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特開2023-20835酸化マグネシウムを含有する小児慢性機能性便秘症治療用医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020835
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】酸化マグネシウムを含有する小児慢性機能性便秘症治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/06 20060101AFI20230202BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A61K33/06
A61K9/20
A61K9/16
A61P1/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211189
(22)【出願日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2021126021
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】722010585
【氏名又は名称】セトラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勇哉
(72)【発明者】
【氏名】大西 葉月
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 大介
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC16
4C076DD29
4C076DD41C
4C076DD61T
4C076EE16B
4C076EE31A
4C076EE32B
4C076EE41T
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA04
4C086HA21
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA41
4C086NA10
4C086ZA72
4C086ZC51
(57)【要約】
【課題】1歳から5歳までの小児便秘症患者に対し、十分な便秘症治療成功率を実現する医薬組成物を提供する。
【解決手段】便秘症を治療するための、酸化マグネシウムを有効成分として含有する医薬組成物であって、体重7.5kg以上、年齢1~5歳の小児患者に対して、酸化マグネシウムの1日あたり投与用量が25~45mg/kgとなるように、1日2回経口投与されることを特徴とする医薬組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便秘症を治療するための、酸化マグネシウムを有効成分として含有する医薬組成物であって、体重7.5kg以上、年齢1~5歳の小児患者に対して、酸化マグネシウムの1日あたり投与用量が25~45mg/kgとなるように、1日2回経口投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
錠剤又は細粒剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
1日2回の投与が朝食後及び夕食後の投与である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1日の投与単位数が2n単位であり、朝食後にn単位、夕食後にn単位に分割して投与されることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
1日の投与単位数が2n+1単位であり、朝食後にn単位、夕食後にn+1単位に分割して経口投与される、請求項1~3の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
便秘症が慢性機能性便秘症である、請求項1~5の何れか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化マグネシウムを有効成分とする、小児の慢性機能性便秘症を治療するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
小児の慢性機能性便秘症は、「頻度が高く、早期に適切な治療がなされない場合には必ずしも予後が良好な疾患ではない」とされている。慢性機能性便秘症の継続が痛みや苦痛を伴うことから、小児は排便時の痛みや苦痛から逃れるために排便を我慢する。これにより硬便の形成や便意の消失がもたらされ、慢性便秘症がさらに悪化する。上記理由から、慢性機能性便秘症の可及的速やかな解放が望まれている。
【0003】
小児に便秘症が発症しやすい時期や契機として、離乳期、トイレットトレーニング期、学童期が挙げられており、発症のピークは2~4歳のトイレットトレーニングの時期とされている。この時期に不快な排便を繰り返し経験することで、意識的、無意識的を問わず、排便を避けるようになる可能性が指摘されている。
【0004】
日本小児栄養消化器肝臓学会及び日本小児消化管機能研究会編の小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインによると、4歳以下で便秘と診断された患児の40%以上が、便塊除去や緩下剤、食物繊維摂取による治療にもかかわらず、学齢期になっても便秘による症状が残るとされている。
【0005】
小児慢性機能性便秘症は、最初の受診年齢が2歳より年長であると有意に予後が悪く、5歳以上の小児期に来院した便秘症小児の25%程度が成人の便秘へ移行する。さらに予後が不良となる要因として、発症から初診までの期間が長いこと、初診時の排便回数が少ないことが挙げられている。
【0006】
前記のガイドラインによれば、本邦における小児適応を有する小児慢性機能性便秘症の薬剤として、マルツエキス、ラクツロース、ピコスルファートナトリウム、ビサコジル、及びグリセリンが使用される。これらのうちマルツエキス、ラクツロース、及びピコスルファートナトリウムは経口投与できる。海外では経口投与用薬剤としてポリエチレングリコールに知見があり、近年本邦においてもポリエチレングリコールを含む薬剤が承認されている(非特許文献1)。
【0007】
本邦では、小児慢性機能性便秘症の薬物療法において、浸透圧性下剤から治療を開始することが原則とされている。医療用経口薬剤として承認を受けているラクツロース、ピコスルファートナトリウム、及びポリエチレングリコールのうち、ラクツロース及びポリエチレングリコールが選択されうる。これらの剤形は、ラクツロースがシロップ剤及び散剤、ポリエチレングリコールが経口液用散剤であり、固形製剤として経口投与されうる医療用医薬品はラクツロース散剤しか存在しない。
【0008】
ラクツロース散剤の承認されている用法・用量は、1日0.33~1.30g/kgを3回に分割して経口投与するというものである。1歳以上の体重10kg以上を有する小児に対する1回服用量は1.1~4.3gと多く、1回用量の多さから低年齢ほど服用の困難さを訴え、症状に応じた適宜増減も容易ではない。
【0009】
一方、本邦で最も高い頻度で使用されている便秘症治療薬は酸化マグネシウム散剤である。種々の便秘症治療薬の中でもエビデンスは乏しいが、適切な量を投与すればその効果と安全性は明らかであると考えられている。小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインにおいても、酸化マグネシウム散剤は使用頻度の高い便秘薬として挙げられている。
【0010】
酸化マグネシウムは医療用と一般用があるが、共に主に成人、特に高齢者での使用頻度が高い。医療用では小児に対する適応を有さないが、一般用では5歳から服用可能とされ、1回0.33~0.66gを1日1回就寝前に経口服用する。医療用で便秘症に用いる場合、成人では酸化マグネシウム換算で1日2gを毎食前又は毎食後の3回に分割経口投与するか又は就寝前に1回投与する、とされている。一方で、小児に対する用法・用量は承認されていない。
【0011】
承認されているラクツロースと未承認の酸化マグネシウムに対する有効性比較を行った文献(非特許文献2)では、慢性便秘と診断された15歳以下の児童、とりわけ解析対象とされた中央値2歳11か月の児童に対する便秘症治療成功率が開示されている。便秘症治療成功率は、酸化マグネシウム群で41%(49例中20例)、ラクツロース群で18%(50例中9例)と、未承認の酸化マグネシウム群で有意に高かったことが報告されている。しかし、何れも小児慢性機能性便秘症に対して十分な治療を提供できているとはいえない。
【0012】
1歳以降の乳児に対する酸化マグネシウムの投与用量は定まっていないが、前記のラクツロースとの有効性比較を行った文献(非特許文献2)では、酸化マグネシウムを1日あたり50.0mg/kgの用量で投与している。分割回数についても不明であるが、一般には成人の用法が踏襲され、前記の文献(非特許文献2)でも成人同様に1日2回に分割して投与している。治療対象が1歳から5歳までの小児であるから、服用し難い形態で投与されることはほとんどなく、一般には散剤や液剤が処方されており(非特許文献3)、前記の文献(非特許文献2)でも酸化マグネシウム原末を投与している。
【0013】
一方で、医療用の酸化マグネシウムを使用した患者において、酸化マグネシウム内服により血清マグネシウム値が異常高値を呈し、重篤な場合には死に至る高マグネシウム血症が報告されており、使用にあたり注意喚起がなされている。一般に、血清マグネシウム値が異常に上昇する理由として腎機能低下が指摘されている。腎機能正常な小児においては、血清マグネシウム値の上昇は軽微であるため、臨床的に問題とならないことが示唆されている。しかし、慢性機能性便秘症小児の治療は長期に亘るため(非特許文献4)、酸化マグネシウム散剤の投与用量に注意が払われている。ゆえに、酸化マグネシウムにより提供される治療は、短期間で効果的でなければならない。
【0014】
血清マグネシウム値の異常高値を防ぐため、酸化マグネシウム散剤の投与用量を少なくすることが推奨される。しかし、1回投与量を少なくすることにより、粉の取扱い性が煩雑となり、さらに、慢性機能性便秘症小児に対する治療効果が著しく減少するために治療期間が長期化する。その結果、便秘症の原因となる排便時の痛みや苦痛、排便困難や不規則な排便習慣を改善するためには、薬物療法を少なくとも数か月間継続しなければならない(非特許文献5)。
【0015】
酸化マグネシウム散剤の投与用量を多くすることは、治療効果を享受できることが示唆されるものの、服用量増加による服薬の忌避と血清マグネシウム値の異常高値を引き起こしやすく、下痢のリスクが生じることも考えられる。
【0016】
1歳から2歳においては、錠剤は服用されないこと、散剤も服用に問題があることが示されている(非特許文献6)。よって、1歳から5歳までの小児便秘症患者の治療において、適切に服薬を継続できる投与形態及び適切な投与用量を定めることが出来れば、高マグネシウム血症を懸念することなく治療効果を最大限享受することが可能となる。また、その結果、便秘症小児は排便時の痛みや苦痛から可及的速やかに解放され、早期解放をもって予後良好、成人の便秘への移行を防止することが可能となる。
【0017】
なお、本出願人は、慢性機能性便秘症を治療するための酸化マグネシウム製剤についてこれまで種々の検討を行っている。例えば、服用性を改善するための崩壊性に富む酸化マグネシウム製剤として、崩壊剤の種類、配合割合及び製造方法を調整することにより水懸濁粒子の微細化を図った錠剤(特許文献1)、酸化マグネシウム粒子の平均2次粒子径と結合剤及び崩壊剤の種類及び添加量とを調整することにより打錠性及び崩壊性を改善した錠剤(特許文献2)、並びに、酸化マグネシウム粒子の平均2次粒子径及び見かけ比容を調整すると共に糖アルコール及び崩壊剤により造粒することにより溶解性及び舌触りを改善した細粒剤(特許文献3)を開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2020/101016号
【特許文献2】特許4015485号公報
【特許文献3】国際公開第2010/098417号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2013年版
【非特許文献2】外来小児科、19(2)、141-148、2016
【非特許文献3】YAKUGAKU ZASSHI、135(2)、2015、245-247
【非特許文献4】日本小児栄養消化器肝臓学会雑誌、29、Suppl、2015、126
【非特許文献5】日本小児外科学会雑誌、49(3)、2013、835
【非特許文献6】Reflection Paper、Formulations of choice for the Pediatric Population、EMA、28 July 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、1歳から5歳までの小児便秘症患者に対し、十分な便秘症治療成功率を実現する医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、小児患者の慢性機能性便秘症の治療に対する酸化マグネシウム製剤の使用可能性を探求すべく、適切な投与形態について鋭意検討した。その結果、酸化マグネシウムの1日あたり投与用量を従来公知の50.0mg/kg(非特許文献2)から引き下げることによって、副作用のリスクが低減するのみならず、意外にも治療成功率を大幅に向上させることが可能となることを見出した。更に、好ましい剤形等についても検討を行った結果、従来公知の酸化マグネシウム原末(非特許文献2)ではなく、小児には一般的に不向きとされる錠剤又は細粒剤とすることにより、意外にも服薬順守率を改善し、治療成功率の更なる向上が可能となることを見出した。以上の知見に基づき、本発明者らは本願発明を完成させた。
【0022】
即ち、本発明の趣旨は、例えば以下に関する。
[項1]便秘症を治療するための、酸化マグネシウムを有効成分として含有する医薬組成物であって、体重7.5kg以上、年齢1~5歳の小児患者に対して、酸化マグネシウムの1日あたり投与用量が25~45mg/kgとなるように、1日2回経口投与されることを特徴とする医薬組成物。
[項2]錠剤又は細粒剤である、項1に記載の医薬組成物。
[項3]1日2回の投与が朝食後及び夕食後の投与である、項1又は2に記載の医薬組成物。
[項4]1日の投与単位数が2n単位であり、朝食後にn単位、夕食後にn単位に分割して投与されることを特徴とする、項1~3の何れか一項に記載の医薬組成物。
[項5]1日の投与単位数が2n+1単位であり、朝食後にn単位、夕食後にn+1単位に分割して経口投与される、項1~3の何れか一項に記載の医薬組成物。
[項6]便秘症が慢性機能性便秘症である、項1~5の何れか一項に記載の医薬組成物。
[項7]項1~6の何れか一項に記載の医薬組成物を調製するための酸化マグネシウムの使用。
[項8]患者の便秘症を治療するための方法であって、当該方法が、それを必要とする患者に、酸化マグネシウムを有効成分として含有する医薬組成物を投与することを含むと共に、当該患者が、体重7.5kg以上、年齢1~5歳の小児患者であり、当該医薬組成物が、酸化マグネシウムの1日あたり投与用量が25~45mg/kgとなるように、1日2回経口投与される、方法。
[項9]当該医薬組成物が錠剤又は細粒剤である、項8に記載の方法。
[項10]当該医薬組成物の1日2回の投与が朝食後及び夕食後の投与である、項8又は9に記載の方法。
[項11]当該医薬組成物の1日の投与単位数が2n単位であり、朝食後にn単位、夕食後にn単位に分割して投与される、項8~10の何れか一項に記載の方法。
[項12]当該医薬組成物の1日の投与単位数が2n+1単位であり、朝食後にn単位、夕食後にn+1単位に分割して経口投与される、項8~11の何れか一項に記載の方法。
[項13]便秘症が慢性機能性便秘症である、項8~12の何れか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、1歳から5歳までの小児便秘症患者に対し、十分な便秘症治療成功率を実現する医薬組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。また、以下に説明する本発明の種々の態様は何ら択一的又は排他的なものではなく、論理的に明らかに矛盾する場合を除き、任意の2つ以上の態様を適宜組み合わせて実施することが可能である。なお、斯かる任意の2つ以上の態様を適宜組み合わせた態様についても、当然ながら本発明の範囲に含まれるものとする。また、数値範囲について複数の上限値及び/又は複数の下限値を示す場合、当該上限値のうち任意の上限値と当該下限値のうち任意の下限値とを組み合わせて得られる全ての数値範囲が、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0025】
[医薬組成物]
本発明は、その一側面として、便秘症の小児患者を治療するための、酸化マグネシウムを有効成分として含有する医薬組成物を提供する。一態様によれば、本発明の医薬組成物の治療対象となる便秘症は、慢性便秘症であることが好ましく、慢性機能性便秘症であることがより好ましい。前述のように、慢性便秘症を発症した小児の治療には、酸化マグネシウム製剤の使用は承認されていない。一方で、臨床的には適応外使用による医師の判断のもとで酸化マグネシウム散剤が処方されるケースもある。しかし、何れの医薬品メーカーも費用対効果の観点から、わざわざ臨床試験を行ってまで酸化マグネシウム錠剤の適応を取得する選択はとらなかったものと推測される。小児慢性機能性便秘症の治療における酸化マグネシウムについてその具体的態様を検討し、種々の好ましい態様を提供する本発明の知見は、本発明者らが初めて見出したものである。これらの知見は便秘症の小児患者、好ましくは慢性機能性便秘症小児患者の治療において、極めて重要な意義を有するものである。
【0026】
本発明の医薬組成物は、体重7.5kg以上、年齢1~5歳の小児患者に対して、酸化マグネシウムの1日あたり投与用量が25~45mg/kgとなるように投与される。前記非特許文献2は慢性機能性便秘症の小児患者への酸化マグネシウム投与における効果測定に関する実質的に唯一の既知報告といえる。前記非特許文献2では、慢性機能性便秘症の小児患者に対して酸化マグネシウム原末を1日あたり50mg/kg体重の用量で服薬することで、41%の治療成功率を示している。通常、治療成功率を上げるためには、一日投与量の増大が試される。本発明では、一日投与量を大幅に低減する(1日あたり50mg/kg体重→25~45mg/kg体重)ことで、副作用のリスクを低減させるのみならず、意外にも早期から治療成功率を大幅に向上させることが可能となることを見出した。斯かる効果は、当業者が常識水準に基づき予想しうるレベルをはるかに超える驚くべき知見である。
【0027】
一態様によれば、本発明の医薬組成物は、酸化マグネシウムを含む錠剤又は細粒剤の形態であることが好ましい。通常、1~5歳の小児の治療には、服用しづらい錠剤や細粒剤が選択されることはなく、散剤や液剤が処方される(非特許文献6)。前述の唯一の既知報告である非特許文献2でも、酸化マグネシウム原末が使用されている。しかし、本発明では前述した一日投与用量の低減に加えて、投与剤形として敢えて錠剤又は細粒剤を使用することで、服用率を向上させることができる。これによって継続的な服薬遵守が可能となり、惹いては短期的な投与であっても高い治療成功率を達成することができる。このように、錠剤や細粒剤を採用することで、従来の散剤や液剤と同様以上の服用率を達成し得る点は、当業者が常識水準に基づき予想しうるレベルをはるかに超える驚くべき知見である。本発明により優れた治療効果及び服用性を有する医薬組成物が提供される。
【0028】
なお、本出願人は前述のように、慢性機能性便秘症を治療するための酸化マグネシウム製剤についてこれまで種々の検討を行っており、服用性を改善するための崩壊性に富む酸化マグネシウム製剤として、一錠あたり100mgを含む錠剤(特許文献1)、一錠あたり200mg含む錠剤(特許文献2)、及び1gあたり83%を含む細粒剤(特許文献3)を開発している。これらの錠剤や細粒剤の知見を利用することで、1~5歳の小児でも服用しやすい錠剤や細粒剤を作製することが可能となる。また、疾病により特に嚥下困難な小児に対しては錠剤を水に崩壊・懸濁させ、その分散液を経管栄養チューブにより投与する方法が考えられる。斯かる錠剤や細粒剤の具体例については後述する。
【0029】
一態様によれば、本発明の医薬組成物は、1日2回に分割して経口投与される。一態様によれば、当該1日2回の投与は、それぞれ朝食後の投与及び夕食後の投与であることが好ましい。一態様によれば、本発明の医薬組成物の1日当たりの投与単位数が2n単位であり、朝食後にn単位、夕食後にn単位に分割して投与されることが好ましい。一態様によれば、本発明の医薬組成物の1日当たりの投与単位数が2n+1単位であり、朝食後にn単位、夕食後にn+1単位に分割して経口投与されることが好ましい。このように、1日当たりの投与単位数が奇数(2n+1)である場合は、夕食後の投与単位数が多くなるように配分することで、薬効発現時間が6~8時間後とされる酸化マグネシウムの効果が起床後に得られることから、より適切な排便習慣が得られるという利点がある。排便習慣は朝に排便があることが望ましいとされている。
【0030】
[小児慢性機能性便秘症]
前述のように、本発明の医薬組成物の治療対象は小児患者の便秘症であるが、中でも慢性機能性便秘症を治療対象とすることが特に好ましい。小児慢性機能性便秘症とは、小児において、便が滞った又は便がでにくい状態により表れる便秘又はその症状であり、器質性便秘ではなく、診療や治療を要するものである。小児慢性機能性便秘症の診断基準としては、国際的にはROMEIV基準が用いられている。ROMEIV基準とは、国際的に使用されている慢性機能性便秘症の診断基準であり、以下の基準を満たす場合には慢性機能性便秘症が疑われる。
【0031】
<乳児/幼児>
4歳未満の小児(乳児又は幼児)では、最短1カ月間に、下記のうち少なくとも2つを満たすこと。
1:1週間に2回以下の排便
2:過度の便の貯留の既往
3:痛みを伴う、あるいは硬い便通の既往
4:巨大な便の既往
5:直腸に大きな便塊の存在
トイレトレーニングを受けた子どもは上記に追加
6:トイレスキル習得後、少なくとも1週間に1回以上の便失禁
7:トイレが詰まるくらい大きな便の既往
【0032】
<学童/青年>
4歳以上の小児(学童)又は青年では、最短1カ月間に、週ごとに少なくとも一度は下記の症状のうち少なくとも2つ以上を満たすと共に、過敏性腸症候群の診断基準を満たさないこと。
1:1週間に2回以下のトイレでの排便
2:少なくとも週に1回の便失禁
3:便を我慢する姿勢や過度の自発的便の貯留の既往
4:痛みを伴う、あるいは硬い便通の既往
5:直腸に大きな便塊の存在
6:トイレが詰まるくらい大きな便の既往
7:適切な評価後、症状は他の病状により説明され得ない。
【0033】
また、慢性機能性便秘症の判断時における便の状態の評価は、ブリストル糞便スケールに従って行われる。ブリストル糞便スケールとは、便の状態を評価するために用いられる指標であり、便の形状及び硬さで以下の7段階に分類される。
1:コロコロ便(兎糞状の便)
2:硬便(ソーセージ状の硬い便)
3:やや硬い便(表面にひび割れのあるソーセージ状の便)
4:普通便(表面が滑らかで柔らかい半分固形の便)
5:やや柔らかい便(しわのある柔らかい半分固形の便)
6:泥状便(不定形の小片便又は泥状の便)
7:水様便(固形物を含まない液体状の便)
【0034】
便秘症の診断とは、ROMEIV基準にある各項目を問診し、便秘症であるか否かを確認することである。
【0035】
小児慢性機能性便秘症の治療目標は、便秘ではない状態に到達あるいは復帰し、それを維持することである。好ましくはROMEIV基準から診断される。
【0036】
治療の効果は、患児及び養育者が便秘症の病態、望ましい食生活及び排便状況を理解し、薬物治療によっても便秘でない状態に到達しない又は維持できないときに、治療は無効であると判定される。
【0037】
[製剤の組成及び製法]
本発明の医薬組成物の剤形は限定されないが、前述のように、錠剤及び細粒剤であることが好ましい。ここで、本出願人は前述のように、慢性機能性便秘症を治療するための酸化マグネシウム製剤についてこれまで種々の検討を行っており、服用性を改善するための崩壊性に富む酸化マグネシウム製剤として、崩壊剤の種類、配合割合及び製造方法を調整することにより水懸濁粒子の微細化を図った錠剤(特許文献1)、酸化マグネシウム粒子の平均2次粒子径と結合剤及び崩壊剤の種類及び添加量とを調整することにより打錠性及び崩壊性を改善した錠剤(特許文献2)、並びに、酸化マグネシウム粒子の平均2次粒子径及び見かけ比容を調整すると共に糖アルコール及び崩壊剤により造粒することにより溶解性及び舌触りを改善した細粒剤(特許文献3)を開発している。これらの錠剤や細粒剤の知見を利用することで、1~5歳の小児でも服用しやすい錠剤や細粒剤を作製することが可能となる。
【0038】
以下、本発明の医薬組成物の各種剤形の製剤について、主に錠剤及び細粒剤の場合を説明するが、本発明の医薬組成物の剤形は、これらの具体的な剤形に限定されるものではない。なお、以下の記載では適宜、本発明の医薬組成物を任意の剤形に製剤化したものを「本発明の製剤」と総称し、中でも錠剤又は細粒剤に製剤化したものをそれぞれ個別に「本発明の錠剤」及び「本発明の細粒剤」と称する場合がある。
【0039】
・酸化マグネシウム:
本発明の製剤に含まれる酸化マグネシウム粒子は、限定されるものではないが、例えば下記組成式(1)で表される元素組成を有する。また、限定されるものではないが、例えば日本薬局方に既定される酸化マグネシウムである。
(Mg2+ 1-XZn2+ X)O (1)
【0040】
上記式中、Xは、通常0~0.02の数である。Xが0を超える酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウムと亜鉛の混合物ではなく、酸化マグネシウムの結晶構造に亜鉛原子が入り込んだものであり、酸化マグネシウムと同じ結晶構造を有する。この酸化マグネシウム粒子は、粉末X線回折法によれば、酸化マグネシウムと同じ回折パターンを示す。Xは、通常0以上、又は0.001以上、又は0.005以上、また、通常0.02以下、又は0.015以下、又は0.01以下の数である。Xが大きくなると、食物から摂取したZnとあわせ、必須ミネラルとしての必要量を超える可能性がある。
【0041】
本発明の製剤に含まれる酸化マグネシウム粒子のレーザー回折散乱法で測定された体積基準50%粒子径(D50)は、限定されるものではないが、例えば通常0.1μm以上、又は0.5μm以上、又は1μm以上、また、通常25μm以下、又は20μm以下、又は18μm以下、又は15μm以下、又は10μm以下とすることができる。特に細粒剤の場合、酸化マグネシウム粒子の粒子径が大きすぎると、崩壊時間が長くなり、口腔内で迅速に分散しない場合がある。
【0042】
酸化マグネシウムの体積基準50%粒子径(D50)は、以下の方法で測定する。ビーカーに酸化マグネシウム0.7g及び0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液70mLを加え、超音波ホモジナイザー(日本精機製、US-300)を用いて分散処理を行う。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装製、マイクロトラック)を用い、前記酸化マグネシウムの分散後の体積基準50%粒子径(D50)を測定する。
【0043】
本発明の製剤に含まれる酸化マグネシウム粒子の見かけ比容は、限定されるものではないが、特に細粒剤の場合、例えば通常3mL/g以上、又は4mL/g以上、また、通常20mL/g以下、又は15mL/g以下とすることができる。特に細粒剤の場合、酸化マグネシウム粒子の見かけ比容が小さすぎると、溶出性が悪くなる場合がある。一方、酸化マグネシウム粒子の見かけ比容が大きすぎると、かさが高くなり造粒し難くなる場合がある。
【0044】
本発明の製剤に含まれる酸化マグネシウム粒子は、限定されるものではないが、例えば水酸化マグネシウム粒子を焼成して製造することができる。その具体的な手順は、限定されるものではないが、例えば以下のとおりである。原料となる水酸化マグネシウム粒子は、限定されるものではないが、例えば海水又は苦汁中のマグネシウムイオンをアルカリ源によって水酸化マグネシウムとして沈殿させて製造することができる。斯かるアルカリ源としては、限定されるものではないが、例えば水酸化カルシウム、苛性ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水等が挙げられる。中でも苛性ソーダ又は水酸化カルシウムが好ましい。沈殿させた水酸化マグネシウムは、例えば100~120℃で加熱処理を行なった後、焼成に供する。焼成条件は、限定されるものではないが、例えば通常500℃以上、又は600℃以上、また、通常1,000℃以下、中でも900℃以下の温度で、例えば通常0.1~10時間に亘って行うことができる。焼成温度が高すぎたり、焼成時間が長すぎたりすると、酸化マグネシウム粒子が硬くなり、崩壊性が悪くなる場合がある。
【0045】
酸化マグネシウムに亜鉛(Zn)を固溶させた酸化マグネシウム粒子は、マグネシウムイオンと亜鉛(Zn)イオンを含有する水溶液に、これらカチオンの合計当量に対してほぼ当量以下のアルカリ性物質を加え、攪拌下に反応させ製造することができる。必要に応じさらに反応物を100~200℃でオートクレーブを用いて水熱処理してもよい。その後は、酸化マグネシウムと同様、水洗、脱水、乾燥、ついで焼成し、粉砕、分級等の慣用の手段を適宜行い調整することができる。マグネシウムイオンの供給源としては、限定されるものではないが、例えば硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム等を用いることができる。亜鉛(Zn)イオンの供給源としては、限定されるものではないが、例えば硝酸亜鉛、塩化亜鉛等を用いることができる。アルカリ性物質としては、限定されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム等を用いることができる。
【0046】
・結合剤:
本発明の製剤は、結合剤を含んでいてもよい。結合剤としては、限定されるものではないが、例えば結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン(例えばトウモロコシデンプン)、糖アルコール等を用いることができる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。添加するタイミングは問わない。本発明の製剤中の結合剤の含有量は、限定されるものではないが、例えば錠剤の場合、通常1質量%以上、又は3質量%以上、また、通常15質量%以下、又は13質量%以下とすることができる。
【0047】
・崩壊剤:
本発明の製剤は、崩壊剤を含んでいてもよい。崩壊剤としては、限定されるものではないが、例えばデンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、カルメロース、カルボキシスターチナトリウム、不溶性ポリビニルピロリドン等を用いることができる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本発明の製剤中の崩壊剤の含有量は、限定されるものではないが、例えば通常0.5質量%以上、又は1質量%以上、また、通常10質量%以下、又は7質量%以下とすることができる。
【0048】
本発明の製剤に含まれる崩壊剤のレーザー回折散乱法で測定された体積基準50%粒子径(D50)は、限定されるものではないが、例えば通常0.1μm以上、又は0.5μm以上、又は1μm以上、また、通常150μm以下、又は100μm以下、又は25μm以下、又は15μm以下、又は10μm以下とすることができる。
【0049】
前記崩壊剤の体積基準50%粒子径(D50)はレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(セイシン企業製、LMS-2000e)により、測定する。粒度分布測定には分散媒を用いず、乾式法にて体積基準50%粒子径(D50)を測定する。
【0050】
・滑沢剤:
本発明の製剤は、特に錠剤の場合、滑沢剤を含んでいてもよい。滑沢剤としては、限定されるものではないが、例えばステアリン酸及びその塩(Na、Mg、Ca塩)等を用いることができる。中でもステアリン酸カルシウムが好ましい。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本発明の錠剤中の滑沢剤の含有量は、限定されるものではないが、例えば通常0.2質量%以上、又は0.5質量%以上、又は0.7質量%以上、また、通常3質量%以下、又は2質量%以下、又は1.5質量%以下とすることができる。
【0051】
・糖アルコール:
本発明の製剤は、特に細粒剤の場合、糖アルコールを含んでいてもよい。糖アルコールとしては、限定されるものではないが、例えばキシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール等を用いることができる。中でもマンニトールが好ましい。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本発明の細粒剤中の糖アルコールの含有量は、限定されるものではないが、例えば通常2質量%以上、又は5質量%以上、又は6質量%以上、また、通常15質量%以下、又は10質量%以下、又は9質量%以下とすることができる。
【0052】
・その他の成分:
本発明の製剤は、その剤形に応じて、その他の追加成分を含んでいてもよい。これらの追加成分は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。例としては、甘味料、着香末、矯味剤等が挙げられる。甘味剤としては、限定されるものではないが、例えばアスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等が挙げられる。着香末としては、限定されるものではないが、例えばペパーミント類、Lメントール、オレンジパウダー、ストロベリーエッセンス等が挙げられる。矯味剤としては、限定されるものではないが、例えば白糖、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。本発明の製剤中のその他の成分の含有量は、限定されるものではないが、例えば通常0.05質量%以上、又は0.1質量%以上、又は0.2質量%以上、また、通常2質量%以下、又は1質量%以下、又は0.5質量%以下とすることができる。
【0053】
・錠剤及び細粒剤の製法:
本発明の製剤の製法は任意であり、その剤形に応じた適切な製法を選択して製造すればよい。以下では主に錠剤及び細粒剤の場合を例として説明するが、本発明の製剤の製法はこれらに限定されるものではない。
【0054】
本発明の製剤を錠剤とする場合、まずは錠剤化のための原料混合物を調製する。原料混合物は、活性医薬成分である酸化マグネシウム粒子に加えて、例えば前記の結合剤及び崩壊剤の一部又は全部、並びに任意によりその他の追加成分を適宜混合して調製することができる。混合には、例えばコンテナ型、V型、又はW型等の混合機を使用することができる。次いで、その原料混合物を顆粒状粒子に造粒する。斯かる造粒は例えば乾式造粒機を用いて実施することができる。乾式造粒機としては例えばロール成形型乾式造粒機等が挙げられる。その場合のロール圧力は、例えば通常3MPa以上、中でも4MPa以上、また、通常12MPa以下、又は8MPa以下とすることができる。造粒したシート状成形物を、次いで粉砕して顆粒状粒子を得る。粉砕には例えばオシレーター式粉砕機を用いることができる。オシレーターに装着するスクリーンとしては、限定されるものではないが、例えば目開き通常0.7mm以上、又は0.8mm以上、また、通常1.2mm以下、又は1.0mm以下とすることができる。顆粒状粒子のサイズとしては、限定されるものではないが、例えば平均粒径を0.25~0.4mm、見掛け密度を0.5~0.7g/mL、安息角を35~43°とすることができる。
【0055】
斯かる顆粒状粒子に対し、必要に応じて滑沢剤、任意により前記の結合剤及び崩壊剤の残部、並びに任意によりその他の追加成分を適宜混合してから、打錠化することにより錠剤とすることができる。打錠圧は一錠当りのパンチ圧として例えば通常5kN以上、又は6kN以上、また、通常12kN以下、又は10kN以下とすることができる。杵臼形状並びに1錠単位質量に合わせて任意のパンチ圧を選択できる。打錠杵の形状は、R面の他、隅角R、隅角平面、隅丸平面等のいずれであってもよい。錠剤の直径は、限定されるものではないが、例えば通常4mm以上、又は5mm以上、また、通常12mm以下、又は10mm以下、又は8mm以下とすることができる。錠剤の厚みは、限定されるものではないが、例えば通常2mm以上、又は2.5mm以上、また、通常6mm以下、又は5mm以下、又は4.5mm以下とすることができる。錠剤の一錠当たりの質量は、限定されるものではないが、例えば通常50mg以上、又は70mg以上、又は90mg以上、また、通常300mg以下、又は280mg以下、又は250mg以下とすることができる。錠剤の大きさ及び質量を上記の範囲にすることで、小児にとって飲みやすい錠剤とすることができる。
【0056】
一方、本発明の製剤を細粒剤とする場合、まずは造粒用の原料混合物を調製する。原料混合物は、活性医薬成分である酸化マグネシウム粒子に加えて、例えば前記の結合剤及び崩壊剤、並びに任意により糖アルコール及びその他の追加成分を適宜混合して調製することができる。混合には、例えばコンテナ型、V型、又はW型等の混合機を使用することができる。次いで、その原料混合物を顆粒状粒子に造粒する。斯かる造粒は例えば乾式造粒機を用いて実施することができる。乾式造粒機としては例えばロール成形型乾式造粒機等が挙げられる。その場合のロール圧力は、限定されるものではないが、例えば通常3MPa以上、中でも4MPa以上、また、通常12MPa以下、又は8MPa以下とすることができる。造粒したシート状成形物を、次いで粉砕して顆粒状粒子を得る。粉砕には例えばオシレーター式粉砕機を用いることができる。オシレーターに装着するスクリーンとしては、限定されるものではないが、例えば目開き通常0.7mm以上、又は0.8mm以上、また、通常1.2mm以下、又は1.0mm以下とすることができる。顆粒状粒子のサイズとしては、限定されるものではないが、例えば平均粒径を0.25~0.4mm、見掛け密度を0.5~0.7g/mL、安息角を35~43°とすることができる。
【0057】
斯かる顆粒状粒子を、例えば振動篩(例えば0.15mm、又は0.5mm)を用いて分級し、平均粒子径(X50)が例えば0.2mm~0.4mm、又は0.25mm~0.35mmの細粒を製造する。細粒のかさ密度は、限定されるものではないが、例えば通常0.4g/mL以上、又は0.5g/mL以上、また、通常0.7g/mL以下、又は0.65g/mL以下、又は0.6g/mL以下とすることができる。細粒の粒度分布は、限定されるものではないが、例えば粒子径355μm以上500μm未満の粒子の割合を、通常30質量%以上、又は32質量%以上、また、通常45質量%以下、又は42質量%以下とすることができ、粒子径180μm以上355μm未満の粒子の割合を、通常40質量%以上、また、通常50質量%以下、又は49質量%以下とすることができ、粒子径150μm以上180μm未満の粒子の割合を、通常10質量%以上、また、通常28質量%以上、又は27質量%以上とすることができる。得られた細粒を、任意により、コンテナ又は混合機中でその他の成分と混合することができる。中でも、着香末として微量のペパーミントコートン又はLメントールを含水二酸化ケイ素に吸着させて使用することで、味がよくなる。
【0058】
本発明の製剤を錠剤又は細粒剤とする場合、疾病により嚥下が困難な小児に対しては、本発明の製剤を水に懸濁させ、経管チューブを使用した経管投与が選択されうる。小児に対する経管投与では体重に応じて3Fr(外径1.0mm)や4Fr(外径1.3mm)の経管栄養チューブを使用することが好ましいとされる。本発明の製剤を水に懸濁した際に生じる平均粒子径については、限定されるものではないが、例えば以下とすることができる。本発明の製剤のレーザー回折法で測定された体積基準50%粒子径(D50)は、例えば70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下、また、例えば20μm以上、又は30μm以上、又は40μm以上とすることができる。本発明の製剤のレーザー回折法で測定された体積基準90%粒子径(D90)は、例えば130μm以下、又は120μm以下、又は110μm以下、また、例えば50μm以上、又は60μm以上、又は70μm以上とすることができる。製剤の懸濁粒子径を上記範囲内とすることで、嚥下困難な小児に対しても経管栄養チューブを使用した経管投与が可能となり、より高い服用率を達成できる。
【0059】
本発明の製剤を錠剤又は細粒剤とする場合、当該製剤を水懸濁させた後の体積基準50%粒子径(D50)及び体積基準90%粒子径(D90)は、以下の方法で測定する。ビーカーに製剤10錠及びイオン交換水40mLを加え、ガラス棒を用いて崩壊・懸濁させる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(セイシン企業製、LMS-2000e)により、製剤の水懸濁後の体積基準50%粒子径(D50)及び水懸濁後の体積基準90%粒子径(D90)を測定する。
【0060】
・その他:
以上、本発明の製剤の組成及び製法について、主に錠剤及び細粒剤の場合を例として説明したが、更なる詳細については、例えば前述の特許文献1~3の記載等を参照することができる。但し、本発明の製剤は、以上の説明やこれらの特許文献の記載等に限定されるものではなく、適宜条件を変更して実施することができる。
【0061】
また、本発明の各種側面は、前述した本発明の医薬組成物及びその製剤に限定されるものではなく、これに伴い当業者が理解しうる種々の発明も包含する。例えば、本発明の一側面は、便秘症を治療するための前述した本発明の医薬組成物の製造における、酸化マグネシウムの使用に関する。また、本発明の別の側面は、便秘症を治療するための方法であって、それを必要とする患者に対して、酸化マグネシウムを含む本発明の医薬組成物を投与することを含む方法に関する。本発明のこれらの側面において、本発明の医薬組成物の組成、剤形、物性、製法等、その活性成分となる酸化マグネシウムの形状、物性等、投与対象となる患者の年齢、症状、体重等、治療対象となる患者、当該患者に対する本発明の医薬組成物の投与量・投与方法(用量・用法)等の詳細は、何れも本発明の医薬組成物との関係で先に詳述したとおりである。
【実施例0062】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例1]
本実施例では、1歳から5歳までの小児慢性機能性便秘症患者を対象として、酸化マグネシウムを100mg含有する錠剤の有効性を検討した。
【0064】
投与製剤:酸化マグネシウム(100mg錠剤)。特許文献1の段落[0019]~[0026]および実施例3の記載に準じて調製された。
【0065】
投与対象患者:26例。
用法・用量:酸化マグネシウムとして1日約40mg/kgとなるよう、投与開始時の患者体重に対して、下記表1に従って1日の投与錠数並びに開始時用量と定めた。また、1日の投与錠数が2n錠の場合は、朝食後にn錠、夕食後にn錠に、1日の投与錠数が2n+1錠の場合は、朝食後にn錠、夕食後にn+1錠に、即ち下記表1に示すように分割して経口投与するものとした。
【0066】
【表1】
【0067】
用量調節:開始時用量から始め、適切な排便状態(固形便の自発排便回数が3回/週以上で、かつコロコロ便又は硬便が持続していない、かつ泥状便又は水様便を排泄していない状態)に到達する用量まで増量又は減量できる。なお、投薬前に便塊が確認された症例に対しては、便塊除去後に投薬を開始した。
【0068】
投与期間:4週間継続投与した。
検討方法:最終週1週間について、電子的又は非電子的な患者日誌を用いて自発排便回数及び便性状を収集し、ROMEIV基準に挙げられる1週間当たりの排便回数と便性状を評価した。4週間後に採血を実施し、血清マグネシウム濃度を測定した。
【0069】
評価方法:最終週1週間の自発排便回数及び便性状(ブリストル糞便スケールに従った数値)、最終週1週間で便秘症の診断基準であるROMEIV基準を満たさない患者の割合、服薬遵守率、血清マグネシウム濃度の推移、最終週1週間の体重あたりの投与用量について、要約統計量を算出し、治療成功率について統計解析を行った。なお、排便が2日認められない場合には、ビサコジル坐剤もしくはグリセリン浣腸(レスキュー薬)の使用を許容し、自発排便を区別するため、レスキュー薬使用後24時間は自発排便にカウントしないこととした。
【0070】
表2は、酸化マグネシウム(100mg錠剤)投与群の患者背景を示したものである。
【0071】
【表2】
【0072】
4週間継続投与したときの最終週1週間の自発排便回数は5.0±2.8回(95%信頼区間:3.81~6.11回)、最小値は1回、最大値は15回であった。
【0073】
表3は、各年齢層の最終週1週間の自発排便回数を示したものである。
【0074】
【表3】
【0075】
4週間継続投与したときの最終週1週間の便性状(ブリストル糞便スケールに従った数値)の中央値は5.0、最小値は3、最大値は6であった。
【0076】
表4は、各年齢層の最終週1週間の便性状を示したものである。
【0077】
【表4】
【0078】
4週間継続投与したときの最終週1週間で便秘症の診断基準であるROMEIV基準を満たさない患者の割合は26例中21例(81%)であった。
【0079】
4週間継続投与したときの服薬遵守率の平均値は99%であった。
【0080】
血清マグネシウム濃度は、投与開始前が2.3mg/dL、2週間継続投与後が2.4mg/dL、4週間継続投与後が2.4mg/dLであった。いずれも高マグネシウム血症を呈していなかった。
【0081】
4週間継続投与したときの最終週1週間の投与用量は32.97±7.4mg/kg/日(最大値:45.1mg/kg/日、最小値:17.1mg/kg/日、95%信頼区間:30.11~35.83mg/kg/日)であった。
【0082】
表5は、各年齢層の最終週1週間の投与用量を示したものである。
【0083】
【表5】
【0084】
排便回数が3回/週以上に認められること、便性状が2から7であること、及び遺糞、腹痛、排便時痛、排便時出血の各症状がないことを満たす患者を便秘治療成功例としたとき、便秘治療成功例の割合は73%(26例中、19例)であった。
【0085】
治療成功例の割合(26例中19例が治療成功例)から事後分布治療成功確率を算出することができる。事後分布とは、ベイズ統計学における確率分布(ベータ分布)からパラメータの不確実性を表した事前分布にデータを追加することで導かれる分布である。この分布を用いる解析は、先行試験データに基づく事前分布が得られた際に現データと結合する科学的に妥当な方法である。事後分布により、将来観察される結果の確率を導出できる。事後分布治療成功確率が70%以上となる確率を、統計解析ソフトR(R version3.4.2)を用いて算出した。
【0086】
26例中19例が治療成功例であることから、事前分布の治療成功数19、失敗数7となり、事前分布と尤度を結合し、治療成功数20、失敗数8とする事後分布を求めた。この事後分布より事後分布治療成功確率が0.7以下の確率は0.411と算出される。即ち、治療成功率が70%以上となる確率は58.9%であった。
【0087】
同様に、2週間継続投与したときの結果では、1週間の自発排便回数は5.5±3.3回(95%信頼区間:4.20~6.88回)、1週間の便性状(ブリストル糞便スケールに従った数値)の中央値は5.2であった。また、排便回数が3回/週以上に認められること、便性状が2から7であること、及び遺糞、腹痛、排便時痛、排便時出血の各症状がないことを満たす患者を便秘治療成功例としたとき、便秘治療成功例の割合は73%(26例中、19例)であり、26例中19例が治療成功例であることから、事後分布治療成功確率が0.7以下の確率は0.411、すなわち治療成功率が70%以上となる確率は58.9%であり、治療開始早期より効果が確認された。
【0088】
[実施例2]
本実施例では、1歳から5歳までの小児慢性機能性便秘症患者のうち、酸化マグネシウムを含有する錠剤(100mg錠剤)の8週間継続投与により排便回数4回/週以上の有効性が得られた患者を対象として、酸化マグネシウムを含有する錠剤(200mg錠剤)又は細粒剤(83%細粒剤)に切替えた非盲検群間比較試験により同等性を検討した。
【0089】
投与製剤:
・酸化マグネシウム(100mg錠剤)。前記の実施例1と同様、特許文献1の段落[0019]~[0026]および実施例3の記載に準じて調製された。
【0090】
・酸化マグネシウム(200mg錠剤)。特許文献2の[0024]~[0029]の記載に準じて調製された。
【0091】
・酸化マグネシウム(83%細粒剤)。特許文献3の段落[0005]の記載に準じて調製された。
【0092】
投与対象患者:
・酸化マグネシウム(100mg錠剤)投与:29人
・酸化マグネシウム(200mg錠剤)投与:8人
・酸化マグネシウム(83%細粒剤)投与:21人
【0093】
用法・用量:[実施例1]と同様、酸化マグネシウムとして1日約40mg/kgとなるよう、投与開始時の患者体重に対して、前記表2に従って1日の投与錠数並びに開始時用量と定めた。8週間継続投与後の100mg錠剤の1日投与錠数が4n錠の場合は200mg錠剤を1日2n錠で、100mg錠剤の1日投与錠数が4n錠以外の場合は83%細粒剤を100mg錠剤と同量(酸化マグネシウムとして)で、1日2回朝夕食後に経口投与するものとした。
【0094】
投与期間:200mg錠剤、83%細粒剤は共に2週間継続投与した。
検討方法:最終週1週間について、電子的又は非電子的な患者日誌により自発排便回数および便性状を収集し、ROMEIV基準に挙げられる1週間当たりの排便回数と便性状を評価した。
【0095】
評価方法:100mg錠剤投与時の切替え前1週間における自発排便回数から切替え投与後の最終週1週間における自発排便回数の変化量、便性状(ブリストル糞便スケールに従った数値)、最終週1週間で便秘症の診断基準であるROMEIV基準を満たさない患者の割合 、服薬遵守率について、要約統計量を算出し、治療成功率について統計解析を行った。なお、[実施例1]と同様、排便が2日認められない場合には、ビサコジル坐剤もしくはグリセリン浣腸(レスキュー薬)の使用を許容し、自発排便回数を区別するため、レスキュー薬使用後の24時間は自発排便回数にカウントしないこととした。
【0096】
表6は、200mg錠剤又は83%細粒剤を投与するにあたり、各投与群の患者背景を示したものである。
【0097】
【表6】
【0098】
切替え後2週間継続投与したときの最終週1週間の自発排便回数は、200mg錠剤投与群では5.5±2.9回(95%信頼区間:3.05~7.95回)、83%細粒剤投与群では5.8±2.3回(95%信頼区間:4.76~6.86回)であり、100mg錠剤投与時の切替え前1週間の自発排便回数からの変化量はそれぞれ0±2.2回、
-1.1±2.2回であった。
【0099】
表7は、各投与群における各年齢層の最終週1週間の自発排便回数を示したものである。
【0100】
【表7】
【0101】
切替え後2週間継続投与したときの最終週1週間あたりの便性状(ブリストル糞便スケールに従った数値)の中央値は、200mg錠剤投与群では4.8、83%細粒剤投与群では4.3であった。
【0102】
表8は、各投与群における各年齢層の最終週1週間の便性状を示したものである。
【0103】
【表8】
【0104】
切替え後2週間継続投与したときの服薬遵守率の平均値は、200mg錠剤投与群では100%、83%細粒剤投与群では99.8%であった。
【0105】
表9は、切替え後2週間継続投与したときの最終週1週間の自発排便回数に対する切替え前1週間の自発排便回数からの変化量について、同等性マージン±2回を満たすことを95%信頼区間により表示したものである。
【0106】
【表9】
【0107】
同等性マージンとは、異なる治療薬の有効性の同等を検証するために、同等と考えられる範囲を設定したものである。実施例2において、100mg錠剤の投与により『排便回数4回/週以上』の有効性が得られた患者を対象としていること、ROMEIV基準より『1週間に2回以下の排便』は便秘症が継続していることから、4回/週以上の排便が2回/週以下とならないように同等性マージンを2回とし、同等性を評価した。
【0108】
同等性評価の結果、100mg錠剤及び200mg錠剤並びに83%細粒剤により認められた排便回数は同等の治療効果を発揮することが認められた。100mg錠剤と同用量において継続的に服用でき、それにより得られた治療効果は、200mg錠剤投与群では自発排便回数5.5±2.9回(95%信頼区間:3.05~7.95回)、便性状(ブリストル糞便スケールに従った数値)の中央値は4.8、83%細粒剤では自発排便回数5.8±2.3回(95%信頼区間:4.76~6.86回)、便性状(ブリストル糞便スケールに従った数値)の中央値は4.3であること、すなわち、1歳から5歳までの小児慢性機能性便秘症を錠剤又は細粒剤の形態で治療できたことを意味する。
【0109】
排便回数が3回/週以上に認められること、便性状が2から7であること、及び遺糞、腹痛、排便時痛、排便時出血の各症状がないことを満たす患者を便秘治療成功例としたとき、200mg錠剤投与群及び83%細粒剤投与群の便秘治療成功例の割合は88%(8例中、7例)及び95%(21例中、20例)であった。
【0110】
200mg錠剤投与群では8例中7例が治療成功例であることから、事前分布の治療成功数7、失敗数1となり、事前分布と尤度を結合し、治療成功数8、失敗数2とする事後分布を求めた。この事後分布より事後分布治療成功確率が0.7以下の確率は0.196と算出される。即ち、治療成功率が70%以上となる確率は80.4%であった。
【0111】
83%細粒剤投与群では21例中20例が治療成功例であることから、事前分布の治療成功数20、失敗数1となり、事前分布と尤度を結合し、治療成功数21、失敗数2とする事後分布を求めた。この事後分布より事後分布治療成功確率が0.7以下の確率は0.004と算出される。即ち、治療成功率が70%以上となる確率は99.6%であった。
【0112】
[比較例1]
本比較例では、ROMEIII基準に従い慢性便秘と診断された15歳以下の小児52例に対して、酸化マグネシウム原末の有効性を評価した既知報告の結果を示す(非特許文献2)。
【0113】
酸化マグネシウム投与:49例
用法・用量:酸化マグネシウム原末として1日50mg/kg(最大投与量2000mg/日)を2回に分割して経口投与した。
【0114】
投与期間:3週間継続投与した。
検討方法:症例は、グリセリン浣腸を用いて便塊除去を3日間行った後に投与開始され、排便が4日間認められない場合は5日目にグリセリン浣腸を使用した。投薬中は、排便日誌を用いて排便回数、便性状(ブリストル糞便スケールに従った数値)、服薬状況、副作用を記録した。
【0115】
評価方法:投薬後第2及び第3週目の2週間の排便回数、便性状を評価した。排便回数は、グリセリン浣腸を用いて排泄されたものをカウントしないこととした。主要評価として、第3週目の排便回数が3回/週以上であること、便性状が2から7であること、遺糞、腹痛、排便時痛、排便時出血の各症状がないことを治療成功例とし、治療成功例の割合を評価した。
【0116】
表10は、酸化マグネシウム投与例の患者背景を示したものである。
【0117】
【表10】
【0118】
3週間継続投与したときの投薬後第2及び第3週目の2週間の排便回数の平均は5.5±3.15回であった。
【0119】
3週間継続投与したときの投薬後第2及び第3週目の2週間の便性状(ブリストル糞便スケールに従った数値)の平均は4.90±0.91であった。
【0120】
3週間継続投与したときの服薬遵守率は対象の期間の75%以上服薬出来ている症例を評価対象症例としている。
【0121】
検査された32例の血清マグネシウム濃度について、投薬後1週間以上経過した時点での測定結果は2.1~2.8mg/dLであった。いずれも高マグネシウム血症を呈していなかった。
【0122】
排便回数が3回/週以上に認められること、便性状が2から7であること、及び遺糞、腹痛、排便時痛、排便時出血の各症状がないことを満たす患者を便秘治療成功例としたとき、便秘治療成功例の割合は41%(49例中、20例)であった。
【0123】
49例中20例が治療成功例であることから、事前分布の治療成功数20、失敗数29となり、事前分布と尤度を結合し、治療成功数21、失敗数30とする事後分布を求めた。この事後分布より事後分布治療成功確率が0.7以下の確率は0.9999894と算出される。即ち、治療成功率が70%以上となる確率は0.001%であった。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、これまで有効な治療法が限られていた小児便秘症患者の治療に広く用いることができ、その産業上の利用価値は極めて高い。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性機能性便秘症を治療するための、酸化マグネシウムを有効成分として含有する医薬組成物であって、体重7.5kg以上、年齢1~5歳の小児患者に対して、酸化マグネシウムの1日あたり投与用量が30.11~35.83mg/kgとなるように、1日2回経口投与されると共に、錠剤又は細粒剤であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
1日2回の投与が朝食後及び夕食後の投与である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
1日の投与単位数が2n単位であり、朝食後にn単位、夕食後にn単位に分割して投与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1日の投与単位数が2n+1単位であり、朝食後にn単位、夕食後にn+1単位に分割して経口投与される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
経管栄養チューブを使用し、経管投与に用いることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の医薬組成物。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性機能性便秘症を治療するための、酸化マグネシウムを有効成分として含有する医薬組成物であって、体重7.5kg以上、年齢1~5歳の小児患者に対して、酸化マグネシウムの1日あたり投与用量が30.11~35.83mg/kgとなるように、1日2回、2週間以上継続して経口投与されると共に、錠剤又は細粒剤であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
1日2回の投与が朝食後及び夕食後の投与である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
1日の投与単位数が2n単位であり、朝食後にn単位、夕食後にn単位に分割して投与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1日の投与単位数が2n+1単位であり、朝食後にn単位、夕食後にn+1単位に分割して経口投与される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
経管栄養チューブを使用し、経管投与に用いることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の医薬組成物。