(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020978
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】油圧作動油
(51)【国際特許分類】
C10M 133/42 20060101AFI20230202BHJP
C10M 133/16 20060101ALI20230202BHJP
C10M 133/56 20060101ALI20230202BHJP
C10M 159/22 20060101ALI20230202BHJP
C10M 159/24 20060101ALI20230202BHJP
C10M 135/10 20060101ALI20230202BHJP
C10M 129/54 20060101ALI20230202BHJP
C10M 129/10 20060101ALI20230202BHJP
C10M 137/04 20060101ALI20230202BHJP
C10M 137/10 20060101ALI20230202BHJP
C10M 133/12 20060101ALI20230202BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20230202BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20230202BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20230202BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
C10M133/42
C10M133/16
C10M133/56
C10M159/22
C10M159/24
C10M135/10
C10M129/54
C10M129/10
C10M137/04
C10M137/10
C10M133/12
C10N10:04
C10N40:08
C10N30:00 Z
C10N30:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022117045
(22)【出願日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】17/387,358
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン・ダイアー
(72)【発明者】
【氏名】マドレーヌ・パートリッジ
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BB08A
4H104BB24C
4H104BB32A
4H104BB33
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BE07C
4H104BE11C
4H104BE28C
4H104BF03C
4H104BG06C
4H104BH03A
4H104BH03C
4H104BH06C
4H104CB14A
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104DB06C
4H104DB07C
4H104EB04
4H104EB05
4H104EB10
4H104EB15
4H104FA02
4H104LA06
4H104LA20
4H104PA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な機能性と良好なシール材適合性を有する油圧作動油を提供する。
【解決手段】(a)窒素含有量に換算して40~150重量ppmの腐食抑制剤であって、式(I)の1つ以上の化合物
(式(I)中、各R
1は、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、xは、0~4であり、R
2は、水素、または1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)、および/またはその摩擦学的に許容される塩である、腐食抑制剤と、(b)1500~4000重量ppmの無灰窒素含有分散剤と、(c)多量の基油と、を含む、油圧作動油を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧作動油であって、
(a)窒素含有量に換算して40~150重量ppmの腐食抑制剤であって、式(I)の1つ以上の化合物
【化1】
(式(I)中、
-各R
1は、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xは、0~4であり、
-R
2は、水素、または1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)、および/またはその摩擦学的に許容される塩である、腐食抑制剤と、
(b)1500~4000重量ppmの無灰窒素含有分散剤と、
(c)多量の基油と、を含む、油圧作動油。
【請求項2】
-各R1が、独立して、1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、好ましくはメチルであり、
-xが、0もしくは1であり、かつ/または
-R2が、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、好ましくは水素である、請求項1に記載の油圧作動油。
【請求項3】
前記腐食抑制剤が、トリルトリアゾールである、請求項1に記載の油圧作動油。
【請求項4】
前記無灰窒素含有分散剤が、(a)アミノ化合物と、(b)少なくとも300、好ましくは900~1200の数平均分子量を有するヒドロカルビル基で置換されたコハク酸および/またはコハク酸無水物との反応から得られる生成物であり、前記反応が、少なくとも1つのイミド、アミド、アミジン、および/またはアシルオキシアンモニウム結合の形成に関与し、前記生成物が、少なくとも300、好ましくは900~1200の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換される、請求項1に記載の油圧作動油。
【請求項5】
50~2000重量ppmの量の1つ以上の金属清浄剤をさらに含み、好ましくは、前記作動油が、フェネート清浄剤、置換ベンゼンスルホネート清浄剤、およびサリチレート清浄剤から選択される1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤を含み、前記1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤の総量が、50~2000重量ppmである、請求項1に記載の油圧作動油。
【請求項6】
1つ以上のホスフェート摩耗防止剤をさらに含み、前記1つ以上のホスフェート摩耗防止剤の総量が、100~3000重量ppmであり、好ましくは、前記1つ以上のホスフェート摩耗防止剤が、亜鉛を含まず、かつ/または前記1つ以上のホスフェート摩耗防止剤が、式(II)の1つ以上のホスフェート化合物
【化2】
(式中、
-各R
AおよびR
Bは、独立して、1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-各X
1、X
2、X
3、およびX
4は、独立して、SまたはOであり、
-R
Cは、1~20個の炭素原子を含む2価のヒドロカルビル基であり、
-X
5は、-C(O)O-または-O-であり、
-R
Dは、水素、または1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)、またはその摩擦学的に許容される塩である、請求項1に記載の油圧作動油。
【請求項7】
1つ以上の酸化防止剤、好ましくはフェノール系酸化防止剤および/もしくはアミン系酸化防止剤をさらに含み、ならびに/または100~2000ppmの量の防錆剤をさらに含み、好ましくは、前記防錆剤が、アリールスルホネートであり、ならびに/または抗乳化剤、好ましくはヒドロキシル基で終結するブロックコポリマー等の非イオン性界面活性剤をさらに含み、ならびに/または粘度調整剤および/もしくは流動点降下剤をさらに含む、請求項1に記載の油圧作動油。
【請求項8】
添加剤濃縮物であって、
(a)0.9~3.6重量%の腐食抑制剤であって、式(I)の1つ以上の化合物
【化3】
(式(I)中、
-各R
1は、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xは、0~4であり、
-R
2は、水素、または1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)、および/またはその摩擦学的に許容される塩である、腐食抑制剤と、
(b)11~50重量%の無灰窒素含有分散剤と、任意選択的に、
(c)希釈剤と、を含む、添加剤濃縮物。
【請求項9】
-各R1が、独立して、1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、好ましくはメチルであり、
-xが、0もしくは1であり、かつ/または
-R2が、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、好ましくは水素である、請求項8に記載の添加剤濃縮物。
【請求項10】
前記無灰窒素含有分散剤が、(a)アミノ化合物と、(b)少なくとも300、好ましくは900~1200の数平均分子量を有するヒドロカルビル基で置換されたコハク酸および/またはコハク酸無水物との反応から得られる生成物であり、前記反応が、少なくとも1つのイミド、アミド、アミジン、および/またはアシルオキシアンモニウム結合の形成に関与し、前記生成物が、少なくとも300、好ましくは900~1200の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換される、請求項8に記載の添加剤濃縮物。
【請求項11】
前記腐食抑制剤が1.7~2.7重量%の量で存在し、かつ/または前記分散剤が13~45重量%の量で存在する、請求項8に記載の添加剤濃縮物。
【請求項12】
0.7~8.0重量%の量の1つ以上の金属清浄剤、
0.7~23重量%の量の1つ以上のホスフェート摩耗防止剤、
3.7~37重量%の量の1つ以上の酸化防止剤、
0.07~15重量%の量の1つ以上の防錆剤、および/または
0.007~3.7重量%の量の抗乳化剤、をさらに含む、請求項8に記載の添加剤濃縮物。
【請求項13】
少なくとも1つのフルオロポリマーシールと、前記シールと接触する請求項1に記載の油圧作動油と、を含む、油圧システム。
【請求項14】
動力伝達流体としての、請求項1に記載の油圧作動油の使用。
【請求項15】
フルオロポリマーシール適合性を改善するか、または前記油圧作動油に接触する1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性を維持するために、窒素に換算して40~150重量ppmの請求項1に記載の腐食抑制剤を油圧作動油に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、油圧作動油の機能特性ならびにフルオロポリマーシールおよび黄色金属(例えば、銅)成分との適合性に関して、望ましい特性のバランスが改善された油圧作動油の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧作動油は、良好な動力伝達を示すことが望ましいが、熱安定性、防錆性、摩耗防止性能等の他の重要な特性を示すこともまた望ましい。したがって、様々な異なる点で満足のいく性能を達成するのを助けるために、添加剤を油圧作動油に加えることができる。
【0003】
しかしながら、複数の異なる望ましい特性を達成することに関しては、トレードオフが存在する場合がある。例えば、状況によっては、ポンプの性能を向上させるために摩耗防止添加剤を添加することができるが、すべての摩耗防錆添加剤が熱的に安定しているわけではないため、高濃度では、それらがスラッジおよびワニスの形成に寄与する場合があり、かつ/または分解してフィルターの詰まりを引き起こし得る酸性種を形成する場合がある。
【0004】
一方、機械の信頼性を向上させ、メンテナンス要件を最小限に抑えるという目標は、油圧作動油がより長い期間機能し続けることが望ましいことを意味する。油圧作動油が長期間効果的に機能することができるだけでなく、それらが接触する材料との良好な適合性を有することもまた有利である。
【0005】
例えば、油圧作動油と、それが接触する可能性のある任意の金属表面(銅等のいわゆる黄色金属を含有する表面を含む)との適合性が所望される。特に、そのような金属の腐食/溶解を回避するまたは最小限に抑えることが望ましい。これに取り組むための過去のアプローチの1つは、カルボン酸、ベンゾトリアゾール、金属スルホネート、およびアルキル化カルボン酸から選択される典型的な化学構造を有する腐食抑制添加剤を0.05~1.0重量%使用することであった(Hydraulic Fluids,1996,P.K.B Hodges)。例えば、この目的で記載されているカルボン酸には、アリールカルボン酸および脂肪族カルボン酸の両方が含まれ(例えば、WO1999/035219を参照のこと)、一方、GB867181は、好ましくは0.25重量%のベンゾトリアゾールの使用を記載している。しかしながら、Irgamet(登録商標)39の商品名で販売されている製品および同様にトリルトリアゾール等のベンゾトリアゾールの誘導体もまた推奨されている(例えば、US6406643を参照のこと)。Irgamet(登録商標)39腐食抑制剤は、以下に示す構造を有する。
【化1】
【0006】
このジアルキルアミノメチル芳香族トリアゾール構造を有する化合物は、酸性環境でも優れた腐食抑制特性を提供することが報告されている(例えば、US4522785を参照のこと)。それらはまた、例えば、室温で固体であるトリルトリアゾールとは対照的に、室温で液体であるという利点を有する。
【0007】
1H-1,2,4-トリアゾールは、ベンゾトリアゾール化合物と同等の腐食抑制を提供するが、コーティングのない金属表面を提供し、堆積物の形成を低減するという理由で、それよりも好ましいと報告されている(CA2442697)。1H-1,2,4-トリアゾールとベンゾトリアゾール誘導体との組み合わせも記載されており(WO0046325)、同様に、様々なトリアゾール誘導体および同様にイミダゾール誘導体(例えば、WO2010/021643を参照のこと)、ならびに0.1~5重量%の量でのベンゾトリアゾール化合物および/またはチアジアゾール化合物の使用もまた記載されている(例えば、US2010/130394を参照のこと)。
【0008】
より一般的に潤滑剤および油圧作動油に関連してより最近記載された他の腐食抑制物質は、(i)リンおよび硫黄を含まない有機タングステート;(ii)油溶性2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールまたはヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導体;(iii)ジノニルナフタレンスルホン酸のNaまたはCa塩;(iv)ヒドロカルビル置換1,2,4-トリアゾール;ならびに(v)酸化ランタン、高級カルボン酸のトリグリセリド、アルキルベンゼンスルホン酸、アルカノールアミン、硝酸ランタン、および有機溶剤の組み合わせを含む(例えば、“A Review on Recent Patents in Corrosion Inhibitors”,Viswanathan S.Saji,Recent Patents on Corrosion Science,2010,2,6-12を参照のこと)。
【0009】
油圧作動油とそれが接触する材料との適合性に関する別の考慮事項は、特に油圧システムでシールに使用されるポリマー材料との適合性である。シールは、以前はニトリルゴムとその水素化類似体、アクリレート、およびビニル修飾アクリルポリマー等の材料から作製され、接触する作動油には、シールを膨潤および軟化させて効果的な操作を容易にするために、フタル酸エステル、スルホラン誘導体、およびナフテン油等のシール膨潤剤が含まれていた。しかしながら、より最近では、一部のシステムは、「FKM」と表され得るフルオロポリマーのサブセットを含むフルオロポリマー等の材料から製造されたシールの使用に移行している。そのようなフルオロポリマーシールは利点を提供することができるが、同時に、例えば、解重合または架橋反応による分解に対して脆弱であり得る。特に、油圧作動油に含まれ得る異なる種類の添加剤のうちのいくつかが、そのような分解反応を引き起こすまたは促進する可能性がある。例えば、FKMフルオロポリマーは、エーテル、ケトン、エステル、およびアミンに対して、またはリン酸エステルをベースにした油圧作動油に対して、常に良好な耐性を示すとは限らない。したがって、良好な機能性と良好なシール適合性を提供するという潜在的に競合する目的の間には、トレードオフが存在する可能性がある。したがって、機能性を損なうことなく良好なシール適合性を実現することは困難であり得る。
【0010】
フルオロポリマーシール適合性を改善するいくつかの方法が、他の流体に照らして記載されている。例えば、潤滑剤組成物に関連してWO2014/078702に記載されている1つのアプローチは、少なくとも80mg KOH/g(ASTM D4739に従って試験された場合)の総塩基数を有するアミン化合物と組み合わせて、以下に示されるようなエポキシド化合物を加えることに関与する。
【化2】
【0011】
しかしながら、シール適合性を改善するために余分な薬剤を導入することは、特に複雑さを引き起こす可能性があるため、理想的な解決策ではない。例えば、WO2014/178702において、上に示されたもののようなエポキシド化合物は、酸、アミン、無水物、トリアゾール、および/または酸化物等の他の添加剤と反応する可能性があることに留意されたい。
【0012】
より最近では、US2016/0122680は、分散剤、摩耗防止剤、および酸化防止剤を、2つの異なる一般的な市販の摩擦調整剤(一方は、テトラエチレンペンタミンをイソステアリン酸と反応させることによって作製され、他方は、テトラエチレンペンタミンをイソオクタデセニルコハク酸無水物と反応させることによって作製される)のいずれかと一緒に含む動力伝達流体のシール適合性が、市販の摩擦調整剤を、エステル化触媒の存在下で(a)イソステアリン酸またはオレイン酸と(b)分子量400のポリエチレングリコールまたはETHOMEEN(登録商標)C-15(ポリアルコキシル化アルキルアミン化合物を含むと言われている)とを反応させることによって作製される代替の摩擦調整剤と置き換えることによって改善され得ると報告している。しかしながら、他の種類の流体のシール適合性を改善する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、少量の特定の種類の腐食抑制剤の使用が、特に、良好な機能性(良好な腐食抑制等)と良好なフルオロポリマーシール適合性という潜在的に競合する目的に関して、予想外に有利な特性のバランスの提供を実現し得るという驚くべき発見に基づくものである。したがって、本明細書に定義される腐食抑制剤は、特に、特定の他の添加剤と組み合わせた場合にも、非常に低い濃度で強力な腐食抑制を提供することが見出された。この利点の中には、腐食抑制剤がフルオロポリマーシールに与え得る潜在的な悪影響を最小限に抑えられるということがある。さらに、腐食抑制剤がシールに与える最小限の影響(すなわち、その良好なシール適合性)により、フルオロポリマーシールに対して分解作用を有し得るという懸念のために、さもなければ回避されてきたまたは比較的控えめに使用されてきた可能性のある他の添加剤のレベルを上昇させることができ、したがって、良好なフルオロポリマーシール適合性を備えた油圧作動油の新しい改善されたレベルの機能性を達成することが可能となる。
【0014】
本発明に従って使用するための腐食抑制剤は、式(I)の1つ以上の化合物
【化3】
(式(I)中、各R
1は、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、xは、0~4であり、R
2は、水素、または1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)、および/またはその摩擦学的に許容される塩である。
【0015】
上記の腐食抑制剤を非常に少量使用することで、フルオロポリマーシール適合性と油圧作動油の他の様々な機能要件の両方に関して優れた性能を達成することができるという発見は、既知の腐食抑制剤Irgamet(登録商標)39(その構造は上記の背景技術の項に記載されており、式(I)のR2に対応する部分がIrgamet(登録商標)39のビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル基であるという事実により式(I)とは異なる)を使用して達成され得る特性のバランスと比較して特に顕著である。これに関して、後述の実施例で報告されるように、化合物ビス(2-エチルヘキシル)アミン(式(I)と異なるIrgamet(登録商標)39の部分に対応する)がシールの分解にはほとんどまたはまったく影響がないことが分かっているという事実を考慮すると、この発見はなおさら驚くべきことである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、
(a)窒素含有量に換算して40~150重量ppmの腐食抑制剤であって、式(I)の1つ以上の化合物
【化4】
(式(I)中、
-各R
1は、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xは、0~4であり、
-R
2は、水素、または1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)、および/またはその摩擦学的に許容される塩である、腐食抑制剤と、
(b)1500~4000重量ppm(好ましくは1800~3600重量ppm)の無灰窒素含有分散剤と、
(c)多量の基油と、を含む、油圧作動油を提供する。
【0017】
本発明はまた、
(a)0.9~3.6重量%の腐食抑制剤であって、本明細書に定義される式(I)の1つ以上の化合物である、腐食抑制剤と、
(b)11~50重量%(好ましくは11~45重量%)の無灰窒素含有分散剤と、任意選択的に、
(c)希釈剤と、を含む、添加剤濃縮物を提供する。
【0018】
本発明はまた、少なくとも1つのフルオロポリマーシールと、シールと接触する本明細書に定義される本発明の油圧作動油と、を含む油圧システムを提供する。
【0019】
本発明はまた、動力伝達流体として本明細書に定義される本発明の油圧作動油の使用を提供する。
【0020】
本発明はまた、フルオロポリマーシール適合性を改善するか、または上記油圧作動油と接触する1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性を維持するための、窒素含有量に換算して40~150重量ppmの上記に定義される腐食抑制剤の油圧作動油における使用を提供する。好ましくは、これに関して、上記油圧作動油は、本明細書に定義される本発明の油圧作動油である。
【0021】
本発明はまた、腐食を抑制しながら、同時にa)フルオロポリマーシール適合性を改善するか、または(b)上記油圧作動油と接触する1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性を維持するための、窒素含有量に換算して40~150重量ppmの上記に定義される式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩の油圧作動油における使用を提供し、
【0022】
好ましくは、上記油圧作動油は、本明細書に定義される本発明の油圧作動油である。
【0023】
成分(a):式(I)の化合物またはその摩擦学的に許容される塩
本発明の油圧作動油は、窒素に換算して(油圧作動油の総重量に基づいて)40重量ppm~150重量ppmの腐食抑制剤であって、上記に定義される式(I)の1つ以上の化合物、および/またはその摩擦学的に許容される塩である、腐食抑制剤を含む。
【0024】
これに関して、疑義を避けるために付言すると、油圧作動油は、式(I)の2つ以上の異なる種類の化合物および/またはその塩を含み得るが、但し、上記化合物/塩の総量が窒素含有量に換算して150重量ppmの上限を超えないものとする。換言すれば、成分(a)は、式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩であり得る(40~150ppmは、それらの窒素含有量に換算したそのようなすべての化合物および/または塩の総濃度を指す)。これに関して、「1つ以上」という用語は、好ましくは1つ、2つ、または3つを意味し、より好ましくは、1つまたは2つを意味する。しかしながら、典型的には、式(I)の1つの化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩を含むだけでよい。
【0025】
好ましくは、式(I)において、各R1は、独立して、直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、またはフェニル等のアリール基である。より好ましくは、各R1は、独立して、直鎖または分岐鎖アルキル基である。
【0026】
好ましくは、各R1は、独立して、1~8個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、さらにより好ましくは1~4個の炭素原子を含む。R1の好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチル等のアルキル基である。メチルおよびエチルが特に好ましく、メチルが最も好ましい。
【0027】
部分xの上限は、好ましくは3、より好ましくは2である。xの下限は、好ましくは1である。xが0または1であることが特に好ましい。最も好ましくは、xは1である。
【0028】
R2は、好ましくは、水素、または直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、またはフェニル等のアリール基である。より好ましくは、R2は、水素、または直鎖もしくは分岐鎖アルキル基である。最も好ましくは、R2は水素である。
【0029】
R2が1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である場合、1~8個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、さらにより好ましくは1~4個の炭素原子を含むことが好ましい。これに関してR2の好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチル等のアルキル基であり、メチルおよびエチルが特に好ましく、メチルが最も好ましい。
【0030】
特に好ましい実施形態において、xは0または1であり、R1は、メチルまたはエチル(典型的にはメチル)等の1~4個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖アルキル基であり、R2は、水素、またはメチルもしくはエチル等の1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基である(典型的には、R2は水素である)。これに関して、より好ましくは、xは1である。
【0031】
式(I)の好ましい化合物の例は、トリルトリアゾールおよびベンゾトリアゾールであり、トリルトリアゾールが特に好ましい。
【0032】
成分(a)としての使用に好適な化合物および塩は既知であり、一般に市販されており、かつ/または周知の方法によって調製することができる。
【0033】
油圧作動油中の腐食抑制剤の濃度は、(油圧作動油全体の)窒素含有量に換算して40重量ppm~150重量ppmである。窒素含有量に換算した量は、好ましくは、少なくとも45ppm、例えば、少なくとも50ppm、少なくとも55ppm、少なくとも60ppm、少なくとも65ppm、少なくとも70ppm、少なくとも75ppm、または少なくとも80ppmである。窒素含有量に換算した量の上限は、好ましくは、多くとも145ppm、例えば、多くとも140ppm、多くとも135ppm、多くとも130ppm、多くとも125ppm、多くとも120ppm、多くとも115ppm、または多くとも110ppmである。好ましい範囲の例は、50~140ppm、60~130ppm、および70~120ppmである。
【0034】
油圧作動油中の腐食抑制剤の量(すなわち、窒素含有量に換算していない)は、x、R1、およびR2が何であるかに応じて変化し得る。典型的には、量は、少なくとも150ppm、例えば、少なくとも200ppm、少なくとも220ppm、少なくとも240ppm、少なくとも260ppm、または少なくとも280ppmである。量の上限は、(例えば)最大2850ppm、最大2500ppm、最大2000ppm、最大1500ppm、最大1000ppm、最大800ppm、最大600ppm、最大500ppm、または最大450ppmであり得る。いくつかの実施形態において、量は、好ましくは、最大400ppm、最大380ppm、最大360ppm、最大340ppm、または最大320ppmである。可能な上限のより低い値は、xがより低く、かつ/またはR1およびR2がより小さい基である実施形態、例えば、(a)xが0または1(典型的には1)であり、R1が、メチルまたはエチル(典型的にはメチル)等の1~4個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖アルキル基であり、R2が、水素、またはメチルもしくはエチル等の1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基である(典型的には、R2は水素である)実施形態、ならびに(b)式(I)の化合物がトリルトリアゾールおよびベンゾトリアゾールから選択される実施形態に特に適している。
【0035】
本発明の油圧作動油において、好ましくは、置換または非置換ベンゾトリアゾール化合物(任意の種類、すなわち、式(I)に含まれない化合物を含む)、および存在する場合、好ましくは同様に任意の置換または非置換トリアゾール化合物の総含有量は、多くとも5000ppm、例えば、多くとも3500ppm、多くとも2850ppm、多くとも2500ppm、多くとも2000ppm、多くとも1500ppm、多くとも1000ppm、多くとも600ppm、または多くとも450ppmである。(作動油全体の)窒素含有量に換算して、総含有量は、好ましくは、多くとも150ppm、例えば、多くとも145ppm、多くとも140ppm、多くとも135ppm、多くとも130ppm、多くとも125ppm、多くとも120ppm、多くとも115ppm、または多くとも110ppmである。このような濃度レベルの使用は、フルオロポリマー適合性と腐食抑制のバランスをとるのに役立つ。典型的には、置換または非置換ベンゾトリアゾール化合物(および存在する場合、好ましくは同様に任意の置換または非置換トリアゾール化合物)の総窒素含有量は、式(I)の化合物の濃度に本質的に対応する。
【0036】
油圧作動油は、好ましくは、成分(a)以外のいずれの置換または非置換のベンゾトリアゾール化合物も実質的に含まない。より好ましくは、油圧作動油は、成分(a)以外のいずれの置換または非置換のベンゾトリアゾールまたはトリアゾール化合物も実質的に含まない。さらにより好ましくは、油圧作動油は、成分(a)以外のいずれの腐食抑制剤も実質的に含まない。
【0037】
成分(b):無灰窒素含有分散剤
本発明の油圧作動油は、1500~4000重量ppm(好ましくは1800~3600重量ppm)の無灰窒素含有分散剤を含む。
【0038】
これに関して、疑義を避けるために付言すると、油圧作動油は、2つ以上の異なる種類の無灰窒素含有分散剤を含み得るが、但し、上記分散剤の総量が4000重量ppmの上限を超えないものとする。換言すれば、成分(b)は、1つ以上の窒素含有分散剤であり得る(150~4000ppmは、すべてのそのような分散剤の総濃度を指す)。これに関して、「1つ以上」という用語は、好ましくは1つ、2つ、または3つを意味し、より好ましくは、1つまたは2つを意味する。しかしながら、典型的には、1つの分散剤を含むだけでよい。(この分野では通常のことであるが、そのような単一の分散剤は、一般的に単一の化合物ではなく、化合物の混合物である)。
【0039】
無灰窒素含有分散剤の好ましい選択肢は、(a)アミノ化合物と、(b)少なくとも300の数平均分子量を有するヒドロカルビル基で置換されたコハク酸および/またはコハク酸無水物(好ましくはコハク酸無水物)との反応から得られる生成物であり、上記反応は、少なくとも1つのイミド、アミド、アミジン、および/またはアシルオキシアンモニウム結合の形成に関与し、生成物は、少なくとも300の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換される。
【0040】
より好ましくは、無灰窒素含有分散剤は、(a)アミノ化合物と、(b)500~5000の数平均分子量を有するヒドロカルビル基で置換されたコハク酸および/またはコハク酸無水物(好ましくはコハク酸無水物)との反応から得られる生成物であり、上記反応は、少なくとも1つのイミド、アミド、アミジン、および/またはアシルオキシアンモニウム結合の形成に関与し、生成物は、少なくとも500~5000の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換される。
【0041】
典型的には、分散剤は、ヒドロカルビル置換スクシンイミドであり、ヒドロカルビル基は、少なくとも300、好ましくは500~5000の数平均分子量を有する。
【0042】
上記の分散剤成分の実施形態におけるヒドロカルビル基は、好ましくはPIB基である。
【0043】
ヒドロカルビル基(好ましくはPIB基)の数平均分子量は、好ましくは少なくとも500、例えば少なくとも700、少なくとも800、または少なくとも900である。数平均分子量は、好ましくは、多くとも5000、例えば、多くとも4000、多くとも3000、多くとも2000、多くとも1500、または多くとも1200である。好ましい範囲の例は、700~4000、700~3000、800~2000、800~1500、および900~1200である。
【0044】
無灰窒素含有分散剤を作製する際に使用するためのアミノ化合物は、ポリアミンであり得、例えば、ポリアルキレンポリアミンである、ならびに/またはヒドロキシアルキル基、複素環式基、および/もしくは芳香族基で置換されたポリアミンである、ポリアミンであり得る。
【0045】
ヒドロキシアルキルによっても置換され得る好適なポリアルキレンポリアミンは、式(R3)2N-(Z-N(R3))nR3の化合物を含み、各R3は、独立して、水素、1~20個の炭原子を含むヒドロカルビル基、および1~20個の炭素原子を含むヒドロキシ置換ヒドロカルビル基から選択されるが、但し、少なくとも1つのR3が水素であり、nが1~10であり、各Zが、独立して、1~18個の炭素原子を含むアルキレン基であるものとする。好ましくは、各R3は、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、i-ブチルおよびt-ブチルから独立して選択される。最も好ましくは、各R3は水素である。Zは、好ましくは、1~4個の炭素原子を含むアルキレン基であり、より好ましくはエチレンであり、すなわち、より好ましくは、ポリアルキレンポリアミンは、ポリエチレンポリアミンである。部分nは、好ましくは2~8、例えば2~6または2~5である。
【0046】
ポリアルキレンポリアミンの例として、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、トリ-(トリメチレン)テトラミン、1,2-プロピレンジアミン、およびそれらの混合物が挙げられる。8個以上の窒素原子を含む1つ以上のさらに高い沸点留分を任意選択的に含むそのようなポリアミンの混合物もまた、都合よく使用することができる。
【0047】
ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンポリアミンの例として、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(3-ヒドロキシブチル)テトラメチレンジアミンおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0048】
複素環置換ポリアミンには、ヒドロキシアルキル置換ポリアミンが含まれ、ポリアミンは上記のポリアルキレンポリアミンであり、複素環置換基は、窒素含有脂肪族および芳香族複素環、例えば、ピペラジン、イミダゾリン、ピリミジン、および/またはモルホリンから選択される。
【0049】
複素環置換ポリアミンの例は、N-2-アミノエチルピペラジン、N-2およびN-3アミノプロピルモルホリン、N-3(ジメチルアミノ)プロピルピペラジン、2-ヘプチル-3-(2-アミノプロピル)イミダゾリン、1,4-ビス(2-アミノエチル)ピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、および2-ヘプタデシル-1-(2-ヒドロキシエチル)-イミダゾリンである。
【0050】
芳香族ポリアミンには、フェニレンジアミンおよびナフタレンジアミンが含まれる。
【0051】
芳香族ポリアミンの例として、式Ar(N(R3)2)yの化合物が挙げられ、式中、Arは6~20個の炭素原子を含む芳香族部分であり、各R3は、独立して、上記に定義される通りであり、yは2~8である。
【0052】
好ましくは、ポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン、およびそれらの混合物から選択される。
【0053】
無灰窒素含有分散剤は、(a)アミノ化合物と、(b)少なくとも300の数平均分子量を有するヒドロカルビル基で置換されたコハク酸および/またはコハク酸無水物(好ましくはコハク酸無水物)とを、10:1~1:10、好ましくは5:1~1:5、より好ましくは2:1~1:2、最も好ましくは1:1~1:2のa):(b)のモル比で反応させることによって作製することができる。この種類のアシル化反応は、当業者に周知である。
【0054】
無灰窒素含有分散剤の量は、好ましくは、少なくとも1600重量ppm、例えば、少なくとも1700重量ppm、または少なくとも1800重量ppmである。無灰窒素含有分散剤の量は、好ましくは、3900重量ppm以下、3800重量ppm以下、3700重量ppm以下、または3600重量ppm以下である。量の好ましい範囲の例として、1600~3900重量ppm、1700~3800重量ppm、1700~3700重量ppm、および1800~3600重量ppmが挙げられる。
【0055】
任意選択的な金属清浄剤
好ましい実施形態において、本発明の油圧作動油は、最大2000ppmの金属清浄剤をさらに含み得る。より好ましくは、本発明の油圧作動油は、50~2000重量ppmの金属清浄剤を含む。
【0056】
これに関して、疑義を避けるために付言すると、金属清浄剤は、2つ以上の異なる種類の金属清浄剤を含み得るが、但し、金属清浄剤(存在する場合)の総量が2000重量ppmの上限を超えないものとする。換言すれば、金属清浄剤は、1つ以上の金属清浄剤であり得る。これに関して、「1つ以上」という用語は、好ましくは1つ、2つ、または3つを意味し、より好ましくは、1つまたは2つを意味する。しかしながら、典型的には、1つの金属清浄剤を含むだけでよい。
【0057】
金属清浄剤は、好ましくはアルカリ土類金属清浄剤である。より好ましくは、油圧作動油は、フェネート清浄剤、置換ベンゼンスルホネート清浄剤、およびサリチレート清浄剤から選択される上記1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤を含み、上記1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤の総量は、(油圧作動油の総重量について)50~2000重量ppmである。
【0058】
置換ベンゼンスルホネート清浄剤という用語は、ベンゼン置換基が1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ、しかしながら典型的には1つ)の疎水性基を含むベンゼンスルホネート部分を有する清浄剤化合物を指す。好ましくは、上記疎水性基は、ヒドロカルビル基から選択され、より好ましくは、それらはアルキル基から選択される。典型的には、置換ベンゼンスルホネート清浄剤は、アルキルベンゼンスルホネート清浄剤である。
【0059】
好ましくは、アルカリ土類金属はカルシウムまたはマグネシウムであり、より好ましくはカルシウムである。したがって、好ましくは、上記金属清浄剤は、(i)カルシウム清浄剤、(ii)マグネシウム清浄剤、または(iii)カルシウム清浄剤およびマグネシウム清浄剤である。より好ましくは、上記金属清浄剤は、1つ以上のカルシウム清浄剤、例えば1つのカルシウム洗浄剤である。
【0060】
好ましくは、上記金属洗浄剤は、アルカリ土類金属フェネート(例えば、カルシウムフェネート)を含む。より好ましくは、上記金属洗浄剤はカルシウムフェネートである。
【0061】
好ましくは、カルシウムフェネートは、少なくとも100mg KOH/g、例えば、少なくとも200mg KOH/g、例えば、200~300mg KOH/gの総塩基数(TBN)を有するカルシウムフェネートである。TBNは、好ましくは、ASTM D2896によって測定され得る。
【0062】
好ましくは、カルシウムフェネートは、5~14重量%、例えば8~11重量%のカルシウム含有量を有する。典型的には、それは約9.2重量%である。
【0063】
上記金属洗浄剤の総量の下限は、典型的には50ppmであるが、好ましくはより高くてもよく、例えば、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、または100ppmであり得る。上記1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤の総量の上限は2000ppmであるが、好ましくはより低くてもよく、例えば、1800ppm、1700ppm、1600ppm、1500ppm、1400ppm、1300ppm、1200ppm、1100ppm、1050ppm、または1030ppmであり得る。典型的な好ましい濃度範囲は、例えば、50~1500ppm、70~1200ppm、90~1100ppm、または100~1030ppmである。
【0064】
上記金属清浄剤の総量の下限は、典型的には、金属含有量(油圧作動油の総重量に基づく)に換算して4ppmであり得るが、好ましくはより高くてもよく、例えば、10ppm、20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、70ppm、80ppm、90ppmまた100ppmであり得る。金属含有量に換算した上記金属洗浄剤の総量の上限は、典型的には200ppmであり得るが、好ましくはより低くてもよく、例えば、190ppm、180ppm、170ppm、160ppm、150ppm、140ppm、または130ppmであり得る。典型的な好ましい濃度範囲は、例えば、35~115ppm、または40~80ppmである。金属の含有量は、好ましくはASTM D4951によって測定され得る。
【0065】
好ましくは、アルカリ土類金属清浄剤の総含有量は、存在する場合、多くとも1800ppm、例えば、多くとも1600ppm、多くとも1400ppm、多くとも1200ppm、多くとも1100ppm、多くとも1050ppm、または多くとも1030ppmである。
【0066】
好ましくは、本発明の油圧作動油は、その50~2000重量ppmの1つ以上のアルカリ土類金属(好ましくはカルシウム)フェネート、例えば、80~1500重量ppmまたは100~1030重量ppmを含む。
【0067】
任意選択的なリン含有摩耗防止剤
本発明の油圧作動油は、好ましくは、リン含有摩耗防止剤を含み、上記リン含有摩耗防止剤の総量は、(油圧作動油の総重量に基づいて)100~3000重量ppmである。リン含有摩耗防止剤は、無灰ホスフェートおよび/または無灰ホスファイトを含み得る(好ましくはそれらであり得る)。
【0068】
好ましくは、リン含有摩耗防止剤はホスフェートである。したがって、本発明の油圧作動油は、好ましくは、1つ以上のホスフェート摩耗防止剤を含み、上記1つ以上のホスフェート摩耗防止剤の総量は、(油圧作動油の総重量に基づいて)100~3000重量ppmである。
【0069】
これに関して、「1つ以上」という用語は、好ましくは、1つ、2つ、または3つのホスフェート摩耗防止剤、より好ましくは1つまたは2つのホスフェート摩耗防止剤、最も好ましくは2つのホスフェート摩耗防止剤を意味する。
【0070】
好ましくは、上記1つ以上のホスフェート摩耗防止剤は、1つ以上のジチオホスフェート摩耗防止剤である。
【0071】
好ましくは、ホスフェート摩耗防止剤は亜鉛を含まず、より好ましくは、それらは無灰である。したがって、好ましくは、上記1つ以上のホスフェート摩耗防止剤は、1つ以上の無灰ホスフェート摩耗防止剤である。典型的には、上記1つ以上の無灰ホスフェート摩耗防止剤は、1つ以上の有機ホスフェート摩耗防止剤であり、好ましくは、1つ以上の無灰有機ジチオホスフェート摩耗防止剤である。
【0072】
好ましくは、上記1つ以上のホスフェート摩耗防止剤は、式(II)の1つ以上のホスフェート化合物、
【化5】
および/またはその摩擦学的に許容される塩であり、式中、
-各R
AおよびR
Bは、独立して、1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-各X
1、X
2、X
3、およびX
4は、独立して、SまたはOであり、
-R
Cは、1~20個の炭素原子を含む2価のヒドロカルビル基であり、
-X
5は、-C(O)O-または-O-であり、
-R
Dは、水素または1~20個の炭素原子を含む、ヒドロカルビル基である。
【0073】
好ましくは、各RAおよびRBは、独立して、直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、またはフェニル等のアリール基である。より好ましくは、各RAおよびRBは、独立して、直鎖または分岐鎖アルキル基である。
【0074】
好ましくは、各RAおよびRBは、独立して、1~12個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子、さらにより好ましくは2~6個の炭素原子を含む。RAおよびRBの好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチル等のアルキル基である。i-プロピル基およびi-ブチル基が特に好ましい。
【0075】
X1は、好ましくはSである。
【0076】
X2は、好ましくはOである。
【0077】
X3は、好ましくはOである。
【0078】
X4は、好ましくはSである。
【0079】
好ましくは、RCは、直鎖もしくは分岐鎖アルキレン基、またはフェニレン等のアリーレン(すなわち、二価のアリール)基である。より好ましくは、RCは、直鎖または分岐鎖アルキレン基である。
【0080】
好ましくは、RCは、1~12個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子、さらにより好ましくは2~6個の炭素原子を含む。RCの好ましい例は、-CH2-、-CH2-CH2-,-CH2-CH2-CH2-、-CH(CH3)-CH2-、-CH2-CH(CH3)-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH(CH3)-CH2-CH2-、-CH2-CH(CH3)-CH2-、-CH2-CH2-CH(CH3)-、-CH(CH3)-CH(CH3)-、-C(CH3)2-CH2-、および-CH2-C(CH3)2-等のアルキレン基である。これらのうち、2つまたは3つの炭素原子を含む基、特に-CH2-CH2-および-CH2-CH(CH3)-が好ましい。
【0081】
X5は、好ましくは-C(O)O-である。
【0082】
特に好ましい実施形態において、X1およびX4はSであり、X2およびX3はOである。
【0083】
RDが1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である場合、それは好ましくは1~12個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子、さらにより好ましくは2~6個の炭素原子を含む。
【0084】
好ましくは、RDは、水素、直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、またはフェニル等のアリール基である。より好ましくは、RDは、水素、または直鎖もしくは分岐鎖アルキル基である。
【0085】
RDが直鎖または分岐鎖アルキル基である場合、RDの好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチルである。エチル、n-プロピル、およびi-プロピルが特に好ましく、i-プロピルが最も好ましい。
【0086】
特に好ましい実施形態において:
-各RAおよびRBは、独立して2~6個の炭素原子を含むアルキル基であり、
-X1およびX4はSであり、
-X2およびX3はOであり、
-RCは、2~6個の炭素原子を含む2価のアルキル基であり、
-X5は-C(O)O-であり、
-RDは、水素、または2~6個の炭素原子を含む、アルキル基である。
【0087】
さらにより好ましい実施形態において、式(II)の上記1つ以上のホスフェート化合物は、以下の2つの化合物のうちの1つ以上(好ましくは両方)である。
【化6】
【0088】
上記リン含有摩耗防止剤(典型的には、1つ以上のホスフェート摩耗防止剤である)の総量の下限は100ppmであるが、好ましくはより高くてもよく、例えば、200ppm、300ppm、400ppm、500ppm、600ppm、700ppm、800ppm、900ppm、1000ppm、1100ppm、1200ppm、1300ppm、または1400ppmであり得る。上記リン含有摩耗防止剤(典型的には、1つ以上のホスフェート摩耗防止剤である)の総量の上限は3000ppmであるが、いくつかの(低リン)実施形態において、より低くてもよく、例えば、2900ppm、2800ppm、2700ppm、2600ppm、2500ppm、2400ppm、2300ppm、2200ppm、2100ppm、2000ppm、1900ppm、1800ppm、1700ppm、1600ppm、または1500ppmであり得る。好ましい濃度範囲は、例えば、500~2500ppm、または750~2000ppm、または900~1600ppmである。
【0089】
リン含有量(油圧作動油の総重量に基づく)に換算した上記リン含有摩耗防止剤(典型的には、1つ以上のホスフェート摩耗防止剤である)の総量の下限は、典型的には10ppmであるが、好ましくはより高くてもよく、例えば、20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、100ppm、110ppm、120ppm、または130ppmであり得る。リン含有量(油圧作動油の総重量に基づく)に換算した上記リン含有摩耗防止剤(典型的には、1つ以上のホスフェート摩耗防止剤)の総量の上限は、典型的には300ppmであるが、いくつかの(低リン)実施形態において、より低くてもよく、例えば、290ppm、280ppm、270ppm、260ppm、250ppm、240ppm、230ppm、220ppm、210ppm、200ppm、190ppm、または180ppmであり得る。好ましい濃度範囲は、例えば、50~250ppm、または75~200ppm、または100~160ppmである。
【0090】
特に好ましい実施形態において、上記リン含有摩耗防止剤(典型的には1つ以上のホスフェート摩耗防止剤である)は、(i)式(II)の化合物(式中、RAおよびRBは、独立して、2~6個の炭素原子(典型的には、イソブチル等の4個の炭素原子)を含むアルキル基であり、X1およびX4はSであり、X2およびX3はOであり、RCは、2~6個の炭素原子(典型的には-CH2-CH(CH3)-)を含む2価のアルキル基であり、X5は-C(O)O-であり、RDは水素である)またはその摩擦学的に許容される塩と、(ii)式(II)の化合物(式中、RAおよびRBは、独立して、2~6個の炭素原子(典型的には、イソプロピル等の3個の炭素原子)を含むアルキル基であり、X1およびX4はSであり、X2およびX3はOであり、RCは、2~6個の炭素原子(典型的にはエチレン)を含む2価のアルキル基であり、X5は-C(O)O-であり、RDは、2~6個の炭素原子を含むアルキル基である)またはその摩擦学的に許容される塩との組み合わせである。これに関して、薬剤(i)は、100~2000ppm、好ましくは200~1500ppm、より好ましくは250~1200ppmの量で使用され、かつ/または(好ましくは)その薬剤(ii)は、400~2800ppm、好ましくは600~2500ppm、より好ましくは750~2000ppm、さらにより好ましくは750~1500ppmの量で使用される。
【0091】
好ましくは、油圧作動油は、上記のリン含有摩耗防止剤以外の摩耗防止剤を実質的に含まない。
【0092】
好ましくは、油圧作動油は、上記のリン含有摩耗防止剤以外のリン含有化合物を実質的に含まない。
【0093】
好ましくは、油圧作動油は、上記のリン含有摩耗防止剤以外の摩耗防止剤およびリン含有化合物を実質的に含まない。
【0094】
例えば、上記のリン含有摩耗防止剤が特定のサブセット/タイプのホスフェート摩耗防止剤またはそれらの組み合わせである本発明の好ましい態様では、油圧作動油は、好ましくは、他のいずれのホスフェート摩耗防止剤も実質的に含まない。
【0095】
好ましくは、油圧作動油中の(任意の種類の)リン含有化合物の総含有量は、100~3000重量ppmである。より好ましくは、リン含有化合物の総含有量は、多くとも2600ppm、例えば、多くとも2400ppm、多くとも2200ppm、多くとも2100ppm、または多くとも2000ppmである。典型的には、リン含有化合物(存在する場合)の総含有量は、上記のリン含有摩耗防止剤の濃度に本質的に対応する。
【0096】
好ましくは、油圧作動油の総リン含有量は、多くとも2000ppm、例えば、多くとも1000ppm、多くとも800ppm、多くとも500ppm、多くとも400ppm、または多くとも300ppmである。本発明はまた、低リン含有量の作動油の配合も可能にする。したがって、さらに好ましい実施形態において、油圧作動油の総リン含有量は、多くとも250ppm、多くとも220ppm、多くとも200ppm、または多くとも180ppmである。典型的には、油圧作動油の総リン含有量は、少なくとも20ppm、例えば、少なくとも40ppm、少なくとも60ppm、少なくとも80ppm、少なくとも100ppm、または少なくとも120ppmである。特に好ましい態様では、油圧作動油の総リン含有量は、50~500ppm、100~300ppm、または120~180ppmである。リン含有量は、好ましくは、ASTM D4951によって測定され得る。
【0097】
上記のように、リン含有摩耗防止剤は、好ましくは無灰である。さらに、好ましくは、油圧作動油の総亜鉛含有量は、多くとも500ppm、より好ましくは多くとも400ppm、さらにより好ましくは多くとも300ppm、例えば、多くとも200ppm、多くとも100ppm、多くとも50ppm、多くとも20ppm、または多くとも10ppmである。特に好ましい実施形態において、油圧作動油は、亜鉛を本質的に含まない。亜鉛含有量は、好ましくはASTM D4951によって測定され得る。
【0098】
任意選択的な防錆剤成分
本発明の油圧作動油は、好ましくは、1つ以上の防錆剤をさらに含む。好ましくは、上記1つ以上の防錆剤は、少なくとも1つのスルホネート防錆剤、より好ましくは、任意選択的に置換されたナフタレンスルホン酸の少なくとも1つの誘導体を含み、この誘導体は、ナフタレンスルホン酸の中性金属塩、ナフタレンスルホン酸の塩基性金属塩、ナフタレンスルホン酸のアミン塩の金属錯体、およびナフタレンスルホン酸のエステルからなる群から選択され、ナフタレンスルホン酸は、好ましくは、以下の式の化合物であり、
【化7】
式中、各R
1および各R
2は、独立して、1~30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、xは0~4であり、yは0~3である。好ましくは、x+y≧1である。好ましくは、ヒドロカルビル基は、アルキル基である。したがって、好ましくは、任意選択的に置換されたナフタレンスルホン酸は、モノ、ジ、またはポリアルキル化ナフタレンスルホン酸である。好適な誘導体はUS6436882に記載されている。そのような薬剤は、本発明の作動油の腐食抑制特性を高めるのに特に有用であり得る。好ましくは、これに関して、上記ヒドロカルビル基は、少なくとも4個の炭素原子、より好ましくは少なくとも10個の炭素原子を有する。好ましくは、上記ヒドロカルビル基は、最大20個の炭素原子、より好ましくは最大14個の炭素原子を有する。好ましくは、上記ヒドロカルビル基は、直鎖または分岐鎖アルキル基であり、より好ましくは直鎖アルキル基である。
【0099】
好ましくは、誘導体は、Caアルキルナフタレンスルホネート/カルボキシレート錯体である。錯体のCa含有量は、好ましくは1.5~3.0重量%、例えば2.0~2.5重量%である。典型的には、それは約2.2重量%である。
【0100】
上記1つ以上の防錆剤の総量の下限は、存在する場合、好ましくは10ppmであるが、より好ましくはより高く、例えば、20ppm、40ppm、60ppm、80ppm、または100ppmである。総量の上限は、好ましくは2000ppmであるが、より好ましくはより低くてもよく、例えば、1800ppm、1700ppm、1600ppm、1500ppm、1400ppm、1300ppm、1200ppm、1100ppm、1000ppm、または900ppmであり得る。典型的な好ましい濃度範囲は、例えば、40~1500ppm、または100~1000ppmである。
【0101】
任意選択的な酸化防止成分
本発明の油圧作動油は、好ましくは、1つ以上の酸化防止剤をさらに含む。
【0102】
これに関して、「1つ以上の酸化防止剤」という用語は、好ましくは1つ、2つ、または3つの酸化防止剤、より好ましくは1つまたは2つの酸化防止剤、最も好ましくは2つの酸化防止剤を意味する。しかしながら、疑義を避けるために付言すると、「1つ以上」という用語が特定の数、例えば2として定義される状況では、これはさらなる酸化防止剤の存在を排除するものではない。
【0103】
好ましくは、上記1つ以上の酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤(典型的にはヒンダードフェノール酸化防止剤)および/またはアミン系酸化防止剤(典型的には芳香族アミン系酸化防止剤)から選択される。特に好ましい実施形態において、上記1つ以上の酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤である。
【0104】
好ましいフェノール系酸化防止剤は、アルキル化モノフェノールである。アルキル化モノフェノール酸化防止剤の例として、2,6-ジ-tert-ブチル-フェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-イソブチルフェノール、2,6-ジシクロペンチル-4-メチルフェノール、2-(α-メチルシクロヘキシル)-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジオクタデシル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリシクロヘキシルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシメチルフェノール、2,6-ジ-ノニル-4-メチルフェノール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0105】
アミン系酸化防止剤の例として、N,N’-ジノニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジオクチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジデシル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、Ν,Ν’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(2-ナフチル)-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチル-ブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1-メチルヘプチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、4-(p-トルエンスルファモイル)ジフェニルアミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N-アリルジフェニルアミン、4-イソプロポキシジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、例えば、p,p’-ジ-tert-オクチルジフェニルアミン、4-N-ブチルアミノフェノール、4-ブチリルアミノフェノール、4-ノナノイルアミノフェノール、4-ドデカノイルアミノフェノール、4-オクタデカノイルアミノフェノール、ビス(4-メトキシフェニル)アミン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ジメチルアミノメチルフェノール、2,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,2-ビス[(2-メチル-フェニル)アミノ]エタン、1,2-ビス(フェニルアミノ)プロパン、(o-トリル)ビグアニド、ビス[4-(1’,3’-ジメチルブチル)フェニル]アミン、tert-オクチル化N-フェニル-1-ナフチルアミン、モノ-およびジアルキル化tert-ブチル/tert-オクチルジフェニルアミンの混合物、モノ-およびジアルキル化イソプロピル/イソヘキシルジフェニルアミンの混合物、モノおよびジアルキル化tert-ブチルジフェニルアミンの混合物、2,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-4H-1,4-ベンゾチアジン、フェノチアジン、N-アリルフェノチアジン、N,N,N’,N’-テトラフェニル-1,4-ジアミノブト-2-エン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0106】
好ましいアミン系酸化防止剤は、芳香族アミン系酸化防止剤であり、特に、ジアルキル化/ジアリール化ジフェニルアミン系酸化防止剤等の、ジアルキル化またはジアリール化ジアリールアミン系酸化防止剤である。したがって、好ましくは、アミン系酸化防止剤は、N,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミンまたはN,N’-ジアリール-p-フェニレンジアミンである。より好ましくは、これに関して、アリール部分は非置換または置換フェニルであり、アルキル部分は、1~20個の炭素原子、例えば4~15個の炭素原子、または7~12個の炭素原子を含む。さらにより好ましくは、アミン系酸化防止剤は、アルキル部分が1~20個の炭素原子、例えば4~15個の炭素原子、または7~12個の炭素原子を含むN,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミンである。
【0107】
上記1つ以上の酸化防止剤(好ましくは、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤)の総量は、存在する場合、好ましくは500~5000ppmである。下限は、好ましくは、例えば、600ppm、700pmp、800ppm、900ppm、1000ppm、1100ppm、または1200ppmであり得る。上限は、好ましくは、例えば、4500ppm、4000ppm、3500ppm、3200ppm、3000ppm、2900ppm、2800ppm、2700ppm、または2600ppmであり得る。典型的な好ましい濃度範囲は、例えば、1000~3500ppm、または1500~2600ppmである。
【0108】
特に好ましい実施形態において、上記1つ以上の酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤であり、フェノール系酸化防止剤は、アルキル化モノフェノール(好ましくは、2,6-ジ-tert-ブチル-フェノール)であり、アミン系酸化防止剤は、アルキル部分が7~12個の炭素原子を含むN,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミン(好ましくは、N,N’-ジノニル-p-フェニレンジアミン)である。
【0109】
上記1つ以上の酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤である好ましい態様では、フェノール系酸化防止剤の量は、好ましくは400~4000ppmであり、アミン系酸化防止剤の量は、好ましくは100~1000ppmである。フェノール系酸化防止剤の量の下限は、好ましくは、500ppm、600ppm、700ppm、800ppm、900ppm、または1000ppmである。場合によっては、1200ppmまたは1500ppm等、さらに高くてもよい。フェノール系酸化防止剤の量の上限は、好ましくは、3500ppm、3000ppm、2500ppm、2300ppm、2200ppm、2100ppm、または2000ppmである。アミン系酸化防止剤の量の下限は、好ましくは、150ppm、180ppm、200ppm、220ppm、240ppm、または250ppmである。場合によっては、280ppm、300ppm、または320ppm等、さらに高くてもよい。アミン系酸化防止剤の量の上限は、好ましくは700ppm、例えば、600ppm、550ppm、500ppmである。場合によっては、450ppm、400ppm、または380ppm等、さらに低くてもよい。
【0110】
基油
本発明の油圧作動油は、多量の基油を含む。「多量」という用語は、基油が、重量の観点から油圧作動油の大部分を占めること、すなわち、基油が少なくとも50重量%を占めることを意味する。典型的には、基油は、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、または少なくとも93%を占める。基油は、油圧作動油の圧倒的大部分、例えば、最大99.6%、最大99.5%、最大99.4%、最大99.3%、または最大99.2%を占め得る。典型的には、基油は、油圧作動油の90.0~99.6重量%、例えば、92.0~99.6重量%または93.0~99.2重量%を占める。
【0111】
基油は、天然油、合成油、または1つ以上の天然油および/もしくは1つ以上の合成油の混合物であり得る。
【0112】
基油は、特に鉱物油の場合、100℃で2.0mm2/s(cSt)~25.0mm2/s(cSt)の動粘度を有し得る。しかしながら、油圧作動油は、他の粘度の油、例えば、添加剤の一部を送達するために使用されるキャリア流体に由来する油も含む場合がある。したがって、油圧作動油は、動粘度32~68の流体を送達することを含み得る。
【0113】
好適な天然油は、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油およびラード油)、石油、鉱物油、または石炭もしくは頁岩に由来する油である。好ましくは、天然油は鉱物油である。
【0114】
好ましい実施形態において、基油は鉱物油である。好適な鉱物油は、すべての一般的な鉱物油のベースストックを含む。
【0115】
鉱物油は、好ましくは2000ppm以下、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1200ppm以下の硫黄含有量を有する。いくつかの実施形態において、硫黄含有量はさらに低くてもよく、例えば、300ppm以下、100ppm以下、50ppm以下、20ppm以下、または10ppm以下であり得る。
【0116】
鉱物油は、好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも98%の飽和含有量を有する。
【0117】
鉱物油は、好ましくは、グループI、グループIIもしくはグループIIIの基油、またはグループI、グループIIおよびグループIIIの基油から選択される2つ以上の基油の混合物である。
【0118】
鉱物油は、ナフテン系またはパラフィン系であり得る。鉱物油は、酸、アルカリ、および粘土または塩化アルミニウム等の他の薬剤を使用する従来の方法によって精製することができるか、または例えばフェノール、二酸化硫黄、フルフラールもしくはジクロロジエチルエーテル等の溶剤を用いた溶剤抽出によって生成される抽出油であり得る。鉱物油は、水素化処理もしくは水素化精製、冷却もしくは接触脱ロウプロセスによる脱ロウ、またはSK Innovation Co.,Ltd(Seoul,Korea)の水素化分解基油のYubase(登録商標)ファミリーのように水素化分解することができる。鉱物油は、天然の原油源から生成され得るか、または、異性化されたワックス材料もしくは他の精製プロセスの残留物で構成され得る。
【0119】
合成油の可能な選択肢には、炭化水素油、ならびにオリゴマー化、重合、および相互重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン、イソブチレンコポリマー、塩素化ポリラクテン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ-(1-デセン)およびそれらの混合物)等のハロ置換炭化水素油;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、およびジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、およびアルキル化ポリフェニル);アルキル化ジフェニルエーテル;およびアルキル化ジフェニルスルフィドが含まれる。好ましい合成油は、α-オレフィンのオリゴマー、特に1-デセンのオリゴマーである。
【0120】
合成油の他の可能な選択肢には、アルキレンオキシドポリマー、インターポリマー、コポリマー、および末端ヒドロキシル基が例えばエステル化またはエーテル化によって修飾されているそれらの誘導体が含まれる。例として以下が挙げられる:エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合によって調製されたポリオキシアルキレンポリマー;これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルおよびアリールエーテル(例えば、約1000の平均分子量を有するメチルポリイソプロピリレングリコールエーテル、および例えば約1000~1500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジフェニルエーテル);およびそのモノカルボン酸およびポリカルボン酸エステル(例えば、酢酸エステル、混合C3-C8脂肪酸エステル、およびテトラエチレングリコールのC12オキソ酸ジエステル)。
【0121】
合成油の他の可能な選択肢には、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、またはアルケニルマロン酸)と、様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、またはプロピレングリコール)とのエステルが含まれる。これらのエステルの例として、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、ならびに1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2-エチルヘキサン酸とを反応させることによって形成される複合エステルが挙げられる。このクラスの合成油で好ましいのは、C4~C12のアルコールのアジペートである。
【0122】
合成基油として有用なエステルには、C5~C12モノカルボン酸とポリオールおよびポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等から製造されるものも含まれる。
【0123】
合成油の他の可能な選択肢には、ポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ、またはポリアリールオキシシロキサン油およびシリケート油等のシリコン系油が含まれる。例として、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(p-tert-ブチルフェニル)シリケート、ヘキサ-(4-メチル-2-ペントキシ)-ジシロキサン、ポリ(メチル)-シロキサンおよびポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。
【0124】
他の合成油には、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、およびデシルホスホン酸のジエチルエステル)、高分子テトラヒドロフラン、およびポリ-α-オレフィンが含まれる。しかしながら、当然のことながら、リン含有酸の液体エステルは、油圧作動油が比較的低レベルのリンを含む上記の本発明の好ましい実施形態にとって、基油の適切な選択ではないであろう。
【0125】
油は、未精製、精製、再精製であり得るか、または未精製/精製/再精製油の混合物を含み得る。未精製油は、さらに精製または処理することなく、天然源または合成源(例えば、石炭、頁岩、またはタールサンドビチューメン)から直接得られる。未精製油の例として、レトルト操作から直接得られる頁岩油、蒸留から直接得られる石油、またはエステル化処理から直接得られるエステル油が挙げられ、それぞれがさらに処理されることなく使用される。精製油は、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて、未精製油と同様である。好適な精製技術には、蒸留、水素化処理、脱ロウ、溶剤抽出、酸または塩基抽出、濾過、およびパーコレーションが含まれ、これらはすべて当業者に既知である。再精製油は、使用済みの油を、精製油を得るのに使用されるのと同様のプロセスで処理することによって得られる。これらの再精製油は、再生油または再処理油としても知られ、使用済み添加剤および油分解生成物を除去するためにさらに処理されることが多い。本発明で使用される基油は、好ましくは精製または再精製油であり、より好ましくは精製油である。
【0126】
基油の他の可能な選択肢には、フィッシャー・トロプシュ反応等のプロセスによって天然ガスから誘導された油が含まれ、これは、Gas-to-Liquid(GTL)ベースストックと呼ばれることもある。
【0127】
基油が1つ以上の天然油と1つ以上の合成油との混合物である実施形態において、天然油は好ましくは鉱物油であり、かつ/または(典型的には)合成油は好ましくはポリα-オレフィン(PAO)、例えば1-デセンのオリゴマーに基づく油である。
【0128】
油圧作動油のさらなる態様
本発明の油圧作動油は、好ましくは抗乳化剤を含む。好ましくは、抗乳化剤は非イオン性界面活性剤である。より好ましくは、それはヒドロキシル基で終結するブロックコポリマーである。
【0129】
油圧作動油中の抗乳化剤の濃度は、好ましくは1重量ppm~500重量ppmである。量は、好ましくは、少なくとも2ppm、例えば、少なくとも5ppm、少なくとも8ppm、または少なくとも10ppmである。量の上限は、好ましくは、400ppm、例えば、多くとも300ppm、多くとも200ppm、多くとも150ppm、多くとも120ppm、または多くとも100ppmである。
【0130】
本発明の油圧作動油は、粘度指数向上剤(VII)とも称され得る粘度調整剤(VM)を含んでもよい。VIIの例として、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ビニルピロリドン/メタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、オレフィンコポリマー、スチレン/アクリレートコポリマー、ポリエーテル、およびそれらの組み合わせが挙げられる。存在する場合、VIIは、100~250の粘度指数(VI)を実現する量で使用することができる。より好ましくは、VIIは、低温特性および/またはシステム動作効率の改善のために、145~190のVIを実現する量で使用することができる。
【0131】
本発明の油圧作動油は、100℃で15mm2/s(cSt)~150mm2/s(cSt)の動粘度を有し得る。
【0132】
本発明の油圧作動油は、流動点降下剤(PPD)を含み得る。PPDの例として、ポリメタクリレートおよびアルキル化ナフタレン誘導体、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。存在する場合、PPDは、低温特性の改善のために、油圧作動油の0.001~1.0重量%の量で使用することができる。
【0133】
本発明の油圧作動油は、(とりわけ)腐食抑制剤のための担体または溶剤を含み得る。本発明の腐食抑制剤は固体形態であってもよく、その場合、それを油圧作動油の他の成分と接触させる前に、担体または溶剤に溶解させることが好ましい。したがって、本発明の油圧作動油は、典型的には、腐食抑制剤(すなわち、成分(a))を溶解させるのに好適な50~1000pmpの担体または溶剤を含む。担体(または溶剤)の量は、存在する場合、少なくとも100ppm、例えば、少なくとも200ppm、または少なくとも300ppmであり得る。担体(または溶剤)の量は、存在する場合、好ましくは、多くとも800ppm、例えば、多くとも600ppm、多くとも500ppm、または多くとも400ppmである。好ましくは、担体/溶剤は、アルコール、典型的にはアルカノール(すなわち、非芳香族アルコール)である。好ましくは、担体/溶剤は一級アルコールである。アルコールの好ましい例は、4~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキルアルコールである。好適な例として、1-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、1-オクタノールおよび1-デカノールが挙げられる。
【0134】
別途記載されない限り(例えば、特定の種類の化合物の量の上限を導入する実施形態に関して)、原則として、本発明の油圧作動油は、以下のような当技術分野で既知の1つ以上のさらなる添加剤を任意選択的に含み得る:例えば、0.2~1.5%の量で使用され得る酸化防止剤(例えば、金属ジチオホスフェートおよび/または硫化オレフィン);0.05~1.0%の量で使用され得る腐食抑制剤(例えば、カルボン酸、金属スルホネートおよび/またはアルキル化カルボン酸);0.5~50ppmの量で使用され得る消泡剤(例えば、ポリシロキサンおよび/または有機エステル);0.5~2.0%の量で使用され得る摩耗防止剤(例えば、アリールホスフェート、ジアルキルジチオリン酸亜鉛および/または有機硫黄/リン化合物);3~25%の量で使用され得る粘度指数向上剤(例えば、ポリメタクリレートエステル、スチレンイソプレンコポリマーおよび/またはポリオレフィン);0.05~1.5%の量で使用され得る流動点降下剤(例えば、ポリメタクリレートエステルおよび/またはナフタレンワックス縮合生成物);0.1~1%の量で使用され得る摩擦調整剤(例えば、脂肪酸および/または脂肪酸のエステル);0.02~0.2%の量で使用され得る清浄剤(例えば、金属サリチレートおよび/または金属スルホネート);および/または(好ましくはおよび)1~5%の量で使用され得るシール膨潤剤(例えば、有機エステルおよび/または芳香族)。
【0135】
本発明の油圧作動油は、様々な任意選択的な添加剤を含み得るが、本明細書に記載されるような本発明の有益な効果を損なう添加剤の不必要な使用を回避することが好ましい。したがって、シールおよび/または黄色金属に有害な添加剤の使用を回避するまたは最小限に抑えることが好ましい(例えば、シールに悪影響を与える可能性のある脂肪イミダゾリンの使用を回避することが好ましい)。これと一致して、作動油は、以下に記載されるような性能レベルを享受し得ることが好ましい。
【0136】
本発明の油圧作動油は、好ましくは、合格スコア、すなわち、RFT-EC-Rexroth-Fluid-Test-Elastomer-Compatibility HLP/HVLP/HEPRに従って決定可能な以下の特性のうちの1つ以上(好ましくはすべて)に関して許容限界内(より好ましくは理想限界内)のスコアを提供する:体積の変化、重量の変化、硬度の変化、引張強度の変化、および/または破断点伸びの変化。好ましくは、これに関して、使用されるシールは、75 FKM 595等のFKMフルオロポリマー(またはFKMフルオロエラストマー)である。
【0137】
本発明の油圧作動油は、ASTM D130銅ストリップ試験に従って試験され、試験が3時間の期間にわたって100℃の温度で実施される場合、好ましくは少なくとも2B、より好ましくは1Bの評価を得る。
【0138】
本発明の油圧作動油は、ASTM D130銅ストリップ試験に従って試験され、試験が3時間の期間にわたって121℃の温度で実施される場合、好ましくは少なくとも2B、より好ましくは少なくとも1Bの評価を得る。
【0139】
本発明の作動油は、ASTM D130銅ストリップ試験に従って試験され、試験が168の期間にわたって100℃の温度で実施される場合、好ましくは少なくとも2B、好ましくは少なくとも2A、より好ましくは少なくとも1Bの評価を得る。
【0140】
本発明の油圧作動油は、好ましくは、(i)0.15未満、より好ましくは0.10未満の銅重量損失、および/または(ii)ASTM D2619に従って試験された場合、少なくとも2B、より好ましくは少なくとも1Bの銅の評価を提供する。
【0141】
本発明の油圧作動油は、ASTM D664に従って試験された場合、好ましくはゼロのH2O TANスコアを提供する。
【0142】
本発明の油圧作動油は、ASTM D2272回転圧力容器による蒸気タービン油の酸化安定性の標準試験法に関する標準試験法に従って試験された場合、好ましくは少なくとも300分、より好ましくは少なくとも350分のRPVOTスコアを提供する。
【0143】
本発明の油圧作動油は、好ましくは、ASTM D665水の存在下での抑制鉱物油の防錆特性に関する標準試験法の合格を達成する。
【0144】
本発明の油圧作動油は、ASTM D4310抑制鉱物油のスラッジ化および腐食傾向の決定のための標準試験法に従って試験された場合、好ましくは(i)10.0mg以下、好ましくは8.0mg以下の銅重量、および/または(ii)1.0mg以下、好ましくは0.7mg以下の鉄重量を達成する。
【0145】
添加剤濃縮物
油圧作動油等の潤滑油組成物は、基油を比較的高濃度の複数の添加剤を含む添加剤濃縮物と組み合わせることにより、配合者によって日常的に調製される。本発明は、
(a)0.9~3.6重量%の腐食抑制剤であって、式(I)の1つ以上の化合物
【化8】
(式(I)中、
-各R
1は、独立して1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xは、0~4であり、
-R
2は、水素、または1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)、および/またはその摩擦学的に許容される塩である、腐食抑制剤と、
(b)11~50重量%(好ましくは11~45重量%)の無灰窒素含有分散剤と、
(c)希釈剤と、を含む添加剤濃縮物を提供する。
【0146】
好ましくは、腐食抑制剤は、少なくとも1.1重量%、より好ましくは少なくとも1.3重量%、さらにより好ましくは少なくとも1.5重量%、典型的には少なくとも1.7重量%の量で存在する。腐食抑制剤の量の上限は、好ましくは3.3重量%、より好ましくは3.1重量%、さらにより好ましくは2.9重量%、典型的には2.7重量%である。典型的には、腐食抑制剤は、1.7~2.7重量%の量で存在する。
【0147】
好ましくは、腐食抑制剤は、窒素含有量に換算して、少なくとも0.30重量%、より好ましくは少なくとも0.40、さらにより好ましくは少なくとも0.50重量%、典型的には少なくとも0.54重量%の量で存在する。腐食抑制剤の量の上限は、窒素含有量に換算して、好ましくは2.0重量%、より好ましくは1.6重量%、さらにより好ましくは1.2重量%、典型的には0.85重量%である。典型的には、腐食抑制剤は、窒素含有量に換算して、0.40~2.0重量%、より典型的には0.54~0.85重量%の量で存在する。
【0148】
好ましくは、分散剤は、少なくとも11重量%、より好ましくは少なくとも12重量%、典型的には少なくとも13重量%の量で存在する。分散剤の量の上限は、好ましくは48重量%、より好ましくは46重量%、典型的には45重量%である。典型的には、分散剤は13~45重量%の量で存在する。
【0149】
好ましくは、腐食抑制剤は1.7~2.7重量%の量で存在し、分散剤は13~45重量%の量で存在する。
【0150】
好ましくは、添加剤濃縮物は、1つ以上の金属清浄剤をさらに含む。上記1つ以上の金属清浄剤は、好ましくは、少なくとも0.4重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも0.6重量%、典型的には少なくとも0.7重量%の量で存在する。上記1つ以上の金属清浄剤の量の上限は、好ましくは15重量%、より好ましくは12重量%、さらにより好ましくは10重量%、典型的には8.0重量%である。典型的には、上記1つ以上の金属清浄剤は、0.7~8.0重量%の量で存在する。
【0151】
好ましくは、添加剤濃縮物は、リン含有摩耗防止剤をさらに含む。より好ましくは、リン含有摩耗防止剤は、1つ以上のホスフェート摩耗防止剤である。上記リン含有摩耗防止剤(好ましくは1つ以上のホスフェート摩耗防止剤である)は、好ましくは少なくとも0.7重量%、より好ましくは少なくとも3.7重量%、さらにより好ましくは少なくとも5.5重量%、典型的には少なくとも6.5重量%の量で存在する。上記リン含有摩耗防止剤(好ましくは1つ以上のホスフェート摩耗防止剤である)の量の上限は、好ましくは23重量%、より好ましくは19重量%、さらにより好ましくは15重量%である。典型的には、上記リン含有摩耗防止剤(好ましくは1つ以上のホスフェート摩耗防止剤である)は、6.5~15重量%の量で存在する。
【0152】
好ましくは、添加剤濃縮物は、1つ以上の酸化防止剤をさらに含む。上記1つ以上の酸化防止剤は、好ましくは、少なくとも3.7重量%、より好ましくは少なくとも7.5重量%、典型的には少なくとも11重量%の量で存在する。上記1つ以上の酸化防止剤の量の上限は、好ましくは37重量%、より好ましくは30重量%、典型的には26重量%である。典型的には、上記1つ以上の酸化防止剤は、11~26重量%の量で存在する。
【0153】
好ましくは、添加剤濃縮物は、1つ以上の防錆剤をさらに含む。上記1つ以上の防錆剤は、好ましくは、少なくとも0.07重量%、より好ましくは少なくとも0.3重量%、典型的には少なくとも0.7重量%の量で存在する。上記1つ以上の防錆剤の量の上限は、好ましくは15重量%、より好ましくは13重量%、典型的には11重量%である。典型的には、上記1つ以上の防錆剤は、0.7~11重量%の量で存在する。
【0154】
好ましくは、添加剤濃縮物は、抗乳化剤をさらに含む。上記抗乳化剤は、好ましくは、少なくとも0.007重量%、より好ましくは少なくとも0.04重量%、典型的には少なくとも0.07重量%の量で存在する。上記1つ以上の抗乳化剤の量の上限は、好ましくは3.7重量%、より好ましくは2.3重量%、典型的には1.0重量%である。典型的には、上記1つ以上の抗乳化剤は、0.07~1.0重量%の量で存在する。
【0155】
典型的な実施形態において、添加剤濃縮物は、0.7~8.0重量%の量の1つ以上の金属清浄剤;0.7~23重量%の量の1つ以上のホスフェート摩耗防止剤;3.7~37重量%の量の1つ以上の酸化防止剤;0.07~15重量%の量の1つ以上の防錆剤;および/または0.007~3.7重量%の量の抗乳化剤を(さらに)含む。
【0156】
本発明の油圧作動油中に存在し得る添加剤の性質(すなわち、腐食抑制、分散剤、清浄剤、摩耗防止、酸化防止剤、防錆剤、および抗乳化剤成分)に関連して上記/本明細書に記載される特徴は、本発明の添加剤濃縮物に使用するための添加剤にも(独立して)適用される。
【0157】
添加剤濃縮物は、好ましくは希釈剤を含む。
【0158】
希釈剤が存在する場合、希釈剤を構成する任意の物質が何であるかには特に制限されない。存在する添加剤成分のうちの1つ以上の担体として機能するのに好適な任意の物質を使用することができる。典型的には、希釈剤は基油である。本発明の油圧作動油中に存在する基油の性質に関連して上記/本明細書に記載される特徴は、本発明の添加剤濃縮物中の希釈剤としての可能な使用のための基油にも(独立して)適用される。
【0159】
本発明の添加剤濃縮物は、好ましくは、本明細書に定義される本発明の油圧作動油を調製する際に使用するのに適している(例えば、好適な量の添加剤濃縮物を基油と組み合わせることによる)。
【0160】
定義
別途記載されない限り、本明細書におけるppmまたは%へのすべての言及は、重量の観点からppmまたは%を指すことを意図している。また、別途記載されない限り、そのようなすべての言及は、油圧作動油の総重量に対する所与の物質の量を指すことを意図している。
【0161】
使用される場合、「ヒドロカルビル」という用語は、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、かつヒドロカルビル特性または主にヒドロカルビル特性を有する基を指す。非炭化水素(ヘテロ)原子、基または置換基は、それらの存在が基の主にヒドロカルビルの性質を変更しないという条件で存在し得る。例えば、すべてのヘテロ原子、ヘテロ原子含有基、またはヘテロ原子含有置換基に対して(好ましくはすべてのヘテロ原子に対して)、少なくとも4個、より好ましくは少なくとも6個、さらにより好ましくは少なくとも8個、およびさらにより好ましくは少なくとも10個の炭素原子が存在するべきである。好ましいヘテロ原子は、O、S、Nおよびハロであり、より好ましいのは、O、SおよびNである。好ましいヘテロ原子含有基または置換基は、アミン、ケト、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アルコキシおよびアシルである。多くとも1つまたは2つのヘテロ原子、ヘテロ原子含有基、またはヘテロ原子含有置換基を含むヒドロカルビル基が好ましい。より好ましいのは、炭素および水素原子のみに基づくヒドロカルビル基であり、最も好ましいのは、脂肪族基、特にアルキル基である。
【0162】
本明細書で使用される場合、「摩擦学的に許容される塩」という句は、別途記載されない限り、酸性および/または塩基性基の塩を含む。したがって、塩基付加塩および酸付加塩が企図され得る。当業者によって認識されるように、摩擦学は、特に摩擦、潤滑、および摩耗の観点から、相対運動する表面の相互作用を扱う学問を定義する用語である。摩擦学的に許容される塩は、化合物の摩擦学的活性を無効にしないまたは妨害しない塩である。
【0163】
本質的に酸性である本明細書の化合物について企図される塩基付加塩を調製するために使用され得る塩基は、そのような化合物と摩擦学的に許容される塩基付加塩(すなわち、摩擦学的に許容されるカチオンを含む塩)を形成するものである。そのようなカチオン/塩基性塩として、限定されないが、アルカリ金属カチオン(例えば、カリウムおよびナトリウム)およびアルカリ土類金属カチオン(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)等のカチオン、アンモニウムまたはN-メチルグルカミン-(メグルミン)等のアミン付加塩、ならびにアルカノールアンモニウム、および摩擦学的に許容される有機アミンの他の塩基性塩(オクチルアミンおよびオレイルアミン等のアルキルアミン、ならびにアルカノールアミンを含むが、これらに限定されない)が挙げられる。しかしながら、特定の実施形態において、化合物の塩基付加塩(特に式(I)の化合物の場合)はアミン塩ではない。これに関して、本発明の油圧作動油中のアミン塩の含有量を最小限に抑えることもまた好ましい場合がある。したがって、アミン塩の形態で存在する任意の他の成分(特に摩耗防止剤)は、好ましくは、約1.0重量%以下、約0.5重量%、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.01重量%以下、または約0.005重量%以下で本発明の油圧作動油中に存在する。
【0164】
本質的に塩基性である本明細書の化合物について企図される酸付加塩を調製するために使用され得る酸は、そのような化合物と摩擦学的に許容される酸付加塩(すなわち、摩擦学的に許容されるアニオンを含む塩)を形成するものである。そのような酸性塩として、限定されないが、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、ニトレート、スルフェート、ビスルフェート、ホスフェート、酸性ホスフェート、イソニコチネート、アセテート、ラクテート、サリチレート、シトレート、酸性シトレート、タルトレート、パントテネート、ビタルトレート、アスコルベート、スクシネート、マレエート、フマレート、グルコネート、グルクロネート、サッカレート、ホルメート、ベンゾエート、グルタメート、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネートおよびパモエート[すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)]塩が挙げられる。アミノ基等の塩基性部分を含む本開示の化合物は、上記の酸に加えて、様々なアミンとトライボロジー的に許容される塩を形成し得る。
【0165】
本明細書に記載の化合物および/またはその塩のいくつかは、式(I)の化合物について以下に示すように、異なる互変異性体形態で存在することができる場合がある。そのような互変異性体形態は、すべて本開示の範囲内に含まれる。式(I)において、これはトリアゾール環の隣接する窒素原子間の点線と、この環のR
2基の位置が空いているという事実に反映されている。原則として、1つの互変異性体のみが記載され得る本明細書の任意の例において、代替の可能な互変異性体形態もまた想定される。
【化9】
【0166】
本明細書に記載の化合物が2つ以上の異なる立体異性体形態で存在し得る場合、そのようなすべての立体異性体形態(例えば、光学異性体、すなわち、RおよびSエナンチオマー配置)、位置異性体、ならびにそのような異性体のラセミ体、ジアステレオマーおよび他の混合物が想定され、本発明の範囲内に含まれる。
【0167】
本発明の油圧システム
本発明は、少なくとも1つのフルオロポリマーシールと、該シールと接触する本明細書に定義される本発明の油圧作動油とを含む油圧システムを提供する。
【0168】
油圧システムは、好ましくは、銅、真鍮、または青銅等の黄色金属を含む1つ以上の成分も含み、上記作動油が黄色金属と接触する。特に、油圧システムは、銅を含む1つ以上の成分を含み、上記作動油が銅と接触することが好ましい。黄色金属(典型的には銅)は、例えば、油圧システムの1つ以上のバルブに存在し得る。
【0169】
本明細書で使用される場合、フルオロポリマーという用語は、フッ素含有エラストマーを意味することを意図しており、フルオロエラストマーとも称され得る。好ましくは、フルオロポリマーは、ASTM D1418に従ってFKM、FFKMまたはFEPMとして分類されるものであり、より好ましくは、フルオロポリマーは、ASTM D1418に従ってFKMとして分類されるものであり、すなわち、より好ましくは、フルオロポリマーは、75 FKM 595等のFKMフルオロポリマー(またはFKMフルオロエラストマー)である。
【0170】
一実施形態において、フルオロポリマーは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VF2/VDF)とのコポリマーである。これに関して、フルオロポリマーは、好ましくは、(a)少なくとも62重量%、少なくとも64重量%、または少なくとも65重量%であり、かつ/または(b)多くとも72重量%、多くとも70重量%、多くとも68重量%、または多くとも67重量%である、フッ素含有量を有する。典型的には、フッ素含有量は約66重量%である。したがって、フルオロポリマーは、タイプ1のFKMフルオロポリマーであり得る。タイプ1のFKMフルオロポリマーは、全体的に良好な性能を示し得る。
【0171】
別の実施形態において、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)およびフッ化ビニリデン(VF2/VDF)のターポリマーである。これに関して、フルオロポリマーは、好ましくは、(a)少なくとも62重量%、少なくとも64重量%、少なくとも66重量%、または少なくとも67重量%であり、かつ/または(b)多くとも74重量%、多くとも72重量%、多くとも71重量%、または多くとも70重量%である、フッ素含有量を有する。典型的には、フッ素含有量は約68~69重量%である。したがって、フルオロポリマーは、タイプ2のFKMフルオロポリマーであり得る。タイプ2のFKMフルオロポリマーは、耐薬品性および耐熱性の点で比較的良好な性能を発揮し得るが、圧縮永久歪みおよび低温柔軟性が弱い。
【0172】
別の実施形態において、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ素化ビニルエーテル(PMVE)、およびフッ化ビニリデン(VF2/VDF)のターポリマーである。これに関して、フルオロポリマーは、好ましくは、(a)少なくとも60重量%、または少なくとも61重量%であり、かつ/または(b)多くとも74重量%、多くとも72重量%、多くとも70重量%、または多くとも69重量%である、フッ素含有量を有する。典型的には、フッ素含有量は約62~68重量%である。したがって、フルオロポリマーは、タイプ3のFKMフルオロポリマーであり得る。タイプ3のFKMフルオロポリマーは、低温柔軟性の点で比較的良好な性能を提供し得る。
【0173】
別の実施形態において、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、プロピレン(P)およびフッ化ビニリデン(VF2/VDF)のターポリマーである。これに関して、フルオロポリマーは、好ましくは、(a)少なくとも63重量%、少なくとも65重量%、または少なくとも66重量%であり、かつ/または(b)多くとも73重量%、多くとも71重量%、多くとも69重量%、または多くとも68重量%である、フッ素含有量を有する。典型的には、フッ素含有量は約67重量%である。したがって、フルオロポリマーは、タイプ4のFKMフルオロポリマーであり得る。タイプ4のFKMフルオロポリマーは、耐塩基性の増加を提供し得るが、特に炭化水素において、膨潤特性の点で性能はあまり望ましくない。
【0174】
別の実施形態において、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、エチレン(E)、フッ素化ビニルエーテル(PMVE)およびフッ化ビニリデン(VF2/VDF)のペンタポリマーである。したがって、フルオロポリマーは、タイプ5のFKMフルオロポリマーであり得る。タイプ5のFKMフルオロポリマーは、耐塩基性および高温硫化水素耐性の点で良好な性能を発揮し得る。
【0175】
別の実施形態において、フルオロポリマーはパーフルオロエラストマーであり、ポリマー主鎖は(実質的に)完全にフッ素化されている。特に、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)とのコポリマーであり得る。(これに関して、コポリマーはまた、硬化部位単量体(CSM)に由来する単位、すなわち、フリーラジカルに対して反応性の部位を含む単量体も含み得る。そのような硬化部位単量体の例は、4-ブロモ-3,3,4,4-テトラフルオロブテン(BTFB)である)。したがって、パーフルオロエラストマーのポリマー主鎖上のすべての置換基は、好ましくは、フルオロ、パーフルオロアルキル、またはパーフルオロアルコキシであり、フルオロポリマーは、ポリメタクリレートタイプであり得る。この実施形態の特定の態様において、フルオロポリマーはFFKMフルオロポリマーであり得る。
【0176】
別の実施形態において、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)とプロピレン(P)とのコポリマーである。したがって、フルオロポリマーは、FEPMフルオロポリマーであり得る。
【0177】
腐食抑制剤の使用に関する好ましい態様
【0178】
上で説明し、後述の実施例に示すように、本発明は、特定の種類の腐食抑制剤が、特に特定の他の添加剤と組み合わせた場合に、非常に低い濃度で強力な腐食抑制を提供し得るという発見に基づいており、このことの利点は、改善されたフルオロポリマーシール適合性およびフルオロポリマーシール適合性作動油の機能特性の改善を含む。
【0179】
本発明は、フルオロポリマーシール適合性を改善するための、窒素含有量に換算して40~150重量ppmの本明細書に定義される腐食抑制剤の油圧作動油における使用を提供する。
【0180】
本発明は、上記油圧作動油と接触する1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性を維持するための、窒素含有量に換算して40~150重量ppmの本明細書に定義される腐食抑制剤の油圧作動油における使用を提供する。
【0181】
本発明は、腐食を抑制しながら、同時にフルオロポリマーシール適合性を改善するための、窒素含有量に換算して40~150重量ppmの式(I)の化合物またはその摩擦学的に許容される塩の油圧作動油における使用を提供する。
【0182】
本発明は、腐食を抑制しながら、同時に上記油圧作動油と接触する1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性を維持するための、窒素含有量に換算して40~150重量ppmの式(I)の化合物またはその摩擦学的に許容される塩の油圧作動油における使用を提供する。
【0183】
上記の本発明の使用において、油圧作動油は、好ましくは、本明細書において一般的に定義される通りであり、すなわち、上記の油圧作動油およびその成分の好ましい態様は、上記の本発明の使用にも適用される。
【0184】
当業者には容易に明らかであるように、フルオロポリマー適合性の改善または1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性の維持に関する上記の言及は、特定の薬剤の窒素含有量に換算して40~150重量ppmが、さもなければ通常の処理速度で使用される可能性のある他の腐食抑制剤(Irgamet(登録商標)39等)よりも低い速度でフルオロポリマーシールを分解するという事実を指す。
【0185】
そのような影響を決定するための方法は、当業者に既知である。例えば、フルオロポリマー材料のサンプルは、使用中の状態を模倣するために、特定の成分を含む油圧作動油に長期間および高温で浸漬することができる。次いで、サンプルは、機械的試験および/または物理的測定に供され、1つ以上の他の作動油に曝露された、および/または(対照として)作動油なしのサンプルと比較される。関連する技術的効果は、他の作動油と比較した場合の引張強度の増加、破断点伸びの増加、または体積、重量および/もしくは硬度の変化の減少であり得る。
【0186】
したがって、本発明の文脈において、フルオロポリマーシール適合性を改善するため、またはフルオロポリマーシールの完全性を維持するための使用は、好ましくは、(i)フルオロポリマーの引張強度の損失率を低減するため、(ii)フルオロポリマーの破断点伸びの減少率を低減するため、(iii)フルオロポリマーの体積の変化率を低減するため、(iv)フルオロポリマーの重量変化率を低減するため、および/または(v)フルオロポリマーの硬度の変化率を低減するための使用を意味し得る。
【0187】
フルオロポリマーシール適合性、特に上記の特定の特性のいずれかまたはすべて(すなわち、引張強度、破断点伸び、ならびに体積、重量および/または硬度の変化)は、RFT-EC-Rexroth-Fluid-Test-Elastomer-Compatibility HLP/HVLP/HEPRに従って決定可能であり得る:体積の変化、重量の変化、硬度の変化、引張強度の変化、および/または破断点伸びの変化。好ましくは、これに関して、シールは、75 FKM 595等のFKMフルオロポリマー(またはFKMフルオロエラストマー)である。
【0188】
本発明の上記の使用に関して、腐食の抑制への言及は、好ましくは黄色金属、より好ましくは銅の腐食を指す。
【0189】
例えば、腐食の抑制への言及は、好ましくは、上記の標準試験、例えば、ASTM D130、ASTM D2619、ASTM D664、ASTM D2272、ASTM D4310および/またはASTM D665のいずれかに従って決定可能な腐食の抑制を指し得る。
【0190】
したがって、腐食の抑制への言及は、上述の本発明の油圧作動油の好ましい性能特性(腐食抑制の観点から)のいずれかの提供を指し得る。例えば、それらは、(i)試験が100℃の温度で3時間の期間にわたって実施されるASTM D130に従って決定可能な、少なくとも2B、より好ましくは1Bの評価、(ii)試験が121℃の温度で3時間の期間にわたって実施されるASTM D130に従って決定可能な、少なくとも2B、より好ましくは少なくとも1Bの評価、(iii)試験が100℃の温度で168時間の期間にわたって実施されるASTM D130に従って決定可能な、少なくとも2B、より好ましくは少なくとも1Bの評価の提供、(iv)ASTM D2619に従って決定可能な、0.15未満、より好ましくは0.10未満の銅重量損失、(v)ASTM D2619に従って決定可能な、少なくとも2B、より好ましくは少なくとも1Bの銅の評価、(vi)ASTM D664に従って決定可能な、ゼロのH2O TANスコア、(vii)ASTM D2272に従って決定可能な、少なくとも300分、より好ましくは少なくとも350のRPVOTスコア、(viii)ASTM D665試験の合格、ならびに/または(ix)ASTM D4310に従って決定可能な、10.0mg以下、好ましくは8.0mg以下の銅重量、および/もしくは1.0mg以下、好ましくは0.7mg以下の鉄重量の提供を指し得る。
【0191】
本発明の上記の使用に関して、フルオロポリマーシール適合性の改善またはフルオロポリマーシールの完全性の維持への言及は、好ましくは、RFT-EC-Rexroth-Fluid-Test-Elastomer-Compatibility HLP/HVLP/HEPRに従って決定可能な1つ以上の特性、例えば、体積の変化、重量の変化、硬度の変化、引張強度の変化、および/または破断点伸びの変化のうちの1つ以上を指す。好ましくは、これに関して、使用されるシールは、75 FKM 595等のFKMフルオロポリマー(またはFKMフルオロエラストマー)である。
【0192】
好ましい態様では、本発明は、上記の異なる点のうちのいずれか1つにおいて腐食を抑制し、一方で(また)、油圧作動油が合格スコア、すなわち、RFT-EC-Rexroth-Fluid-Test-Elastomer-Compatibility HLP/HVLP/HEPRに従って決定可能な以下の特性のうちの1つ以上(好ましくはすべて)に関して許容限界内(より好ましくは理想限界内)のスコアを提供するような速度で作動油と接触する1つ以上のフルオロポリマーシールを分解するための、式(I)の化合物またはその摩擦学的に許容される塩の使用を提供する:体積の変化、重量の変化、硬度の変化、引張強度の変化、および/または破断点伸びの変化。好ましくは、これに関して、使用されるシールは、75 FKM 595等のFKMフルオロポリマー(またはFKMフルオロエラストマー)である。
【0193】
本明細書に記載の本発明の油圧作動油および油圧システムの上記態様のすべてが、本発明の上記の使用の文脈に適用される。したがって、上記の使用の文脈において、油圧作動油は、好ましくは、本明細書に定義される本発明の油圧作動油である。また、油圧作動油およびフルオロポリマーシールは、好ましくは、本明細書に定義される本発明の油圧システムに含まれる。
【実施例0194】
実施例1-試験用の作動油の調製
表1に示す組成の油圧作動油を調製した。作動油1~3が唯一の腐食抑制剤として(異なる量の)トリルトリアゾールを含むのに対し、作動油4は唯一の腐食抑制剤として(モルで表した作動油2中のトリルトリアゾールの量に相当する量の)Irgamet(登録商標)39を含むという事実を除いて、作動油1~4は同一であった。いずれの場合も、作動油1~4の組成には、(以下の表1に特定される成分に加えて)6%の粘度調整剤、0.3%の流動点降下剤、0.2%のフェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤との組み合わせ、少量(≦各0.1%)のスルホネート防錆剤、可溶化剤、Caフェネート清浄剤、抗乳化剤、いくらかのC
8-アルコール溶剤、および消泡剤が含まれ、残余物は基油であった。
【表1】
【0195】
分散剤1=約950の数平均分子量を有するPIBから作られたPIBスクシンイミド
AW1:無灰アルキルジチオホスフェート酸:(iBuO)2P(=S)S-CH2-CH(CH3)-CO2H
【0196】
AW2:無灰アルキルジチオホスフェートエステル:(iPrO)2P(=S)S-CH2-CH2-CO2R、式中、R=C2-5
【0197】
実施例2-フルオロポリマーシール適合性と銅腐食の試験
作動油1~4のそれぞれをフルオロポリマーシール適合性試験に供し、市販の油圧作動油を代表するさらに2つの作動油(以下、作動油5および6と表示)も同様に行った。作動油1~4についての銅腐食試験も実施した。
【0198】
フルオロポリマーシール適合性試験では、FKMフルオロポリマー材料のサンプルを、定義された期間、特定の温度で油圧作動油に浸漬した。次に、サンプルを分析し、それらの特性を他の作動油に曝露されたサンプルの特性と比較した。フルオロポリマーシール適合性の増加は、引張強度の増加、破断点伸びの増加、または体積(膨潤)、重量、および/または硬度の変化の減少のうちの1つ以上によって証明され得る。
【0199】
銅腐食試験では、以下に記載する標準試験に従って作動油を試験した。
(a)ASTM D130:銅ストリップ試験による石油製品からの銅に対する腐食性の標準試験法
(b)ASTM D2619:油圧作動油の加水分解安定性の標準試験法
(c)ASTM D664:電位差滴定による石油製品の酸価の標準試験法
(d)ASTM D2272:回転圧力容器による蒸気タービン油の酸化安定性の標準試験法
(e)ASTM D4310:抑制鉱物油のスラッジ化および腐食傾向の決定のための標準試験法
(f)ASTM D665:水の存在下での抑制鉱物油の防錆特性に関する標準試験法
【0200】
フルオロポリマーシール適合性試験の結果を以下の表2に、銅腐食試験の結果を表3に示す(不合格の結果を下線で示す)。市販の油圧作動油を代表するさらに2つの作動油(作動油5および6)についての結果も含まれている。作動油5は、0.15%の腐食抑制剤(トリルトリアゾールを含む)の混合物、0.11%の摩耗防止剤の混合物、0.3%流動点降下剤、0.1%のアミン系酸化防止剤の組み合わせ、少量(≦各0.1%)の可溶化剤、抗乳化剤、および消泡剤を含み、残余物は基油(および少量のキャリア液/溶剤)である。作動油6は、0.08%のC
2-C
6-アルキルベンゾトリアゾール腐食抑制剤、0.6%の摩耗防止剤の混合物(摩耗防止剤1を含む)、次に、作動油1~4に使用されているのと同じ量の粘度調整剤、流動点降下剤、酸化防止剤成分、防錆剤、可溶化剤、清浄剤、抗乳化剤、および消泡剤を含み、残余物は基油(および少量のキャリア液/溶剤)である。
【表2】
【表3】
【0201】
市販の油圧作動油を代表する作動油5および6は、FKMシール適合性試験に不合格である(破断点伸びの結果、および作動油5については引張強度の結果を参照のこと)。Irgamet(登録商標)39を比較的少量含む作動油4は、満足の行く腐食抑制を提供することができるが、FKMシール適合性試験には不合格である(同様に破断点伸びの結果を参照のこと)。これらの結果は、本試験の反応性の高い性質(130℃で1008H)を反映しており、シール適合性の観点から、最新の油圧システムに必要とされる基準がますます高くなっていることをさらに反映している。作動油1~3は、唯一の腐食抑制剤として様々な量のトリルトリアゾールを含む。0.03%のトリルトリアゾールを含む作動油2は、腐食抑制とシール適合性の両方の点で驚くほど強力な性能を提供する(例えば、0.082%のIrgamet(登録商標)39を含む作動油4の0.09mgと比較して、ASTM D2619の銅重量損失はわずか0.03mgに相当する)。0.01%のトリルトリアゾールを含む作動油3も、良好なシール適合性を提供するが、腐食抑制の点では作動油2と比べて強力ではない。作動油1は、腐食抑制剤としてトリルトリアゾールを使用した場合でも、作動油1~4のすべてに共通する追加の薬剤(清浄剤、分散剤、摩耗防止添加剤および酸化防止添加剤を含む)を含む作動油において濃度が0.05%に達すると、FKMシール適合性試験で不合格となる可能性がある(同様に破断点伸びの結果を参照のこと)。
【0202】
作動油2が、とりわけ、清浄剤、分散剤、ホスフェート摩耗防止添加剤および酸化防止剤添加剤(作動油にさらなる特性を付与する)を含む一連の追加の添加剤を含む作動油に関連して、強力な腐食抑制と良好なシール適合性(Nに関して40~150ppmの量のトリルトリアゾールの存在に起因)の両方を達成できることは注目に値する。このことは、いかに本発明の腐食抑制剤の驚くべき有効性が、望ましい特性の有利なバランスを提供するフルオロポリマーシール適合性作動油の配合を可能にするかを示している。
【0203】
実施例3-追加の実験
作動油4(市販製品Irgamet(登録商標)39)中に存在する腐食抑制剤成分がフルオロポリマーシール適合性に及ぼす影響を調査するために、さらに多くの作動油を調製した。これに関して、以下の表4に示す組成の作動油7~10を調製した。これらの作動油のシール適合性スコアも提供される。
【0204】
作動油7~9は、様々な量のIrgamet(登録商標)39を含む。作動油10はIrgamet(登録商標)39を含まず、代わりに化合物ビス(2-エチルヘキシル)アミンを含む。以下に示すように、その化合物はIrgamet(登録商標)39中に存在するジアルキルアミン部分に対応する。
【化10】
【0205】
したがって、作動油10は、その不合格の原因となるのがIrgamet(登録商標)39中のジアルキルアミノ部分であるかどうかについての情報を提供し得る。これに関して、ビス(2-エチルヘキシル)アミノは作動油10中に0.51%の量で使用され、すなわち、その濃度は、Irgamet(登録商標)39を作動油7(および作動油4、上記を参照)中に0.082%の量で使用した場合に、その部分を含む分子の濃度の10倍になる。結果を下の表に示し、不合格の結果を下線で示す。
【表4】
【0206】
作動油7~9の結果は、Irgamet(登録商標)39がフルオロポリマーシール適合性に影響を与えることを裏付けるものである。不合格は、腐食抑制を低下させるレベルまで濃度を下げることによってのみ回避することができる。一方、作動油10のデータは、驚くべきことに、ビス(2-エチルヘキシル)アミンがフルオロポリマーシールに有意な分解作用を有しないことを示している。したがって、Irgamet(登録商標)39と比較した本発明の腐食抑制剤の優れた性能(そのようなアミン部分の存在/非存在によって互いに異なる)は、この発見に照らしてさらに驚くべきものである。
【0207】
以下に、本発明の好ましい実施形態を定義する一連の番号を付した条項[1]~[21]を提供する。これらの番号を付した条項は特許請求の範囲ではない(特許請求の範囲は以下の「特許請求の範囲」という表題の別の項に示される)。
[1]油圧作動油であって、
(a)窒素含有量に換算して40~150重量ppmの腐食抑制剤であって、式(I)の1つ以上の化合物
【化11】
(式(I)中、
-各R
1は、独立して1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xは、0~4であり、
-R
2は、水素、または1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)、および/またはその摩擦学的に許容される塩である、腐食抑制剤と、
(b)1500~4000重量ppmの無灰窒素含有分散剤と、
(c)多量の基油と、を含む、油圧作動油。
[2]
-各R
1が、独立して、1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、好ましくはメチルであり、
-xが、0もしくは1であり、かつ/または
-R
2が、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、好ましくは水素である、[1]に記載の油圧作動油。
[3]腐食抑制剤が、トリルトリアゾールである、[1]または[2]に記載の作動油。
[4]無灰窒素含有分散剤が、(a)アミノ化合物と、(b)少なくとも300、好ましくは900~1200の数平均分子量を有するヒドロカルビル基で置換されたコハク酸および/またはコハク酸無水物との反応から得られる生成物であり、上記反応が、少なくとも1つのイミド、アミド、アミジン、および/またはアシルオキシアンモニウム結合の形成に関与し、生成物が、少なくとも300、好ましくは900~1200の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換される、[1]~[3]のいずれか1つに記載の油圧作動油。
[5]50~2000重量ppmの量の1つ以上の金属清浄剤をさらに含み、好ましくは、作動油が、フェネート清浄剤、置換ベンゼンスルホネート清浄剤、およびサリチレート清浄剤から選択される1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤を含み、上記1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤の総量が50~2000重量ppmである、[1]~[4]のいずれか1つに記載の油圧作動油。
[6]100~1030重量ppmの1つ以上のアルカリ土類金属フェネートを含む、[5]に記載の油圧作動油。
[7]1つ以上のホスフェート摩耗防止剤をさらに含み、上記1つ以上のホスフェート摩耗防止剤の総量が100~3000重量ppmであり、好ましくは、上記1つ以上のホスフェート摩耗防止剤が亜鉛を含まない、[1]~[6]のいずれか1つに記載の油圧作動油。
[8]上記1つ以上のホスフェート摩耗防止剤が、式(II)の1つ以上のホスフェート化合物、
【化12】
(式中、
-各R
AおよびR
Bは、独立して、1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-各X
1、X
2、X
3、およびX
4は、独立して、SまたはOであり、
-R
Cは、1~20個の炭素原子を含む2価のヒドロカルビル基であり、
-X
5は、-C(O)O-または-O-であり、
-R
Dは、水素、または1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)またはその摩擦学的に許容される塩である、[7]に記載の油圧作動油。
[9]1つ以上の酸化防止剤、好ましくはフェノール系酸化防止剤および/またはアミン系酸化防止剤をさらに含む、[1]~[8]のいずれか1つに記載の油圧作動油。
[10]100~2000ppmの量の防錆剤をさらに含み、好ましくは、上記防錆剤がアリールスルホネートである、[1]~[9]のいずれか1つに記載の油圧作動油。
[11]抗乳化剤、好ましくはヒドロキシル基で終結するブロックコポリマー等の非イオン性界面活性剤をさらに含む、[1]~[10]のいずれか1つに記載の油圧作動油。
[12]粘度調整剤および/または流動点降下剤をさらに含む、[1]~[11]のいずれか1つに記載の油圧作動油。
添加剤濃縮物であって、
(d)0.9~3.6重量%の腐食抑制剤であって、式(I)の1つ以上の化合物
【化13】
(式(I)中、
-各R
1は、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xは、0~4であり、
-R
2は、水素、または1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)、および/またはその摩擦学的に許容される塩である、腐食抑制剤と、
(e)11~50重量%の無灰窒素含有分散剤と、任意選択的に、
(f)希釈剤と、を含む、添加剤濃縮物。
[14]
-各R
1が、独立して、1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、好ましくはメチルであり、
-xが、0もしくは1であり、かつ/または
-R
2が、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、好ましくは水素である、[13]に記載の添加剤濃縮物。
無灰窒素含有分散剤が、(a)アミノ化合物と、(b)少なくとも300、好ましくは900~1200の数平均分子量を有するヒドロカルビル基で置換されたコハク酸および/またはコハク酸無水物との反応から得られる生成物であり、上記反応が、少なくとも1つのイミド、アミド、アミジン、および/またはアシルオキシアンモニウム結合の形成に関与し、生成物が、少なくとも300、好ましくは900~1200の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換される、[13]または[14]に記載の添加剤濃縮物。
[16]腐食抑制剤が1.7~2.7重量%の量で存在し、かつ/または分散剤が13~45重量%の量で存在する、[13]~[15]のいずれか1つに記載の添加剤濃縮物。
[17]0.7~8.0重量%の量の1つ以上の金属清浄剤、0.7~23重量%の量の1つ以上のホスフェート摩耗防止剤、3.7~37重量%の量の1つ以上の酸化防止剤、0.07~15重量%の量の1つ以上の防錆剤、および/または0.007~3.7重量%の量の抗乳化剤、をさらに含む、[13]~[16]のいずれか1つに記載の添加剤濃縮物。
[18]少なくとも1つのフルオロポリマーシールと、シールと接触する[1]~[12]のいずれか1つに定義される油圧作動油と、を含む、油圧システム。
[19]動力伝達流体としての、[1]~[12]のいずれか1つに定義される油圧作動油の使用。
[20]フルオロポリマーシール適合性を改善するか、または上記油圧作動油に接触する1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性を維持するための、窒素に換算して40~150重量ppmの[1]~[12]のいずれか1つに定義される腐食抑制剤の油圧作動油における使用。
[21]腐食を抑制しながら、同時にa)フルオロポリマーシール適合性を改善するか、または(b)上記油圧作動油と接触する1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性を維持するための、窒素含有量に換算して40~150重量ppmの[1]~[12]のいずれか1つに定義される式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩の油圧作動油における使用であって、好ましくは、上記油圧作動油は[1]~[12]のいずれか1つに定義される通りである、使用。