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特開2023-21024薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法
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  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図1
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図2
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図3
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図4
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図5
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図6
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図7
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図8
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図9
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図10
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図11
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図12
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図13
  • 特開-薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法 図14
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021024
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び超薄型薄膜と薄膜を製造する複合装置の使用法
(51)【国際特許分類】
   B65H 18/26 20060101AFI20230202BHJP
   B29C 55/20 20060101ALI20230202BHJP
   B65H 18/10 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
B65H18/26
B29C55/20
B65H18/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022119222
(22)【出願日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】10 2021 119 724.4
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510331593
【氏名又は名称】ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・エーデル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート・ガンピンガー
(72)【発明者】
【氏名】バートホールド・アイヒナー
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・ケルンバーガー
【テーマコード(参考)】
3F055
4F210
【Fターム(参考)】
3F055AA05
3F055CA01
3F055DA01
3F055EA01
3F055EA11
4F210AG01
4F210AJ08
4F210QA02
4F210QC03
4F210QC05
4F210QG01
4F210QG18
4F210QL15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】極力低い薄膜引張力でしかも接触ローラと薄膜巻回体との間の極力低い接触圧力を実現する薄膜巻取装置を提供する。
【解決手段】薄膜巻取装置(1)は、薄膜シート(2)を薄膜巻回体に巻取る第1の巻回体(4)を巻取位置に備える。第1の巻回体(4)に隣接して巻取位置に配置される接触ローラ(6)は、薄膜シート(2)を第1の巻回体(4)に案内する。薄膜シート(2)の移動方向に接触ローラ(6)の上流に配置される浮動ロール(8)は、接触ローラ(6)方向に薄膜シート(2)を案内しかつ薄膜の引張力を設定する。第1の再調整装置(10)は、巻取位置(4)に対し接近方向又は離間方向に接触ローラ(6)を移動して、接触ローラ(6)と薄膜巻回体との間で特定の接触圧力を設定する。第1の再調整装置(10)は、滑動装置又は調整主軸を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取るべき薄膜シート(2)を薄膜巻取装置(1)に供給する薄膜進入領域(3)と、
薄膜進入領域(3)からの薄膜シート(2)を巻取位置で薄膜巻回体(5)に巻取る第1の巻回体(4)と、
第1の巻回体(4)に隣接して巻取位置に配置されかつ第1の巻回体(4)に薄膜シート(2)を案内する接触ローラ(6)と、
薄膜シート(2)の移動方向に接触ローラ(6)の上流に配置され、薄膜シート(2)を接触ローラ(6)に案内しかつ薄膜引張力を設定する浮動ロール(8)と、
巻取位置(4)に対し接近方向又は離間方向に接触ローラ(6)を移動して、接触ローラ(6)と薄膜巻回体(5)との間に特定の接触圧力を設定する第1の再調整装置(10)とを備える薄膜延伸装置(110)用薄膜巻取装置(1)において、
第1の再調整装置(10)に滑動装置又は調整主軸を設けたことを特徴とする薄膜巻取装置(1)。
【請求項2】
滑動装置は、空気軸受滑動装置(11)又は静圧軸受滑動装置である請求項1に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項3】
第1の再調整装置(10)の空気軸受滑動装置(11)は、第1のレール(23)と、第1のレール(23)上に配置される少なくとも1つの第1の滑動体(24)とを備え、
第1の滑動体(23)は、第1のレール(23)方向を向く複数の空気排出開口を備え、
第1の滑動体(24)は、圧縮空気を供給する空気接続部(25)を備え、
複数の空気排出開口から排出される圧縮空気は、第1のレール(23)上で第1の滑動体(24)を摺動させて移動可能にする請求項2に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項4】
第1の滑動体(24)は、第1のレール(23)の少なくとも3側面を包囲する請求項3に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項5】
第1の再調整装置(10)の空気軸受滑動装置(11)は、第2のレール(26)と、第2のレール(26)上に配置される少なくとも1つの第2の滑動体(27)とを備え、
第2のレール(26)方向の複数の空気排出開口が第2の滑動体(27)に形成され、
第2の滑動体(27)に接続される空気接続部(28)から第2の滑動体(27)に供給されかつ複数の空気排出開口から排出される圧縮空気により、第2のレール(26)上で第2の滑動体(27)を摺動させて移動可能とし、
第2のレール(26)は、第1のレール(23)に対し平行に配置される請求項3又は4に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項6】
第1の再調整装置(10)の空気軸受滑動装置(11)は、第1のレール(23)上に配置される第3の滑動体を備え、
第3の滑動体は、第1のレール(23)方向を向く複数の空気排出開口を備え、
第3の滑動体は、第3の滑動体に接続される空気接続部から供給されて複数の空気排出開口から排出される圧縮空気により、第1のレール(23)上で第3の滑動体を摺動させて移動可能とし、
第1のレール(23)は、一貫して配置され又は第1の滑動体及び第3の滑動体(24)用に間隔をあけた2部分レールに分割して配置される請求項3~5の何れか1項に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項7】
第1の再調整装置(10)は、下記a)又はb)を備え、
a)第1のラジアル空気軸受(13)及び第2のラジアル空気軸受(13)、
b)第1の静圧軸受及び第2の静圧軸受、
接触ローラ(6)の第1の端面(14)及び第2の端面(14)の軸頚は、第1のラジアル空気軸受(13)及び第2のラジアル空気軸受(13)又は静圧軸受で軸支する第1のころ並軸受(15)及び第2のころ並軸受(15)を備える請求項1~6の何れか1項に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項8】
第1の再調整装置(10)は、滑動装置を介して、第1の巻回体(4)に対し接近方向又は離間方向に接触ローラ(6)を移動するリニアモータ(12)を備え、
第1の再調整装置(10)は、第1の巻回体(4)に対し接近方向又は離間方向に接触ローラ(6)を移動する調整主軸を回転する電動機を備える請求項1~7の何れか1項に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項9】
薄膜巻回体(5)に対し接触ローラ(6)を所定の接触圧力で当接させると共に、第1の再調整装置(10)のリニアモータ(12)又は電動機を駆動する制御装置を備える請求項8に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項10】
薄膜シート(2)の移動方向に浮動ロール(8)の上流に配置される第1の偏向ローラ(9)を備える請求項1~9の何れか1項に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項11】
第1の偏向ローラ(9)と接触ローラ(6)との間の距離は、浮動ロール(8)と接触ローラ(6)との間の距離よりも小さい請求項10に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項12】
ラジアル空気軸受(20)又は静圧軸受により第1の偏向ローラ(9)を回転可能に軸支する請求項10又は11に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項13】
薄膜シート(2)の移動方向に浮動ロール(8)の下流かつ接触ローラ(6)の上流に配置される第2の偏向ローラ(21)を備える請求項1~12の何れか1項に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項14】
複数のラジアル空気軸受(22)又は静圧軸受により回転可能に軸支される第2の偏向ローラ(21)を備える請求項13に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項15】
第1の再調整装置(10)の滑動装置又は調整主軸を配置して支持する接触ローラ台(30)を備え、
接触ローラ(6)は、接触ローラ台(30)に対して移動し又は
接触ローラ台(30)は、第1の再調整装置(10)の滑動装置又は調整主軸上に配置され、接触ローラ台(30)上に配置される接触ローラ(6)と接触ローラ台(30)とを共に移動する請求項1~14の何れか1項に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項16】
第1の偏向ローラ(9)及び/又は第2の偏向ローラ(21)及び/又は浮動ロール(8)は、接触ローラ台(30)上に配置される請求項15並びに請求項10及び/又は請求項13に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項17】
基台(32)と、空気軸受滑動装置若しくは静圧軸受滑動装置又は調整主軸(34)とを有する基台移動装置(33)を備え、
接触ローラ(6)、浮動ロール(7)、第1の偏向ローラ(9)及び/又は第2の偏向ローラ(21)は、基台(32)上に配置され、
基台移動装置(33)は、接触ローラ(6)、浮動ロール(7)、第1の偏向ローラ(9)及び/又は第2の偏向ローラ(21)は、巻取位置(4)に対し接近方向又は離間方向に移動する請求項1~14の何れか1項又は請求項10及び/若しくは請求項13に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項18】
接触ローラ(6)に対し浮動ロール(8)を接近方向又は離間方向に移動して特定の薄膜引張力を設定する第2の再調整装置(16)を備え、
第2の再調整装置(16)は、空気軸受滑動装置(17)又は静圧軸受滑動装置若しくは調整主軸を備える請求項1~17の何れか1項に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項19】
第2の再調整装置(16)の空気軸受滑動装置(17)は、第1のレールと、第1のレール上に配置される少なくとも第1の滑動体とを備え、
第1の滑動体は、第1のレール方向の複数の空気排出開口を備え、
第1の滑動体は、第1のレール上で第1の滑動体を摺動し移動させて複数の空気排出開口から排出される圧縮空気を供給する空気接続部を備える請求項18に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項20】
第2の再調整装置(16)は、空気軸受滑動装置(17)又は静圧軸受を介して接触ローラ(6)に対し接近方向又は離間方向に浮動ロール(8)を移動するリニアモータ(18)を備え、
第2の再調整装置は、調整主軸を回転させて、第1の巻回体(4)に対し接近方向又は離間方向に浮動ロール(8)を移動する電動機を備える請求項18又は19に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項21】
浮動ロール(8)を介して薄膜に所定の引張力を加えて、第2の再調整装置(16)のリニアモータ(18)又は電動機を駆動する制御装置を備える請求項20に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項22】
浮動ロール(8)は、ラジアル空気軸受(19)又は静圧軸受により回転可能に軸支される請求項1~21の何れか1項に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項23】
第1の巻回体(4)は、薄膜シート(2)を基体(4a)周りに巻取る回転可能な基体(4a)を備え、
第2の巻回体(7)は、薄膜シート(2)を基体(7a)周りに巻取る回転可能な基体(7a)を備え、
第1の巻回体(4)は、接触ローラ(6)に隣接して配置される巻取位置から取出位置に回転され、
取出位置では、第1の巻回体(4)から巻取られた薄膜巻回体(5)を取り出し、
同時に、第2の巻回体(7)は、取出位置から巻取位置に回転され、
取出位置方向に第1の巻回体(4)が回転されると、薄膜シート(2)の幅に沿って薄膜シート(2)を切断する切断装置を備え、
第2の巻回体(7)の基体(7a)は、第2の巻回体(7)を更に巻取位置に回転して、新規な薄膜シート(2)の始端に直接接触する請求項1~22の何れか1項に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項24】
薄膜シート(2)の領域に配置されかつ薄膜シート(2)及び/又は薄膜巻回体(5)上の電荷を放電する少なくとも1つの放電装置を備える請求項1~23の何れか1項に記載の薄膜巻取装置(1)。
【請求項25】
薄膜延伸装置(110)と、請求項1~24の何れか1項に記載の薄膜巻取装置(1)とを備える複合装置(100)において、
薄膜延伸装置(110)は、樹脂溶融物を供給する入口領域(111)と、樹脂溶融物を加熱しかつ/又は延伸して薄膜シート(2)に形成する複数の異なる領域(110a,110b,110c,110d,110e)を備え、
薄膜延伸装置(110)の出口領域(112)は、薄膜巻取装置(1)の薄膜進入領域(3)に接続されることを特徴とする複合装置(100)。
【請求項26】
蓄電池用隔離体薄膜を製造しかつ巻取る請求項25に記載の複合装置の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜巻取装置、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置及び二軸延伸超薄膜、特に蓄電池隔離体薄膜、ポリプロピレン蓄電薄膜(PPK薄膜)若しくはポリエチレン・テレフタレート蓄電薄膜(PETK薄膜)の製造法又は例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜等の樹脂薄膜を製造する複合装置の使用法に関連する。ポリプロピレン蓄電薄膜及びポリエチレン・テレフタレート蓄電薄膜を二軸延伸により形成することが好ましい。超薄膜の厚さは、5μm未満が好ましい。
【背景技術】
【0002】
薄膜延伸装置は、特定の材料特性を備える樹脂(プラスチック)溶融物から特定の用途に採用する薄膜シートの製造に役立つ。薄膜延伸装置は、樹脂薄膜を縦方向及び/又は横方向に延伸する延伸段を備える。今日の延伸装置の稼働速度は、益々増大し、既に400m/分を超える。今後更に高速の薄膜延伸装置も稼働されよう。この場合に、完成した製品、即ち薄膜シートの巻取法が、重要な観点となる。製造した薄膜シートを巻取る薄膜巻取装置が設けられるが、巻取りの際に折目が発生しない多層薄膜シートの各構成層を後に容易に分離できることが重要である。薄膜シートは、巻取位置で巻取られる。薄膜シートを周囲に巻取る基体が巻取位置に設けられる。巻取前に薄膜シートを確実かつ最適に配向する接触ローラを介して、薄膜シートは、既知の巻取位置に供給される。
【0003】
製造すべき薄膜の種類毎に、特別な装置媒介変数(パラメータ)を選択し、維持し又は確定しなければならない。例えば、蓄電池隔離体薄膜等の超薄型薄膜には、厳格な製造条件が要求される。例えば、ポリエチレン・テレフタレート(PET)又はポリプロピレン(PP)を有する多層薄膜とは異なり、蓄電池隔離体薄膜等の多層超薄型薄膜の製造時に、極小引張力でのみ薄膜を延伸することがある。薄膜の引張力範囲は、1N/m~200N/mである。好ましい範囲は、5N/m~15N/mである。蓄電池隔離体用粘弾性薄膜の薄膜巻回体(巻取状薄膜)及び巻取スリーブに対し、接触ローラにより高接触圧力を印加できない。従って、好ましい接触圧力範囲は、0N/m~100N/mであり、より好ましくは、1N/m~10N/mである。接触圧力の範囲外では、例えば、薄膜シートの伸縮等を回避すべき誤巻取が発生する恐れがある。
【0004】
例えば、蓄電池隔離体薄膜の製造法を記載する下記特許文献1及び特許文献2に開示される蓄電池隔離体薄膜の製造法は、本明細書に組込まれるものとする。
【0005】
巻取装置の全動作が非常に緩慢でありかつ理想的な円形に薄膜巻回体が形成されないため、低薄膜引張力、特に低接触圧力への設定は、基本的に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許第10 2019 112 089号明細書
【特許文献2】独国特許第10 2019 119 600号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、極力低い薄膜引張力でしかも接触ローラと薄膜巻回体との間の極力低い接触圧力を実現する薄膜巻取装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、独立請求項1に記載する薄膜巻取装置により解決する。請求項25は、薄膜延伸装置と薄膜巻取装置とを備える複合装置を記載する。請求項26は、超薄型薄膜及び膜を製造して巻取る複合装置の使用法を記載する。請求項2~24は、薄膜巻取装置の他の発展的実施の形態を記載する。
【0009】
薄膜巻取装置は、巻取るべき薄膜シートを薄膜巻取装置に供給する薄膜進入領域を備える。巻取位置で薄膜シートを薄膜巻回体に巻取る第1の巻回体が薄膜巻取装置に形成される。また、接触ローラと浮動ロールが設けられる。接触ローラ(巻取位置に配置されるとき)は、第1の巻回体に直に隣接して配置されかつ薄膜シートを第1の巻回体に案内する機能がある。用語「直接」は、接触ローラが薄膜巻回体に接触する意味又は薄膜巻回体に巻取られる薄膜シートのみを接触ローラと薄膜巻回体との間に配置する意味と理解すべきである。しかし、接触ローラと薄膜巻回体との間に分離間隙を形成してもよい。分離間隙は、好ましくは1000mm、900mm、800mm、700mm、600mm、500mm、400mm、300mm、200mm、100mm、50mm、30mm、20mmより小さいか又は10mmより小さいことが好ましい。浮動ロールは、薄膜シートの移動方向に接触ローラの上流に配置されかつ薄膜シートを接触ローラに案内ししかも薄膜引張力を設定するように形成される。用語「薄膜シートの移動方向に」は、薄膜シートのある領域が、最初に浮動ロールに沿って移動し、次に初めて接触ローラに沿って移動する状態を意味するものと理解すべきである。また、巻取位置に対し、接近方向又は離間方向に接触ローラを移動する第1の再調整装置を設けて、接触ローラに対する薄膜巻回体の特定の接触圧力を設定できる。滑動装置を変位装置に設けることが特に有利である。滑動装置は、例えば、空気軸受滑動装置又は静圧軸受滑動装置でよい。空気軸受滑動装置は、滑動体とレールとの間に形成される空気膜により、小さい摩擦力で滑動体をレールに対し相対的に移動できる。これにより、接触ローラの水平移動時の摩擦力を最小限に抑制し、特に精密かつ繊細に接触ローラの位置を決めることができる。別法として、調整主軸を介して接触ローラを移動することもできる。これにより、特に、複数の高重量物を移動できる。
【0010】
薄膜巻取装置の発展的実施の形態では、第1の再調整装置の空気軸受滑動装置は、第1のレールと、第1のレール上に配置される少なくとも1つの第1の滑動体とを備える。第1の滑動体は、第1のレール方向の複数の空気排出開口を備える。第1の滑動体は、第1のレール上で第1の滑動体を摺動可能かつ移動可能にして、複数の空気排出開口から排出される圧縮空気を供給する空気接続部を備える。
【0011】
薄膜巻取装置の他の発展的実施の形態では、第1のレールを少なくとも3側面から包囲する第1の滑動体により、特に高い構造安定性を達成できる。複数側で第1のレールに向く複数の空気排出開口も、基本的に考えられる。また、第1のレールの異なる3側面への複数の空気排出開口の方向付けも考えられる。これにより、第1の滑動体の特に良好な構造安定性を達成できる。
【0012】
薄膜巻取装置の別の発展的実施の形態では、第1の再調整装置の空気軸受滑動装置は、第2のレールと、第2のレール上に配置される少なくとも1つの第2の滑動体とを備える。第2の滑動体は、第2のレール方向の複数の空気排出開口を備える。第2の滑動体は、圧縮空気を供給する空気接続部を備える。圧縮空気は、第2のレール上で第2の滑動体を摺動可能に移動可能して、その後複数の空気排出開口から排出される。第2のレールは、第1のレールに対し平行に配置される。第2のレールの第2の滑動体は、基本的に第1のレールの第1の滑動体と同一の特性を備えることができる。第2の滑動体を備える第2のレールを採用して、接触ローラの重量をより良好に分散させて、より安定して接触ローラを保持できる。
【0013】
薄膜巻取装置の他の発展的実施の形態では、第1の再調整装置の空気軸受滑動装置は、第1のレール上に配置される第3の滑動体を備える。第3の滑動体は、第1のレール方向の複数の空気排出開口を備える。第3の滑動体は、第3の滑動体は第1のレール上を摺動可能に移動可能にしかつその後複数の空気排出開口から排出される圧縮空気を供給する空気接続部を備える。第1のレールは、一貫して配置され又は第1の滑動体及び第3の滑動体用に間隔をあけた2部分レールに分割して配置される。互いに同軸に配置されかつ移動可能な2つの滑動体を採用して、接触ローラの移動安定性を更に向上することが好ましい。
【0014】
薄膜巻取装置の更なる実施の形態では、第1の再調整装置は、第1のラジアル空気軸受と第2のラジアル空気軸受とを備える。接触ローラは、第1の端面の軸頚と第2の端面の軸頚に夫々設けられる第1のころ並軸受と第2のころ並軸受を備え、第1のころ並軸受は、第1のラジアル空気軸又は第1の静圧軸受(油圧)で軸支され、第2のころ並軸受は、第2のラジアル空気軸受又は第2の静圧軸受(油圧)に軸支されて、接触ローラの回転時の摩擦が低減される。接触ローラ上に当接する薄膜シートのみにより接触ローラの回転運動を行うことが好ましい。従って、電動機の採用を省略する実施の形態も提案する。しかしながら、電動機により接触ローラを駆動する別の実施の形態も提案する。接触ローラに直接電動機を配置し又はチェーン等の動力伝達手段を介して接触ローラに電動機を接続して、電動機の駆動軸の回転を接触ローラの回転に利用する。
【0015】
薄膜巻取装置の他の発展的実施の形態では、第1の再調整装置は、空気軸受滑動装置又は静圧軸受滑動装置を介して、第1の巻回体に対し接近方向又は離間方向に接触ローラを移動するリニアモータを備える。空気軸受滑動装置又は静圧軸受滑動装置と組み合わせてリニアモータを用いて、非常に正確に接触ローラを位置決めすることができる。別法として、調整主軸を回転する電動機を第1の再調整装置に設けて、第1の巻回体に対し接近方向又は離間方向に接触ローラを移動できる。
【0016】
薄膜巻取装置の他の発展的実施の形態では、第1の再調整装置のリニアモータ又は電動機を制御し駆動して、薄膜巻回体に対して接触ローラを所定の接触圧力で当接する制御装置が設けられる。このため、接触圧力を測定する相応の圧力検出器を基本的に設けることもできる。
【0017】
薄膜巻取装置の別の発展的実施の形態では、薄膜シートの移動方向に浮動ロールの上流に、第1の偏向(方向変換)ローラが配置される。第1の偏向ローラにより、浮動ロールに当接する薄膜シートの巻回角度を増加できる。同時に、薄膜シートも浮動ロールに安定して巻回される。「巻回角度」は、浮動ロールを覆う薄膜シートの巻付き角度範囲値と理解できる。浮動ロールは、360°に沿って伸張する。浮動ロールへの90°巻付き角度の薄膜シートは、特に浮動ロールの円筒形外被面の4分の1でのみ接触する。180°巻付き角度の薄膜シートは、特に円筒形の浮動ロールの半分の外被面に当接する。
【0018】
薄膜巻取装置の他の発展的実施の形態では、第1の偏向ローラと接触ローラとの間の距離は、浮動ロールと接触ローラとの間の距離よりも小さい。これにより、120°、130°、140°又は150°より大きい薄膜シートの巻回角度で浮動ロールを覆うことができる。
【0019】
薄膜巻取装置の別の発展的実施の形態では、ラジアル空気軸受又は静圧軸受により第1の偏向ローラは、回転可能に軸支される。偏向ローラとラジアル空気軸受又は静圧軸受との間の低摩擦力のため、好ましい実施の形態では、薄膜シート自体によってのみ第1の偏向ローラを回転して、電動機の採用を省略できる。尤も、第1の偏向ローラに直接接続し又はチェーン等の動力伝達手段を介して第1の偏向ローラに接続する電動機で第1の偏向ローラを駆動して、電動機の駆動軸回転を第1の偏向ローラの回転に接続する実施の形態も提案する。
【0020】
薄膜巻取装置の更なる発展的実施の形態では、薄膜シートの移動方向に浮動ロールの下流かつ接触ローラより上流に第2の偏向ローラが配置される。
【0021】
薄膜巻取装置の更なる発展的実施の形態では、複数のラジアル空気軸受又は静圧軸受により、第2の偏向ローラも、回転可能に軸支される。偏向ローラとラジアル空気軸受又は静圧軸受との間の低摩擦力のため、薄膜シート自体のみにより第2の偏向ローラを回転させて、電動機の採用を省略する例の実施の形態が好ましい。尤も、電動機による第2の偏向ローラを駆動する別のある実施の形態も提案する。この電動機は、第2の偏向ローラに直接駆動接続され又は例えばチェーン等の動力伝達手段を介して第2の偏向ローラに接続されるので、電動機の駆動軸の回転は、第2の偏向ローラの回転にも接続される。
【0022】
薄膜巻取装置の別の発展的実施の形態では、第1の再調整装置の空気軸受滑動装置又は静圧軸受滑動装置を配置する接触ローラ台が設けられ、接触ローラ台に対し接触ローラは、移動可能に設けられる。別法として、第1の再調整装置の空気軸受滑動装置又は静圧軸受滑動装置上に接触ローラ台を配置し、接触ローラ台上に接触ローラを配置して、接触ローラと接触ローラ台とを一体に移動してもよい。
【0023】
薄膜巻取装置の更なる発展的実施の形態では、第1の偏向ローラ及び/又は第2の偏向ローラ及び/又は浮動ロールは、接触ローラ台上に配置される。第1の再調整装置を介して接触ローラ台を移動するとき、第1の偏向ローラ及び/若しくは第2の偏向ローラ又は浮動ロールも接触ローラ台と一体に移動して、同期移動が行われる。
【0024】
薄膜巻取装置の更なる発展的実施の形態では、基台と、空気軸受滑動装置若しくは静圧軸受滑動装置又は調整主軸とを備える基台移動装置が設けられる。接触ローラ、浮動ロール、第1の偏向ローラ及び/又は第2の偏向ローラは、基台上に配置される。巻取位置に対し接近方向又は離間方向に、接触ローラ、浮動ロール、第1の偏向ローラ及び/又は第2の偏向ローラを移動可能に、基台移動装置は、形成される。この場合、第1の再調整装置が設けられ、同時に上位の基台移動装置も設けられるため、特に精密に設定することができる。
【0025】
薄膜巻取装置の更なる発展的実施の形態では、接触ローラに対し接近方向又は離間方向に浮動ロールを移動する第2の再調整装置が設けられ、第2の再調整装置により特定の薄膜引張力を設定できる。第2の再調整装置は、空気軸受滑動装置若しくは静圧軸受滑動装置又は調整主軸を備える。空気軸受滑動装置により浮動ロールも移動できる構造が特に有利である。低摩擦係数のため、薄膜引張力を非常に精密に設定できる。
【0026】
薄膜巻取装置の更なる実施の形態では、空気軸受滑動装置若しくは静圧軸受又は調整主軸を介して接触ローラに対し接近方向又は離間方向に浮動ロールを移動するリニアモータ又は電動機が第2の再調整装置に設けられる。リニアモータ又は電動機を介して、浮動ロールの配置位置及び薄膜の引張力を非常に精確に設定できる。
【0027】
薄膜巻取装置の更なる実施の形態では、浮動ロールを介して所定の引張力を薄膜に加えて、第2の再調整装置のリニアモータ又は電動機を駆動する制御装置が設けられる。
【0028】
薄膜巻取装置の更なる実施の形態では、ラジアル空気軸受又は静圧軸受により、浮動ロールは、回転可能に軸支される。浮動ロールとラジアル空気軸受又は静圧軸受との間の小摩擦力のため、電動機の採用を省略して、薄膜シート自体のみにより、浮動ロールを回転する実施の形態を採用することが好ましい。尤も、電動機を介して浮動ロールを駆動する別の実施の形態も提案できる。浮動ロールに電動機を直接接続し又はチェーン等の動力伝達手段を介して浮動ロールに電動機を接続して、電動機の駆動軸の回転を浮動ロールの回転にも接続される。
【0029】
薄膜巻取装置の更なる実施の形態では、第1の巻回体は、薄膜シートを基体周りに巻取る回転可能な基体を備える。また、基体周りに薄膜シートを巻取る回転可能な基体を備える第2の巻回体が設けられる。第1の巻回体は、接触ローラに隣接して配置される巻取位置から取出位置に回転し、取出位置で第1の巻回体から、巻取られた薄膜巻回体を取出し、同時に、第2の巻回体は、取出位置から巻取位置に回転される。更に、取出位置方向に第1の巻回体を回転すると、薄膜シートの幅に沿って薄膜シートを切断する切断装置が設けられ、第2の巻回体の基体は、巻取位置に回転されて、新規な薄膜シートの始端に直接接触する。
【0030】
薄膜シートの領域中に配置されかつ薄膜シート及び/又は薄膜巻回体上の電荷を徐電する少なくとも1つの放電装置を備える薄膜巻取装置を設ける他の実施の形態も提案する。
【0031】
薄膜シートと接触可能な複数の可撓性曲の/自由変形可能な導電性金属条片(金属製細片の一種)を放電装置に設けることが好ましい。薄膜シートの全幅に沿い又は薄膜シートの幅の大部分に沿って金属条片を分布して配置することが好ましい。基本的に放電導体を使用してもよい。薄膜シートから離間して単数又は複数の放電導体を配置することが好ましい。薄膜シートと放電導体との離間距離は、200mm、150mm、100mm、50mm、40mm、30mm、20mm、10mm未満又は5mm未満が望ましい。但し、5mmより大きい距離が好ましい。放電導体には、高電圧交流電界が印加されて、放電導体から静電気が除去される。
【0032】
薄膜巻取装置と、薄膜延伸装置(特に、公知の逐次延伸装置、同時延伸装置又は蓄電池隔離体薄膜用延伸装置(蒸発(Evapore)法又は湿式法)とを備える本発明による複合装置では、薄膜延伸装置の出口領域に薄膜巻取装置を接続できる。薄膜延伸装置は、樹脂溶融物を供給する入口領域を備える。また、薄膜延伸装置は、樹脂溶融物を加熱しかつ/又は延伸して一軸配向又は二軸配向の薄膜シートを形成する種々の異なる複数の領域(例えば、縦延伸段及び/若しくは横延伸段又は加熱炉)を備える。得られる薄膜シートは、その後薄膜巻取装置に供給される。湿式法では、搬送方向と幅方向とに延伸(順次又は同時に)される流延薄膜は、溶剤(例えば、白油等)を含有する。次に、延伸された薄膜シートは、洗浄槽に導入される。ジクロロメタンを含有する洗浄槽内では、溶媒(白油等)が洗浄される。続いて、横延伸装置に流延薄膜を再び導入して、最小限の延伸を行い又は熱処理(アニール処理)が施される。その後、薄膜は、巻取られる。
【0033】
複合装置を使用して、例えば、蓄電池隔離体薄膜、ポリプロピレン蓄電薄膜若しくはポリエチレン・テレフタレート蓄電薄膜等の超薄型薄膜又は例えば、ポリテトラフルオロエチレン膜等の樹脂を製造しかつ巻取れる。15μm未満の厚さに前記薄膜(Film)を巻取ることもできる。蓄電池隔離体薄膜の厚さ範囲は、約8μm~15μmであり、ポリプロピレン薄膜の厚さ範囲は、2μm~6μmである。
【0034】
本発明を例示する種々の実施の形態を添付図面について以下説明する。同一の対象物には同一の参照符号を付する。添付図面は、各々以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】薄膜巻取装置と薄膜延伸装置とを組み合わせた複合装置の略示断面図
図2】浮動ロールと接触ローラとを備える薄膜巻取装置の実施の形態を示す概略図
図3】第1の巻回体と第2の巻回体とを備える薄膜巻取装置の実施の形態の概略図
図4】浮動ロール、接触ローラ及び2つの偏向ローラを備える薄膜巻取装置の別の実施の形態を示す概略図
図5図4の薄膜巻取装置の具体的な実施の形態を示す斜視図
図6】空気軸受滑動装置の実施の形態を示す斜視図
図7】ラジアル空気軸受の実施の形態を示す斜視図
図8】空気軸受滑動装置上に接触ローラ台を配置し、接触ローラ台に接触ローラを軸支する実施の形態を示す正面図
図9】第1の再調整装置の空気軸受滑動装置を介して、接触ローラ、第1の偏向ローラ、第2の偏向ローラ及び浮動ロールを一体に移動する薄膜巻取装置の実施の形態を示す概略図
図10】第1の再調整装置の空気軸受滑動装置を介して接触ローラ、第1の偏向ローラ及び浮動ロールを一体に移動する薄膜巻取装置の実施の形態を示す概略図
図11】接触ローラ、第1の偏向ローラ、第2の偏向ローラ及び浮動ロールを共に基台上に配置して、基台移動装置を介して一体に移動する薄膜巻取装置の実施の形態を示す概略図
図12】接触ローラ、第1の偏向ローラ及び浮動ロールを基台上に配置し、基台移動装置を介して一体に移動する薄膜巻取装置の実施の形態を示す概略図
図13】巻回角度約60°で薄膜シートを接触ローラに巻回して、接触ローラ、第1の偏向ローラ、第2の偏向ローラ及び浮動ロールを共に基台上に配置し、基台移動装置を介して一体に移動する薄膜巻取装置の実施の形態を示す概略図
図14】巻回角度約180°で薄膜シートを接触ローラに巻回して、接触ローラ、第1の偏向ローラ、第2の偏向ローラ及び浮動ロールを共に基台上に配置し、基台移動装置を介して一体に移動する薄膜巻取装置の実施の形態を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明による薄膜巻取装置1と薄膜延伸装置110とを備える複合装置100を示す平面図である。縦延伸装置若しくは横延伸装置と、縦延伸段及び横延伸段を備える逐次延伸装置又は同時延伸装置として、薄膜延伸装置110が形成される。薄膜延伸装置110を使用して、樹脂薄膜シート2(薄膜シート2ともいう)が製造される。その製造のため、薄膜延伸装置110は、異なる複数の領域110a,110b,110c,110d,110eに分割される。複数の全領域110a,110b,110c,110d,110eを実際に設ける必要は当然ない。複数の領域110a~110eは、種々の異なる温度に設定されて、薄膜シートは、特定の複数の薄膜特性に生成される。第1の領域110aは、予熱領域とも呼ばれる。第2の領域110bは、延伸領域と呼ばれ、第3領域110cは、加熱領域と呼ばれる。第4領域110dは、中立領域とも呼ばれ、第5領域110eは、冷却領域と呼ばれる。複数の領域110a~110eの間に複数の中立領域を設けて、複数の領域110a~110eの間は、空間的に基本的に確実に分離されて、複数の領域110a~110e内の気体が互いに与え又は受ける影響(特定の領域110a~110eから別の領域に空気が流入する)は、極めて少ない。2m、3m、4m、5m、6m、7m、8m、9m、10m、11mより大きい又は12mより大きい幅であるが、好ましくは13m、12m、11m、10m、9m、8m、7m、6m、5m、4mより小さく又は3mより小さい幅の薄膜シートが、薄膜延伸装置110により製造される。
【0037】
薄膜延伸装置110は、延伸すべき薄膜を薄膜延伸装置110に供給する入口領域111を備える。薄膜延伸装置110の端部、即ち出口領域112から、延伸した薄膜シート2が排出される。薄膜延伸装置110の出口領域112は、本発明の薄膜巻取装置1の薄膜進入領域3に接続される。
【0038】
図2A図2B図3A図3E図4について、本発明の薄膜巻取装置1の構造を詳細に以下説明する。
【0039】
冒記のように、巻取時に薄膜に皺が発生せずしかも複数の薄膜層間に多量の空気が封入又は混入されず、問題なく確実に薄膜シート2を後工程で巻き出せる種々の複数種の薄膜を、種々の方法で巻取るべきである。また、本発明の巻取法では、薄膜シート2の亀裂を確実に防止する。
【0040】
頭記のように、蓄電池隔離体薄膜の巻取りは特に要求が厳しい。従って、小さい接触圧力と薄膜引張力とでのみ、蓄電池隔離体薄膜を巻取るべきである。
【0041】
図2図3図4及び図5は、薄膜巻取装置1の実施の形態を示す。薄膜シート2は、薄膜進入領域3を介して薄膜延伸装置110から薄膜巻取装置1に供給される。その後、薄膜シート2は、巻取位置の第1の巻回体4方向に搬送される。薄膜シート2は、第1の巻回体4の薄膜巻回体5(図3)に巻取られる。
【0042】
薄膜巻取装置1は、接触ローラ6と浮動ロール8とを有する。第1の巻回体4に隣接して接触ローラ6を配置して、第1の巻回体4に薄膜シート2が案内される。薄膜シート2の移動方向に接触ローラ6の上流に配置される浮動ロール8から薄膜シート2を接触ローラ6に導くと共に、薄膜シート2の薄膜引張力が設定される。
【0043】
図示の第1の偏向ローラ9は、薄膜シート2の移動方向に浮動ロール8の上流に配置される。薄膜進入領域3を通過する薄膜シート2は、第1の偏向ローラ9に供給される。第1の偏向ローラ9から浮動ロール8を越えて接触ローラ6に搬送される薄膜シート2は、第1の巻回体4で薄膜巻回体5に巻取られる。
【0044】
巻取位置4に対し接近方向(X軸)又は離間方向に接触ローラ6を移動して、接触ローラ6と薄膜巻回体5との間の所定の接触圧力を設定可能に、第1の再調整装置10が設けられる。接触ローラ6と薄膜巻回体5との間の接触圧力が第1の閾値より大きいとき、薄膜巻回体5から離間する方向に接触ローラ6を移動して、接触圧力を低減する。第2の閾値より接触圧力が小さいとき、薄膜巻回体5に接近する方向に接触ローラ6を移動して、接触圧力を増加する。第1の閾値と第2の閾値は、同一でも異なる値でもよい。空気軸受滑動装置11で構成される滑動装置を第1の再調整装置10に設けることが好ましい。静圧軸受滑動装置により滑動装置を構成してもよい。空気軸受滑動装置11を利用すると、特に静止位置から初動位置に接触ローラ6を移動するときの衝撃力が空気軸受により最小となり、最小エネルギ消費量で接触ローラ6を移動できる。
【0045】
第1の巻回体4に対し接近方向又は離間方向に空気軸受滑動装置11を介して接触ローラ6を移動するリニアモータ12も第1の再調整装置10に設けられる。水平方向(床に平行)のみで、接触ローラ6を移動することが好ましい。
【0046】
薄膜巻回体5に対し所定の接触圧力で接触ローラ6を当接させて、第1の再調整装置10のリニアモータ12を駆動する制御装置(不図示)も設けられる。
【0047】
第1の再調整装置10は、第1のラジアル空気軸受13と第2のラジアル空気軸受13とを備える。第1の端面14と第2の端面14の各軸頚に設けられる第1のころ並軸受15と第2のころ並軸受15とに接触ローラ6が軸支され、第1のころ並軸受15と第2のころ並軸受15は、第1のラジアル空気軸受13と第2のラジアル空気軸受13とに支持されるので、接触ローラ6を駆動する別の電動機を省略できる。薄膜シート2の薄膜引張力によってのみで接触ローラ6を回転することが、好ましい。しかし、基本的には電動機を採用してもよい。なお、第1のラジアル空気軸受13と第2のラジアル空気軸受13の代わりに、静圧軸受を採用してもよい。
【0048】
また、接触ローラ6に対し接近方向又は離間方向に浮動ロール8を移動して、特定の薄膜引張力を設定する第2の再調整装置16が設けられる。接触ローラ6から離間して浮動ロール8を移動すると、薄膜引張力を増大して、薄膜を緊張させることができる。逆に、接触ローラ6方向に浮動ロール8を接近させて移動すると、薄膜引張力を低下させることができる。
【0049】
第2の再調整装置16も同様に、浮動ロール8を静止位置から初動位置への移動時の衝撃力を特に空気軸受により最小化する空気軸受滑動装置17を備える。これにより、最小エネルギ消費量で浮動ロール8を移動できる。また、静圧軸受滑動装置を第2の再調整装置16に設けることもできる。
【0050】
第2の再調整装置16は、空気軸受滑動装置17を介して、接触ローラ6に対し接近方向又は離間方向に浮動ロール8を移動するリニアモータ18を有する。水平方向(床と平行)のみで浮動ロール8を移動することが好ましい。
【0051】
浮動ロール8を介して第2の再調整装置16のリニアモータ18を駆動して、薄膜を所定の引張力に調整する制御装置(不図示)も設けられる。引張力測定装置により薄膜引張力を測定できる。
【0052】
第2の再調整装置16のリニアモータ12を駆動する制御装置は、第1の再調整装置10のリニアモータ12の駆動にも用いられる。但し、(例えば、異なるマイクロプロセッサによる)異なる2つの制御装置を使用することもできる。
【0053】
ラジアル空気軸受19により回転可能に浮動ロール8も軸支することが好ましい。静圧軸受により回転可能に浮動ロール8を軸支してもよい。また、浮動ロール8を能動的に駆動しないことが好ましい。薄膜シート2により受動的にのみ浮動ロール8を駆動することが好ましい。尤も、電動機を採用して、基本的に浮動ロール8を駆動できよう。
【0054】
浮動ロール8及び/又は接触ローラ6に対して第1の偏向ローラ9を移動せず固定することが好ましい。第1の偏向ローラ9も同様に、ラジアル空気軸受20を用いて回転可能に軸支することが好ましい。静圧軸受を用いて回転可能に、第1の偏向ローラ9も、軸支できる。電動機なしで受動的にのみ第1の偏向ローラ9を駆動することが好ましい。薄膜シート2の薄膜引張力でのみ、第1の偏向ローラ9が駆動される。しかし、基本的には、第1の偏向ローラ9の駆動に電動機を採用してもよい。
【0055】
図3は、第1の巻回体4に設けられる基体4aを示す。第1の巻回体4の基体4aは、回転可能である。例えば、電動機により基体4aを回転できる。最も単純な構造では、中空円筒状厚紙体で基体4aを形成できる。しかし、金属、炭素繊維補強樹脂(CFK)、ガラス繊維補強樹脂(GFK)又は炭素繊維補強樹脂とガラス繊維補強樹脂とを有する複合装置を基体4aに設けることが好ましい。図示の第2の巻回体7も同様に、回転可能な基体7aを備える。従って、第2の巻回体7の基体7aの周囲に薄膜シート2を巻取ることもできる。図示の図面に示す第1の巻回体4の巻取位置は、移動する。巻取位置の第1の巻回体4は、接触ローラ6に隣接して配置される。逆に、第2の巻回体7は、取出位置に移動し又は回転される。取出位置では、各巻取位置(第2の巻回体7)から薄膜巻回体5を取出すことができる。図3は、矢印経路で巻取位置から取出位置に移動し又は回転する第1の巻回体4を示す。また、(薄膜巻回体5の除去後に)取出位置から巻取位置に第2の巻回体7を移動し又は回転できる。円形路又は近似円形路で巻取位置から取出位置への往路を移動しかつ取出位置から巻取位置への復路を移動することが好ましい。前記移動路は、互いに接続され又は複数の直線路で互いに接続できる種々の好適な複数の円弧路区分を含んでもよい。また、図示の複合装置に設けられる切断装置(不図示)は、第1の巻回体4及び第2の巻回体7の一方を取出位置方向に回転するとき、全幅に沿って薄膜シート2を切断すると同時に、第1の巻回体4及び第2の巻回体7の他方の巻回体7,4は、巻取位置に回転するため、各基体4a,7aは、直前に切断される薄膜シート2の新始端に直ちに接触し、次に、既に回転される基体4a,7aに新始端を巻取りながら、各巻回体7,4は、巻取位置に回転される。薄膜シート2の移動速度のため、傾斜方向(X方向及びY方向)に切断装置を移動して、薄膜シート2を直線状に切断することが好ましいが、切断装置を直進(Y方向のみ)させて、薄膜シート2を傾斜して切断してもよい。
【0056】
図4に示す第2の偏向ローラ21は、薄膜シート2の移動方向に浮動ロール8の下流でかつ接触ローラ6の上流に配置される。ラジアル空気軸受22を用いて第2の偏向ローラ21を回転可能に軸支することが好ましい。静圧軸受で回転可能に第2の偏向ローラ21を軸支してもよい。
【0057】
浮動ロール8から第2の偏向ローラ21まで、薄膜シート2の水平移動が好ましい。
【0058】
静止する接触ローラ6及び/又は浮動ロール8に対して移動不能に第2の偏向ローラ21を静止して配置することが好ましい。
【0059】
薄膜シート2の薄膜引張力のみにより受動的に第2の偏向ローラ21を回転し駆動して、その電動機を省略することが好ましいが、基本的に第2の偏向ローラ21を駆動する電動機を採用してもよい。
【0060】
各ローラの端面に形成されかつ各端面でラジアル空気軸受19,20,22に係合する相応するころ並軸受を、浮動ロール8、第1の偏向ローラ9及び第2の偏向ローラ21に設けることが好ましい。
【0061】
図5は、本発明の実施の形態による薄膜巻取装置1の斜視図を示す。第1の偏向ローラ9、浮動ロール8、第2の偏向ローラ21、接触ローラ6及び第1の巻回体4の位置関係を認識できる。
【0062】
座標系を示す図面もある。薄膜シート2は、主にX軸方向に移動する。薄膜シート2の移動ベクトルは、X方向成分に加えて、少なくとも部分的にZ方向成分も当然に含む。Y方向は、ローラの長手伸張方向である。
【0063】
なお、各ラジアル空気軸受13,19,20,22の図示を省略する。
【0064】
浮動ロール8と接触ローラ6との間の距離より第1の偏向ローラ9と接触ローラ6との間の距離を狭くして、薄膜シート2の浮動ロール8に沿う図4に示す大きな巻回角度を得ることが好ましい。図示の例では、薄膜シート2の浮動ロール8の巻回角度は、約180°である。
【0065】
浮動ロール8よりも接触ローラ6により近い位置に第2の偏向ローラ21を配置すると共に、第1の偏向ローラ9よりも接触ローラ6により近い位置に第2の偏向ローラ21を配置することが好ましい。
【0066】
第2の偏向ローラ21の直径に略相当する第1の偏向ローラ9の直径を第2の偏向ローラ21の直径よりも小さくしてもよい。用語「略(ほぼ)」は、5%未満の変量を含むことが好ましい。例えば、第1の偏向ローラ9の直径より第2の偏向ローラ21の直径を小さくできる。第1の偏向ローラ9及び/又は第2の偏向ローラ21及び/又は接触ローラ6の直径よりも浮動ロール8の直径が小さいことが好ましい。
【0067】
図6図7及び図8に示す第1の再調整装置10の空気軸受滑動装置11は、第1のレール23と、第1のレール23に沿って移動する少なくとも1つの第1の滑動体24とを備える。少なくとも1つの第1の滑動体24は、第1のレール23上に配置される。第1の滑動体24は、第1のレール23方向に向く複数の空気排出開口を備える。第1の滑動体24は、圧縮空気を供給する空気接続部25を備える。複数の空気排出開口から圧縮空気が排出されて、第1の滑動体24は、第1のレール23上を摺動する。
【0068】
図8に示す第1の滑動体24は、動作中に第1のレール23から上昇することが好ましい。第1のレール23と第1の滑動体24との間の間隙を明確に拡大して図8に示す。実際の間隙間隔は、数百分の1mmに過ぎない。
【0069】
第1のレール23は、低摩擦係数の材料で形成され又はこれを含む。例えば、第1のレール23は、ポリテトラフルオロエチレンで形成され又はこれを含む。
【0070】
第1のレール23の少なくとも3側面を第1の滑動体24で包囲する構造が好ましい。第1の滑動体24の両側縁は、互いに対向しかつ第1のレール23を抱き込み、第1のレール23からの第1の滑動体24の上方完全分離を阻止する構造が好ましい。これにより、Z方向、即ち垂直方向の移動を制限しかつY方向、即ち第1のレール23の横断方向の移動も制限される。このため、第1のレール23からの第1の滑動体24の動作中の「脱線」は不可能である。
【0071】
第1の再調整装置10の空気軸受滑動装置11は、第2のレール26と、第2のレール26に沿って移動する少なくとも1つの第2の滑動体27とを備えることが好ましい。第2の滑動体27は、第2のレール26方向を向く複数の空気排出開口を備える。第2の滑動体27は、圧縮空気を供給する空気接続部28を備える。複数の空気排出開口から圧縮空気が排出されて、第2の滑動体27は、第2のレール26上を摺動する。
【0072】
第2のレール26は、第1のレール23と平行に配置される。
【0073】
同様に、第1のレール23上に配置される第3の滑動体を第1の再調整装置10の空気軸受滑動装置11に設ける構造も基本的に提案される。その構造では、第1のレール23方向を向く複数の空気排出開口が第3の滑動体に設けられる。同様に、第3の滑動体は、圧縮空気を供給する空気接続部を備える。複数の空気排出開口から圧縮空気を排出して、第3の滑動体は、第1のレール23上を摺動する。第1のレール23を連続的に配置し又は間隔を空けて分割する2レール部分で配置することもできる。この場合、第1のレール23上に第1の滑動体24を配置し、第2のレール上に第3の滑動体を配置することが好ましい。
【0074】
第1の再調整装置10の空気軸受滑動装置11の第2のレール26にも、第1のレール23と同様の構造を適用できる。第2のレール26に第4の滑動体を配置できる。連続して第2のレール26を配置し又は間隔をあけて分割する2レール部分で配置することが好ましい。
【0075】
浮動ロール8の第2の再調整装置16の空気軸受滑動装置17にも、全く同一の構造を適用できる。空気軸受滑動装置17も同様に、第1のレールと、第1のレール上に配置される少なくとも第1の滑動体とを設けられる。第1の滑動体は、第1のレール方向を向く複数の空気排出開口を備える。第1の滑動体は、圧縮空気を供給する空気接続部を備え、圧縮空気は、複数の空気排出開口から排出されて、第1の滑動体は、第1のレール上を摺動する。第2の滑動を備える第2のレールも基本的に第2の再調整装置に設けられる。各レール上には、2個の滑動体を配置できる。
【0076】
図7は、複数のローラを夫々軸支するラジアル空気軸受13,19,20,22の別の実施の形態を示す。各ラジアル空気軸受13,19,20,22は、圧縮空気を供給する空気接続部29を備える。各ラジアル空気軸受13,19,20,22の内側に設けられる複数の空気排出開口から圧縮空気を流出して、各軸頚15と各ラジアル空気軸受13,19,20,22との間の摩擦力が最小化される。
【0077】
各ラジアル空気軸受13,19,20,22は、低摩擦係数材料で構成され又はこれを備える。例えば、第1のレール23は、ポリテトラフルオロエチレンで構成され又はこれを含む。
【0078】
図9図10は、接触ローラ台30を備える薄膜巻取装置1の更に別の実施の形態を示す。第1の再調整装置10の空気軸受滑動装置11又は静圧軸受滑動装置上に接触ローラ台30が配置される。接触ローラ台30上に接触ローラ6を配置(例えば、対応する支持体31を介して)するため、接触ローラ6と接触ローラ台30とを一体に、即ち同時に移動できる。
【0079】
また、図示のように、第1の偏向ローラ9と、第2の偏向ローラ21と、浮動ロール8も接触ローラ台30上に配置される。第1の再調整装置10の空気軸受滑動装置11を操作すると、第1の偏向ローラ9、第2の偏向ローラ21及び浮動ロール8も同時に移動する。第2の再調整装置16を備える浮動ロール8のみは、第1の再調整装置10とは独立して移動する空気軸受滑動装置17を備える。
【0080】
第1の空気軸受滑動装置11の移動ベクトルは、X方向、即ち薄膜延伸装置110を通る薄膜シート2の移動方向にのみ指向することが好ましい。Z方向、即ち床に対する接近方向又は離間方向への成分を任意選択的に、第1の空気軸受滑動装置11の移動ベクトルに含んでもよいが、Y方向成分を含まない移動ベクトルが好ましい。
【0081】
図10は、第2の案内ローラ21のない薄膜巻取装置1の実施の形態を示す。薄膜シート2は、浮動ロール8から接触ローラ6に実質的に水平に移動する。浮動ロール8及び接触ローラ6よりも接触ローラ台30に接近する位置に第1の偏向ローラ9を配置することが好ましい。
【0082】
図11は、接触ローラ6、第1の偏向ローラ9、第2の偏向ローラ21及び浮動ロール8を基台32上に共に配置し、基台移動装置33により基台32と一体に移動可能な薄膜巻取装置1の実施の形態を示す。基台移動装置33は、調整主軸34を備える。調整主軸34により、巻取位置4に対し接近方向又は離間方向に基台32を移動できる。調整主軸34の代わりに、例えば、リニアモータで移動する空気軸受滑動装置上に基台32を配置してもよい。基台32の移動から独立して接触ローラ6と浮動ロール8とを移動する第1の再調整装置10及び第2の再調整装置16も同時に設けられる。
【0083】
図12は、図11の例に近似する薄膜巻取装置1の実施の形態を示す。図11とは異なり、第2の偏向ローラ21は、図12の薄膜巻取装置1に設けられない。浮動ロール8と接触ローラ6との間で薄膜シート2が、水平、即ち床に平行に移動することが好ましい。
【0084】
図13は、図11の例に近似する薄膜巻取装置1の実施の形態を示す。図11とは異なり、図13の薄膜シート2の移動ベクトルは、第2の偏向ローラ21と接触ローラ6との間で、床に対して直角方向、即ち垂直方向のみならず、水平方向成分(X方向移動ベクトル)も、垂直方向成分(Z方向移動ベクトル)も有するので、薄膜シート2の接触ローラ6の巻回角度を設定できる。図13の例では、巻回角度は、約60°である。巻回角度は、0.5°、5°、10°、15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°、50°、55°、60°、65°、70°、75°、80°より大きく又は85°より大きいことが好ましい。更に、巻回角度は、好ましくは95°、90°、85°、80°、75°、70°、65°、60°、55°、50°、45°、40°、35°、30°、25°、20°、15°、10°未満又は5°未満である。
【0085】
基台移動装置33を駆動して巻取位置4から離れて基台32を移動し、同時に第1の再調整装置10を駆動して、第2の偏向ローラ21から接触ローラ6を離間して移動すると、接触ローラ6の巻回角度が増加する。逆に、基台移動装置33を駆動して、巻取位置4方向に基台32を移動し、同時に第1の再調整装置10を駆動して、第2の偏向ローラ21方向に接触ローラ6を移動すると、接触ローラ6の巻回角度が減少する。
【0086】
図14は、図13の例に近似する薄膜巻取装置1の実施の形態を示す。図13とは異なり、図14の接触ローラ6は、逆(反時計)方向に回転する。第2の偏向ローラ21と接触ローラ6との間で床に対して垂直方向、即ち直角方向にのみ薄膜シート2を移動することが好ましい。第2の偏向ローラ21は、接触ローラ6よりも床から離間する位置に配置される。この場合、接触ローラ6の巻回角度は、約180°である。第2の偏向ローラ21の回転中心は、接触ローラ6の回転中心よりも巻取位置4から遠い。薄膜シート2は、3時方向で第2の偏向ローラ21から分離し、9時方向で接触ローラ6に接触する状態が好ましい。接触ローラ6は、薄膜シート2を角度180°搬送した後、薄膜シート2は、接触ローラ6から3時方向で分離し、巻取位置4に供給される。巻取位置4は、接触ローラ6の約3時方向に配置される。接触ローラ6よりも床に近い位置に第2の偏向ローラ21を配置してもよい。この場合、接触ローラ6は、時計回りに回転する。
【0087】
複数のローラは、金属若しくは金属合金を備え又は金属若しくは金属合金を含むことが好ましい。クロムの採用が好まし。これに代えて、炭素繊維複合材料を備えるローラを採用し又は金属製ローラと炭素繊維複合材料製ローラの組合せローラを採用してもよい。
【0088】
振り子のない浮動ロール8が好ましい。
【0089】
接触ローラ6での薄膜シート2の速度は、約10m~100m/分である。
【0090】
本発明では、接触ローラ6に使用する第1の再調整装置10の代わりに、浮動ロール8に第2の再調整装置16を使用してもよい。接触ローラ6に使用する第1の再調整装置10の代わりに、接触ローラ6、浮動ロール8、第1の偏向ローラ9及び/又は第2の偏向ローラ21に、ラジアル空気軸受13,19,20,22の使用も基本的に考えられる。
【0091】
本発明の技術的範囲は、前記実施の形態に限定されない。本明細書に詳記した全事項及び/又は図面に明示した全特徴を任意に互いに組み合わせられよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】