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特開2023-20875量子ドット複合材、それを使用する光学フィルム及びバックライトモジュール
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  • 特開-量子ドット複合材、それを使用する光学フィルム及びバックライトモジュール 図1
  • 特開-量子ドット複合材、それを使用する光学フィルム及びバックライトモジュール 図2
  • 特開-量子ドット複合材、それを使用する光学フィルム及びバックライトモジュール 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020875
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】量子ドット複合材、それを使用する光学フィルム及びバックライトモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20230202BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20230202BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20230202BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20230202BHJP
   F21V 9/38 20180101ALI20230202BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/02 B
F21S2/00 418
F21V9/32
F21V9/38
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073372
(22)【出願日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】110127813
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】廖 仁▲ユ▼
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
3K244
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA20
2H148AA00
2H148AA05
2H148AA19
3K244AA04
3K244BA02
3K244BA03
3K244BA11
3K244BA29
3K244CA02
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA16
3K244ED24
3K244GA01
3K244GA02
3K244GA03
3K244GA04
3K244GA05
3K244LA06
(57)【要約】
【課題】本発明は、量子ドット複合材、それを使用する光学フィルム及びバックライトモジュールを提供する。
【解決手段】量子ドット複合材は、硬化性ポリマー及び硬化性ポリマーに分散する量子ドット粒子を含む。硬化性ポリマーの総重量を100重量%として、硬化性ポリマーは、単官能アクリルモノマー15~40重量%(wt%)と、多官能アクリルモノマー15~40重量%と、チオール官能基を有するモノマー5~35重量%と、光開始剤1~5重量%と、アクリルオリゴマー10~30重量%と、散乱粒子5~25重量%と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性ポリマー及び前記硬化性ポリマーに分散する量子ドット粒子を含む量子ドット複合材であって、
前記硬化性ポリマーの総重量を100重量%として、前記硬化性ポリマーは、
単官能アクリルモノマー15~40重量%(wt%)と、
多官能アクリルモノマー15~40重量%と、
チオール官能基を有するモノマー5~35重量%と、
光開始剤1~5重量%と、
アクリルオリゴマー10~30重量%と、
散乱粒子5~25重量%と、を含む、ことを特徴とする量子ドット複合材。
【請求項2】
前記単官能アクリルモノマーは、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、ステアリルアクリレート、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ラウリル、イソボロニルメタクリレート、アクリル酸トリデシル、アルコキシ化ノニルフェノールアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及びエトキシル化(10)ビスフェノールAジメタクリレートからなる群から選択され、
多官能アクリルモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の量子ドット複合材。
【請求項3】
前記アクリルオリゴマーは、ポリカーボネートアクリレート、ポリウレタンアクリレート及びポリブタジエンアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の量子ドット複合材。
【請求項4】
前記チオール官能基を有するモノマーは、一級チオール化合物又は二級チオール化合物であると共に、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、2,2’-チオジエタノール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、ポリエチレングリコールジチオール、ペンタエリスリトールテトラ(3‐メルカプトプロピオナート)、エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、及び2-メルカプトプロピオン酸エチルからなる群から選択される、請求項1に記載の量子ドット複合材。
【請求項5】
前記多官能アクリルモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の量子ドット複合材。
【請求項6】
前記散乱粒子は、粒子径が0.5~10μmであると共に、表面処理を行った、アクリル微粒子、二酸化ケイ素微粒子又はポリスチレン微粒子である、請求項1に記載の量子ドット複合材。
【請求項7】
前記量子ドット粒子の重量%は、0.1~4重量%である、請求項1に記載の量子ドット複合材。
【請求項8】
前記量子ドット粒子は、赤色量子ドット及び緑色量子ドットを含むと共に、前記緑色量子ドットの濃度と前記赤色量子ドットの濃度との比(緑色量子ドットの濃度:赤色量子ドットの濃度)は、1~30である、請求項1に記載の量子ドット複合材。
【請求項9】
単官能アクリルモノマーの重量%と多官能アクリルモノマーの重量%との比は、0.5~2.5である、請求項1に記載の量子ドット複合材。
【請求項10】
前記チオール官能基を有するモノマーの重量%と前記多官能アクリルモノマーの重量%との総合は、20~50%であると共に、前記チオール官能基を有するモノマーの重量%と前記多官能アクリルモノマーの重量%との比(チオール官能基を有するモノマーの重量%/多官能アクリルモノマーの重量%)の範囲は、0.4~2である、請求項1に記載の量子ドット複合材。
【請求項11】
量子ドット複合材を硬化して形成された量子ドット層と、第1ベース層と、第2ベース層と、を備え、前記量子ドット層が前記第1ベース層と前記第2ベース層との間にある、光学フィルムであって、
前記量子ドット複合材は、硬化性ポリマー及び前記硬化性ポリマーに分散する量子ドット粒子を含み、前記硬化性ポリマーの総重量を100重量%として、前記硬化性ポリマーは、
単官能アクリルモノマー15~40重量%と、
多官能アクリルモノマー15~40重量%と、
チオール官能基を有するモノマー5~35重量%と、
光開始剤1~5重量%と、
アクリルオリゴマー10~30重量%と、
散乱粒子5~25重量%と、を含む、ことを特徴とする光学フィルム。
【請求項12】
前記第1ベース層及び前記第2ベース層は、ポリエチレンテレフタレートで形成されると共に、前記第1ベース層及び前記第2ベース層の厚みはいずれも、20~120μmである、請求項11に記載の光学フィルム。
【請求項13】
前記量子ドット層の厚みは、30~130μmである、請求項11に記載の光学フィルム。
【請求項14】
入光側及び出光側を有するライトガイドユニットと、
前記入光側に投射される光束を生成するための少なくとも1つの発光ユニットと、
前記ライトガイドユニットの前記入光側に設置され且つ前記ライトガイドユニットと少なくとも1つの前記発光ユニットとの間にある光学フィルムと、を備える、バックライトモジュールであって、
前記光学フィルムは、
量子ドット複合材を硬化して形成され、且つ第1表面及び第2表面を有する、量子ドット層と、
前記量子ドット層の前記第1表面に接する第1ベース層と、
前記量子ドット層の前記第2表面に接し、且つ前記ライトガイドユニットに接する第2ベース層と、を備え、
前記量子ドット複合材は、硬化性ポリマー及び前記硬化性ポリマーに分散する量子ドット粒子を含み、前記硬化性ポリマーの総重量を100重量%として、前記硬化性ポリマーは、
単官能アクリルモノマー15~40重量%と、
多官能アクリルモノマー15~40重量%と、
チオール官能基を有するモノマー5~35重量%と、
光開始剤1~5重量%と、
アクリルオリゴマー10~30重量%と、
散乱粒子5~25重量%と、を含む、ことを特徴とするライトガイドユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット複合材、それを使用する光学フィルム及びバックライトモジュールに関し、特に、表示分野に応用する量子ドット複合材、それを使用する光学フィルム及びバックライトモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの表示品質の要求が高まるにつれ、高彩度と低厚みの両方を備えたディスプレイの開発が徐々に主流となっている。有機発光ダイオード(OLED)と比較して、量子ドットは発光効率が比較的高く、色域が広く、色純度が高いため、ディスプレイ技術の分野において、視聴者により良い視聴体験を提供するために、バックライトディスプレイとして量子ドット材料を使用することが開発された。
【0003】
しかし、量子ドット材料は湿気や酸素に耐性がないため、量子ドット材料を含む量子ドットフィルムが空気や湿気に接触すると、劣化しやすく、発光効率に影響を与える。従来技術では、量子ドットフィルムをディスプレイに応用する場合、通常、量子ドットフィルムの両側にそれぞれ2層のバリア層(通常、樹脂層である)が接着されることで、湿気または酸素が量子ドットフィルムに侵入するのを防ぐと共に、ディスプレイの安定性を向上させ、耐用年数を延長させる。
【0004】
一般的に、量子ドットフィルム自体は湿気や酸素に対するバリア性が低く、バリア率の高いバリアフィルムを使用する必要があるが、高いバリア率のバリアフィルムを使用すると、全体的なコストとプロセスの困難さを増加し、製品の全体的な厚さを減らすことも困難になる。以上の理由から、量子ドットフィルムを用いたディスプレイ製品の市場価格は依然として比較的高く、広く使われていない。従いまして、量子ドットフィルムの組成を改善して、湿気と酸素を遮断する量子ドットフィルムの能力を改善して、上記の欠点を克服する方法は、依然としてこの事業の解決しよとする重要な問題の1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、量子ドット複合材、それを使用する光学フィルム及びバックライトモジュールを提供する。なかでも、硬化した量子ドット複合材は、より高い緻密さを有し、湿気及び酸素に対してより優れたバリア機能を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、量子ドット複合材を提供することである。前記量子ドット複合材は、硬化性ポリマー及び前記硬化性ポリマーに分散する量子ドット粒子を含む。硬化性ポリマーの総重量を100重量%として、硬化性ポリマーは、単官能アクリルモノマー15~40重量%と、多官能アクリルモノマー15~40重量%と、チオール官能基を有するモノマー5~35重量%と、光開始剤1~5重量%と、アクリルオリゴマー10~30重量%と、散乱粒子5~25重量%と、を含む。
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、量子ドット複合材を硬化して形成された量子ドット層と、第1ベース層と、第2ベース層と、を備え、量子ドット層が第1ベース層と第2ベース層との間にある、光学フィルムを提供する。量子ドット複合材は、硬化性ポリマー及び硬化性ポリマーに分散する量子ドット粒子を含む。硬化性ポリマーの総重量を100重量%として、硬化性ポリマーは、単官能アクリルモノマー15~40重量%と、多官能アクリルモノマー15~40重量%と、チオール官能基を有するモノマー5~35重量%と、光開始剤1~5重量%と、アクリルオリゴマー10~30重量%と、散乱粒子5~25重量%と、を含む。
【0008】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、入光側及び出光側を有するライトガイドユニットと、ライトガイドユニットに投射される光束を生成するための少なくとも1つの発光ユニットと、ライトガイドユニットの入光側に設置され且つライトガイドユニットと少なくとも1つの発光ユニットとの間にある光学フィルムと、を備える、バックライトモジュールを提供する。光学フィルムは、量子ドット複合材を硬化して形成された量子ドット層と、第1ベース層と、第2ベース層と、を備え、量子ドット層が第1ベース層と第2ベース層との間にある。量子ドット複合材は、硬化性ポリマー及び硬化性ポリマーに分散する量子ドット粒子を含む。硬化性ポリマーの総重量を100重量%として、硬化性ポリマーは、単官能アクリルモノマー15~40重量%と、多官能アクリルモノマー15~40重量%と、チオール官能基を有するモノマー5~35重量%と、光開始剤1~5重量%と、アクリルオリゴマー10~30重量%と、散乱粒子5~25重量%と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有利な効果として、本発明に係る量子ドット複合材、それを使用する光学フィルム及びバックライトモジュールは、「量子ドット複合材は、硬化性ポリマー及び硬化性ポリマーに分散する量子ドット粒子を含む」、「硬化性ポリマーは、単官能アクリルモノマー15~40重量%と、多官能アクリルモノマー15~40重量%と、チオール官能基を有するモノマー5~35重量%と、光開始剤1~5重量%と、アクリルオリゴマー10~30重量%と、散乱粒子5~25重量%と、を含む」といった技術特徴により、量子ドット複合材を硬化して形成された量子ドット層自身に、湿気及び酸素をバリアする能力を付与し、ディスプレイのバックライトモジュールに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一つの実施形態に係る量子ドット複合材の部分断面図である。
図2】本発明の一つの実施形態に係る光学フィルムの部分断面図である。
図3】本発明の一つの実施形態に係るバックライトモジュールの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0012】
以下、所定の具体的な実施態様によって「量子ドット複合材、それを使用する光学フィルム及びバックライトモジュール」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0013】
[第一実施形態]
本発明の一つの実施形態に係る量子ドット複合材の部分断面図である図1に示すように、本発明は、硬化性ポリマー10と、硬化性ポリマー10に分散する量子ドット11粒子とを少なくとも含む、量子ドット複合材1を提供する。本発明の実施形態において、硬化性ポリマー10の組成及び配合比を改良することにより、硬化した硬化性ポリマー10の緻密さを向上させ、湿気及び酸素に対してより優れたバリア機能を有した上で、ある程度の物理特性(例えば、靭性)を維持することができる。
【0014】
詳しく説明すると、硬化性ポリマー10の総重量を100重量%として、硬化性ポリマー10は、単官能アクリルモノマー15~40重量%(wt%)と、多官能アクリルモノマー15~40重量%と、アクリルオリゴマー10~30重量%と、チオール官能基を有するモノマー5~35重量%と、光開始剤1~5重量%と、散乱粒子5~25重量%と、を含む。
【0015】
単官能アクリルモノマー及び多官能アクリルモノマーはいずれも、官能基を含有する小分子である。単官能アクリルモノマーは、1分子あたりに1つの重合可能な官能基を有する。多官能基アクリルモノマーは、1分子あたりに重合可能な官能基を有する。
【0016】
多官能アクリルモノマーに比べると、単官能アクリルモノマーは、低い硬化速度と、低い架橋密度、及び低い粘度などの特性を有する。このため、単官能アクリルモノマーの配合比が高いほど、硬化した量子ドット複合材1の体積収縮率が少ないと共に、架橋密度(crosslink density)が低くなる。しかしながら、単官能アクリルモノマーは、量子ドット粒子11の分散性を向上させることができる。
【0017】
それに対し、多官能アクリルモノマーは、量子ドット複合材1により速い硬化速度及びより高い粘度を与える。多官能アクリルモノマーの配合比が高いほど、硬化した量子ドット複合材1がより高い架橋密度を有するが、体積収縮率も大きくなると共に、脆性及び硬度が比較的に高くなる。また、多官能アクリルモノマーは、量子ドット複合材1の粘度を向上させることができるが、多官能アクリルモノマーの配合比が高いほど、量子ドット粒子11は、硬化性ポリマー10での分散性が低減することがある。説明すべきことは、量子ドット粒子11の硬化性ポリマー10での分散性が不良である場合、励起された量子ドット粒子11による励起光の波長半値幅が広くなると共に、量子ドット粒子11の光変換効率が悪くて、輝度が低いため、実際応用の要求を満たすことは困難である。
【0018】
それによって、本発明における実施形態において、硬化した量子ドット複合材1はより高い緻密さを有すると共に、量子ドット粒子11の硬化性ポリマー10での分散性を達成し、更に、硬化した量子ドット複合材1の体積収縮率、硬度及び脆性が高すぎることを回避することができる。
【0019】
上述したように、単官能基アクリルは、量子ドット粒子11の分散性を向上させることができる。しかしながら、単官能基アクリルの比率が高すぎると、硬化した硬化性ポリマー10の緻密さが低くなり、湿気及び酸素に対してバリア機能が低くなると共に、重合速度が低すぎることがある。従いまして、本発明の実施形態において、単官能アクリルモノマーの重量%と多官能アクリルモノマーの重量%との比は、0.37~2.67である。一つの好ましい実施形態において、単官能アクリルモノマーの重量%と多官能アクリルモノマーの重量%との比は、0.5~2.5である。一つのより好ましい実施形態において、単官能アクリルモノマーの重量%と多官能アクリルモノマーの重量%との比は、0.7~1.5である。それによって、硬化性ポリマー10では、量子ドット粒子11がより優れた分散性を有すると共に、硬化した硬化性ポリマー10の水・酸素バリア性を向上させることができる。
【0020】
一つの実施形態において、単官能アクリルモノマーは、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、ステアリルアクリレート、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ラウリル、イソボロニルメタクリレート、アクリル酸トリデシル、アルコキシ化ノニルフェノールアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及びエトキシル化(10)ビスフェノールAジメタクリレートからなる群から選択される。
【0021】
また、一つの実施形態において、多官能アクリルモノマーは、三官能アクリルモノマー又は四官能アクリルモノマーである。具体的に、多官能アクリルモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートからなる群から選択される。
【0022】
説明すべきことは、多官能アクリルモノマーの重量%を向上させることにより、硬化した硬化性ポリマー10の密度を向上させることができるが、硬化した硬化性ポリマ-10が比較的に脆くて柔軟性を有しないため、その後の加工にとって不利となる。従いまして、本発明において、量子ドット複合材1は、チオール官能基を有するモノマーを含むことにより、硬化した量子ドット複合材1がより高い密度及びより優れた水・酸素バリア性を有した上で、柔軟性及び靭性も有する。上述した柔軟性は、硬化した量子ドット複合材1が半分に折りたたんだ上で割れるか否かで評価する。また、靭性は、硬化した量子ドット複合材1が半分に折りたたんだ上で、張力を耐えられて巻き上げられるか否かで評価する。
【0023】
好ましい実施形態において、硬化性ポリマー10は、5~35重量%のチオール官能基を有するモノマーを含む。説明すべきことは、チオール官能基を有するモノマーの含有量は5重量%未満であると、硬化した量子ドット複合材1の柔軟性が比較的に低くなる。また、硬化した量子ドット複合材1は、後でディスプレイに組み立てられることがある。チオール官能基を有するモノマーの含有量が35重量%を超えると、硬化した量子ドット複合材1が軟すぎ、剛性(反り度)が低すぎて、組み立て性に影響することがある。もう一つの好ましい実施形態において、硬化性ポリマー10は、10~30重量%のチオール官能基を有するモノマーを含み、硬化した量子ドット複合材1の柔軟性及び組み立て性を両立することができる。
【0024】
また、チオール官能基を有するモノマーを添加することにより、硬化性ポリマー10の密着性を向上させることができる。詳しく説明すると、光学フィルムを製造する工程において、量子ドット複合材1は、もう1つの基材(図面なし)に形成された後に、硬化工程を行うことで、量子ドット層が形成される。量子ドット複合材1と基材との密着性が不良となると、硬化工程を行った後に、量子ドット層と基材との間に隙間が生じて、光学フィルムの湿気に対するバリア機能が低くなることがある。
【0025】
チオール官能基を有するモノマーの重量%と多官能アクリルモノマーの重量%との総合は、20~50%である。チオール官能基を有するモノマーの重量%と多官能アクリルモノマーの重量%との総合は20%未満であると、量子ドット層1’の架橋密度が低すぎて、量子ドット層1’の水・酸素バリア性が低下することがある。チオール官能基を有するモノマーの重量%と多官能アクリルモノマーの重量%との総合は50%を超えると、他の成分による効果が抑制されることがある。
【0026】
また、チオール官能基を有するモノマーの重量%と多官能アクリルモノマーの重量%との比は、0.17~2である。一つの好ましい実施形態において、チオール官能基を有するモノマーの重量%と多官能アクリルモノマーの重量%との比の範囲は、0.4~2である。チオール官能基を有するモノマーの重量%と多官能アクリルモノマーの重量%との総合及び比を制御することにより、量子ドット層1’により優れた水・酸素バリア性、柔軟性及び靭性を与えると共に、量子ドット層1’が柔らかすぎて剛性を有しないことを回避することができるため、その後の加工及びディスプレイに組み立てられることが容易となる。
【0027】
本実施形態において、チオール官能基を有するモノマーは、一級チオール化合物又は二級チオール化合物であると共に、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、2,2’-チオジエタノール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、ポリエチレングリコールジチオール、ペンタエリスリトールテトラ(3‐メルカプトプロピオナート)、エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、及び2-メルカプトプロピオン酸エチルからなる群から選択される。
【0028】
なお、一つの実施形態において、チオール官能基を有するモノマーは、メルカプト官能基(-SH)を含有する非芳香族化合物であり、それによって、量子ドット粒子11により優れた分散性を与える。
【0029】
本実施形態において、アクリルオリゴマーは、ポリカーボネートアクリレート、ポリウレタンアクリレート及びポリブタジエンアクリレートからなる群から選択されてもよい。一つの好ましい実施形態において、アクリルオリゴマーの含有量は、15~30重量%である。また、アクリルオリゴマーの濃度とアクリルモノマーの濃度(即ち、単官能アクリルモノマー及び多官能アクリルモノマーの濃度総合)との比は、好ましくは0.3~0.6である。多官能アクリルモノマーに比べると、アクリルオリゴマーは、硬化した量子ドット複合材1に柔軟性を与えることができる。光開始剤は、光エネルギー(例えば、紫外線)を吸収して励起されて、フリーラジカル、カチオン又はアニオンが生成されて、重合反応を起こす、という役割を果たせる。一つの実施形態において、光開始剤は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1-hydroxycyclohexyl phenyl ketone)、ベンゾイルイソプロパノール(benzoyl isopropanol)、トリブロモメチルフェニルスルホン(tribromomethyl phenyl sulfone)、及びジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(diphenyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphine oxide)からなる群から選択されてもよい。前記散乱粒子は、粒子径が0.5~20μmであると共に、表面処理を行った、アクリル微粒子、二酸化ケイ素微粒子又はポリスチレン微粒子である。しかし、光開始剤の含有量が1重量%未満であると、硬化し難くなる。光開始剤の含有量が5重量%を超えると、量子ドット複合材1の揮発性に影響する。一つの好ましい実施形態において、光開始剤の含有量が3重量%である。
【0030】
散乱粒子は、表面処理を行った上で、粒子径が0.5~10μmである微粒子であってもよい。微粒子の材料として、例えば、アクリル、二酸化ケイ素、二酸化ゲルマニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム(III)又はポリスチレンであってもよい。散乱粒子は、量子ドットに光散乱を発生させることができる。このように、量子ドット複合材1を使用して製造された光学フィルムm1を、ディスプレイに実際に応用する場合、光学フィルムm1で生成された光がより均一となる。説明すべきことは、散乱粒子の含有量が5重量%未満であると、ヘイズ値が足りなくなる。散乱粒子の含有量が25重量%を超えると、散乱粒子の含有量が多すぎて材料全体の樹脂の含有量が足りなくなり、量子ドット粒子11の分散性に影響すると共に、加工の困難度が上がる。
【0031】
また、量子ドット複合材1において、量子ドット粒子11の重量%は、0.1~4重量%であり、必要に応じて調整することができる。量子ドット粒子11は、赤色量子ドット、緑色量子ドット、青色量子ドット及びそれらの任意の組み合わせを含む。例えば、量子ドット粒子11は赤色量子ドット及び緑色量子ドットを含むと共に、緑色量子ドットの濃度と赤色量子ドットの濃度との比(緑色量子ドットの濃度/赤色量子ドットの濃度)は、1~30であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0032】
また、一つの実施形態において、量子ドット粒子11は、コアシェル構造、即ち、コア及びコアを覆うシェルを含む構造を有する。量子ドット粒子11のコア/シェルの材料として、セレン化カドミウム(CdSe)/硫化亜鉛(ZnS)、リン化インジウム(InP)/硫化亜鉛(ZnS)、セレン化鉛(PbSe)/硫化鉛(PbS)、セレン化カドミウム(CdSe)/硫化カドミウム(CdS)、テルル化カドミウム(CdTe)/硫化カドミウム(CdS)又はテルル化カドミウム(CdTe)/硫化亜鉛(ZnS)を含むが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0033】
更に、量子ドット粒子11のコア及びシェルはいずれも、II-VI族(Group II-VI)、II-V族、(Group II-V)、III-VI族(Group III-VI)、III-V族(Group III-V)、IV-VI族(Group IV-VI)、II-IV-VI族(Group II-IV-VI)又はII-IV-V族(Group II-IV-V)複合材料であってもよい。なかでも、「族」との用語とは、周期表における族である。
【0034】
コアの材料として、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、セレン化ガリウム(GaSe)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)、窒化タリウム(TlN)、リン化タリウム(TlP)、ヒ化タリウム(TlAs)、アンチモン化タリウム(TlSb)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、テルル化鉛(PbTe)又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0035】
シェルの材料として、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、酸化マグネシウム(MgO)、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)、テルル化マグネシウム(MgTe)、酸化水銀(HgO)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)、窒化タリウム(TlN)、リン化タリウム(TlP)、ヒ化タリウム(TlAs)、アンチモン化タリウム(TlSb)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、テルル化鉛(PbTe)又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0036】
本発明の一つの実施形態に係る光学フィルムの部分断面図である図2に示すように、本実施形態に係る光学フィルムm1は、量子ドット層1’と、第1ベース層2と、第2ベース層3と、を備える。量子ドット層1’は、第1ベース層2と第2ベース層3との間にある。
【0037】
量子ドット層1’は、量子ドット複合材1を硬化して形成されてもよい。詳しく説明すると、第1ベース層2に量子ドット複合材1を形成し、次に、量子ドット複合材1を第2ベース層3で覆うことにより、積層構造を形成する。一つの実施形態において、量子ドット層1’の厚みは、30~130μmである。
【0038】
その後、硬化工程を行うことにより、積層構造における量子ドット複合材1を硬化させて量子ドット層1’を形成する。更に説明すると、硬化工程において、積層構造に紫外光を照射して、量子ドット複合材1の硬化性ポリマー10を硬化させることができる。このように、量子ドット層1’は、硬化のポリマー10’及びポリマー10’に分散する量子ドット粒子11を含む。
【0039】
ポリマー10’がより緻密であるため、より優れた水・酸素バリア性を有し、第1ベース層2及び第2ベース層3の材料は、水・酸素バリア性が高い材料を使用する必要がない。例えば、第1ベース層2及び第2ベース層3の材料はポリエステルであってもよい。ポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリカーボネート(PC)及びポリアリレートを含み、好ましくはPETである。また、第1ベース層2及び第2ベース層3の厚みはそれぞれ、20~125μmである。
【0040】
即ち、本発明の実施形態に係る量子ドット複合材1を硬化して形成された量子ドット層1’は既に、良好な水・酸素バリア性を有する。従いまして、光学フィルムm1は、他のコストの高い水・酸素バリア層を設置する必要がなく、光学フィルムm1全体のコスト及びプロセスの困難さを低減することができる。その上、光学フィルムm1の全体厚みを低減することができる。一つの実施形態において、光学フィルムm1の総厚みは、90~380nmである。
【0041】
表1において、比較例の材料や本発明の実施形態の量子ドット複合材1で形成された光学フィルムの各指標パラメータを示す。比較例及び実施例1~6において、量子ドット層1’を形成するための量子ドット複合材1はいずれも、1.6重量%の量子ドット粒子11を含むが、硬化性ポリマー10における、チオール官能基を有するモノマー、アクリルモノマー及びアクリルオリゴマーの配合比が相違する。また、比較例及び実施例1~6で使用した第1ベース層及び第2ベース層の材料は同一である。
【0042】
表1における各指標パラメータの測定方法は、以下の通りである。
【0043】
反り度:測定方法は、10cmx10cmのサンプルを用いて、一端を貼り付けた後に、他端の反りの高さを測定する。
【0044】
接着性:テンションメータで測定する。測定を行う際に、量子ドット層を第1ベース層と第2ベース層との間に挟んでから、引き離すテストを行う。接着性は「良好」であるときは、引き離すことができないことから、第1ベース層と第2ベース層が破裂することとなる。接着性は「普通」であるときは、引き離すことができるが、接着剤層が第1ベース層と第2ベース層との両方に付いている。接着性は「劣」であるときは、引き離すことができると共に、接着剤層が第1ベース層や第2ベース層の片方だけに付いている。
【0045】
輝度:輝度計(品番:SR-3ARである分光光度計)を用いてブルー光源(12W)、色座標(x=0.155,y=0.026)、主波長450nm、及び半値全幅20nmなどの条件で励起し、バックライトモジュールの照射で測定を行う。
【0046】
環境試験:環境試験箱を用いて65℃及び95%相対湿度との条件で、測定を行う。環境試験前後の色座標変化及び輝度変化を測定する。
【0047】
収縮率:硬化前後の体積変化率と硬化前の体積との割合である。
【0048】
【表1】
【0049】
表1によれば、比較例において、チオール官能基を有するモノマーを添加せず、アクリルモノマー(単官能アクリルモノマー及び多官能アクリルモノマー)の配合比のみを増加する場合、硬化速度が速くなるが、硬化した後に、量子ドット層の収縮率が高くなると共に、反りしやすく、スムーズでなく、密着性が低く、且つ割れやすくなった。
【0050】
実施例1~6に係る光学フィルムで使用された量子ドット複合材はいずれも、チオール官能基を有するモノマーを含む。比較例に比べると、硬化した後に、実施例1~6の量子ドット層1’と第1ベース層2、及び量子ドット層1’と第2ベース層3との間により優れた密着性を有する。更に説明すると、表1に示すように、比較例の環境試験の輝度減衰率(11.9%)に比べると、実施例1~6の環境試験の輝度減衰率(0.45~4.4%)及び環境試験の色座標変化がいずれも低いため、実施例1~6の光学フィルムの水・酸素バリア性が比較例の光学フィルムより優れることは明らかである。
【0051】
また、本発明の実施形態において、量子ドット複合材1の硬化性ポリマー10において、単官能アクリルモノマーの重量%と多官能アクリルモノマーの重量%との比(単官能アクリルモノマーの重量%/多官能アクリルモノマーの重量%)は、0.5~2.5であることによって、硬化性ポリマー10における量子ドット粒子11の分散性が優れると共に、硬化した硬化性ポリマー10の水・酸素バリア性を向上させることができる。
【0052】
輝度計(品番:SR-3ARである分光光度計)を用いて本発明の実施形態の光学フィルムm1の光学特性を測定する。測定の結果において、本発明の実施例の光学フィルムm1で生成した赤色光の半値幅が35nm以下であり、好ましくは25~30nmである。本発明の実施形態の光学フィルムm1で生成した緑色光の半値幅が30nm以下であり、好ましくは20~25nmである。また、測定結果では、本発明の実施形態に係る光学フィルムm1が放光する時に、輝度が3100cd/mを超え、好ましくは4000~5000cd/mに至ることができる。上記測定結果によれば、本発明の実施例1~6に係る量子ドット層1’(硬化した量子ドット複合材1)は、より優れた水・酸素バリア性を有するだけでなく、量子ドット粒子11がより優れた分散性を有する。
【0053】
なお、実施例1~6に係る光学フィルムm1で使用された量子ドット複合材において、チオール官能基を有するモノマーと多官能アクリルモノマーとの比は、0.07~2.3である。比較例に比べると、実施例1~6に係る光学フィルムm1は、より優れた柔軟性を有するため、反り度(剛性)が低くなる。チオール官能基を有するモノマーと多官能アクリルモノマーとの比がだんだん増加すると、光学フィルムm1の柔軟性が高くなり、反り度が低くなる。
【0054】
一般的に、光学フィルムの反り度高いほど、高い剛性を有する。光学フィルムに対する加工及び組み立てを行う際に便利となる。実施例2~5に係る光学フィルムm1で使用された量子ドット複合材1において、チオール官能基を有するモノマーと多官能アクリルモノマーとの比は0.17~2であり、光学フィルムm1の反り度は2~2.5mmであり、それによって、光学フィルムにより優れた柔軟性に与えると共に、適切な剛性(反り度)を与えて、その後の加工及び組み立て性の便利性を向上させることができる。
【0055】
接着性、環境試験の輝度減衰率、環境試験の色座標変化及び反り度などの特性を総合考量すると、実施例3~5に係る光学フィルムm1で使用された量子ドット複合材1において、チオール官能基を有するモノマーの重量%と多官能アクリルモノマーの重量%との総合は、35~45%であると共に、チオール官能基を有するモノマーと多官能アクリルモノマーとの比は、0.4~2であり、それによって、柔軟性、水・酸素バリア性及び加工及び組み立て性を両立することができる。
【0056】
このように、本発明の実施例光学フィルムm1は、ディスプレイのバックライトモジュールに応用することができる。図3に示すように、本発明の実施例に係るバックライトモジュールを示す模式図である。バックライトモジュールMは、光学フィルムm1、ライトガイドユニットm2及び少なくとも1つの発光ユニットm3を含む。
【0057】
ライトガイドユニットm2は、ライトガイド板、反射シート、拡散シート、プリズムシート、偏光シートの中の少なくとも1つを含んでもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。ライトガイドユニットm2は、入光側S1及び出光側S2を有する。
【0058】
少なくとも1つの発光ユニットm3は、ライトガイドユニットm2に投射される光束Lを生成するためのものである。図3に示すように、本実施例の発光ユニットm3は、複数個の発光素子m31を含むと共に、複数個の発光素子m31でアレイを配列した上で、ライトガイドユニットm2の入光側S1で対応的に設置されている。また、光学フィルムm1は、ライトガイドユニットm2の入光側S1に設置されると共に、ライトガイドユニットm2と発光ユニットm3との間にある。
【0059】
本実施例において、光学フィルムm1は、図2に示した、量子ドット層1’と、第1ベース層2と、第2ベース層3とを備え、且つ量子ドット層1’が第1ベース層2と第2ベース層3との間にある、光学フィルムm1を使用することができる。換言すると、量子ドット層1’は、第1表面1a及び反対側である第2表面1bを有する。第1ベース層2は、第1表面1aに接し、第2ベース層3は、第2表面1bに接する。本実施形態において、光学フィルムm1は、第2ベース層3を介してライトガイドユニットm2に接する。詳しく説明すると、光学フィルムm1は、もう1つの光学接着剤層m4を介して、ライトガイドユニットm2の入光側S1に固定される。量子ドット層1’、第1ベース層2及び第2ベース層3の材料については、上記の説明と同様であるので、ここでその説明を省略する。
【0060】
説明すべきことは、発光ユニットm3で生成された光束Lは、量子ドット層1’に入射した後に、一部の光束Lは、量子ドット層1’における量子ドット粒子11を励起させて、波長が光束Lと異なる励起ビームが生成される。即ち、発光ユニットm3で生成された光束Lが量子ドット層1’を通過した後に、混合光束(光束及び励起ビームを含む)が生成され、混合光束が、ライトガイドユニットm2の入光側S1からライトガイドユニットm2に入射する。
【0061】
なお、本発明の実施形態の量子ドット層1’は、良好な水・酸素バリア性を有するため、コストが高い水・酸素バリア層を更に使用して量子ドット層1’を保護する必要がないので、光学フィルムm1のコストを低減するだけでなく、光学フィルムm1の全体の厚みを低減することができる。本発明の実施形態に係る光学フィルムm1をディスプレイのバックライトモジュールMに応用する時に、バックライトモジュールMの厚みを更に低減することができる。
【0062】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る量子ドット複合材、それを使用する光学フィルム及びバックライトモジュールは、「量子ドット複合材1は、硬化性ポリマー10及び硬化性ポリマー10に分散する量子ドット粒子11を含む」、「硬化性ポリマー10は、単官能アクリルモノマー15~40重量%と、多官能アクリルモノマー15~40重量%と、チオール官能基を有するモノマー5~35重量%と、光開始剤1~5重量%と、アクリルオリゴマー10~30重量%と、散乱粒子5~25重量%と、を含む」といった技術特徴により、量子ドット複合材1を硬化して形成された量子ドット層1’そのものに、湿気及び酸素をバリアする能力を付与し、光学フィルムm1及びディスプレイのバックライトモジュールMに適用することができる。
【0063】
更に説明すると、チオール官能基を有するモノマーと多官能アクリルモノマーとの総合及び両者の比率を制御することにより、本発明の実施例に係る量子ドット複合材1を硬化することで形成された量子ドット層1’がより高い緻密さ及びより優れた水・酸素バリア性を有すると共に、より優れた柔軟性及び靭性を有することで、脆性割れ難くなる。なお、本発明の実施形態に係る量子ドット複合材1で製造された光学フィルムm1は、より適切な剛性を有する。ディスプレイに応用する際に、適切な剛性を有する光学フィルムm1の組み立て性も向上する。
【0064】
また、単官能アクリルモノマーと多官能アクリルモノマーとの比を制御することにより、硬化性ポリマー10において、量子ドット粒子11の分散性がより優れる。このように、本発明の実施形態の量子ドット層1’が励起されて生成された励起光(赤色光又は緑色光)の波長半値幅及び輝度はいずれも、応用できる標準を満たす。
【0065】
従来の量子ドットフィルムに比べると、本発明の実施形態に係る量子ドット層1’そのものは、より優れた水・酸素バリア性を有するため、量子ドット層1’の両側にある第1ベース層2及び第2ベース層3の材料として、コストの高い水・酸素バリア材料を使用する必要がなく、コストが低い材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)を使用することができる。それによって、光学フィルムm1の全体的な製造コスト及びプロセスの困難さを低減することができる。
【0066】
なお、チオール官能基を有するモノマー及びアクリルモノマー(単官能アクリルモノマー及び多官能アクリルモノマーを含む)の含有量を制御することにより、本発明の実施形態に係る量子ドット層1’と第1ベース層2との接着性、及び量子ドット層1’と第2ベース層3との接着性が優れ、湿気や酸素は、第1ベース層2(又は第2ベース層3)と量子ドット層1’との接触面から量子ドット層1’に浸入し難くなり、光学フィルムm1の湿気や酸素に対するバリア性を向上させることができる。
【0067】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
m1…光学フィルム
1…量子ドット複合材
10…硬化性ポリマー
11…量子ドット粒子
1’…量子ドット層
1a…第1表面
1b…第2表面
10’…ポリマー
2…第1ベース層
3…第2ベース層
m2…ライトガイドユニット
S1…入光側
S2…出光側
m3…発光ユニット
m31…発光素子
L…光束
m4…光学接着剤層
図1
図2
図3