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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021063
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】炭素繊維束の処理方法
(51)【国際特許分類】
   D06B 3/02 20060101AFI20230202BHJP
   D06M 15/227 20060101ALI20230202BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20230202BHJP
   D02J 1/18 20060101ALI20230202BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
D06B3/02
D06M15/227
D06M15/263
D02J1/18 Z
D06M101:40
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120793
(22)【出願日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】110128240
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】518305565
【氏名又は名称】臺灣塑膠工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 龍田
(72)【発明者】
【氏名】林 盛勳
(72)【発明者】
【氏名】李 育昇
(72)【発明者】
【氏名】鍾 淨成
(72)【発明者】
【氏名】周 政均
【テーマコード(参考)】
3B154
4L033
4L036
【Fターム(参考)】
3B154AA14
3B154AB03
3B154AB09
3B154BA19
3B154BA41
3B154BB09
3B154BB12
3B154BB32
3B154BB47
3B154BC01
3B154BD04
3B154BF01
3B154DA21
3B154DA24
4L033AB01
4L033AC12
4L033CA12
4L033CA18
4L036MA04
4L036MA33
4L036PA09
4L036PA10
4L036PA18
4L036UA21
(57)【要約】
【課題】サイズされた繊維の適切な集束性、巻き取り性及び耐摩耗性を調整することができる炭素繊維束の処理方法を提供する。
【解決手段】炭素繊維束の処理方法は、熱可塑性樹脂を含むサイジング剤を少なくとも1つの炭素繊維束に塗布する工程(i)と、炭素繊維束を熱風乾燥する工程(ii)と、及び炭素繊維束を赤外線により熱可塑性樹脂の融点以上の加熱温度で加熱する工程(iii)と、を含む。
【選択図】無
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含むサイジング剤を少なくとも1つの炭素繊維束に塗布する工程(i)と、
前記炭素繊維束を熱風乾燥する工程(ii)と、
前記炭素繊維束を、赤外線により前記熱可塑性樹脂の融点以上の加熱温度で加熱する工程(iii)と、を含む炭素繊維束の処理方法。
【請求項2】
前記工程(iii)の前記加熱温度と前記熱可塑性樹脂の前記融点との差は、5℃~50℃であることを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
変性単量体を前記熱可塑性樹脂にグラフトする工程を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項4】
前記変性単量体は、ポリオレフィン系不飽和カルボン酸、ポリオレフィン系不飽和カルボン酸エステル、ポリオレフィン系不飽和カルボン酸無水物又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項3に記載の処理方法。
【請求項5】
前記変性単量体の融点は、前記熱可塑性樹脂の前記融点よりも高く、前記工程(iii)の前記加熱温度は、前記熱可塑性樹脂の前記融点と前記変性単量体の前記融点との間にあることを特徴とする、請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
工程(iii)の前記加熱温度は、前記変性単量体の前記融点よりも高いことを特徴とする、請求項4に記載の処理方法。
【請求項7】
前記工程(ii)の前記加熱温度は、70℃~120℃であることを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項8】
前記工程(iii)の前記加熱温度は、80℃~190℃であることを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項9】
少なくとも1つの前記炭素繊維束は、複数の炭素繊維束を含むことを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項10】
前記工程(i)の後及び前記工程(ii)の前に、前記炭素繊維束が互いに分離するように、前記炭素繊維束をそれぞれ複数の溝に配置する工程を更に含むことを特徴とする、請求項9に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭素繊維束の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の連続繊維強化熱可塑性複合材料(continuous fiber reinforced thermoplastic composites;CFRTP)は、主に炭素繊維と熱可塑性樹脂により複合され、迅速な生産・製造が可能で、加工成形の多様化を可能にし、リサイクルが可能で、プロセスエネルギー消費が低いなどの利点を有し、現在の環境保護の傾向に非常に適している。
【0003】
炭素繊維は、高い比強度及び高い比弾性率、耐高温性、耐薬品性、低い摩擦係数及び高い導電性などの優れた機械的特性を有するため、航空、宇宙飛行、スポーツ用品、土木建築、電子製品、医療機器などの複合材料分野に広く適用されている。しかし、炭素繊維の生産及び加工の前に、炭素繊維について、例えば、炭素繊維を樹脂で濡らせるなどのサイジングを行う必要があり、そうでなければ、形成される複合材料に穴が発生し、複合材料の機械的特性が低下するおそれがある。また、炭素繊維の生産及び加工において、炭素繊維には、機械的摩擦によって毛羽立ち及び単糸切れなどの現象が発生しやすく、炭素繊維の性能に影響を与える。
【0004】
サイジング剤は、保護膜を形成することで炭素繊維の表面を保護し、炭素繊維の耐摩耗性及び集束性を向上させることができ、炭素繊維と樹脂との間の接合強度が向上する。従来、炭素繊維に使用されるサイジング剤は、未硬化のエポキシ樹脂であるが、通常、これらの未硬化のエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂との間の相溶性が不良であるため、複合材料の性能に影響を与える。更に、サイジング剤における未硬化のエポキシ樹脂とポリオレフィン(polyolefin)(例えば、ポリプロピレン(polypropylene)やポリエチレン(polyethylene))などの低極性の熱可塑性樹脂、及びポリフェニレンスルファイド(polyphenylene sulfide;PPS)などの低反応性の官能基化エンジニアリング樹脂とポリエーテルエーテルケトン(poly-ether-ether-ketone;PEEK)との相溶性が不良であるため、炭素繊維と熱可塑性樹脂との接合性に問題がある。
【0005】
以上から分かるように、炭素繊維と熱可塑性樹脂との接合性を向上させるために、サイジング剤をエポキシ樹脂から構造的に類似する熱可塑性樹脂に変更することができる。しかし、文献から分かるように、熱可塑性樹脂自体の長鎖によってその反応性を低くし、炭素繊維と熱可塑性樹脂との接合性を低下させる。
【0006】
現在、熱可塑性樹脂に対して良好な接合性を有し、押出成形時の炭素繊維の毛羽立ちを抑制して量産性を向上可能な共役ジエン系サイジング剤が存在する。このようなサイジング剤は、成膜性を有するため、炭素繊維の集束性を向上させると共に押出成形時の毛羽立ち現象を抑制することができるが、このようなサイジング剤の成膜性により、炭素繊維の各ストランドの重なり部分が分離しにくく、毛羽が発生することもある。
【0007】
ポリエーテルイミド(polyetherimide;PEI)、ポリイミド(polyimide;PI)、ポリアリールエーテルケトン(polyaryletherketone;PAEK)を主成分とする他のサイジング剤において、コモノマー単位のポリアリールエーテルケトンとしてフタラジノン及び4,4’-ビフェノールが使用される。しかし、ポリアリールエーテルケトンは結晶性を有するため、ポリアリールエーテルケトンの結晶性により炭素繊維を連続的に生産する時に炭素繊維の剛性が高すぎて、炭素繊維を正常に巻き取ることができず、また分繊できないなどの糸束粘り付きの問題を引き起こす。
【0008】
また、無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系サイジング剤は、炭素繊維とポリプロピレン樹脂との接合性を向上させることができるが、このようなサイジング剤は、その融点まで加熱乾燥してから降温する時に結晶化し始め、炭素繊維束が硬すぎ、後続で巻き取りにくいという問題を引き起こす。このようなサイジング剤は、乾燥温度の影響を受けて結晶を形成し、炭素繊維束の加工性及び糸広がりに影響を与えるため、このようなサイジング剤の乾燥温度を精度よく制御することは、非常に重要である。従来の熱風加熱乾燥機器は、実際の温度制御の精度が不良であり、水分の除去のみが求められるため、このようなサイジング剤の結晶化の問題を引き起こしやすいことに留意されたい。加工中の線速度、押圧ロールの圧力、糸束張力、サイジング剤含有率、サイジングタンク濃度、外部環境の温度と湿度の変化などの他の要因によって、炭素繊維束の乾燥前後での含水率の変化を引き起こすおそれがあり、熱風乾燥時に炭素繊維束の表面の実際温度を変化させ、温度の制御が不良であり、且つサイジング剤に異なる程度の結晶が生じ、更に炭素繊維束が硬すぎ、後続で巻き取りにくいという問題を引き起こし、炭素繊維束の品質制御及び後継ぎの加工に不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、上述に鑑みてなされたものであり、その目的は、炭素繊維を熱風乾燥した後に更に高精度の赤外線熱処理と組み合わせ、炭素繊維のサイジング剤の結晶化問題による炭素繊維の毛羽立ち及び硬すぎの現象を解決し、サイジング剤の成膜性が高すぎることで炭素繊維が互いに絡み合って毛羽が発生するという問題を改善し、炭素繊維の剛性及び集束性を精度よく制御する炭素繊維束の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様の炭素繊維束の処理方法は、熱可塑性樹脂を含むサイジング剤を少なくとも1つの炭素繊維束に塗布する工程(i)と、炭素繊維束を熱風乾燥する工程(ii)と、及び炭素繊維束を赤外線により熱可塑性樹脂の融点以上の赤外線加熱の加熱温度で加熱する工程(iii)とを含む。
【0011】
1つ又は複数の実施形態において、工程(iii)の加熱温度と熱可塑性樹脂の融点との差は、5℃~50℃である。
【0012】
1つ又は複数の実施形態において、変性単量体を熱可塑性樹脂にグラフトする工程が更に含まれる。
【0013】
1つ又は複数の実施形態において、変性単量体は、ポリオレフィン系不飽和カルボン酸、ポリオレフィン系不飽和カルボン酸エステル、ポリオレフィン系不飽和カルボン酸無水物又はそれらの組み合わせを含む。
【0014】
1つ又は複数の実施形態において、変性単量体の融点は、熱可塑性樹脂の融点よりも高く、且つ工程(iii)の加熱温度は、熱可塑性樹脂の融点と変性単量体の融点との間にある。
【0015】
1つ又は複数の実施形態において、工程(iii)の加熱温度は、変性単量体の融点よりも高い。
【0016】
1つ又は複数の実施形態において、工程(ii)の加熱温度は、70℃~120℃である。
【0017】
1つ又は複数の実施形態において、工程(iii)の加熱温度は、80℃~190℃である。
【0018】
1つ又は複数の実施形態において、少なくとも1つの炭素繊維束は、複数の炭素繊維束を含む。
【0019】
1つ又は複数の実施形態において、工程(i)の後及び工程(ii)の前に、炭素繊維束が互いに分離するように、炭素繊維束をそれぞれ複数の溝に配置する工程を更に含む。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示内容の記述をより詳しく且つ完全にするために、以下、本開示内容の実施態様及び具体的な実施例を例示的に説明するが、これらは本開示内容の具体的な実施例を実施又は適用する唯一の形態ではない。以下に開示される各実施例は、有益な場合に互いに組み合わせたり取り替えたりすることができ、更なる記載又は説明をすることなく、1つの実施例に他の実施例を追加してもよい。以下の説明において、読者が以下の実施例を十分に理解できるように、多くの特定の細部を詳しく説明する。しかしながら、これらの特定の細部がない場合に本開示内容の実施例を実施することができる。
【0021】
以下、一連の操作又は工程によってここで開示されている方法を説明するが、これらの操作又は工程に示される順序は、本開示内容を制限するものとして解釈すべきではない。例えば、一部の操作又は工程は、異なる順序で実施し、及び/又は他の工程と同時に実施することができる。また、示された操作、工程及び/又は特徴を全て実施しなければ本開示内容の実施形態を実現できないわけではない。また、ここで説明される各操作又は工程は、複数のサブ工程又は動作を含んでもよい。
【0022】
本開示の一態様は、工程(i)~工程(iii)が含まれる炭素繊維束の処理方法を提供する。工程(i)は、熱可塑性樹脂を含むサイジング剤を少なくとも1つの炭素繊維束に塗布することが含まれる。上記少なくとも1つの炭素繊維束は、複数の炭素繊維束を含んでよい。1つ又は複数の実施形態において、炭素繊維束は、ポリアクリルニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維及び/又はレーヨン系炭素繊維を含むが、これらに限定されない。一実施形態において、炭素繊維束は、優れた品質と生産性が実現できるポリアクリルニトリル系炭素繊維である。炭素繊維の形態は、特に制限されず、単糸直径が3μm~10μmの炭素繊維束を含むが、これらに限定されない。各炭素繊維束における炭素繊維の単糸本数は、特に制限されず、例えば1000~100000本であってよい。1つ又は複数の実施形態において、炭素繊維強化複合材料を形成する場合、まず、炭素繊維束と樹脂との親和性又は接合性を向上させるために炭素繊維束に表面処理を行ってよい。表面処理は、炭素繊維束を酸性又はアルカリ性の電解液に入れて電解酸化処理を行い、又は炭素繊維束に気相又は液相の酸化処理を行うことを含むが、これらに限定されない。
【0023】
本開示のサイジング剤は、結晶性を有する高分子樹脂を含み、即ち、特定の温度で結晶化して成膜する。このような結晶性を有する高分子樹脂は、例えばポリオレフィン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリアミド、ポリフェニレンスルファイド又はそれらの組み合わせを含む。ポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体及び/又はエチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体などの熱可塑性樹脂を含むが、これらに限定されない。ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを含むが、これらに限定されない。ポリアミドは、ポリフタルアミドを含むが、これに限定されない。
【0024】
1つ又は複数の実施形態において、熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂にグラフトされる変性単量体を更に含む。変性単量体は、ポリオレフィン系不飽和カルボン酸、ポリオレフィン系不飽和カルボン酸エステル、ポリオレフィン系不飽和カルボン酸無水物又はそれらの組み合わせを含んでよい。ポリオレフィン系不飽和カルボン酸は、メタクリル酸(methacrylic acid)、マレイン酸(maleic acid)、フマル酸(fumaric acid)、テトラヒドロフタル酸(tetrahydrophthalic acid)、イタコン酸(itaconic acid)、シトラコン酸(citraconic acid)、クロトン酸(crotonic acid)及び/又はイソクロトン酸(isocrotonic acid)を含むが、これらに限定されない。ポリオレフィン系不飽和カルボン酸エステルは、ポリオレフィン系不飽和カルボン酸のメチル、エチル又はプロピルのモノエステル又はジエステルを含むが、これらに限定されない。ポリオレフィン系不飽和カルボン酸無水物は、無水ナジック酸(nadic anhydride)、無水マレイン酸(maleic anhydride)及び/又は無水シトラコン酸(citraconic anhydride)を含むが、これらに限定されない。
【0025】
1つ又は複数の実施形態において、サイジング剤は、サイジング剤がエマルション、懸濁物又は溶液を形成するように、例えば界面活性剤、平滑剤、乳化剤などの添加剤を更に含んでよい。1つ又は複数の実施形態において、サイジング剤は、サイジング剤における熱可塑性樹脂の濃度を調整するために水を更に含んでもよく、例えば熱可塑性樹脂の濃度を0.1質量%~10質量%に調整し、炭素繊維束がサイジング剤に十分に浸透することを促進する。上記濃度の調整は、単一希釈又は複数回希釈であってよい。
【0026】
一実施形態において、サイジングタンクの入口及び出口にそれぞれ少なくとも1つの溝付き槽を設置すると共に、炭素繊維束が互いに分離するように炭素繊維束を溝付き槽の複数の溝に配置してもよく、これによって、炭素繊維束の進行方向を平行に維持しながら炭素繊維束の良好な分離を確保するように、炭素繊維束がサイジングタンクに入る前、及びサイジングタンクから出た後に溝付き槽を通過することを確保することができる。
【0027】
続いて、工程(ii)を実施し、炭素繊維束を熱風乾燥する。1つ又は複数の実施形態において、空気又は窒素雰囲気で、炭素繊維束を例えば熱風オーブンのような熱風乾燥機に入れ、70℃~120℃で炭素繊維束を熱風乾燥する。熱風乾燥によっては、サイジング剤の水分のほとんどを除去することができる。
【0028】
一実施形態において、熱風乾燥機の入口及び出口にそれぞれ少なくとも1つの溝付き槽を設置すると共に、炭素繊維束が互いに分離するように炭素繊維束を溝付き槽の複数の溝に配置してもよく、これによって、炭素繊維束の進行方向を平行に維持しながら炭素繊維束の良好な分離を確保するように、炭素繊維束が熱風乾燥機に入る前、及び熱風乾燥機から出た後に溝付き槽を通過することを確保することができる。
【0029】
1つ又は複数の実施形態において、サイジング剤が溝切りホイールに蓄積するのを防ぐと共に炭素繊維束が溝切りホイールを通過する時に摩擦により毛羽が発生することを減少するために、溝切りホイールの溝深さを3mmに設計して炭素繊維束が溝切りホイールの異なるトレンチにまたがるのを防ぐことができる。溝切りホイールのトレンチは、炭素繊維束の大きさを変化させることを防ぐために、平底に設計することができる。溝切りホイールの溝壁曲がり角は、炭素繊維束の進行方向を制御しながら炭素繊維束が進行時にずれることを防ぐために、直角に設計することができる。溝切りホイールに表面処理を行うことができ、溝切りホイールの表面の算術平均粗さ(roughness average)が0.6~0.8になるようにカーボランダムを吹き付けること、及び/又は溝切りホイールの表面にクロム層をめっきすることを含むが、これらに限定されない。クロム層の厚さは、例えば0.08~0.1mmであってもよく、クロム層のロックウェルスケール(Rockwell scale)は、例えば55~60HRCであってもよい。
【0030】
1つ又は複数の実施形態において、工程(ii)を行う時、炭素繊維束の張力は、1000cN/tex~1500cN/texに設定される。炭素繊維束の張力は、張力計によって測定することができる。炭素繊維束の張力が1500cN/texよりも大きい場合、炭素繊維を過度に収縮させ、炭素繊維の糸幅の不十分を招き、且つ炭素繊維がローラに過度に摩擦することによって炭素繊維の糸切れ又は毛羽立ち問題を引き起こす。一方、炭素繊維束の張力が1000cN/texよりも小さい場合、炭素繊維束を溝切りホイールのトレンチに位置決めするか又は固定することができない。炭素繊維束の張力を制御する方法は、前後の溝切りホイールの駆動速度比率を制御することにより炭素繊維束の張力を制御することを含むが、これに限定されない。
【0031】
続いて、工程(iii)を実施し、炭素繊維束を赤外線で加熱する。幾つかの実施形態において、工程(ii)の加熱温度と工程(iii)の加熱温度は、同じであってもよく、異なってもよく、例えば差が0~40℃である。一実施形態において、工程(iii)の加熱温度は、80℃~190℃である。赤外線での加熱温度の制御は、サイジング剤の融点によるものであり、赤外線加熱の加熱温度は、熱可塑性樹脂の融点以上であることに留意されたい。赤外線加熱の加熱温度が熱可塑性樹脂の融点よりも高い実施形態において、工程(iii)の温度と熱可塑性樹脂の融点との差は、5℃~50℃であってよく、好ましくは10℃~30℃、例えば20℃又は25℃である。炭素繊維束を赤外線で加熱することで炭素繊維束の剛性を調整することができる。例えば、炭素繊維束の剛性を増加しようとすれば、工程(iii)の温度は、サイジング剤の融点を超える必要がある。一方、炭素繊維束の剛性を低下させようとすれば、工程(iii)の温度は、サイジング剤の融点未満とする必要がある。
【0032】
熱可塑性樹脂が熱可塑性樹脂にグラフトされる変性単量体を更に含む実施形態において、変性単量体の融点は、熱可塑性樹脂の融点よりも高く、且つ工程(iii)の加熱温度は、熱可塑性樹脂の融点と変性単量体の融点との間にあってもよい。別の実施形態において、工程(iii)の加熱温度は、変性単量体の融点よりも高くてもよく、且つ工程(iii)の温度と変性単量体の融点の差は、5℃~10℃であってもよい。
【0033】
工程(iii)は、例えば赤外線オーブンなどの赤外線乾燥機で炭素繊維束を加熱することを含む。幾つかの実施形態において、赤外線乾燥機において、例えばハロゲンランプによって赤外線を発して炭素繊維束を加熱することができる。幾つかの実施形態において、赤外線の波長は、2μm~4μmであることが好ましい。一実施形態において、炭素繊維束が互いに摩擦して毛羽が発生することを防ぐために、赤外線乾燥機の後方にカード機を設置し、熱風乾燥機の最後の溝切りホイールを利用してカード機と共に糸道を安定させる。一実施形態において、熱風乾燥機と赤外線乾燥機との間の温度干渉を回避し、操作を容易にするために、熱風乾燥機の出口と赤外線乾燥機の入口との間隔は、少なくとも1mである。工程(iii)の滞留時間は30~90秒であり、好ましくは50~60秒である。
【0034】
工程(iii)の後に、方法は、炭素繊維束を巻き取ることが更に含まれる。生産中の巻き取り及び後継ぎの複合材料の加工と適用において、炭素繊維束の剛性は、50~100gである必要があり、好ましくは70~90gである。炭素繊維の剛性が高すぎると、炭素繊維束を巻き取りにくくなり、後で複合材料を形成する時に糸の広がりと浸透に不利である。炭素繊維束の剛性が低過ぎると、サイジング剤の成膜性が低過ぎ、サイジング剤の炭素繊維束への保護性が不十分であり、炭素繊維束の集束性が低下する。
【0035】
以下の実施例は、本開示の特定の態様を詳しく説明し、当業者が本開示を実施するために使用される。ただし、以下の実施例は、本開示を制限するものではない。
【0036】
サイジング液は、高分子水性のサイジング液であり、ここで三井化学により提供されるポリオレフィン系サイジング液A及びサイジング液Bである。サイジング液A及びサイジング液Bは、熱可塑性樹脂(融点が80℃又は100℃であり、具体的な構造に応じて設定される)及び熱可塑性樹脂にグラフトされる変性単量体(融点が100℃又は130℃であり、具体的な構造に応じて設定される)を有する。サイジング液A及びサイジング液Bの組成は、中華民国特許番号TWI703246Bを参照することができ、ここで援用によりその全体が本明細書に組み込まれる。炭素繊維束は、フォルモサ・プラスチックスの慣用の炭素繊維仕様TC24K-35Rが採用される。以下の実施例の前に、まず、600℃、滞留時間180秒の条件下で炭素繊維束の表面に従来のエポキシ樹脂系サイジング剤を除去し、更に本開示の炭素繊維束の処理方法を行う。
【0037】
実施例1:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間であり、サイジング張力を800cNに低下させた条件で、濃度が3.2%のサイジング液Aに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで120℃で3分間乾燥し、更に赤外線加熱器により100℃で0.9分間処理した。得られた炭素繊維束の集束性が良く、耐毛羽立ち性に優れ、剛性が90gであった。
【0038】
実施例2:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間であり、サイジング張力が800cNである条件で、濃度が3.2%のサイジング液Aに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで120℃で3分間乾燥し、更に赤外線加熱器により90℃で0.9分間処理した。得られた炭素繊維束の集束性が良く、耐毛羽立ち性に優れ、剛性が84gであった。
【0039】
実施例3:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間であり、サイジング張力が1000cNである条件で、濃度が3.2%のサイジング液Aに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで100℃で3分間乾燥し、更に赤外線加熱器により100℃で0.9分間処理した。得られた炭素繊維束の集束性が良く、耐毛羽立ち性に優れ、剛性が91gであった。
【0040】
実施例4:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間であり、サイジング張力が1000cNである条件で、濃度が3.2%のサイジング液Aに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで100℃で3分間乾燥し、更に赤外線加熱器により140℃で0.9分間処理した。得られた炭素繊維束の集束性が高すぎ、耐毛羽立ち性に優れ、剛性が141gであった。
【0041】
実施例5:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間であり、張力が1000cNである条件で、濃度が3.2%のサイジング液Bに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで100℃で3分間乾燥し、更に赤外線加熱器により100℃で0.9分間処理した。得られた炭素繊維束の集束性が良く、耐毛羽立ち性に優れ、剛性が75gであった。
【0042】
実施例6:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間であり、張力が1000cNである条件で、濃度が3.2%のサイジング液Bに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで120℃で3分間乾燥し、更に赤外線加熱器により110℃で0.9分間処理した。得られた炭素繊維束の集束性が良く、耐毛羽立ち性に優れ、剛性が85gであった。
【0043】
実施例7:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間であり、張力が1000cNである条件で、濃度が3.2%のサイジング液Bに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで100℃で3分間乾燥し、更に赤外線加熱器により120℃で0.9分間処理した。得られた炭素繊維束の集束性が良く、耐毛羽立ち性に優れ、剛性が98gであった。
【0044】
実施例8:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間であり、張力が1000cNである条件で、濃度が3.2%のサイジング液Bに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで100℃で3分間乾燥し、更に赤外線加熱器により140℃で0.9分間処理した。得られた炭素繊維束の集束性が高すぎ、耐毛羽立ち性に優れ、剛性が152gであった。
【0045】
比較例1:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が0.6m/分間である条件で、濃度が3.2%のサイジング液Aに約60秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで100℃で5分間乾燥した。得られた炭素繊維束の集束性が良く、耐毛羽立ち性に優れ、剛性が80gであった。
【0046】
比較例2:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間である条件で、濃度が3.2%のサイジング液Aに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで100℃で3分間乾燥した。得られた炭素繊維束の集束性が低く、耐毛羽立ち性が不良であり、剛性が15gであった。水分が除去されただけで、温度が結晶成膜温度に達しておらず、耐毛羽立ち性、剛性が不良だった。
【0047】
比較例3:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が0.6m/分間である条件で、濃度が3.2%のサイジング液Aに約60秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで120℃で5分間乾燥した。得られた炭素繊維束の集束性が高く、耐毛羽立ち性に優れ、剛性が113gであった。
【0048】
比較例4:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間であり、摩擦を減少するようにサイジング張力を800cNに低下させた条件で、濃度が3.2%のサイジング液Aに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで120℃で3分間乾燥した。得られた炭素繊維束の集束性が低く、耐毛羽立ち性が不良であり、剛性が30gであった。乾燥後に滞留時間が結晶成膜にとって不十分であり、耐毛羽立ち性、剛性が不良だった。
【0049】
比較例5:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間であり、摩擦を減少するようにサイジング張力を800cNに低下させた条件で、濃度が3.2%のサイジング液Aに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで140℃で3分間乾燥した。得られた炭素繊維束の集束性が高すぎ、耐毛羽立ち性が良く、剛性が127gであった。乾燥後に結晶成膜し、剛性が高すぎた。
【0050】
比較例6:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間であり、摩擦を減少するようにサイジング張力を800cNに低下させた条件で、濃度が3.2%のサイジング液Aに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで160℃で3分間乾燥した。得られた炭素繊維束の集束性が高すぎ、耐毛羽立ち性が良く、剛性が151gであった。乾燥後に結晶成膜が良好であり、剛性が高すぎた。
【0051】
比較例7:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間であり、摩擦を減少するようにサイジング張力を800cNに低下させた条件で、濃度が3.2%のサイジング液Aに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで160℃で3分間乾燥し、更に赤外線加熱器により100℃で0.9分間処理した。得られた炭素繊維束の集束性が高すぎ、耐毛羽立ち性が良く、剛性が155gであった。乾燥後に結晶成膜が良好であり、剛性が高すぎた。
【0052】
比較例8:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間である条件で、濃度が3.2%のサイジング液Bに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで100℃で3分間乾燥した。得られた炭素繊維束の集束性が低く、耐毛羽立ち性が不良であり、剛性が37gであった。水分が除去されただけで、温度が結晶成膜温度に達しておらず、耐毛羽立ち性、剛性が不十分である。
【0053】
比較例9:デサイズされた炭素繊維束を、線速度が1.0m/分間である条件で、濃度が3.2%のサイジング液Bに約36秒間浸漬し、押圧ローラによって余分なサイジング剤と水分を除去した。オーブンで120℃で3分間乾燥した。得られた炭素繊維束の集束性が高く、耐毛羽立ち性が良く、剛性が110gであった。オーブンの温度が高すぎたため、サイジング液全体が結晶成膜し、赤外線加熱器による調整の余裕がなかった。
【0054】
上記の実施例と比較例の関わる処理条件及び試験結果は、それぞれ表1及び表2に記載される。サイジング剤の融点は、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry,DSC)によって測定された。熱風乾燥前後及び赤外線熱処理前後の炭素繊維束の含水率の計算式は、含水率=(W1-W2)/W2*100%であり、W1は、サイジング・押圧後の湿った炭素繊維束の重量であり、W2は、105℃で水を30分間除去した後の炭素繊維束の重量である。炭素繊維束の糸束温度は、赤外線熱画像装置によって熱風オーブンの上層の出口で測定され、ブランドFLIR(メーカーTeledyne FLIR LLC) C3又はそれ以上のグレードの機器を使用することができる。サイジング剤の含有率(sizing pick-up;SPU)の計算式は、サイジング剤の含有率=(W3-W4)/W4*100%であり、W3は、巻き取り長さが1mである炭素繊維束の重量であり、W4は、巻き取られた炭素繊維束を400℃の高温炉に40分間置いた後に冷却して秤量した数値である。
【0055】
摩耗性は、炭素繊維束の毛羽を収集することで判断することができ、その検出方法は、糸出張力が600cNである条件下で、検出される炭素繊維束に、特別な表面処理がなく伝動がない7つの金属ローラを通過させて30メートル進行させ、出口に上下少なくとも2つのスポンジパッドを設置することで炭素繊維束の摩耗による毛羽を収集し、蓄積された毛羽を105℃で40分間乾燥した後に秤量し、毛羽の重量単位がmgである。
【0056】
炭素繊維の剛性試験方法は、炭素繊維を2つの架台で構成された隙間の上方に広げ、力を加えて炭素繊維を折り曲げ、炭素繊維の折り曲げに成功した場合に必要な力(単位:g)を記録し、この力は炭素繊維の硬さである。
【0057】
実施例1~実施例8において、炭素繊維束を熱風乾燥した後に更に赤外線熱処理と組み合わせて、赤外線加熱の加熱温度が熱可塑性樹脂の融点以上であった。表1から分かるように、実施例1~実施例8は、良好な集束性を有し、摩耗性に問題がなく、且つ剛性が適切であり、後継ぎの巻き取り及び炭素繊維束の品質制御及び後継ぎの加工に有利である。
【0058】
逆に、比較例1~6及び比較例8~9において、炭素繊維を熱風乾燥した後に後継ぎの赤外線熱処理が全くなく、表1から分かるように、その集束性が殆ど良くなく、一部の比較例において、摩耗性問題があり、且つ剛性が低過ぎるか高すぎ、後継ぎの巻き取り、炭素繊維束の品質制御及び後継ぎの加工に不利である。また、比較例7において、炭素繊維束を熱風乾燥した後に後継ぎの赤外線熱処理を行ったが、比較例7の熱風乾燥温度が高すぎるため(160℃)、炭素繊維束の剛性が非常に高くなり、後継ぎの加工に不利である。
【表1】

【表2】
【0059】
表1及び表2における集束性は、10mmの平均糸幅あたりの炭素繊維束の硬さを用いて評価され、単位がg/10mmである。集束性>12g/mmは、集束性が高すぎる(「◎+」で示される)と見なすことができ、炭素繊維の糸の広がりが困難であるという問題をもたらす。集束性=10~12g/mmは、集束性が高い(「◎」で示される)と見なすことができ、炭素繊維の糸の広がりが容易ではないという問題をもたらす。集束性=6~9g/mmは、集束性が良い(「○」で示される)と見なすことができ、後継ぎの加工処理及び適用に有利である。集束性<6g/mmは、集束性が悪い(「X」で示される)と示し、後継ぎの適用に不利である。
【0060】
以上、本開示の炭素繊維束の製造方法は、炭素繊維を熱風乾燥した後に更に高精度の赤外線熱処理と組み合わせ、炭素繊維のサイジング剤の結晶化問題による炭素繊維の毛羽立ち及び硬すぎの現象を解決し、サイジング剤の成膜性が高すぎることで炭素繊維が互いに絡み合って毛羽が発生するという問題を改善し、炭素繊維の剛性及び集束性を精度よく制御する。
【0061】
当業者が本開示の態様をより良く理解できるように、上記内容をもって複数の実施例又は実例の特徴を概説した。当業者であれば、本明細書に紹介された実施形態と同じ目的を実施する、及び/又は同じ利点を達成するための他のプロセス及び構造を設計又は修正する基礎として本開示を容易に使用することができると理解すべきである。当業者であれば、これらの等価構造が本開示の精神及び範囲から逸脱しておらず、且つ本開示の精神及び範囲から逸脱しない限り、本明細書に種々な変化、置換や変更を行うことができると同時に理解すべきである。