(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020940
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】医療用チューブ及び内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 18/26 20060101AFI20230202BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A61B18/26
A61B1/018 515
A61B1/018 511
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109820
(22)【出願日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/226,267
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生熊 聡一
【テーマコード(参考)】
4C026
4C161
【Fターム(参考)】
4C026AA04
4C026DD03
4C026FF16
4C026FF51
4C026HH02
4C026HH06
4C026HH07
4C161FF43
4C161GG15
(57)【要約】
【課題】 結石片を腎盂内へ容易に移動させて、結石STの回収を容易に行うことができる腎杯内の結石を除去する方法、医療用チューブ及び内視鏡システムの提供。
【解決手段】 医療用チューブ21は、第1部分21cと、第1部分21cの先端側の第2部分21bと、第1部分21cから第2部分21bに形成されたルーメン21aと、第2部分21bの壁に、中心軸CX周りに設けられ、ルーメン21aと連通する少なくとも1つの開口21fと、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分と、
前記第1部分の先端側の第2部分と、を有し、前記第2部分は、前記第1部分よりも軟性であり、
前記第1部分から前記第2部分に形成されたルーメンと、
前記第2部分の壁に、中心軸周りに設けられ、前記ルーメンと連通する少なくとも1つの開口と、を有することを特徴とする医療用チューブ。
【請求項2】
前記第1部分は、X線透過画像または磁場を用いた画像に撮像することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の医療用チューブ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの開口の法線は、前記中心軸に交差する軸に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用チューブ。
【請求項4】
前記第2部分の壁に、前記中心軸周り設けられ、前記ルーメンと連通する少なくとも2つ以上の開口があることを特徴とする請求項3に記載の医療用チューブ。
【請求項5】
前記第2部分の先端に第3部分をさらに有し、前記第3部分は、曲面を有することを特徴とする請求項4に記載の医療用チューブ。
【請求項6】
前記第2部分は、前記第3部分が前記腎杯の最も奥の位置に到達すると、前記第2部分の基端が腎杯内に位置する長さを有することを特徴とする請求項5に記載の医療用チューブ。
【請求項7】
前記第3部分の先端から前記第2部分の基端までの長さは、0.5cmから3cmであることを特徴とする請求項5に記載の医療用チューブ
【請求項8】
前記第2部分は、X線透過画像または磁場を用いた画像に撮像することが可能であることを特徴とする請求項2に記載の医療用チューブ。
【請求項9】
前記開口は、中心軸周りに均等に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の医療用チューブ。
【請求項10】
前記開口は、中心軸方向にずれて配置されていることを特徴とする請求項4に記載の医療用チューブ。
【請求項11】
前記第3部分は、X線透過画像または磁場を用いた画像に撮像することが可能であることを特徴とする請求項5に記載の医療用チューブ。
【請求項12】
前記第3部分は、球状に形成されることを特徴とする請求項5に記載の医療用チューブ。
【請求項13】
前記開口は、前記第2部分における、前記第3部分の近傍に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の医療用チューブ。
【請求項14】
前記第2部分と前記第3部分との接続部分に金属線を有することを特徴とする請求項5に記載の医療用チューブ。
【請求項15】
前記第3部分は、前記第1部分、前記第2部分と同じ樹脂を含むことを特徴とする請求項5に記載の医療用チューブ。
【請求項16】
前記樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項15に記載の医療用チューブ。
【請求項17】
前記第1部分と前記第2部分との外径は、1mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の医療用チューブ。
【請求項18】
前記第3部分の外径は、1.1mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の医療用チューブ。
【請求項19】
処置具挿通チャンネルを有する内視鏡と、
請求項1に記載の医療用チューブと、を有し、
前記医療用チューブの外径は、処置具挿通チャンネルの内径よりも小さいことを特徴とする内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎杯内の結石を除去する医療用チューブ及び内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓結石は、腎盂(renal pelvis)あるいは腎杯(renal calyx)内を内視鏡で観察しながら、内視鏡の先端から突出させたバスケット型処置具を用いて、取り除かれる。この腎臓結石の取り除きの手技では、処置中、X線撮影を行って、術者は、X線透過画像を見て、腎盂内あるいは腎杯内の結石の位置が確認しながら、バスケット型処置具を用いて結石の除去を行う。
【0003】
このようなバスケット型処置具は、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-111851号公報
【特許文献2】特開2019-205803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、腎杯中に比較的大きな結石がある場合、結石は、レーザファイバのレーザ光の照射により、細かく破壊される。細かく砕かれた結石は、自然の尿管を通って体外に排出されるが、比較的大きな結石片は、バスケット型処置具により把持されて、結石片を把持したバスケット型処置具と挿入部とが一体的にアクセスシースから抜去されることにより、体外に摘出されて、回収される。
【0006】
特に、結石が下腎杯内などにある場合、術者は、挿入部の湾曲部を大きく湾曲させながら、レーザ光で結石を全て細かく砕かなければならないので、結石の破砕は容易ではない。そのような場合、バスケット鉗子(回収バスケットとも言う)で結石を回収することもできるが、バスケット鉗子で結石を腎盂内に移動させ、バスケット鉗子を内視鏡の処置具チャンネルから出して、次にレーザファイバを処置具チャンネルに挿通してレーザで腎盂内の結石の破砕を行う場合もある。しかし、バスケット鉗子を用いて結石を下腎杯から腎盂内へ移動させる操作も容易ではないという課題がある。
【0007】
そのため、結石が下腎杯内などにある場合、術者は、結石の回収は容易ではなく、手術に時間が掛かっていたという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、結石片を腎盂内へ容易に移動させて、結石の回収を容易に行うことができる医療用チューブ及び内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の医療用チューブは、第1部分と、前記第1部分の先端側の第2部分と、を有し、前記第2部分は、前記第1部分よりも軟性であり、前記第1部分から前記第2部分に形成されたルーメンと、前記第2部分の壁に、中心軸周りに設けられ、前記ルーメンと連通する少なくとも1つの開口と、を有する。
【0010】
本発明の一態様の内視鏡システムは、処置具挿通チャンネルを有する内視鏡と、第1部分を定義する先端部と、前記第1部分の先端側の頂端部分と、を有し、前記頂端部分は、第2の部分を定義し、前記第2の部分は、前記第1部分よりも軟性であり、前記第1部分から前記第2部分に形成されたルーメンと、前記第2部分の壁に設けられ、前記ルーメンと連通する少なくとも1つの開口と、を備えた医療用チューブと、を有し、前記医療用チューブの外径は、処置具挿通チャンネルの内径よりも小さい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、結石片を腎盂内へ容易に移動させて、結石の回収を容易に行うことができる医療用チューブ及び内視鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態の医療システムの構成図である。
【
図2】本実施の形態に係わる、内視鏡と送水吸水装置との接続関係を示す図である。
【
図3】本実施の形態に係わる、内視鏡の挿入部が挿入される腎臓までの経路を説明するための図である。
【
図4】本実施の形態に係わる、送水チューブの先端部分の正面図である。
【
図5】本実施の形態に係わる、送水チューブの中心軸に沿った断面図である。
【
図6】本実施の形態に係わる、腎臓の腎杯内の結石を除去する手技の流れを示すフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に係わる、腎臓の腎杯内の結石を除去する手技の流れを示すフローチャートである。
【
図8】本実施の形態に係わる、ガイドワイヤが腎臓内まで挿通された状態を示す図である。
【
図9】本実施の形態に係わる、アクセスシースが尿管内まで挿通された状態を示す図である。
【
図10】本実施の形態に係わる、下腎杯内の結石にレーザファイバの先端を近づけた状態を示す図である。
【
図11】本実施の形態に係わる、下腎杯内まで挿入部の先端部が挿入された状態で、処置具開口から送水チューブの先端側部分が突出した状態を示す図である。
【
図12】本実施の形態に係わる、挿入部の先端部が腎盂内に位置するまで引き抜かれた状態を示す図である。
【
図13】本実施の形態に係わる、結石片が下腎杯内から腎盂内へ移動することを説明するための図である。
【
図14】本実施の形態に係わる、送水と吸水をそれぞれのシリンジを用いて行う場合の内視鏡と、2つのシリンジとの接続関係を示す図である。
【
図15】本実施の形態に係わる、アクセスシースを用いて吸水を行う場合の、内視鏡とアクセスシースと送水吸水装置との接続関係を示す図である。
【
図16】本実施の形態に係わる、尿管ステントが尿管内に留置された状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施の形態の医療システムの構成図である。
【0014】
医療システム1は、患者の腎臓内にある腎臓結石(以下、単に結石ともいう)の砕石及び除去を行うためのシステムである。医療システム1は、内視鏡装置2と、送水吸水装置3と、X線装置4と、レーザ装置5と、バスケット鉗子6とを含む。
【0015】
内視鏡装置2は、内視鏡11と、本体装置12と、モニタ13とを含む。内視鏡11は、挿入部14と、操作部15と、接続ケーブル16を有する軟性尿管鏡である。接続ケーブル16の基端部にはコネクタ(図示せず)が設けられている。そのコネクタは、本体装置12に接続可能となっている。モニタ13は、ケーブル13aを介して本体装置12と接続されている。挿入部14は、先端から、先端部17、湾曲部18及び可撓管部19を有している。先端部17の先端面には、後述する
図2に示すように、観察窓17a、2つの照明窓17b及び処置具開口17cが設けられている。また、内視鏡11は、処置具挿通チャンネル14aを有している。
【0016】
先端部17の観察窓17aを通して得られた被検体の像は、モニタ13に表示される。モニタ13に表示される被検体内の内視鏡画像を見ながら、術者は、操作部15にある湾曲レバー15a(
図2)を操作することにより湾曲部18を湾曲させながら、被検体内に挿入部14を挿入し、結石の有無を確認することができる。また、術者は、操作部15にある各種機能が割り当てられた操作ボタン15b(
図2)を操作することにより、録画などの各種機能を実行することができる。
【0017】
送水吸水装置3には、送水チューブ21と吸水チューブ22が接続されている。送水チューブ21は、処置具挿通チャンネル14a内に挿通可能となっている。後述するように、内視鏡11の処置具挿通チャンネル14aに挿通された送水チューブ21に生理食塩水を送水すると共に、吸水チューブ22を介して被検体内に供給された生理食塩水を吸引
するための装置である。
【0018】
X線装置4は、X線管31と、検出器32と、本体装置33と、モニタ34を有している。X線管31と検出器32は、それぞれケーブル31aと32aを介して本体装置33と接続されている。モニタ34は、ケーブル34aを介して本体装置33と接続されている。X線管31と検出器32は、ベッド上の被検体の腎臓、尿管などの臓器のX線透過画像が得られる位置にセットされる。
【0019】
X線管31から出射されたX線は、被検体を通って検出器32により受信され、検出信号は、本体装置33に出力される。本体装置33は、検出信号に基づいて、X線透過画像を生成して、生成したX線透過画像の画像信号をモニタ34に出力する。
【0020】
レーザ装置5は、レーザファイバ41と、本体装置42とを有している。レーザファイバ41は、内視鏡11の処置具挿通チャンネル14a内に挿通可能なサイズと形状を有している。本体装置42は、レーザ光を生成する光源(図示せず)を有し、生成したレーザ光は、レーザファイバ41を通して先端から出射可能となっている。
【0021】
バスケット鉗子6は、先端にバスケット6aを有し、基端にハンドル6bを有するバスケット型処置具である。バスケット6aとハンドル6bの間には、バスケット6aのためのワイヤが挿通されたシース6cが設けられている。
【0022】
術者は、モニタ34に表示されるX線透過画像を見て、内視鏡11の挿入部14の先端部17、送水チューブ21の先端、レーザファイバ41の先端、等々の位置を確認しながら、送水、レーザ光による結石の砕石などの各種処理を行うことができる。
【0023】
図2は、内視鏡11と送水吸水装置3との接続関係を示す図である。
【0024】
まず、内視鏡11の構成について説明する。内視鏡11の操作部15には、湾曲レバー15aが設けられている。術者は、湾曲レバー15aを操作することにより、湾曲部18を上下方向に湾曲させることができる。この上下方向とは、モニタ13に表示される内視鏡画像における上下方向に対応する。
【0025】
操作部15には、2つの操作ボタン15bも設けられている。各操作ボタン15bには、内視鏡11の有する各種機能が、ユーザである術者によって割り当て可能となっている。
【0026】
さらに、内視鏡11の操作部15には、処置具挿入口15cが設けられている。処置具挿入口15cは、挿入部14内の処置具挿通チャンネル14aと繋がっている。
【0027】
内視鏡11の先端部17の先端面には、観察窓17a、照明窓17b及び処置具開口17cが設けられている。照明窓17bから照明光が出射される。観察窓17aには、被検体内の観察部位からの照明光の反射光が入射する。観察窓17aに入射した光は、観察窓17aの後ろ側に配置された撮像素子(図示せず)の撮像面に入射する。撮像素子は、撮像信号は、挿入部14、操作部15及び接続ケーブル16内に挿通された信号線を介して本体装置12に供給される。
【0028】
操作部15の処置具挿入口15cは、処置具挿通チャンネル14aを介して、先端部17の処置具開口17cと連通している。
【0029】
処置具挿入口15cは、処置具を挿通するための開口であり、T字管55が接続可能となっている。術者は、T字管55のレバーを操作することによって、T字管55内の液体の流れのルートを変更することができる。
【0030】
なお、T字管55は、一点鎖線で示すように、後述するプロセッサ53からの制御信号によってT字管55内の液体の流れの方向を制御するレバーの切替が制御可能なものでもよい。
【0031】
次に、送水吸水装置3の構成について説明する。
【0032】
送水吸水装置3は、送水ポンプ51と、吸水ポンプ52と、プロセッサ53とを有している。送水ポンプ51には、生理食塩水を貯留する生食バッグ54が接続されている。送水吸水装置3は、図示しない操作パネルを有し、術者は、操作パネルを操作することにより、送水の開始などの所望の機能を実行することができる。
【0033】
送水ポンプ51と吸水ポンプ52は、プロセッサ53と接続されている。送水ポンプ51と吸水ポンプ52は、プロセッサ53の制御下で動作可能となっている。送水チューブ21の基端部は、送水ポンプ51に接続されている。吸水チューブ22の基端部は、吸水ポンプ52に接続されている。
【0034】
送水チューブ21の先端部は、T字管55の1つのポートから処置具挿通チャンネル14a内に挿通可能となっている。
【0035】
吸水チューブ22の先端部は、T字管55の他の1つのポートに接続可能となっている。
【0036】
T字管55の残りの1つのポートは、内視鏡11の処置具挿入口15cに接続可能となっている。
【0037】
プロセッサ53は、中央処理装置(CPU)、ROM、RAMなどを含む。CPUは、ROMに記憶された所定の制御プログラムを読み出してRAMに展開して、操作パネルに入力された術者のコマンドに応じて読み出したプログラムを実行することにより、各種機能が実現される。
【0038】
送水ポンプ51が動作すると、生食バッグ54からの生理食塩水を送水チューブ21のルーメン内へ送水する。
【0039】
吸水ポンプ52が動作すると、吸水チューブ22を介して処置具挿通チャンネル14a内の液体を吸引する。
【0040】
以上のように、術者は、T字管55を介して、送水チューブ21を処置具挿入口15cから処置具挿通チャンネル14a内に挿通させることができる。
【0041】
なお、術者は、送水チューブ21を抜いて、T字管55を介して、バスケット鉗子6を処置具挿通チャンネル14a内に挿通させることができる。
【0042】
図3は、内視鏡11の挿入部14が挿入される腎臓KDまでの経路を説明するための図である。
【0043】
挿入部14は、図示しない尿道から挿入される。挿入部14は、膀胱BLと尿管UDを通って、挿入部14の先端部分は、腎臓KD内に到達させることができる。
【0044】
腎臓KDは、腎盂RPを有する。腎臓KDは、さらに腎盂RPから分岐する複数の腎杯RCを有する。腎盂RP内は、腎杯RCに比べて広い空間を有する。腎杯RCは、腎臓KDの管腔抹消部である。
【0045】
術者は、モニタ34に表示されるX線透過画像を見ながら、内視鏡11の挿入部14の先端部17を、腎盂RPを経由して各腎杯RC内に挿入することができる。
【0046】
腎杯RCの中でも、下腎杯RCdへの内視鏡11の挿入は、湾曲部18を大きく湾曲させなければならず、術者にとって容易ではない。これに対して、下腎杯RCd以外の上腎杯RCuなどの腎杯RCへの内視鏡11の挿入は、湾曲部18を大きく湾曲させなくてもよいため、下腎杯RCdへの内視鏡11の挿入に比べて困難ではない。
【0047】
(送水チューブの構造)
図4は、送水チューブ21の先端部分の正面図である。
図5は、送水チューブ21の中心軸CXに沿った断面図である。
【0048】
送水チューブ21は、医療用チューブであって、中空のルーメン21aを有するチューブ部材である。中空のルーメン21aは、生理食塩水が通るチャンネルを構成する。送水チューブ21は、先端側に、柔らかい先端側部分21bと、先端側部分21bの基端に続くやや硬い基端側部分21cを有する。
【0049】
すなわち、送水チューブ21は、基端側部分21cと、その基端側部分21cの先端側であって、基端側部分21cよりも軟性な先端側部分21bと、を有する。ルーメン21aは、基端側部分21cから先端側部分21bに伸びて形成されている。
【0050】
送水チューブ21の先端には、球状部21dが設けられている。球状部21d内には、金属部材21d1が内蔵されている。よって、送水チューブ21は、先端から、球状部21d、先端側部分21b、基端側部分21cを有している。送水チューブ21の先端部分の表面が曲面を有しているので、被検体内の表面(例えば生体組織)を傷つけることが防止される。
【0051】
球状部21dを含む送水チューブ21は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの樹脂製である。送水チューブ21の基端側部分21cの薄肉部内には、金属ブレード21eが内蔵されている。金属ブレード21eは、金属素線(金属線)を編み込んで形成された網状部材である。金属ブレード21eは、先端側部分21bの薄肉部内に設けられていない。言い換えると、送水チューブ21は、先端側部分21b以外の部分に金属ブレード21eが内蔵されている。
【0052】
金属ブレード21eが基端側部分21cの薄肉部内に設けられることにより、基端側部分21cは、可撓性を有するが、やや曲がりにくい。よって、送水チューブ21の基端部分を術者が手で把持しながら、腎杯RC内などに押し込むことができる。
【0053】
これに対して、先端側部分21bの薄肉部内には、金属ブレード21eは内蔵されていない。よって、先端側部分21bは、可撓性を有するが、外力を受けると曲がり易い。
【0054】
球状部21d内の金属部材21d1及び基端側部分21c内の金属ブレード21eは、X線装置4によるX線透過画像中に送水チューブ21が撮像されるようにするためである。なお、先端側部分21bに、金属ブレード21eよりも柔らかい金属線を埋め込み、先端側部分21bも、X線装置4によるX線透過画像中に撮像されるようにしてもよい。
【0055】
先端側部分21bの先端には、複数の開口21fが設けられている。各開口21fは、ルーメン21aと連通している。複数の開口21fは、送水チューブ21の中心軸CX回りに均等に配置されている。各開口21fは、送水チューブ21の中心軸CXに交差する軸に沿って形成されている。
【0056】
図4及び
図5は、3つの開口21fが中心軸CX回りに120度間隔で先端側部分21bに設けられている例を示す。
【0057】
なお、複数の開口21fは、中心軸CX方向においてずれて配置されていてもよい。
【0058】
複数の開口21fを中心軸CX回りに周方向に設けているのは、開口21fが1つだけであると、例えば下腎杯RCdの内壁に接触した場合、その1つの開口21fが塞がれると、生理食塩水の送出ができなくなく虞があるからである。よって、生理食塩水の送出は、3つの開口21fの少なくとも1つから行われる。
【0059】
また、複数の開口21fが、先端側部分21bにおいて、球状部21dの近傍に設けられているのは、例えば下腎杯RCdの内壁に送水チューブ21が押し当てられても、開口21fと内壁の間に隙間ができるので、開口21fが完全に塞がれないようにするためである。
【0060】
なお、送水チューブ21の複数の開口21fが設けられている部分は、強度が弱くなるので、球状部21dと先端側部分21bとの接続部分に、
図5において点線で示すように、金属製の線状部材21f1を内蔵するようにしてもよい。
【0061】
内視鏡11の挿入部14の外径などのサイズの例を説明する。内視鏡11の挿入部14の外径は、例えば、3mmである。処置具挿通チャンネル14aの内径は、例えば、1.2mmである。
【0062】
球状部21dの先端から先端側部分21bの基端21beまでの長さは、例えば腎杯RCの奥から腎杯RCの入口部分までの長さよりも短い。すなわち、先端側部分21bは、球状部21dが例えば下腎杯RCdの奥にあるとき、先端側部分21bの基端21beが下腎杯RCdの入口部分内に位置する長さを有する。
【0063】
これは、送水チューブ21の球状部21dが腎杯RC内の奥に到達した後に送水チューブ21を押し込んだ場合にも、その腎杯RC内へ先端側部分21bを適切に押し込めるようにするためである。
【0064】
例えば、球状部21dの先端から先端側部分21bの基端21beまでの長さは、0.5cmから3cmである。
【0065】
送水チューブ21の外径は、処置具挿通チャンネル14aの内径よりも小さい。送水チューブ21は、例えば、その外径が1mm以下で、内径(すなわちの内部のルーメン21aの内径)は、0.6mm以下である。球状部21dの外形は、例えば1.1mmである。
【0066】
なお、複数の開口21fの開口面積の和をなるべく小さくすることにより、複数の開口21fから流出する生理食塩水の流速が速くなるようにしている。
【0067】
腎杯RCの入口部分(狭窄部)の内径は、3.5mmから5mm程度である。腎杯RCの奥は、一般的に入口部分の内径よりは大きい幅を有することが多い。
(手技)
【0068】
次に、上述した医療システムを用いた結石除去の手技を説明する。
【0069】
図6および
図7は、腎臓KDの腎杯RC内の結石を除去する手技の流れを示すフローチャートである。
【0070】
術者は、経尿道的に膀胱から尿管UDを通って、腎臓KD内までガイドワイヤGWを挿入する(ステップ(以下、Sと略す)1)。
図8は、ガイドワイヤGWが腎臓KD内まで挿通された状態を示す図である。
【0071】
なお、ガイドワイヤGWは、硬性膀胱鏡下で尿管口に挿入してもよいし、軟性膀胱鏡下で尿管口に挿入するようにしてもよい。
【0072】
必要に応じて、術者は、X線装置4のX線透視画像(静止画又は動画)を見て、ガイドワイヤGWの迷入がないかを確認したり、ガイドワイヤGWの到達位置を確認したりする。
【0073】
さらに、必要に応じて、術者は、上部尿路(尿管UD、腎盂RP及び腎杯RC)の造影をしてもよい。このとき、術者は、ガイドワイヤGWに沿って、カニューラを尿管UD内に挿入して造影剤を注入したり、ガイドワイヤGWに沿って、硬性尿管鏡を尿管UD内に挿入して造影剤を注入したりしてもよい。
【0074】
術者は、尿管UD用のアクセスシースASを、ガイドワイヤGWに沿って挿入する(S2)。アクセスシースASは、尿道から尿管UDの範囲に亘って留置される。
図9は、アクセスシースASが尿管UD内まで挿通された状態を示す図である。
【0075】
術者は、必要に応じてX線透視画像をみながら、アクセスシースASの迷入がないかの確認、及びアクセスシースASの先端部分の到達位置の確認をする。
【0076】
術者は、ガイドワイヤGWを抜去してから、アクセスシースAS内に内視鏡11の挿入部14を挿入し、移動させたい結石のある腎杯RC内まで挿入部14の先端部17を挿入する(S3)。
【0077】
なお、アクセスシースASを用いずに、ガイドワイヤGWに沿って挿入部14を挿入するようにしてもよい。
【0078】
術者は、モニタ13に表示される内視鏡画像を見ながら、結石を確認する(S4)。
【0079】
術者は、砕石が必要かを判断する(S5)。すなわち、腎杯RC内から結石を、後述するように送液により流し出すには、結石が大き過ぎるかが判断される。
【0080】
砕石が必要な場合すなわち結石が腎杯RC内から流し出すには大き過ぎる場合(S5:YES)、術者は、腎杯RC内で結石を砕く(S6)。
【0081】
図10は、下腎杯RCd内の結石STにレーザファイバ41の先端を近づけた状態を示す図である。
図10の状態で、砕石することにより、結石STは、複数の砕石片に分かれ、腎杯RC内から結石を流し出すことが可能なサイズになる。細かくなった砕石片は、自然に腎盂RP内に移動して、尿管UDを通って体外に排出される。
【0082】
しかし、大きなサイズの結石片ST1は、さらなる砕石を行うために、腎杯RC内から腎盂RPへ移動させる必要がある。結石片ST1は、例えば最大2~3mmの大きさを有する。
【0083】
例えば、結石片ST1が上腎杯RCu内にあるときは、挿入部14の湾曲部18の湾曲操作における湾曲量は大きくないため、レーザファイバ41により砕きやすい。しかし、下腎杯RCd内の結石片ST1は、湾曲部18の湾曲操作における湾曲量は大きいため、レーザファイバ41により結石片ST1を完全に砕石することは、術者にとっては容易ではない。その理由としては、湾曲部18の湾曲角が足りず腎杯RC内全体にある結石のうち一部分にはレーザ光が当たらず、結ST石の一部分が割れずに残ってしまうことなどが考えられる。そのため、下腎杯RCd内の結石片ST1の砕石は、腎盂RP内あるいは上腎杯RCu内に移動させた後に、行う方が砕石の処置がし易く、残石が少なく、処置時間も短くなる。
【0084】
そこで、結石片ST1が下腎杯RCd内にあるときは、術者は、送水チューブ21を内視鏡11の処置具挿通チャンネル14a内に挿通して、モニタ13に表示される内視鏡画像で送水チューブ21の先端部分の位置を確認しながら、送水チューブ21の先端部分を腎杯RC、ここでは下腎杯RCd、内の奥まで押し込む(S7)。すなわち、腎杯RC内に送水チューブ21の先端部分が挿入される。
【0085】
図11は、下腎杯RCd内まで挿入部14の先端部17が挿入された状態で、処置具開口17cから送水チューブ21の先端側部分21bが突出した状態を示す図である。
【0086】
術者は、送水チューブ21の先端をなるべく動かさないようにするために内視鏡11に対して送水チューブ21を押し込みながら、挿入部14の先端部17が腎盂RP内に位置するまで挿入部14を尿管UD側へ引き抜く(S8)。
【0087】
図12は、挿入部14の先端部17が腎盂RP内に位置するまで引き抜かれた状態を示す図である。
【0088】
術者は、必要に応じてX線透視画像を見ながら、送水チューブ21の先端が目的の下腎杯RCd内にあることの確認し、かつ目的の下腎杯RCd内において送水チューブ21の先端の位置が結石片ST1よりも奥にあることを確認する。
【0089】
このときにも、必要に応じて、術者は、処置具挿通チャンネル14aから造影剤を注入することにより、腎盂RP及び下腎杯RCdの形状を確認するようにしても良い。
【0090】
さらに、術者は、必要に応じて、内視鏡11を操作したり、処置具挿通チャンネル14a内の送水チューブ21を進退させたりすることにより、送水チューブ21の先端の位置を調整する(S9)。すなわち、術者は、送水チューブ21の先端部分の位置決めを行う。この送水チューブ21の先端部分を位置決めは、内視鏡11の挿入部14の先端部17を下腎杯RCd内から出した後に行われる。
【0091】
術者は、送水チューブ21の先端部分の位置決めを、送水チューブ21の先端部分を下腎杯RCdの内壁に接触させることにより、送水チューブ21の先端部分の軟性部分である先端側部分21bを変形させて行う。
【0092】
このとき、術者は、送水チューブ21の進退操作だけでなく、送水チューブ21の中心軸CX回りに送水チューブ21を回動させることにより、送水チューブ21の先端部分の位置決めを行うこともできる。
【0093】
S9のときにも、術者は、必要に応じてX線透視画像を見ながら、送水チューブ21の先端と結石片ST1の位置関係を確認し、送水チューブ21の先端と結石片ST1の位置と下腎杯RCdの形状との配置を確認する。すなわち、下腎杯RCd内に送水チューブ21の先端部分を挿入したときに、術者は、X線透視画像を参照しながら、下腎杯RCd内における送水チューブ21の先端部分の位置決めを行う。このとき、必要に応じて処置具挿通チャンネル14aから注入した造影剤により、術者は、腎盂RP及び下腎杯RCdの形状を確認することも可能である。
【0094】
次に、術者は、送水チューブ21から生理食塩水を送出し、モニタ13に表示される内視鏡画像を見て、目的の結石片ST1が腎盂RP内に移動したことを確認する(S10)。すなわち、術者は、送水チューブ21のルーメン21aを通して下腎杯RCd内に生理食塩水の液体を送出する。結石片ST1が腎盂RPへ移動すると、モニタ13に表示される内視鏡画像により、術者は、結石片ST1が腎盂RP内に移動したことを確認することができる。
【0095】
下腎杯RCd内への生理食塩水の送出は、送水チューブ21の先端部分の側面に設けられた3つの開口21fを通して行われる。
【0096】
図13は、結石片ST1が下腎杯内から腎盂RP内へ移動することを説明するための図である。送水チューブ21の先端は、下腎杯RCd内の奥に位置している。そのため、送水チューブ21の先端部の複数の開口21fから勢いよく吐出した生理食塩水は、下腎杯RCdの奥から腎盂RPへ向けて流出する。
【0097】
このとき、送水チューブ21の先端部から流出する生理食塩水により、下腎杯RCd内に矢印FLで示すような生理食塩水の流れが発生する。結石片ST1は、その流れに沿って下腎杯RCd内から腎盂RP内へ移動する。この結石片ST1の移動先は、他の腎杯RC内でもよい。
【0098】
下腎杯RCdは、入口部分の狭窄部が狭く、例えば3.5mmしかない場合もある。挿入部14の外径が3mmであると、挿入部14の外周面と下腎杯RCdの内壁の間の隙間は、ほとんどない。
【0099】
しかし、ここでは、挿入部14の先端部17は、下腎杯RCdの外にあり、外径が1mmの送水チューブ21だけが下腎杯RCd内に挿入されているため、送水チューブ21の外周面と下腎杯RCdの内壁の間の隙間は広く、結石片ST1が通過可能である。送水チューブ21による送水により、下腎杯RCdの内壁と送水チューブ21の先端部分の外周面との間の隙間から下腎杯RCd内の結石片ST1が流れ出る。
【0100】
すなわち、挿入部14の先端部17を腎盂RP内に位置させ、送水チューブ21の先端部分だけが下腎杯RCd内に位置するようにして、生理食塩水を下腎杯RCd内に送水することにより、生理食塩水の水流の力で結石片ST1を下腎杯RCd内から腎盂RP内へ移動させることができる。腎盂RP内の結石片ST1のさらなる砕石は、術者にとっては、困難ではない。
【0101】
なお、術者は、必要に応じてX線透視画像をみて、破砕すべき結石片ST1の位置を確認してもよい。必要に応じて、術者は、処置具挿通チャンネル14aから造影剤を注入することにより、腎盂RP及び下腎杯RCdの形状を確認するようにしても良い。
【0102】
また、S10において、送水チューブ21から生理食塩水を送出するとき、内視鏡11の処置具挿通チャンネル14aから生理食塩水の吸引を行うようにしてもよい。すなわち、下腎杯RCd内に生理食塩水を送出しているときに、腎臓KD内の生理食塩水の吸引も行うようにしてもよい。
【0103】
上記のS10における生理食塩水を下腎杯RCd内に送出して、結石片ST1を腎盂RP内へ移動させるとき、流速が速くなるため、送水流量も増える。腎臓KD内へ送水された生理食塩水は、内視鏡11の挿入部14の外周面と尿管UDの内壁の間から自然に排水されるが、その自然の排水速度が送水量と一致しないと腎臓KD内の圧力が一時的に高くなる場合がある。
【0104】
そこで、流速が速いときには、吸水ポンプ52も駆動して処置具挿通チャンネル14aをからの吸水が実行される。
【0105】
送水は、操作パネルに対する術者のコマンド入力に応じて行われるが、吸水は、その送水と同時に行うように、プロセッサ53は、送水ポンプ51と同時に吸水ポンプ52を駆動する。
【0106】
吸水ポンプ52が駆動すると吸水チューブ22を介して処置具挿通チャンネル14a内の吸引が行われ、生理食塩水は、
図13において矢印FL1(一点鎖線)で示すように、処置具挿通チャンネル14aを通って腎盂RP内から排出され、廃液タンク(図示せず)に溜まる。
【0107】
なお、吸水は、送水ポンプ51の動作中である送水中だけでなく、送水後も所定時間だけ行うようにしてもよい。すなわち、下腎杯RCd内への生理食塩水の送出が終了した後に、所定時間だけ生理食塩水の吸引を継続するようにしてもよい。
【0108】
プロセッサ53が送水ポンプ51と吸水ポンプ52の駆動を制御する。プロセッサ53は、操作パネルにおいて送水実行が指示されると、送水ポンプ51を駆動すると共に、吸水ポンプ52も駆動する。
【0109】
吸水ポンプ52の吸引量は、送水ポンプ51の送水量と同じになるように、プロセッサ53は、送水ポンプ51と吸水ポンプ52の駆動を制御する。
【0110】
なお、吸引量を、送水量よりも所定量だけ少なくして、腎臓KD内の内圧を一時的に上げて、腎杯RCの入口部分の狭窄部を広げるようにして、結石片ST1が狭窄部を通り易くするようにしてもよい。
【0111】
この場合、結石片ST1が狭窄部を通過した後、送水は停止するが、吸水は所定時間だけ継続させる。これにより、腎臓KDの腎盂RP内内の圧力を短時間で正常圧まで戻すことができる。
【0112】
以上のように、送水チューブ21から生理食塩水を送出するとき、内視鏡11の処置具挿通チャンネル14aから生理食塩水の吸引を行うようにしてもよい。吸水を行うことにより、腎内圧の上昇による術後の発熱などを防止することができる。
【0113】
なお、送水と吸水は、それぞれ送水ポンプ51と吸水ポンプ52を用いないで、2つのシリンジを用いるようにしてもよい。
【0114】
図14は、送水と吸水をそれぞれのシリンジを用いて行う場合の内視鏡11と、2つのシリンジとの接続関係を示す図である。シリンジ61が送水チューブ21に接続される。シリンジ62が吸水チューブ22に接続される。
【0115】
図14に示すように、術者は、送水を行うときは、シリンジ61のプランジャを押し、吸水を行うときは、シリンジ62のプランジャを引く。よって、シリンジ62による吸水は、シリンジ61による送水と同時に行われる。
【0116】
また、吸水は、アクセスシースASを用いて行うようにしてもよい。
【0117】
図15は、アクセスシースASを用いて吸水を行う場合の、内視鏡11とアクセスシースASと送水吸水装置3との接続関係を示す図である。
【0118】
アクセスシースASの一端には、弁付きのT字管55Aが設けられている。挿入部14は、T字管55Aの第1のポートから挿入され、アクセスシースAS内に挿通可能となっている。
【0119】
なお、T字管55Aも、一点鎖線で示すように、プロセッサ53からの制御信号により流れの方向を制御するレバーの切替が制御可能なものでもよい。
【0120】
吸水チューブ22の基端は吸水ポンプ52に接続され、吸水チューブ22の他端は、T字管55Aの第2のポートに接続される。
【0121】
このように接続することにより、吸水ポンプ52が駆動すると、アクセスシースAS内の生理食塩水が吸水ポンプ52により吸引される。
図13において、一点鎖線の矢印FL2で示すように、アクセスシースASの内壁と挿入部14の外周面との隙間から生理食塩水が吸水される。
【0122】
図15の場合も、送水ポンプ51が駆動すると、吸水ポンプ52も駆動される。
図15の場合も、吸水ポンプ52は、送水ポンプ51が停止した後も、所定時間だけ動作を継続していてもよい。
【0123】
結石片ST1が腎盂RP内に移動したことを確認すると、術者は、送水チューブ21を処置具挿通チャンネル14a内から抜去する(S11)。
【0124】
術者は、内視鏡11の処置具挿通チャンネル14aからの送水により、結石片ST1を腎盂RP内(あるいは他の腎杯RC内)の所望の位置に移動する(S12)。
【0125】
術者は、レーザファイバ41を処置具挿通チャンネル14a内に挿通して、モニタ13に表示される内視鏡画像を見ながら、結石片ST1を砕く(S13)。なお、腎盂RP内の結石片ST1は、バスケット鉗子6を用いて除去してもよい。
【0126】
術者は、内視鏡11の挿入部14をアクセスシースAS内から抜去する(S14)。
【0127】
術者は、必要に応じて、尿管ステントUSを尿管UD内に留置する(S15)。
【0128】
図16は、尿管ステントUSが尿管UD内に留置された状態を説明するための図である。
【0129】
なお、術者は、必要に応じてX線透視画像をみて、尿管ステントUSの位置を確認してもよい。
【0130】
なお、上述した実施の形態では、X線装置を用いた透視画像を用いて、送水チューブ21の位置決めなどを行っているが、磁場を用いた画像を用いて、送水チューブ21の位置決めなどを行うようにしてもよい。
【0131】
以上のように、上述した実施の形態によれば、結石の移動を容易に行うことができる管腔抹消部の結石を除去する方法、医療用チューブ及び内視鏡システムを提供することができる。
【0132】
従来、腎杯RC中に比較的大きな結石STがある場合、結石STは、レーザファイバ41のレーザ光の照射により、細かく破壊される。細かく砕かれた結石は、自然の尿管を通って体外に排出されるが、比較的大きな結石片ST1は、バスケット型処置具により把持されて、結石片ST1を把持したバスケット型処置具と挿入部14とが一体的にアクセスシースASから抜去されることにより、体外に摘出されて、回収される。
【0133】
特に、結石STが下腎杯RCd内などにある場合、術者は、挿入部の湾曲部を大きく湾曲させながら、レーザ光で結石を全て細かく砕かなければならないので、結石STの破砕は容易ではない。そのような場合、バスケット鉗子6で結石STを回収することもできるが、バスケット鉗子6で結石STを腎盂RP内に移動させ、バスケット鉗子6を内視鏡11の処置具チャンネル14aから出して、次にレーザファイバを処置具チャンネルに挿通してレーザで腎盂RP内の結石の破砕を行う場合もある。しかし、バスケット鉗子6を用いて結石STを下腎杯RCdから腎盂RP内へ移動させる操作も容易ではない。
【0134】
そのため、結石STが下腎杯RCd内などにある場合、術者は、結石STの回収は容易ではなく、手術に時間が掛かっていた。
【0135】
これに対して、上述した実施の形態によれば、例えば結石STが下腎杯RCd内にある場合、結石STを腎盂RPへ移動できるサイズまで小さく破砕できれば、その後は、送水チューブ21を利用して、結石片ST1を腎盂RP内へ容易に移動させることができる。結石片ST1が腎盂RP内に移動されれば、レーザ光により結石片ST1をより小さく砕くことが可能となるので、結石STの回収を容易に行うことができる。
【0136】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0137】
1…医療システム
2…内視鏡装置
3…送水吸水装置
4…X線装置
5…レーザ装置
6…バスケット鉗子
6a…バスケット
6b…ハンドル
6c…シース
11…内視鏡
12…本体装置
13…モニタ
13a…ケーブル
14…挿入部
14a…処置具挿通チャンネル
15…操作部
15a…湾曲レバー
15b…操作ボタン
15c…処置具挿入口
16…接続ケーブル
17…先端部
17a…観察窓
17b…照明窓
17c…処置具開口
18…湾曲部
19…可撓管部
21…送水チューブ
21a…ルーメン
21b…先端側部分
21be…基端
21c…基端側部分
21d…球状部
21d1…金属部材
21e…金属ブレード
21f…開口
21f1…線状部材
22…吸水チューブ
31…X線管
31a…ケーブル
32…検出器
33…本体装置
34…モニタ
34a…ケーブル
41…レーザファイバ
42…本体装置
51…送水ポンプ
52…吸水ポンプ
53…プロセッサ
54…生食バッグ
55,55A…T字管
61,62…シリンジ
AS…アクセスシース
BL…膀胱
CX…中心軸
GW…ガイドワイヤ
KD…腎臓
RC…腎杯
RCd…下腎杯
RCu…上腎杯
RP…腎盂
ST…結石
ST1…結石片
UD…上部尿路(尿管)
US…尿管ステント