(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020968
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】風呂装置、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20230202BHJP
F24H 15/223 20220101ALI20230202BHJP
F24H 15/215 20220101ALI20230202BHJP
F24H 15/156 20220101ALI20230202BHJP
F24D 18/00 20220101ALI20230202BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20230202BHJP
F24H 4/02 20220101ALI20230202BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20230202BHJP
F24D 101/30 20220101ALN20230202BHJP
【FI】
F24H15/196 301H
F24H15/223
F24H15/215
F24H15/156
F24D18/00
F24H1/00 631A
F24H4/02 C
F24H1/00 621G
F24H1/18 D
F24D101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115795
(22)【出願日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2021125044
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】早川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】玉井 淳基
(72)【発明者】
【氏名】盤若 明日香
(72)【発明者】
【氏名】南 和徹
(72)【発明者】
【氏名】白木 壮哉
(72)【発明者】
【氏名】松本 亮
【テーマコード(参考)】
3L024
3L122
【Fターム(参考)】
3L024CC16
3L024DD03
3L024DD22
3L024DD24
3L024DD50
3L024EE03
3L024EE16
3L024GG01
3L024GG07
3L024GG22
3L024GG23
3L024HH12
3L122AA02
3L122AA13
3L122AA23
3L122AA24
3L122AA28
3L122AA54
3L122AA63
3L122AA64
3L122AA73
3L122AB02
3L122AB12
3L122AB22
3L122AB41
3L122AD06
3L122BA02
3L122BA04
3L122BA13
3L122CA13
3L122DA02
3L122DA13
3L122DA33
3L122EA01
3L122EA03
3L122EA50
3L122EA76
3L122FA02
3L122FA07
(57)【要約】
【課題】蓄熱槽の蓄熱容量の大小に関わらず、先行湯張りに伴う先行湯張り回数や蓄熱槽からの払出量を適切なものとして、当該蓄熱槽に蓄熱された熱量を有効に利用する。
【解決手段】制御装置50は、蓄熱槽2の容積、給水温、蓄熱槽2が満蓄である場合の蓄熱水の温度である満蓄温度、及び先行湯張り運転における目標の先行湯張り温度に基づいて、満蓄温度が給水温になるまでの、蓄熱槽2からの見込みの払出量である見込払出量を算出し、満蓄状態の蓄熱槽2の満蓄温度が給水温になるまで浴槽Bへ湯水を供給することを1回とカウントする先行湯張り回数を、目標湯張り状態における目標湯張り量に対する見込払出量の比率が小さいほど増加させる形態で設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、前記蓄熱槽の前記蓄熱水を用いて湯水を浴槽に供給する湯水供給作動を行う湯水供給手段と、前記浴槽の湯張り状態が目標湯張り状態となるように前記湯水供給手段を湯水供給作動させる湯張り運転を行う運転制御手段とが設けられている風呂装置であって、
前記運転制御手段は、前記湯張り運転を行うよりも先行して、前記浴槽の湯張り状態が前記目標湯張り状態に達する前の先行湯張り状態になるように前記湯水供給手段を湯水供給作動させる先行湯張り運転を行うように構成され、
前記蓄熱槽の容積、給水温、前記蓄熱槽が満蓄である場合の前記蓄熱水の温度である満蓄温度、及び前記先行湯張り運転における目標の先行湯張り温度に基づいて、前記満蓄温度が前記給水温になるまでの、前記蓄熱槽からの見込みの払出量である見込払出量を算出し、
満蓄状態の前記蓄熱槽の前記満蓄温度が前記給水温になるまで前記浴槽へ前記湯水を供給することを1回とカウントする先行湯張り回数を、前記目標湯張り状態における目標湯張り量に対する前記見込払出量の比率が小さいほど増加させる形態で設定し、
設定した前記先行湯張り回数に基づいて、前記湯張り運転に先行して、前記先行湯張り運転を行い前記浴槽を前記蓄熱槽として使用する風呂装置。
【請求項2】
前記運転制御手段は、前記見込払出量であるVpを以下の〔式1〕に基づいて決定する請求項1に記載の風呂装置。
Vp=(Tα-Ts)×Vm/(Tb-Ts) ・・・〔式1〕
ただし、Tαを前記満蓄温度、Tsを前記給水温、Vmを前記蓄熱槽の容積、Tbを目標の前記先行湯張り温度とする。
【請求項3】
前記運転制御手段は、前記先行湯張り回数が1回より多い場合、前記先行湯張り回数を、前記見込払出量と前記先行湯張り回数との積算値が前記目標湯張り量以下となるよう設定する請求項1又は2に記載の風呂装置。
【請求項4】
前記運転制御手段は、前記蓄熱槽の前記蓄熱水を、熱電併給装置、ヒートポンプ給湯装置、太陽熱温水装置の何れか1つ又は複数で加熱して前記蓄熱槽に蓄熱する請求項1又は2に記載の風呂装置。
【請求項5】
前記運転制御手段は、
前記目標湯張り量に対する前記見込払出量の比率が1/2以上の場合は、前記先行湯張り回数を1回に設定し、
前記目標湯張り量に対する前記見込払出量の比率が1/n未満かつ1/(n+1)以上の場合は、前記先行湯張り回数をn回に設定する請求項1又は2に記載の風呂装置。
ただし、nは2以上の整数であるとする。
【請求項6】
前記湯水供給手段は、前記蓄熱槽に貯留される前記蓄熱水を用いて前記湯水を給湯栓から供給する給湯運転を実行可能に構成され、
1日のうちで前記先行湯張り運転が可能な先行湯張り可能時間帯を記憶すると共に、前記給湯運転が実行される可能性が高い給湯使用時間帯を記憶する記憶部を備え、
前記運転制御手段は、少なくとも前記給湯使用時間帯を除く前記先行湯張り可能時間帯に前記先行湯張り運転を実行する請求項1又は2に記載の風呂装置。
【請求項7】
前記湯水供給手段として、前記浴槽に供給する前記湯水を加熱可能な燃焼装置を備え、
前記運転制御手段は、前記燃焼装置による前記湯水の加熱を停止した状態で、前記先行湯張り運転を実行する請求項1又は2に記載の風呂装置。
【請求項8】
前記運転制御手段は、前記蓄熱槽に貯留される前記蓄熱水を用いて前記湯水を給湯栓から供給する給湯運転を実行可能に構成され、
前記運転制御手段は、前記先行湯張り運転においてK回目の先行湯張りを実行しているときに、前記給湯運転が実行されると、K回目の前記先行湯張りを一時停止すると共に、K回目の前記先行湯張りにて前記浴槽へ供給された湯水量と一時停止中の前記給湯運転にて使用された給湯量の合計が前記見込払出量以上の場合、K回目の前記先行湯張りを終了し、K回目の前記先行湯張りにて前記浴槽へ供給された湯水量と一時停止中の前記給湯運転にて使用された給湯量の合計が前記見込払出量未満の場合、K回目の前記先行湯張りを再開する請求項1又は2に記載の風呂装置。
【請求項9】
蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、前記蓄熱槽の前記蓄熱水を用いて湯水を浴槽に供給する湯水供給作動を行う湯水供給手段と、前記浴槽の湯張り状態が目標湯張り状態となるように前記湯水供給手段を湯水供給作動させる湯張り運転を行う風呂装置の制御方法であって、
前記湯張り運転を行うよりも先行して、前記浴槽の湯張り状態が前記目標湯張り状態に達する前の先行湯張り状態になるように前記湯水供給手段を湯水供給作動させる先行湯張り運転を行う構成において、
前記先行湯張り運転は、
前記蓄熱槽の容積、給水温、前記蓄熱槽が満蓄である場合の前記蓄熱水の温度である満蓄温度、及び目標の先行湯張り温度に基づいて、前記満蓄温度が前記給水温になるまでの、前記蓄熱槽からの見込みの払出量である見込払出量を算出する見込払出量算出工程と、
満蓄となった前記蓄熱槽の前記満蓄温度が前記給水温になるまで前記浴槽へ前記湯水を供給することを1回とカウントする先行湯張り回数を、前記目標湯張り状態における目標湯張り量に対する前記見込払出量の比率が小さいほど増加させる形態で設定する先行湯張り回数設定工程とを実行する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、蓄熱槽の蓄熱水を用いて温水を浴槽に供給する温水供給作動を行う温水供給手段と、浴槽の湯張り状態が目標湯張り状態となるように温水供給手段を温水供給作動させる湯張り運転を行う運転制御手段とが設けられている風呂装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような風呂装置は、運転制御手段が湯張り運転を行うことにより、蓄熱槽の蓄熱水にて給水を加熱してその加熱した湯水を浴槽に供給したり、又は、追焚き用熱交換器において蓄熱槽の蓄熱水にて浴槽に貯留している湯水を加熱してその加熱した湯水を浴槽に戻して、浴槽の湯張り状態を目標湯張り状態としている。目標湯張り状態は、目標湯張り設定温度と目標湯張り量とから定められ、浴槽に目標湯張り設定温度の温水を目標湯張り量だけ貯めた状態を目標湯張り状態としている(例えば、特許文献1を参照)。
ここで、一般的に、蓄熱槽には、熱電併給装置、ヒートポンプ給湯装置、太陽熱温水装置等にて発生した熱が蓄熱されるのであるが、湯張り運転では、浴槽が空の状態であっても浴槽の湯張り状態を目標湯張り状態にすることが求められるので、浴槽の湯張り状態を目標湯張り状態とする為に必要な熱量が大きくなる。
そのため、浴槽の湯張り状態を目標湯張り状態とする為に必要となる熱量の全量を予め蓄熱槽に蓄熱しておくと、それだけ容量の大きな蓄熱槽が必要となるが、マンション等の集合住宅における各戸においては、大型の蓄熱槽を設定するスペースを確保し難いため、比較的小容量の蓄熱槽を備えざるを得ないという状況があった。
そこで、上記特許文献1に開示の技術では、湯張り運転に先行して、蓄熱槽に貯留する蓄熱水を用いて温水を浴槽へ供給する先行湯張り運転を行い、浴槽を蓄熱槽として使用する構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の技術では、蓄熱槽に貯留する蓄熱水を用いて温水を浴槽へ供給する先行湯張り運転を実行して浴槽を蓄熱槽として使用する形で、実効的な蓄熱容量を増加させているが、先行湯張りに伴う先行湯張り回数や蓄熱槽からの払出量に関する具体的な開示がなく、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄熱槽の蓄熱容量の大小に関わらず、先行湯張りに伴う先行湯張り回数や蓄熱槽からの払出量を適切なものとして、当該蓄熱槽に蓄熱された熱量を有効に利用する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための風呂装置は、
蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、前記蓄熱槽の前記蓄熱水を用いて湯水を浴槽に供給する湯水供給作動を行う湯水供給手段と、前記浴槽の湯張り状態が目標湯張り状態となるように前記湯水供給手段を湯水供給作動させる湯張り運転を行う運転制御手段とが設けられている風呂装置であって、その特徴構成は、
前記運転制御手段は、前記湯張り運転を行うよりも先行して、前記浴槽の湯張り状態が前記目標湯張り状態に達する前の先行湯張り状態になるように前記湯水供給手段を湯水供給作動させる先行湯張り運転を行うように構成され、
前記蓄熱槽の容積、給水温、前記蓄熱槽が満蓄である場合の前記蓄熱水の温度である満蓄温度、及び前記先行湯張り運転における目標の先行湯張り温度に基づいて、前記満蓄温度が前記給水温になるまでの、前記蓄熱槽からの見込みの払出量である見込払出量を算出し、
満蓄状態の前記蓄熱槽の前記満蓄温度が前記給水温になるまで前記浴槽へ前記湯水を供給することを1回とカウントする先行湯張り回数を、前記目標湯張り状態における目標湯張り量に対する前記見込払出量の比率が小さいほど増加させる形態で設定し、
設定した前記先行湯張り回数に基づいて、前記湯張り運転に先行して、前記先行湯張り運転を行い前記浴槽を前記蓄熱槽として使用する点にある。
【0007】
上記目的を達成するための風呂装置の制御方法は、
蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、前記蓄熱槽の前記蓄熱水を用いて湯水を浴槽に供給する湯水供給作動を行う湯水供給手段と、前記浴槽の湯張り状態が目標湯張り状態となるように前記湯水供給手段を湯水供給作動させる湯張り運転を行う風呂装置の制御方法であって、その特徴構成は、
前記湯張り運転を行うよりも先行して、前記浴槽の湯張り状態が前記目標湯張り状態に達する前の先行湯張り状態になるように前記湯水供給手段を湯水供給作動させる先行湯張り運転を行う構成において、
前記先行湯張り運転は、
前記蓄熱槽の容積、給水温、前記蓄熱槽が満蓄である場合の前記蓄熱水の温度である満蓄温度、及び目標の先行湯張り温度に基づいて、前記満蓄温度が前記給水温になるまでの、前記蓄熱槽からの見込みの払出量である見込払出量を算出する見込払出量算出工程と、
満蓄となった前記蓄熱槽の前記満蓄温度が前記給水温になるまで前記浴槽へ前記湯水を供給することを1回とカウントする先行湯張り回数を、前記目標湯張り状態における目標湯張り量に対する前記見込払出量の比率が小さいほど増加させる形態で設定する先行湯張り回数設定工程とを実行する点にある。
【0008】
発明者らは、先行湯張り運転を行う場合に、満蓄状態の蓄熱槽から先行湯張り温度で払い出される見込払出量は、各戸に設置される蓄熱槽の容量や給水温等により変化するという知見に基づいて、先行湯張り回数を複数回とする先行湯張り運転の実行方法を新たに見出した。
即ち、上記特徴構成によれば、蓄熱槽の容積、給水温、蓄熱槽が満蓄である場合の蓄熱水の温度である満蓄温度、及び先行湯張り運転における目標の先行湯張り温度に基づいて、満蓄温度が給水温になるまでの、蓄熱槽からの見込みの払出量である見込払出量を算出し、満蓄状態の蓄熱槽の満蓄温度が給水温になるまで浴槽へ湯水を供給することを1回とカウントする先行湯張り回数を、目標湯張り状態における目標湯張り量に対する見込払出量の比率が小さいほど増加させる形態で設定し、設定した先行湯張り回数に基づいて、湯張り運転に先行して、先行湯張り運転を行うので、先行湯張り運転における見込払出量を、蓄熱槽に貯留される蓄熱水の蓄熱量に基づいて、適切に導出できると共に、導出された見込払出量に基づいた先行湯張り回数を適切に設定できる。
このように、満蓄状態の蓄熱槽に貯留される蓄熱水を用いて先行湯張り運転を行うことで、満蓄状態では放熱されるしかなかった蓄熱水の熱を浴槽に貯める形態で、有効利用することができると共に、先行湯張り回数を複数回とすることで、満蓄状態となり更なる蓄熱ができなくなった蓄熱槽からの熱を、複数回に分けて浴槽へ供給することで、蓄熱槽へ蓄熱された熱の有効利用を一層促進することができる。
これにより、蓄熱槽の蓄熱容量の大小に関わらず、先行湯張りに伴う先行湯張り回数や蓄熱槽からの払出量を適切なものとして、当該蓄熱槽に蓄熱された熱量を有効に利用する風呂装置を実現できる。
【0009】
風呂装置の更なる特徴構成は、
前記運転制御手段は、前記見込払出量Vpを以下の〔式1〕に基づいて決定する点にある。
Vp=(Tα-Ts)×Vm/(Tb-Ts) ・・・〔式1〕
ただし、Tαを前記満蓄温度、Tsを前記給水温、Vmを前記蓄熱槽の容積、Tbを目標の前記先行湯張り温度とする。
【0010】
上記特徴構成によれば、従来の先行湯張り運転では導入されてこなかった見込払出量なる概念を、容易に数値化することができ、当該〔式1〕に基づき算出された見込払出量に基づいて、先行湯張り運転に係る計算処理を迅速に実行できる。
【0011】
風呂装置の更なる特徴構成は、
前記運転制御手段は、前記先行湯張り回数が1回より多い場合、前記先行湯張り回数を、前記見込払出量と前記先行湯張り回数との積算値が前記目標湯張り量以下となるよう設定する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、先行湯張り回数が複数回となる場合であっても、見込払出量による複数の先行湯張りにより目標湯張り量を超えない湯張りを実現でき、不要な湯張りにより湯水が無駄に浴槽に張られることを防止できる。
【0013】
風呂装置の更なる特徴構成は、
前記運転制御手段は、前記蓄熱槽の前記蓄熱水を、熱電併給装置、ヒートポンプ給湯装置、太陽熱温水装置の何れか1つ又は複数で加熱して前記蓄熱槽に蓄熱する点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、省エネルギ性の高い熱電併給装置、ヒートポンプ給湯装置、太陽熱温水装置の何れか一つ又は複数により蓄熱水を加熱することで、当該熱を蓄熱した蓄熱水により加熱した湯水による先行湯張り運転を、省エネルギ性の高いものとできる。
【0015】
風呂装置の更なる特徴構成は、
前記運転制御手段は、
前記目標湯張り量に対する前記見込払出量の比率が1/2以上の場合は、前記先行湯張り回数を1回に設定し、
前記目標湯張り量に対する前記見込払出量の比率が1/n未満かつ1/(n+1)以上の場合は、前記先行湯張り回数をn回に設定する点にある。
ただし、nは2以上の整数であるとする。
【0016】
上記特徴構成によれば、先行湯張り回数を見込払出量に応じて細かく回数設定できる。
特に、冬季で給水温が低い場合等で、見込払出量が少なくなるような状況であっても、先行湯張り回数を多く設定する形で、蓄熱槽の蓄熱水に蓄熱される熱量を、適切に先行湯張り運転に用いることができる。
【0017】
風呂装置の更なる特徴構成は、
前記湯水供給手段は、前記蓄熱槽に貯留される前記蓄熱水を用いて前記湯水を給湯栓から供給する給湯運転を実行可能に構成され、
1日のうちで前記先行湯張り運転が可能な先行湯張り可能時間帯を記憶すると共に、前記給湯運転が実行される可能性が高い給湯使用時間帯を記憶する記憶部を備え、
前記運転制御手段は、少なくとも前記給湯使用時間帯を除く前記先行湯張り可能時間帯に前記先行湯張り運転を実行する点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、先行湯張り運転を給湯使用時間帯を除く時間帯に実行するから、給湯使用時間帯に給湯に使用する熱量を蓄熱槽の蓄熱水に蓄熱される熱にて賄い易くなり、給湯における瞬間給湯器の利用度合いを低下できるから、使用者は給湯における経済性を向上できる。
更に、例えば、一日のうちで6:00から18:00まで等の時間帯に設定される先行湯張り可能時間帯に先行湯張り運転を実行することで、先行湯張り実行時点から湯張り運転までの時間が長くなり過ぎることを防止して、放熱ロスが大きくなり過ぎることを抑制できる。
【0019】
風呂装置の更なる特徴構成は、
前記湯水供給手段として、前記浴槽に供給する前記湯水を加熱可能な燃焼装置を備え、
前記運転制御手段は、前記燃焼装置による前記湯水の加熱を停止した状態で、前記先行湯張り運転を実行する点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、省エネルギ性の高い装置により加熱して、蓄熱槽に蓄熱した湯水を、燃焼装置により加熱せずに、そのまま先行湯張りすることにより、不必要な熱エネルギの消費を避けることができる。
【0021】
風呂装置の更なる特徴構成は、
前記運転制御手段は、前記蓄熱槽に貯留される前記蓄熱水を用いて前記湯水を給湯栓から供給する給湯運転を実行可能に構成され、
前記運転制御手段は、前記先行湯張り運転においてK回目の先行湯張りを実行しているときに、前記給湯運転が実行されると、K回目の前記先行湯張りを一時停止すると共に、K回目の前記先行湯張りにて前記浴槽へ供給された湯水量と一時停止中の前記給湯運転にて使用された給湯量の合計が前記見込払出量以上の場合、K回目の前記先行湯張りを終了し、K回目の前記先行湯張りにて前記浴槽へ供給された湯水量と一時停止中の前記給湯運転にて使用された給湯量の合計が前記見込払出量未満の場合、K回目の前記先行湯張りを再開する点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、先行湯張り運転においてK回目の先行湯張りを実行しているときに、給湯運転が実行されると、K回目の先行湯張りを一時停止すると共に、K回目の先行湯張りにて浴槽へ供給された湯水量と一時停止中の給湯運転にて使用された給湯量の合計が見込払出量以上の場合、K回目の先行湯張りを終了するから、蓄熱槽に蓄熱されている湯水が使い切られたと見込まれる場合に、給水温度の湯水が浴槽へ流出することを防止できる。これにより、先行湯張り運転の終了後に、効率が低い追焚き運転の実行時間を低減でき、効率低下を防止できる。
一方、K回目の先行湯張りにて浴槽へ供給された湯水量と一時停止中の給湯運転にて使用された給湯量の合計が見込払出量未満の場合、K回目の先行湯張りを再開することで、蓄熱槽に残っていると見込まれる湯水を、先行湯張りに効果的に使用できる。
尚、以上の如く、熱量ベースではなく湯水量ベースで見込残湯量を計算することで、簡素な装置構成を維持しながらも、見込払出量を用いて、K回目の先行湯張りを中断するか否かの判定を良好に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係る風呂装置において、蓄熱運転、湯張り運転及び先行湯張り運転を実行する場合の湯水の流れを含む回路図である。
【
図2】実施形態に係る風呂装置において、追焚き運転を実行する場合の湯水の流れを含む回路図である。
【
図4】実施形態に係る先行湯張り運転に係る制御フロー図である。
【
図5】給湯割込み処理が発生した場合のK回目の先行湯張りに係る制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係る風呂装置100は、蓄熱槽の蓄熱容量の大小に関わらず、先行湯張りに伴う先行湯張り回数や蓄熱槽からの払出量を適切なものとして、当該蓄熱槽に蓄熱された熱量を有効に利用する。
以下、
図1、2、4に基づいて実施形態に係る風呂装置100について説明する。
【0025】
実施形態に係る風呂装置100は、湯水(蓄熱水の一例)を貯留する貯湯タンク2(蓄熱槽の一例)を備え、貯湯タンク2に貯留された湯水を浴槽Bに供給する湯水供給作動を実行可能に構成されると共に、浴槽Bの湯張り状態が目標湯張り状態となるように湯水供給作動を実行して湯張り運転を行う制御装置50(運転制御手段の一例)とが設けられている。即ち、当該実施形態に係る風呂装置100にあっては、蓄熱水は湯水に含まれる概念であり、蓄熱水が湯水として浴槽Bや給湯利用箇所1としての給湯栓に供給される。
【0026】
貯湯タンク2は、例えば、内部に湯水を貯留可能で、断熱性能を有するタンクにて構成されており、内部の湯水は、上方から下方にかけて高温から低温となる温度成層を形成するように構成されている。
燃焼装置12は、二缶二水路式に構成されており、内部に設けられる第1バーナ11aにてガス燃料(例えば、都市ガス13A)を燃焼させて、内部の第1熱交換部12aを通流する湯水を加熱可能に構成されると共に、内部に設けられる第2バーナ11bにてガス燃料を燃焼させて、内部の第2熱交換部12bを通流する湯水を加熱可能に構成されている。
【0027】
更に、風呂装置100は、排熱により湯水を加熱する熱源機としての燃料電池9と、当該燃料電池9と貯湯タンク2との間で湯水を循環する循環路C1を備えている。
循環路C1は、その上流端が貯湯タンク2の下部に接続されると共にその下流端が貯湯タンク2の上部に接続されており、当該循環路C1の湯水を圧送する第1循環ポンプP1を燃料電池9の上流側に備えており、湯水の熱を放熱可能なラジエータM1が、第1循環ポンプP1と燃料電池9との間に備えられている。
【0028】
貯湯タンク2には、その下部に接続されて給水圧によりタンク内へ給水を供給する給水流路R1が接続されると共に、その上部に接続されて給水圧によりタンク上方に貯留された湯水を吐出する吐出流路R2が設けられ、当該吐出流路R2には当該吐出流路R2を開閉する第1開閉弁K1が設けられている。尚、給水流路R1には、給水温を計測する第1温度センサT1が設けられている。
因みに、
図1~3では、開放状態にある弁体を黒塗りとし閉止状態にある弁体を白抜きとして図示している。
給水流路R1と吐出流路R2とを接続する加熱前混合流路R3が設けられると共に、当該加熱前混合流路R3を通流する給水の流量を調整する比例弁H1が設けられている。吐出流路R2と加熱前混合流路R3との合流部である第1合流部G1の合流後で燃焼装置12による加熱前の加熱前混合流路R3には、加熱前混合温度を検出する第2温度センサT2が設けられている。
【0029】
加熱前混合流路R3は、燃焼装置12の第1熱交換部12aへ湯水を通流させる加熱流路R4に接続されており、当該加熱流路R4には燃焼装置12の出口での補助加熱後温度を検出する第4温度センサT4が設けられている。
加熱前混合流路R3と加熱流路R4との接続部位は、加熱後混合流路R5の上流端が接続されると共に、加熱流路R4と加熱後混合流路R5への湯水の流量比を調整可能な第2三方弁S2が設けられており、加熱後混合流路R5の下流端は、加熱流路R4の第4温度センサT4の下流側の第2合流部G2に接続されている。
第2合流部G2には、給湯利用箇所1(給湯栓の一例)に接続される給湯流路R7が設けられており、当該給湯流路R7の第2合流部G2への接続部位の近傍には、加熱後混合温度を測定する第3温度センサT3が設けられており、給湯流路R7の給湯利用箇所1の近傍には、給湯流路R7に湯水が通流しているか否かを検出可能な第2水量センサF2が設けられている。
給湯流路R7の第3温度センサT3が設けられている箇所の下流側には、浴槽Bへ湯水を導く湯張流路R8が接続されており、当該湯張流路R8には、湯張流路R8に湯水が通流しているか否かを検出可能な第1水量センサF1が設けられていると共に、湯張流路R8を開閉する第2開閉弁K2が設けられている。
【0030】
更に、上流端が浴槽Bの下方部位に接続されると共に下流端が浴槽Bの上方部位に接続される追焚流路R9が設けられており、当該追焚流路R9には、上流側から順に、追焚流路R9に流入する湯水の温度を測定する第7温度センサT7、追焚流路R9の上流側から下流側へ湯水を圧送する第1圧送ポンプP3、当該追焚流路R9に湯水が通流しているか否かを検知する第3水量センサF3、追焚流路R9から浴槽Bへ流入する湯水の温度を測定する第6温度センサT6が設けられている。
また、燃焼装置12の第2熱交換部12bに接続される追焚循環路C2が設けられ、当該追焚循環路C2には、当該追焚循環路C2に湯水を循環する第2循環ポンプP2、当該第2循環ポンプP2による湯水の圧送方向で、第2循環ポンプP2を基準として、燃焼装置12の第2熱交換部12b、追焚循環路C2を開閉する第3開閉弁K3、バッファタンクBTが記載の順に設けられている。
加えて、追焚流路R9の湯水の通流方向で、第3水量センサF3と第6温度センサT6との間を通流する湯水と、追焚循環路C2の湯水の通流方向で、第2熱交換部12bと第3開閉弁K3との間を通流する湯水とを対向流で熱交換させる第1熱交換器EX1が設けられている。
これまで説明してきた構成において、第1水量センサF1、比例弁H1、第1開閉弁K1~第2開閉弁K2、第2三方弁S2、給水流路R1、吐出流路R2、加熱前混合流路R3、加熱流路R4、加熱後混合流路R5、湯張流路R8、第1温度センサT1~第5温度センサT5及び燃焼装置12が湯水供給手段として働くことになる。
【0031】
風呂装置100の運転を制御するコンピュータを備えた制御装置50(運転制御手段の一例)は、運転を指令する人為操作式の貯湯式給湯装置用リモコン(図示省略)との間で各種情報を通信可能に構成されている。当該貯湯式給湯装置用リモコンは、例えば、台所や浴室等に設けられており、給湯目標温度、目標湯張り状態における湯張り目標温度、先行湯張り運転における目標先行湯張り温度等を設定可能であると共に、各種スイッチのON操作により各種運転の運転要求を要求可能に構成されている。また、制御装置50は、浴槽Bの湯張り運転等を指令する人為操作式の風呂リモコン(図示省略)との間で各種の情報を通信可能に構成されている。
【0032】
制御装置50は、リモコンの運転スイッチがON操作されると制御可能な状態となり、給湯利用箇所1としての給湯栓が開栓されると、給湯利用箇所1に給湯する給湯運転を実行する。
また、制御装置50は、例えば、熱電併給装置としての燃料電池9が運転状態にある間は、貯湯タンク2へ蓄熱する蓄熱運転を実行する。更に、制御装置50は、風呂リモコンの湯張りスイッチがON操作されて湯張り要求されると湯張り運転を実行すると共に、浴槽Bに貯留される湯水を追焚きする追焚き運転、湯張り運転に先行して浴槽Bへ先行湯張りする先行湯張り運転を実行する。以下、各運転について説明する。
【0033】
(蓄熱運転)
当該蓄熱運転では、制御装置50は、貯湯タンク2の下部の湯水を循環路C1に通流させ、湯水を燃料電池9の排熱により加熱し、加熱された湯水を貯湯タンク2の上部に戻す運転である。当該蓄熱運転では、第1循環ポンプP1を所定の回転速度で駆動させる。
【0034】
(給湯運転)
湯水の流れの図示は省略するが、給湯運転は、第2水量センサF2にて水流を検出したときに実行される運転であり、制御装置50は、第5温度センサT5にて検出される貯湯温度に基づいて、第2温度センサT2にて測定される加熱前混合温度もしくは第3温度センサT3にて測定される加熱後混合温度の少なくとも一方が、給湯運転で設定された給湯目標温度になるように、第1開閉弁K1、比例弁H1、第2三方弁S2とを開閉制御する。
【0035】
給湯運転において、制御装置50は、第1開閉弁K1を開放状態とし、比例弁H1の開度を所定の開度とし、第2三方弁S2を加熱流路R4のみに湯水を通流させる開放状態として、貯湯タンク2に貯留された湯水を燃焼装置12にて補助加熱することなく給湯利用箇所1へ供給する加熱停止状態と、第1開閉弁K1を開放状態とし、比例弁H1の開度を所定の開度とし、第2三方弁S2を加熱流路R4と加熱後混合流路R5との双方に所定の比率で湯水を通流させる開放状態として、貯湯タンク2に貯留された湯水を燃焼装置12にて補助加熱をして給湯利用箇所1へ供給する加熱作動状態とに切り換え自在である。
【0036】
制御装置50は、貯湯タンク2の上部に貯留される湯水の貯湯温度(第5温度センサT5で測定される温度)が給湯利用箇所1にて要求されている給湯目標温度より高い時、加熱停止状態に切り換え、貯湯タンク2の上部に貯留される湯水の貯湯温度が給湯目標温度以下である時、加熱作動状態に切り換える。
【0037】
加熱停止状態に切り換える時には、上水の圧力により貯湯タンク2の上部から吐出流路R2へ吐出させた湯水と、上水の圧力により加熱前混合流路R3を通流する給水とを、第1合流部G1にて合流させた後、加熱流路R4及び給湯流路R7を介して給湯利用箇所1から供給する。
ここで、制御装置50は、第2温度センサT2にて測定される加熱前混合温度が、給湯目標温度よりも高い場合、比例弁H1を開き側へ制御し、給湯目標温度未満の場合、比例弁H1を閉じ側へ制御する形態で、加熱前混合温度が給湯目標温度となるように制御する。
【0038】
一方、加熱作動状態に切り換える時には、上水の圧力により貯湯タンク2の上部から吐出流路R2へ吐出させた湯水と、上水の圧力により加熱前混合流路R3を通流する給水とを、第1合流部G1にて合流させた湯水の一部を、加熱流路R4へ通流させて燃焼装置12にて加熱すると共に、残部を加熱後混合流路R5へ通流させて第2合流部G2で混合し、給湯流路R7を介して給湯利用箇所1から供給する。
ここで、制御装置50は、第2温度センサT2にて測定される加熱前混合温度が、給湯目標温度から燃焼装置12の第1バーナ11aにより最小能力で加熱した時の温度上昇の想定値である最小加熱温度を減算した温度以下になるように、比例弁H1の開度を制御し、且つ、第3温度センサT3で測定される加熱後混合温度が給湯目標温度になるように、燃焼装置12の第1バーナ11aの燃焼量及び第2三方弁S2の開度を制御する。
【0039】
(湯張り運転)
当該湯張り運転は、制御装置50が、第5温度センサT5にて検出される貯湯温度に基づいて、第2温度センサT2にて測定される加熱前混合温度もしくは第3温度センサT3にて測定される加熱後混合温度の少なくとも一方を、湯張り運転で設定された湯張り目標温度になるように、第1開閉弁K1、比例弁H1、第2三方弁S2とを開閉制御すると共に、第2開閉弁K2を開放状態とする。
当該湯張り運転は、リモコン(図示せず)により予め設定された所定の時間に実行されるか、又はリモコンから湯張り要求がされると実行される。
【0040】
湯張り運転は、制御装置50が、第1開閉弁K1を開放状態とし、比例弁H1の開度を所定の開度とし、第2三方弁S2を加熱流路R4のみに湯水を通流させる開放状態として、貯湯タンク2に貯留された湯水を燃焼装置12にて補助加熱することなく浴槽Bへ供給する加熱停止状態と、第1開閉弁K1を開放状態とし、比例弁H1の開度を所定の開度とし、第2三方弁S2を加熱流路R4と加熱後混合流路R5との双方に所定の比率で湯水を通流させる開放状態として、貯湯タンク2に貯留された湯水を燃焼装置12にて補助加熱をして浴槽Bへ供給する加熱作動状態とに切り換え自在である。
【0041】
〔追焚き運転〕
追焚き運転は、図示しないリモコンにて追焚き運転が要求されると実行されるものであり、
図2に示すように、制御装置50は、第6温度センサT6にて計測される湯水の温度を目標追焚き温度とするべく、第3水量センサF3にて追焚流路R9で所定以上の水流を検知すると、第3開閉弁K3を開放状態として第1圧送ポンプP3及び第2循環ポンプP2を所定の回転速度で作動させた状態で、燃焼装置12の第2バーナ11bを所定の出力で作動させ、第7温度センサT7にて計測される湯水温度が目標追焚き温度(又は、目標追焚き温度+α)となるまで、当該状態を維持する。ちなみに、第6温度センサT6にて計測される温度は、浴槽Bでの使用者が火傷をしない程度の温度(例えば、48℃)以下に設定される。
第7温度センサT7にて計測される湯水温度が目標追焚き温度(又は、目標追焚き温度+α)となると、燃焼装置12の第2バーナ11bを停止すると共に、第3開閉弁K3を閉止状態として第1圧送ポンプP3及び第2循環ポンプP2を停止する。
【0042】
さて、これまで説明してきた構成では、熱電併給装置としての燃料電池9を働かせている状態で貯湯タンク2が満蓄となった場合、燃料電池9の作動を継続するために、燃料電池9へ導かれる湯水を所定温度以下にする必要がある。
このため、ラジエータM1を作動させて循環路C1を循環する湯水を放熱させることができるが、当該放熱を行うことは熱の省エネルギ性の観点からは好ましくない。
そこで、制御装置50は、上述の湯張り運転を行うよりも先行して、浴槽Bの湯張り状態が目標湯張り温度で目標湯張り量となる目標湯張り状態に達する前の先行湯張り状態になるように温水供給作動する先行湯張り運転を実行する。
【0043】
(先行湯張り運転)
制御装置50は、
図1に示すように、貯湯タンク2の容積、第1温度センサT1にて計測される給水温、貯湯タンク2が満蓄である場合の蓄熱水の温度で第5温度センサT5にて計測される満蓄温度、及び先行湯張り運転における目標の先行湯張り温度に基づいて、満蓄温度が給水温になるまでの、貯湯タンク2からの見込みの払出量である見込払出量を算出する見込払出量算出工程と、満蓄状態の貯湯タンク2の満蓄温度が給水温になるまで浴槽Bへ湯水を供給することを1回とカウントする先行湯張り回数を、目標湯張り状態における目標湯張り量に対する見込払出量の比率が小さいほど増加させる形態で設定する先行湯張り回数設定工程とを実行する制御により、設定した先行湯張り回数に基づいて、湯張り運転に先行して、先行湯張り運転を行い浴槽Bを貯湯タンク2として使用する。
【0044】
以下、当該実施形態に係る先行湯張り運転の制御フローについて、
図4を参照しながら説明する。尚、以下の制御フローを実行中において、熱源機としての燃料電池9は連続して稼働しているものとし、燃焼装置12は働かせないものとする。
制御装置50は、図示しないリモコン等により先行湯張り運転が設定されている場合、例えば、毎日所定の時間(例えば、AM6:00)に、以下の制御を開始する。
制御装置50は、貯湯タンク2に設けられる第5温度センサT5が満蓄温度Tα(例えば、65℃)と等しいかそれ以上であるかを確認する形態で、貯湯タンク2が満蓄状態であるか否かを確認し(#01)、満蓄状態でない場合(#01でNo)には、所定時間待機した後に当該#01の処理を再度実行すると共に、満蓄状態である場合(#01でYes)、給水温Tsとして第1温度センサT1による温度を取得する(#02)。
【0045】
次に、制御装置50は、以下の〔式1〕に基づいて、先行湯張りでの見込払出量Vpを決定する(#03)。
Vp=(Tα-Ts)×Vm/(Tb-Ts) ・・・〔式1〕
ただし、Tαを満蓄温度、Tsを給水温、Vmを貯湯タンク2の容積、Tbを先行湯張り温度とし、満蓄温度Tα、貯湯タンク2の容積については、予め記憶部(図示せず)に記憶されるものであり、先行湯張り温度Tbはリモコン等にて設定されて記憶部に記憶されているものとする。
【0046】
尚、満蓄温度Tαが65℃、貯湯タンク2の容量が15Lであり、給水温Tsと先行湯張り温度Tbが以下の値である場合、〔式1〕に基づいた見込払出量Vpは、以下の〔表1〕のようになる。
【0047】
【0048】
更に、制御装置50は、先行湯張り回数が1回より多い場合、先行湯張り回数を、見込払出量と先行湯張り回数との積算値が目標湯張り量以下となるよう設定する。ちなみに、先行湯張り回数が1回の場合、見込払出量が目標湯張り量を超えるときには、見込払出量を目標湯張り量とする。
【0049】
換言すると、制御装置50は、一日の先行湯張り回数Nに関し、導出した見込払出量Vpと、予め設定されている目標湯張り量とに基づいて、目標湯張り量に対する見込払出量の比率が1/2以上の場合は、先行湯張り回数を1回に設定し、目標湯張り量に対する見込払出量の比率が1/n未満かつ1/(n+1)以上の場合は、先行湯張り回数をn回に設定する形で算出する(#04)。ただし、nは2以上の整数とする。
【0050】
制御装置50は、このように算出された先行湯張り回数Nと、予め設定された一日のうちで先行湯張りを開始可能な最終時点(例えば、18:00)とに基づいて、先行湯張り間隔時間ΔTを算出する(#05)。
例えば、制御装置50は、先行湯張り回数Nを算出した時点から先行湯張りを開始可能な最終時点までの時間を、先行湯張り回数N-1で除算した値を、先行湯張り間隔時間ΔTとして導出する。
【0051】
制御装置50は、先行湯張りカウントKを初期化し(#06)、記憶部(図示せず)に予め記憶される先行湯張り開始可能時間帯(例えば、6:00以降且つ18:00以前)に現時点が含まれるか否かを判定し(#07)、現時点が先行湯張り開始可能時間帯でない場合(#07でNo)、所定の時間間隔毎に、#01~#06の制御を繰り返し実行する。
一方、制御装置50は、現時点が先行湯張り開始可能時間帯である場合(#07でYes)、各戸の給湯使用履歴から導出され記憶部(図示せず)に予め記憶される給湯使用時間帯(例えば、12:00以降且つ13:00以前)に現時点が含まれるか判定し(#08)、現時点が給湯使用時間帯である場合(#08でYes)は所定時間待機した後に#08の制御を実行し、現時点が給湯使用時間帯でない場合(#08でNo)は、貯湯タンク2が満蓄状態であるか否かを確認し(#09)、満蓄状態でない場合(#09でNo)には、所定時間待機した後に当該#09の処理を再度実行すると共に、満蓄状態である場合(#09でYes)、K回目(Kは整数で、且つK≦N)の先行湯張りを実行する(#10)。
即ち、制御装置50は、少なくとも給湯使用時間帯を除く先行湯張り可能時間帯に先行湯張りを実行する。
【0052】
その後、制御装置50は、直前の先行湯張りが開始してから先行湯張り間隔時間ΔTが経過したか否かを判定する(#11)。
制御装置50は、直前の先行湯張りが開始してから先行湯張り間隔時間ΔTが経過していない場合(#11でNo)、所定時間毎に#11の制御を実行し、直前の先行湯張り運転が開始してから先行湯張り間隔時間ΔTが経過している場合(#11でYes)、先行湯張りカウントKが先行湯張り回数Nと等しいか否かを判定する(#13)。
制御装置50は、先行湯張りカウントKが先行湯張り回数Nと等しい場合(#13でYes)、先行湯張り運転を終了し、先行湯張りカウントKが先行湯張り回数Nと等しくない場合(#13でNo)、先行湯張りカウントKを1増加させて、#07以降の制御を再度実行する(#12)。
尚、当該先行湯張り運転を実行中に、上述の湯張り運転が開始される際には、当該先行湯張り運転が停止され、湯張り運転が実行されることになる。
【0053】
〔別実施形態〕
(1)制御装置50は、浴槽Bの水栓の閉め忘れを検知できる水量よりも、先行湯張りの見込払出量が少ない時は、1回目の先行湯張りに限り、水栓の閉め忘れを検知できる水量だけ、先行湯張りを行なっても構わない。その場合、水栓の閉め忘れを検知するために増量した分を、目標湯張り量から差し引いて、先行湯張り回数Nを再度計算することが望ましい。
【0054】
(2)風呂装置100は、
図3に示すように、貯湯タンク2に蓄熱される蓄熱水と浴槽Bや給湯利用箇所1へ供給される湯水とが異なるものであっても構わない。
即ち、
図3に示すように、貯湯タンク2の内部に貯湯タンク2の内部の蓄熱水と通流する湯水とを熱交換可能な第2熱交換器EX2が設けられ、給水流路R1と第2熱交換器EX2と吐出流路R2とが連通接続する構成を作用しても構わない。
【0055】
(3)上記実施形態では、熱源機として、熱電併給装置である燃料電池9を備える構成を示したが、当該熱源機としては、熱電併給装置、ヒートポンプ給湯装置、太陽熱温水装置の何れか一つ又は複数から構成しても構わない。
尚、熱源機として、熱電併給装置以外のヒートポンプ給湯装置を用いる場合、蓄熱運転において、貯湯タンク2の蓄熱量が設定量以下となる、或いは、給湯利用箇所1へ給湯する給湯時間帯になる等の蓄熱条件が満たされると、蓄熱運転の運転要求があったとして、貯湯タンク2へ蓄熱する蓄熱運転を実行するよう構成しても構わない。
【0056】
(4)上記実施形態では、先行湯張り運転は、給湯使用時間帯を除く時間帯に実行するとしたが、給湯使用時間帯及びその直前の給湯使用直前時間帯の双方を除く時間帯に実行するものとしても構わない。
(5)さて、上記実施形態では、先行湯張り運転は、給湯運転が実行される可能性が高い給湯使用時間帯以外で実行される例を示したが、給湯運転は給湯使用時間帯以外でも実行されることがある。
以下では、給湯運転(割込み給湯)が発生した場合のK回目の先行湯張りに係る制御を、
図5の制御フロー図に基づいて説明する。
【0057】
制御装置50は、
図5の制御フローに示すように、例えば、第2水量センサF2による零より大きい流量の検出により給湯運転を検知すると(#21でYes)、K回目の先行湯張りを一時停止し(#22)、給湯運転(割り込み給湯)を実行する(#23)。
制御装置50は、第2水量センサF2による零より大きい流量が検出されなくなり、給湯運転(割り込み給湯)が終了すると(#24でYes)、以下の〔式2〕の判定を実行する(#25)。
【0058】
浴槽へ供給された湯水量+割込み給湯量≧見込払出量 ・・・〔式2〕
【0059】
ここで、浴槽へ供給された湯水量は、K回目の先行湯張りにおける累積値であり、制御装置50は、例えば、第1水量センサF1にて直近で流量を検出した時点(K回目の先行湯張りの開始時点)から上述の一時停止時点までに、第1水量センサF1にて測定された湯水量を、K回目の先行湯張りにより浴槽Bへ供給された湯水量として算出する。
割込み給湯量についても、K回目の先行湯張りによる累積値であり、制御装置50は、例えば、給湯運転開始時(割り込み給湯開始時)から、給湯運転終了時(割り込み給湯終了時)までに第2水量センサF2にて測定された給湯量を、割り込み給湯量として算出する。
【0060】
制御装置50は、K回目の先行湯張りにて浴槽Bへ供給された湯水量と一時停止中の給湯運転にて使用された給湯量の合計が見込払出量以上の場合(#25でYes)、K回目の先行湯張りを終了し、K回目の先行湯張りにて浴槽Bへ供給された湯水量と一時停止中の給湯運転にて使用された給湯量の合計が見込払出量未満の場合(#25でNo)、K回目の先行湯張りを再開(#26)する。
【0061】
制御装置50は、K回目の先行湯張りの再開後(#26の後)も、給湯運転(割り込み給湯)の有無を監視しており、給湯運転(割り込み給湯)を検知すると(#21でYes)、#22~#26のステップを実行する。一方、制御装置50は、K回目の先行湯張りの再開後(#26の後)に、給湯運転(割り込み給湯)を検知しない場合であっても(#21でNo)、先行湯張りにより浴槽Bへ供給された湯水量が増加するため、#25のステップを継続的に実行し、〔式2〕の条件が満たされた場合には、K回目の先行湯張りを終了する。
【0062】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の風呂装置及びその制御方法は、蓄熱槽の蓄熱容量の大小に関わらず、先行湯張りに伴う先行湯張り回数や蓄熱槽からの払出量を適切なものとして、当該蓄熱槽に蓄熱された熱量を有効に利用する風呂装置及びその制御方法として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 :給湯利用箇所
2 :貯湯タンク
9 :燃料電池
11 :バーナ
12 :燃焼装置
50 :制御装置
100 :風呂装置
B :浴槽
K :先行湯張りカウント
N :先行湯張り回数
Tb :先行湯張り温度
Ts :給水温
Tα :満蓄温度
Vp :見込払出量