(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020939
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 125/08 20060101AFI20230202BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230202BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20230202BHJP
C09J 153/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C09J125/08
C09J11/06
C09J7/35
C09J153/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109431
(22)【出願日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2021123618
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村田 順平
(72)【発明者】
【氏名】河村 芳範
(72)【発明者】
【氏名】松島 歩海
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA06
4J004AB05
4J004FA08
4J040DB021
4J040DM001
4J040EC262
4J040HC01
4J040HC23
4J040KA12
4J040KA16
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】
低誘電特性および樹脂と金属との接着性に優れる、接着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
本願発明者らが鋭意検討を行った結果、(A)酸変性スチレン系エラストマー及び(B)環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造を含む脂環式エポキシ樹脂を含み、且つ(C)第三級アミン類、第三級アミン塩類、イミダゾール類及びカチオン重合開始剤を含まない接着剤組成物によれば、低誘電特性および樹脂と金属との接着性に優れ、前記課題が解決可能であることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)及び(B)を含み、且つ下記(C)を含まない、接着剤組成物。
(A)酸変性スチレン系エラストマー
(B)環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造を含む脂環式エポキシ樹脂
(C)第三級アミン類、第三級アミン塩類、イミダゾール類及びカチオン重合開始剤
【請求項2】
(A)100重量部に対し、(B)を0.1~50重量部含有する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
(A)が、スチレン―エチレンブチレン―スチレンブロック共重合体及びスチレン―エチレンプロピレンブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のスチレン系エラストマーを不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種により変性したものである、請求項1に記載の接着剤組成物
【請求項4】
(B)が、下記式(1)~(4)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環式エポキシ樹脂である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【化1】
(上記(1)式におけるXは、単結合、又は2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、カーボネート基、アミド基、シロキサン結合もしくはこれらが複数連結した基を表す。)
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項5】
更に、(D)有機溶媒を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物を用いてなる接着フィルム。
【請求項7】
請求項5に記載の接着剤組成物を用いてなる接着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)及び接着性に優れ、電子部品、特にフレキシブルプリント配線板(以下、FPC)の関連部材の製造に適した接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやモバイルパソコンなど無線通信技術の進展に伴って大容量の情報を高速で処理することが要求され、伝送信号の高周波化が進展している。高周波化に伴い、無線通信デバイスの構成要素の1つであるFPC及びその関連部材にも高周波帯域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)が求められている(例えば、国際公開第2016/017473号(特許文献1))。
【0003】
また、上記関連部材として、例えば、FPCを製造する際に配線部分を保護するために、「カバーレイフィルム」と呼ばれる接着剤層付き積層体が用いられるが、該接着剤層には、配線部分及び基材フィルムに対して強固な接着性を有することも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み為されたものであって、低誘電特性及び樹脂と金属との接着性に優れる、接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)酸変性スチレン系エラストマー及び(B)環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造を含む脂環式エポキシ樹脂を含み、且つ(C)第三級アミン類、第三級アミン塩類、イミダゾール類及びカチオン重合開始剤を含まない接着剤組成物によれば、上記課題が解決可能であることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
【0007】
〔1〕
下記(A)及び(B)を含み、且つ下記(C)を含まない、接着剤組成物。
(A)酸変性スチレン系エラストマー
(B)環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造を含む脂環式エポキシ樹脂
(C)第三級アミン類、第三級アミン塩類、イミダゾール類及びカチオン重合開始剤
【0008】
〔2〕
(A)100重量部に対し、(B)を0.1~50重量部含有する、〔1〕に記載の接着剤組成物。
【0009】
〔3〕
(A)が、スチレン―エチレンブチレン―スチレンブロック共重合体及びスチレン―エチレンプロピレンブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のスチレン系エラストマーを不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種により変性したものである、〔1〕に記載の接着剤組成物
【0010】
〔4〕
(B)が、下記式(1)~(4)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環式エポキシ樹脂である、〔1〕に記載の接着剤組成物。
【0011】
【化1】
(上記(1)式におけるXは、単結合、又は2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、カーボネート基、アミド基、シロキサン結合もしくはこれらが複数連結した基を表す。)
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
〔5〕
更に、(D)有機溶媒を含む、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【0016】
〔6〕
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の接着剤組成物を用いてなる接着フィルム。
【0017】
〔7〕
〔5〕に記載の接着剤組成物を用いてなる接着フィルム。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接着剤組成物は、低誘電特性および樹脂と金属との接着性に優れる。そのため、本発明の接着剤組成物は、例えば、接着剤層付き積層体(カバーレイフィルム、ボンディングシート)、樹脂付き銅箔、フレキシブル銅張積層板、及びフレキシブルフラットケーブル等の用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に記載する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
<本発明の接着剤組成物>
本発明の接着剤組成物は、(A)酸変性スチレン系エラストマー及び(B)環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造を含む脂環式エポキシ樹脂を含む。以下、上記(A)及び(B)について、具体的に説明する。
【0021】
[(A)酸変性スチレン系エラストマー]
本発明の接着剤組成物は、主成分として、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種により変性したスチレン系エラストマー(酸変性スチレン系エラストマー)を用いる。スチレン系エラストマーを変性する方法としては、例えば、スチレン系エラストマーと不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種とをグラフト化反応させる方法等が挙げられる。
【0022】
スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレンプロピレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)およびスチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。これらスチレン系エラストマーの中でも、接着性と低誘電特性の観点から、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)が好ましい。
【0023】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸等が挙げられる。これら不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物の中でも、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種による変性量は、通常、酸変性スチレン系エラストマー全体の0.1~10質量%程度である。また、酸変性スチレン系エラストマーは、該酸変性エラストマー中の全酸性基の少なくとも一部が酸無水物であることが好ましい。
【0024】
酸変性スチレン系エラストマーの酸価は特に限定されないが、例えば、下限が0.1mgCH3ONa/g以上、好ましくは0.5mgCH3ONa/g以上、より好ましくは1.0mgCH3ONa/g以上であり、上限が20mgCH3ONa/g以下、好ましくは18mgCH3ONa/g以下、より好ましくは15mgCH3ONa/g以下である。
【0025】
酸変性スチレン系エラストマーの分子量は、例えば、重量平均分子量で1万以上、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上であり、また、例えば、50万以下、好ましくは30万以下、より好ましくは20万以下である。なお、本発明における重量平均分子量とは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の分子量である。
【0026】
酸変性スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、旭化成社製のタフテックMシリーズや、クレイトンポリマージャパン社製のクレイトンFGシリーズ等が挙げられる。
【0027】
本発明において、上記した酸変性スチレン系エラストマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
[(B)環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造を含む脂環式エポキシ樹脂]
脂環式エポキシ樹脂は、脂環構造を含むエポキシ樹脂である。環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造は、環状オレフィン構造に対応するシクロアルカン構造と、前記シクロアルカン構造を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されたエポキシ基と、を含む。環状オレフィン構造は単環式でも多環式でもよい。環状オレフィン構造は、アルキル基等の置換基を有していてもよい。環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造を含む脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(1)~(4)で表される化合物等が挙げられる。
【0029】
【化5】
(上記(1)式におけるXは、単結合、又は2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、カーボネート基、アミド基、シロキサン結合もしくはこれらが複数連結した基を表す。)
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、4,4’-ビス(1,2-エポキシシクロヘキサン)、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、以下式(1-1):
【0034】
【0035】
これら環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造を含む脂環式エポキシ樹脂の中でも、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、4,4’-ビス(1,2-エポキシシクロヘキサン)、上記式(1-1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物、上記式(3)で表される化合物、上記式(4)で表される化合物が好ましい。
【0036】
また、環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造を含む脂環式エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ダイセル社のセロキサイド2021P、セロキサイド8010P、セロキサイド2081、エポリードGT401、ENEOS社のTHI-DE、DE-102、DE-103、信越シリコーン社のX-40-2669、KR-470等が挙げられる。
【0037】
本発明において、上記した環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造を含む脂環式エポキシ樹脂は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明の接着剤組成物に含まれる(B)の量は、(A)100重量部に対し、通常0.1~50重量部、好ましくは0.4~30重量部、より好ましくは0.4~20重量部、更に好ましくは0.4~4重量部である。
【0039】
[その他の成分]
本発明の接着剤組成物は、上記(A)及び(B)の他、(A)酸変性スチレン系エラストマー以外の他の熱可塑性樹脂、粘着付与剤、難燃剤、カップリング剤、酸化防止剤、フィラー及び(D)有機溶媒等を含有することができる。
【0040】
上記他の熱可塑性樹脂としては、例えば、酸無水物基を含有しないスチレン系エラストマー、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記粘着付与剤としては、例えば、クマロン-インデン樹脂、テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、ロジン樹脂、p-t-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、石油系炭化水素樹脂、水素添加炭化水素樹脂、テレピン系樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記難燃剤としては、例えば、有機系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。有機系難燃剤としては、例えば、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメート、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン等のリン系難燃剤;メラミン、メラム、メラミンシアヌレート等のトリアジン系化合物や、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素等の窒素系難燃剤;シリコーン化合物、シラン化合物等のケイ素系難燃剤等が挙げられる。また、無機系難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化ニッケル等の金属酸化物;炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、水和ガラス等が挙げられる。これらの難燃剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、上記カップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトシキシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4─ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤;ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-ジチオプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤;トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記フィラーとしては、例えば、ポリアクリル酸エステル粉末、エポキシ樹脂粉末、ポリアミド粉末、ポリウレタン粉末、ポリシロキサン粉末等の他、シリコーン、アクリル、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム等を用いた多層構造のコアシェル等の高分子フィラー;シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ハイドロタルサイト、ウォラストナイト、ゾノトライト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ガラスフレーク、水和ガラス、チタン酸カルシウム、セピオライト、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニッケル、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム等の無機フィラー等が挙げられる。これらフィラーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、形状としては、例えば、球状、粉状、繊維状、針状、鱗片状等を用いることができる。
【0046】
上記(D)有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキサイド、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、γ-ブチロラクトン、セロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
また、本発明の接着剤組成物は、上記したその他の成分の他、例えば、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤、レベリング剤、消泡剤等のアニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤、染料、顔料、可塑剤等も、接着剤組成物の機能に影響を与えない程度に含有することができる。
【0048】
なお、本発明の接着剤組成物は、例えば、特許文献1の各実施例及び比較例との対比からも明らかな通り、通常、エラストマーとエポキシ樹脂との反応を促進させる目的で使用される、(C)第三級アミン類、第三級アミン塩類、イミダゾール類及びカチオン重合開始剤(所謂、硬化促進剤)を含まない。これらを含まないことにより、後述する実施例の項にて示す通り、優れた接着性を示す。
【0049】
第三級アミン類の例としては、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等が挙げられる。第三級アミン塩類の例としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンの、ギ酸塩、エチルへキサン酸塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、o-フタル酸塩、フェノール塩又はフェノールノボラック樹脂塩や、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネンの、ギ酸塩、エチルへキサン酸塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、o-フタル酸塩、フェノール塩又はフェノールノボラック樹脂塩等が挙げられる。イミダゾール類の例としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリル-(1)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2-ウンデシルイミダゾリル-(1)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2-エチル-4-メチルイミダゾリル-(1)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリル-(1)]エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。カチオン重合開始剤の例としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。
【0050】
本発明の接着剤組成物は、(A)酸変性スチレン系エラストマー、(B)環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造を含む脂環式エポキシ樹脂、及び必要に応じてその他成分を混合することにより製造することができる。混合方法は特に限定されず、接着剤組成物が均一になればよい。接着剤組成物は、溶液の状態(以下、液状の接着剤組成物と称する。)で好ましく用いられることから、通常は、上記(D)有機溶媒も使用される。液状の接着剤組成物とすることにより、FPC関連部材を製造する際に、基材フィルムへの塗工及び接着剤層の形成を円滑に行うことができ、所望の厚さの接着剤層をより容易に得ることができる。
【0051】
液状の接着剤組成物とする場合、接着剤層の形成を含む作業性等の観点から、固形分濃度は、例えば、3~80重量%、好ましくは10~50重量%、より好ましくは20~35重量%である。
【0052】
<用途>
本発明における接着剤組成物は、低誘電特性及び樹脂と金属との接着性に優れることから、FPCの関連部材を製造するための接着剤(例えば、接着フィルム等)として好適に用いることができる。本発明におけるFPCの関連部材としては、例えば、カバーレイフィルム、ボンディングシート、樹脂付き銅箔、フレキシブル銅張積層板、フレキシブルフラットケーブル等が挙げられる。
【実施例0053】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、以下実施例等において、接着剤層がBステージ状であるとは、接着剤組成物の一部が硬化し始めた半硬化状態をいい、加熱等により接着剤組成物の硬化が更に進行する状態である。
【0054】
(実施例1~7、比較例1~6)
撹拌装置付き1000mlフラスコに、各成分を表1又は表2に示す割合(重量部)で添加し、室温下で6時間撹拌して分散することにより接着剤組成物を調製した。得られた接着剤組成物を用いて、以下の方法で各物性の測定を行った。得られた結果を表1又は表2に示す。
【0055】
(1)誘電率、誘電正接
離型処理をしたガラス板を用意し、上記の通り調製した接着剤組成物を、乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布した。次いで、この塗膜付きガラス板をオーブン内に静置して、100℃で10分間乾燥させてBステージ状の接着剤層(厚さ100μm)を形成し、次に、この接着剤層をオーブン内に静置して、160℃で60分間加熱硬化処理をして、試験片を作製した。この試験片について、エー・イー・ティー社製の誘電率測定装置を用い、空洞共振器法により、測定温度25℃、測定周波数10GHzにおける誘電率(Dk)および誘電正接(Df)を求めた。
【0056】
(2)剥離接着強度
厚さ25μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン社製「カプトン100EN」]を用意し、その一方の表面に、上記の通り調製した接着剤組成物を塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、100℃で5分間乾燥させてBステージ状の接着剤層(厚さ約15μm)を形成し、カバーレイフィルム(接着剤層付き積層体)を得た。その後、厚さ20μmの圧延銅箔を、カバーレイフィルムの接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ(ポリイミドフィルム/接着剤層/銅箔)、温度160℃、及び圧力4.5MPaの条件で60分間加熱圧着し、フレキシブル銅張積層板を得た。このフレキシブル銅張積層板を幅10mm×長さ100mmにカットし、島津製作所社製オートグラフAGS-500を用いて、90°方向(積層板の面方向に直交する方向)における剥離接着強度を以下の測定条件にて測定した。測定条件は、テストスピードを50mm/minとした。
【0057】
なお、表1及び表2中の各成分は以下の通りである。
[(A):酸変性スチレン系エラストマー]
(A-1):タフテックM1911(無水マレイン酸変性スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体、酸価:2mgCH3ONa/g、重量平均分子量:15万、旭化成ケミカルズ社製)
【0058】
[(B):環状オレフィン構造の不飽和結合がエポキシ化された構造を含む脂環式エポキシ樹脂]
(B-1):セロキサイド2021P(3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル社製)
(B-2):セロキサイド8010P(4,4’-ビス(1,2-エポキシシクロヘキサン)、ダイセル社製)
(B-3):DE-103(上記式(4)で表される化合物、エネオス社製)
(B-4):X-40-2669(上記式(1-1)で表される化合物、信越シリコーン社製)
【0059】
[その他]
(C-1):U-CAT SA102(サンアプロ社製、第3級アミン塩類、DBUの2-エチルヘキサン酸塩)
(C-2):サンエイド100L(三新化学社製、カチオン重合開始剤、芳香族スルホニウム塩)
(C-3):2E4MZ(2-エチル-4-メチルイミダゾール、和光純薬工業社製)
(D):トルエン
(E):HP-7200L(グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、DIC社製)
(F):タフテックH1041(酸未変性スチレン系エラストマー、旭化成ケミカルズ社製)
【0060】
【0061】