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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020892
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ウッド型ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20230202BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20230202BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087781
(22)【出願日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2021125108
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521336897
【氏名又は名称】株式会社フライハイト
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高橋▼ 智礼
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002CH04
(57)【要約】
【課題】安定してゴルフボールの飛距離を得ることができるウッド型ゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、ゴルフクラブヘッド1において、フェース部材20は、フェース面21の周縁25から立ち上がるようにして設けられる壁部22を備え、壁部22は、周縁の25周方向の全体に亘って設けられ、壁部22が立ち上がる高さHは、周縁25の周方向の全体に亘って、同一または略同一であり、フェース面21と壁部22とがなす角度θが、トウ側部分22bにて130°~140°であり、ヒール側部分22cにて112°~122°であり、フェース部2とクラウン部3との境界部分である上部22dにて115°~125°であり、フェース部2とソール部3との境界部分である下部22eにて90°~100°である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体と、フェース面を備えるフェース部材と、を有し、前記フェース部材は、前記ヘッド本体に溶接により接合されているウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて、
前記フェース部材は、前記フェース面の周縁から立ち上がるようにして設けられる壁部を備え、
前記壁部は、前記周縁の周方向の全体に亘って設けられ、
前記壁部が立ち上がる高さは、前記周縁の周方向の全体に亘って、同一または略同一であり、
前記フェース部材と前記ヘッド本体との溶接部が、ホーゼル部に干渉しないように、当該ホーゼル部よりフェース側の位置に配置されているとともに、
前記壁部が、前記ホーゼル部の近傍で欠けておらず、
前記溶接部が、完全に前記フェース面よりバック側の位置に形成され、
フェースプログレッションが20mm以上であるものであって、
前記フェース面と前記壁部とがなす角度が、
トウ側部分にて130°~140°であり、
ヒール側部分にて112°~122°であり、
前記フェース部材とクラウン部との境界部分である上部にて115°~125°であり、
前記フェース部材とソール部との境界部分である下部にて90°~100°であること、
を特徴とするウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
請求項1のウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて、
前記フェース面におけるヒール側の位置におけるCT値は、210μs以上であること、
を特徴とするウッド型ゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウッド型ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ウッド型ゴルフクラブヘッドに関する文献として、特許文献1には、ゴルフボールを打撃するフェース面を備えるカップ状に形成されたフェース部材を有するゴルフクラブヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-167115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるゴルフクラブヘッドのフェース部材において、フェース面と壁部(延出部)とがなす角度(内角)が、フェース面の周縁部の全周に亘って90°または略90°になっている。そうすると、フェース部材の周縁部におけるホーゼル部の近傍の位置、すなわち、フェース面におけるヒール側の位置において、フェース面の撓みが小さくなり、良好なゴルフボールの反発性能を得ることができないおそれがある。したがって、安定してゴルフボールの飛距離を得ることができない。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、安定してゴルフボールの飛距離を得ることができるウッド型ゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、ヘッド本体と、フェース面を備えるフェース部材と、を有し、前記フェース部材は、前記ヘッド本体に溶接により接合されているウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて、前記フェース部材は、前記フェース面の周縁から立ち上がるようにして設けられる壁部を備え、前記壁部は、前記周縁の周方向の全体に亘って設けられ、前記壁部が立ち上がる高さは、前記周縁の周方向の全体に亘って、同一または略同一であり、前記フェース部材と前記ヘッド本体との溶接部が、ホーゼル部に干渉しないように、当該ホーゼル部よりフェース側の位置に配置されているとともに、前記壁部が、前記ホーゼル部の近傍で欠けておらず、前記溶接部が、完全に前記フェース面よりバック側の位置に形成され、フェースプログレッションが20mm以上であるものであって、前記フェース面と前記壁部とがなす角度が、トウ側部分にて130°~140°であり、ヒール側部分にて112°~122°であり、前記フェース部材とクラウン部との境界部分である上部にて115°~125°であり、前記フェース部材とソール部との境界部分である下部にて90°~100°であること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、フェース面におけるヒール側の位置においても理想のCT値が得られるので、フェース面全体に亘って理想のCT値を得ることができる。そのため、安定してゴルフボールの飛距離を得ることができる。
【0008】
上記の態様においては、前記フェース面におけるヒール側の位置におけるCT値は、210μs以上であること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、より確実に、安定してゴルフボールの飛距離を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示のウッド型ゴルフクラブヘッドによれば、安定してゴルフボールの飛距離を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のゴルフクラブヘッドの斜視図である。
図2】本実施形態のゴルフクラブヘッドをクラウン部側から見たときの図である。
図3】本実施形態のゴルフクラブヘッドをトウ側から見た図である。
図4】本実施形態のゴルフクラブヘッドをフェース側から見た図である。
図5】本実施形態のゴルフクラブヘッドの分解図である。
図6】本実施形態のフェース部材の斜視図である。
図7】本実施形態のフェース部材をフェース面の裏面側から見た図である。
図8図7のA-A断面図である。
図9】第1変形例のフェース部材をフェース面の裏面側から見た図である。
図10図9のB-B断面図である。
図11】第2変形例のフェース部材をフェース面の裏面側から見た図である。
図12図11のC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示のウッド型ゴルフクラブヘッドの実施形態の一例であるゴルフクラブヘッド1について説明する。
【0013】
<ゴルフクラブヘッドの全体構成>
ゴルフクラブヘッド1は、中空体に形成されており、この中空体の壁面において、図1図2に示すように、フェース部2と、クラウン部3と、ソール部4と、サイド部5、ホーゼル部6とが設けられている。
【0014】
フェース部2は、ゴルフボールの打撃面(後述するフェース面21)が形成される部分である。クラウン部3は、ゴルフクラブヘッド1の基準状態において、ゴルフクラブヘッド1の上部を形成する部分である。ソール部4は、ゴルフクラブヘッド1の基準状態において、ゴルフクラブヘッド1の下部を形成する部分である。サイド部5は、クラウン部3とソール部4との間を形成する部分である。ホーゼル部6は、シャフト(不図示)が取付けられる部分である。
【0015】
ここで、「ゴルフクラブヘッド1の基準状態」とは、図3図4に示すように、ゴルフクラブヘッド1を水平面HPに対して予め定められたライ角αおよびロフト角β通りに配置した状態である。また、ライ角αとは、シャフトの中心軸CAが水平面HPとなす角度である。また、ロフト角βとは、後述するフェース面21が、地面(水平面HP)に垂直な線となす角度である。
【0016】
このようなゴルフクラブヘッド1は、図1図5に示すように、ヘッド本体10とフェース部材20とを有する。
【0017】
ヘッド本体10は、図5に示すように、中空体に形成されており、クラウン部3とソール部4とサイド部5とホーゼル部6とを形成する部材である。
【0018】
フェース部材20は、図1図4に示すように、溶接部30において、ヘッド本体10に溶接にて接合されている。フェース部材20は、フェース部2を形成する部材であり、図5図6に示すようにカップ状に形成されている。また、フェース部材20は、フェース面21(フェース面を形成する部分)と壁部22とを備えている。なお、フェース部材20は、例えば鍛造により形成される。
【0019】
フェース面21は、板状に形成されており、一方の面(フェース側の面)に表面23が形成され、他方の面(バック側の面)に裏面24が形成されている。そして、フェース面21の表面23が、ゴルフボールの打撃面となっている。
【0020】
壁部22は、図6に示すように、フェース面21の周縁25から立ち上がるようにして設けられている。そして、図2図5に示すように、壁部22の先端部22aがヘッド本体10に溶接により接合しており、この壁部22の先端部22aとヘッド本体10とが溶接により接合している部分が溶接部30である。
【0021】
<フェース部材に関して>
本実施形態では、図5図7に示すように、フェース部材20の壁部22は、フェース面21の周縁25の周方向の全体に亘って設けられており、周縁25の全方向に亘って切欠け部分を有していない。すなわち、壁部22が、ホーゼル部6の近傍で欠けていない。そして、壁部22が立ち上がる高さH(以下、単に「壁部22の高さH」という。)は、周縁25の周方向の全体に亘って、同一または略同一である。
【0022】
より詳しくは、壁部22の高さHは、周縁25の周方向の全体に亘って、目標の高さの0.9倍~1.1倍の範囲内に収まっている。具体的な数値の一例として、高さHは、目標の高さを5mmとした場合に、周縁25の周方向の全体に亘って、4.5mm~5.5mmの範囲内に収まるようにする。なお、高さHは、3.0mm以上が望ましいが、より好ましくは、3.5mm~10mmである。
【0023】
また、本実施形態では、フェース面21と壁部22とがなす角度θ(フェース部材20の内側の角)が、鈍角になっており、周縁25の周方向の部分によって値が異なっている。
【0024】
具体的には、図2に示すように、壁部22のトウ側部分22bがフェース面21となす角度θ1は、130°~140°であり、より好ましくは、134°~135°である。また、壁部22のヒール側部分22cがフェース面21となす角度θ2は、112°~122°であり、より好ましくは、116°~117°である。
【0025】
また、図3に示すように、壁部22の上部22dがフェース面21となす角度θ3は、115°~125°であり、より好ましくは、116°~117°である。また、壁部22の下部22eがフェース面21となす角度θ4が90°~100°であり、より好ましくは、92°である。ここで、上部22dとは、フェース部材20(フェース部2)とクラウン部3との境界部分である。また、下部22eとは、フェース部材20(フェース部2)とソール部4との境界部分である。
【0026】
また、フェース面21におけるヒール側の位置P(図4参照)におけるCT値は、210μs以上である。なお、位置Pは、詳しくは、フェース面21におけるヒール側の端部で且つ上下方向のほぼセンターの位置である。また、位置PにおけるCT値の実際の計測値は、212μsであった。従来のゴルフクラブヘッド(壁部がホーゼル部の近傍で欠けているもの)について同様の位置におけるCT値の実際の計測値が196μsであったことから、本実施形態のゴルフクラブヘッド1の位置PにおけるCT値が大きく向上したことが分かる。また、本実施形態のゴルフクラブヘッド1のフェース面21におけるセンターの位置のCT値の実際の計測値は、245~250μsであった。
【0027】
また、本実施形態では、図2に示すように、ゴルフクラブヘッド1の基準状態において、ゴルフクラブヘッド1をクラウン部3側から見たときに、溶接部30は、その形状が直線形状であり、ホーゼル部6に干渉しないように、ホーゼル部6よりもフェース側の位置に配置されている。
【0028】
また、本実施形態では、図6図8に示すように、フェース部材20において、フェース面21は、中央肉厚部31と周辺薄肉部32とを備えている。中央肉厚部31は、フェース面21の中央部に形成されており、周辺薄肉部32よりも厚みが大きく、かつ、均一な厚みで形成されている。周辺薄肉部32は、フェース面21の面方向について、フェース面21の周縁25よりも内側であって、かつ、中央肉厚部31の外側の部分にて、周縁25の周方向の全体に亘って中央肉厚部31を囲むようにして形成されている。この周辺薄肉部32は、中央肉厚部31よりも厚みが小さく、かつ、均一な厚みで形成されている。
【0029】
このようにして、本実施形態では、フェース面21の面方向(図7の紙面に沿った方向)について、フェース面21における当該フェース面21の周縁25よりも内側であって、かつ、中央肉厚部31(すなわち、フェース面21の中央部)よりも外側の位置にて、周辺薄肉部32が設けられている。この周辺薄肉部32は、周縁25の周方向の全体に亘って、中央肉厚部31よりも厚みが小さく、かつ、均一な厚みで形成されている。なお、一例として、中央肉厚部31の厚みは2.1mm~3.2mmであるのに対して、周辺薄肉部32の厚みは1.9mm~2.4mmである。
【0030】
なお、フェース部材20の第1変形例として、中央肉厚部31と周辺薄肉部32が、図9図10に示すように形成されていてもよい。この第1変形例においては、図9に示すように、フェース部材20をフェース面21の裏面24側から見たときに、中央肉厚部31の中心C1が、フェース面21の中心C0よりもヒール側(図9の左側)の位置に配置されるようにして、中央肉厚部31が形成されている。
【0031】
このようにして、例えば、短重心距離設計でゴルフクラブヘッド1の重心CG(図2図4参照)がヒール側に寄っている場合に、中央肉厚部31を若干ヒール側に配置する。そして、さらに、周辺薄肉部32のヒール側のエリアを図7に示すフェース部材20よりも狭くして、かつ、周辺薄肉部32のトウ側のエリアよりも厚みを小さくする。これにより、フェース面21におけるヒール側でゴルフボールを打撃したときや、短重心距離設計のヘッド全般のゴルフボールの飛距離を伸ばすことができる。
【0032】
また、フェース部材20の第2変形例として、図11図12に示すように、周縁極薄部33が形成されていてもよい。この第2変形例においては、図11に示すように、フェース部材20をフェース面21の裏面24側から見たときに、フェース面21の面方向について、フェース面21の周縁25よりも内側であって、かつ、周辺薄肉部32よりも外側の部分にて、周縁25の周方向の全体に亘って周辺薄肉部32を囲むようにして、周縁極薄部33が形成されている。この周縁極薄部33は、周辺薄肉部32よりも厚みが小さく、かつ、均一な厚みで形成されている。このようにして、周縁極薄部33が形成されているので、フェース面21の全面においてその撓み量を増加させる場合にも、フェース面21について、ヒール側の部分に至るまで、ほぼ均等に撓ませることができる。なお、一例として、周縁極薄部33の厚みは1.8mm~2.1mmである。
【0033】
<フェースプログレッションについて>
本実施形態のゴルフクラブヘッド1は、そのフェースプログレッションFPが20mm以上40mm以下である。ここで、フェースプログレッションFPとは、図3に示すように、ゴルフクラブヘッド1の基準状態において、ゴルフクラブヘッド1をそのトウ側から見たときに、シャフトの中心軸CAからゴルフクラブヘッド1の最先端(最もフェース側の端部、図3の右側の端部)の位置までの距離であり、すなわち、シャフトの中心軸CAからリーディングエッジLEまでの距離である。また、リーディングエッジLEとは、フェース部2とソール部4とが接する箇所であり、且つ、フェース部2の最先端(最もフェース側の端部、図3の右側の端部)の箇所である。
【0034】
<本実施形態の作用効果>
以上のように本実施形態によれば、フェース面21と壁部22とがなす角度θが、トウ側部分22bにて130°~140°であり、ヒール側部分22cにて112°~122°であり、上部22dにて115°~125°であり、下部22eにて90°~100°である。
【0035】
これにより、フェース面21におけるヒール側の位置においても理想のCT値(フェース面21の反発性能を示す値)が得られるので、フェース面21全体に亘って理想のCT値を得ることができる。そのため、安定してゴルフボールの飛距離を得ることができる。
【0036】
また、壁部は22、周縁25の周方向の全体に亘って設けられ、壁部22が立ち上がる高さは、前縁の周方向の全体に亘って、同一または略同一であり、フェース部材20とヘッド本体10との溶接部30が、ホーゼル部6に干渉しないように、当該ホーゼル部6よりフェース側の位置に配置されているとともに、壁部22が、ホーゼル部6の近傍で欠けておらず、溶接部30が、完全にフェース面21よりバック側の位置に形成されている。
【0037】
このようにして、フェース部材20の壁部22が、フェース面21の周縁25の周方向の全体に亘って、同一または略同一の高さHで設けられている。これにより、フェース面21の周縁25およびその近傍において、フェース面21の周縁25の周方向に沿ってフェース面21の撓み量のバラつきが少なくなる。そのため、フェース面21の全面に亘って、均一な撓み量を確保して、良好なゴルフボールの反発性能が得られるので、ゴルフボールがフェース面21における如何なる部分に当たったとしても、ゴルフボールの飛距離を確保できる。したがって、安定してゴルフボールの飛距離を得ることができる。
【0038】
また、フェース面21におけるヒール側の位置P(図4参照)におけるCT値は、210μs以上である。これにより、より確実に、安定してゴルフボールの飛距離を得ることができる。
【0039】
また、仮にフェース部材の壁部(周縁部)がホーゼル部の近傍の位置において欠けている場合には、ホーゼル部の近傍の位置では、他の位置よりも、ヘッド本体とフェース部材とを接合する溶接部の溶接ビードの厚みが大きくなってしまう。そのため、フェース部材の壁部におけるホーゼル部の近傍の位置、すなわち、フェース面におけるヒール側の位置において、フェース面の撓みが小さくなり、良好なゴルフボールの反発性能を得ることができないおそれがある。
【0040】
これに対し、本実施形態のフェース部材20は、フェース部材20の壁部22が、フェース面21の周縁25の周方向の全体に亘って、同一または略同一の高さHで設けられており、ホーゼル部6の近傍の位置において欠けていない。
【0041】
このようにして、フェース部材20の壁部22が、フェース面21の周縁25の周方向の全体に亘って、同一または略同一の高さHで設けられているので、溶接部30が完全にフェース面21の外側の位置(すなわち、フェース面21よりもバック側の位置)に形成されることになる。そのため、溶接部30における溶接部の盛り上がり(溶接ビード)がフェース面21上に存在しなくなる。したがって、フェース部材20の壁部22におけるホーゼル部6の近傍の位置、すなわち、フェース面21におけるヒール側の位置においても、フェース面21の撓みを確保でき、良好なゴルフボールの反発性能を得ることができる。
【0042】
また、ゴルフクラブヘッド1の製造誤差から生じるCT値のばらつきを小さくすることができ、ゴルフクラブヘッド1の製造時の寸法公差を小さくできるため、CT値がルール適合範囲で上限に近い(飛距離性の高い)ゴルフクラブヘッド1の製造が可能になる。
【0043】
また、一般的に、ウッド型ゴルフクラブヘッドは、アイアン型ゴルフクラブヘッドと比べて、ゴルフボールの飛距離を得るために、シャフトが長く作られている。特に、ウッド型ゴルフクラブヘッドの中でもドライバ型のクラブは、ゴルフボールの最大飛距離を得るため、シャフトが長いのが一般的であり、特にアマチュアのゴルファは常にフルショットをすることが多い。そのため、ゴルフクラブヘッドでゴルフボールを打撃する際のフェース面でのゴルフボールの打点がばらつき易く、結果として打球方向が上下左右にぶれると同時に、フェース面でのゴルフボールの打点が最大飛距離を得るいわゆるスイートスポットを外れることにより、ゴルフボールの飛距離そのものも大きく損なうことが多々ある。
【0044】
これに対し、本実施形態のフェース部材20は、フェース部材20の壁部22が、フェース面21の周縁25の周方向の全体に亘って、同一または略同一の高さHで設けられており、ホーゼル部6の近傍の位置において欠けていないことにより、フェース面21の中央部にゴルフボールの反発性能の高いエリアを配置することが容易であり、フェース面21の中心からトウ側およびヒール側均等に広範囲なエリアで、良好なゴルフボールの反発性能を維持できる十分な撓み量を確保できる。これにより、従来のフェース部材と比較して、フェース面21のヒール側にてゴルフボールを打撃した時における飛距離ロスを極力減らすことができ、また、その際の不快な打感をできる限り削減できる。
【0045】
そして、壁部22の高さHは、周縁25の周方向の全体に亘って、目標の高さの0.9倍~1.1倍の範囲内に収まっている。
【0046】
そのため、より確実に、フェース面21の周縁25およびその近傍において、フェース面21の周縁25の周方向に沿ってフェース面の撓み量のバラつきが少なくなる。
【0047】
また、フェースプログレッションFPが20mm以上である。
【0048】
このようにして、本実施形態のゴルフクラブヘッド1は、そのフェースプログレッションFPが大きいので、重心距離GDを短くできる。そして、重心距離GDを短く(望ましくは30mm以下に)することにより、フェース面21にゴルフボールに当たる瞬間(すなわち、インパクト時)に、遠心力から生じるシャフトの下方への曲がりや、時計針方向への捻りを小さく抑えることができる。これにより、フェース面21のヒール側にて良好なゴルフボールの反発性能を得ることができるとともに、ゴルフクラブのスイング中に意図する方向にフェース面21を操作し易くなってゴルファにとっては扱いやすいゴルフクラブとなる。
【0049】
なお、重心距離GDとは、図4に示すように、ホーゼル部6に挿入されるシャフトの中心軸CAの延長線上からゴルフクラブヘッド1の重心CGまでの垂線の長さ(距離)である。
【0050】
また、フェースプログレッションFPが大きいので、ヘッド本体10とフェース部材20との溶接部30がホーゼル部6に掛からないようにすることができる。そのため、溶接部30において、ヘッド本体10とフェース部材20とを溶接により接合した後、溶接ビードの研磨加工が行い易いので、溶接部30の溶接ビードの仕上がりを良くすることができる。
【0051】
また、図2に示すように、ゴルフクラブヘッド1をクラウン部3側から見たときに、ヘッド本体10とフェース部材20との溶接部30は、その形状が直線形状であり、シャフトが取り付けられるホーゼル部6よりもフェース側の位置に配置されている。
【0052】
このようにして、ゴルフクラブヘッド1をそのクラウン部3側から見たときに、ヘッド本体10とフェース部材20との溶接部30が直線形状に形成されているので、フェース部材20のフェース面21において、そのトウ側の部分とヒール側の部分とでの撓み量のバラつきが小さくなる。これにより、フェース面21のヒール側にて良好なゴルフボールの反発性能を得ることができるとともに、ゴルフクラブのスイング中に意図する方向にフェース面21を操作し易くなってゴルファにとっては扱いやすいゴルフクラブとなる。
【0053】
また、図7図9図11などに示すように、フェース面21の面方向について、フェース面21における当該フェース面21の周縁25よりも内側であって、かつ、フェース面21の中央肉厚部31よりも外側の位置にて、周縁25の周方向の全体に亘って、フェース面21の中央肉厚部31よりも厚みが小さく、かつ、均一な厚みの周辺薄肉部32が設けられている。
【0054】
このようにして、フェース面21にて、スイートスポットSP(すなわち、ゴルフクラブヘッド1の芯)を含む厚みの大きい中央肉厚部31の周囲が厚みの小さい周辺薄肉部32で囲まれている。これにより、フェース面21の中央肉厚部31からフェース面21の周縁25側に亘って良好なゴルフボールの反発性能を維持できる。
【0055】
また、本実施形態では、フェース部材20の壁部22は、周縁25の周方向の全体に亘って、高さHが同一または略同一となるように形成されている。そのため、周縁25の周方向の全体に亘って、フェース面21の中央肉厚部31における撓み量のバラつきを少なくでき、良好なゴルフボールの反発性能を確保できる。
【0056】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0057】
1 ゴルフクラブヘッド
2 フェース部
3 クラウン部
4 ソール部
5 サイド部
6 ホーゼル部
10 ヘッド本体
20 フェース部材
21 フェース面
22 壁部
22a 先端部
22b トウ側部分
22c ヒール側部分
22d 上部
22e 下部
30 溶接部
23 表面
24 裏面
25 周縁
31 中央肉厚部
32 周辺薄肉部
33 周縁極薄部
HP 水平面
α ライ角
β ロフト角
H 高さ
C0 (フェース面の)中心
C1 (中央肉厚部の)中心
CG (ゴルフクラブヘッドの)重心
FP フェースプログレッション
CA シャフトの中心軸
LE リーディングエッジ
GD 重心距離
SP スイートスポット
θ,θ1,θ2,θ3,θ4 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12