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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020990
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ロボット駆動部用のカセット組立体
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20230202BHJP
【FI】
A61B34/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022117648
(22)【出願日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】63/203,795
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/813,337
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510292504
【氏名又は名称】コリンダス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン バウチャー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ファルブ
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ ピアッツァロロ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ポール グレゴリー
(57)【要約】
【課題】1つ又は複数の細長い医療デバイスを駆動するためのロボット駆動システムを提供する。
【解決手段】ロボット駆動システムはロボット駆動部と滅菌カセット組立体を含み、ロボット駆動部は、第1の駆動モジュールと、第1の駆動モジュールの近位側にある第2の駆動モジュールを含み、各駆動モジュールはロボット駆動部の長手方向軸に沿って独立して移動可能であり、滅菌カセット組立体は、第1のカセットと、第1のカセットに対して結合器を用いて結合される第2のカセットを含む。第1のカセットと第2のカセットは、それぞれ、第1の駆動モジュールと第2の駆動モジュールに対して、取外し可能に取付けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の細長い医療デバイスを駆動するためのロボット駆動システムであって、
ロボット駆動部と、滅菌カセット組立体と、
を含み、
前記ロボット駆動部は、
第1の駆動モジュールと、
前記第1の駆動モジュールより近位にある第2の駆動モジュールと、
を含み、前記第1の駆動モジュールと前記第2の駆動モジュールは、それぞれ、前記ロボット駆動部の長手方向軸に沿って独立して移動可能であって、
前記滅菌カセット組立体は、
第1のカセットと、
前記第1のカセットに対して結合器を用いて結合される第2のカセットと、
を含み、前記第1のカセットと前記第2のカセットは、それぞれ、前記第1の駆動モジュールと前記第2の駆動モジュールに対して、取外し可能に取付けられる、
ロボット駆動システム。
【請求項2】
前記結合器は、前記第1のカセットに接続される第1のアームと、前記第2のカセットに接続される第2のアームとを含み、前記第2のアームは、前記第1のアームに対して摺動可能に接続される、請求項1に記載のロボット駆動システム。
【請求項3】
前記第1のアームと前記第2のアームの間では、それぞれの長手方向軸に沿ってのみ相対的な移動が可能となるように、前記第1のアームと前記第2のアームが結合される、請求項2に記載のロボット駆動システム。
【請求項4】
さらに、第1の遠位端と第1の近位端を有する第1の可撓性の支持体を備え、前記第1の遠位端は前記第1のカセットに対して取外し可能に固定され、前記第1の近位端は前記第1のアームの近位端に対して固定され、前記第1の可撓性の支持体の前記第1の遠位端と前記第1の近位端の間の部位が、前記第2のカセット内に配置される、請求項3に記載のロボット駆動システム。
【請求項5】
前記滅菌カセット組立体は、さらに、第3のカセットを含み、前記結合器は、さらに、前記第2のアームに対して摺動可能に接続される第3のアームを含み、前記第3のカセットは前記第3のアームに対して接続される、請求項3に記載のロボット駆動システム。
【請求項6】
前記第2のアームは、前記第1のアームと摺動可能に係合する第1の部分と、前記第3のアームと摺動可能に係合する第2の部分とを含む、請求項5に記載のロボット駆動システム。
【請求項7】
前記滅菌カセット組立体は、さらに、第4のカセットを含み、前記結合器は、さらに、前記第3のアームに対して摺動可能に接続される第4のアームを含み、前記第4のカセットは前記第4のアームに対して接続される、請求項5に記載のロボット駆動システム。
【請求項8】
さらに、第2の遠位端と第2の近位端を有する第2の可撓性の支持体を備え、前記第2の可撓性の支持体の前記第2の遠位端は、前記第2のカセットに対して取外し可能に固定され、前記第2の近位端は、前記第2のアームの近位端に対して固定され、前記第2の可撓性の支持体の前記第2の遠位端と前記第2の近位端の間の部位が、前記第3のカセット内に配置される、請求項5に記載のロボット駆動システム。
【請求項9】
さらに、先頭の遠位端と先頭の近位端を有する先頭の可撓性の支持体を備え、前記先頭の遠位端は、前記第1のカセットの遠位側のシースコネクタに対して取外し可能に固定され、前記先頭の近位端は、ロボット駆動ハウジングに対して固定され、前記先頭の可撓性の支持体の前記先頭の遠位端と前記先頭の近位端の間の部位が、前記第1のカセット内に配置される、請求項3に記載のロボット駆動システム。
【請求項10】
前記第1のアームは、前記ロボット駆動部のハウジング上の支持アンカーと前記遠位側のシースコネクタの間で、前記先頭の可撓性の支持体の部位を動作可能に案内する第1の案内部を備える、請求項9に記載のロボット駆動システム。
【請求項11】
前記第2のアームは、前記第1の可撓性の支持体の前記近位端と前記第1のカセットの間で、前記第1の可撓性の支持体の部位を動作可能に案内する第2の案内部を備える、請求項4に記載のロボット駆動システム。
【請求項12】
前記第3のアームは、前記第1の可撓性の支持体の前記近位端と前記第2のカセットの間で、前記第2の可撓性の支持体の部位を動作可能に案内する第3の案内部を備える、請求項8に記載のロボット駆動システム。
【請求項13】
各カセットは、対応する前記駆動モジュールに対して各前記カセットが取り付けられる際、対応する前記駆動モジュールの面上に載置される部分を備える、請求項1に記載のロボットドライブ。
【請求項14】
前記第1のカセットは、前記駆動モジュール内のタブと解放可能に係合するラッチを備える、請求項1に記載のロボット駆動部。
【請求項15】
前記第1のカセットは、前記駆動モジュールの円筒状部材を受け入れ可能な円筒状空洞部を備える、請求項1に記載のロボット駆動部。
【請求項16】
1つ又は複数の細長い医療デバイスを駆動するためのロボット駆動システムであって、
ロボット駆動部と、滅菌カセット組立体と、
を含み、
前記ロボット駆動部は、
第1の駆動モジュールと、
前記第1の駆動モジュールより近位にある第2の駆動モジュールと、
前記第2の駆動モジュールより近位にある第3の駆動モジュールと、
を含み、前記第1の駆動モジュールと前記第2の駆動モジュールと前記第3の駆動モジュールは、それぞれ、前記ロボット駆動部の長手方向軸に沿って独立して移動可能であって、
前記滅菌カセット組立体は、
第1のアームを有する第1のカセットと、
第2のアームを有する第2のカセットと、
第3のアームを有する第3のカセットと、
前記第1のカセットに取付けられる近位端と、遠位端とを有する第1の可撓性の支持体であって、その一部が前記第2のカセットを通って延在する前記第1の可撓性の支持体と、
前記第2のカセットに取付けられる近位端と、遠位端とを有する第2の可撓性の支持体であって、その一部が前記第3のカセットを通って延出する前記第2の可撓性の支持体と、
を含み、
前記第1のカセットと前記第2のカセットと前記第3のカセットとは、互いに対して独立して移動可能であって、
前記第1のアームと前記第2のアームと前記第3のアームとは、互いに対して摺動可能に接続される、
ロボット駆動システム。
【請求項17】
前記第2のアームは、前記第1の可撓性の支持体の前記第1のアームの前記近位端上のコネクタと前記第1のカセットとの間の部位を動作可能に案内する第2の案内部を備える、請求項16に記載のロボット駆動システム。
【請求項18】
さらに、前記ロボット駆動部のハウジングに固定される近位端と、シースコネクタに固定される遠位端とを有する先頭の可撓性の支持体を含み、前記先頭の可撓性の支持体の一部は、前記第1のカセット内のチャネルを通って移動する、請求項17に記載のロボット駆動システム。
【請求項19】
前記カセット組立体は、非係合位置では、前記駆動モジュールの一部上で釣り合うことができる、請求項16に記載のロボット駆動システム。
【請求項20】
対応する前記駆動モジュールに対して各前記カセットを解放可能に係合可能なラッチが、各前記カセットに備えられる、請求項19に記載のロボット駆動システム。
【請求項21】
滅菌カセット組立体であって、
第1のカセットと、
第2のカセットと、
第3のカセットと、
前記第1のカセットと、前記第2のカセットと、前記第3のカセットとを結合する結合器と、
を含み、前記第1のカセットと前記第2のカセットと前記第3のカセットは、前記結合器と共に結合される際、互いに対して向って、又は互いに対して離れるように、独立して移動可能である、滅菌カセット組立体。
【請求項22】
さらに、第3のカセットを含み、前記結合器は、前記第1のカセットと、前記第2のカセットと、前記第3のカセットとを結合し、
前記第1のカセットと前記第2のカセットと前記第3のカセットとは、前記結合器と共に結合される際、互いに対して向って、又は互いに対して離れるように、独立して移動可能である、請求項21に記載の滅菌カセット組立体。
【請求項23】
前記結合器は、
前記第1のカセットに固定される第1のアームと、
前記第2のカセットに固定される第2のアームと、
前記第3のカセットに固定される第3のアームと、
を備え、
前記第1のアームと前記第2のアームと前記第3のアームとは、互いに対して摺動可能に接続される、請求項22に記載の滅菌カセット組立体。
【請求項24】
前記第1のカセットに取り付けられる近位端と、遠位端とを有する第1の可撓性の支持体であって、その一部が前記第2のカセットを通って延出する前記第1の可撓性の支持体と、
前記第2のカセットに取り付けられる近位端と、遠位端とを有する第2の可撓性の支持体であって、その一部が前記第3のカセットを通って延出する前記第2の可撓性の支持体と、
をさらに含む、請求項23に記載の滅菌カセット組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「関連出願の相互参照」
本出願は、2021年7月30日に出願された米国仮出願第63/203,795号に基づく優先権を主張するものであり、その名称は、「ロボット駆動部用のカセット組立体(Cassette assembly for robotic drive)」であって、その出願の開示内容が、参照により本明細書に援用されている。
【0002】
本発明は、概して、ロボット式医療処置システムの分野に関し、特に、ロボット駆動部用のカセット組立体に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な血管系の疾患の診断及び治療を行う際、侵入を最小に抑えた医療処置のため、カテーテル及び他の細長い医療デバイス(EMD:elongated medical device(s))が用いられることがある。それら血管系の疾患として、例えば、神経血管介入処置(NVI:neurovascular interventional procedure)又は神経介入手術(neurointerventional surgery)として知られているもの、経皮的冠状介入(PCI:percutaneous coronary intervention)、また、周辺血管介入処置(PVI:peripheral vascular intervention procedure)等がある。これら処置では、典型的に、脈管構造を通ってガイド・ワイヤを案内させて、そのガイド・ワイヤを介してカテーテルを進行させて、治療を移送又は行うことがある。このようなカテーテル処置は、動脈又は静脈等の適切な血管内へのアクセスを得ることから開始されるが、その際、標準的な経皮的技法により、イントロデューサ・シース(introducer sheath)が用いられている。次に、そのイントロデューサ・シースを通って、シース又はガイド・カテーテルが、診断ガイド・ワイヤ上で、一次位置まで進められている。その位置は、例えば、NVIでは内頸動脈、PCIでは冠動脈口、PVIでは大腿動脈の表面等である。次に、脈管構造に適したガイド・ワイヤが、シース又はガイド・カテーテルを通って、脈管構造内のターゲット位置まで案内される。解剖学的構造が曲がりくねっている等の特定の状況下では、ガイド・ワイヤの案内を助けるため、サポート・カテーテル又はマイクロ・カテーテルが、ガイド・ワイヤ上に挿入されることがある。医者又は操作者は、撮像システム(例えば、透視鏡等)を用いて、コントラスト注入を伴って、画像(シネ)を得ることがあるが、それによって、固定フレームを選択して、ターゲット(例えば、病変)位置までガイド・ワイヤ又はカテーテルを案内するためのロードマップとして用いることがある。医者が、ガイド・ワイヤ又はカテーテルを移送する際、コントラストで強調された画像を得ることもでき、それによって、デバイス(装置)が、正しい経路に沿って、ターゲット位置まで移動しているか否かを確認することができる。医者は、(X線)透視法を用いて解剖学的構造を観察しながら、ガイド・ワイヤ又はカテーテルの近位端を操作して、その遠位端を、適切な導管内で、病変又はターゲットの解剖学的位置に配向させており、その際、遠位端が分岐する(側枝に進む)ことを回避している。
【0004】
ロボット式のカテーテル・ベースの処置システムは、カテーテル処置(例えば、NVI、PCI及びPVI等)を行う際に医者を助けるために開発されている。NVI処置の例には、動脈瘤のコイル塞栓形成、動静脈奇形の液体塞栓形成、及び急性虚血性脳卒中の状況における大血管閉塞の機械的血栓除去が含まれる。NVI処置では、医者はロボット・システムを用いて、神経血管ガイド・ワイヤやマイクロ・カテーテルの操作を制御して、ターゲットの病変へのアクセスを得て、治療を移送して、正常な血流を回復させている。ターゲットへのアクセスは、シース又はガイド・カテーテルによって可能にされている。しかし、より遠位の領域では、マイクロ・カテーテルやガイド・ワイヤの適当な支持を可能にするため、中間カテーテルが必要とされることもある。ガイド・ワイヤの遠位端は、病変の種類と治療に応じて、その病変の中に、又はそこを通って案内されることがある。また、複数の動脈瘤を治療するため、病変までマイクロ・カテーテルを進めて、ガイド・ワイヤを取外して、マイクロ・カテーテルを通して、複数の血栓コイルを動脈瘤内で展開させて、動脈瘤内への血流を遮断することがある。また、動静脈奇形を治療するためには、マイクロ・カテーテルを介して、液体塞栓が奇形部に注射されることがある。血管閉塞を治療するための機械的血栓術は、吸引及び/又はステント・レトリーバーの使用によって達成することができる。血栓の位置に応じて、吸引は、吸引カテーテルを通して行われるか、又はより小さな動脈の場合はマイクロ・カテーテルを通して行われる。吸引カテーテルが病変に到達したら、陰圧を適用して、カテーテルを通して凝固物(血栓)を除去することがある。あるいは、凝固物は、マイクロ・カテーテルを通して、ステント・レトリーバー(ステント回収器)を配置することで除去することがある。血栓がステント・レトリーバーと一体にされると、ステント・レトリーバー及びマイクロ・カテーテル(又は中間カテーテル)をガイド・カテーテル内に引き込むことによって血栓が回収される。
【0005】
PCIでは、医者はロボット・システムを使用して、病変のアクセスを得るため、冠状動脈ガイド・ワイヤを操作して、治療部を移送し、正常な血流を回復させることがある。このアクセスは、冠動脈口内にガイド・カテーテルを装着することで可能になる。ガイド・ワイヤの遠位端は、病変を通って案内されるが、解剖学的構造が複雑な場合、ガイド・ワイヤを適切に支持するため、マイクロ・カテーテルを使用することがある。病変にステント又はバルーンを送達して展開させることで、血流を復元させている。病変は、ステント装着前に、準備を必要とすることがあるが、例えば、病変の事前拡張のためにバルーンを送達するか、あるいは、アテレクトミーを行うことがあり、例えばレーザー又は回転式アテレクトミー・カテーテルとガイド・ワイヤ上のバルーンを用いることがある。画像カテーテル又は分数流リザーブ(FFR:fractional flow reserve)測定を使用することによって、適切な治療を決定するために、診断画像及び生理学的測定を行うこともある。
【0006】
PVIでは、医者は、治療を移送するためにロボット・システムを用いて、NVIと同様の技術によって、血流を回復させている。ガイド・ワイヤの遠位端は、病変を通って案内されて、マイクロ・カテーテルを用いて、複雑な解剖学的構造に対するガイド・ワイヤの適切な支持を提供することがある。血流は、ステント又はバルーンを病変に送達して展開することによって復元され得る。PCIと同様に、病変の準備と画像診断も同様に使用することができる。
【0007】
カテーテル又はガイド・ワイヤの遠位端での支持が求められる場合、例えば、曲がりくねった血管系又は石灰化した血管系を案内して、遠位の解剖学的位置に到達させたり、又は硬い病変を横切らせるためには、オーバー・ザ・ワイヤ(OTW:over-the-wire)カテーテル又は同軸システムが使用されることがある。ガイド・ワイヤがカテーテルの全長にわたって延出させるため、OTWカテーテルは、ルーメン(空洞又は内腔)を有する。これにより、ガイド・ワイヤが全長に沿って支持されるので、比較的安定したシステムが得られる。しかしながら、このシステムには、幾つかの欠点がある。例えば、急速又は迅速な交換式カテーテルと比較して、摩擦が高く、全長が長くなる(下記参照)。典型的には、内在(留置)するガイド・ワイヤの位置を維持しながら、OTWカテーテルを取外したり、交換したりするためには、ガイド・ワイヤの露出した長さ(患者の外側)をOTWカテーテルよりも長くしなければならない。例えば、長さが300cmのガイド・ワイヤでは、通常、この目的に十分である。これは、交換長ガイド・ワイヤと呼ばれることがある。しかし、このガイド・ワイヤの長さのため、OTWカテーテルの取外しや、交換には、2人の操作者が必要となる。このことは、3軸システムとして当該技術分野で知られている3重同軸(triple coaxial)の場合(4重同軸カテーテルの使用も知られている)、さらに困難になる。しかしながら、OTWシステムは、その安定性のため、NVIやPVIの処置ではしばしば使用されている。他方、PCI処置では、迅速交換(又はモノレール/単軌)カテーテルがしばしば使用されている。迅速交換カテーテル中のガイド・ワイヤ・ルーメンは、カテーテルの遠位部分のみで通り、それは、モノレール又は迅速交換(RX:rapid exchange)部とも呼ばれている。RXシステムを用いる場合、操作者は、互いに平行な介入デバイスを操作し(OTWシステムでは、直列的な構成でデバイスが操作される場合とは対照的に)、ガイド・ワイヤの露出長さは、カテーテルのRX部よりもわずかに長くするだけでよい。迅速交換ガイド・ワイヤの長さは、通常、180cm-200cmである。より短い長さのガイド・ワイヤとモノレールが用いられる場合には、RXカテーテルは、1人の操作者で交換することができる。しかしながら、より遠位での支持が必要とされる場合、RXカテーテルは、しばしば不適合である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様では、1つ又は複数の細長い医療デバイス(EMD)を駆動するためのロボット駆動システムを提供する。ロボット駆動システムは、ロボット駆動部と、滅菌カセット組立体と、を含む。ロボット駆動部は、第1の駆動モジュールと、第1の駆動モジュールより近位にある第2の駆動モジュールと、を含む。駆動モジュール(第1の駆動モジュールと第2の駆動モジュール)は、それぞれ、ロボット駆動部の長手方向軸に沿って独立して移動可能である。滅菌カセット組立体は、第1のカセットと、第1のカセットに対して結合器を用いて(結合器を介して)結合される第2のカセットと、を含む。第1のカセットと第2のカセットは、それぞれ、第1の駆動モジュールと第2の駆動モジュールに対して、取外し可能にともに取付けられる。
【0009】
一態様では、結合器は、第1のカセットに接続される第1のアームと、第2のカセットに接続される第2のアームとを含み、第2のアームは、第1のアームに対して摺動可能に接続される。
【0010】
一態様では、第1のアームと第2のアームの間では、それぞれの長手方向軸に沿ってのみ相対的な移動が可能となるように、第1のアームと第2のアームが結合される。
【0011】
一態様では、ロボット駆動システムは、さらに、第1の遠位端と第1の近位端を有する第1の可撓性の支持体を備え、第1の遠位端は第1のカセットに対して取外し可能に固定され、第1の近位端は第1のアームの近位端に対して固定され、第1の可撓性の支持体の第1の遠位端と第1の近位端の間の部位(一部)が、第2のカセット内に配置される。
【0012】
一態様では、滅菌カセット組立体は、さらに、第3のカセットを含み、そして、結合器は、さらに、第2のアームに対して摺動可能に接続される第3のアームを含み、第3のカセットは第3のアームに対して接続される。
【0013】
一態様では、第2のアームは、第1のアームと摺動可能に係合する第1の部分と、第3のアームと摺動可能に係合する第2の部分とを含む。
【0014】
一態様では、滅菌カセット組立体は、さらに、第4のカセットを含み、結合器は、さらに、第3のアームに対して摺動可能に接続される第4のアームを含み、第4のカセットは第4のアームに対して接続される。
【0015】
一態様では、ロボット駆動システムは、さらに、第2の遠位端と第2の近位端を有する第2の可撓性の支持体を備え、第2の可撓性の支持体の第2の遠位端は、第2のカセットに対して取外し可能に固定され、第2の近位端は、第2のアームの近位端に対して固定され、第2の可撓性の支持体の第2の遠位端と第2の近位端の間の部位が、第3のカセット内に配置される。
【0016】
一態様では、ロボット駆動システムは、さらに、先頭の遠位端と先頭の近位端を有する先頭の可撓性の支持体(initial flexible support)を備え、先頭の遠位端は、第1のカセットの遠位側のコネクタ(シースコネクタ)に対して取外し可能に固定され、先頭の近位端は、ロボット駆動ハウジングに対して固定され、先頭の可撓性の支持体の先頭の遠位端と先頭の近位端の間の部位が、第1のカセット内に配置される。
【0017】
一態様では、第1のアームは、ロボット駆動部のハウジング上の支持アンカーと遠位側のシースコネクタ(sheath connector)の間で、先頭の可撓性の支持体の部位を動作可能に案内する第1の案内部を備える。
【0018】
一態様では、第2のアームは、第1の可撓性の支持体の近位端と第1のカセットの間で、第1の可撓性の支持体の部位を動作可能に案内する第2の案内部を備える。
【0019】
一態様では、第3のアームは、第1の可撓性の支持体の近位端と第2のカセットの間で、第2の可撓性の支持体の部位を動作可能に案内する第3の案内部を備える。
【0020】
一態様では、各カセットは、対応する駆動モジュールに対して各カセットが取り付けられる際、対応する駆動モジュールの面上に載置される部分を備える。
【0021】
一態様では、第1のカセットは、駆動モジュール内のタブと解放可能に係合するラッチを備える。
【0022】
一態様では、第1のカセットは、駆動モジュールの円筒状部材を受け入れ可能な円筒状空洞部(キャビティ)を備える。
【0023】
さらに、一態様では、1つ又は複数の細長い医療デバイス(EMD)を駆動するためのロボット駆動システムを提供する。ロボット駆動システムは、ロボット駆動部と、滅菌カセット組立体と、を含む。ロボット駆動部は、第1の駆動モジュールと、第1の駆動モジュールより近位にある第2の駆動モジュールと、第2の駆動モジュールより近位にある第3の駆動モジュールと、を含み、各駆動モジュール(第1の駆動モジュールと第2の駆動モジュールと第3の駆動モジュール)は、それぞれ、ロボット駆動部の長手方向軸に沿って独立して移動可能である。滅菌カセット組立体は、第1のアームを有する第1のカセットと、第2のアームを有する第2のカセットと、第3のアームを有する第3のカセットを含む。さらに、第1のカセットに取付けられる近位端と、遠位端とを有する第1の可撓性の支持体であって、その一部が第2のカセットを通って延在する第1の可撓性の支持体を含む。さらに、第2のカセットに取付けられる近位端と、遠位端とを有する第2の可撓性の支持体であって、その一部が第3のカセットを通って延出する第3の可撓性の支持体を含む。第1のカセットと第2のカセットと第3のカセットとは、互いに対して独立して移動可能であって、第1のアームと第2のアームと第3のアームとは、互いに対して摺動可能に接続される。
【0024】
一態様では、第2のアームは、第1の可撓性の支持体の第1のアームの近位端上のコネクタと第1のカセットとの間の部位を動作可能に案内する第2の案内部を備える。
【0025】
一態様では、ロボット駆動システムは、さらに、ロボット駆動部のハウジングに固定される近位端と、シースコネクタに固定される遠位端とを有する先頭の可撓性の支持体を含み、先頭の可撓性の支持体の一部は、第1のカセット内のチャネル(経路)を通って移動することができる。
【0026】
一態様では、カセット組立体は、非係合位置(非係合状態)では、駆動モジュールの一部上で釣り合うことができる、
【0027】
一態様では、対応する駆動モジュールに対して各カセットを解放可能に係合可能なラッチが、各カセットに備える。
【0028】
一態様では、滅菌カセット組立体であって、第1のカセットと、第2のカセットと、第3のカセットと;第1のカセットと、第2のカセットと、第3のカセットとを結合する結合器と、を含む。第1のカセットと第2のカセットと第3のカセットは、結合器と共に結合される際、互いに対して向って、又は互いに対して離れるように、独立して移動可能である。
【0029】
一態様では、滅菌カセット組立体は、さらに、第3のカセットを含み、結合器は、第1のカセットと、第2のカセットと、第3のカセットとを結合し、第1のカセットと第2のカセットと第3のカセットとは、結合器と共に結合される際、互いに対して向って、又は互いに対して離れるように、独立して移動可能である。
【0030】
一態様では、結合器は、第1のカセットに固定される第1のアームと、第2のカセットに固定される第2のアームと、第3のカセットに固定される第3のアームと、を備える。第1のアームと第2のアームと第3のアームとは、互いに対して摺動可能に接続される。
【0031】
一態様では、第1のカセットに取り付けられる近位端と、遠位端とを有する第1の可撓性の支持体であって、その一部が第2のカセットを通って延出する第1の可撓性の支持体と;第2のカセットに取り付けられる近位端と、遠位端とを有する第2の可撓性の支持体であって、その一部が第3のカセットを通って延出する第2の可撓性の支持体と、をさらに含む。
【0032】
本発明の内容は、添付の図面と共に、後述の詳細な説明を参照することで、より明らかになるだろう。なお、参照番号は、同様の部分(部品、構成要素)を指すものとする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は一実施形態に係る例示的なカテーテル処置システムの斜視図である。
図2図2は一実施形態に係る例示的なカテーテル処置システムの概略的なブロック図である。
図3】カセット組立体の斜視図である。
図4A】カセット組立体の分解図である。
図4B】拡張方向でのカセット組立体の斜視図である。
図4C】設置方向でのカセット組立体である。
図5A】拡張方向でのロボット駆動部とカセット組立体の側面から見た図である。
図5B】下方向に延在する流体ラインを有する拡張方向でのロボット駆動部とカセット組立体の側面から見た図である。
図6A図5Aの線6A-6Aに概ね沿う、カセット組立体の遠位側カセットの拡大図である。
図6B図5Bの線6B-6Bに概ね沿う、カセット組立体の遠位側カセットの拡大図である。
図7図5Aの線7-7に概ね沿う、カセット組立体の要部平面図である。
図8】カセットと対応する駆動モジュールを前方から見た分解斜視図である。
図9】カセットと対応する駆動モジュールを後方から見た分解斜視図である。
図10】カセットの背面図である。
図11】駆動モジュールに取り付けられた、図10の線11-11に概ね沿う、カセットの側断面図である。
図12】カセットの近位側の斜視図である。
図13図12の線13-13に概ね沿う、カセットの断面図である。
図14】駆動モジュールの駆動部材の拡大図である。
図15】駆動モジュールとカセット組立体を備えたロボット駆動部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、一実施形態に従う、例示的なカテーテル・ベース(カテーテルに基づく)処置システム10の斜視図である。カテーテル・ベースの医療処置を行うためにカテーテル・ベースの処置システム10が用いられているが、例えば、経皮的冠状介入(PCI:percutaneous coronary intervention)(例えば、STEMIを処置する)、神経血管介入処置(NVI:neurovascular interventional procedure)(例えば、救急の大型な血管閉塞(ELVO:emergent large vessel occlusion)を処置する)、周辺血管介入処置(PVI:peripheral vascular intervention procedure)(例えば、重症下肢虚血(CLI:critical limb ischemia)の処置)等)を行うことができる。カテーテル・ベースの医療処置は、診断カテーテル処置を含むことができ、その際、患者の病気の診断を補助するために、1つ又は複数のカテーテル又は他の細長い医療デバイス(EMD:elongated medical device(s))が使用される。例えば、カテーテルに基づく診断処置の一実施形態では、その間、カテーテルを通して1つ又は複数の動脈内に造影剤(contrast)が注入されて、患者の血管構造の画像が撮影される。カテーテルを用いた医療処置には、カテーテルを用いた治療処置(例えば、血管形成術、ステントの装着、周辺血管病変の治療、血塊の除去、動脈静脈形成療法、動脈りゅうの治療等)も含まれ得るが、その際、病変を治療するためにカテーテル(又は他のEMD)が用いられる。治療処置は、例えば、血管内超音波(IVUS:intravascular ultrasound)、光コヒーレンス断層撮影(OCT:optical coherence tomography)、フラクショナル・フロー・リザーブ(FFR:fractional flow reserve)等、追加デバイス54(図2参照)を含めることで強化されてもよい。ただし、当業者であれば、実施される処置の種類に基づいて、特定の経皮介入装置又は構成要素(例えば、ガイド・ワイヤの種類、カテーテルの種類等)を選択できることを理解されたい。カテーテル・ベースの処置システム10は、その処置で用いられる特定の経皮介入装置に適応するために、マイナーな調整を行って、カテーテル・ベースの医療処置を任意の回数で実施することができる。
【0035】
カテーテル・ベースの処置システム10は、とりわけ、ベッドサイド装置(臨床側装置)20及び制御ステーション(図示略)を含む。ベッドサイド装置20は、患者12の近くに配置されるロボット駆動部(機械式駆動部)24及び位置決めシステム22を含む。患者12は、患者用の台(テーブル)18上で支持される。位置決めシステム22は、ロボット駆動部24の位置決め及び支持のために用いられる。位置決めシステム22は、例えば、ロボットアーム、多関節アーム、ホルダ等でもよい。位置決めシステム22は、その一端部を、例えば患者用の台18(図1参照)、ベース、又はカートに対して取付けることができる。位置決めシステム22の他端部は、ロボット駆動部24に対して取付けられる。位置決めシステム22は、患者用の台18上に患者12が置かれることを可能にするために、(ロボット駆動部24と共に)邪魔にならないように外に移動することができる。患者用の台18上に患者12が配置されると、位置決めシステム22を使用して、処置を行うために、患者12に対してロボット駆動部24を位置決め又は配置することができる。一実施形態に従うと、患者用の台18は、床及び/又は地面に固定された台座17によって動作可能に支持される。患者用の台18は、台座17に対して多自由度(例えばロール、ピッチ、ヨー)を有するように移動することができる。また、ベッドサイド装置20は、制御装置及びディスプレイ(表示装置)46(図2に示される)を含むことができる。例えば、制御装置及びディスプレイは、ロボット駆動部24のハウジング上に配置することができる。
【0036】
一般に、ロボット駆動部24は、適当な経皮介入装置及び付属品(アクセサリ)48(図2参照)(例えば、ガイド・ワイヤ、様々な種類のカテーテル、例えば、バルーン・カテーテル、ステント配送システム、ステント・レトリーバ、塞栓用コイル、液体塞栓、吸引ポンプ、造影剤配送装置、医薬品、止血弁アダプタ、注射器、活栓、膨張装置等)を備えて、様々な制御(制御ステーションに配置された制御及び入力等)を行うことで、使用者又は操作者がロボット・システムを介してカテーテル・ベースの医療処置を実行できるようにする。ベッドサイド装置20、特にロボット駆動部24は、本明細書に記載の機能をベッドサイド装置20に対して提供するために、任意の数及び/又は組合せで構成要素(部品)を含むことができる。ロボット駆動部24は、レール又は線形部材に対して取付けられた複数のデバイス・モジュール(デバイスをモジュール化したもの)32a-32dを含む。デバイス・モジュール32a-32dの各々は、カテーテル又はガイド・ワイヤ等のEMDを駆動するために用いることができる。例えば、ロボット駆動部24を用いて、診断カテーテル内と、患者12の動脈内のガイド・カテーテル内とに、ガイド・ワイヤを自動的に供給することができる。EMD等の1つ又は複数のデバイス(装置)は、例えばイントロデューサー(導入器)シース(鞘)を介して、挿入点16にて、患者12の体内(例えば導管)に入る。各デバイスモジュール32a-32dは、駆動モジュールと、駆動モジュールに取外し可能に取り付けられたカセットとを含む。
【0037】
ベッドサイド装置20は、制御ステーション(図示略)と通信しており、制御ステーションの使用者入力により生じた信号を、無線又は有線で、ベッドサイド装置20に対して送信して、ベッドサイド装置20の様々な機能を制御できるようにしている。後述のように、制御ステーションは、制御コンピューター・システム34(図2参照)を含んでいてもよく、又は制御コンピューター・システム34を介してベッドサイド装置20と結合されていてもよい。また、ベッドサイド装置20は、フィードバック信号(例えば、装填、速度、動作条件、警告信号、エラーコード等)を、制御ステーション、制御コンピューター・システム34(図2参照)、又はその双方に提供してもよい。制御コンピューター・システム34とカテーテル・ベースの処置システム10の様々な構成要素との間の通信は、通信リンクを介して提供できるが、例えば、無線接続、ケーブル(有線)接続、又は他の任意の手段であって、構成要素間の通信を可能にするものを用いる。制御ステーション又は他の類似の制御システムは、ローカルサイト(例えば、図2に示すローカル制御ステーション38)又はリモートサイト(例えば、図2に示すリモート(遠隔)制御ステーション及びコンピューター・システム42)のいずれかに配置されてもよい。カテーテル処置システム10は、ローカルサイトの制御ステーション、リモートサイトの制御ステーション、又はローカル制御ステーションとリモート制御ステーションの双方によって同時に操作されてもよい。ローカルサイトでは、患者12及びベッドサイド装置20と同じ部屋又は隣接する部屋に、使用者又は操作者及び制御ステーションが配置される。本明細書の使用例では、ローカルサイトはベッドサイド装置20と患者12又は被験者(例えば、動物又は解剖用死体)の位置に相当し、かつ、リモートサイトは、ベッドサイド装置20をリモート制御するために用いられる使用者又は操作者及び制御ステーションの位置に相当する。ローカルサイトでの制御コンピューター・システム及び/又はリモートサイトでの制御ステーション(及び制御コンピューター・システム)及びベッドサイド装置20は、例えば、インターネットを介して、通信システム及びサービス36(図2参照)を用いて通信することができる。一実施形態に従うと、リモートサイトとローカル(患者)サイトとは互いに離れており、例えば、同じビル内の複数の部屋、同じ都市内の複数の建物、複数の都市内の複数の建物、又は他の複数の場所であって、ローカルサイトでのベッドサイド装置20及び/又は患者12に対してリモートサイトが物理的なアクセスを有していない場所でもよい。
【0038】
制御ステーションは、一般に、カテーテル・ベースの処置システム10の様々な構成要素又はシステムを作動させる使用者入力を受け取るように構成された1つ又は複数の入力モジュール28を含む。例示した実施形態では、制御ステーションは、使用者又は操作者が、カテーテル・ベースの医療処置を実行するように、ベッドサイド装置20を制御できるようにしている。例えば、入力モジュール28は、ロボット駆動部24とインターフェース接続された経皮介入装置(例えば、EMD)を用いて、様々なタスク(仕事)をベッドサイド装置20に実行させるように構成されていてもよい(例えば、ガイド・ワイヤを前進、後退、又は回転させ、カテーテルを前進、後退又は回転させ、カテーテル上に位置するバルーンを膨張又は収縮させ、ステントを位置決め及び/又は展開させ、ステント・レトリーバーを位置決め及び/又は展開させ、コイルを位置決め及び/又は展開させ、カテーテルに造影剤を注入し、カテーテルに液体塞栓(エンボリック)を注入し、医薬品又は塩水をカテーテル内に注入し、カテーテルで吸引し、又はカテーテル・ベースの医療処置の一部として実行され得る他の任意の機能を実行する)。ロボット駆動部24は、経皮介入装置を含むベッドサイド装置20の部品の移動(例えば、軸方向の移動や、回転方向の移動)を生じさせるために、様々な駆動機構を含む。
【0039】
一実施形態では、入力モジュール28は、1つ又は複数のタッチスクリーン、ジョイスティック、スクロールホイール、及び/又はボタンを含んでいてもよい。制御ステーションは、入力モジュール28に加えて、フットスイッチや、音声コマンド等用のマイクロホン等の追加のユーザ制御部44(図2参照)を使用することができる。入力モジュール28は、様々な構成要素及び経皮介入装置(例えばガイド・ワイヤ、及び1つ又は複数のカテーテル又はマイクロ・カテーテル等)を前進、後退、又は回転させるように構成されていてもよい。ボタンは、例えば、非常停止ボタン、乗算ボタン、装置選択ボタン及び自動移動ボタンを含んでいてもよい。非常停止ボタンが押されると、電源(例えば、電力)が遮断されたり、ベッドサイド装置20に取外される。速度制御モードでは、乗算ボタンは、入力モジュール28の操作に応じて関連する構成要素が移動する速度を増減させるように作用する。位置制御モードでは、乗算ボタンは、入力距離と出力指令距離との間でのマッピングを変更する。デバイス選択ボタンにより、使用者又は操作者は、ロボット駆動部24に装填された経皮介入デバイスのどれが、入力モジュール28によって制御されるのかを選択することができる。自動移動ボタンは、使用者又は操作者からの直接の指令なしに、カテーテル・ベースの処置システム10が、経皮介入装置上で実行できるアルゴリズム動作を可能にするために使用される。一実施形態では、入力モジュール28は、タッチスクリーン(ディスプレイの一部でもよく、そうでなくてもよい)上に表示される1つ又は複数の制御装置又はアイコン(図示略)を含んでいてもよく、これは、作動されると、カテーテル・ベースの処置システム10の構成要素の動作を引き起こす。また、入力モジュール28は、バルーンを膨張又は収縮させ、及び/又はステントを展開するように構成されたバルーン又はステント制御部を含んでいてもよい。入力モジュール28の各々は、1つ以上のボタン、スクロールホイール、ジョイスティック、タッチスクリーン等を含み、これらを用いて、専用の制御が割り当てられた特定の構成要素又は複数の構成要素を制御することを可能にする。さらに、1つ以上のタッチスクリーンは、入力モジュール28の様々な部分に関連する1つ以上のアイコン(図示略)又はカテーテル・ベースの処置システム10の様々な構成要素に関連する1つ以上のアイコン(図示略)を表示することができる。
【0040】
カテーテル・ベースの処置システム10はまた、撮像(イメージング)システム14を含む。撮像システム14は、カテーテルに基づく医療処置(例えば、非デジタルX線、デジタルX線、CT、MRI、超音波等)と関連して使用され得る任意の医療撮像システムであってもよい。例示的な実施形態では、撮像システム14は、制御ステーションと通信しているデジタルX線撮像装置である。一実施形態では、撮像システム14は、撮像システム14が患者12の周囲を部分的又は完全に回転することが可能なC字形状アーム(図1参照)を含むことができ、それによって、患者12に対する異なる角度位置(例えば、サジタルビュー、尾側ビュー、前後方向ビュー等)での画像を得てもよい。一実施形態では、撮像システム14は、イメージ増強器(インテンシファイア)としても知られる検出器15とX線源13とを有するC字形状アームを含む透視装置システムである。
【0041】
撮像システム14は、処置中に患者12の適切な領域のX線画像を撮影するように構成されていてもよい。例えば、撮像システム14は、神経血管状態を診断するために頭部の1つ又は複数のX線画像を撮像するように構成されていてもよい。また、撮像システム14は、カテーテル・ベースの医療処置中に1つ又は複数のX線画像(例えば、リアルタイム画像)を撮影して、ガイド・ワイヤ、ガイド・カテーテル、マイクロ・カテーテル、ステント・レトリーバー、コイル、ステント、バルーン等を処置中に適切に位置決めするために、制御ステーションの使用者又は操作者を補助するように構成されていてもよい。1つの画像又は複数の画像をディスプレイ30上に表示することができる。例えば、使用者又は操作者がガイド・カテーテル又はガイド・ワイヤを適切な位置に正確に移動させることを可能にするために、ディスプレイ30上に画像を表示してもよい。
【0042】
方向を明確にするために、X軸、Y軸及びZ軸を持つ直交座標系が導入されている。正のX軸は、長手方向(軸方向)遠位方向、即ち、近位端から遠位端までの方向に配向されており、換言すると、近位側から遠位側に向う方向に配向されている。Y軸とZ軸は、X軸に対して垂直面上にあり、正のZ軸は上向き、つまり重力の反対方向に配向されている。Y軸は右手の法則によって自動的に決定されるものとする。
【0043】
図2は、例示的な実施形態によるカテーテル・ベースの処置システム10のブロック図である。カテーテル処置システム10は、制御コンピューター・システム34を含んでいてもよい。制御コンピューター・システム34は、物理的には、例えば、制御ステーションの一部であってもよい。制御コンピューター・システム34は、一般に、本明細書に記載される様々な機能を有するカテーテル・ベースの処置システム10を提供するのに適した電子制御ユニットであり得る。例えば、制御コンピューター・システム34は、埋込みシステム、専用回路、本明細書に記載の機能を備えるようにプログラムされた汎用システム等であってもよい。制御コンピューター・システム34は、ベッドサイド装置20、通信システム及びサービス36(例えば、インターネット、ファイアウォール、クラウドサービス、セッション・マネージャー、病院ネットワーク等)、ローカル制御ステーション38、追加の通信システム40(例えば、テレプレゼンス・システム)、リモート制御ステーション及びコンピューター・システム42、及び患者センサ56(例えば、心電図(ECG)装置、脳電図(EEG)装置、血圧モニタ、温度モニタ、心拍数モニタ、呼吸モニタ等)と通信している。また、制御コンピューター・システムは、撮像システム14、患者用の台18、追加の医療システム50、造影剤(コントラスト)注入システム52及び追加デバイス54(例えば、IVUS、OCT、FFR等)と通信している。ベッドサイド装置20は、ロボット駆動部24、位置決めシステム22を含み、かつ更なる制御装置及びディスプレイ46を含んでいてもよい。上述のように、追加の制御装置及び表示装置は、ロボット駆動部24のハウジング上に配置することができる。介入デバイス(介入装置)及び付属品48(例えば、ガイド・ワイヤ、カテーテル等)は、ベッドサイドシステム20とインターフェース(接続)する。一実施形態に従うと、介入デバイス及び付属品48は、それぞれの追加デバイス54、即ち、IVUSシステム、OCTシステム、及びFFRシステム等とインターフェースする、専用装置(例えば、IVUSカテーテル、OCTカテーテル、FFRワイヤ、コントラスト用診断カテーテル等)を含んでいてもよい。
【0044】
様々な実施形態では、制御コンピューター・システム34は、制御信号を生成するように構成されており、その信号は、入力モジュール28(例えば、ローカル制御ステーション38又はリモート制御ステーション42等の制御ステーション)との使用者の相互作用、及び/又は、制御コンピューター・システム34にアクセス可能な情報に基づき、カテーテル・ベースの処置システム10を用いて医療処置が実行できるようにする。ローカル制御ステーション38は、1つ又は複数のディスプレイ30、1つ又は複数の入力モジュール28、及び追加のユーザ制御部44を含む。リモート制御ステーション及びコンピューター・システム42は、ローカル制御ステーション38と同様の構成要素を含むことができる。リモート制御ステーション42とローカル制御ステーション38とは、必要な機能に応じて異なるように調整することができる。追加のユーザ制御部44は、例えば、1つ又は複数のフット(足)入力制御装置を含んでもよい。フット入力制御は、使用者が撮像システム14の機能を選択することができるように構成されており、例えば、X線をオン及びオフにして撮像したり、様々な保存画像をスクロールすること等を可能にしてもよい。別の実施形態では、フット入力装置は、入力モジュール28に含まれるスクロールホイールに対してどのデバイスがマッピングされるのかを使用者が選択できるように構成されていてもよい。追加の通信システム40(例えば、オーディオ会議、ビデオ会議、テレプレゼンス等)を用いて、操作者が患者、医療スタッフ(例えば、血管撮影所のスタッフ)、及び/又はベッドサイドの近くの機器と相互作用するのを助けることは可能である。
【0045】
カテーテル・ベースの処置システム10は、ここでは明示的に示されていない任意の他のシステム及び/又はデバイスを含むように接続又は構成されていてもよい。例えば、カテーテル・ベースの処置システム10は、画像処理エンジン、データ蓄積及びアーカイブシステム、自動バルーン及び/又はステント膨張システム、医薬品注入システム、医薬品追跡及び/又はログシステム、使用者ログ、暗号化システム、カテーテル・ベースの処置システム10へのアクセス又は使用を制限するシステム等を含んでいてもよい。
【0046】
上述のように、制御コンピューター・システム34は、ベッドサイド装置20と通信しており、ベッドサイド装置20は、ロボット駆動部24、位置決めシステム22を含み、さらに追加の制御装置及びディスプレイ46を含むことができ、制御コンピューター・システム34は、ベッドサイド装置20に対して、経皮介入装置(例えば、ガイド・ワイヤ、カテーテル等)を駆動するために使用されるモーター及び駆動機構の動作を制御するための制御信号を供給し得る。様々な駆動機構は、ロボット駆動部24の一部として設けることができる。
【0047】
図3及び図15を参照すると、カセット組立体(カセットアセンブリ)100には、結合器(連結器やカプラーとも言う)104と共に結合された複数のカセット(取付枠、箱状部)102が含まれている。本明細書で用いられる「カセット組立体」という用語には、少なくとも2つのカセットからなる組立体(アセンブリ)が含まれている。図4A、4B及び4Cを参照すると、カセット組立体100は、少なくとも第1のカセット112と第2のカセット116とからなる組立体である。一実施形態では、ロボット駆動部24は、駆動モジュールを含み、その駆動モジュールに対して、カセット組立体100が着脱可能に取り付けられている。駆動モジュールは、ロボット駆動部24の資本的な非滅菌部分の一部に相当する。カセット組立体100は、カテーテル・ベースの処置システム10の滅菌部分の一部に相当する。カセット組立体内の各カセット102は、それぞれの駆動モジュールに取り付けられている。
【0048】
ロボット駆動部24の各使用のため、各カセット102をそれぞれの駆動モジュールに取り付けることが必要とされている。複数のカセット102を使用する手順では、カセット組立体100は、単一の装填ステップを用い、その際、カセット組立体100のすべてのカセット102が、それぞれの駆動モジュールに装填される。一実施形態では、結合器104は、カセット102に対して取外し可能に取り付けられて、各カセットがそれぞれの駆動モジュールに取り付けられると、取外される。駆動モジュールは、ロボット駆動部24の長手方向軸に沿って、装填用構成まで移動される。駆動モジュールは、所定の間隔で、互いに対して位置決めされる。また、カセット組立体100のカセット102は、装填用位置では、所定の間隔で、互いに対して位置決めされて、ロボット駆動部24へのカセット組立体100の装填中に、各カセット102がそれぞれの駆動モジュールと整合できるようにする。
【0049】
一実施形態では、結合器104にはアーム108が含まれるが、アーム108は、カテーテル・ベースの処置システム10の動作中にカセットに取り付けられたままにされる。図4A図4B及び図4Cを参照すると、結合器104は、第1のカセット112に接続される第1のアーム110と、第2のカセット116に接続される第2のアーム114とを含み、第2のアーム114は、第1のアーム110に対して摺動(スライド移動)可能に接続される。第1のアーム110と第2のアーム114は、それぞれ長手方向軸を有する。本明細書で記載のように、第1のアーム110と第2のアーム114は、互いに連結されるが、その際、第1のアーム110と第2のアーム114の間での相対的な移動が、各長手方向軸に沿ってのみ可能となるようにしている。なお、他の結合装置を用いて、少なくとも2つのカセットを結合するとともに、その結合状態のまま、少なくとも2つのカセットが互いに対して移動可能とすることも想定可能である。一実施形態では、第1のアームは、それぞれ、対応するカセットに接続される。各アームは、カセットハウジングと一体に形成されてもよいし、あるいは、別個の部品としてカセットハウジングに取り付けられてもよい。
【0050】
カセット組立体100には、第1の可撓性の支持体(フレキシブル・サポート)118が含まれるが、この支持体118は、第1の遠位端120と第1の近位端122を有する。第1の遠位端120は、第1のカセット112に対して取外し可能に固定され、第1の近位端122は、第1のアーム110の近位端124に固定される。第1の可撓性の支持体118のうち、第1の遠位端120と第1の近位端122の間の部位(一部)は、第2のカセット116内に配置される。
【0051】
一実施形態では、カセット組立体100には、第3のアーム128を有する第3のカセット126が含まれる。第2の可撓性の支持体130は、第2のカセット116の第2の近位端に取外し可能に接続される第2の遠位端132と、第2のアーム114の近位端に固定される第2の近位端134を有する。第2の可撓性の支持体130のうち、第2の遠位端132と第2の近位端134の間の部位は、第3のカセット126内に配置される。
【0052】
一実施形態では、カセット組立体100には、第4のアーム138を有する第4のカセット136が含まれる。第3の可撓性の支持体140は、第3のカセット126の近位端に取外し可能に接続される第3の遠位端142と、第3のアーム128の近位端に固定される第3の近位端144とを有する。第3の可撓性の支持体140のうち、第3の遠位端142と第3の近位端144の間の部位は、第3のカセット126内に配置される。
【0053】
一実施形態では、カセット組立体100には、先頭の可撓性の支持体146が含まれるが、この支持体146は、先頭の近位端148と先頭の遠位端150を有する。先頭の遠位端150は、シース接続部152に固定され、そのシース接続部152によって、先頭の可撓性の支持体146は、イントロデューサー・シースと接続される。先頭の近位端148は、支持アンカー(サポート・アンカー)154に固定されるが、その支持アンカー154は、ロボット駆動部24のハウジングに取り付けられる。
【0054】
図4A及び図5Aを参照すると、一実施形態では、第1のアーム110に含まれる第1のガイド(案内部)156によって、先頭の可撓性の支持体146の方向が、支持アンカー154に向けて配向されているが、その支持アンカー154によって、可撓性の支持体146の先頭の近位端148が、ロボット駆動部24のハウジングに接続されている。
【0055】
第2のアーム114に含まれる第2のガイド(案内部)158によって、第1の可撓性の支持体118の方向が、第1のアーム110の近位端部上の第1のコネクタ(接続部)160に向けて配向されている。第1の可撓性の支持体118には、第1の遠位端120と第1の近位端122が含まれている。第1の近位端122は、第1のアーム110上で第1のコネクタ160に固定されている。第1の遠位端120は、カセット112に対して取外し可能に固定されている。
【0056】
第3のアーム128に含まれる第3のガイド162によって、第2の可撓性の支持体130の方向が、第2のアーム114の近位端上の第2のコネクタ164に向けて配向されている。第2の可撓性の支持体130の第2の遠位端132は、第2のカセット116に対して取外し可能に固定されている。可撓性の支持体130の第2の近位端134は、第2のコネクタ164に固定されている。
【0057】
第4のアーム138に含まれる第4のガイド166によって、第3の可撓性の支持体140の方向が、第3のアーム128の近位端上の第3のコネクタ168に向けて配向されている。第3の可撓性の支持体140の第3の近位端144は、第3のコネクタ168に対して固定されている。図6Aを参照すると、第4のガイド(ディレクタ)166によって、第3の可撓性の支持体140の方向が、領域Aとして示されている第1の方向から、領域Bとして示されている第4のガイドを介して、領域Cとして示されている第3のコネクタ168に向けて変化されることが例示されている。
【0058】
図4A及び図7を参照すると、第1のアーム110は、第1のカセットのフランジ170に固定されている。一実施形態では、第1のカセット112、第2のアーム114、第3のカセット126、及び第4のカセット136は、それぞれ、対応する第1のカセットのフランジ170、第2のカセットのフランジ172、第3のカセットのフランジ174、及び第4のカセットのフランジ176を含む。一実施形態では、各フランジは、同一であって、4つの異なる接続領域を有する。第1の接続領域は、カセット組立体100の長手方向軸から最も離れている。一実施形態では、第1の接続領域には2つの開口部が含まれ、それらを通る2つのファスナ(留め具)によって、第1のアーム110を第1のフランジ170に接続している。同様に、カセット組立体100の長手方向軸から2番目に離れている第2の接続領域には2つの開口部が含まれ、それらを通る2つのファスナによって、第2のアーム114を第2のカセットのフランジ172に接続している。また、カセット組立体100の長手方向軸から3番目に離れている第3の接続領域には2つの開口部が含まれ、それらを通る2つのファスナによって、第3のアーム128を第3のカセットのフランジ174に接続している。そして、カセット組立体100の長手方向軸に対して最も近い第4の接続領域には、2つの開口部が含まれ、それらを通る2つのファスナによって、第4のアーム138を第4のカセットのフランジ176に接続している。なお、これら接続領域は、当技術分野で公知の他の機械的、化学的又は材料的固定システム等の、他の固定システムが利用可能である。
【0059】
一実施形態では、第1のアーム110、第2のアーム114、第3のアーム128及び第4のアーム138は、互いの上に積み重ねられることにより、それぞれの長手方向軸が、カセット組立体100の長手方向軸から離間して、実質的に平行になる。図5Aを参照すると、各アームは、z’軸に沿って積み重ねられている。
【0060】
図7を参照すると、第1のアーム110、第2のアーム114、第3のアーム128及び第4のアーム138は、それぞれ、同様の断面を有しており、それぞれ、押出材から形成することができる。第1のアーム110の断面は、略S字形状を有しており、その形状によって、第1の空洞(キャビティ)178と第2の空洞180が画定されている。第1の空洞は、第1の壁182、第2の壁184及び接続壁186から形成されている。案内壁188が第1の壁182から延出しているが、この案内壁188は、第1の壁182の自由端と第2の壁184の間で、接続壁186に向かっている。案内壁188には、ポケット192を形成するように、第2の壁184から離れる方向にタブ190が延出している。第2の空洞180は、接続壁186と、当該接続壁186から延出して第1の壁182から離れる方向に向かう第3の壁194と、当該第3の壁から離れる方向に延出する第4の壁196と、第4の壁196から延出して接続壁186に向かう第5の壁198と、から形成されている。各アームは同一であって、各アームの各部分は同様に特徴付けることができる。
【0061】
各アームは、隣接するアームと摺動可能に結合又は連結されている。第2のアーム114の案内壁とタブは、第1のアーム110の第2の空洞180内に受け入れられ、第1のアーム110の第5の壁198は、第2のアーム114の第1の空洞内に配置されている。
【0062】
第3のアーム128の案内壁とタブは、第2のアーム114の第2の空洞内に受け入れられている。第4のアーム138の案内壁とタブは、第3のアーム128の第2の空洞内に受け入れられている。これら複数のアームの交互配置によって、アームの長手方向軸に沿う移動については例外としながら、相対的なアームの移動を全方向で最小化させている。
【0063】
図4Cを参照すると、カセット組立体100は、先頭の可撓性の支持体146の近位端と支持アンカー154とを第4のカセット136と近接して配置させた出荷時の構成が例示されている。
【0064】
一実施形態では、可撓性の支持体は、長手方向スリットを有する管(チューブ)であって、その長手方向スリットは、実質的に、管の全長に沿って延在する。各カセットは、経皮装置を操作するが、その経皮装置は、各カセットの遠位端と、近位カセット及び/又はシース・コネクタとの間で支持される。各経皮装置が、対応する可撓性の支持体のルーメン(空洞又は内腔)に対し出入りする仕方については、国際出願番号第WO/2021/011551号の公報に記載されているが、その名称は、「ロボットカテーテルベースの処置システムにおいて細長い医療機器を支持し駆動するシステムと装置と方法(Systems, apparatus and methods for supporting and driving elongated medical devices in a robotic catheter-based procedure system)」であって、その出願の開示内容が、参照により本明細書に援用されている。この開示例では、可撓性支持管が経皮装置を複数のカセットとして支持しているが、それらカセットは相互に独立して移動して、各カセット内のスプリッターによって経皮装置が可撓性支持管のルーメンに出入りすることを可能にしている。可撓性の支持体は、可撓性支持チューブのルーメン内で経皮装置が座屈することなく、カセットが相互に移動することを可能にしている。このことは、複数のカセット間の可撓性の支持体の長さを自動的に調整することで達成され得る。例えば、図5Aを参照すると、第2のカセット116が第1のカセット112に向って近位方向に移動すると、第1の可撓性の支持体118の一部が第2のカセット116内のチャネル(経路)を通って、第1のアーム110の第1の近位端122に向かう。なお、第2のカセット116は、ロボット駆動部24の駆動モジュールに固定されることに留意されたい。カセット116と、その関連する駆動モジュールとは、ともに動くデバイス・モジュールを形成する。このことは、第1の可撓性の支持体118が、第1の可撓性の支持体118の近位端にて第1のカセット112の本体の近位端に固定されるとともに、第1の可撓性の支持体118の遠位端にて第1のアーム110の近位端に固定されることで達成され得る。第2のカセット116が第1のカセット112に向かって移動する際、第1の可撓性の支持体118が座屈しないように、第1の近位端122の接続が張力状態となる。同様に、第2のカセット116が第1のカセット112から離れる方向に移動する際、第1の可撓性の支持体118の近位端の接続は、第1の可撓性の支持体118を張力状態にする。なお、複数のカセットは同じ速度又は異なる速度で、ともに移動することができ、及び/又は、複数のカセット間の可撓性の支持体の方向と長さは、自動的に調整することができる。
【0065】
第1の可撓性の支持体118は、第1のカセット112の本体の近位端と第1のアーム110の近位端とに固定されるため、第2のカセット116が第1のカセット112に対して移動する際、可撓性の支持体118は張力状態であり続ける。各カセットがカセット組立体100に沿って移動する際、それぞれのカセットを通って延在する可撓性の支持体は張力状態であり続ける。その理由は、可撓性の支持体は、その遠位端と近位端との双方で支持されるためである。遠位端と近位端の位置は、互いに対し固定距離である。第1の可撓性の支持体118、第2の可撓性の支持体130、及び第3の可撓性の支持体140の例では、各支持体の遠位端と近位端は、同じカセット/アーム構成に固定される。先頭の可撓性の支持体146の近位端と遠位端は、それぞれ、シース接続部152と支持アンカー154に固定される。シース接続部152と支持アンカー154は、カテーテル・ベースの処置システム10の設置の、使用位置では、固定距離の関係にある。
【0066】
図15を参照すると、第1のカセット112、第2のカセット116、第3のカセット126、及び第4のカセット136は、それぞれ、同様の方法で、対応する第1の駆動モジュール111、第2の駆動モジュール115、第3の駆動モジュール125、及び第4の駆動モジュール135に固定されている。図8図9図10図11及び図14を参照すると、一実施形態では、各カセットの対応する駆動モジュールへの接続は同じである。従って、第2のカセット116の第2の駆動モジュール115への取り付けは、他のカセットの対応する駆動モジュールへの取り付けと同じである。第2のカセット116は、ラッチ210を含むが、このラッチ210は、非係合位置から係合位置まで摺動(スライド)式に移動する。ラッチ210の一部は、駆動モジュール115上のタブと解放可能に係合する。第2のカセット116は、被駆動部材214を含むが、この被駆動部材214は、第2の駆動モジュール115の駆動部材216と取外し可能(解放可能)に係合する。図14を参照すると、被駆動部材214は、外側円筒壁(円筒状部材)218によって囲まれているが、これにより、被駆動部材214と外側円筒壁218との間で空洞(キャビティ)が画定されている。一実施形態では、外側円筒壁218と、第2の同心状の円筒壁(円筒状部材)219によってキャビティが形成される。第2の駆動モジュール115は、外側に延出する円筒壁220を含むが、円筒壁220は、第2の駆動モジュール115に向かってカセット116が移動する際、キャビティ内に受け入れられる。外側に延びる円筒壁220のキャビティ内の位置は、装着されて係合された第1の可撓性の支持体118と第2の駆動モジュール115との間の移動を最小限に抑えることを助ける。被駆動部材214は、第2の同心状の円筒壁219の部分のような弾性バネによって、駆動モジュール115内に保持される。言い換えると、第2の同心状の円筒壁219には弾性フィンガー(指)状部分が設けられていて、各フィンガー部分の自由端に備えられた上部リップによって、駆動モジュール115内で被駆動部材214を保持させている。
【0067】
第1の可撓性の支持体118は、静止用壁部分222を含み、その部分222は、カセット組立体100が第1の設置位置(インストール位置)に移動される際、第2の駆動モジュール115の壁部分224上に静止又は載置され得る。カセット組立体100の各カセットの静止用壁部分は、各駆動モジュールの全ての対応する支持壁部分上に載置され得る。一実施形態では、カセット組立体100は、最初の設置位置では、駆動モジュール上に完全に支持されるので、使用者又は操作者は、ロボット駆動部24上にカセット組立体100を設置する際、カセット組立体100を保持(ホールド)する必要がない。言い換えると、カセット組立体100は、駆動モジュール上でバランスが取られる(釣り合う)ため、使用者は、カセットを駆動モジュールにラッチ(係止)する前に、カセット組立体から両手を離すことができる。各カセットには、位置決め溝部(凹部)226が設けられており、そこに位置決めピン228を受け入れることができる。使用者は、カセット組立体100を、一度支持面上に置かれると、駆動モジュール115に向かって移動させる。この結果、各タブが各凹部内に配置されて、各円筒壁は各キャビティ内に配置される。この係合位置では、各ラッチは、非係合位置から係合位置まで移動する結果、各カセットは対応する駆動モジュールに係止される。
【0068】
図12及び図13を参照すると、第2のカセット116の本体の近位端には、第1の可撓性の支持体118の部分の案内を助けるため、第1のローラー200と第2のローラー202が含まれることが例示されており、第1の可撓性の支持体118の部分が第2のカセット116を通って第2の案内部158を経て第1のコネクタ160に向かって移動する際、その案内を助けている。一実施形態では、第1の可撓性の支持体118が第2のカセット116を介して円滑に移動するのを容易にするため、追加のローラー204を設けることができる。第1の可撓性の支持体118が第2のカセット116を通って移動する際、ローラー200は、ピン206を中心として旋回(ピボット)してもよい。
【0069】
図5A図5B図6A及び図6Bを参照すると、一実施形態では、当技術分野で公知のように、ポート236を介して、止血弁234と流通するように、流体ライン238が存在する。一実施形態では、流体ライン238は、各止血弁のポート236に接続されて、造影剤、塩水、治療剤、又は当技術分野で公知の他の流体等を止血弁に移送することを可能にしている。流体ライン238は、一般に、管の形状を有し、その内部を通るルーメンを有する。図6A及び図6Bを参照すると、カセット組立体の内、第4のカセットと最も近位のカセットには流体ラインが含まれるが、当該システムの一実施形態では、第4のカセット又は最も近位のカセットには、ワイヤ・ベースの装置を含ませることができ、その際、止血弁によらずに、コレットを用いてカセットと結合することができる。なお、最も近位の装置には、カテーテルと止血弁を含むことができる。なお、最も近位のカセットに対する流体ラインの説明は、より遠位のカセットに対する流体ラインについても適用可能である。同様に、全てのカセットが止血弁を備えた流体ラインを含まないことが考えられる。言い換えると、一実施形態では、カセット組立体内の複数のカセットのうち、全てではないが、幾つかには、流体ラインが含まれ得る。
【0070】
図5A及び図6Aを参照すると、一実施形態では、流体ライン238は、ポート236から、正のZ軸に沿って、ほぼ上方向に延出している。この実施形態では、流体ライン238は、患者用の台18から離れる方向に、止血弁から延出する。各駆動モジュールにはカバー230が回動(ピボット)可能に取り付けられているが、カバー230の底部230aの近くで取り付けられている。頂部230bは、流体ライン238の一部を制限して、流体ライン238が、患者用の台18から離れる方向で、正のZ軸に沿って、上方に配向されるようにしている。
【0071】
図5B及び図6Bを参照すると、一実施形態では、流体ライン238は、ポート236から、正のY軸に沿って、概して、患者用の台を横切る第1の方向で延在し、次いで、可撓性の流体ライン238は、重力の影響下で、患者用の台18に向かって延在している。カバー230の近位側の開口部230cによって、流体ライン238は、カバー230を通って延出することができる。開口部230cには、下縁と、それと対向する上縁と、遠位縁とが含まれる。開口部230cは、近位端側で完全に開口している。開口部230cの下縁と上縁は、流体ライン238がポート236から延出する際、流体ライン238の案内を助けている。一実施形態では、ポート236は、止血弁本体から直接延出するサイドポートである。しかしながら、流体ライン238は、止血弁の長手方向軸に対して角度を付けて延出するY型コネクタの一方の脚部と流体連結することも考えられる。一実施形態では、流体ライン238は、止血弁の長手方向軸に対して角度を付けて延出するY型コネクタの一方の脚部に対して解除可能に流体連結される。一実施形態では、流体ラインを伴うサイドポートの方向は、90度(患者用の台と平行)であり、一実施形態では、流体ラインを伴うサイドポートの方向は、患者用の台に向かって垂れ下がる方向である。カバー開口部230cの開口した近位側によって、カバー230が底部230aに関して閉鎖位置まで回動される際、カバー230の開口部230c内に、流体ライン238が容易に位置決められることを可能にしている。図4B及び図5Bを参照すると、すべての流体ライン238は、アーム110、114、128及び138から離れるため、当該技術分野で公知の関連する結合器(例えば、栓等)と、流体ラインとが絡み合うことを回避させている。言い換えると、すべての流体ライン238は、アーム110、114、128及び138から離れるか、それらの近くを通らないように配向されている。一実施形態では(図示略)、カバー開口部230cは、上縁部を有さないことにより、流体ライン238がカバー230内に配置される際、流体ラインが、開口部230cの近位側のサイドポートを通って移動する必要性をなくしている。市販の止血弁の中では、流体ラインの端部を取外し可能に受け入れるポート236が設けられたものがあるが、他の市販の止血弁では、すぐに取外すことができないようにポート236と一体化して接続された流体ラインが設けらたものがある。一実施形態では、取外し可能なように、流体ラインにコネクタが提供される。ポート236からすぐに取外すことができない流体ラインの一例では、コネクタが設けられない。取外し可能な流体ラインと、一体化された流体ラインとが、代替の実施形態として想定可能である。流体ラインが一体化されない場合、開位置から閉位置まで回動(枢動)可能なカバーを用いることができ、その際、止血弁のY型コネクタのサイドポートと出会うことを回避させてもよい。流体ラインがポート236と一体化される場合、流体ライン238と出会うことなく、カバー230を全開位置から全閉位置まで回動可能であるという点で利点がある。神経血管の介入処置等の何らかの処置では、各流体ラインは、加圧された塩水バッグから取り回される管と接続され得る。典型的には、塩水バッグは、患者用の台の左側のレールに取り付けられるポールから垂れ下げられる。さらに、流体ラインとチューブは、ロボット駆動部の下方で取り回されるので、ベッドサイドの使用者が、栓又はローラークランプ(又は関連する結合器)の操作にアクセスすることを可能にしてもよい。一実施形態では、サイドポートが突出する空間内に、カバー230は延出しない。このカバー230は、開位置から閉位置までカバーが移動するとき、流体ラインと接触しない。
【0072】
本明細書で使用される「結合する(couple)」、「結合された(coupled)」、「結合器(coupler)」、「結合している(coupling)」等の用語は、可撓性の結合器、剛性の結合器、摺動式の結合器、解放可能型の結合器、又は他の種類の結合器に適用可能である。なお、別個のカセットは、それぞれ、同時に対応する駆動モジュールに関して配置されるように、ともに配置されてもよい。
【0073】
止血弁は、本技術分野で公知である。従来の止血弁は、端部に回転シールを有しており、ワイヤ、マイクロ・カテーテル又はガイド・ワイヤが挿入されたり、取出される度に、回転シールが開閉され得る。言い換えると、一実施形態では、シール自体は回転せず、むしろ、近位端を回転させて、チューイ・ボースト弁(Tuohy-Borst valve:他の読み方として、テューイ・ボースト弁又はツーイ・ボースト弁等があり得る)を圧縮させてもよい。なお、全ての止血弁がチューイ・ボースト弁を有しているわけではない。これらは、介入処置や診断処置中に、シールして、流体損失を最小限に抑えるために使用され得る。止血弁は、カテーテルやその他のEMD等の機器が、弁を開放させて、通過することを可能にするとともに、機器が取出されるとすぐに自動的に閉鎖させることを可能にしている。なお、EMDが引き抜かれると、クロスカット弾性弁(又は同様のもの)が閉鎖することに留意されたい。ただし、すべての止血弁がクロスカット弾性弁を有するわけではない。止血弁は、遠位端と近位端を有する第1の脚部を含む。第2の脚部は、第1の脚部から延出するとともに、第1の脚部と流通して、第2の脚部の近位端に流体が導入されることを可能にしている。止血弁の第1の脚部は、第1の脚部の近位端から第1の脚部の遠位端まで延出する長手方向軸を定める。第1の脚部の遠位端には、ルアーコネクタが含まれ得るが、このルアーコネクタは、第1の脚部の遠位端に回転可能に結合され得る。回転式ルアーコネクタには、外面と内部領域が含まれるが、内部領域にはガイド・カテーテルを解放可能に結合するルアーの雌型の相互接続部が備えられる。本技術分野では、ガイド・カテーテルと止血弁の間で堅固な流通を可能にするルアーコネクタは公知である。ルアーコネクタは、ISO規格80369-7によってカバーされている。回転式止血弁(RHV:rotating hemostasis valve)は、カテーテルの近位ハブに取り付けられて、シールを保ちながら、別の機器が挿入されることを可能にする。RHVは、サイドポートを備えることで、注射器、ヘパリン化塩水ライン、造影剤注入システム、手動/ポンプ吸引又はマニホールドとの接続を可能にしている。RHVの遠位端にあるルアーコネクタは、RHVの残部とは独立して回転できるため、カテーテル装置が回転する際、サイドポートは回転しない。
【0074】
一実施形態では、止血弁装置は、ルーメンを有する本体内に1つ又は複数の弁を備える。本体は、近位端と遠位端を有する。止血弁装置は、カテーテルの近位ハブと接続される。一実施形態では、止血弁装置は、カテーテルの近位ハブに対して取外し可能に接続される。一実施形態では、止血弁装置は、カテーテル装置に対して接着される。一実施形態では、止血弁装置は、カテーテルが回転されるように設計され、流体をシールする回転式コネクタを備える。止血弁装置を通って、細長い医療デバイス(EMD)が延出する。一実施形態では、止血弁装置は、弁と止血弁装置の遠位端との間にサイドポートを備える。一実施形態では、サイドポートは、止血弁装置には不可欠ではない。サイドポートは、止血弁の遠位側のカテーテル装置に取り付けられる別体の部品でもよい。一実施形態では、弁は、クロスカット(又は他の)形状を有するエラストマー(又は弾性体)であって、EMDが挿入されることを可能にする開口部を形成して、EMDが取外される際、(材料の特性に基づいて)閉鎖又はシールすることを可能にする。一実施形態では、弁は、チューイ・ボースト弁であって、圧縮されると、EMDの周りを閉鎖するか、EMDが取外される際にシールする。圧縮されない場合、チューイ・ボースト弁は、開放されたままの開口部を有する。チューイ・ボースト弁の圧縮は、典型的には、止血弁の近位端を時計回り(CW)に回転することで行う。また、チューイ・ボースト弁の閉鎖は、典型的には、止血バルブの近位端を反時計回り(CCW)に回転することで行う。
【0075】
以上、本開示内容について、実施形態の例を参照して、説明したが、当業者であれば、本発明主題の範囲と技術思想から逸脱することなく、上記例の形態や詳細について変更を加えることが可能なことを認識するであろう。例えば、複数の実施形態の例では、1つ又は複数の利点を有する1つ又は複数の特徴について説明されているが、例示した実施形態や、代替の実施形態では、それら説明された特徴について、互いに交換したり、又は、互いに組み合わせることが可能である。本開示内容の技術思想は比較的複雑であるため、その技術思想の変化のすべてを予め想定することは困難である。従って、記載された本開示内容は、出来る限り広義に解されることが意図されている。例えば、特段の断りがない限り、単一の特定の構成要素についての説明は、複数のそのような構成要素の適用についてもカバーするものとする。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【外国語明細書】