(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002105
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】墨出し装置と墨出し方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/18 20060101AFI20221227BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
E04G21/18 B ESW
G01C15/00 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103132
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】星野 雅一
(72)【発明者】
【氏名】佐治 竜也
(72)【発明者】
【氏名】南川 達浩
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174DA41
(57)【要約】
【課題】測量ミスと設計図面の読み出しミスを解消でき、墨出しに要する時間を短縮できる墨出し装置と墨出し方法を提供すること。
【解決手段】墨出し面Fを自走して墨出しを実行する墨出し装置30であり、制御装置20を内蔵し、制御装置20には、走行部204と、自身の位置情報を特定する位置特定部202と、墨出し元図面データを読み取る読取部203と、墨出しを実行する描画部205とが含まれ、描画部205は、描画ルール情報に基づいて、複数の部材が相互に交差する格点位置に交差形態に応じた格点マーキングm1を描画する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
墨出し面を自走して墨出しを実行する、墨出し装置であって、
制御装置を内蔵し、該制御装置には、
走行部と、自身の位置情報を特定する位置特定部と、墨出し元図面データを読み取る読取部と、墨出しを実行する描画部とが含まれ、
前記描画部は、描画ルール情報に基づいて、複数の部材が相互に交差する格点位置に交差形態に応じた格点マーキングを描画することを特徴とする、墨出し装置。
【請求項2】
前記走行部による自走の過程で、前記描画部は、前記交差形態に応じて複数の前記格点マーキング同士を繋ぐ連結線マーキングを描画することを特徴とする、請求項1に記載の墨出し装置。
【請求項3】
前記格点マーキングは、相互に交差する前記部材のサイズを含む格点スタンプと、前記格点位置に対して二つ以上の前記部材が交差する交差形態に応じた交差形態スタンプを含んでいることを特徴とする、請求項1又は2に記載の墨出し装置。
【請求項4】
前記位置特定部が、計測器のターゲットと、該計測器から送信される自身の位置データを受信する受信器を含んでいることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の墨出し装置。
【請求項5】
墨出し面に墨出し装置を自走させながら墨出しを実行する、墨出し方法であって、
前記墨出し装置に墨出し元図面データを読み取らせ、該墨出し元図面データに基づいて自身の位置情報を特定させながら該墨出し装置を自走させ、描画ルール情報に基づいて、複数の部材が相互に交差する格点位置に交差形態に応じた格点マーキングを描画させることを特徴とする、墨出し方法。
【請求項6】
請求項5に記載の墨出し方法により描画された格点マーキング同士を、二人の作業員が墨出しにより繋ぐ、もしくは、前記墨出し装置を自走させながら連結線マーキングを描画して繋ぐことを特徴とする、墨出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墨出し装置と墨出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場における床面(例えばコンクリート面)上への墨出し作業は、複数名の作業員が測量を行い、設計図面を参照しながら床面に対して通り芯の格点位置に墨出しを行い、二つの格点位置に二人の作業員が墨つぼ糸の両端を固定して張設し、墨つぼ糸を上方に引っ張った後に解放することにより、通り芯の墨出しを行っている。床面において相互に直交する多数の通り芯の墨出しが行われ、各通り芯に沿ってスタッド等の柱(間柱)等が立て込まれるランナーが床面に取り付けられることになる。例えば、相互に直交するX方向の通り芯(X1通り,X2通り,・・・)とY方向の通り芯(Y1通り,Y2通り,・・・)に沿ってそれぞれランナーが床面上に取り付けられることになる。尚、この墨出し作業には、壁や柱の建て付けのための墨出しの他に、建物の内部に設置される様々な設備の設置位置を設定するための墨出しも含まれる。
【0003】
上記墨出し作業においては、作業員が測量と設計図面の読み出しを行うことになるが、測量にはある程度の経験を要し、設計図面の読み出しにおいても知識と経験を要することから、測量ミスと設計図面の読み出しミスが課題となる。また、各通り芯に沿って取り付けられるランナー等の建材は、場所ごとにそのサイズが相違し得ることから、床面においては通り芯に応じて建材のサイズを適切に表示することが必要になり、手間のかかる作業となる。また、作業員による測量と設計図面の読み出しに基づく墨出しであることから、床面の全域に対する墨出しにはかなりの時間を要することになる。
【0004】
ここで、特許文献1には、位置決め用の墨出しを行うコンクリート表面の墨出し方法に関し、型枠を組み立てた後、コンクリートが打設されるのに先立って、組み立てられた型枠のコンクリート打設面に、硬化後のコンクリートの表面に転写可能な着色塗料を用いて、境界線、取付け位置等の位置決め用のマーキングを描いておき、打設したコンクリートが硬化した後、型枠を脱型した際に、描かれた位置決め用のマーキングを現場打ちコンクリート構造物の表面に転写させて、位置決め用の墨出しを行うコンクリート表面の墨出し方法が提案されている。
【0005】
一方、特許文献2には、建物の施工に際して基準レベルを墨出しする方法に関し、型枠工事に際して鉄筋に磁石を取り付けてその中心位置を基準レベルに合致させておき、コンクリート打設に際しては磁石をそのままコンクリート中に埋設し、仕上げ工事に際してはコンクリート表面から磁石の中心位置を検出してその検出位置を基準レベルとして、コンクリート表面にマーキングする墨出し方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-168614号公報
【特許文献2】特開2005-98750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載の墨出し方法はいずれも、作業員による基準位置の墨出しを解消する共通の特徴構成を有しているが、作業員による墨出し方法であることに代わりはなく、測量ミスと設計図面の読み出しミスに関する課題や、床面全域への墨出しに時間を要するといった課題を依然として内包している。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、測量ミスと設計図面の読み出しミスを解消でき、墨出しに要する時間を短縮できる墨出し装置と墨出し方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による墨出し装置の一態様は、
墨出し面を自走して墨出しを実行する、墨出し装置であって、
制御装置を内蔵し、該制御装置には、
走行部と、自身の位置情報を特定する位置特定部と、墨出し元図面データを読み取る読取部と、墨出しを実行する描画部とが含まれ、
前記描画部は、描画ルール情報に基づいて、複数の部材が相互に交差する格点位置に交差形態に応じた格点マーキングを描画することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、墨出し装置が、読取部にて墨出し元図面データを読み取り、位置特定部が装置自身の位置を特定し、描画するべき位置へ走行部により移動し、床面の所定位置に描画部にて墨出しを実行することにより、墨出し装置のみで床面への墨出しを行うことができ、作業員による測量ミスと設計図面の読み出しミスを解消して、墨出しに要する時間を短縮することができる。ここで、描画部による描画方法は、設定されている描画ルール情報に基づいて、複数の部材が相互に交差する格点位置に交差形態に応じた格点マーキングを描画することであるため、読取部にて墨出し元図面データを読み取った墨出し装置は、相互に交差する通り芯等の格点位置に順次移動し、各格点位置における交差形態に応じた格点マーキングを描画する。
【0011】
上記する「交差形態」とは、相互に交差する二つの部材(例えばランナー)が直交する形態、相互に交差する三つの部材(もしくは二つの部材)がTの字状に交差する形態等を例示できる。また、「描画ルール情報」は、格点位置における複数の部材の交差形態ごとに描画の種類(描画スタンプ)が設定されている情報を意味しており、例えば二部材が相互に直交する交差形態では、直交形態に対応して設定されている描画スタンプが格点位置に描画される。
【0012】
装置自身の位置情報の特定(測量に相当)と、墨出し元図面データの読み取りは、作業員に比べて装置が得意とする作業であり、ミスなく実行できることから、これらの作業に基づく各格点位置に対する格点マーキングの描画を少なくとも墨出し装置が実行することにより、高精度な墨出しを可及的短時間で行うことができる。
【0013】
ここで、各格点位置に対する格点マーキングの描画を墨出し装置が実行し、各格点マーキング同士を繋ぐ連結線マーキングの墨出しを例えば二人の作業員が行うことにより、連結線マーキングの墨出しは、墨つぼ糸を上方に引っ張った後に解放するだけで一気に実行できることから、墨出し装置の得意な墨出し作業内容と、作業員の得意(墨出し装置よりも作業員が行う方が効率的である)な墨出し作業内容を分けて実行することで、墨出しに要する時間を短縮しながら、ミスのない墨出し作業を実現することができる。
【0014】
また、本発明による墨出し装置の他の態様は、
前記走行部による自走の過程で、前記描画部は、前記交差形態に応じて複数の前記格点マーキング同士を繋ぐ連結線マーキングを描画することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、墨出し装置が、各格点位置に対する格点マーキングの描画に加えて、自走しながら各格点マーキング同士を繋ぐ連結線マーキングを描画することにより、床面への全ての墨出しを墨出し装置が全て実行することになり、作業員による墨出し作業を解消することができる。
【0016】
また、本発明による墨出し装置の他の態様において、
前記格点マーキングは、相互に交差する前記部材のサイズを含む格点スタンプと、前記格点位置に対して二つ以上の前記部材が交差する交差形態に応じた交差形態スタンプを含んでいることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、格点マーキングが、相互に交差する部材のサイズを含む格点スタンプと、格点位置に対して二つ以上の部材が交差する交差形態に応じた交差形態スタンプを含んでいることにより、墨出しに沿って部材を建て付ける際に作業員が設計と異なるサイズの部材を設置する施工ミスを解消でき、さらに、作業員が設計と異なる交差態様で部材を設置する施工ミスを解消できる。
【0018】
また、本発明による墨出し装置の他の態様において、
前記位置特定部が、計測器のターゲットと、該計測器から送信される自身の位置データを受信する受信器を含んでいることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、例えば基準位置に設けられている計測器から墨出し装置の備えるターゲット(プリズム等)に光波が照射され、ターゲットにて反射する光波を計測器が計測することにより、ターゲットとの間の距離や鉛直角度、水平角度を取得して、ターゲット(墨出し装置)の三次元位置を特定することができ、この三次元位置データを受信器が受信することで墨出し装置が自身の三次元位置情報(床面における位置情報)を特定することができる。尚、墨出し装置が例えばGPS(Global Positioning System、全地球測位システム)を備えていてもよいが、車両等の屋外における移動手段と異なり、屋根等の天井が既に施工されている下方の床面においてGPSにて三次元位置情報を取得しようとすると、十分な位置情報の取得が困難な場合が往々にしてあることから、本態様のように墨出し対象の床面の基準位置に設置されている計測器を適用するのが望ましい。
【0020】
また、本発明による墨出し方法の一態様は、
墨出し面に墨出し装置を自走させながら墨出しを実行する、墨出し方法であって、
前記墨出し装置に墨出し元図面データを読み取らせ、該墨出し元図面データに基づいて自身の位置情報を特定させながら該墨出し装置を自走させ、描画ルール情報に基づいて、複数の部材が相互に交差する格点位置に交差形態に応じた格点マーキングを描画させることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、墨出し装置を使用して、墨出し元図面データを読み取り、装置が自身の位置を特定しながら描画するべき位置へ移動し、床面の所定位置に墨出しを実行することにより、墨出し装置のみで床面への墨出しを行うことができ、作業員による測量ミスと設計図面の読み出しミスを解消して、墨出しに要する時間を短縮することができる。また、描画ルール情報に基づいて、複数の部材が相互に交差する格点位置に交差形態に応じた格点マーキングを描画することにより、墨出し装置による効率的な格点マーキングの描画が実現でき、描画ルール情報を理解している作業員は描画されている格点マーキングに基づいて設計通りのサイズの部材を設計通りの交差形態で建て付けることができる。
【0022】
また、本発明による墨出し方法の他の態様は、
前記墨出し方法により描画された格点マーキング同士を、二人の作業員が墨出しにより繋ぐ、もしくは、前記墨出し装置を自走させながら連結線マーキングを描画して繋ぐことを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、各格点位置に対する格点マーキングの描画を墨出し装置が実行し、各格点マーキング同士を繋ぐ連結線マーキングの墨出しを例えば二人の作業員が行うことにより、連結線マーキングの墨出しは、墨つぼ糸を上方に引っ張った後に解放するだけで一気に実行できることから、墨出し装置の得意な墨出し作業内容と、作業員の得意な墨出し作業内容を分けて実行することで、墨出しに要する時間を短縮しながら、ミスのない墨出し作業を実現することができる。一方、墨出し装置が、各格点位置に対する格点マーキングの描画に加えて、自走しながら各格点マーキング同士を繋ぐ連結線マーキングを描画する場合は、床面への全ての墨出しを墨出し装置が実行することになり、作業員による墨出し作業を解消することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から理解できるように、本発明の墨出し装置と墨出し方法によれば、測量ミスと設計図面の読み出しミスを解消でき、墨出しに要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る墨出し装置と計測器が墨出し対象の床面上に配設されている状態を示す図である。
【
図2】実施形態に係る墨出し装置の備える制御装置のハードウェア構成の一例を周辺機器とともに示す図である。
【
図4】描画ルール情報に含まれる格点マーキングの一例を示す図であって、(a)は格点スタンプを示す図であり、(b)乃至(d)は交差形態スタンプを示す図である。
【
図5】墨出し元図面データの一例の一部を拡大して示す図である。
【
図6】(a)、(b)、(c)はそれぞれ、
図5のVIa部、VIb部、及びVic部の格点マーキングを示す図である。
【
図7】
図5に示す墨出し元図面データに基づいて、所定位置に描画された格点マーキングを示す図である。
【
図8】
図7に示す所定位置に描画された各格点マーキングを繋ぐ、連結線マーキングをさらに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係る墨出し装置と墨出し方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0027】
[実施形態に係る墨出し装置と墨出し方法]
図1乃至
図8を参照して、実施形態に係る墨出し装置と墨出し方法の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る墨出し装置と計測器が墨出し対象の床面上に配設されている状態を示す図である。また、
図2は、実施形態に係る墨出し装置の備える制御装置のハードウェア構成の一例を周辺機器とともに示す図であり、
図3は、制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【0028】
図1に示す墨出し装置30は、墨出し元図面データを読み込み、自身の三次元位置情報を特定しながらコンクリートの床面Fを自走し、墨出し面である床面Fに墨出しを実行する装置である。
【0029】
墨出し装置30は、車輪12により走行する走行台車10を有し、走行台車10は各種機器を制御する制御装置20を内蔵している。また、走行台車10は、床面Fの基準位置Pに設置されている計測器40から照射される光波L1,L2を受ける、相互に高さの異なる複数(図示例は二つ)のターゲット14A,14Bを搭載し、さらに、計測器40から送信された走行台車10の三次元位置データを受信するアンテナ等の受信器13を搭載している。ターゲット14A,14Bは例えばプリズムにより形成され、双方の高さが異なることにより、双方のターゲット14A,14Bからの受信データを明確に区別することが可能になる。尚、相互に高さの異なる三つ以上のターゲットが走行台車10に搭載されていてもよい。
【0030】
基準位置Pは、その三次元位置情報が特定されているポイントであり、基準位置Pに設置されている計測器40はその三次元位置情報を有している。ここで、計測器40は、例えば、自走する墨出し装置30を自動追尾するトータルステーション等である。
【0031】
計測器40から照射された光波L1,L2はそれぞれ、走行する墨出し装置30のターゲット14A,14Bで反射し、反射した光波L1,L2を計測器40が受信する。受信した光波L1,L2を計測器40が計測することにより、ターゲット14との間の距離や鉛直角度、水平角度を取得して、ターゲット14(墨出し装置30)の三次元位置を特定する。
【0032】
計測器40にて特定された三次元位置データは信号Sとして計測器40から受信器13に送信され、受信器13を介して墨出し装置30は自身の三次元位置データを受信し、都度、自身の床面Fにおける位置情報を特定する。
【0033】
尚、計測器40は床面F上に複数設置されていてもよい。また、墨出し装置がGPSを備えていて、計測器による計測データを受信して自身の位置情報を特定する代わりに、GPSにて自身の位置情報を受信し、特定してもよい。
【0034】
次に、
図2及び
図3を参照して、墨出し装置30の備える制御装置20のハードウェア構成と機能構成について説明する。
【0035】
図2に示すように、制御装置20は、接続バス26により相互に接続されているCPU(Central Processing Unit)21、主記憶装置22、補助記憶装置23、通信IF(interface)24、及び入出力IF25を備えている。主記憶装置22と補助記憶装置23は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。尚、上記の構成要素はそれぞれ個別に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0036】
CPU21は、MPU(Microprocessor)やプロセッサとも呼ばれ、CPU21は、単一のプロセッサであってもよいし、マルチプロセッサであってもよい。CPU21は、コンピュータからなる制御装置20の全体の制御を行う中央演算処理装置である。CPU21は、例えば、補助記憶装置23に記憶されたプログラムを主記憶装置22の作業領域にて実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことにより、所定の目的に合致した機能を提供する。
【0037】
主記憶装置22は、CPU21が実行するコンピュータプログラムや、CPU21が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置22は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置23は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納し、外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶装置23には、例えば、OS(Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、例えば、通信IF24を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。外部装置等には、例えば、計測器40が備える通信器(いずれも図示せず)が含まれる。尚、ネットワークには、インターネット等の公衆ネットワーク、携帯電話網等の無線ネットワーク、VPN(Virtual Private Network)等の専用ネットワーク、LAN(Local Area Network)等が含まれる。
【0038】
補助記憶装置23は、例えば、主記憶装置22を補助する記憶領域として使用され、CPU21が実行するコンピュータプログラムや、CPU21が処理するデータ等を記憶する。補助記憶装置23は、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM))を含むシリコンディスク、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)装置、ソリッドステートドライブ装置等である。また、補助記憶装置23として、CDドライブ装置、DVDドライブ装置、BDドライブ装置といった着脱可能な記録媒体の駆動装置が例示され、着脱可能な記録媒体として、CD、DVD、BD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等が例示される。
【0039】
通信IF24は、制御装置20が接続するネットワークとのインターフェイスである。計測器40から送信される墨出し装置30の三次元位置データは、ネットワークを介して受信器13にて受信され、受信器13から制御装置20の通信IF24に三次元位置データが送られる。
【0040】
入出力IF25は、制御装置20に接続する機器との間でデータの入出力を行うインターフェイスである。入出力IF25には、例えば、キーボード、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイス、マイクロフォン等の入力デバイス等が接続する。制御装置20は、入出力IF25を介し、入力デバイスを操作する操作者からの操作指示等を受け付ける。
【0041】
また、入出力IF25には、例えば、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELパネル(EL:Electroluminescence)等の表示デバイス、プリンタ、スピーカ等の出力デバイスが接続される。例えば、制御装置20に読み込まれた墨出し元図面データ等が、入出力IF25を構成する表示デバイスに表示される。
【0042】
図3に示すように、制御装置20は、CPU21によるプログラムの実行等により、少なくとも、通信部201、位置特定部202、読取部203,走行部204,及び描画部205の各種機能を提供する。尚、上記処理機能の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって提供されてもよく、同様に、上記処理機能の少なくとも一部が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用LSI(large scale integration)やその他のデジタル回路等であってもよい。
【0043】
通信部201は、ネットワークを介して計測器40から受信器13に送信された、墨出し装置30の三次元位置データを受信する。
【0044】
位置特定部202は、通信部201に受信された三次元位置データに基づいて、墨出し装置30の現在の三次元位置データを都度特定する。
【0045】
読取部203は、着脱可能な記録媒体やネットワークを介した送信によって取得した墨出し元図面データに基づき、墨出し元図面データに記録されている各通り芯の位置情報や相互に交差する通り芯の格点の位置情報等(墨出し情報)を読み取る。また、読取部203は、読み取った墨出し情報に基づいて、各墨出しポイントにおける墨出しの順序を設定する。
【0046】
走行部204は、読取部203にて設定された墨出し順序と、位置特定部202により特定されている墨出し装置30の位置情報とに基づき、車輪12を駆動して所定位置へ走行台車10を走行させる。車輪12は駆動源であるモータを備えており、モータはバッテリ15を電源として駆動する。ここで、走行台車10はジャイロセンサ16とエンコーダ17を内蔵し、これらが無線もしくは有線にて制御装置20に接続されており、ジャイロセンサ16にて走行台車10の走行方向を特定し、エンコーダ17にて車輪12の回転数から走行台車10の走行距離を特定する。
【0047】
描画部205は、格納部206に格納されている描画ルール情報に基づいて、複数の部材(ランナー等の建材)が相互に交差する格点位置に、交差形態に応じた格点マーキングを描画する。また、交差形態に応じて複数の格点マーキング同士を繋ぐ連結線マーキングを描画する。尚、後者の連結線マーキングの描画は、複数の作業員が実行してもよい。
【0048】
描画部205は、描画に際して、XYZプロッター18を駆動して描画ポイントにインクジェット19を移動させ、描画ポイントにてインクジェット19を作動して描画を実行する。
【0049】
次に、
図4を参照して、描画部205が描画の際に参照する描画ルール情報について説明する。ここで、
図4は、描画ルール情報に含まれる格点マーキングの一例を示す図であり、
図4(a)は格点スタンプを示す図であり、
図4(b)乃至(d)は交差形態スタンプを示す図である。
【0050】
図4(a)に示す格点スタンプs1は、相互に交差するランナー等の部材のサイズを含んで複数の部材が交差する格点位置を示すスタンプであり、格点マーキングm1に含まれる。
【0051】
図示例の格点スタンプs1は、田の字状のスタンプであり、その内部には、この格点に交差するランナー等の部材のサイズが65mmであること示す「65」が図示されている。このサイズには、50mmや75mm、90mm、100mm等、様々なサイズがあり、読取部203にて墨出し元図面データから部材のサイズが読み取られ、田の字状のスタンプとともにサイズに相当する数字がスタンプされる。
【0052】
図4(b)に示す交差形態スタンプs2は、格点位置に対して例えば二つのランナー等の部材が相互に直交する交差形態を示すスタンプであり、これも格点マーキングm1に含まれる。図示例の交差形態スタンプs2は、L字状のスタンプである。
【0053】
図4(c)に示す交差形態スタンプs3は、格点位置に対して二つもしくは三つのランナー等の部材がT字状に交差する交差形態を示すスタンプであり、これも格点マーキングm1に含まれる。図示例の交差形態スタンプs3は、T字状のスタンプである。
【0054】
図4(d)に示す交差形態スタンプs4は、厳密には交差形態を示すものではなく、窓やドア等の開口を示すスタンプであるが、本明細書ではこのように開口を示すスタンプも形式的に交差形態スタンプに含めるものとする。図示例の開口に関する交差形態スタンプs4は、コの字状のスタンプである。
【0055】
このように、制御装置20において、読取部203にて墨出し元図面データを読み取り、描画部205にて、格納部206に格納されている描画ルール情報に含まれる格点マーキングm1(格点スタンプs1,交差形態スタンプs2~s4等)を参照して対応する格点マーキングm1を床面Fに描画する墨出しを実行する。
【0056】
次に、
図5乃至
図8を参照して、実際の墨出し元図面データに基づいて、墨出し装置30により実行される墨出方法について説明する。ここで、
図5は、墨出し元図面データの一例の一部を拡大して示す図である。また、
図6(a)、(b)、(c)はそれぞれ、
図5のVIa部、VIb部、及びVic部の格点マーキングを示す図である。さらに、
図7は、
図5に示す墨出し元図面データに基づいて、所定位置に描画された格点マーキングを示す図であり、
図8は、
図7に示す所定位置に描画された各格点マーキングを繋ぐ、連結線マーキングをさらに示す図である。
【0057】
図5に示す墨出し元図面データdには、複数のランナー等の部材が様々な態様で交差しており、また、開口部も存在している。
【0058】
制御装置20では、読取部203において、例えば
図5に示すVIa部、VIb部、及びVic部の三箇所に関し、描画ルール情報に基づいて格点マーキングを描画する。
【0059】
図5に示すVIa部は、二つのランナー等の部材が直交する態様で交差する格点位置であることから、
図6(a)に示すように、直交するランナーのサイズ65(mm)が描画された田の字状の格点スタンプs1に対して、直交態様に応じてL字状を所望に回転させた交差形態スタンプs2がさらに描画される。ここで、図示例は、交差形態を視認し易いように二つの交差形態スタンプs2を描画しているが、描画される交差形態スタンプs1は一つであってもよい。
【0060】
一方、
図5に示すVIb部は、二つのランナー等の部材がTの字状に交差する格点位置であることから、
図6(b)に示すように、Tの字状に交差するランナーのサイズ65(mm)が描画された田の字状の格点スタンプs1に対して、Tの字状の縦ラインが交差する位置(図示例では、下の位置)にTの字状の交差形態スタンプs3がさらに描画される。
【0061】
さらに、
図5に示すVIc部は、開口の左右端の場所であることから、
図6(c)に示すように、溝形鋼等により形成されるスタッドのサイズを含む二つのコの字状の交差形態スタンプs3が、双方の腹(ウェブ)同士を対向させた態様で描画される。
【0062】
図6に示す描画ルールに基づき、墨出し装置30は、設定された墨出しの順序に従って床面F上を走行しながら、
図7に示すように、床面Fの各格点位置において、交差形態に応じた格点マーキングm1を描画する。
【0063】
次に、
図8に示すように、墨出し装置30が走行しながら、床面Fに描画された各格点マーキングm1同士を繋ぐ連結線マーキングm2を描画することにより、
図5に示す墨出し元図面データに基づく床面Fへの墨出しが実行される。
【0064】
図7及び
図8に示すように、墨出し装置30が格点マーキングm1と連結線マーキングm2の全ての描画を実行することにより、作業員による墨出しを完全に解消して墨出しの完全自動化を図ることができる。従って、例えば、夜間に墨出し装置30を作動させて墨出しを実行させることにより、作業員が翌朝現場に到着した際には、床面Fにおける墨出しが完了していることになる。
【0065】
一方、
図7に示す格点マーキングm1の描画を墨出し装置30が実行し、
図8に示す連結線マーキングm2は複数の作業員が実行してもよい。各格点位置に対する格点マーキングm1の描画を墨出し装置30が実行し、各格点マーキングm1同士を繋ぐ連結線マーキングm2の墨出しを例えば二人の作業員が行うことにより、連結線マーキングm2の墨出しは、墨つぼ糸を上方に引っ張った後に解放するだけで一気に実行できることから、墨出し装置30の得意な墨出し作業内容(墨出し元図面データの読み取りと、装置自身の位置情報の特定(測量に相当)と、作業員の得意な墨出し作業内容を分けて実行することで、墨出しに要する時間を短縮しながら、ミスのない墨出し作業を実現することができる。
【0066】
いずれの方法であっても、作業員のみによる墨出しの際に課題となっている、測量ミスと設計図面の読み出しミスを解消することができ、墨出しに要する時間を短縮することができる。
【0067】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0068】
10:走行台車
12:車輪
13:受信器(アンテナ)
14A,14B:ターゲット(プリズム)
20:制御装置
30:墨出し装置
40:計測器
201:通信部
202:位置特定部
203:読取部
204:走行部
205:描画部
206:格納部
F:墨出し面(床面)
P:基準位置
m1:格点マーキング
m2:連結線マーキング
s1:格点スタンプ
s2~s4:交差形態スタンプ
d:墨出し元図面データ