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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002088
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】経編地および衣料
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/18 20060101AFI20221227BHJP
   D04B 21/16 20060101ALI20221227BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20221227BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20221227BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20221227BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20221227BHJP
   A41D 31/12 20190101ALI20221227BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20221227BHJP
【FI】
D04B21/18
D04B21/16
D01F8/14 B
D06M15/53
D02G3/04
A41D31/00 502D
A41D31/00 503G
A41D31/12
A41D31/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103106
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】尾形 暢亮
【テーマコード(参考)】
4L002
4L033
4L036
4L041
【Fターム(参考)】
4L002AA07
4L002AB02
4L002AB04
4L002AB05
4L002AC07
4L002CA01
4L002DA03
4L002EA00
4L002EA02
4L002EA06
4L002EA07
4L002FA01
4L033AB06
4L033AC07
4L033CA20
4L033CA48
4L036MA05
4L036MA15
4L036MA17
4L036MA37
4L036PA05
4L036PA14
4L036PA42
4L036RA04
4L036UA01
4L041AA07
4L041BA09
4L041BA22
4L041BA59
4L041CA06
4L041CA08
(57)【要約】
【課題】防風性、ストレッチ性およびハリコシ感に優れた経編地および衣料を提供する。
【解決手段】2種以上の仮撚捲縮加工糸で構成されかつ30T/m以下のトルクを有する複合糸と、2成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合された複合繊維とを交編して経編地を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経編地であって、2種以上の仮撚捲縮加工糸で構成されかつ30T/m以下のトルクを有する複合糸と、2成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合された複合繊維とが交編してなることを特徴とする経編地。
【請求項2】
前記複合糸が、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸AとZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Bとを含む、請求項1に記載の経編地。
【請求項3】
前記複合糸において、総繊度が33~110dtexの範囲内である、請求項1または請求項2に記載の経編地。
【請求項4】
前記複合糸において、単繊維繊度が0.25~1.6dtexの範囲内である、請求項1~3のいずれかに記載の経編地。
【請求項5】
前記複合繊維において、2成分が、ポリトリメチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、およびポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートからなる群より選択されるいずれかの組合せである、請求項1~4のいずれかに記載の経編地。
【請求項6】
前記複合繊維において、総繊度が22~84dtexの範囲内である、請求項1~5のいずれかに記載の経編地。
【請求項7】
前記複合繊維において、単繊維繊度が0.7~4.0dtexの範囲内である、請求項1~6のいずれかに記載の経編地。
【請求項8】
前記複合繊維が仮撚捲縮加工糸である、請求項1~7のいずれかに記載の経編地。
【請求項9】
経編地の密度が、60~110コース/2.54cmかつ45~80ウエール/2.54cmである、請求項1~8のいずれかに記載の経編地。
【請求項10】
目付けが130~250g/mの範囲内である、請求項1~9のいずれかに記載の経編地。
【請求項11】
通気度が5~50cm/cm・sの範囲内である、請求項1~10のいずれかに記載の経編地。
【請求項12】
ISO20932-1:2018により測定したストレッチ性が経方向20%以上、かつ緯方向30%以上であり、ISO20932-1:2018により測定したストレッチ性回復率が経方向、緯方向ともに90%以上である、請求項1~11のいずれかに記載の経編地。
【請求項13】
吸水加工が施されている、請求項1~12のいずれかに記載の経編地。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の経編地を用いてなる、衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防風性、ストレッチ性およびハリコシ感に優れた経編地および衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防風性を有する編地としては、仮撚捲縮加工糸を用いた高密度編地などが提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、かかる編地ではストレッチ性の点でまだ満足とは言えなかった。
【0003】
一方、ストレッチ性を有する編地としては、仮撚捲縮加工糸を用いた丸編地などが提案されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、かかる丸編地では防風性やハリコシ感の点でまだ満足とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-363843号公報
【特許文献2】国際公開第2008/001920号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、防風性、ストレッチ性およびハリコシ感に優れた経編地および衣料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「経編地であって、2種以上の仮撚捲縮加工糸で構成されかつ30T/m以下のトルクを有する複合糸と、2成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合された複合繊維とが交編してなることを特徴とする経編地。」が提供される。
【0008】
その際、前記複合糸が、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸AとZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Bとを含むことが好ましい。また、前記複合糸において、総繊度が33~110dtexの範囲内であることが好ましい。また、前記複合糸において、単繊維繊度が0.25~1.6dtexの範囲内であることが好ましい。また、前記複合繊維において、2成分が、ポリトリメチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、およびポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートからなる群より選択されるいずれかの組合せであることが好ましい。また、前記複合繊維において、総繊度が22~84dtexの範囲内であることが好ましい。また、前記複合繊維において、単繊維繊度が0.7~4.0dtexの範囲内であることが好ましい。また、前記複合繊維が仮撚捲縮加工糸であることが好ましい。
【0009】
本発明の経編地において、経編地の密度が、60~110コース/2.54cmかつ45~80ウエール/2.54cmであることが好ましい。また、目付けが130~250g/mの範囲内であることが好ましい。また、通気度が5~50cm/cm・sの範囲内であることが好ましい。また、ISO20932-1:2018により測定したストレッチ性が経方向20%以上、かつ緯方向30%以上であり、ISO20932-1:2018により測定したストレッチ性回復率が経方向、緯方向ともに90%以上であることが好ましい。また、吸水加工が施されていることが好ましい。
また、本発明によれば前記の経編地を用いてなる、衣料が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防風性、ストレッチ性およびハリコシ感に優れた経編地および衣料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の経編地は、2種以上の仮撚捲縮加工糸(「DTY」)で構成されかつ30T/m以下のトルクを有する複合糸と、2成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合された複合繊維とが交編してなる。その際、前記複合糸において、トルクは小さいほど好ましくノントルク(0T/m)が最も好ましい。このようにノントルクとする上で、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向の仮撚捲縮加工糸で複合糸を構成することが好ましい。
【0012】
ここで、仮撚捲縮加工糸には第1ヒーター域で仮撚をセットした、いわゆるone heater仮撚捲縮加工糸と、該糸をさらに第2ヒーター域に導入して弛緩熱処理することによりトルクを減らした、いわゆるsecond heater仮撚捲縮加工糸とがある。また、施撚の方向により、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とがある。本発明においてこれらの仮撚捲縮加工糸を用いることができる。
【0013】
仮撚捲縮加工の条件は限定されないが、仮撚捲縮加工時の延伸倍率は、0.8~1.5の範囲が好ましい。仮撚数は、仮撚数(T/m)=(32500/(D)1/2)×αの式において、αが0.5~1.5(より好ましくは0.8~1.2)の範囲内であることが好ましい。ただし、Dは糸条の総繊度(dtex)である。用いる撚り掛け装置としては、ディスク式あるいはベルト式の摩擦式撚り掛け装置が糸掛けしやすく、糸切れも少なくて適当であるが、ピン方式の撚り掛け装置であってもよい。
【0014】
前記仮撚捲縮加工糸Aおよび/または仮撚捲縮加工糸Bを形成する繊維としては、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維、さらには、綿、ウール、絹などの天然繊維やこれらを複合したものが使用可能である。
【0015】
ポリエステル繊維を形成するポリエステルとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、炭素数2~6のアルキレングリコール、すなわちエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種を主たるグリコール成分とするポリエステルが好ましい。なかでも、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)またはトリメチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル(ポリトリメチレンテレフタレート)が特に好ましい。
【0016】
かかるポリエステルには、必要に応じて少量(通常30モル%以下)の共重合成分を有していてもよい。その際、使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β-ヒドロキシエトキシ安息香酸、P-オキシ安息香酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のごとき芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。また、上記グリコール以外のジオール化合物としては、例えばシクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのごとき脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
【0017】
前記ポリエステルは任意の方法によって合成したものでよい。例えばポリエチレンテレフタレートの場合について説明すると、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのごときテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるかまたはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造されたものでよい。また、前記ポリエステルは、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステル、または、特開2004-270097号公報や特開2004-211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルであってもよい。さらには、ポリ乳酸やステレオコンプレックスポリ乳酸などの生分解性を有するポリエステルでもよい。
【0018】
また、前記ポリエステルに艶消し剤(二酸化チタン)がポリエステル重量対比0.1重量%以上(好ましくは0.2~4.0重量%)含まれていると、経編地の防透性が向上し好ましい。
【0019】
さらに前記ポリエステルには、必要に応じて、紫外線吸収剤、微細孔形成剤(有機スルホン酸金属塩)、着色防止剤、熱安定剤、難燃剤(三酸化二アンチモン)、蛍光増白剤、着色顔料、帯電防止剤(スルホン酸金属塩)、吸湿剤(ポリオキシアルキレングリコール)、抗菌剤、その他の無機粒子の1種以上が含まれていてもよい。
【0020】
また、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸AとZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Bにおいて、繊維を構成する成分または単繊維横断面形状または単繊維繊度において互いに異なると、布帛が新規外観を呈し好ましい。
【0021】
ここで、「成分が異なる」とは、異種ポリマーの組合せだけでなく、同種ポリマーで第3成分、添加物、固有粘度などが異なる組合せをも含む。例えば、ナイロンとポリエステル、カチオン可染性ポリエステルとカチオン不染性ポリエステル、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、酸化チタンの含有量が互いに異なるポリエステルの組合せ(例えば、ブライトポリエステルとセミダルポリエステル、ブライトポリエステルとフルダルポリエステル、セミダルポリエステルとフルダルポリエステルなど)などが例示される。
【0022】
前記複合糸において、総繊度としては33~110dtexの範囲内であることが好ましい。また、単繊維繊度が0.25~1.6dtexの範囲内であることが好ましい。また、単繊維断面形状としては、丸断面の他、楕円形断面、三角、四角、十字、扁平、くびれ付扁平、H型、W型などが例示される。また、複合糸の捲縮率が2%以上(より好ましくは10~60%)であることが好ましい。該捲縮率が2%未満では、ストレッチ性が低下するおそれがある。
【0023】
前記複合糸の製造方法は特に限定されない。例えば、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸AとZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Bとを引きそろえて、空気加工(インターレース加工やタスラン(登録商標)加工)により空気混繊してもよいし、複合仮撚や合撚してもよい。特に好ましいのは空気混繊法である。
【0024】
その際、前記複合糸が、交絡の個数1~150個/mでインターレース加工を施した交絡糸であることが好ましい。
一方、前記複合繊維は、2成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合された複合繊維である。かかる複合繊維は加熱によりコイル状のクリンプを発現しストレッチを有する。
【0025】
ここで、前記複合繊維としては、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリエチレンテレフタレートである、2成分からなる複合繊維であることが好ましい。ここで2成分は、異種ポリマーの組合せでもよいし同種ポリマーの組合せでもよい。さらには、同種ポリマーで第3成分、添加物、固有粘度などが異なる組合せでもよい。具体的には、ポリトリメチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートなどの組合せが例示される。
【0026】
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートとは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルからなる繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のものをいう。従って第3成分としての他の酸成分および/またはグリコール成分の合計量が50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを含有する。
【0027】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはその機能的誘導体とトリメチレングリコールまたはその機能的誘導体とを、触媒の存在下で適当な反応条件下で縮合させることにより製造される。
【0028】
添加する第3成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸など)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸など)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2-トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなど)、脂環族グリコール(シクロヘキサングリコールなど)、芳香族ジオキシ化合物(ハイドロキノンビスフェノールAなど)、芳香族を含む脂肪族グリコ-ル(1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなど)、脂肪族オキシカルボン酸(p-オキシ安息香酸など)などが挙げられる。
【0029】
前記ポリエチレンテレフタレートは3成分を共重合させたものでもよい。また、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたものでもよい。さらには、特開2004-270097号公報や特開2004-211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物及びチタン化合物を含む触媒を用いて得られたものでもよい。
【0030】
前記のポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどには、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種又は2種以上含まれていてもよい。
【0031】
前記複合繊維において、総繊度としては22~84dtexの範囲内であることが好ましい。また、単繊維繊度としては0.7~4.0dtexの範囲内であることが好ましい。また、単繊維断面形状としては、丸断面の他、楕円形断面、三角、四角、十字、扁平、くびれ付扁平、H型、W型などが例示される。
【0032】
前記の複合繊維は、例えば、特開2009-46800号公報や特開2007-186844号公報などに記載された方法により製造することができる。また、かかる複合繊維は生糸(仮撚捲縮加工が施されていないマルチフィラメント)でもよいが、仮撚捲縮加工糸(仮撚捲縮加工が施されたマルチフィラメント)であると経編地のストレッチ性がさらに向上し好ましい。
【0033】
本発明の経編地は前記複合糸と前記複合繊維とが交編してなる。例えば、2枚の筬を用い、一方の筬に前記複合糸を供給し、他方の筬に前記複合繊維を供給して2層構造経編地を編成することが好ましい。前記複合糸と前記複合繊維だけで経編地を構成してもよいし、さらに他の繊維を用いてもよい。その際、経編地の編組織としては、ハーフ、バックハーフなどが例示される。
【0034】
また、経編地に染色加工を施すことが好ましい。その際、前記染色加工の温度としては100~140℃(より好ましくは110~135℃)、時間としてはトップ温度のキープ時間が5~40分の範囲内であることが好ましい。染色加工が施された編地には、乾熱ファイナルセットを施すことが好ましい。その際、乾熱ファイナルセットの温度としては120~200℃(より好ましくは140~180℃)、時間としては1~3分の範囲内であることが好ましい。
【0035】
かかる染色加工の熱履歴により、前記複合繊維が潜在捲縮を発現しコイル状となる。その結果、優れたストレッチ性が経編地に付加される。
【0036】
また、本発明の布帛には吸水加工(親水化剤の付与)が施されていることが好ましい。布帛に吸水加工を施すことにより、吸水性(吸汗性)が向上する。かかる吸水加工としては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレートやその誘導体、または、ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体などの親水化剤(吸水加工剤)を布帛に、布帛重量に対して0.25~0.50重量%付着させることなどが好ましく例示される。吸水加工の方法としては、例えば染色加工時に染液に親水化剤を混合する浴中加工法や、乾熱ファイナルセット前に、布帛を吸水加工液中にデイッピングしマングルで絞る方法、グラビヤコーテング法、スクリーンプリント法といった塗布による加工方法等が例示される。
【0037】
さらには、常法の起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤、撥水剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0038】
かくして得られた経編地において、防風性の点で経編地の密度が、60コース/2.54cm以上(より好ましくは60~110コース/2.54cm)かつ45ウエール/2.54cm以上(より好ましくは45~80ウエール/2.54cm)であることが好ましい。また、着用快適性と防風性、およびハリコシ感を兼備する上で目付けが130~250g/mの範囲内であることが好ましい。また、防風性の点で通気度が50cm/cm・s以下(より好ましくは5~50cm/cm・s)であることが好ましい。また、ISO20932-1:2018により測定したストレッチ性が経方向20%以上、かつ緯方向30%以上であり、ISO20932-1:2018により測定したストレッチ性回復率が経方向、緯方向ともに90%以上であることが好ましい。また、抗スナッギング性としては、JIS L 1058-1995 D3法のカナノコにより5時間テストして、抗スナッギング性が3級以上であることが好ましい。
【0039】
本発明の経編地は前記の構成を有するので、防風性、ストレッチ性、ハリコシ感、さらには抗スナッギング性に優れ、衣料などとして特に好適に用いられる。なお、かかる衣料
には、ニットパンツやファンション衣料、ユニフォームなどが含まれる。
【実施例0040】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
【0041】
(1)インターレース度
交絡糸を8.82mN×表示テックス(0.1g/de)の荷重下で1mの長さをとり、除重後、室温で24時放縮後の結節点の数を読み取り、個/mで表示する。
【0042】
(2)捲縮率
供試糸条を、周長が1.125mの検尺機のまわりに巻きつけて、乾繊度が3333dtexのかせを調製する。前記かせを、スケール板の吊り釘に懸垂して、その下部分に6gの初荷重を付加し、さらに600gの荷重を付加したときのかせの長さL0を測定する。その後、直ちに、前記かせから荷重を除き、スケール板の吊り釘から外し、このかせを沸騰水中に30分間浸漬して、捲縮を発現させる。沸騰水処理後のかせを沸騰水から取り出し、かせに含まれる水分をろ紙により吸収除去し、室温において24時間風乾する。この風乾されたかせを、スケール板の吊り釘に懸垂し、その下部分に、600gの荷重をかけ、1分後にかせの長さL1aを測定し、その後かせから荷重を外し、1分後にかせの長さL2aを測定する。供試フィラメント糸条の捲縮率(CP)を、下記式により算出する。
CP(%)=((L1a-L2a)/L0)×100
【0043】
(3)抗スナッギング性
JIS L 1058-1995 D3法のカナノコにより5時間テストする。
【0044】
(4)目付け
JISL1018-1998 6.4により測定する。
【0045】
(5)ストレッチ性
ISO20932-1:2018によりストレッチ性(%)を測定した。
【0046】
(6)ストレッチ性回復率
ISO20932-1:2018によりストレッチ性回復率(%)を測定した。
【0047】
(7)通気度
JIS L1096-2010 8.26.1 A法(フラジール法)により通気度(cm/cm・s)を測定した。なお、サンプル数は5でその平均を求めた。
【0048】
(8)ハリコシ感
試験者により、ハリコシ感に優れる、普通、ハリコシ感に劣る、3段階に評価した。
【0049】
[実施例1]
カチオン不染性ポリエチレンテレフタレート(艶消し剤の含有率0.3重量%、セミダル(SD))を用いて通常の紡糸装置から280℃で溶融紡糸し、2800m/分の速度で引取り、延伸することなく巻取り、半延伸されたポリエステル糸条(単繊維の断面形状:丸断面、POY)を得た。
【0050】
次いで、該ポリエステル糸条を用いて、延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m(S方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行い
、総繊度33dtex/36本の仮撚捲縮加工糸Aを得た。
一方、前記ポリエステル糸条を用いて、延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m(Z方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行い、総繊度33dtex/36本の仮撚捲縮加工糸Bを得た。
【0051】
次いで、これらS方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Aと、Z方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Bとを合糸して空気交絡処理を行い、複合糸(総繊度66dtex/72本、捲縮率35%、トルク30T/m以下)を得た。その際、空気交絡処理は、インターレースノズルを用いたインターレース加工であり、50個/mの交絡を付与した。
一方、公知の方法により、総繊度56dtex/36本の、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)成分とポリエチレンテレフタレート(PET)成分とがサイドバイサイド型に接合された複合繊維からなる仮撚捲縮加工糸を得た。
【0052】
次いで、28ゲージの経編機を使用して、2枚の筬にそれぞれ前記複合糸、前記複合繊維を供給してバックハーフ組織を有する経編地を編成した。
そして、該経編地を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間15分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、経編地に親水化剤を付与した。次いで、該経編地に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた経編地は、防風性、ストレッチ性、ハリコシ感、さらには抗スナッギング性に優れるものであった。評価結果を表1に示す。
【0053】
[実施例2]
カチオン不染性ポリエチレンテレフタレート(艶消し剤の含有率0.3重量%、セミダル(SD))を用いて通常の紡糸装置から280℃で溶融紡糸し、2800m/分の速度で引取り、延伸することなく巻取り、半延伸されたポリエステル糸条(単繊維の断面形状:丸断面、POY)を得た。次いで、該ポリエステル糸条を用いて、延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m(S方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行い、総繊度22dtex/24本の仮撚捲縮加工糸Aを得た。
【0054】
一方、前記ポリエステル糸条を用いて、延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m(Z方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行い、総繊度22dtex/24本の仮撚捲縮加工糸Bを得た。
【0055】
次いで、これらS方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Aと、Z方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Bとを合糸して空気交絡処理を行い、複合糸(総繊度44dtex/48本、捲縮率28%、トルク30T/m以下)を得た。その際、空気交絡処理は、インターレースノズルを用いたインターレース加工であり、60個/mの交絡を付与した。
一方、公知の方法により、総繊度56dtex/36本の、ポリブチレンテレフタレート(PBT)成分とポリエチレンテレフタレート(PET)成分とがサイドバイサイド型に接合された複合繊維からなる仮撚捲縮加工糸を得た。
【0056】
次いで、36ゲージの経編機を使用して、2枚の筬にそれぞれ前記複合糸、前記複合繊維を供給してバックハーフ組織を有する経編地を編成した。
そして、該経編地を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間15分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、経編地に親水化剤を付与した。次いで、該経編地に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた経編地は、防風性、ストレッチ性、ハリコシ感、さらには抗スナッギング性に優れるものであった。評価結果を表1に示す。
【0057】
[実施例3]
カチオン不染性ポリエチレンテレフタレート(艶消し剤の含有率0.3重量%、セミダル(SD))を用いて通常の紡糸装置から280℃で溶融紡糸し、2800m/分の速度で引取り、延伸することなく巻取り、半延伸されたポリエステル糸条(単繊維の断面形状:丸断面、POY)を得た。次いで、該ポリエステル糸条を用いて、延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m(S方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行い、総繊度22dtex/72本の仮撚捲縮加工糸Aを得た。
【0058】
一方、前記ポリエステル糸条を用いて、延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m(Z方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行い、総繊度22dtex/72本の仮撚捲縮加工糸Bを得た。
【0059】
次いで、これらS方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Aと、Z方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Bとを合糸して空気交絡処理を行い、複合糸(総繊度44dtex/144本、捲縮率18%、トルク30T/m以下)を得た。その際、空気交絡処理は、インターレースノズルを用いたインターレース加工であり、68個/mの交絡を付与した。
一方、公知の方法により、総繊度33dtex/24本の、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)成分とポリエチレンテレフタレート(PET)成分とがサイドバイサイド型に接合された複合繊維からなる仮撚捲縮加工糸を得た。
【0060】
次いで、36ゲージの経編機を使用して、2枚の筬にそれぞれ前記複合糸、前記複合繊維を供給してバックハーフ組織を有する経編地を編成した。
そして、該経編地を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間15分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、経編地に親水化剤を付与した。次いで、該経編地に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた経編地は、防風性、ストレッチ性、ハリコシ感、さらには抗スナッギング性に優れるものであった。評価結果を表1に示す。
【0061】
[実施例4]
実施例1において、複合繊維を非捲縮糸(生糸)に変更すること以外は実施例1と同様にした。得られた経編地は、防風性、ストレッチ性、ハリコシ感、さらには抗スナッギング性に優れるものであった。評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例5]
カチオン不染性ポリエチレンテレフタレート(艶消し剤の含有率2.3重量%、フルダル(FD))を用いて通常の紡糸装置から280℃で溶融紡糸し、2800m/分の速度で引取り、延伸することなく巻取り、半延伸されたポリエステル糸条(単繊維の断面形状:丸断面、POY)を得た。次いで、該ポリエステル糸条を用いて、延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m(S方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行い、総繊度33dtex/36本の仮撚捲縮加工糸Aを得た。
【0063】
一方、カチオン可染性ポリエチレンテレフタレート(艶消し剤の含有率0.3重量%、セミダル(SD))を用いて通常の紡糸装置から280℃で溶融紡糸し、2800m/分の速度で引取り、延伸することなく巻取り、半延伸されたポリエステル糸条(単繊維の断面形状:丸断面、POY)を得た。次いで、該ポリエステル糸条を用いて、延伸倍率1.
6倍、仮撚数2500T/m(Z方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行い、総繊度33dtex/36本の仮撚捲縮加工糸Aを得た。
【0064】
次いで、これらS方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Aと、Z方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Bとを合糸して空気交絡処理を行い、複合糸(総繊度66dtex/72本、捲縮率12%、トルク30T/m以下)を得た。その際、空気交絡処理は、インターレースノズルを用いたインターレース加工であり、80個/mの交絡を付与した。
一方、公知の方法により、総繊度56dtex/36本の、ポリブチレンテレフタレート(PBT)成分とポリエチレンテレフタレート(PET)成分とがサイドバイサイド型に接合された複合繊維からなる仮撚捲縮加工糸を得た。
【0065】
次いで、28ゲージの経編機を使用して、2枚の筬にそれぞれ前記複合糸、前記複合繊維を供給してハーフ組織を有する経編地を編成した。
そして、該経編地を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間15分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、経編地に親水化剤を付与した。次いで、該経編地に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた経編地は、防風性、ストレッチ性、ハリコシ感、さらには抗スナッギング性に優れるものであった。評価結果を表1に示す。
【0066】
[比較例1]
36ゲージの経編機を使用して、2枚の筬にそれぞれ、総繊度33dtex/12本のセミダルポリエチレンテレフタレート生糸と、総繊度56dtex/72本のセミダルポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(トルク31T/m以上)を供給しハーフ組織を有する経編地を編成した。
【0067】
そして、該経編地を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間15分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、経編地に親水化剤を付与した。次いで、該経編地に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。評価結果を表1に示す。
【0068】
[比較例2]
比較例1において、生糸として実施例4と同じ、総繊度56dtex/36本の、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)成分とポリエチレンテレフタレート(PET)成分とがサイドバイサイド型に接合された複合繊維からなる生糸を用いること以外は比較例1と同様にした。評価結果を表1に示す。
【0069】
[比較例3]
実施例4において、複合糸にかえて総繊度84dtex/72本のポリエステル仮撚捲縮加工糸(トルク31T/m以上)を用いること以外は実施例4と同様にした。評価結果を表1に示す。
【0070】
[比較例4]
比較例1において、実施例1と同じ複合糸(総繊度66dtex/72本、捲縮率35%、トルク30T/m以下)を2枚の筬に供給すること以外は比較例1と同様にした。評価結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、防風性、ストレッチ性およびハリコシ感に優れた経編地および衣料が提供され、その工業的価値は極めて大である。