(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021036
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】媒体の非線形剪断波弾性を推定するための超音波方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/08 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
A61B8/08
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022119870
(22)【出願日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】21315133
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508291928
【氏名又は名称】スーパー ソニック イマジン
【氏名又は名称原語表記】SUPER SONIC IMAGINE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】エテ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ボゥ
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD19
4C601DD23
4C601EE11
4C601JC16
(57)【要約】
【課題】媒体の非線形剪断波弾性を推定するための超音波方法を提供する。
【解決手段】本方法は、A1.媒体に第1のレベルの変形が適用されるときに、媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第1の集合が収集される第1の収集ステップと、A2.媒体に第1のレベルとは異なる第2のレベルの変形が適用されるときに、媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第2の集合が収集される第2の収集ステップと、A3.第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差が推定される変形推定ステップと、B1.第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイント間の勾配が、第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算される計算ステップと、B2.媒体の非線形剪断波弾性が勾配の関数として推定される弾性推定ステップとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の非線形剪断波弾性を推定する超音波方法であって、上記方法は、
A1.上記媒体に第1のレベルの変形が適用されるときに、上記媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第1の集合が収集される第1の収集ステップと、
A2.上記媒体に上記第1のレベルとは異なる第2のレベルの変形が適用されるときに、上記媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第2の集合が収集される第2の収集ステップと、
A3.上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差が推定される変形推定ステップと、
B1.上記第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイント間の勾配が、上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算される計算ステップと、
B2.上記媒体の非線形剪断波弾性が上記勾配の関数として推定される弾性推定ステップとを含む、
方法。
【請求項2】
上記勾配は、上記第1のレベルの変形及び少なくとも1つの上記第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として、上記データポイント間の剪断波弾性の変動によって決定され、及び/又は、
上記勾配R
ijは次式によって決定され、
【数1】
Eは、上記波弾性データポイントの関数として決定される上記媒体のヤング率係数であり、εは、変形のレベルを表す歪み係数であり、インデックスi及びjは2つの異なるレベルの変形を表し、及び/又は、
上記勾配
【数2】
は次式によって決定され、
【数3】
インデックスi
1,i
2,…,i
kは、k個の異なるレベルの変形を表す、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記変形推定ステップは、下記のサブステップ、すなわち、
複数の異なるレベルの変形において、上記媒体の一連の歪みデータを収集することと、
上記歪みデータの関数として、上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差を決定することとを含む、
請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
一連の歪みデータを収集するサブステップは、
上記媒体の一連の超音波データを生成することと、
予め定義された変形推定アルゴリズムを用いて上記超音波データを比較することとを含む、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
上記一連の歪みデータは三次元歪みデータを含む、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
1つの剪断波弾性データポイントは、上記媒体の1つの関心対象領域の複数の異なる領域をそれぞれ参照する複数の剪断波値を含み、
各領域について、上記関心対象領域の非線形剪断波弾性マップを構成するために非線形剪断波弾性パラメータが推定される、
請求項1~5のうちの1つに記載の方法。
【請求項7】
上記第1及び第2の集合のうちの少なくとも一方は、複数の剪断波弾性データポイントを含み、
上記計算ステップにおいて、上記第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイント間の複数の勾配が、上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算され、
上記弾性推定において、上記媒体の非線形剪断波弾性は、上記複数の勾配の関数として推定される、
請求項1~6のうちの1つに記載の方法。
【請求項8】
上記弾性推定ステップは、下記のサブステップ、すなわち、
上記推定された勾配
【数4】
及びそれらの統計的分散に基づいて線形最小分散推定量を生成することで、その分散に反比例する各勾配のスコア
【数5】
を推定することと、
各勾配に各スコアで重み付けすることと、
上記重み付けられた勾配及び/又は上記勾配の加重平均の関数として、最終的なNL-SWEパラメータを推定することとを含む、
請求項1~7のうちの1つに記載の方法。
【請求項9】
上記線形最小分散推定量は次式によって決定され、
【数6】
Varは上記分散を示し、
w
ijは、導出される最適な重み付けスコアであり、
A
ijは、上記勾配R
ijから導出される非線形剪断波弾性パラメータであり、
インデックスi及びjは2つの異なるレベルの変形を表す、
請求項1~8のうちの1つに記載の方法。
【請求項10】
上記最小分散推定量の精度を向上させるためにギアリー=ヒンクリー変換(Geary-Hinkley Transformation)が使用される、
請求項1~9のうちの1つに記載の方法。
【請求項11】
上記最適なスコアw
ijは次式によって推定され、
【数7】
【数8】
は、上記各非線形剪断波弾性パラメータA
ijの分散から導出されたスコアであり、
【数9】
は、上記非線形剪断波弾性パラメータA
ijの分散推定値の逆数であり、
【数10】
は、上記非線形剪断波弾性パラメータA
mnの分散推定値の逆数であり、
インデックスm及びnは、1≦m≦N,m<n≦Nによって、剪断波弾性データポイントの少なくとも2組のペア毎の組み合わせにわたって変動し、Nはデータポイントの個数であり、及び/又は、
最終的なNL-SWEパラメータ
【数11】
は次式によって評価される、
【数12】
請求項1~10のうちの1つに記載の方法。
【請求項12】
上記方法は、信頼度推定ステップをさらに含み、上記信頼度推定ステップは、
少なくとも1つのスコアと、上記非線形剪断波弾性パラメータ(A
ij)の分散推定値
【数13】
との関数として、上記最小分散推定量
【数14】
の信頼度に関する統計モデルを決定することと、
上記非線形剪断波弾性マップの領域に係る信頼性情報を含む信頼度マップを生成することとを含む、
請求項1~11のうちの1つに記載の方法。
【請求項13】
あるレベルの変形から他のレベルの変形に遷移している間に、歪みデータのみが収集され、及び/又は、いかなる剪断波弾性データポイントも収集されない及び/又は上記計算ステップにおいて考慮されない、
請求項1~12のうちの1つに記載の方法。
【請求項14】
上記剪断波弾性データポイントを収集するために、及び/又は、上記歪みデータを収集するために、及び/又は、上記媒体に変形を適用するために、同じ超音波プローブが使用され、及び/又は、
上記剪断波弾性データポイントを収集するため及び/又は上記歪みデータを収集するために使用される超音波プローブは、上記媒体の二次元又は三次元画像データを取り込むように構成される、
請求項1~13のうちの1つに記載の方法。
【請求項15】
上記方法は、上記媒体に変形を適用するためにユーザがユーザインターフェースによってガイドされる、及び/又は、適用された変形の関数としてユーザが上記ユーザインターフェースからフィードバックを受ける、ガイダンス及び/又はフィードバックステップをさらに含む、
請求項1~14のうちの1つに記載の方法。
【請求項16】
データ処理システムによって実行されたとき、請求項1~15のうちの1つに記載の方法を上記データ処理システムに実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項17】
媒体の非線形剪断波弾性を推定する超音波システムであって、上記システムは、
上記媒体に第1のレベルの変形が適用されるときに、上記媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第1の集合を収集し、
上記媒体に上記第1のレベルとは異なる第2のレベルの変形が適用されるときに、上記媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第2の集合を収集し、
上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差を推定し、
上記第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイントのデータポイント間の勾配を、上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算し、
上記媒体の非線形剪断波弾性を上記勾配の関数として推定するように構成された、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は超音波技術に関し、より詳しくは、粘弾性媒体の画像データを提供するためのイメージング方法及びシステムに関する。特に、本方法は、媒体の非線形剪断波弾性(non-linear shear wave elasticity:NL-SWE)を推定することを意図し、より具体的には、媒体における(例えば、乳房又は肝臓における)軟部癌領域(すなわち、非癌媒体に比較して癌媒体)を検出することを意図している。
【背景技術】
【0002】
画像を生成するために使用される超音波データは、複数の異なる処理によって取得可能である。例えば、取得される画像は、観察される組織の変形によって取得される静的変形(すなわち歪み)画像であってもよく、又は、剪断波エラストグラフィー(shear wave elastography:SWE)画像であってもよい。
【0003】
硬化した癌を剪断波エラストグラフィー(SWE)超音波イメージングによって検出することが知られている。しかしながら、この技術は、軟部癌を検出するにはあまり適していない可能性があるが、その理由は主に、軟部癌が、従来のエラストグラフィー画像における非癌媒体に比較して、類似した弾性特性を有しうるからである。
【0004】
例えば非特許文献1から、媒体の非線形特性を推定することがさらに知られている。この研究は、準非圧縮性の軟質固形物において音響弾性理論を適用することで、静的エラストグラフィー及び剪断波エラストグラフィーを組み合わせて非線形剪断係数を導出する方法を提案する。プローブと、それに取り付けられたコンプレッサ板とを軸方向に変位させるために、機械的なアクチュエータが使用される。それによって、0.1mmのステップでプローブ及びコンプレッサ板を軸方向に変位させることで、ファントムの上部において準静的応力が適用される(30秒未満にわたって持続する各ステップにおいて約0.33%)。各圧迫ステップにおいて、完全な剪断速度マップと、従って、媒体の2D剪断係数マップとが検索される。
【0005】
非特許文献2から、さらなる研究が知られている。この研究において、ファントムは、リニアモーターを用いて一軸方向に圧迫される。モータは、プログラミングステップを有し、従って、制御された一軸応力をファントムに提供する。所与のステップ圧迫の直後に、剪断波速度マップが取得される。これらのデータから、剪断係数マップ又はヤング率マップもまた検索される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2021/116326A2号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H. Latorre-Ossa et.al: Quantitative imaging of nonlinear shear modulus by combining static elastography and shear wave elastography, IEEE Transactions on Ultrasonic Ferroelectronics and Frequency Control. 2012 Apr; 59(4):833-9.
【非特許文献2】M. Bernal et.al.: In Vivo Quantification of the Nonlinear Shear Modulus in Breast Lesions: Feasibility Study. IEEE Trans Ultrasonic Ferroelectric Frequency Control. 2016 Jan; 63(1):101-9. doi: 10.1109/TUFFC.2015.2503601. Epub 2015 Nov 24.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、機械的に制御された変形装置を使用する概念は、健康診断の分野における実際のアプリケーションには合わない。この実施において、ユーザ(例えば、医者、技術者、超音波検査技師)は、ハンドヘルドの超音波プローブを手動で制御し、それによって、患者の個々の状況及び身体(例えば、検査が患者にとって痛いか又は少なくとも不快であるか否か)を考慮に入れる必要がある。結果として、ユーザが正規化されたジェスチャー、例えば正規化された段階的な変形を達成することは不可能であるか、又は、少なくとも非常に困難であろう。代わりに、用手圧迫は、例えば、媒体の必要とされる変形に関して、又は、圧迫ステップ内における変形の任意の潜在的な変動に関して、いくつかの不正確性をもたらす。そのような不正確性は、ノイズを含むデータをもたらし、従って、1つ又は複数の非線形剪断波弾性(NL-SWE)値の不正確な推定をもたらす可能性がある。例えば、応力を適用する方法は、従業者ごとに異なる可能性がある。そのようなユーザ依存性は、取り込みの反復可能性を改善するために、前述したものとは異なる方法を必要とする。
【0009】
可能な対策として、圧迫ステップの回数が限定されてもよい。しかしながら、この場合もまた、すべてのステップで収集されるデータの総量もそれぞれ低減される。従って、ユーザがより少ない圧迫ステップをより正確に適用したとしても、データにおける任意の残留ノイズは、最終結果に対してさらに強い影響を有するであろう。
【0010】
剪断波を用いて媒体の非線形弾性を定量化する別の超音波方法が、特許文献1から知られる。本方法は下記のステップ、すなわち、A1.剪断波を用いて、媒体の弾性に関する時間的に一連のデータを収集することと、A2.剪断波を収集する間に、予め決められた変形のシーケンスに従って逐次的に変化する変形を媒体に適用することと、A3.実際の変形の変動を観察することと、B.時間的に一連のデータと、変形の変動とに依存して、媒体の非線形弾性を定量化することとを含む。本方法は、媒体の連続的かつ漸進的に適用される変形を可能にする。
【0011】
しかしながら、本方法によって取得される収集データの量は、温度及び時間長の制約に起因して、なお制限される可能性がある。データを収集するため及び変形を適用するために使用される超音波プローブは、すなわち、(ヒト組織)媒体を加熱しうる。また、検査されるヒトは、所与の、おそらくは不自然な位置で、静止してじっとしていなければならない。これらの理由により、データ収集は、できるだけ短時間で行うべきである。さらに、データ品質は、例えば、ユーザの変動とノイズを含む測定とに起因して、制限される可能性がある。
【0012】
要約すると、既知の方法は、少量のデータ及び大きなノイズに対して限られた頑健性を示し、実際の使用において限られた再現性を示し、これにより、特に、結果を分析するための複雑性を増大させる。従って、分析は、より多くの時間及び努力を必要とする可能性があり、潜在的には、十分に意味のある情報を収集するために患者のいくつかの検査を必要とする可能性がある。
【0013】
現在、前述した課題を克服し、特に、より具体的には限られた量の収集データのみが存在する場合に、媒体の非線形剪断波弾性を正確に推定する超音波方法及びシステムを提供することがなお望まれている。言いかえると、所望の方法は、少量のデータ及び大きなノイズに対してより頑健であり、従って、より良好な再現性を有するべきである。
【0014】
従って、本開示の目的は、実際のアプリケーションにおいて媒体の分析を容易にしうる、媒体における関心対象領域の相補的かつより意味のある情報を取得することにある。従って、取得された検査情報を解析するための時間を短縮し、できるだけ患者の検査時間を短縮することが望ましい。医療用アプリケーションの非限定的な例は、特に非侵襲性の方法で(関心対象領域についての情報を取得するために、例えば、生検のようないかなる介入も回避して)、硬化していない癌を検出することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本開示の実施形態によれば、媒体の非線形剪断波弾性を推定する方法は、下記のステップ、すなわち、
・A1.媒体に第1のレベルの変形が適用されるときに、媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第1の集合が収集される第1の収集ステップと、
・A2.媒体に第1のレベルとは異なる第2のレベルの変形が適用されるときに、媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第2の集合が収集される第2の収集ステップと、
・A3.第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差が推定される変形推定ステップと、
・B1.第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイントのデータポイント間の勾配が、第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算される計算ステップと、
・B2.媒体の非線形剪断波弾性が勾配の関数として推定される弾性推定ステップと
を含む。
【0016】
そのような方法を提供することによって、少量の収集データ及びデータ中の大きなノイズに対してより頑健である、非線形剪断波弾性を推定するための方法を得ることができる。従って、本方法は、変形レベルの変更が手動で行なわれても、より信頼できる推定及びより良好な再現性を可能にする。
【0017】
従って、提案する方法は、ユーザに依存せずに予測可能であり、詳細なトレーニングを必要とせず、それによって、取り込みの反復可能性を改善する。言いかえると、応力(すなわち媒体の変形)を適用する方法が従業者ごとに異なる可能性がある状況は、取り込まれる検査情報の品質に影響しないか、少なくとも影響を低減する。
【0018】
さらなる利点として、患者を検査するための必要とされる時間及び関連付けられたコストを低減することができる。このことは、超音波に起因してプローブが熱くなることを回避し、また、超音波検査が患者にとって検査中の不快な姿勢に起因して疲れる又は不快になりうるので、特に有利である。また、取り込んだ情報の分析に必要とされる時間、コスト、及び複雑性もまた、その増大した意義に起因して低減することができる。
【0019】
優位点として、本開示の方法は、SWEイメージングのために構成された従来技術の超音波システムを用いて実行されてもよい。言いかえると、ハードウェアの変更は不要である。
【0020】
勾配は、第1のレベルの変形及び少なくとも1つの第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として、データポイント間の剪断波弾性の変動によって決定されてもよい。
【0021】
一実施例では、勾配Rijは次式によって決定されてもよい。
【0022】
【0023】
ここで、Eは、波弾性データポイントの関数として決定される媒体のヤング率係数であり、εは、変形のレベルを表す歪み係数であり、インデックスi及びjは2つの異なるレベルの変形を表す。
【0024】
もう1つの実施例では、勾配
【数2】
は、次式によって決定(すなわち一般化)されてもよい。
【0025】
【0026】
i1,i2,…,ikは、k(k≧2)個の異なるレベルの変形を表すインデックスである。従って、ペア毎のポイントにおいて定義される勾配(例えば、上述の式(2)を参照)は、従って、サイズk(k>2)のポイントの部分集合において定義された勾配に一般化されてもよい。
【0027】
変形推定ステップは、下記のサブステップ、すなわち、
・複数の異なるレベルの変形において、媒体の一連の歪みデータ(又は歪みデータポイント)を収集することと、
・歪みデータの関数として、第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差を決定することと
を含んでもよい。
【0028】
一連の歪みデータを収集するサブステップは、下記の動作、すなわち、
・媒体の一連の超音波データを生成することと、
・予め定義された変形推定アルゴリズムを用いて超音波データを比較することと
を含んでもよい。
【0029】
上記一連の超音波データは、例えば、Bモード超音波データを含んでもよい。一連は、例えば引き続いた複数の画像フレームデータを含む、時間的連続であってもよい。
【0030】
一実施例では、歪みデータポイント及びSWEデータポイントが、実質的に同時に収集されてもよい。しかしながら、データポイントは、例えば単一の超音波トランスデューサ又はトランスデューサネットワークを用いて、交互に収集されてもよい。
【0031】
上記アルゴリズムは、例えば、AIに基づくアルゴリズム(人工知能)であってもよい。アルゴリズムは、例えば、人工ニューラルネットワークのような、コンピュータで実装した機械学習モデルを含んでもよい。実施例は、畳み込みニューラルネットワークを含む。モデルは、トレーニングデータとして例えば注釈された画像を用いる教師ありトレーニング方法によって、又は、教師なしトレーニング方法によってトレーニングされてもよい。
【0032】
上記アルゴリズムは、下記のうちの少なくとも1つを決定することに基づいてもよい。
・一連のフレーム間の画素相関性、
・一連のフレーム間の自己相関位相、
・一連のフレーム間のドップラー信号、
・一連のフレーム間のスペックル追跡、及び、
・一連のフレーム間の光束、
・又は、他の任意のデータ比較技術。
【0033】
一実施例では、歪みデータは、2Dプローブ(すなわち、二次元画像データを取り込むように構成されたプローブ)を用いて収集されてもよい。もう1つの実施例では、歪みデータは、3Dプローブ(すなわち、三次元画像データを取り込むように構成されたプローブ)を用いて収集されてもよい。この場合、三次元歪みデータが取得されてもよく、これは、より正確な変形推定をもたらしうる。また、次いで、プローブが軸に沿って横断方向に移動するのか、それとも望ましくない回転方向に移動するのかが、歪みデータに基づいて決定されてもよい。
【0034】
1つの剪断波弾性データポイントは、上記媒体の1つのROI(region of interest:関心対象領域)の複数の異なる領域(又はエリア)をそれぞれ参照する複数の剪断波値を含んでもよい。各領域(エリア)について、上記関心対象領域の非線形剪断波弾性マップを構成するために非線形剪断波弾性パラメータが推定される。
【0035】
また、従って、一連の歪みデータ(又は歪みデータポイント)が、媒体のROI(関心対象領域)の複数の異なる領域(又はエリア)をそれぞれ参照する複数の歪み値を含みうる可能性がある。しかしながら、一連の歪みデータ(又は歪みデータポイント)が、媒体のROI(関心対象領域)を表すただ1つの歪み値(すなわち時間的連続における値)を含みうる可能性もある。
【0036】
例えば、剪断波弾性データポイントは、複数の画素を有する剪断波弾性画像データを含んでもよい。例えば、SWEデータポイントは、一連の各フレームにおけるSWE画像フレームを構成してもよい。
【0037】
各画素について、非線形剪断波弾性マップを構成するために、非線形SWEパラメータが推定されてもよい。従って、上記NL-SWEマップは、SWE画像データと同じ画素分解能を有してもよい。しかしながら、例えば、画素クラスタについて単一のNL-SWEパラメータを推定することで、NL-SWEマップが低減した分解能を有する可能性もある。
【0038】
第1及び第2の集合のうちの少なくとも一方は、複数の剪断波弾性データポイントを含んでもよい。例えば、各集合は、複数のSWEデータポイントを含む。
【0039】
計算ステップにおいて、第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイント間の複数の勾配が、第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算されてもよい。
【0040】
弾性推定ステップにおいて、媒体の非線形剪断波弾性は、複数の勾配の関数として推定されてもよい。
【0041】
従って、N個のSWEデータポイントが与えられると、任意の2つの異なるレベルが関連する場合の計算された勾配のデータ量は、最大で、(N-1)N/2(式(2)を参照)になりうる。従って、式(2)の例において、対処すべきデータサイズは、データ収集時間長を増大させることなく、Nから(N-1)N/2まで増大させうる。また、N個のポイント間のk(k≧2)ポイントのすべての部分集合が関連する場合、計算される勾配のサイズは(2N-N-1)まで増大する(式(4)を参照)。従って、式(4)の例では、対処すべきデータサイズは、データ収集時間長を増大させることなく、Nから(2N-N-1)までさらに増大させうる。
【0042】
望ましくは、収集されるSWEデータポイントは、複数のレベルの変形にわたって、実質的に均等に分布する。言いかえると、各レベルの変形は、実質的に同じ個数の収集されたSWEデータポイントを含みうる。SWEデータポイントが予め定義されたサンプリングレートで収集される場合、均等な分布は、例えば、実質的に同じ時間にわたって各レベルの変形内にとどまるようにユーザを(例えば、ユーザインターフェースを用いて)ガイドすることで取得されてもよい。そのような均等な分布の利点は、異なるレベルの変形のデータポイントの可能な組み合わせの個数を増大させうることにある。従って、NL-SWE推定において対処すべき合計データサイズ(すなわち勾配の個数)を増大させることができる。
【0043】
弾性推定ステップはさらに、下記のサブステップ、すなわち、
・推定された勾配
【数4】
及びそれらの統計的分散に基づいて線形最小分散推定量を生成することで、その分散に反比例する各勾配のスコア
【数5】
を推定することと、
・各勾配に各スコアで重み付けすることと、
・重み付けられた勾配及び/又は勾配の加重平均の関数として、最終的なNL-SWEパラメータを推定することと
を含んでもよい。統計的分散は、例えば、空間的及び/又は時間的な統計的分散であってもよい。
【0044】
従って、すべての線形推定量間における最小分散を有する、NL-SWEパラメータを推定する推定量が使用されてもよい。従って、上記NL-SWE推定量は、通常の最小二乗線形フィッティングよりも頑健である。
【0045】
例えば、NL-SWEの線形最小分散推定値
【数6】
は、最適な重み付けスコアを用いて、
【数7】
によって決定されてもよい。最適な重み付けスコアは、次式の最適化から導出される。
【0046】
【0047】
ここで、Varは分散を示し、wijは、導出される重み付けスコアであり、Aijは、勾配Rijから導出される非線形剪断波弾性パラメータであり、インデックスi及びjは2つの異なるレベルの変形を表す。
【0048】
さらに、最小分散推定量の精度を向上させるためにギアリー=ヒンクリー変換(Geary-Hinkley Transformation)が使用されてもよい。
【0049】
最適なスコア
【数9】
は次式によって推定されてもよい。
【0050】
【0051】
ここで、
【数11】
は、各非線形剪断波弾性パラメータA
ijの分散から導出されたスコアであり、
【数12】
は、非線形剪断波弾性パラメータA
ijの分散推定値の逆数であり、
【数13】
は、非線形剪断波弾性パラメータA
mnの分散推定値の逆数である。ここで、インデックスm及びnは、1≦m≦N,m<n≦Nによって、剪断波弾性データポイントの少なくとも2組(又は最大ですべて)のペア毎の組み合わせにわたって変動する。ここで、Nは、NL-SWEを推定する方法において考慮されるデータポイントの個数である。Nは、望ましくは少なくとも2であってもよく、より望ましくは少なくとも3であってもよい。このコンテキストにおいて、本方法が2つのみのSWEデータポイントを用いて動作することに注意する。しかしながら、Nが3以上である場合、NL-SWE推定ステップにおいて対処すべきデータサイズは、取り込み時間長を増大させることなく、NからN(N-1)/2まで増大させうる。
【0052】
既に言及したように、最終的なNL-SWEパラメータ
【数14】
は次式によって推定されてもよい。
【0053】
【0054】
本方法は信頼度推定ステップをさらに含んでもよく、信頼度推定ステップは、下記のステップ、すなわち、
・少なくとも1つのスコアと、非線形剪断波弾性パラメータA
ijの分散推定値
【数16】
との関数として、最小分散推定量の信頼度に関する統計モデルを決定することと、
・非線形剪断波弾性マップの領域又は画素に係る信頼性情報を含む信頼度マップを生成することと
を含む。
【0055】
従って、上記信頼度マップは、どのエリアにおいてNL-SWEマップがより信頼できるように見え、どのエリアにおいてより信頼できなくなるように見えるかを示してもよい。
【0056】
上記信頼度マップは、NL-SWEマップと同じ画素分解能を有してもよい。しかしながら、例えば、NL-SWEマップの画素クラスタについて単一の信頼度パラメータを推定することで、信頼度マップが低減した分解能を有する可能性もある。
【0057】
所与のレベルの範囲内における剪断波弾性データポイントのみが収集される及び/又は計算ステップにおいて考慮されるように、所定レベルの変形が所定範囲の変形によって定義されてもよい。
【0058】
2つの隣接したレベルの変形の範囲は、望ましくは、重複しない。従って、2つのレベルの変形間において十分な変形変化を達成することができる。
【0059】
1つのレベルの変形から他のレベルの変形に変更しているとき、歪みデータのみが収集されてもよい。言いかえると、そのような変更中のSWEデータポイントは、収集されないか、又は、NL-SWE推定方法において無視される。
【0060】
超音波を送受信するために、剪断波弾性データポイントを収集するために、及び/又は、歪みデータを収集するために、及び/又は、媒体に変形を適用するために、同じ超音波プローブが使用されてもよい。従って、プローブのユーザは、媒体から必要な日付を収集し、それと同時に、上記プローブを用いた変形を媒体に手動で適用してもよい。
【0061】
本方法はさらに、媒体に変形を適用するためにユーザがユーザインターフェースによってガイドされる、及び/又は、適用された変形の関数としてユーザがユーザインターフェースからフィードバックを受ける、ガイダンス及び/又はフィードバックステップを含んでもよい。
【0062】
従って、ユーザは、変形を自由にかつ手動で適用してもよいが、例えば、各レベルの変形におけるデータ収集のための必要な最小時間、及び/又は、2つのレベルの変形間における必要な最小変形変化を守るために、本方法によって支援されてもよい。
【0063】
本開示はさらに、データ処理システムによって実行されたとき、本開示に係る方法をデータ処理システムに実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0064】
本開示はさらに、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、コンピュータによって実行されるとき、本開示に係る方法のステップを実行するための命令を含むコンピュータプログラムをその上に記録した記録媒体に関してもよい。
【0065】
本開示はさらに、媒体の非線形剪断波弾性を推定するための超音波システムに関し、本システムは、
・媒体に第1のレベルの変形が適用されるときに、媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第1の集合を収集し、
・媒体に第1のレベルとは異なる第2のレベルの変形が適用されるときに、媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第2の集合を収集し、
・第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差を推定し、
・第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイントのデータポイント間の勾配を、第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算し、
・媒体の非線形剪断波弾性を勾配の関数として推定する
ように構成される。
【0066】
本システムは、機能的特性をさらに備えてもよく、及び/又は、上述した方法ステップに対応して構成されてもよい。
【0067】
本開示及びその実施形態は、人間、植物、又は動物を対象とする医療システムのコンテキストにおいて使用されてもよいが、任意の(潜在的には非生物の)軟らかい材料が考慮されてもよい。
【0068】
矛盾しない限り、上述した構成要素及び本明細書内で説明したものが組み合わされもよいことが意図される。
【0069】
先述の概要説明及び後述の詳細説明の両方は例示及び説明にすぎず、実例の提示を目的とし、請求項に記載された開示の限定ではないことは理解されるべきである。
【0070】
添付図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、例示の目的で提供され、その説明とともに本開示の実施形態を示し、その原理をサポートして説明するために提示される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】本開示の実施形態に係る方法の第1の例示的な実施形態を示す。
【
図2A】本開示の実施形態に係る媒体の段階的な変形の例を概略的に示す。
【
図2B】本開示の実施形態に係る媒体の段階的な変形の例を概略的に示す。
【
図2C】本開示の実施形態に係る媒体の段階的な変形の例を概略的に示す。
【
図3a】本開示の実施形態に係る時間フレームの関数として歪みの図を概略的に示す。
【
図3b】
図3aの歪み関数に対応する時間フレームの関数として弾性Eの図を概略的に示す。
【
図4】本開示の実施形態に係る方法の例示的なフローチャートをさらに詳細に示す。
【
図5】本開示の実施形態に係る超音波システムの例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
ここで、本開示の例示的な実施形態が詳細に参照され、その実施例は添付図面に図示されている。図面の全体にわたって可能であればどこでも、同じ部分又は同様の部分を示すために同じ参照番号が使用される。また、特定の実施形態のコンテキストにおいて説明した特徴、例えば
図1のそれは、別途記載がない限り、適切な場合、他の実施形態のうちのいずれか1つにもあてはまる。
【0073】
図1は、本開示の実施形態に係る方法の第1の例示的な実施形態を示す。本方法は超音波システムによって実施されてもよい。実施例は
図5のコンテキストにおいて説明される。例えば、この処理を開始/スタートするために、非線形剪断波弾性(NL-SWE)に係る第1のイメージングモードが起動されてもよい。本方法は下記のステップを含む。
【0074】
ステップA1において、媒体に第1のレベルの変形が適用されるときに、媒体の少なくとも1つのSWE(剪断波弾性)データポイントを含む第1の集合が収集される。収集方法及びSWEデータポイントの例示的な実施形態を下記に説明する。第1のレベルの変形は、基準レベルとみなされてもよい。上記第1のレベルは、関心対象領域に変形が適用されないか又はほとんど適用されないレベル、すなわち、例えば、いかなる応力も与えることなくプローブが(ゲルを用いて)媒体に接触するレベルであってもよい。
【0075】
ステップA2において、媒体に第2のレベルの変形が適用されるときに、媒体の少なくとも1つの剪断波弾性データポイントを含む第2の集合が収集される。上記第2のレベルは第1のレベルとは異なり、例えば、第1のレベルより大きく変形されるか小さく変形される。第2のレベルの変形は、第1の比較レベルとみなされてもよい。第1のレベルが媒体の変形を意味する場合、第2のレベルは、関心対象領域に変形が適用されないか又はほとんど適用されないレベル、すなわち、例えば、いかなる応力も与えることなくプローブが(ゲルを用いて)媒体に接触するレベルであってもよい。
【0076】
オプションのステップA-nにおいて、媒体に第nのレベルの変形が適用されるときに、媒体の少なくとも1つの剪断波弾性データポイントを含む第nの集合が収集される。複数の第nのレベルの変形、例えば、第3のレベル、第4のレベル、などが存在してもよい。上記第nのレベルは、第2のレベル及び/又は第1のレベルとは異なっていてもよい。例えば、第1、第2、及び第nのレベルは、逐次的に変化する変形、例えば、逐次的に増大又は減少する変形を形成してもよい。代替として、それらは、交替するレベルの変形であってもよい。例えば、第nのレベルの変形は、実質的に、第1のレベルの変形に対応してもよい。
【0077】
ステップA3において、第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差が推定される。オプションで、第nのレベル及び第2のレベル及び/又は第1のレベルの間の差が推定される。例示的な推定方法を下記に説明する。
【0078】
ステップB1において、第1、第2の集合及び/又は第nの集合にそれぞれ属するか、又はオプションで、第1、第2の集合及び第nの集合に属する少なくとも3つのデータポイントに属する少なくとも2つのデータポイント間の少なくとも1つの勾配(すなわち比又は変動)が決定される。上記勾配は、特に、各第1、第2、及びオプションで第nのレベルの変形の間における変形の差の関数として、データポイント間の剪断波弾性の変動によって決定されてもよい。例えば、第1の勾配は、第1及び第2の集合の2つのデータポイントの関数として決定されてもよく、オプションの第2の勾配は、第2及び第nの集合の2つのデータポイントの関数として決定されてもよい。別の例示的な勾配は、特に、各第1及び第nのレベルが互いに異なる場合、第1及び第nの集合の2つのデータポイントの関数として決定されてもよい。また、勾配は、2つ以上のデータポイントの関数として決定されてもよい。
【0079】
ステップB2において、媒体のNL-SWE(非線形剪断波弾性)(例えばNL-SWEパラメータ)が、少なくとも1つの勾配の関数として推定される。
【0080】
ステップA1~A-nは時間的に逐次的であってもよい。ステップA3は、望ましくは、ステップA1、A2、A-nと同時に実行されてもよい。優位点として、この処理(すなわち、各SWEデータ収集又は「スキャン」)は、変形の進展(すなわちステップA3)をリアルタイム又はほぼリアルタイムで推定する超音波処理と同時に組み合わされる及び/又はインターリーブされてもよい。
【0081】
ステップB1は、ステップA3の後でいったん実行されてもよく、及び/又は、ステップA2の後で開始されて、各さらなるステップA-nの後で繰り返されることで、数回にわたって実行されてもよい。この場合、各ステップB1において、既に収集されたデータポイントの各勾配が決定されてもよい。ステップB2は、ステップB1の後に実行されてもよく、又は、各いくつかのステップB1の後に数回にわたって実行されてもよい。後者の場合、最初のステップB2において最初の推定値が速やかに取得されてもよく、次いで、後のステップB2において推定値がさらに改善されてもよい。方法A1~B2は、B2からA1に戻る各ループによって繰り返されてもよい。
【0082】
本方法のオプションの実施形態及び態様を、同じく
図2~
図5のコンテキストで、下記に説明する。
【0083】
剪断波弾性データポイントは、複数の画素を有する剪断波弾性画像を含んでもよく、各画素について、非線形剪断波弾性マップを構成するための非線形剪断波弾性パラメータが推定される。言いかえると、SWEデータポイントは、媒体の関心対象領域のSWE画像が導出されうる1回のデータ収集サイクルとして理解されてもよい。
【0084】
一態様によれば、
ステップ(A1)において生成される剪断波弾性データポイントは、下記のサブステップ、すなわち、
A1.1.少なくとも1つの合焦した超音波を放射させることによって媒体において剪断波が生成される励振ステップ。
A1.2.媒体から時間的に一連の超音波データを取り込むことで剪断波の伝搬が観察される観察ステップ。
A1.3.媒体の上記超音波データから及び剪断波伝搬モデルから弾性データポイントのデータが決定される処理ステップ。
によって生成されてもよい。
【0085】
この処理は平面波を使用してもよいが、このステップは、合焦した波を用いて実行されてもよい。
【0086】
従って、NL-SWE方法は、媒体の剪断波弾性(SWE)を決定するために超音波方法を使用してもよい。
【0087】
ステップA2及びA-nが対応するサブステップを備えてもよい。
【0088】
変形推定ステップA3は、下記のサブステップ、すなわち、複数の異なるレベルの変形において、媒体の一連の物理的な歪みデータを収集することと、歪みデータの関数として、第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差を決定することとを含んでもよい。一連の物理的な歪みデータを収集するサブステップは、特に、上記媒体の一連の超音波画像フレームを生成することと、予め定義された動き推定アルゴリズムを用いて超音波画像フレームを比較することとを含んでもよい。
【0089】
また、第1及び第nのレベルの変形及び/又は第2及び第nのレベルの変形の間における変化もまた、対応するサブステップによって決定されてもよい。
【0090】
例えば、剪断波弾性データポイントを収集するために使用される超音波プローブは、歪みデータを収集するために、及び/又は、媒体に変形を適用するために使用されてもよい。
【0091】
剪断波データ収集及び変形推定方法は、平坦な超音波に基づいてもよく、その一方、Bモード方法は、平坦ではない超音波に基づいてもよい。変形の変化を表す静的弾性(「歪み」)を決定する超音波処理の代替又は追加として、プローブは、媒体の変形の進展を観察(測定又は追従)することを可能にする圧力トランスデューサを備えてもよい。
【0092】
図2A、
図2B、及び
図2Cは、本開示の実施形態に係る媒体の変形の例を概略的に示す。特に、
図2A~
図2Cは、逐次的に変化する(すなわち増大する)変形を媒体に適用することを概略的に示す。しかしながら、変形の減少又は交替する変化が適用されてもよい。
図2A~
図2Cの例において、処理は、
図2Aに示す状態で開始し、
図2Cに示す状態で終了する。特に、
図2A~
図2Cは、例えば段階的に増大する変形を適用することによって引き起こされる、媒体の変形の進展を示す。
【0093】
従って、
図2A~
図2Cのそれぞれは、1つのステップ、すなわち、1レベルの変形を示してもよい。例えば、
図2Aは本開示に係る第1のレベルの変形を表してもよく、
図2Bは本開示に係る第2のレベルの変形を表してもよく、
図2Cは本開示に係る第nのレベルの変形を表してもよい。優位点として、本開示の方法は、ユーザが変形のレベルを自由に選択することを可能にしうる。言いかえると、レベルは、望ましくは、予め定義されてはいない。このことは、本方法が、ユーザによって適用される1つ又は複数の変形の1つ又は複数の変化とは独立に、1つ又は複数の勾配を確実に計算するために必要なすべてのデータを収集するという優位点を有するので可能になる。
【0094】
例えば、ユーザは、例えば
図2Aに示すように、媒体に関して第1の位置にプローブ6を保持し、所定時間にわたって(例えば、数分の1秒から数秒まで、又は、ユーザインターフェースによってユーザに指示されたように)実質的に一定の位置にプローブ6を保持してもよく、次いで、例えば
図2Bに示すように、位置を第2のレベルの変形に変更し、所定時間期間にわたって再び一定に維持する。実質的に一定の各位置において、少なくとも1つのSWEデータポイントが収集されてもよく、それに応じて、変形のレベルは、リアルタイム、擬似リアルタイム、又は後処理で推定されてもよい。従って、後者の後処理の場合、データが収集された後(本方法のステップA1,A2を参照)、かつ、NL-SWEを推定するためにデータが処理される前に、検査される人物が立ち去る可能性もある。データ処理が遠隔に行われる、例えば、データ収集が行われる場所とは別の部屋又は建物において行われる可能性もある。従って、所与のレベルの範囲内における剪断波弾性データポイントのみが収集される及び/又は計算ステップにおいて考慮されうるように、所定レベルの変形が所定範囲(予め定義された許容範囲)の変形によって定義されてもよい。いったん、ユーザが、(許容)範囲を超過する変形の変化を適用すると、本方法は、1つのレベルからもう1つのレベルへの変形の変化を認識しうる。2つの隣接したレベルの変形の範囲(例えば、
図2A及び2B)は、望ましくは、それらが重複しないように選択される。この方法で)、本方法は、変形が1つのレベルからもう1つのレベルに変更されたか否かを確実に認識することができる。1つのレベルの変形から他のレベルの変形に変更しているとき、歪みデータのみが収集/登録/ソートされてもよい。
【0095】
図2Aは、プローブ6が外表面3に対して後のステップよりも小さな圧力Pを与える場合の、処理の時刻t0における超音波システム1の動作を示す。外表面3は、実質的に、(X方向に)水平のままである。媒体I0の画像データは、例えば、外表面3に対して深度Z1において封入体2iを含む。同時に、(上に説明したような)媒体の非線形剪断波弾性を推定する超音波処理が開始する。
【0096】
図2Bは、Pより大きな外圧(又は応力)が与えられ、それにより、外表面3を媒体2の内部に向かってZ方向に変形する場合の、処理の時刻t1における超音波システム1の動作を示す。このように、媒体の変形は逐次的に変更された。
【0097】
図2Cは、t1において与えられたP’よりもずっと大きな外圧P”が存在する場合の、処理の時刻t2における超音波システム1の動作を示す。
図2A~
図2Cに示すように、変化する変形は、段階的な方法で実行されてもよい。代替として、逐次的な減圧又は交替する圧迫/減圧が媒体に適用されてもよい。
【0098】
完全な処理は、数秒、例えば5~10秒かかってもよい。各ステップは、例えば、0.5~5秒かかってもよい。望ましくは、本方法は、いかなる上限のタイムリミットも含まない。しかしながら、例えば貴族及び/又は検査される人物の外部の時間的制約に起因して、本方法及び特にデータ収集(本方法のステップA1,A2)は、速やかに実行される。検査される人物が、例えば、不快又は疲れる姿勢で静止してじっとしているように要求される可能性があり、又は、身体の検査される部分が、超音波によって加熱される可能性がある。ユーザは、各単一の変形レベルの時間を自由に制御してもよいが、(後述するように)ユーザインターフェースによってガイドされてもよい。この時間は、媒体の変形の進展中に十分なデータを収集する(すなわち、この進展中に媒体の非線形剪断波弾性を十分に定量化する)ことに有用である。
【0099】
言いかえると、
図2A~
図2Cに示す変形の進展は、ユーザによって自由に選択されてもよいが、予め定義された変形シーケンス又は適応的な変形シーケンスによってガイドされてもよい(すなわち、コンピュータアルゴリズム、例えばAIに基づくアルゴリズムによって、リアルタイム及び/又はケースバイケースの原則で構成されてもよい)。例えば、このシーケンスは、視覚表示器、音響表示器、及び触覚表示器のうちの少なくとも1つを備えるユーザインターフェースによって示されてもよい。視覚表示器の例は、画面上の又は他の方法で表示される矢印又は他の任意のシンボルと、例えば超音波プローブに配置された、LEDとを含む。音響表示器の例は、音声ガイダンス又はアラーム音表示を含む。触覚表示器の例は、例えば超音波プローブレベルに組み込まれた、振動装置を含む。このことは、各変形レベルにおいて十分なデータを収集できるように、ユーザが単一変形レベルの適切なタイミングを守ることを可能にする。例えば、ユーザインターフェースは、いつ変形を停止/変更するか、及び/又は、増大する変形を適用すべきか、それとも減少する変形を適用すべきかを、視覚的に及び/又は聴覚上及び/又は触覚的に示してもよい。また、単一のステップ間において変形の十分な変化が適用されるか否かをユーザに知らせるために、フィードバック機能が使用されてもよい。例えば、本方法は、再現可能な予め定義された検査を可能にするようにシステムによってガイドされてもよい(すなわち、ユーザは支援される)。このコンテキストにおいて、変形ステップが、ユーザインターフェースによって示された予め定義された時間長を有してもよく、及び/又は、それらの最小時間長が、変形ステップにおける収集されたデータ量の関数として決定されてもよい。後者の場合、本システムは、(例えば
図4のコンテキストで説明したような)収集されたデータに基づいて、十分な有効データが収集され、変形の変化が適用されてもよいか否かを決定してもよい。
【0100】
また、例えば、予め決められた/適応的なシーケンスに従って自動化された方法でプローブ又は別の圧迫板を移動させるロボットアームを用いることで、変形のアプリケーションが自動化される可能性もある。
【0101】
図3aは、本開示の実施形態に係る時間フレームの関数として歪みの図を概略的に示し、
図3bは、
図3aの歪み関数に対応する時間フレームの関数として弾性Eの図を概略的に示す。言いかえると、
図3a及び
図3bは対応する時間図であり、
図3aが歪みを%で示し、
図3bが弾性Eを示してもよい。両方のタイプのデータは、経時的に、各データポイントとして(言いかえるとデータサンプルとして)収集される。この概略的な実施例では、歪み及び弾性のデータポイントは、実質的に同時に収集される。しかしながら、データポイントは、例えば、単一の超音波トランスデューサ又は一群のトランスデューサを用いて、交互に収集されてもよい。
【0102】
図3a及び
図3bに示す実施例において、変形(すなわち歪み)のレベルは、経時的に、段階的な方法で変化する。各ステップにおいて、変形のレベルは実質的に一定のままである(
図3aを参照)。実質的に一定レベルの各変形において、約5~8個のデータポイントが収集される。しかしながら、より多く又はより少数のデータポイントが収集されてもよい。
【0103】
図3bにさらに示すように、変形の変化中に収集された弾性データポイントは、むしろノイズを含む。この理由により、1つのレベルからもう1つのレベルへの変形の変化中における任意のSWEデータポイントは、収集ステップA1,A2,では収集/選択/ソート/使用されないこと、及び/又は、計算ステップB1では考慮されないことが望ましい。言いかえると、1つのレベルの変形から他のレベルの変形に変更しているとき、変形の進展をモニタリングするために、歪みデータのみが収集されてもよい。
【0104】
図4は、本開示の実施形態に係る方法の例示的なフローチャートをさらに詳細に示す。詳細後述するように、
図4のフローチャートは、フローチャートのループによって示される、複数の異なるすなわち変形(すなわち圧迫及び/又は減圧)レベルを有する取り込みシーケンスを含んでもよい。
【0105】
ステップS1において、SWE及び歪み(すなわち変形)データポイントが収集される。ステップS1が、S3からS4を介してS1に至るループに起因して複数回にわたって実行される可能性があるので、それは、本開示に係るステップA1、A2、A-n、及びA3に対応しうる。
【0106】
歪みは、一連のフレーム間のドップラー位相を用いて推定されてもよく、それは、Bモード画像データにおけるスペックル追跡を用いて完了されてもよい。Bモードスペックル追跡は、大きな動きに対処することを可能にし、スペックル非相関性を調査することで平面外の動きを検出することができる。後者の場合、データポイントは望ましくはドロップされる。
【0107】
オプションのステップS2において、SWE及び/又は特に歪みデータポイントが、第1の予め定義された範囲内にとどまるか否かが決定される。それらがとどまれない場合、収集されたデータは無視されてもよく、ステップS1が繰り返される。同時に、ユーザは、できるだけ一定レベルの圧迫にとどまるようにユーザインターフェースによって要求されてもよい。
【0108】
SWE及び/又は特に歪みデータポイントが第1の予め定義された範囲内にとどまる場合、収集されたデータは、ステップS3において、データ集合1…nにおける現在の変形のレベルについて選択及び/又は記録される。従って、オプションのステップS2においてデータ資格状態が適用されてもよく、このデータ資格状態に従って、十分な小さな分散の歪み及び/又はヤング率のみが保持されうる。
【0109】
記録されたデータ集合1…nの個数が、予め定義された値N以下である場合、本方法はステップS4に続く。Nは整数、例えば2以上であってもよい。ステップS4において、変形(すなわち圧迫又は減圧)の変化が媒体に適用される。例えば、変形の変化のレベルが有意に(例えば、予め定義された許容範囲を超えて)変化したと(例えば、収集された歪みデータポイントに基づいて)決定された場合、本方法によってステップS4がトリガされてもよい。望ましくは、歪みデータポイントのみが、上記変形の変化中に収集される。このように、ステップS4は、本開示のステップA3に対応しうる。例えば、ステップS3においていったん有効な弾性データが収集及び記録されたときに、1つの変形レベルからもう1つの変形レベルに移行するために、ユーザにフィードバック(言語的、視覚的、…)が与えられてもよい。ユーザは、例えば、視覚表示器又はディスプレイ上のテキストによって、又は代替として、音響又は触覚信号によってガイドされてもよい。
【0110】
例えば、ステップS4は、変形のレベルが予め定義されたしきい値xに到達するまで実行されてもよい。上記しきい値Xは、先の収集ステップS1における変形のレベルに関する相対的な変形の変化として決定されてもよい。例えば、それは、予め定義された歪みの差として、例えば、以前のステップS1におけるレベルに関する歪みの5%の増大又は減少として定義されてもよい。代替として、ステップS4は、変形の変化が減少し、従って、変形のレベルが実質的に一定のレベルに到達するまで実行されてもよい。例えば、ステップS4は、SWE及び/又は特に歪みデータポイントが、第1の予め定義された範囲又は他の任意の予め定義された範囲内にとどまるようになるまで実行される。ステップS3において、データ集合の個数n(及び、従って、対応する変形のレベルの個数)がNより大きくなる場合、十分なデータが収集されたと決定してもよい。次いで、本方法はステップS5に続く。ステップS5において、NL-SWEが推定される。従って、ステップS5は、本開示のステップB1及びB2に対応しうる。
【0111】
NL-SWEを推定するために本開示において使用されるNL-SWEモデルは、1次モデルを有してもよい。
【0112】
【0113】
ここで、E(ε)は、歪みεの歪み制約下におけるヤング率である。E0=E(0)は制約なしのヤング率であり、Aは推定すべきNL-SWEパラメータである。
【0114】
要約すると、ステップS1~S4において、データが収集され、それに基づいてNL-SWEが推定される。ステップS1において、プローブの動きが低減された場合、異なるフレーム(すなわち異なる時刻)におけるE及びεを計算することが望ましい(ステップS2を参照)。取り込みは、望ましくは静止段階において、すなわち、実質的に一定レベルの変形中に実行されるようにガイドされる。従って、プローブが段階0にとどまる限り(すなわち、歪み及び望ましくはSWEがあまり変化していない場合)、1つ又は複数のデータポイントが収集される(ステップS3を参照)。現在の段階における取り込みの後で、ユーザは、例えば、歪みのみがモニタリングされている間に、次の段階に一軸的に移動(圧迫又は解放)するように要求されてもよい(S4を参照)。十分なデータポイントが収集されるまで、上記ループS1~S4が繰り返されてもよい。ユーザは、例えば、視覚表示器又はディスプレイ上のテキストによって、又は代替として、音響又は触覚信号によってガイドされてもよい。データは、例えば、複数の段階の圧迫シーケンス又は抑制シーケンスから収集されてもよい。歪みは、逐次的に圧迫又は逐次的に解放することによって、又は、目標に追従する非単調ステップによって印加されてもよい。
【0115】
ステップS1~S4の取り込みの後で、ステップS5において、データポイントは、例えば次式によって、各勾配Rijを決定するようにペアで処理されてもよい。
【0116】
【0117】
ここで、Eは、波弾性データポイントの関数として決定される媒体のヤング率係数であり、εは、変形のレベルを表す歪み係数であり、インデックスiは第1のレベルの変形を表し、インデックスjは第2のレベルの変形を表す。
【0118】
非線形弾性係数Aは、各ペアについてNL-SWE情報が定量化されるように、A=-(4/3)・RによってRに関連付けられてもよい。
【0119】
【0120】
N個のデータポイントが与えられた場合、これらのパラメータのデータ量は、(N-1)N/2である。従って、対処すべきデータサイズは、取り込み時間長を増大させることなく、NからN(N-1)/2に増大させることができる。
【0121】
もう1つの実施例では、勾配
【数20】
は次式に一般化されてもよい。
【0122】
【0123】
ここで、i1,i2,…,ikは、k(k≧2)個の異なるレベルの変形を表すインデックスである。従って、ペア毎のポイントにおいて定義される勾配(例えば、上述の式(2)を参照)は、従って、サイズk(k>2)のポイントの部分集合において定義された勾配に一般化されてもよい。
【0124】
次いで、A
ij、すなわち、
【数22】
の分散が計算されてもよい。例えば、この分散は次式によって推定されてもよい。
【0125】
【0126】
ここで、各画素の近傍において、ヤング率の差(すなわちE
i-E
j)の平均
【数24】
及び分散
【数25】
が推定されてもよい。同様に、歪みの差(すなわちε
i-ε
j)の平均
【数26】
及び分散
【数27】
が推定されてもよい。近傍は、空間的及び/又は時間的であってもよい。時間的な近傍の場合、平均及び分散を計算するために、望ましくは、同じペアの変形レベル以内のポイントが使用される。
【0127】
オプションで、特に画素相関に関して、分散推定値の精度を向上させるために、ギアリー=ヒンクリー変換(Geary-Hinkley Transformation)が適用されてもよい。GHTでは、画素相関がより良好に考慮されうる。
【0128】
【0129】
ここで、
【数29】
は、(E
i-E
j)及び(ε
i-ε
j)の間の共分散を示す。言いかえると、GHTは、A
ijの分散のより正確な推定値を提供する。後述するように、最小分散推定量は、最適な重み付けを導出するための入力としてA
ijの分散を用いてもよい。
【0130】
次いで、線形最小分散推定量は、次式を最適化することで定式化されてもよい。
【0131】
【0132】
ここで、wijは、導出される重み付けスコアであり、Aijは、推定される非線形剪断波弾性パラメータである。
【0133】
提案する線形最小分散推定量を用いる利点は、推定の頑健性及び再現性が著しく向上することにある。
【0134】
スコアwijは次式によって推定されてもよい。
【0135】
【0136】
ここで、Varは分散を示し、
【数32】
は、各非線形剪断波弾性パラメータA
ijの分散から導出されたスコアであり、
【数33】
は、非線形剪断波弾性パラメータA
ijの分散推定値の逆数であり、
【数34】
は、非線形剪断波弾性パラメータA
mnの分散推定値の逆数である。インデックスm及びnは、1≦m≦N,m<n≦Nによって、剪断波弾性データポイントのすべてのペア毎の組み合わせにわたって変動し、ここで、Nはデータポイントの個数である。
【0137】
最適化は、Aijに適用されて各推定されるパラメータに線形に重み付けする重みwijを生成する。最終的なNL-SWEパラメータ推定値は、この加重平均から与えられる。
【0138】
【0139】
さらに、本方法は、ステップS5の後に、信頼度推定ステップ(
図4には図示せず)を含んでもよい。上記ステップは、少なくとも1つのスコアと、非線形剪断波弾性パラメータA
mnの分散推定値
【数36】
との関数として、最小分散推定量の信頼度に関する統計モデルを決定することと、非線形剪断波弾性マップの画素に係る信頼性情報を含む信頼度マップを生成することとを含んでもよい。従って、NL-SWE推定値の信頼度を推定するために、
【数37】
によって、
【数38】
の分散が計算されてもよい。
【0140】
図5は、本開示の実施形態に係る超音波システムの例示的な実施形態を示す。システム1は、媒体の非線形剪断波弾性を推定するように構成されてもよい。
【0141】
特に、
図5に示す超音波システム1は、粘弾性媒体2の超音波画像データを提供するように構成されてもよい。圧縮性の超音波に応答して、システムは散乱する。媒体は、臨床又は医療アプリケーションの場合、例えば、ヒト又は動物の身体、例えば、患者の身体の一部(乳房、肝臓、腹、…)であってもよい。このシステム1は、弾性剪断波の伝搬をモニタリングすることで、媒体2の弾性の画像データの提供を可能にするように構成される。
【0142】
媒体の画像データは、例えば、処理装置(例えば、コンピュータ又はマイクロコンピュータ)4によって生成される。処理装置4は、例えば、キーボードなどのような入力インターフェース4bと、画面などのような出力インターフェース4aとを備えてもよく、これらは同じエリア又は異なる場所に位置し、クラウドコンピューティング部分を含み、又は、処理装置4は、圧縮性の超音波を媒体2にその外表面3から送りこませる、他の任意の電子的中央装置を含んでもよい。上記波は、媒体2に含まれる散乱粒子5と相互作用する。この粒子は、圧縮性の超音波に対して反射性を有する。粒子5は、媒体2の任意の異成分によって構成される可能性があり、特に、医療アプリケーションに関する場合、ヒト組織に存在するコラーゲン粒子(これらの粒子は、超音波画像において、「スペックル」として知られる点を形成する)によって構成されてもよい。
【0143】
図5に示すシステムが単なる一例であることに注意する。本システムはまた、他の任意のアーキテクチャを有してもよい。例えば、本システムの部分は、分散型であってもよく、及び/又は、互いに遠隔していてもよい。一実施例では、処理装置4、プローブ6、及び/又は電子的ベイ7は、異なる部屋又は建物に位置してもよい。
【0144】
媒体2を観察して媒体の画像データを生成するために、観察される媒体2の外表面3に対して配置された超音波プローブ6が使用されてもよい。このプローブは、例えば0.5~100MHzの間及び好ましくは0.5~15MHzの間、例えば約4MHzのオーダーの周波数で、超音波検査において一般的に使用されるタイプの圧縮性の超音波パルスを、Z軸に沿って送信する。
【0145】
超音波プローブ6は、n個の超音波トランスデューサT1,T2,…,Ti,…,Tnのアレイからなってもよく、nは、1より大きい整数又は少なくとも1に等しい整数である。
【0146】
プローブ6は、例えば、リニアアレイの形式を有してもよく、これは、例えば、Z軸に垂直なX軸に沿って整列したn=128又は256又は1024個のトランスデューサを備えてもよい。問題となっているプローブは、トランスデューサの二次元又は3Dアレイ(平坦又はその他)であってもよい。
【0147】
トランスデューサT1,T2,…Tnは、処理装置4によって互いに独立に制御されてもよく、おそらくは、例えば、可撓性ケーブルによってプローブ6に接続された電子的ベイ7に含まれる、中央処理装置(CPU)によって互いに独立に制御されてもよい。
【0148】
従って、トランスデューサT1~Tnは、下記のいずれかの超音波を選択的に放射してもよい。
・「平面」の圧縮性の超音波(すなわち、この場合、X,Z平面において直線である波面を有する波)、又は、媒体2における観察のフィールド全体を照射する他の任意のタイプの合焦していない波、例えば、様々なトランスデューサT1~Tnにランダム音響信号を放射させることで生成された波、
・又は、媒体2の1つ又は複数のポイントに合焦した圧縮性の超音波。
【0149】
オプションで、いくつかの合焦していない圧縮性の波、例えば異なる角度の複数の平面波を使用する、合成イメージング技術が適用されてもよい。向上した品質で媒体の画像データを取得するために、これらの平面波の各エコー波が合成されてもよい。
【0150】
請求項を含む本開示の全体にわたって、用語「1つの~を備える(含む)」は、他の記載がなければ、「少なくとも1つの~を備える(含む)」と同義のものとして理解されるべきである。さらに、請求項を含む本開示で示した任意の範囲は、他の記載がなければ、その端の値を含むものとして理解されるべきである。説明した構成要素に係る特定の値は、当業者に既知である、許容された製造時又は産業上の公差内にあるものと理解されるべきであり、用語「実質的に」及び/又は「約」及び/又は「概して」のいかなる使用も、そのような許容された公差内にあることを意味するものと理解されるべきである。
【0151】
本開示は特定の実施形態を参照してここに説明したが、これらの実施形態は、本開示の原理及び応用の単なる例示であることが理解されるべきである。
【0152】
明細書及び実施例が例示的なものとしてのみ考慮され、本開示の真の範囲は添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の非線形剪断波弾性を推定する超音波方法であって、上記方法は、
A1.上記媒体に第1のレベルの変形が適用されるときに、上記媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第1の集合が収集される第1の収集ステップと、
A2.上記媒体に上記第1のレベルとは異なる第2のレベルの変形が適用されるときに、上記媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第2の集合が収集される第2の収集ステップと、
A3.上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差が推定される変形推定ステップと、
B1.上記第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイント間の勾配が、上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算される計算ステップと、
B2.上記媒体の非線形剪断波弾性が上記勾配の関数として推定される弾性推定ステップとを含む、
方法。
【請求項2】
上記勾配は、上記第1のレベルの変形及び少なくとも1つの上記第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として、上記データポイント間の剪断波弾性の変動によって決定され、及び/又は、
上記勾配R
ijは次式によって決定され、
【数1】
Eは、上記
剪断波弾性データポイントの関数として決定される上記媒体のヤング率係数であり、εは、変形のレベルを表す歪み係数であり、インデックスi及びjは2つの異なるレベルの変形を表し、及び/又は、
上記勾配
【数2】
は次式によって決定され、
【数3】
インデックスi
1,i
2,…,i
kは、k個の異なるレベルの変形を表す、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記変形推定ステップは、下記のサブステップ、すなわち、
複数の異なるレベルの変形において、上記媒体の一連の歪みデータを収集することと、
上記歪みデータの関数として、上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差を決定することとを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
一連の歪みデータを収集するサブステップは、
上記媒体の一連の超音波データを生成することと、
予め定義された変形推定アルゴリズムを用いて上記超音波データを比較することとを含む、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
上記一連の歪みデータは三次元歪みデータを含む、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
1つの剪断波弾性データポイントは、上記媒体の1つの関心対象領域の複数の異なる領域をそれぞれ参照する複数の剪断波値を含み、
各領域について、上記関心対象領域の非線形剪断波弾性マップを構成するために非線形剪断波弾性パラメータが推定される、
請求項2記載の方法。
【請求項7】
上記第1及び第2の集合のうちの少なくとも一方は、複数の剪断波弾性データポイントを含み、
上記計算ステップにおいて、上記第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイント間の複数の勾配が、上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算され、
上記弾性推定ステップにおいて、上記媒体の非線形剪断波弾性は、上記複数の勾配の関数として推定される、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
上記弾性推定ステップは、下記のサブステップ、すなわち、
上記推定された勾配
【数4】
及びそれらの統計的分散に基づいて線形最小分散推定量を生成することで、その分散に反比例する各勾配のスコア
【数5】
を推定することと、
各勾配に各スコアで重み付けすることと、
上記重み付けられた勾配及び/又は上記勾配の加重平均の関数として、最終的なNL-SWEパラメータを推定することとを含む、
請求項
7記載の方法。
【請求項9】
上記線形最小分散推定量は次式によって決定され、
【数6】
Varは上記分散を示し、
w
ijは、導出される最適な重み付けスコアであり、
A
ijは、上記勾配R
ijから導出される非線形剪断波弾性パラメータであり、
インデックスi及びjは2つの異なるレベルの変形を表す、
請求項
8記載の方法。
【請求項10】
上記線形最小分散推定量の精度を向上させるためにギアリー=ヒンクリー変換(Geary-Hinkley Transformation)が使用される、
請求項8~9のうちの1つに記載の方法。
【請求項11】
上記最適な
重み付けスコアw
ijは次式によって推定され、
【数7】
【数8】
は、上記各非線形剪断波弾性パラメータA
ijの分散から導出されたスコアであり、
【数9】
は、上記非線形剪断波弾性パラメータA
ijの分散推定値の逆数であり、
【数10】
は、上記非線形剪断波弾性パラメータA
mnの分散推定値の逆数であり、
インデックスm及びnは、1≦m≦N,m<n≦Nによって、剪断波弾性データポイントの少なくとも2組のペア毎の組み合わせにわたって変動し、Nはデータポイントの個数であり、及び/又は、
最終的なNL-SWEパラメータ
【数11】
は次式によって評価される、
【数12】
請求項
9記載の方法。
【請求項12】
上記方法は、信頼度推定ステップをさらに含み、上記信頼度推定ステップは、
少なくとも1つのスコアと、上記非線形剪断波弾性パラメータ(A
ij)の分散推定値
【数13】
との関数として、上記
線形最小分散推定量
【数14】
の信頼度に関する統計モデルを決定することと、
上記非線形剪断波弾性マップの領域に係る信頼性情報を含む信頼度マップを生成することとを含む、
請求項
11記載の方法。
【請求項13】
あるレベルの変形から他のレベルの変形に遷移している間に、歪みデータのみが収集され、及び/又は、いかなる剪断波弾性データポイントも収集されない及び/又は上記計算ステップにおいて考慮されない、
請求項3~5のうちの1つに記載の方法。
【請求項14】
上記剪断波弾性データポイントを収集するために、及び/又は、上記歪みデータを収集するために、及び/又は、上記媒体に変形を適用するために、同じ超音波プローブが使用され、及び/又は、
上記剪断波弾性データポイントを収集するため及び/又は上記歪みデータを収集するために使用される超音波プローブは、上記媒体の二次元又は三次元画像データを取り込むように構成される、
請求項3~5のうちの1つに記載の方法。
【請求項15】
上記方法は、上記媒体に変形を適用するためにユーザがユーザインターフェースによってガイドされる、及び/又は、適用された変形の関数としてユーザが上記ユーザインターフェースからフィードバックを受ける、ガイダンス及び/又はフィードバックステップをさらに含む、
請求項1記載の方法。
【請求項16】
データ処理システムによって実行されたとき、請求項1記載の方法を上記データ処理システムに実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項17】
媒体の非線形剪断波弾性を推定する超音波システムであって、上記システムは、
上記媒体に第1のレベルの変形が適用されるときに、上記媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第1の集合を収集し、
上記媒体に上記第1のレベルとは異なる第2のレベルの変形が適用されるときに、上記媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第2の集合を収集し、
上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差を推定し、
上記第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイントのデータポイント間の勾配を、上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算し、
上記媒体の非線形剪断波弾性を上記勾配の関数として推定するように構成された、
システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0152
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0152】
明細書及び実施例が例示的なものとしてのみ考慮され、本開示の真の範囲は添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
[1]本開示の第1の態様によれば、
媒体の非線形剪断波弾性を推定する超音波方法であって、上記方法は、
A1.上記媒体に第1のレベルの変形が適用されるときに、上記媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第1の集合が収集される第1の収集ステップと、
A2.上記媒体に上記第1のレベルとは異なる第2のレベルの変形が適用されるときに、上記媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第2の集合が収集される第2の収集ステップと、
A3.上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差が推定される変形推定ステップと、
B1.上記第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイント間の勾配が、上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算される計算ステップと、
B2.上記媒体の非線形剪断波弾性が上記勾配の関数として推定される弾性推定ステップとを含む。
[2]本開示の第2の態様によれば、本開示の第1の態様において、
上記勾配は、上記第1のレベルの変形及び少なくとも1つの上記第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として、上記データポイント間の剪断波弾性の変動によって決定され、及び/又は、
上記勾配R
ij
は次式によって決定され、
【数39】
Eは、上記波弾性データポイントの関数として決定される上記媒体のヤング率係数であり、εは、変形のレベルを表す歪み係数であり、インデックスi及びjは2つの異なるレベルの変形を表し、及び/又は、
上記勾配
【数40】
は次式によって決定され、
【数41】
インデックスi
1
,i
2
,…,i
k
は、k個の異なるレベルの変形を表す。
[3]本開示の第3の態様によれば、本開示の第1又は第2の態様において、
上記変形推定ステップは、下記のサブステップ、すなわち、
複数の異なるレベルの変形において、上記媒体の一連の歪みデータを収集することと、
上記歪みデータの関数として、上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差を決定することとを含む。
[4]本開示の第4の態様によれば、本開示の第3の態様において、
一連の歪みデータを収集するサブステップは、
上記媒体の一連の超音波データを生成することと、
予め定義された変形推定アルゴリズムを用いて上記超音波データを比較することとを含む。
[5]本開示の第5の態様によれば、本開示の第4の態様において、
上記一連の歪みデータは三次元歪みデータを含む。
[6]本開示の第6の態様によれば、本開示の第1~第5のうちの1つの態様において、
1つの剪断波弾性データポイントは、上記媒体の1つの関心対象領域の複数の異なる領域をそれぞれ参照する複数の剪断波値を含み、
各領域について、上記関心対象領域の非線形剪断波弾性マップを構成するために非線形剪断波弾性パラメータが推定される。
[7]本開示の第7の態様によれば、本開示の第1~第6のうちの1つの態様において、
上記第1及び第2の集合のうちの少なくとも一方は、複数の剪断波弾性データポイントを含み、
上記計算ステップにおいて、上記第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイント間の複数の勾配が、上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算され、
上記弾性推定において、上記媒体の非線形剪断波弾性は、上記複数の勾配の関数として推定される。
[8]本開示の第8の態様によれば、本開示の第1~第7のうちの1つの態様において、
上記弾性推定ステップは、下記のサブステップ、すなわち、
上記推定された勾配
【数42】
及びそれらの統計的分散に基づいて線形最小分散推定量を生成することで、その分散に反比例する各勾配のスコア
【数43】
を推定することと、
各勾配に各スコアで重み付けすることと、
上記重み付けられた勾配及び/又は上記勾配の加重平均の関数として、最終的なNL-SWEパラメータを推定することとを含む。
[9]本開示の第9の態様によれば、本開示の第1~第8のうちの1つの態様において、
上記線形最小分散推定量は次式によって決定され、
【数44】
Varは上記分散を示し、
w
ij
は、導出される最適な重み付けスコアであり、
A
ij
は、上記勾配R
ij
から導出される非線形剪断波弾性パラメータであり、
インデックスi及びjは2つの異なるレベルの変形を表す。
[10]本開示の第10の態様によれば、本開示の第1~第9のうちの1つの態様において、
上記最小分散推定量の精度を向上させるためにギアリー=ヒンクリー変換(Geary-Hinkley
Transformation)が使用される。
[11]本開示の第11の態様によれば、本開示の第1~第10のうちの1つの態様において、
上記最適なスコアw
ij
は次式によって推定され、
【数45】
【数46】
は、上記各非線形剪断波弾性パラメータA
ij
の分散から導出されたスコアであり、
【数47】
は、上記非線形剪断波弾性パラメータA
ij
の分散推定値の逆数であり、
【数48】
は、上記非線形剪断波弾性パラメータA
mn
の分散推定値の逆数であり、
インデックスm及びnは、1≦m≦N,m<n≦Nによって、剪断波弾性データポイントの少なくとも2組のペア毎の組み合わせにわたって変動し、Nはデータポイントの個数であり、及び/又は、
最終的なNL-SWEパラメータ
【数49】
は次式によって評価される。
【数50】
[12]本開示の第12の態様によれば、本開示の第1~第11のうちの1つの態様において、
上記方法は、信頼度推定ステップをさらに含み、上記信頼度推定ステップは、
少なくとも1つのスコアと、上記非線形剪断波弾性パラメータ(A
ij
)の分散推定値
【数51】
との関数として、上記最小分散推定量
【数52】
の信頼度に関する統計モデルを決定することと、
上記非線形剪断波弾性マップの領域に係る信頼性情報を含む信頼度マップを生成することとを含む。
[13]本開示の第13の態様によれば、本開示の第1~第12のうちの1つの態様において、
あるレベルの変形から他のレベルの変形に遷移している間に、歪みデータのみが収集され、及び/又は、いかなる剪断波弾性データポイントも収集されない及び/又は上記計算ステップにおいて考慮されない。
[14]本開示の第14の態様によれば、本開示の第1~第13のうちの1つの態様において、
上記剪断波弾性データポイントを収集するために、及び/又は、上記歪みデータを収集するために、及び/又は、上記媒体に変形を適用するために、同じ超音波プローブが使用され、及び/又は、
上記剪断波弾性データポイントを収集するため及び/又は上記歪みデータを収集するために使用される超音波プローブは、上記媒体の二次元又は三次元画像データを取り込むように構成される。
[15]本開示の第15の態様によれば、本開示の第1~第14のうちの1つの態様において、
上記方法は、上記媒体に変形を適用するためにユーザがユーザインターフェースによってガイドされる、及び/又は、適用された変形の関数としてユーザが上記ユーザインターフェースからフィードバックを受ける、ガイダンス及び/又はフィードバックステップをさらに含む。
[16]本開示の第16の態様によれば、コンピュータプログラムは、データ処理システムによって実行されたとき、本開示の第1~第15のうちの1つの態様に係る方法を上記データ処理システムに実行させるコンピュータ可読命令を含む。
[17]本開示の第17の態様によれば、
媒体の非線形剪断波弾性を推定する超音波システムであって、上記システムは、
上記媒体に第1のレベルの変形が適用されるときに、上記媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第1の集合を収集し、
上記媒体に上記第1のレベルとは異なる第2のレベルの変形が適用されるときに、上記媒体の1つの剪断波弾性データポイントを含む第2の集合を収集し、
上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差を推定し、
上記第1及び第2の集合にそれぞれ属する少なくとも2つのデータポイントのデータポイント間の勾配を、上記第1及び第2のレベルの変形の間における変形の差の関数として計算し、
上記媒体の非線形剪断波弾性を上記勾配の関数として推定するように構成される。
【外国語明細書】