、新規性、持続性及び有効性がある。薬用化粧品は、医師と、化学工業をバックグラウンドとする化粧品科学者とを媒介するものである。薬用化粧品は、インビトロ又はインビボ実験による検証を経ることで、特定の用途的価値を更に備えているか、従来の化粧品よりも優れた効果を有している。ここ数年、薬用化粧品(cosmeceuticals)とのワードは広告・宣伝に数多く登場するようになっており、一般化粧品(cosmetics)と薬品(pharmaceuticals)の間に介在している。一般化粧品と比較して、薬用化粧品は含有される生物活性成分がより明確な作用機序及び活性を有しており、薬物と類似したメリットを提供する。
【0004】
そのため、スキンケア用品の産業上の利用可能性は高く、とりわけ、現代人のスキンケア用品に対するニーズは高い。これに対し、現在のところ、皮膚に対するアツバノリ属活性抽出物の応用は存在しない。従って、アツバノリ属には数多くの研究開発の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、アツバノリ属を乾燥させたあと、アルコールで抽出することでアルコール抽出物を取得する。次に、前記アルコール抽出物を水中に浸漬し、浮遊させてから水性抽出物を取得する。そして、酢酸エチルを用いて前記水性抽出物を分配抽出することで、酢酸エチル層と水性層を形成したあと、前記水性層を採取する。且つ、取得した前記水性層を1-ブタノールで分配抽出することで1-ブタノール層と水性層を形成する。続いて、前記水性層を採取することで、アツバノリ属抽出物EHを取得する。
【0006】
美白実験において、前記アツバノリ属抽出物EHは、細胞及びゼブラフィッシュ体内におけるメラニンの発現量を低下させることができた。この結果より、前記アツバノリ属抽出物EHが、メラニンの発現を抑制することで美白効果を達成可能なことが示された。
【0007】
抗炎症実験において、前記アツバノリ属抽出物EHは、炎症性因子であるシクロオキシゲナーゼ-2(cyclooxygenase-2,COX-2)及び誘導型一酸化窒素合成酵素(inducible nitric oxide synthase,iNOS)の発現を抑制可能であった。この結果より、前記アツバノリ属抽出物EHが、炎症性因子の発現を抑制することで抗炎症を達成可能なことが示された。
【0008】
アトピー性皮膚炎実験において、前記アツバノリ属抽出物EHは、マウスのアトピー性皮膚炎の症状(例えば、紅斑、浮腫、表皮剥離及び乾燥等の症状)を改善可能であった。且つ、前記アツバノリ属抽出物EHは、アトピー性皮膚炎に起因して上昇したIgE発現量を低下させることが可能であった。このほか、アトピー性皮膚炎は、脾臓及びリンパ節を腫大させるが、前記アツバノリ属抽出物EHを投与することで、脾臓及びリンパ節の腫大を改善可能であった。この結果より、前記アツバノリ属抽出物EHが、アトピー性皮膚炎を治療可能なことが示された。
【0009】
本文中の「一の」又は「一種の」との用語は、本発明の部材及び成分を記載するために用いられる。この用語は、記載の便宜上、及び本発明の基本的観念を示すためのものにすぎない。このような記載は、一種又は少なくとも一種を含むと解釈すべきであり、且つ、別途明確に指定する場合を除き、単数で示す場合には複数の場合も含まれる。また、特許請求の範囲において「含む」との用語と合わせて使用する場合、この「一の」との用語は1又は1よりも大きいことを意味し得る。
【0010】
本文において、特許請求の範囲で使用する「又は」との用語は、「及び/又は」を意味する。ただし、別の選択に限る旨を別途明確に示している場合や、その他の選択と互いに排斥し合う場合を除く。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アツバノリ属抽出物の製造方法を提供する。前記方法は、以下のステップを含む。即ち、(a)アルコール系溶媒でアツバノリ属を抽出し、アツバノリ属アルコール系抽出物を取得する。前記アルコール系溶媒は、メタノール又はエタノールとする。(b)有機溶液又は超臨界抽出により前記アツバノリ属アルコール系抽出物を分配抽出することで有機溶媒層と水性層を形成したあと、前記水性層を採取する。前記有機溶液は、有機溶媒又は水と有機溶媒の混合液である。前記有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルエーテル、エチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム又は四塩化炭素である。(c)ステップ(b)で取得した水性層を1-ブタノールで分配抽出することで1-ブタノール層と水性層を形成する。続いて、前記水性層を採取することで、前記アツバノリ属抽出物を取得する。
【0012】
具体的実施例において、前記アツバノリ属はアツバノリ(Sarcodia ceylanica)である。
【0013】
別の具体的実施例において、前記アルコール系溶媒はエタノールである。好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属アルコール系抽出物はアツバノリ属エタノール抽出物である。
【0014】
具体的実施例において、前記有機溶媒は酢酸エチルである。本発明では、前記アツバノリ属抽出物を水性層から採取して取得するため、前記アツバノリ属抽出物はアツバノリ属水抽出物である。
【0015】
具体的実施例において、前記方法は、前記ステップ(a)の前にステップ(a1)を含む。前記ステップ(a1)では、前記アツバノリ属を乾燥させる。好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属は20~70℃の温度下で乾燥させる。より好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属は40~60℃の温度下で乾燥させる。別の具体的実施例において、前記アツバノリ属は50℃で乾燥させる。
【0016】
具体的実施例において、前記アツバノリ属の乾燥時間は12~48時間である。好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属の乾燥時間は16~32時間である。好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属の乾燥時間は20~24時間である。
【0017】
本発明では、前記アツバノリ属を乾燥させたあと、所定のメッシュ(mesh)孔径サイズの濾過網で濾過し、濾過後にエタノールで抽出する。具体的実施例において、前記方法は、前記ステップ(a)の前にステップ(a2)を含む。前記ステップ(a2)では、30~70メッシュ孔径の濾過網で前記アツバノリ属を濾過する。好ましい具体的実施例において、前記方法は、前記ステップ(a)の前にステップ(a2)を含む。前記ステップ(a2)では、40~60メッシュ孔径の濾過網で前記アツバノリ属を濾過する。より好ましい具体的実施例において、前記方法は、前記ステップ(a)の前にステップ(a2)を含む。前記ステップ(a2)では、50メッシュ孔径の濾過網で前記アツバノリ属を濾過する。
【0018】
別の具体的実施例において、前記アツバノリ属は、室温下でアルコール系溶媒により抽出する。好ましい具体的実施例において、ステップ(a)では、前記アツバノリ属をアルコール系溶媒に浸漬して3回抽出する。そして、3回分の浸漬液を合わせて濾過し、減圧して濃縮することで前記アツバノリ属アルコール系抽出物を取得する。
【0019】
具体的実施例において、ステップ(b)では、前記有機溶液で前記アツバノリ属アルコール系抽出物を分配抽出することで、有機溶媒層と水性層を形成したあと、前記水性層を採取する。好ましい具体的実施例において、ステップ(b)では、前記有機溶液で前記アツバノリ属アルコール系抽出物を分配抽出する。且つ、分配抽出操作を3回繰り返すことで、有機溶媒層と水性層を形成したあと、前記水性層を採取する。
【0020】
別の具体的実施例において、前記ステップ(b)は、前記有機溶液による抽出の前に、更にステップ(b1)を含む。前記ステップ(b1)では、前記アツバノリ属アルコール系抽出物を水中に浸漬して、アツバノリ属水性溶液を取得する。好ましい具体的実施例において、前記ステップ(b1)では、前記アツバノリ属アルコール系抽出物を水に浸漬して、前記アツバノリ属アルコール系抽出物を水中に浮遊させる。ステップ(b1)の実行後、元のステップ(b)において、ステップ(b1)で取得したアツバノリ属水性溶液を、前記水と有機溶媒の混合液を使用することなく、前記有機溶媒により分配抽出する。これにより、有機溶媒層と水性層を形成したあと、前記水性層を採取する。
【0021】
具体的実施例において、ステップ(c)では、ステップ(b)で取得した水性層を前記1-ブタノールで分配抽出する。且つ、分配抽出操作を3回繰り返すことで、前記1-ブタノール層と前記水性層を形成したあと、前記水性層を採取することで前記アツバノリ属抽出物を取得する。
【0022】
ステップ(b1)の実行後、元のステップ(b)において、ステップ(b1)で取得したアツバノリ属水性溶液を前記超臨界抽出により分配抽出する。具体的実施例において、ステップ(b)では、ステップ(b1)で取得したアツバノリ属水性溶液を前記超臨界抽出で分配抽出することで有機溶媒層と水性層を形成したあと、前記水性層を採取する。別の具体的実施例において、前記超臨界抽出は超臨界CO2抽出である。本発明において、超臨界CO2抽出により天然物の栄養成分を分離するプロセスでは、主に超臨界状態の二酸化炭素流体を利用して、高圧・低温条件下で天然物から栄養成分を抽出する。具体的実施例において、前記超臨界CO2抽出条件は、CO2:99%エタノール溶液の流速比=10mL/min:1mL/min、臨界圧力の範囲を150~400バール(bar)、及び臨界温度の範囲を20~60℃とする。好ましい具体的実施例において、前記超臨界CO2抽出条件は、CO2:95%エタノール溶液の流速比=10mL/min:1mL/min、臨界圧力を250バール(bar)、及び臨界温度を40℃とする。超臨界CO2抽出によっても同様に、超臨界CO2抽出反応槽内に残留する原料(水性層)と、抽出される物質(有機溶媒層)に分離される。よって、前記超臨界CO2抽出反応槽内の水性層を1-ブタノールで抽出することで、前記アツバノリ属抽出物を取得する。
【0023】
本発明では、ステップ(c)において、1-ブタノールにより抽出して分離した前記1-ブタノール層及び前記水性層のうち、前記水性層を採取したあと、まずはC18ガラスカラムで濾過し、余分な塩類を除去してから乾燥させることで、前記アツバノリ属抽出物を取得する。具体的実施例において、前記方法は、前記ステップ(c)のあとにステップ(d)を含む。前記ステップ(d)では、ステップ(c)で取得した水性層を濾過し、濾過後に乾燥させることで前記アツバノリ属抽出物を取得する。好ましい具体的実施例において、前記方法は、前記ステップ(c)のあとにステップ(d)を含む。前記ステップ(d)では、ステップ(c)で取得した水性層をC18ガラスカラムで濾過し、濾過後に乾燥させることで前記アツバノリ属抽出物を取得する。
【0024】
別の具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の成分は多糖を含まない。
【0025】
本発明は、更に、皮膚美白のための組成物の製造におけるアツバノリ属抽出物の使用を提供する。前記アツバノリ属抽出物の製造方法は以下のステップを含む。即ち、(a)アルコール系溶媒でアツバノリ属を抽出し、アツバノリ属アルコール系抽出物を取得する。前記アルコール系溶媒は、メタノール又はエタノールとする。
【0026】
具体的実施例において、前記ステップ(a)における前記アツバノリ属は、洗浄、乾燥及び/又は粉砕処理が施される。
【0027】
別の具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、更に、ステップ(a)の後にステップ(b)を含む。前記ステップ(b)では、有機溶液又は超臨界抽出により前記アツバノリ属アルコール系抽出物を分配抽出することで、有機溶媒層と水性層を形成する。続いて、前記水性層を採取することでアツバノリ属水性抽出物を取得する。前記有機溶液は、有機溶媒又は水と有機溶媒の混合液である。前記有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルエーテル、エチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム又は四塩化炭素である。
【0028】
具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、更に、前記有機溶液による抽出の前にステップ(b1)を含む。前記ステップ(b1)では、前記アツバノリ属アルコール系抽出物を水中に浸漬してアツバノリ属水性溶液を取得する。好ましい具体的実施例において、ステップ(b)では、ステップ(b1)で取得したアツバノリ属水性溶液を前記有機溶媒で分配抽出することで有機溶媒層と水性層を形成したあと、前記水性層を採取する。
【0029】
別の具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、更に、ステップ(b)の後にステップ(c)を含む。前記ステップ(c)では、ステップ(b)で取得した水性層を1-ブタノールで分配抽出することで1-ブタノール層と水性層を形成する。続いて、前記水性層を採取することで、前記アツバノリ属抽出物を取得する。
【0030】
具体的実施例において、前記アツバノリ属はアツバノリ(Sarcodia ceylanica)である。
【0031】
別の具体的実施例において、前記アルコール系溶媒はエタノールである。好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属アルコール系抽出物はアツバノリ属エタノール抽出物である。
【0032】
具体的実施例において、前記有機溶媒は酢酸エチルである。
【0033】
本発明において、前記アツバノリ属抽出物は、メラニンの生成抑制又はメラニンの減少を可能とすることで、皮膚美白の効果を達成する。具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物は、メラニン生成を抑制するか、メラニンを減少させる。好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物は、メラニン生成を抑制するかメラニンを減少させる組成物を製造するために用いられる。より好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物は、メラニン生成を抑制するかメラニンを減少させる医薬品又は化粧品を製造するために用いられる。
【0034】
具体的実施例において、前記組成物には、化粧品材料組成物、食品添加物又は医薬組成物が含まれる。好ましい具体的実施例において、前記組成物には、化粧品組成物、食品又は薬物が含まれる。よって、前記組成物は、化粧品、食品又は薬物を製造するために使用可能である。別の具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物は、皮膚美白のための医薬品又は化粧品を製造するために用いられる。
【0035】
例示的実施例において、前記組成物は化粧品組成物とすることができる。前記アツバノリ属抽出物以外にも、前記化粧品組成物は、機能性添加物及び化粧品組成物に一般的に含まれる成分を含有し得る。機能性添加物は、水溶性ビタミン、脂溶性ビタミン、ポリペプチド(polypeptide)、ポリサッカライド(polysaccharide)、スフィンゴ脂質(sphingolipid)及び海藻抽出物から選択される成分を含み得る。また、これらのほか、油、脂肪、湿潤剤、エモリエント(emollient)、界面活性剤、有機又は無機顔料、有機粉末、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、抗酸化剤、植物抽出物、ph調節剤(pH control agent)、アルコール、着色剤、香料、血液循環促進剤、清涼剤、止汗剤又は純水等を更に含んでもよい。
【0036】
化粧品組成物の製剤は特に制限せず、目的に応じて適切に選択すればよい。例えば、洗顔料(skin lotion)、皮膚軟化剤(softener)、スキントナー(toner)、収斂剤(astringent)、化粧水、乳液(milk lotion)、保湿ローション(moisturizing lotion)、栄養ローション(nourishing lotion)、マッサージクリーム(massage cream)、栄養クリーム(nourishing cream)、保湿クリーム(moisturizing cream)、ハンドクリーム(hand cream)、ファンデーション(foundation)、美容液(essence)、栄養美容液(nourishing essence)、パック(pack)、石鹸、クレンジングフォーム(cleansing foam)、クレンジングローション(cleansing lotion)、クレンジングクリーム(cleansing cream)、ボディローション(body lotion)及びボディソープ(body cleanser)のうちの1又は複数の製剤で構成される群から選択されるものとして製造可能である(ただし、これらに限らない)。
【0037】
本発明は、更に、メラニン生成抑制又はメラニン減少によって皮膚を美白する方法を提供する。前記方法では、個体の皮膚に有効投与量の組成物を投与する。前記組成物はアツバノリ属抽出物を含み、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は以下のステップを含む。即ち、(a)アルコール系溶媒でアツバノリ属を抽出し、アツバノリ属アルコール系抽出物を取得する。前記アルコール系溶媒は、メタノール又はエタノールとする。
【0038】
具体的実施例において、前記ステップ(a)における前記アツバノリ属は、洗浄、乾燥及び/又は粉砕処理が施される。
【0039】
別の具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、更に、ステップ(a)の後にステップ(b)を含む。前記ステップ(b)では、有機溶液又は超臨界抽出により前記アツバノリ属アルコール系抽出物を分配抽出することで、有機溶媒層と水性層を形成する。続いて、前記水性層を採取することでアツバノリ属水性抽出物を取得する。前記有機溶液は、有機溶媒又は水と有機溶媒の混合液である。前記有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルエーテル、エチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム又は四塩化炭素である。
【0040】
具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、更に、前記有機溶液による抽出の前に、ステップ(b1)を含む。前記ステップ(b1)では、前記アツバノリ属アルコール系抽出物を水中に浸漬してアツバノリ属水性溶液を取得する。好ましい具体的実施例において、ステップ(b)では、ステップ(b1)で取得したアツバノリ属水性溶液を前記有機溶媒で分配抽出することで有機溶媒層と水性層を形成したあと、前記水性層を採取する。
【0041】
別の具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、更に、ステップ(b)の後にステップ(c)を含む。前記ステップ(c)では、ステップ(b)で取得した水性層を1-ブタノールで分配抽出することで1-ブタノール層と水性層を形成する。続いて、前記水性層を採取することで、前記アツバノリ属抽出物を取得する。
【0042】
具体的実施例において、前記アツバノリ属はアツバノリ(Sarcodia ceylanica)である。
【0043】
別の具体的実施例において、前記アルコール系溶媒はエタノールである。好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属アルコール系抽出物はアツバノリ属エタノール抽出物である。
【0044】
具体的実施例において、前記有機溶媒は酢酸エチルである。
【0045】
別の具体的実施例において、前記個体は動物であり、好ましくは哺乳類であり、より好ましくはヒトである。
【0046】
本発明では、前記組成物が前記個体の皮膚に投与されて、前記皮膚部位のメラニンを抑制又は減少させることで前記箇所の皮膚を美白する。具体的実施例において、前記組成物は、乳液、化粧水、美容液、日焼け止め、化粧下地又はフェイシャルマスクの形式で製造される。
【0047】
本文中の「有効投与量」との用語は、特定の条件において、1つの個体の症状の進行を予防、低下、阻止又は逆転させられるか、前記個体が治療を受け始めた時点において、特別な状況下で存在していた症状を、部分的もしくは完全に緩和可能な治療投与量のことである。当業者であれば、前記アツバノリ属抽出物を個体に投与する際の適切な投与量及び用法を容易に測定可能である。例えば、前記アツバノリ属抽出物は、前記個体に1回又は2回投与可能である。投与量及び用法には、複数回投与する際に、前記個体に投与する前記アツバノリ属抽出物の有効投与量(投与量及び用法の全期間に投与される生成物の総量を含む)を理解し得ることが含まれる。
【0048】
皮膚美白の場合、具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の有効投与量の範囲は5μg/ml~500μg/mlである。好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の有効投与量の範囲は20μg/ml~200μg/mlである。より好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の有効投与量の範囲は50μg/ml~100μg/mlである。
【0049】
本発明は、更に、抗炎症のための薬物の製造における組成物の使用を提供する。前記組成物はアツバノリ属抽出物を含み、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は以下のステップを含む。即ち、(a)アルコール系溶媒でアツバノリ属を抽出し、アツバノリ属アルコール系抽出物を取得する。前記アルコール系溶媒は、メタノール又はエタノールとする。
【0050】
具体的実施例において、前記ステップ(a)における前記アツバノリ属は、洗浄、乾燥及び/又は粉砕処理が施される。
【0051】
別の具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、更に、ステップ(a)の後にステップ(b)を含む。前記ステップ(b)では、有機溶液又は超臨界抽出により前記アツバノリ属アルコール系抽出物を分配抽出することで、有機溶媒層と水性層を形成する。続いて、前記水性層を採取することでアツバノリ属水性抽出物を取得する。前記有機溶液は、有機溶媒又は水と有機溶媒の混合液である。前記有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルエーテル、エチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム又は四塩化炭素である。
【0052】
具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、更に、前記有機溶液による抽出の前に、ステップ(b1)を含む。前記ステップ(b1)では、前記アツバノリ属アルコール系抽出物を水中に浸漬してアツバノリ属水性溶液を取得する。好ましい具体的実施例において、ステップ(b)では、ステップ(b1)で取得したアツバノリ属水性溶液を前記有機溶媒で分配抽出することで有機溶媒層と水性層を形成したあと、前記水性層を採取する。
【0053】
別の具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の製造方法は、更に、ステップ(b)の後にステップ(c)を含む。前記ステップ(c)では、ステップ(b)で取得した水性層を1-ブタノールで分配抽出することで1-ブタノール層と水性層を形成する。続いて、前記水性層を採取することで、前記アツバノリ属抽出物を取得する。
【0054】
具体的実施例において、前記アツバノリ属はアツバノリ(Sarcodia ceylanica)である。
【0055】
本文中で使用する「抗炎症」との用語には、炎症症状を治療又は処置することが含まれる(ただし、これに限らない)。
【0056】
具体的実施例において、前記抗炎症には炎症性因子の抑制が含まれる。好ましい具体的実施例において、前記炎症性因子には、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)及び誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)が含まれる。より好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物は、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)及び誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)により引き起こされる炎症を抑制する。
【0057】
つまり、前記アツバノリ属抽出物は炎症を抑制可能であり、更には、アレルギー性皮膚炎の治療に応用可能である。具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物は、抗炎症によりアレルギー性皮膚炎を治療する。好ましい具体的実施例において、前記薬物は、抗炎症によりアレルギー性皮膚炎を治療する。
【0058】
本文中で使用する「治療」との用語は、症状又は合併症の緩和、疾患、病症又は病状の進行の遅延、症状及び合併症の軽減又は緩和、及び/又は、疾患、病症又は病状の治愈又は除去を意味する。
【0059】
本文中で使用される「アレルギー性皮膚炎」との用語は、アレルギー反応を要因とする皮膚疾患の総称であって、慢性的な痒みや、顔、首、肘及び/又は膝の発疹を特徴とする。アレルギー性皮膚炎としては、例えば、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎等が挙げられる。「接触皮膚炎」とは、外来性の抗原が皮膚と接触することで発症する湿疹性の炎症疾患であり、例えば、アレルギー性接触皮膚炎、光接触皮膚炎、全身性接触皮膚炎及び接触性蕁麻疹が挙げられる。また、抗原としては、例えば、金属アレルゲン(コバルト、ニッケル等)、植物アレルゲン(ウルシ、サクラソウ等)及び食物アレルゲン(マンゴー、イチョウ等)が挙げられる。「アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis,AD)」とは、多数の患者にアトピー性傾向のある皮膚疾患のことを言う。また、悪化と緩和を繰り返す左右対称の全身性湿疹を特徴とし、例えば、びまん性神経皮膚炎、アトピー性湿疹、アトピー性神経皮膚炎、ベニエ痒疹(Besnier prurigo)、急性乳児湿疹、屈曲部湿疹、四肢小児湿疹、小児アトピー性湿疹、小児乾燥型湿疹、小児湿疹、成人アトピー性皮膚炎、内因性湿疹、小児皮膚炎及び慢性小児湿疹が挙げられる。
【0060】
具体的実施例において、前記アレルギー性皮膚炎には、接触皮膚炎又はアトピー性皮膚炎が含まれる。好ましい具体的実施例において、前記アレルギー性皮膚炎にはアトピー性皮膚炎が含まれる。より好ましい具体的実施例において、前記アトピー性皮膚炎には、びまん性神経皮膚炎、アトピー性湿疹、アトピー性神経皮膚炎、ベニエ痒疹、急性乳児湿疹、屈曲部湿疹、四肢小児湿疹、小児アトピー性湿疹、小児乾燥型湿疹、小児湿疹、成人アトピー性皮膚炎、内因性湿疹、小児皮膚炎又は慢性小児湿疹が含まれる。
【0061】
別の具体的実施例において、前記薬物は、紅斑、浮腫、表皮剥離又は皮膚の乾燥を含むアトピー性皮膚炎の症状を抑制する。
【0062】
具体的実施例において、前記薬物は、前記アトピー性皮膚炎に由来するIgE発現量の上昇を低下させる。
【0063】
別の具体的実施例において、前記薬物は、前記アトピー性皮膚炎に由来する脾臓又はリンパ節の腫大を改善する。
【0064】
具体的実施例において、前記薬物は、更に、薬学的に許容可能な担体(pharmaceutically acceptable carrier)を含む。本文中で使用される「薬学的に許容可能な担体」との用語は、特定の組み合わせで適用及び特定の方法で適用される組成物により決定される。本文中で使用される「担体」との用語には、任意及びあらゆる溶媒、分散媒、賦形剤(vehicle)、コーティング、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤等の浸透・吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液又はコロイド等が含まれる(但し、これらに限らない)。薬物の活性物質に用いられるこれらの媒質及び試薬は前記分野において公知である。いずれかの一般的な媒質又は試薬と活性成分との相性が悪い場合を除き、治療のための組み合わせが考慮されるべきである。また、補足的な活性成分を組成物に混合してもよい。「薬学的に許容可能」との用語は、分子の実体と組成物を被験者に適用したときに、アレルギー又は類似の副反応が発生しないことを言う。タンパク質を活性物質とする水組成物の製造は、前記分野において周知である。通常、この組成物は、液体・溶液、錠剤、カプセル又は懸濁注射剤として製造される。また、注射剤として使用し得る溶解可能な固体又は懸濁液の固体として製造してもよい。別の具体的実施例において、前記薬学的に許容可能な担体には、皮膚学的に許容可能な媒質が含まれる。「皮膚学的に許容可能な媒質」とは、例えば、塩類、エステル類及び/又は酸アミド類の成分といった生物学的に適切な物質を意味する。即ち、この物質は、選択された有効成分と合わせて使用する場合に、個体に投与しても望まない生物学的作用を引き起こすことがない。また、前記物質は、この物質を含む薬剤成分におけるいずれの成分とも有害な相互作用を生じない物質である。同様に、文中の「皮膚学的に許容可能な塩」又は「皮膚学的に許容可能なエステル」は、生物学的に適切な塩又はエステルである。
【0065】
本発明において、前記組成物(前記アツバノリ属抽出物を含む)と薬学的に許容可能な担体の配合には、無菌の水溶液又は分散体、水懸濁液、油エマルション、油中エマルションの水、特定点エマルション、長期滞留エマルション、粘性エマルション、マイクロエマルション、ナノエマルション、リポソーム、微粒子、ミクロスフェア、ナノスフェア、ナノ粒子、マイクロ水銀、及び、持続的に放出される数種類の天然又は合成ポリマーを利用可能である。薬学的に許容可能な担体及び前記アツバノリ属抽出物は、エアロゾル剤、タブレット、丸剤、カプセル、滅菌粉末、座薬、洗剤、クリーム、軟膏剤、ペースト、ゲル、ヒドロゲル、又は組成物の搬送に使用可能なその他の製剤として配合してもよい。
【0066】
また、本発明で言うところの組成物には、局所的及び領域的に投与されて作用する組成物が含まれる。本文で使用される「局所」との用語は、本文中で記載する組成物を使用して適切な薬用担体に混合し、皮膚の部位(例えば、アレルギー性皮膚炎の患部)に塗布することで局所的作用を奏することに関連する。そのため、こうした局所用の前記組成物には、処置対象の皮膚の表面と直接接触して外部から塗布する化合物といった薬物形式が含まれる。この目的のための一般的な薬物形式には、軟膏剤、擦剤、クリーム、シャンプー、エマルション、ペースト、ゲル、スプレー剤、エアロゾル等が含まれる。且つ、治療対象の身体部位に応じて、貼付剤、又は湿潤包帯の形式で使用することも可能である。「軟膏剤」との用語には、油性基質、水溶性基質及びエマルション基質を有する製剤(クリームを含む)が含まれる。前記基質は、例えば、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール類及びこれらを組み合わせた混合物である。
【0067】
本発明の薬物は、更に、薬学的に許容可能な担体を含み、本発明の関連分野で周知の治療方式によって、多数の異なる手段で個体に投与可能である。いくつかの実施例において、前記組成物(前記アツバノリ属抽出物を含む)及び薬学的に許容可能な担体は、外用、静脈、筋肉、皮下、局所、経口又は吸入により投与される。また、前記薬物は、消化及び循環系によって標的箇所に伝達される。
【0068】
別の具体的実施例において、前記個体は動物であり、好ましくは哺乳類であり、より好ましくはヒトである。
【0069】
抗炎症の場合、具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の有効投与量の範囲は1mg/体重kg~200mg/体重kgである。好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の有効投与量の範囲は5mg/体重kg~100mg/体重kgである。より好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の有効投与量の範囲は10mg/体重kg~40mg/体重kgである。
【0070】
アレルギー性皮膚炎を治療する場合には、具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の有効投与量の範囲は0.05~20mg/mlである。好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の有効投与量の範囲は0.1~10mg/mlである。より好ましい具体的実施例において、前記アツバノリ属抽出物の有効投与量の範囲は0.5~2mg/mlである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図2】
図2は、細胞内のメラニン含有量に対するアツバノリ属抽出物EHの影響を示す。
【
図3】
図3は、ゼブラフィッシュの魚体色素に対するアツバノリ属抽出物EHの影響を示す。ゼブラフィッシュの胚本体に、受精から9時間後にアツバノリ属抽出物EHを投与し、48時間浸漬したあと、仔魚を取り出して魚体を撮影及び分析した。また、5.4mg/mLのアルブチン及び30.4μg/mLのPTUをポジティブコントロール群とした。画像定量ソフトを用いて魚体の腹部をマークし、各群のゼブラフィッシュのメラニン生成発現量を解析した。その結果、EH(100μg/mL)はゼブラフィッシュのメラニン生成を抑制可能であり、美白活性を有することが示された。データは、平均値±平均値の標準誤差(mean±SEM)を示している。また、コントロール群と比較して有意差を有していたもの(P<0.05)を*で示す。
【
図4】
図4は、リポ多糖(LPS)誘導型のiNOSに対するアツバノリ属抽出物EHの影響を示す。10ng/mLのリポ多糖でRaw264.7細胞に炎症反応を誘発し、20μg/mL、50μg/mL及び100μg/mLのアツバノリ属抽出物EHを加えて16時間培養した。また、10μMのデキサメタゾン(Dex)をポジティブコントロール群とした。ウエスタンブロッティングで炎症性因子iNOSの発現量を分析した結果、EHがiNOSを顕著に抑制可能なことが示された。データは、平均値±平均値の標準誤差(mean±SEM)を示している。また、LPS群と比較して有意差を有していたもの(P<0.05)を*で示す。
【
図5】
図5は、リポ多糖(LPS)誘導型のCOX-2に対するアツバノリ属抽出物EHの影響を示す。10ng/mLのリポ多糖でRaw264.7細胞に炎症反応を誘発し、20μg/mL、50μg/mL及び100μg/mLのアツバノリ属抽出物EHを加えて16時間培養した。また、10μMのデキサメタゾン(Dex)をポジティブコントロール群とした。ウエスタンブロッティングで炎症性因子COX-2の発現量を分析した結果、EHがCOX-2を顕著に抑制可能なことが示された。データは、平均値±平均値の標準誤差(mean±SEM)を示している。また、LPS群と比較して有意差を有していたもの(P<0.05)を*で示す。
【
図6】
図6は、アトピー性皮膚炎を罹患したマウスの皮膚外観に対するアツバノリ属抽出物EHの影響を示す。図中の(A)は、DNCBでアトピー性皮膚炎を誘発し、マウスの皮膚にアトピー性皮膚炎の症状が発現したあと、毎日の薬物塗布を開始して、治療1日目、7日目、12日目にDNCB誘発アトピー性皮膚炎のマウスの皮膚外観をそれぞれ撮影したものを示している。なお、スケールバー=1cmである。その結果、AD群と比較して、EHL群(低投与量群)とEHH群(高投与量群)は、いずれもアトピー性皮膚炎の症状を緩やかにする効果を有しており、表皮の浮腫、赤み、乾燥及びかさぶた等の現象がいずれも緩和された。図中の(B)は、治療12日目のアツバノリ属抽出物EHによるアトピー性皮膚炎症状緩和の臨床皮膚炎スコアを示している。EHによるアトピー性皮膚炎症状の緩和を臨床皮膚炎スコアで評価した。このとき、4つの皮膚表面症状として、紅斑/出血、浮腫、表皮剥離/びらん、乾燥を用いて皮膚炎の重大性を評価した。そして、各種症状の重症度に応じて0~3点をそれぞれ付与し、点数が高いほど重症とした。皮膚炎の総スコアは上記4種類の点数の合計とし、最高で12点であった。点数が高いほど皮膚炎の重症度は深刻であった。データは、平均値±平均値の標準誤差(mean±SEM)を示している。また、AD群と比較して有意差を有していたもの(P<0.05)を*で示し、ADV群と比較して有意差を有していたものを#で示している。
【
図7】
図7は、血清中IgEに対するアツバノリ属抽出物EHの影響を示す。動物を殺処分する前に血液を採取し、血清中のIgEを検出した。DNCB誘発アトピー性皮膚炎によりIgEは上昇したが、アツバノリ属抽出物EHを塗布することでIgEは低下した。データは、平均値±平均値の標準誤差(mean±SEM)を示している。また、AD群と比較して有意差を有していたもの(P<0.05)を*で示し、ADV群と比較して有意差を有していたものを#で示している。
【
図8】
図8は、DNCB誘発で腫大した脾臓重量に対するアツバノリ属抽出物EHの影響を示している。動物の殺処分時に脾臓組織を採取し、撮影及び計量した。DNCB誘発アトピー性皮膚炎により脾臓組織は腫大したが、アツバノリ属抽出物EHを塗布することで脾臓の重量は減少した。なお、スケールバー=1cmである。データは、平均値±平均値の標準誤差(mean±SEM)を示している。また、AD群と比較して有意差を有していたもの(P<0.05)を*で示し、ADV群と比較して有意差を有していたものを#で示している。
【
図9】
図9は、DNCB誘発で腫大したリンパ節重量に対するアツバノリ属抽出物EHの影響を示している。動物の殺処分時にリンパ節組織を採取し、撮影及び計量した。DNCB誘発アトピー性皮膚炎によりリンパ節組織は腫大したが、アツバノリ属抽出物EHを塗布することでリンパ節の重量は減少した。なお、スケールバー=0.5cmである。データは、平均値±平均値の標準誤差(mean±SEM)を示している。また、AD群と比較して有意差を有していたもの(P<0.05)を*で示し、ADV群と比較して有意差を有していたものを#で示している。
【発明を実施するための形態】
【0072】
養殖型アツバノリ属の抽出
本発明では、人工的に養殖したアツバノリ(Sarcodia ceylanica)を使用した。
【0073】
アツバノリ属を50℃の条件下で24時間乾燥させて、乾燥アツバノリ属を取得した。10.8kgの乾燥アツバノリ属を粉砕し、50メッシュ(mesh)の濾過網で濾過してから、室温で95%アルコール(EtOH)に浸漬して3回抽出した。そして、3回分の浸漬液を合わせて濾過し、減圧して濃縮することで、370.5gのアツバノリ属アルコール粗抽出物を取得することができた。次に、上記のアツバノリ属粗抽出物を1Lの水に加えて浮遊状としてから、1Lの酢酸エチル(EtOAc)を加えて分配抽出を行った。上記の分配抽出を3回繰り返すことで酢酸エチル層と水性層を形成し、上記酢酸エチル層を除去したあと、前記水性層を採取した。また、前記水性層を1Lの1-ブタノール(n-BuOH)で分配抽出し、上記の分配抽出を3回繰り返すことで1-ブタノール層と水性層を形成した。そして、1-ブタノール層を除去し、分離した水性層からC18ガラスカラムによる濾過で余分な塩類を除去したあと、乾燥させることで抽出物EH(150g)を取得した。アツバノリ属の全抽出フローを
図1に示す。
【0074】
また、上記の抽出ステップでは、前記アルコール溶液をメタノール溶液に置き換えてもよい。且つ、酢酸エチルで抽出するステップは、その他の有機溶媒に置き換えてもよい。例えば、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルエーテル、エチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム又は四塩化炭素溶媒を用いて分配抽出するか、超臨界抽出(例えば、超臨界CO2抽出)を行ったあと、1-ブタノールを用いて抽出することでもEHと同じ成分の抽出物を取得可能である。
【0075】
また、水を酢酸エチル又はその他の有機溶媒と混合して有機溶液とし、前記アツバノリ属アルコール粗抽出物を直接抽出してもよい。この場合には、水と有機溶媒を2つのステップに分けてそれぞれ抽出する必要がない。そのほか、事前に水に浸漬するステップを不要とし、酢酸エチル又はその他の有機溶媒をそのまま用いて前記アツバノリ属アルコール粗抽出物を抽出してもよい。上記のステップの変更によっても、最終的にはEHと同じ成分の抽出物を取得可能である。
【0076】
上記の超臨界CO2抽出条件は、CO2:95%エタノール溶液の流速比=10mL/min:1mL/min、臨界圧力を250バール(bar)、及び臨界温度を40℃とする。超臨界CO2抽出によっても同様に、超臨界CO2抽出反応槽内に残留する原料(水性層)と、抽出される物質に分離される。よって、前記超臨界CO2抽出反応槽内の原料(水性層)を1-ブタノールで抽出することで、前記アツバノリ属抽出物EHを取得する。
【0077】
且つ、本発明では、フェノール-硫酸法でEHの多糖含有量を測定した結果、EHは多糖成分を含有していなかった。そのため、事前にアルコールでアツバノリ属を浸漬する抽出方法によって多糖成分が溶出されることはなく、アツバノリ属アルコール粗抽出物に多糖成分は含有されなかった。
【0078】
実験方法
(1)EHの美白効果の評価
(a)インビトロ細胞試験
B16-F10細胞を1ウェルあたり104個の細胞密度で24ウェル培養プレートのウェル内で培養し、細胞インキュベータに配置した。24時間後に元の細胞培養液を除去し、アツバノリ属抽出液を含有する細胞培養液を加えてから、再びインキュベータに配置して48時間培養した。次に、トリプシンの作用を利用して細胞を収集し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を洗浄してから、100μlの1N NaOH水溶液を加え、90℃で1時間反応させた。そして、酵素免疫分析装置で波長405nmの吸光値を検出し、データ分析を行った。コントロール群のデータを100%とし、実験群間の吸光値の強弱を比較することで、アツバノリ属抽出液EHの美白効果を示した。且つ、美白に用いられるアルブチン(Arbutin)及びN-フェニルチオ尿素(N-phenylthiourea,PTU)をポジティブコントロール群とした。また、α-メラニン細胞刺激ホルモン(α-Melanocyte-stimulating hormone,α-MSH)を細胞中のメラニン生成の促進に用いた。
【0079】
(b)生体ゼブラフィッシュの美白活性分析
実験では、魚齢4ヶ月以上のゼブラフィッシュ(AB strain Danio rerio)を用いて実験用に養殖した。ゼブラフィッシュは、フィルタ及び循環システムを備えたアクリル水槽で飼育し、水温を28.5℃に制御した。また、明暗周期をそれぞれ14時間と10時間となるよう制御した。
【0080】
受精から9時間後のゼブラフィッシュの胚本体を採取し、96ウェルプレートに注入した。各ウェル内には、3つの胚本体と100μLのハンクスバッファ(Hank’s buffer)(0.04 mM NaHCO3、1.3mM CaCl2、2mM MgSO4)が存在するようにした。次に、コントロール群には100μLの1%ジメチルスルホキシド(DMSO)を加え、ポジティブコントロール群と実験群には、それぞれ、100μLの5.4mg/mLのアルブチン(Arbutin、シグマアルドリッチ社、ミズーリ州、USA、Cat.No.#A4256)、30.4μg/mLのN-フェニルチオ尿素(N-phenylthiourea,PTU、シグマアルドリッチ社、ミズーリ州、USA、Cat.No.#P7629)、及び濃度50μg/mL、100μg/mL及び200μg/mLのアツバノリ属抽出物EH(いずれも1%DMSOに溶解)を加えて、温度制御照明付インキュベータ(明/暗周期:14/10時間、28.5℃)に配置して48時間培養した。薬物処理から48時間後(即ち、受精から57時間後)に、幼魚を麻酔剤トリカイン(Tricaine、168ppm、MS-222)で麻酔したあと、ホールスライドグラスの凹溝に載置した。そして、2%メチルセルロース(Methyl cellulose、シグマアルドリッチ社、ミズーリ州、USA、Cat.No.#M0512)で魚体を固定し、実体顕微鏡(Z16 APO、ライカ、ヘーアブルーク、スイス)で観察した。また、画像キャプチャシステム及びソフトウェア(idea SPOT & SPOT software VERSION 4.6、Diagnostic instruments Inc.、USA)を組み合わせて魚体画像を取得した。魚体画像には画像処理ソフト(Image J、アメリカ国立衛生研究所、メリーランド州、USA)を用い、魚体腹部の面積をそれぞれマークして、各群のゼブラフィッシュのメラニン値を定量分析した。そして、コントロール群のメラニン値を100%として、実験群のメラニン値を比較することで、アツバノリ属抽出物EHの美白効果を評価した。
【0081】
(2)EHの抗炎症活性の評価
インビトロ細胞試験
5×105個のRaw264.7細胞を6cmシャーレに移植し、付着してから、まずはリポ多糖(LPS)(0.01μg/mL、シグマアルドリッチ社、ミズーリ州、USA、Cat.No.#L2654)を加えた。そして、10分後に異なる濃度のEHを加えるとともに、10μMのデキサメタゾン(Dexamethasone,Dex)(シグマアルドリッチ社、ミズーリ州、USA、Cat.No.#D4902)をポジティブコントロール群として、共に16時間培養した。続いて、ウエスタンブロッティング(Western blot)によりEHの抗炎症活性を評価し、炎症促進に関与するタンパク質であるシクロオキシゲナーゼ-2(cyclooxygenase-2,COX-2)及び誘導型一酸化窒素合成酵素(inducible nitric oxide synthase,iNOS)の相対的発現量を分析した。また、リポ多糖(LPS)を単独で加えた群を100%とした。最後に、β-アクチン(β-actin)を内在性コントロール群とした。
【0082】
(3)アトピー性皮膚炎に対するEHの治療効果
本発明で使用した実験動物は、BALB/c系統マウスであった。マウスを2.5%イソフルラン(isoflurane)で麻酔したあと、シェーバーと除毛クリームでマウスの背部の毛を除去し、直径1cmのシリコーンゴムで印を付けた(面積78.5mm2)。次に、2日に1回、上記範囲に26μLの2% 2,4-ジニトロクロロベンゼン(2,4-dinitirochlorobenzene,DNCB)(シグマアルドリッチ社、ミズーリ州、USA、Cat.No.#138630)を滴下した。これを全部で8回行って、皮膚の病変を誘発した。
【0083】
DNCB誘発から7日後に、100μLの媒液(Vehicle)、アツバノリ属抽出物EH、又はアトピー性皮膚炎治療薬クリサボロール(crisaborole)を毎日塗布した。実験動物は、(1)コントロール群:未誘発、(2)AD群:2%DNCBのみを投与、(3)ADV群:2%DNCBと媒液(Vehicle)を投与、(4)EHL群:DNCB誘発後に50μgのEH/1%メチルセルロース100μLを投与、(5)EHH群:DNCB誘発後に200μgのEH/1%メチルセルロース100μLを投与、及び(6)Cri群:DNCB誘発後に25μgのクリサボロール/1%アセトール(acetone-EtOH)100μLを投与、に群分けした(各群3匹)。また、DNCBを塗布してから5分後に、DNCBの乾燥を待って薬を塗布した。誘発又は薬塗布前に、デジタルカメラで皮膚症状の変化を撮影して記録した。
【0084】
18日目に動物を殺処分し、採血するとともに、背部の皮膚、脾臓及びリンパ節の組織を採取した。そして、脾臓及び腸骨下リンパ節(Subiliac lymph node)の大きさを観察し、計量して比較した。また、皮膚表面の紅斑/出血(erythema/hemorrhage)、浮腫(edema)、表皮剥離/びらん(excoriation/erosion)、乾燥(dryness)という4つの症状から、臨床的な皮膚炎の重大性を評価した。各症状の重症度に応じて0~3点をそれぞれ付与し、0点は無症状、1点は軽症、2点は中等症、3点は重症とした。皮膚炎の総スコアは上記4種類の点数の合計とし、最高で12点であった。点数が高いほど皮膚炎の重症度は深刻であった。
【0085】
殺処分前に、心臓採血法でマウスの血液を採血管(BD vacutainer-SST、ニュージャージー州、USA)に採取した。その後、血液を3000rpmで10分間遠心分離にかけて血清を取得した。血清は、次に使用するまで-80℃の冷蔵庫で保存した。そして、メーカーの説明書に従って、血清中のIgE濃度を検出した(IgE-ELISA kit、サーモフィッシャーサイエンティフィック社、ウィーン、オーストリア)。
【0086】
炎症又は免疫関連の疾患が発生した場合には、リンパ節及び脾臓が腫大(swell)する。そのため、マウスを殺処分する際にこれら2つの器官を採取して撮影し、重量を計測した。
【0087】
統計分析
全ての実験データは、平均値±平均値の標準誤差(mean±SEM)で示した。複数の群間でデータを比較するために、一元配置分散分析(one-way analysis of variance,ANOVA)によってデータの統計分析を行った。また、ダンカン法(Duncan’s Method)で群間差を多重比較した。且つ、P値が0.05よりも小さいときに、群間に有意差があるとした。
【0088】
結果
(1)EHの美白効果
B16F10細胞に100mMのα-MSHを用いてメラニン生成を誘発し、10μg/mlのEH溶液又は100μMのPTUを投与して48時間培養した。その後、細胞を採取し、1N NaOHでメラニンを溶解した。最後に、波長405nmの吸光値を読み取った。メラニンが多いほど吸光値は高かった。結果は
図2に示す通りとなり、コントロール群が100±5.33%、ポジティブコントロール群のPTUが37.41±3.94%であったのに対し、10μg/mLのEHは細胞のメラニン生成を顕著に抑制可能であった(72.64±2.79)。
【0089】
環境投薬方式でEHの美白活性を評価した。ゼブラフィッシュの胚本体に薬物を投与してから48時間後に、仔魚の魚体色素を撮影して色素斑を定量分析した。結果は
図3に示す通りとなった。コントロール群が100±6.06%であり、ポジティブコントロール群のアルブチン及びPTUがいずれも魚体色素を顕著に抑制した(9.86±1.40%、3.08±0.62%)のに対し、50μg/mL、100μg/mL及び200μg/mLのEHは魚体色素を顕著に抑制可能であった(78.61±7.68%、70.12±8.62%、63.64±8.50%)。
【0090】
(2)EHの抗炎症効果
EHが炎症反応を抑制する効果を有するか否かを検査した。Raw264.7細胞にLPSを加えて炎症反応を誘発し、濃度20μg/mL、50μg/mL及び100μg/mLのEHを加えて共に16時間培養した。その後、ウエスタンブロッティングによって炎症性タンパク質iNOS及びCOX-2の発現量を検出した。結果は
図4に示す通りとなった。コントロール群についてはLPSで炎症反応を誘発しなかったため、iNOSの発現量は1.04±0.15%であった。これに対し、LPS群のiNOS発現量は100.00±10.74%であった。一方、濃度10μMのデキサメタゾン(Dex)をポジティブコントロール群としたところ、この群のiNOS発現量は著しく低下した(14.78±0.92%)。また、100μg/mLのEHはiNOSの発現量を顕著に抑制可能であった(65.95±1.95%)。
【0091】
図5に示すように、コントロール群についてはLPSで炎症反応を誘発しなかったため、COX-2の発現量は4.65±3.12%であった。これに対し、LPS群のCOX-2の発現量は100.00±0.99%であった。一方、濃度10μMのデキサメタゾン(Dex)をポジティブコントロール群としたところ、COX-2の発現量が顕著に抑制された(2.90±0.71%)。また、20~100μg/mLのEHはCOX-2を顕著に抑制可能であり、発現量がそれぞれ68.55±0.46%、35.43±9.55%及び72.77±7.81%となった。
【0092】
(3)アトピー性皮膚炎に対するEHの治療効果
マウスのDNCB誘発アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis,AD)の症状には、紅斑、浮腫、表皮剥離、乾燥及び苔癬化等の現象が含まれた。マウスに明らかな紅斑、浮腫、表皮剥離及び乾燥等の症状が現れたあと、EH又はクリサボロール(crisaborole,Cri)を毎日塗布し、EHがADの治療効果を有するか否かをテストした。
図6Aに示すように、マウスの皮膚外観の症状を観察及び撮影・記録するとともに、
図6Bに示すように、臨床皮膚炎スコアでEHの治療効果を定量化した。
【0093】
コントロール群は、被毛が少ないために皮膚表面が乾燥しており、点数は0.75±0.25となった。AD群及びADV群の皮膚表面は角質細胞が増殖し、分厚いかさぶたが形成された。日を追うごとに一部のかさぶたは剥離し、誘発周囲の皮膚の乾燥が観察された。また、皮膚には皺が見られた。且つ、炎症によって、皮膚に紅斑及び浮腫が現れた。しかし、角質細胞が増殖を続けたことで、皮膚表面にはかさぶたも存在していた。これら2つの群の臨床皮膚炎スコアはコントロール群に比べて著しく上昇し、それぞれ、9.17±0.40及び9.50±0.56となった。これに対し、日を追うごとに、EH及びクリサボロールを塗布した群は、かさぶたの剥離後に、乾燥、紅斑及び浮腫が観察されたものの、角質細胞の増殖度合はAD群よりも軽微とみられた。そのため、動物の殺処分前に、EHL群及びEHH群の皮膚炎スコアは著しく低下した(4.50±0.50及び3.67±0.67)。一方、Cri群の皮膚炎スコアは4.80±0.37であり、AD群に対し統計的に有意であった。上記の結果は、EHがAD症状の緩和効果を有することを示している。
【0094】
IgEは、アトピー性皮膚炎の臨床診断指標の1つである。マウスの殺処分前に、血清を採取してIgEの含有量を測定したところ、結果は
図7に示す通りとなった。コントロール群の血清中IgE含有量は1.71±0.14μg/mLであった。また、AD群及びADV群のIgE濃度は明らかに上昇していた(68.89±4.12μg/mL及び68.95±2.60μg/mL)。これに対し、EHL群及びEHH群のIgE含有量は、52.32±3.41μg/mL及び46.31±3.81μg/mLまで著しく低下した。一方、Cri群の血清IgE含有量は、65.61±1.74μg/mLまで低下した。アトピー性皮膚炎に伴って上昇した血清中IgEは、EHを塗布することで低下させることができた。
【0095】
炎症又は免疫関連の疾患が発生した場合には、リンパ節及び脾臓が腫大(swell)する。そのため、マウスを殺処分する際にこれら2つの器官を採取して撮影し、重量を計測した。脾臓重量の結果は
図8に示す通りとなった。コントロール群の脾臓重量は91.08±3.61mgであった。また、AD群及びADV群の脾臓は明らかに腫大し、コントロール群の2.5倍となった(234.46±6.56mg及び221.14±13.32mg)。これに対し、EHL群及びEHH群の脾臓重量は著しく低下した(161.23±9.97mg及び171.07±5.58mg)。一方、Cri群の脾臓重量は著しく低下し、167.46±10.61mgとなった。
【0096】
リンパ節の総重量の結果は
図9に示す通りとなった。コントロール群の2つのリンパ節の総重量は4.46±0.29mgであった。また、AD群及びADV群のリンパ節は明らかに腫大し、コントロール群の3倍となった(12.07±0.33mg及び11.61±0.54mg)。これに対し、EHL群及びEHH群のリンパ節重量は著しく低下した(9.06±0.54mg及び9.13±0.75mg)。一方、Cri群のリンパ節重量は著しく低下し、9.49±0.81mgとなった。以上の結果より、アトピー性皮膚炎による炎症又は免疫反応に伴って腫大したリンパ節及び脾臓は、EHを塗布することで上記のような現象を抑制可能であった。
【0097】
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