(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020878
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20230202BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230202BHJP
A61K 33/22 20060101ALI20230202BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C07F5/02 A CSP
A61P35/00
A61K33/22
A61K51/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077995
(22)【出願日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2021124381
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507288132
【氏名又は名称】ステラファーマ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502437894
【氏名又は名称】学校法人大阪医科薬科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天滿 敬
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直哉
(72)【発明者】
【氏名】村田 優介
(72)【発明者】
【氏名】竹中 宏誌
(72)【発明者】
【氏名】大田 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】壽谷 彩
(72)【発明者】
【氏名】石村 美紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健介
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4H048
【Fターム(参考)】
4C085HH03
4C085KB44
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086GA16
4C086HA05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB20
4H048VA30
4H048VA75
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いる、水溶性が高く製剤化が容易な新たな化合物を提供する。
【解決手段】式(I)で表される3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体又はその薬学的に許容される塩。
(R
1~R
4は、独立して、H、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ等;R
5は、H、ヒドロキシ、C1-6アルキル、又はハロゲン;R
6は、H、又はC1-6アルキル;R
7は、ボロン酸(-B(OH)
2)、ボロン酸エステル又はボロン酸アミド)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化33】
ここで、式(I)中、
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ベンジルオキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、ニトロ、C1-6ハロアルキル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアミノカルボニル(CONR
8R
9(R
8、R
9は、独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、C1-C6アルコキシカルボニル、C1-C6アルキルカルボニル、COOR
10(R
10は、H又はC1-6アルキル、アミノ、アルキルアミノ(NR
11R
12(R
11R
12は、それぞれ独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、ハロアルキルスルファニル、ハロアルキルスルフィニル、ハロアルキルスルホニル、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6のアルキルスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、又はスルファモイルを表し、
R
5は、H、ヒドロキシ、C1-6アルキル、又はハロゲンを表し;
R
6は、H、又はC1-6アルキルを表し;
R
7は、ボロン酸(‐B(OH)
2)、ボロン酸エステル又はボロン酸アミドのいずれかを表わす
(但し、R
1、R
2、R
3、及びR
4がすべてHの時、又はR
1、R
2、R
3、及びR
4のいずれか1つがヒドロキシ、C1-3アルコキシ又はメチルカルボニルの時、R
6は、C1-6アルキルを表す)
【請求項2】
前記R6が、H又はメチルを表す、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記R7がボロン酸(B(OH)2)又はボロン酸のピナコールエステルを表す、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記R5はHを表す、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
前記R1、R2、R3、及びR4のいずれか1又は2以上が、独立して、Cl、F、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、CH2X、CHX2、又はCX3(XはFを表わす)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、BNCT用薬剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、放射性同位体を含有する診断薬。
【請求項8】
下記式(I′)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含有し、フルクトース及び糖アルコールの合計濃度が0.1質量%以下である、BNCT用注射点滴の為の薬剤:
【化34】
ここで、式(I′)中、
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ベンジルオキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、ニトロ、C1-6ハロアルキル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアミノカルボニル(CONR
8R
9(R
8、R
9は、独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、C1-C6アルコキシカルボニル、C1-C6アルキルカルボニル、COOR
10(R
10は、H又はC1-6アルキル、アミノ、アルキルアミノ(NR
11R
12(R
11R
12は、それぞれ独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、ハロアルキルスルファニル、ハロアルキルスルフィニル、ハロアルキルスルホニル、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6のアルキルスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、又はスルファモイルを表し、
R
5は、H、ヒドロキシ、C1-6アルキル、又はハロゲンを表し;
R
6は、H、又はC1-6アルキルを表し;
R
7は、ボロン酸(‐B(OH)
2)、ボロン酸エステル又はボロン酸アミドのいずれかを表わす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の治療方法として、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)がある。ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素10同位体(10B)を含むホウ素化合物を癌細胞に取り込ませ、低エネルギーの中性子線(例えば熱中性子)を照射して、細胞内で起こる核反応により局所的に癌細胞を破壊する治療方法である。この治療方法では、10Bを含むホウ素化合物を癌組織の細胞に選択的に蓄積させることが、治療効果を高める上で重要であるため、癌細胞に選択的に取り込まれるホウ素化合物を開発することが必要となる。
【0003】
BNCTに用いる薬剤として基本骨格にホウ素原子又はホウ素原子団を導入した4-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体が合成されている。実際の臨床で用いられている薬剤としては、4-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体(L-BPA)やメルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)がある。4-ボロノ-フェニルアラニンは、フェニルアラニンのミミックとしてアミノ酸トランスポーターの一種であるLAT1(L-type Amino acid Transporter 1)に取り込まれる。しかし、L-BPAは水溶性が低く、製剤化には、フルクトース等の可溶化成分の添加が必須であるなど困難が伴う(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Mori, Y et.al., (1989) Complex Formation of p-Boronophenylalanine With Some Monosaccharides: Pigment cell research 2, 273-277.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水溶性が高く、製剤化が容易な新たな化合物の開発が必要とされている。
【0006】
本発明は、3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
現在、BNCTに用いられている4-BPAは水溶性が低く、フルクトースやソルビトールのような可溶化剤を添加しなければ特に水性製剤の調製が不可能である。一方、このような可溶化剤を添加すると、製剤化は可能であるものの、不安定になる場合もあり、製剤設計は容易ではない。
【0008】
本発明者らは、このような問題点に着眼し、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、3-ボロノ-フェニルアラニンの新たな誘導体で水への溶解度が飛躍的に増加することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記化合物を提供する。
[1]
下記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化1】
ここで、式(I)中、
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ベンジルオキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、ニトロ、C1-6ハロアルキル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアミノカルボニル(CONR
8R
9(R
8、R
9は、独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、C1-C6アルコキシカルボニル、C1-C6アルキルカルボニル、COOR
10(R
10は、H又はC1-6アルキル、アミノ、アルキルアミノ(NR
11R
12(R
11R
12は、それぞれ独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、ハロアルキルスルファニル、ハロアルキルスルフィニル、ハロアルキルスルホニル、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6のアルキルスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、又はスルファモイルを表し、
R
5は、H、ヒドロキシ、C1-6アルキル、又はハロゲンを表し;
R
6は、H、又はC1-6アルキルを表し;
R
7は、ボロン酸(‐B(OH)
2)、ボロン酸エステル又はボロン酸アミドのいずれかを表わす
(但し、R
1、R
2、R
3、及びR
4がすべてHの時、又はR
1、R
2、R
3、及びR
4のいずれか1つがヒドロキシ、C1-3アルコキシ又はメチルカルボニルの時、R
6は、C1-6アルキルを表す)
[2]
前記R
6が、H又はメチルを表す、[1]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[3]
前記R
7がボロン酸(B(OH)
2)又はボロン酸のピナコールエステルを表す、[1]又は[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[4]
前記R
5はHを表す、[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[5]
前記R
1、R
2、R
3、及びR
4のいずれか1又は2以上が、独立して、Cl、F、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、CH
2X、CHX
2、又はCX
3(XはFを表わす)である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【0010】
さらに、本発明は、BNCT用薬剤、診断薬、又はBNCT用注射点滴の為の薬剤を提供する。
[6]
[1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、BNCT用薬剤。
[7]
[1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、放射性同位体を含有する診断薬。
[8]
下記式(I′)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含有し、フルクトース及び糖アルコールの合計濃度が0.1質量%以下である、BNCT用注射点滴の為の薬剤:
【化2】
ここで、式(I′)中、
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ベンジルオキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、ニトロ、C1-6ハロアルキル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアミノカルボニル(CONR
8R
9(R
8、R
9は、独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、C1-C6アルコキシカルボニル、C1-C6アルキルカルボニル、COOR
10(R
10は、H又はC1-6アルキル、アミノ、アルキルアミノ(NR
11R
12(R
11R
12は、それぞれ独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、ハロアルキルスルファニル、ハロアルキルスルフィニル、ハロアルキルスルホニル、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6のアルキルスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、又はスルファモイルを表し、
R
5は、H、ヒドロキシ、C1-6アルキル、又はハロゲンを表し;
R
6は、H、又はC1-6アルキルを表し;
R
7は、ボロン酸(‐B(OH)
2)、ボロン酸エステル又はボロン酸アミドのいずれかを表わす。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩は、水溶性が高く、BNCT等に好都合に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例及び比較例の化合物のうち、いくつかの例を担がんマウスに投与して組織への分布を確認した結果を示すグラフである。
【
図2】実施例及び比較例の化合物のうち、別のいくつかの例を担がんマウスに投与して組織への分布を確認した結果を示すグラフである。
【
図3】比較例及び実施例27の化合物を担がんマウスに投与して組織への分布を確認した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、不斉炭素を持つ化合物を表す場合には、特に示さない限り、当該化合物は、ラセミ体、R体、S体のいずれでも良いものとする。
【0014】
[3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体]
本発明の3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体は、下記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【化3】
ここで、式(I)中、
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ベンジルオキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、ニトロ、C1-6ハロアルキル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアミノカルボニル(CONR
8R
9(R
8、R
9は、独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、C1-C6アルコキシカルボニル、C1-C6アルキルカルボニル、COOR
10(R
10は、H又はC1-6アルキル、アミノ、アルキルアミノ(NR
11R
12(R
11R
12は、それぞれ独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、ハロアルキルスルファニル、ハロアルキルスルフィニル、ハロアルキルスルホニル、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6のアルキルスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、又はスルファモイルを表し、
R
5は、H、ヒドロキシ、C1-6アルキル、又はハロゲンを表し;
R
6は、H、又はC1-6アルキルを表し;
R
7は、ボロン酸(‐B(OH)
2)、ボロン酸エステル又はボロン酸アミドのいずれかを表わす
(但し、R
1、R
2、R
3、及びR
4がすべてHの時、又はR
1、R
2、R
3、及びR
4のいずれか1つがヒドロキシ、C1-3アルコキシ又はメチルカルボニルの時、R
6は、C1-6アルキルを表す)
【0015】
本明細書において、ハロゲンは、F、Cl、Br、Iのいずれでも良いが、F、Cl、又はBrであることが特に好ましい。
【0016】
本明細書において、C1-C6のアルキルとは、直鎖状又は分岐状のC1-C6の飽和炭化水素基をいう。この定義は、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロアルキルで用いられている場合も含む。C1-6アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル及びイソプロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)、ペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)等が含まれる。好ましくは、直鎖状又は分岐状のC1-C4のアルキル基であり、限定はされないが、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0017】
本明細書において、C1-C6ハロアルキルとは、1つ以上のハロゲン置換基を有するC1-C6アルキル基を指す。ハロアルキル基は、好ましくは、C2X5、CH2X、CHX2、又はCX3(XはCl、F、Br又はIを表わす)で表され、限定はされないが、例えば、CF3、C2F5、CHF2、CCl3、CHCl2、C2Cl5等が含まれる。
【0018】
本明細書において、C1-C6のアルコキシとは、直鎖状又は分岐状のC1-C6のアルキル基と酸素分子を有する基を表す。C1-C6のアルコキシは、好ましくは、直鎖状又は分岐状のC1-C4のアルキルを有し、限定はされないが、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ等が挙げられる。
【0019】
本明細書において、C1-6アルコキシC1-6アルキルとしては、限定はされないが、メトキシエチル、エトキシエチル等が挙げられる。
【0020】
本明細書において、C1-C6アルキルアミノカルボニル(CONR8R9(R8、R9は、独立して、H又はC1-6アルキルを表す))としては、限定はされないが、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、エチルアミノカルボニル、i-プロピルアミノカルボニル等が挙げられる。
【0021】
本明細書において、C1-C6アルキルカルボニルとしては、限定はされないが、メチルカルボニル、エチルカルボニル等が挙げられる。
【0022】
本明細書において、C1-C6アルコキシカルボニルとしては、限定はされないが、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル等が挙げられる。
【0023】
本明細書において、COOR10(R10は、H又はC1-6アルキル、アミノ、アルキルアミノ(NR11R12(R11R12は、それぞれ独立して、H又はC1-6アルキルを表す))としては、限定はされないが、メチルオキシカルボニル、アミノオキシカルボニル等が挙げられる。
【0024】
本明細書において、ハロアルキルスルファニル、ハロアルキルスルフィニル、ハロアルキルスルホニルとしては、限定はされないが、トリフルオロメチルスルファニル、トリフルオロメチルスルフィニル基、又はトリフルオロメチルスルホニル等が挙げられる。
【0025】
本明細書において、C1-C6アルキルチオとしては、限定はされないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ等が挙げられる。
【0026】
本明細書において、C1-C6アルキルスルフィニルとしては、限定はされないが、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル等が挙げられる。
【0027】
本明細書において、C1-C6アルキルスルホニルとしては、限定はされないが、メチルスルホニル、エチルスルホニル等が挙げられる。
【0028】
本発明の誘導体において、R7は、ボロン酸(‐B(OH)2)、ボロン酸エステル、又はボロン酸アミドの基のいずれかを表わすが、この定義におけるボロン酸エステル又はボロン酸アミドの基の例としては、R7の位置において、‐B(NR41)2、又は‐B(OR41)2のような鎖状構造を有する基、又は原子Bと共に、環状構造を有する基を表す。ここで、R41は、直鎖状もしくは分岐状のC1-C10のアルキル基を表す。ここで、「直鎖状又は分岐状のC1-C10のアルキル基」というときには、炭素数1-10のいずれのアルキル基でも良い。好ましくは、直鎖状又は分岐状のC1-C8のアルキル基、より好ましくは、直鎖状又は分岐状のC1-C6のアルキル基である。これらの基としては、限定はされないが、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。さらに、ここでいう環状構造では、かならずしもO原子のみが介在するものではなく、N原子が介在するものであってもよい。限定はされないが、例えば、ピナコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、N-メチルジエタノールアミン、1-6-ジアミノナフタレン、N-メチルイミノ二酢酸、1,1,1-トリスハイドロキシメチルエタン、及びカテコールからなる群より選択されるいずれかと原子Bとで構成されるエステル又はエステル類似体で構成される基である。これらには、限定はされないが、例えば、ボロン酸ピナコールエステル、ボロン酸MIDAエステル、ボロン酸1,3-プロパンジオールエステル、ボロン酸ネオペンチルグリコールエステル、ボロン酸カテコールエステル、ボロン酸ピナンジオールエステル、ボロン酸ビスシクロヘキシルジオールエステル、ボロン酸MPMエステル、トリフルオロボレート塩、環状トリオールボレート塩、ジアミノナフタレンアミドとホウ素との環状体等が含まれる。
【0029】
このうち、R7は、特にボロン酸、あるいは、鎖状又は環状構造のボロン酸エステルが好ましく、ボロン酸が最も好ましい。
【0030】
ここで、ホウ素原子は、限定はされないが、ホウ素10の割合が、好ましくは、75質量%以上であり、より好ましくは、80質量%以上、さらにより好ましくは、90質量%以上、特に好ましくは、95質量%以上であってもよい。
【0031】
天然のホウ素(ホウ素)には、ホウ素10とホウ素11が同位体として、ホウ素10同位体が20%、ホウ素11同位体が80%の割合で存在する。従って、本発明の3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体の製造に先立って、質量数が10のホウ素(ホウ素10同位体)を濃縮することも好ましい。本発明においては、例えば、ホウ素原子源として、市販されている製品を用いてもよい。市販品としては、例えば、10B濃縮ホウ酸(ステラケミファ株式会社製)を用いることができる。
【0032】
ここで、ホウ素10同位体の測定方法としては、Agilent 710(Agilent社製)を使用し、マルチ型ICP発光分光分析法(ICP-ОES)にて行うことができる。測定に使用するICP-ОESは、JISK0116に準じて調整する。
【0033】
前記化合物中、限定はされないが、前記R1、R2、R3、及びR4のいずれか1又は2以上が、独立して、Cl、F、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、CH2F、CHF2、又はCF3であることが特に好ましい。
【0034】
前記化合物中、限定はされないが、前記R5はHを表すことが特に好ましい。但し、この時、R1、R2、R3、及びR4のすべてがHではないことが好ましい。
【0035】
前記化合物中、限定はされないが、前記R6は、H、メチル又はエチルを表すことが特に好ましい。
【0036】
前記化合物中、限定はされないが、R7は、ボロン酸(B(OH)2)又はボロン酸のピナコールエステルであることが特に好ましい。
【0037】
本発明の3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体のうち、特に好ましいのは以下の化合物からなる群より選択される1種又はその塩である。
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐クロロフェニル)プロパン酸;
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;
(S)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐フルオロフェニル)プロパン酸;
(R)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐フルオロフェニル)プロパン酸;
(S)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐クロロフェニル)プロパン酸;
(R)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐クロロフェニル)プロパン酸;
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐フルオロフェニル)プロパン酸;
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐フルオロフェニル)プロパン酸;
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐クロロフェニル)プロパン酸;
(S)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐メチルフェニル)プロパン酸;
(R)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐メチルフェニル)プロパン酸;
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐メトキシフェニル)プロパン酸;
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐メトキシフェニル)プロパン酸;
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;
(S)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐フルオロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;
(R)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐フルオロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐フルオロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐フルオロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;
(S)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐クロロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;
(R)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐クロロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐クロロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐クロロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;
(S)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐メチルフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;
(R)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐メチルフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐メトキシフェニル)‐2‐メチルプロパン酸;及び
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐メトキシフェニル)‐2‐メチルプロパン酸。
【0038】
本発明における「薬学的に許容される塩」とは、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマール酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。
【0039】
[3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体の製造方法]
本発明において、新規な3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体の製造方法は、限定はされず、通常のアミノ酸合成方法が用いられる。限定はされないが、特に好ましい方法は、例えば、以下のような方法であり得る。
まず、下記一般式(II)で表される有機ハロゲン化物に保護アミノ酸を、有機溶媒、塩基性水溶液、相関移動触媒の存在下にて反応させる。
【0040】
【化4】
ここで、式(II)中、
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ベンジルオキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、ニトロ、C1-6ハロアルキル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアミノカルボニル(CONR
8R
9(R
8、R
9は、独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、C1-C6アルコキシカルボニル、C1-C6アルキルカルボニル、COOR
10(R
10は、H又はC1-6アルキル、アミノ、アルキルアミノ(NR
11R
12(R
11R
12は、それぞれ独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、ハロアルキルスルファニル、ハロアルキルスルフィニル、ハロアルキルスルホニル、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6のアルキルスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、又はスルファモイルを表し、
R
5は、H、ヒドロキシ、C1-6アルキル、又はハロゲンを表し、X
1、X
2は、独立して、ハロゲン、特には、Cl、Br、又はIを表す。
【0041】
ここで、式(II)で表される有機ハロゲン化物としては、公知の方法で調製した化合物をそのまま使用するか、又は市販されている製品を使用することもできる。
【0042】
このうち、例えば2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼン、4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-フルオロベンゼンはCombi-Brocksから入手可能であり、4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンはBLD Pharmatech Ltd.より入手可能であり、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-フルオロベンゼン、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンは東京化成工業株式会社から入手可能であり、4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-メチルベンゼンはToronto Research Chemicals Inc.から入手可能であり、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-メトキシベンゼンはシグマアルドリッチジャパン合同会社より入手可能である。その他のベンジルブロミドも、市販品から入手可能であり、入手不可のものは、例えば対応する置換基を有するトルエンに対し、2,2‘-アゾビス(イソブチロニトリル)共存下N-ブロモスクシンイミドを作用させることで調製可能であり、もしくは対応する置換基を有するベンズアルデヒドや安息香酸メチルを水素化ホウ素ナトリウムや水素化アルミニウムリチウムで還元してベンジルアルコールを得た後、臭化水素酸や三臭化りんで臭素化することで調製可能である。
【0043】
式(II)で表される有機ハロゲン化物と保護アミノ酸の反応は、有機溶媒、塩基性水溶液、相関移動触媒の存在下にて進めることができる。R6はH又はC1-6アルキルであり得る。保護アミノ酸としては、p-クロロベンズアルデヒドイミン又はベンゾフェノンイミン等が例示される。好ましくは、下記の構造のR
6がHのとき、ベンゾフェノンイミンであり得、R
6がメチル基のとき、p-クロロベンズアルデヒドイミンであり得る。
【化5】
【0044】
ここで、使用する有機溶媒は、限定はされないが、好ましくは、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、シクロペンチルメチルエーテル、メチルt-ブチルエーテルなどが挙げられる。
【0045】
塩基性水溶液は、好ましくは、水酸化カルシウム、水酸化セシウム、水酸化カリウム等の水溶液である。
【0046】
相関移動触媒は、例えば丸岡試薬であり得る。丸岡試薬としては、限定はされないが、好ましくは、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1′,2′-e]アゼピニウムブロミド、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1′,2′-e]アゼピニウムブロミド、(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1′,2′-e]アゼピニウムブロミド、(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1′,2′-e]アゼピニウムブロミド等を用いることができる。
【0047】
この時の反応温度は、好ましくは、-20℃~10℃の間であり、反応時間は、1時間から60時間程度であり得る。
【0048】
反応終了後、トルエン等の有機溶媒で抽出し、適宜、洗浄、乾燥、濾過工程に供することができる。
【0049】
次にこのような反応生成物に、溶媒を加え、酸と反応させる。ここで、溶媒としては、エーテル系溶媒を使用することが好ましい。ここで、エーテル系溶媒としては、限定はされないが、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、グライム、ジグライム等が例示される。本発明において、特に好ましくは、テトラヒドロフランが用いられる。
【0050】
酸としては、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸のような有機酸、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸のような無機酸等が挙げられる。
【0051】
反応は、0℃から50℃の範囲の温度で行われる。
【0052】
前記反応時間は、1~10時間程度であり、より好ましくは、2~8時間であり、さらに好ましくは、3~6時間である。
【0053】
得られた化合物のアミノ基を常法により保護する。保護基は限定はされないが、例えば、カルバメート系保護基、アミド系保護基、アルキル保護基が好ましく用いられる。このようなカルバメート系保護基としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)等が挙げられ、アミド系保護基としては、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられ、アルキル保護基としては、ベンジル基等が挙げられる。
【0054】
次に、得られた化合物に、ホウ素化合物を、溶媒中、パラジウム触媒、有機リン化合物及び塩基の存在下、反応させる。
【0055】
ここで、パラジウム触媒は、限定はされないが、例えば、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。
【0056】
有機リン化合物は、限定はされないが、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル等が挙げられる。
【0057】
塩基としては、限定はされないが、例えば、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0058】
ホウ素化合物としては、ホウ酸エステル又はホウ酸アミドが例示され、好ましくは、B(OR)3、B(NR)3、B(OR)2(NR)、(RO)2B-B(OR)2、又はB(OR)(NR)2(Rは、直鎖状又は分岐状のC1-C10アルキル基、フェニル基、又はベンジル基)で表される化合物等を指す。さらに、このうち、特に好ましくは、(RO)2B-B(OR)2で表される化合物が用いられる。ここで、「直鎖状又は分岐状のC1-C10のアルキル基」というときには、炭素数1-10のいずれのアルキル基でも良いが、好ましくは、直鎖状又は分岐状のC1-C8のアルキル基、より好ましくは、直鎖状又は分岐状のC1-C6のアルキル基である。これらの基としては、限定はされないが、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基などが挙げられる。ホウ素化合物として、限定はされないが、代表的には、ビス(ピナコラート)ジボロンが挙げられる。
【0059】
溶媒としては、限定はされないが、例えば1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;トルエン等の炭化水素系溶媒;及びN,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒が例示される。好ましい溶媒は、ジメチルスルホキシドが挙げられる。反応温度は、例えば20℃から160℃であり、好ましくは60℃から120℃である。
【0060】
次に、得られた化合物を順次脱保護して、目的の化合物を製造することができる。脱保護は、常法に従うが、例えば、加水分解や接触水素化、脱炭酸、酸化によって行うことができる。
【0061】
製造方法の各工程において、精製は、常法に従い、また、適宜改変し得る。
【0062】
特に化合物がラセミ体である場合には、そのまま用いることもできるし、例えば、ホウ素中性子捕捉療法に使用する為の好ましい化合物を得る為に、R体又はS体の光学純度を高めることもできる。
【0063】
光学分割は公知の手法を適宜用いてもよいが、例えば、加水分解工程、エステル化工程を経て、光学分割(αキモトリプシンなどを使用)する方法の他、加水分解工程を経て、アシラーゼを使用する簡略した工程を含む簡略化した方法を採用することもできる。
【0064】
[BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)用薬剤]
本発明の3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体は、上記の化合物あるいは薬学的に許容できる塩の形態でそのまま、又は薬学的に許容できるキャリアーと混合して当業者に公知の製剤の形で、あるいはマイクロ/ナノパーティクルに封入等の形で、BNCTに好都合に用いられうる。
【0065】
本発明の3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体を含む製剤を用いる治療は、任意の適切な投与経路で、3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体が標的腫瘍中に蓄積するような方法で、投与することによって行われる。3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体は放射線照射前に腫瘍に濃縮することが好ましく、放射線照射前の腫瘍:血液比が、少なくとも1.5以上:1であり、好ましくは、2以上:1である。3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体は一度に投与することもできるし、持続投与することもできる。場合によって、分けて投与することもできる。腫瘍内に化合物が望ましく蓄積した後、その部位に有効量の低エネルギー中性子線(例えば、熱外中性子線)を照射する。皮膚を通してその部位を照射することができるし、あるいはその部位を照射前に完全にあるいは部分的に露出することもできる。3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体の投与とそれに続く放射線照射を必要に応じて繰り返すことができる。所望であれば、腫瘍を外科的に可能な程度にまで縮小させる為に、3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体を使った治療を行い、その後、外科的処置を行うことができる。あるいは、外科的処置を行った後、残りの腫瘍を本発明の3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体を使って破壊する。もう1つの態様として、患者に適当量の3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体を投与し、天然に存在する中性子放射物質である252カリフォルニウムの有効量で照射する。これは腫瘍中に挿入し、適当な時間に取り出すことが好ましい。
【0066】
ここで、腫瘍の種類は特に限定されないが、神経膠芽腫および悪性神経膠腫等を含む脳腫瘍、その他頭頸部がん、悪性黒色腫、乳がん、あるいは前立腺がん等が特に好適な対象となり得る。その他、肺がん、子宮がん、腎臓がん、肝臓がん等の上皮細胞がん、各種肉腫等も対象となり得る。
【0067】
本発明の3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体の投与は、経口および非経口でなされ得る。非経口投与の場合、動脈内(例えば、頚動脈を介する)、筋肉内、皮下、髄内、クモ膜下腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、または鼻孔内へなされうる。
【0068】
製剤は、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、注射剤、液剤等のいずれの形態にもなり得る。また、その剤型に応じ、製剤学的に公知の手法により、適切な添加剤および/または薬学的に受容可能なキャリアーと混合して、単独で、あるいは他の薬剤と組み合わせて患者に投与され得る。添加剤は、例えば賦形剤;崩壊剤;結合剤;滑沢剤;希釈剤;リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、および他の有機酸またはそれらの塩のような緩衝剤;等張化剤;防腐剤;湿潤剤;乳化剤;分散剤;安定化剤;溶解補助剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド
(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、またはイムノグロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン);単糖、二糖および他の炭水化物(セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);対イオン(例えば、ナトリウム);および/または非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート、ポロキサマー)、等が挙げられる。これらの医薬品添加物と適宜混合または希釈・溶解することにより調剤することができる。好ましく用いられ得るキャリアーは、限定はされないが、薬学的に不活性な水系のキャリアーである。そのようなキャリアーとしては生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、および水等が含まれる。本発明の一実施形態において、薬学的に受容可能なキャリアーは薬学的に不活性である。適切な添加剤および/または薬学的に受容可能なキャリアーは、使用された投薬量および濃度においてレシピエントに対して非毒性である。製剤で特に好ましいものは、水系キャリアーとともに調製される注射剤である。
【0069】
但し、3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体は、水に溶けやすい性質を有する為、注射剤又は注射点滴の為の薬剤の調製にあたり、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール等)やフルクトースをはじめとする可溶化成分を実質的に含まない製剤とすることも可能である。例えば、単糖及び糖アルコールの合計量として0.1質量%以下、好ましくは、0.01質量%以下、より好ましくは全く含まない製剤を調製することも可能である。特には、フルクトース及び糖アルコールの合計量として0.1質量%以下、好ましくは、0.01質量%以下、より好ましくは全く含まない製剤を調製することも可能である。このような製剤において、3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体は、以下の化合物又はその薬学的に許容される塩とすることもできる。
【0070】
【化6】
ここで、式(I)中、
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ベンジルオキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、ニトロ、C1-6ハロアルキル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアミノカルボニル(CONR
8R
9(R
8、R
9は、独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、C1-C6アルコキシカルボニル、C1-C6アルキルカルボニル、COOR
10(R
10は、H又はC1-6アルキル、アミノ、アルキルアミノ(NR
11R
12(R
11R
12は、それぞれ独立して、H又はC1-6アルキルを表す))、ハロアルキルスルファニル、ハロアルキルスルフィニル、ハロアルキルスルホニル、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6のアルキルスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、又はスルファモイルを表し、
R
5は、H、ヒドロキシ、C1-6アルキル、又はハロゲンを表し;
R
6は、H、又はC1-6アルキルを表し;
R
7は、ボロン酸(‐B(OH)
2)、ボロン酸エステル又はボロン酸アミドのいずれかを表わす。
【0071】
処方および投与のための技術は、例えば、日本薬局方の最新版および最新追補、「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES」(Maack Publishing Co.Easton,PA)の最終版に記載されている。
【0072】
本発明の3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体の製剤は、目的の薬剤が意図する目的を達成するのに有効な量で含有される薬剤であり、「治療的有効量」または「薬理学的有効量」は当業者に十分に認識され、薬理学的結果を生じるために有効な薬剤の量をいう。治療的有効用量の決定は十分に当業者に知られている。
【0073】
治療的有効量とは、ここでは、投与後の放射線照射により疾患の状態を軽減する薬剤の量をいう。このような化合物の治療効果および毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。用量は、好ましくは、毒性をほとんどまたは全くともなわないED50を含む循環濃度の範囲内にある。この用量は、使用される投与形態、患者の感受性、および投与経路に依存してこの範囲内で変化する。一例として、投与量は、年齢その他の患者の条件、疾患の種類、使用する複合体の種類等により適宜選択される。好ましい用量は、限定はされないが、5~1000mg/kgとなるように1度の治療に、投与することができる。特に、処置すべき被験者の体重1kg当たり誘導体5~500mg、より好ましくは、6~480mgとすることもできる。
【0074】
[放射性同位体を含有する診断薬等]
本発明の3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体は、放射性同位体を含む薬剤や研究用試薬として調製することもできる。放射性同位体を含む薬剤又は研究用試薬として調製する場合には、限定はされないが、典型的には、化合物中に含まれるF原子として、18Fを用いること、化合物中に含まれるI原子として、131I、123I、124I、又は125I、を用いること、又は化合物中に含まれるC原子として11Cを用いることができる。このようにして得られる化合物を、例えば、RI検査や核医学検査に用いることが可能である。これらは、限定はされないが、シンチグラフィの断層撮影、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)やPET(Positron Emission Tomography (陽電子放出断層撮影))用の薬剤を含む。すなわち、対象に対して、放射能を含む本発明の3-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体をPET用薬剤又はSPECT用薬剤として投与し、治療前に画像を取得し、誘導体の体内集積分布、腫瘍組織/正常組織存在比(T/N比)等の情報を得ることができる。これらの情報を基にBNCTの治療効果を事前に想定し、治療計画を策定することも可能である。
このようにして得られる化合物はまた、研究用試薬として用いる。なお、投与態様その他は、[BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)用薬剤]の項で記載した内容に準じる。
【実施例0075】
以下の実施例により、本発明をさらに詳述するが、かかる発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
なお、下記実施例において、化合物の分析及び分離精製には以下の機種や試薬を用いて行った。
【0077】
・NMRスペクトル:
(JEOL RESONANCE/JNM-ECZ500R/500MHz)
【0078】
(実施例1)
【化7】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐クロロフェニル)プロパン酸
【0079】
ステップ1
tert-ブチル(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ブロモ‐4‐クロロフェニル)プロパノエートの製造
tert-ブチル2-((ジフェニルメチレン)アミノ)アセテート(6.35g,21.5mmol)、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼン(7.36g,25.9mmol)、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1’,2’-e]アゼピニウムブロミド(16.3mg,21.8μmol)をトルエン(111mL)に溶解させ、-5℃で撹拌した。その後、5℃を超えないように50w/w%水酸化カリウム水溶液(53.56g)を滴加し、-5℃にて48時間撹拌した。反応終了後、反応液に水(30mL)を加えた。分液漏斗に移し、トルエン(50mL)で2回抽出後、有機層を飽和食塩水(50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、硫酸ナトリウムを濾過により除去し、得られた有機層を減圧濃縮した。この濃縮物を精製せずにそのまま次工程に移った。得られた濃縮物にテトラヒドロフラン(41mL)を加えて室温にて撹拌し、溶解させた。25w/w%クエン酸水溶液(165.30g)を加え、そのまま7時間撹拌した。反応終了後、テトラヒドロフランを減圧留去し、残った残渣を分液漏斗に移した。酢酸エチル(100mL)で洗浄後、得られた水層を炭酸カリウムでpH8以上にした。分液漏斗に移し、酢酸エチル(100mL)で2回抽出後、有機層を飽和食塩水(100mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、硫酸ナトリウムを濾過により除去し、得られた有機層を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=1:2(v/v))にて精製し、tert-ブチル(S)-2-アミノ-3-(3-ブロモ-4-クロロフェニル)プロパノエート(4.55g、収率63.3%)を得た。
1H-NMR(CDCl3);1.44(s,9H,t-Bu),2.81(dd,J=7.0,13.5Hz,1H,β-H),2.96(dd,J=5.5,13.5Hz,1H,β-H),3.57(dd,J=6.0,7.5Hz,1H,α-H),7.12(dd,J=2.0,8.0Hz,1H,Ar),7.37(d,J=8.0Hz,1H,Ar),7.50(d,J=2.5Hz,1H,Ar).
【0080】
ステップ2
tert-ブチル(S)‐3‐(3‐ブロモ‐4‐クロロフェニル)‐2‐((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロパノエートの製造
ステップ1で得られたtert-ブチル(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ブロモ‐4‐クロロフェニル)プロパノエート(4.35g,13.0mmol)をアセトニトリル(44mL)に溶解させ、さらにBoc2O(3.41g,15.6mmol)、炭酸ナトリウム(2.76g,26.0mmol)を添加した。そのまま終夜反応させ、その後、減圧濃縮させた。その後、水層を酢酸エチル(100mL)にて抽出させ、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥‐濾過後、溶媒を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製すると目的物(4.90g;収率87%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6);1.34(s,9H,t-Bu),1.36(s,9H,t-Bu),2.84(dd,J=9.5,13.5Hz,1H,β-H),2.96(dd,J=6.0,14.0Hz,1H,β-H),4.01-4.06(m,1H,α-H),7.20(d,J=8.5Hz,1H,NH),7.28(dd,J=1.5Hz,8.0,Ar),7.53(d,J=8.0Hz,1H,Ar),7.64(d,J=1.5Hz,1H,Ar).
【0081】
ステップ3
(S)‐(5‐(3‐(tert‐ブトキシ)‐2‐((tert‐ブトキシカルボニル)アミノ)‐3‐オキソプロピル)‐2‐クロロフェニル)ボロン酸の製造
DMSO(49mL)に、Pd(PPh3)4(651mg,0.565mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(3.44g,13.6mmol)、酢酸カリウム(2.22g,22.6mmol)、ステップ2で得られたBoc化合物(4.90g,11.3mmol)を加え、80℃、18時間反応させた。反応終了後、反応液を氷浴中にて冷却させ、酢酸エチル(49mL)および蒸留水(49mL)を加えた。約5分間撹拌させた後、セライト濾過し、得られた濾液を分液漏斗に移した。水層をさらに酢酸エチル(49mL)にて抽出させ、得られた酢酸エチル層を合わせ、飽和食塩水(49mL)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過により得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて粗精製した。
【0082】
得られた粗生成物をアセトン(200mL)に溶解させた。別途、過ヨウ素酸ナトリウム(4.81g,22.5mmol)、酢酸アンモニウム(1.73g,22.5mmol)を蒸留水(200mL)に溶解させておいた水溶液を、このアセトン溶液に加えた。その後、室温にて、2日間反応させた。反応終了後アセトンを減圧留去させ、得られた水溶液を酢酸エチル(100mL)にて2回抽出した。その後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、これを濾別し、酢酸エチル溶液を減圧留去させた。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製すると目的物2.1gを得た(収率46%)。
1H-NMR(DMSO-d6);1.34(s,9H,t-Bu),1.37(s,9H,t-Bu),2.80(dd,J=9.5,13.5Hz,1H,β-H),2.91(dd,J=5.5,14.0Hz,1H,β-H),3.94-3.98(m,1H,α-H),7.12(d,J=8.0Hz,1H,NH),7.19(dd,J=2.5,8.5Hz,Ar),7.24(d,J=9.0Hz,1H,Ar),7.27(d,J=2.0Hz,1H,Ar),8.24(s,2H,B(OH)2).
【0083】
ステップ4
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐クロロフェニル)プロパン酸の製造
ステップ3で得られた脱ピナコール体(2.00g,5.00mmol)をトリフルオロ酢酸(20mL)に溶解させた。約3時間静置させた後、減圧濃縮させると目的物2.2gを得た。
1H-NMR(D2O);3.23(dd,J=7.5,14.5Hz,1H,β-H),3.35(dd,J=5.5,14.0Hz,1H,β-H),4.36(dd,J=6.0,7.5Hz,1H,α-H),7.31(dd,J=2.0,8.5Hz,1H,Ar),7.41(d,J=2.5Hz,1H,Ar),7.42(d,J=8.0Hz,1H,Ar).
【0084】
(実施例2)
【化8】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
【0085】
ステップ1
tert-ブチル(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ヨードフェニル)‐2‐メチルプロパノエートの製造
tert-ブチル2-((4-クロロベンジリデン)アミノ)プロパノエート(6.68g,24.9mmol)、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼン(8.92g,30.0mmol)、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1’,2’-e]アゼピニウムブロミド(19.0mg,25.4μmol)をトルエン(53mL)に溶解させ、-5℃で撹拌した。その後、5℃を超えないように80w/w%水酸化セシウム水溶液(23.42g)を滴加し、-5℃にて47時間撹拌した。反応終了後、反応液に水(30mL)を加えた。分液漏斗に移し、トルエン(50mL)で2回抽出後、有機層を飽和食塩水(50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、硫酸ナトリウムを濾過により除去し、得られた有機層を減圧濃縮した。この濃縮物を精製せずにそのまま次工程に移った。得られた濃縮物にテトラヒドロフラン(48mL)を加えて室温にて撹拌し、溶解させた。25w/w%クエン酸水溶液(192.09g)を加え、そのまま7時間撹拌した。反応終了後、テトラヒドロフランを減圧留去し、残った残渣を分液漏斗に移した。酢酸エチル(100mL)で洗浄後、得られた水層を炭酸カリウムでpH8以上にした。分液漏斗に移し、酢酸エチル(100mL)で2回抽出後、有機層を飽和食塩水(100mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、硫酸ナトリウムを濾過により除去し、得られた有機層を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=1:2(v/v))にて精製し、tert-ブチル(S)-2-アミノ-3-(3-ブロモフェニル)-2-メチルプロパノエート(5.31g、収率58.9%)を得た。
1H-NMR(CDCl3);1.31(s,3H,α-CH3),1.44(s,9H,t-Bu),2.66(d,J=13.0Hz,1H,β-H),3.02(dd,J=13.0Hz,1H,β-H),6.99(t,J=8.0Hz,1H,Ar),7.17(d,J=7.5Hz,1H,Ar),7.53-7.57(m,2H,Ar).
【0086】
ステップ2
tert-ブチル(S)‐2‐((tert‐ブトキシカルボニル)アミノ)‐3‐(3‐ヨードフェニル)‐2‐メチルプロパノエートの製造ステップ1で得られたtert-ブチル(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ヨードフェニル)‐2‐メチルプロパノエート(5.80g,16.1mmol)をアセトニトリル(58mL)に溶解させ、さらにBoc2O(4.22g,19.3mmol)、炭酸ナトリウム(3.41g,32.2mmol)を添加した。そのまま終夜反応させた。その後、減圧濃縮させた。水層を酢酸エチル(120mL)にて抽出させ、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥‐濾過後、溶媒を減圧濃縮した。得られた残渣にn-ヘキサンにて固化させ、n-ヘキサンにて濾過させると、目的物(4.35g;収率59%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6);1.11(s,3H,α-CH3),1.38(s,9H,t-Bu),1.43(s,9H,t-Bu),2.80(d,J=13.0Hz,1H,β-H),3.22(d,J=12.5Hz,1H,β-H),6.87(s,1H,NH),7.08(t,J=7.5Hz,Ar),7.13(d,J=7.0Hz,1H,Ar),7.41(s,1H,Ar),7.57-7.59(m,1H,Ar).
【0087】
ステップ3
(S)‐(3‐(3‐(tert‐ブトキシ)‐2‐((tert‐ブトキシカルボニル)アミノ)‐2‐メチル‐3‐オキソプロピル)フェニル)ボロニックアシドの製造
DMSO(44mL)に、Pd(dppf)Cl2CH2Cl2(385mg,0.471mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(2.87g,11.3mmol)、酢酸カリウム(1.85g,18.8mmol)、そしてステップ2で得られたBoc化合物(4.35g,9.42mmol)を加え、100℃、2時間反応させた。反応終了後、反応液を氷浴中にて冷却させ、酢酸エチル(44mL)および蒸留水(44mL)を加えた。約5分間撹拌させた後、セライト濾過し、得られた濾液を分液漏斗に移した。水層をさらに酢酸エチル(44mL)にて抽出させ、得られた酢酸エチル層を合わせ、飽和食塩水(44mL)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過により得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて粗精製した。
【0088】
得られた粗生成物をアセトン(200mL)に溶解させた。別途、過ヨウ素酸ナトリウム(4.03g,18.9mmol)、酢酸アンモニウム(1.45g,18.9mmol)を蒸留水(200mL)に溶解させておいた水溶液を、このアセトン溶液に加える。その後、室温にて、2日間反応させた。反応終了後アセトンを減圧留去させ、得られた水溶液を酢酸エチル(100mL)にて2回抽出した。その後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、これを濾別し、酢酸エチル溶液を減圧留去させた。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製すると目的物1.9gを得た(収率53%)。
1H-NMR(DMSO-d6);1.12(s,3H,α-CH3),1.38(s,9H,t-Bu),1.41(s,9H,t-Bu),2.84(d,J=13.0Hz,1H,β-H),3.18(d,J=13.0Hz,1H,β-H),6.81(s,1H,NH),7.10(d,J=7.0Hz,Ar),7.21(t,J=7.5Hz,1H,Ar),7.51(s,1H,Ar),7.62(d,J=7.5Hz,1H,Ar),7.93(s,2H,B(OH)2).
【0089】
ステップ4
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノフェニル)‐2‐メチルプロパン酸の製造
ステップ3で得られた脱ピナコール体(1.9g,5.01mmol)をトリフルオロ酢酸(19mL)に溶解させた。約3時間静置させた後、減圧濃縮させた。少量の蒸留水で溶解させ、炭酸ナトリウムで中和すると、目的物が析出した。これを濾取し、冷水で洗浄すると目的物2.1gを得た。
1H-NMR(D2O);1.76(s,3H,α-CH3),3.19(d,J=14.5Hz,1H,β-H),3.41(d,J=15.0Hz,1H,β-H),7.42(d,J=7.5Hz,1H,Ar),7.50(t,J=7.5Hz,1H,Ar),7.67(s,1H,Ar),7.81(d,J=7.5Hz,1H,Ar).
【0090】
(実施例3)
実施例1と同様にして、但し、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンを4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-フルオロベンゼンに変えて、下記化合物を合成した。
【化9】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐フルオロフェニル)プロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.34(dd,J=7.5,14.5Hz,1H,β-H),3.51(dd,J=6.0,14.5Hz,1H,β-H),4.49(d,J=6.0Hz,1H,α-H),7.23(dd,J=8.5,10.5Hz,1H,Ar),7.74(d,J=7.5Hz,1H,Ar),7.80(d,J=6.5Hz,1H,Ar).
【0091】
(実施例4)
実施例1と同様にして、但し、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンを4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-フルオロベンゼン、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【化10】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐フルオロフェニル)プロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.34(dd,J=8.5,15.0Hz,1H,β-H),3.51(dd,J=5.5,14.5Hz,1H,β-H),4.48(d,J=7.0Hz,1H,α-H),7.23(dd,J=8.5,10.0Hz,1H,Ar),7.74(d,J=7.5Hz,1H,Ar),7.80(d,J=6.5Hz,1H,Ar).
【0092】
(実施例5)
実施例1と同様にして、但し、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンを4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンに変えて、下記化合物を合成した。
【化11】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐クロロフェニル)プロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.32(dd,J=8.5,14.0Hz,1H,β-H),3.56(dd,J=6.5,15.0Hz,1H,β-H),4.48(dd,J=6.0,8.5Hz,1H,α-H),7.47(d,J=8.5Hz,1H,Ar),7.67-7.69(m,2H,Ar).
【0093】
(実施例6)
実施例1と同様にして、但し、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンを4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼン、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【0094】
【化12】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐クロロフェニル)プロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.32(dd,J=8.5,14.5Hz,1H,β-H),3.56(dd,J=6.0,14.0Hz,1H,β-H),4.49(dd,J=6.0,8.5Hz,1H,α-H),7.47(d,J=9.0Hz,1H,Ar),7.67-7.69(m,2H,Ar).
【0095】
(実施例7)
実施例1と同様にして、但し、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンを2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-フルオロベンゼンに変えて、下記化合物を合成した。
【化13】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐フルオロフェニル)プロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.25(dd,J=7.0,14.0Hz,1H,β-H),3.38(dd,J=5.0,14.0Hz,1H,β-H),4.40(dd,J=6.0,8.0Hz,1H,α-H),7.14(t,J=9.0Hz,1H,Ar),7.41-7.45(m,1H,Ar),7.55(dd,J=2.0,5.5Hz,1H,Ar).
【0096】
(実施例8)
実施例1と同様にして、但し、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンを2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-フルオロベンゼン、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【化14】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐フルオロフェニル)プロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.25(dd,J=7.0,14.0Hz,1H,β-H),3.38(dd,J=5.0,14.0Hz,1H,β-H),4.40(dd,J=6.0,8.0Hz,1H,α-H),7.14(t,J=9.0Hz,1H,Ar),7.41-7.45(m,1H,Ar),7.55(dd,J=2.0,5.5Hz,1H,Ar).
【0097】
(実施例9)
実施例1と同様にして、但し、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【化15】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐クロロフェニル)プロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.23(dd,J=8.0,15.0Hz,1H,β-H),3.35(dd,J=5.5,14.0Hz,1H,β-H),4.36(dd,J=6.0,7.5Hz,1H,α-H),7.31(dd,J=2.0,8.5Hz,1H,Ar),7.41(d,J=2.5Hz,1H,Ar),7.42(d,J=8.0Hz,1H,Ar).
【0098】
(実施例10)
実施例1と同様にして、但し、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンを4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-メチルベンゼンに変えて、下記化合物を合成した。
【化16】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐メチルフェニル)プロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.23(dd,J=8.0,15.0Hz,1H,β-H),3.35(dd,J=5.5,14.0Hz,1H,β-H),4.36(dd,J=6.0,7.5Hz,1H,α-H),7.31(dd,J=2.0,8.5Hz,1H,Ar),7.41(d,J=2.5Hz,1H,Ar),7.42(d,J=8.0Hz,1H,Ar).
【0099】
(実施例11)
実施例1と同様にして、但し、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンを4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-メチルベンゼン、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【化17】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐メチルフェニル)プロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.23(dd,J=8.0,15.0Hz,1H,β-H),3.35(dd,J=5.5,14.0Hz,1H,β-H),4.36(dd,J=6.0,7.5Hz,1H,α-H),7.31(dd,J=2.0,8.5Hz,1H,Ar),7.41(d,J=2.5Hz,1H,Ar),7.42(d,J=8.0Hz,1H,Ar).
【0100】
(実施例12)
実施例1と同様にして、但し、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンを2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-メトキシベンゼンに変えて、下記化合物を合成した。
【化18】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐メトキシフェニル)プロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.23(dd,J=8.0,15.0Hz,1H,β-H),3.35(dd,J=5.5,14.0Hz,1H,β-H),4.36(dd,J=6.0,7.5Hz,1H,α-H),7.31(dd,J=2.0,8.5Hz,1H,Ar),7.41(d,J=2.5Hz,1H,Ar),7.42(d,J=8.0Hz,1H,Ar).
【0101】
(実施例13)
実施例1と同様にして、但し、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンを2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-メトキシベンゼン、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【化19】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐メトキシフェニル)プロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.23(dd,J=8.0,15.0Hz,1H,β-H),3.35(dd,J=5.5,14.0Hz,1H,β-H),4.36(dd,J=6.0,7.5Hz,1H,α-H),7.31(dd,J=2.0,8.5Hz,1H,Ar),7.41(d,J=2.5Hz,1H,Ar),7.42(d,J=8.0Hz,1H,Ar).
【0102】
(実施例14)
実施例2と同様にして、但し、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【化20】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);1.67(s,3H,α-CH
3),3.16(d,J=14.5Hz,1H,β-H),3.39(d,J=14.5Hz,1H,β-H),7.38(d,J=8.0Hz,1H,Ar),7.46(t,J=7.5Hz,1H,Ar),7.60(s,1H,Ar),7.74(d,J=7.5Hz,1H,Ar).
【0103】
(実施例15)
実施例2と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-フルオロベンゼンに変えて、下記化合物を合成した。
【化21】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐フルオロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);1.67(s,3H,α-CH
3),3.31(s,2H,β-H),7.20(dd,J=8.0,10.5Hz,1H,Ar),7.63(dd,J=1.5,8.0Hz,1H,Ar),7.73-7.77(m,1H,Ar).
【0104】
(実施例16)
実施例2と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-フルオロベンゼン、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【化22】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐フルオロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);1.77(s,3H,α-CH
3),3.33(s,2H,β-H),7.24(dd,J=8.5,10.0Hz,1H,Ar),7.71(dd,J=1.5,8.0Hz,1H,Ar),7.81-7.84(m,1H,Ar).
【0105】
(実施例17)
実施例2と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-フルオロベンゼンに変えて、下記化合物を合成した。
【化23】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐フルオロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);1.74(s,3H,α-CH
3),3.19(d,J=14.0Hz,1H,β-H),3.39(d,J=14.0Hz,1H,β-H),7.15(t,J=8.5Hz,1H,Ar),7.39(m,1H,Ar),7.53(dd,J=2.0,5.5Hz,1H,Ar).
【0106】
(実施例18)
実施例2と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-フルオロベンゼン、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【化24】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐フルオロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);1.74(s,3H,α-CH
3),3.19(d,J=14.0Hz,1H,β-H),3.39(d,J=14.0Hz,1H,β-H),7.15(t,J=8.5Hz,1H,Ar),7.39(m,1H,Ar),7.53(dd,J=2.0,5.5Hz,1H,Ar).
【0107】
(実施例19)
実施例2と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンに変えて、下記化合物を合成した。
【化25】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐クロロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);1.73(s,3H,α-CH
3),3.38(d,J=14.5Hz,1H,β-H),3.50(d,J=15.0Hz,1H,β-H),7.48(d,J=8.0Hz,1H,Ar),7.65-7.68(m,1H,Ar).
【0108】
(実施例20)
実施例2と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼン、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【化26】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐クロロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);1.77(s,3H,α-CH
3),3.42(d,J=14.5Hz,1H,β-H),3.54(d,J=15.0Hz,1H,β-H),7.49(d,J=8.5Hz,1H,Ar),7.71-7.72(m,1H,Ar).
【0109】
(実施例21)
実施例2と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼンに変えて、下記化合物を合成した。
【化27】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐クロロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);1.74(s,3H,α-CH
3),3.19(d,J=14.0Hz,1H,β-H),3.39(d,J=14.0Hz,1H,β-H),7.15(t,J=8.5Hz,1H,Ar),7.39(m,1H,Ar),7.53(dd,J=2.0,5.5Hz,1H,Ar).
【0110】
(実施例22)
実施例2と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-クロロベンゼン、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【化28】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐クロロフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);1.74(s,3H,α-CH
3),3.19(d,J=14.0Hz,1H,β-H),3.39(d,J=14.0Hz,1H,β-H),7.15(t,J=8.5Hz,1H,Ar),7.39(m,1H,Ar),7.53(dd,J=2.0,5.5Hz,1H,Ar).
【0111】
(実施例23)
実施例2と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-メチルベンゼンに変えて、下記化合物を合成した。
【化29】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐メチルフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.23(dd,J=8.0,15.0Hz,1H,β-H),3.35(dd,J=5.5,14.0Hz,1H,β-H),4.36(dd,J=6.0,7.5Hz,1H,α-H),7.31(dd,J=2.0,8.5Hz,1H,Ar),7.41(d,J=2.5Hz,1H,Ar),7.42(d,J=8.0Hz,1H,Ar).
【0112】
(実施例24)
実施例2と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを4-ブロモ-2-(ブロモメチル)-1-メチルベンゼン、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【化30】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(5‐ボロノ‐2‐メチルフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.23(dd,J=8.0,15.0Hz,1H,β-H),3.35(dd,J=5.5,14.0Hz,1H,β-H),4.36(dd,J=6.0,7.5Hz,1H,α-H),7.31(dd,J=2.0,8.5Hz,1H,Ar),7.41(d,J=2.5Hz,1H,Ar),7.42(d,J=8.0Hz,1H,Ar).
【0113】
(実施例25)
実施例2と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-メトキシベンゼンに変えて、下記化合物を合成した。
【化31】
(S)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐メトキシフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.23(dd,J=8.0,15.0Hz,1H,β-H),3.35(dd,J=5.5,14.0Hz,1H,β-H),4.36(dd,J=6.0,7.5Hz,1H,α-H),7.31(dd,J=2.0,8.5Hz,1H,Ar),7.41(d,J=2.5Hz,1H,Ar),7.42(d,J=8.0Hz,1H,Ar).
【0114】
(実施例26)
実施例2と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-1-メトキシベンゼン、(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドを(S)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1‘,2’-e]アゼピニウムブロミドに変えて、下記化合物を合成した。
【化32】
(R)‐2‐アミノ‐3‐(3‐ボロノ‐4‐メトキシフェニル)‐2‐メチルプロパン酸
1H-NMR(D
2O);3.23(dd,J=8.0,15.0Hz,1H,β-H),3.35(dd,J=5.5,14.0Hz,1H,β-H),4.36(dd,J=6.0,7.5Hz,1H,α-H),7.31(dd,J=2.0,8.5Hz,1H,Ar),7.41(d,J=2.5Hz,1H,Ar),7.42(d,J=8.0Hz,1H,Ar).
【0115】
(実施例27)
実施例1と同様にして、但し、1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンを1-(ブロモメチル)-3-ヨードベンゼンに変えて、(S)-2-アミノ-3-(3-ボロノフェニル)プロパン酸を合成した。
【0116】
(比較例1)
ステラファーマ株式会社製の4-ボロノフェニルアラニン(10B濃縮品)を使用した。
【0117】
[取込み試験]
実施例、又は比較例で得られた化合物について、培養細胞を用いて取り込みを評価した。
細胞として、SAS(ヒト舌扁平上皮がん)、MCF-7(ヒト乳がん)及びA172(ヒトグリオーマ)の3種類を使用し、L-BPAを対照化合物として、各実施例で得られた化合物と共に、それぞれ3回試験を行った。
【0118】
播種当日に対数増殖期になるように細胞を準備し、5×106個/ディッシュの播種数で100mmディッシュに細胞を蒔いた。蒔いた細胞は、37℃、5%CO2雰囲気下で24時間前培養を行った。
【0119】
前培養後、対照化合物と各実施例の化合物を1mMになるように加えた培地7mLに培地を交換し、37度、5%CO2雰囲気下で3時間、化合物への暴露を行った。
化合物に暴露した後、トリプシンで細胞を回収し、各細胞数をカウントした。遠心により細胞をパックしたのち、過酸化水素0.6mLと過塩素酸0.3mLを細胞に加えて75℃、終夜、灰化処理した。
【0120】
灰化したサンプルを水で5mLにし、No.5Cの濾紙で濾過した濾液をホウ素濃度測定のためのサンプルとした。サンプルのホウ素濃度は、ホウ酸標準液をスタンダードとし、Agilent社710ICP-OESを使用して測定した。各細胞の実施例の化合物の取り込み量は細胞107個当たりのホウ素量(μg)として求め、同時に行ったL-BPAでの取り込み量の結果から、L-BPAに対する取り込み比を求めた。その結果、実施例の化合物を使用した評価では、L-BPAとほぼ同等の取込み量を示すことがわかった。
【0121】
[水溶性の評価]
各実施例の化合物を適量測りとり、水で溶解した。1M水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pH試験紙で確認しながら中性とした。調製した薬剤をICPで分析してホウ素濃度を算出し、サンプル濃度とした。
【0122】
代表的な実施例化合物の水溶性評価試験の結果を表1に示す。なお、表1の数値は3回の平均から求めた値である。
【表1】
【0123】
この結果から実施例の化合物は、比較例の化合物と比べて、水への溶解性が極めて高いことが実証された。
【0124】
[取込み試験]
1.LAT1及びLAT2選択的取り込みの評価系の構築
(1)ヒトLAT1及びLAT2高発現HEK293細胞株の作製
Khunweeraphong,Nらの論文(Journal of Pharmacology Science,2012,vol.119,pp368-380)に記載の方法に従って、ヒトLAT1及びLAT2を安定的に高発現するHEK293細胞をそれぞれ作製する。アンピシリン及びネオマイシン耐性マーカーを有し、ヒトLAT1もしくはLAT2の全長 cDNAをCMV(サイトメガロウィルス)のプロモーター下に挿入した、シャトルベクターDNA(LAT1:EX-H4509-M02、LAT2:EX-U0514-M02、GeneCopoeia社製)を構築する。このベクターを、HEK293細胞にリポフェクタミン(登録商標)2000(インビトロジェン)を用いた方法により、製造者の指示に従って遺伝子導入する。その後0.9mg/mL Geneticin(登録商標)存在下限界希釈法にて導入遺伝子の安定発現細胞クローンを選択し、L-ボロノフェニルアラニン(L-BPA)の取り込みが遺伝子導入前のHEK293細胞に比べて2~5倍程度亢進した細胞クローンを取得する。この細胞を継代してLAT1及びLAT2選択的取り込みの評価に用いる。
【0125】
(2)LAT1及びLAT2選択的取り込みの評価
細胞の取り込みの評価方法はKhunweeraphong,Nらの論文(Journal of Pharmacology Science,2012,vol.119,pp368-380)と同様の手法を用いる。(1)で取得したそれぞれの細胞を用いて、評価する。ただし、放射性同位元素は使用せず、基質濃度0.1mM、LAT1及びLAT2阻害剤として2mM BCH(2-アミノ-2-ノルボンナンカルボン酸)を使用し、反応後の細胞を0.05% Tween20で回収して得られた細胞液の4-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体の濃度を求める。細胞内の4-ボロノ-フェニルアラニンの誘導体の定量はHattori,Yらの論文(Sensors 2017,17,2436)に記載の方法に従い、ホウ素センサーとして2-(2-ヒドロキシフェニル)ピリジン(ホウ素センサー5)を用いて実施する。細胞取り込みの評価に際しては、実験間の変動を考慮し、同日に実施する比較対象であるL-BPAの取り込みに対する相対値(LAT1選択性)として評価する。LAT1選択性=(LAT1細胞における化合物の取り込み定量値/LAT1細胞におけるコントロールLBPAの取り込み定量値)/(LAT2細胞における化合物の取り込み定量値/LAT2細胞におけるコントロールLBPAの取り込み定量値)すなわち、以下の通りである。
【数1】
【0126】
[単回毒性試験]
17.6mLの1mol/L NaOHをビーカー入れ,さらに24mLの注射用水を加えて混和する。これに2.52gのD-ソルビトールを添加する。完全に溶解したことを確認後、17.1mLの1mol/L塩酸を加えてpH7.4~7.8に調整する。メスシリンダーに移し,注射用水でビーカーを共洗いして,洗液をメスシリンダーに移す.この操作を可能な限り繰り返し,ビーカーを洗いこみながら80mLにメスアップする。フィルター(マイレクスGV,孔径0.22μm,メルク株式会社,滅菌済ディスポーザブル製品)でろ過滅菌して,3.15% D-ソルビトール溶液とする。
【0127】
一方、10.1mLの1mol/L NaOHをビーカーに入れ,さらに13.8mLの注射用水を加えて混和する。これに2.30gの被験物質及び1.45gのD-ソルビトールを添加する。完全に溶解したことを確認後,1.36mLの1mol/L塩酸を加えてpH 7.4~7.8に調整する。メスシリンダーに移し,注射用水でビーカーを共洗いして,洗液をメスシリンダーに移す。この操作を可能な限り繰り返し,ビーカーを洗いこみながら46mLにメスアップする。フィルター(マイレクスGV,孔径0.22μm,メルク株式会社,滅菌済ディスポーザブル製品)でろ過滅菌して,50mg/mL濃度液とする。
【0128】
動物を保定器(ボールマンケージ)に入れ,投与液を充填した10mLのポリプロピレン製注射筒及び24ゲージ留置針(サーフローF&F,テルモ株式会社,いずれも滅菌済ディスポーザブル製品)を用い,マイクロプロセッサーシングルシリンジポンプ(Pump11 Elite,Harvard Apparatus Inc.)を使用して尾静脈内に1mL/kg/minの速度で注入する。投与量は250,500及び1000mg/kgとして、1群各5匹で実施投与終了後、動物を飼育ケージに戻す。
【0129】
観察期間は投与日を含め8日間とする。なお、投与日をDay1,投与翌日をDay2として,以降の日を表す.観察頻度は、投与日は6回(投与直前,投与終了後5分,30分,60分,2時間及び4時間),投与翌日からは1日1回とし、ケージの外からの個体別観察を行い,異常が疑われた動物についてはケージから取り出して観察を行うとする.体重の測定時期はDay1(投与前),Day4及び8とする。
【0130】
[担がんマウスを用いた分布試験1]
ヒト膵がん細胞T3M-4細胞について、HAM-F12培地を用いて培養した。トリプシン溶液で細胞剥離し、遠心により細胞回収した。4x106cells/100μLとなるようにPBS(-)で細胞を懸濁した。細胞懸濁液を26G針を用いてBALB/c nu/nuマウス(雄性、4週齢)の右下肢に皮下注射(100μL/mouse)した。その後、形成された腫瘍サイズについて3-4週間目視で確認し、腫瘍サイズが4mm-10mm程度になれば分布実験に使用した。
【0131】
一方、マウスに注射する為の製剤を調製した。比較例1及び実施例の化合物を注射剤に調製した。比較例1については、水に溶解できず、そのままでは製剤化が不可能であった。そこで、比較例1の化合物とフルクトースに水酸化ナトリウム水溶液を添加して溶解し、塩酸で中性とした後、生理食塩水またはPBS(-)を混合し、化合物の最終濃度は1質量%、フルクトース2.2質量%となるよう注射剤を調製した。一方実施例2及び実施例27の化合物については、化合物を直接そのまま生理食塩水またはPBS(-)に溶解して注射剤を調製することができた。それぞれの化合物の濃度が10mg/mLとなる量を目安に100μLを担がんマウスに対し尾静脈より投与した。投与60分後に屠殺し、解剖、臓器重量測定した。摘出臓器について硝酸による灰化を行い、ICP-MSもしくはICP-OESにてホウ素量定量した。
【0132】
比較例1、実施例2及び実施例27の化合物の分布試験の結果を
図1に示す。皮下移植腫瘍、血漿、筋肉又は皮膚への分布として、単位質量あたりのホウ素集積率(%ID/g)について4匹の平均±標準偏差で表した。
【0133】
同様に、実施例7、15、及び17と実施例27の化合物の分布試験の結果を
図2に示す。腫瘍、血漿、筋肉又は皮膚への分布として、単位質量あたりのホウ素集積率(%ID/g)について4匹の平均±標準偏差で表した。
【0134】
[担がんマウスを用いた分布試験2]
実施例27の化合物をフルクトースの存在下、又は非存在下で注射剤として調製した。具体的には、実施例27の化合物とフルクトースに水酸化ナトリウム水溶液を添加して溶解し、塩酸で中性とした後、生理食塩水またはPBS(-)を混合し、化合物の最終濃度は1質量%、フルクトース2.2質量%となるよう注射剤を調製した。一方フルクトース非存在下の場合は、化合物を直接そのまま生理食塩水またはPBS(-)に溶解して注射剤を調製した。
この結果、実施例27の化合物は、いずれの条件でも製剤とすることができた。このフルクトース含有製剤及びフルクトース不含有製剤と比較例1の化合物を含むフルクトース含有製剤を用いて、[担がんマウスを用いた分布試験1]と同様にして、それぞれの化合物の濃度が10mg/mLとなる量を目安に100μLを担がんマウスに対し尾静脈より投与した。投与60分後に屠殺し、解剖、臓器重量測定した。摘出臓器について硝酸による灰化を行い、ICP-MSもしくはICP-OESにてホウ素量定量した。
【0135】
この結果、実施例27の化合物については、フルクトース含有又は不含有のいずれも同様の分布状態を示す結果が得られることがわかった。また、比較例1と実施例27の化合物では、腫瘍へのホウ素集積量は同等であった。
【0136】
[担がんマウス内の分布比]
次に、これらの結果より、正常組織である筋肉ならびに血漿へのホウ素集積量に対する腫瘍へのホウ素集積量を比として算出し、下記表2に示した。この結果から実施例の化合物は、比較例の化合物と比べて、腫瘍集積性が同等以上であることが実証された。
【表2】
【0137】
[Km値の測定]
Kmの評価方法はKhunweeraphong,Nらの論文(Journal of Pharmacology Science,2012,vol.119,pp368-380)記載の細胞取り込み手法を用い、取り込み時間を2-3分とする。ただし、放射性同位元素は使用せず、複数の基質濃度で反応させた細胞を0.05% Tween20で回収し、得られた細胞液のボロン化合物の濃度を求める。細胞は(Journal of Pharmacology Science,2012,vol.119,pp368-380)に準じて樹立したHumanLAT1トランスポーターまたはHumanLAT2トランスポーターを安定発現するHEK293細胞を用いる。
細胞内のボロン化合物の定量はHattori,Yらの論文(Sensors2017,17,2436)に記載の方法に従い、ホウ素センサーとして2-(2-ヒドロキシフェニル)ピリジン(ホウ素センサー5)を用いて実施する。Kmの評価に際しては、Lineweaver-Burkを用いて算出する。
【0138】
[Effluxの測定]
LAT1亢進HEK293細胞を用いて、基質を取り込ませた後、流出液を添加、細胞内に取り込まれているボロン化合物を測定する。基質濃度0.1mM、LAT1流出液としてHBSS(Na+-Free)及び0.05mMロイシンを使用し、反応後の細胞を0.05%Tween20で回収して得られた細胞液のボロン化合物の濃度を求める。流出時間は1-10分とする。細胞内のボロン化合物の定量はHattori,Yらの論文(Sensors 2017,17,2436)に記載の方法に従い、ホウ素センサーとして2-(2-ヒドロキシフェニル)ピリジン(ホウ素センサー5)を用いて実施する。
細胞取り込みの評価に際しては、比較対象である流出前の細胞液に対する相対値として評価する。
【0139】
[代謝安定性試験]
市販のプールドヒト肝ミクロソームを用いて、対象化合物を一定時間反応させ、反応サンプルと未反応サンプルの比較により残存率を算出し、肝で代謝される程度を評価する。
【0140】
ヒト肝ミクロソーム0.5mgタンパク質/mLを含む0.2mLの緩衝液(50mmol/L tris-HCl pH7.4,150mmol/L塩化カリウム、10mmol/L塩化マグネシウム)中で、1mmol/LNADPH存在下で37℃、0分あるいは30分間反応させる(酸化的反応)。反応後、メタノール/アセトニトリル=1/1(v/v)溶液の100μLに反応液50μLを添加、混合し、3000rpmで15分間遠心する。その遠心上清中の試験化合物をLC/MS-MSにて定量し、反応後の試験化合物の残存量を0分反応時の化合物量を100%として計算する。
【0141】
[代謝安定性試験]
市販の各種凍結肝細胞を用いて、対象化合物を一定時間反応させ、反応サンプルと未反応サンプルの比較により残存率を算出し、肝で代謝される程度を評価する。
【0142】
各種凍結肝細胞1.0x106cell/mLを含むウイリアムE培地中で37℃、0、1、あるいは2時間反応させる。反応後、反応液30μLにメタノール/アセトニトリル=1/1(v/v)溶液120μLを添加、混合し、3000rpmで15分間遠心する。その遠心上清中の試験化合物をLC/MS-MSにて定量し、反応後の試験化合物の残存量を0分反応時の化合物量を100%として計算する。
【0143】
[タンパク結合試験]
各種血清を用いて、発明化合物の血清タンパク非結合率を測定する。
【0144】
反応条件は以下のとおり:評価法、平衡透析法;反応時間、24時間;反応温度、37℃;発明化合物濃度、2μg/mL
【0145】
各種血清に検液を添加、攪拌し、上記化合物濃度の血清試料を調製する。平衡透析セルの一方に血清試料を、もう一方にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、37℃で24時間平衡透析する。各セルから採取した試料中化合物量をLC/MS-MSで測定する。
【0146】
[製剤例]
注射剤
本発明化合物を水や緩衝液に溶解して注射剤とする。浸透圧の関係から、生理食塩水、リン酸緩衝液、単糖、二糖および他の炭水化物を添加することも可能である。