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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021066
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】多層印刷回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20230202BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20230202BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20230202BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 Q
H05K3/46 B
H05K1/02 C
H05K1/11 H
H05K3/40 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022120997
(22)【出願日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】FR2108248
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】511148123
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーピー ジョフロア
(72)【発明者】
【氏名】ミショー ピエール-イヴ
【テーマコード(参考)】
5E316
5E317
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA35
5E316AA42
5E316CC32
5E316CC34
5E316DD32
5E316EE01
5E316FF01
5E316FF07
5E316GG15
5E316GG22
5E316GG28
5E316HH06
5E316HH22
5E316HH24
5E316HH32
5E316HH33
5E316JJ03
5E317AA24
5E317BB12
5E317CC51
5E317CD25
5E317CD27
5E317CD32
5E317CD34
5E317GG11
5E317GG16
5E338AA03
5E338BB13
5E338BB14
5E338BB16
5E338CC10
5E338EE24
5E338EE32
(57)【要約】
【課題】多層印刷回路基板を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態は、電子コンポーネント(304)を接続するように意図された多層印刷回路基板(10)であって、複数の導電層(100)の積層体を含み、導電層(100)は、2つの表面層(101)と、1つ又は複数の内部層(102)とを含み、基板(10)は、1つ又は複数の端ぐり孔(202)を含み、それぞれの端ぐり孔(202)は、2つの表面層(101)の1つの上に開放している、金属化を有する部分(2021)と、他の表面層(101)上に開放している、金属化を有しない部分(2022)とを含み、多層印刷回路基板(10)は、有利には、1つ又は複数の金属パッド(301)を含み得、それぞれの金属パッド(301)は、対応する端ぐり孔(202)の金属化を有しない部分(2022)を隠蔽するように2つの表面層(101)の1つに結合される、多層印刷回路基板(10)を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子コンポーネント(304)を接続するように意図された多層印刷回路基板(10)であって、複数の導電層(100)の積層体を含み、前記導電層(100)は、2つの表面層(101)と、1つ又は複数の内部層(102)とを含み、2つの隣接する導電層(100)間の分離は、電気絶縁層(120)によって確保され、前記印刷回路基板は、1つ又は複数の端ぐり孔(202)を含み、それぞれの端ぐり孔(202)は、前記2つの表面層(101)の1つを1つ又は複数の内部層(102)に電気的に接続するように構成され、且つ前記2つの表面層(101)の1つの上に開放している、金属化を有する部分(2021)と、他の表面層(101)上に開放している、金属化を有しない部分(2022)とを含み、端ぐり孔(202)の前記金属化を有する部分(2021)及び前記金属化を有しない部分(2022)は、層積層平面に垂直な方向に延在する、多層印刷回路基板(10)において、1つ又は複数の金属パッド(301)を更に含み、それぞれの金属パッド(301)は、対応する端ぐり孔(202)の前記金属化を有しない部分(2022)を隠蔽するように前記2つの表面層(101)の1つに結合されることを特徴とする多層印刷回路基板(10)。
【請求項2】
寄生電磁放射は、前記端ぐり孔(202)の内側に形成される傾向があることと、前記金属パッド(301)は、前記端ぐり孔(202)からの前記寄生電磁放射の伝播を少なくとも部分的に阻止するように選択されることとを特徴とする、請求項1に記載の多層印刷回路基板(10)。
【請求項3】
寄生電磁放射は、前記端ぐり孔(202)内に貫通する傾向があることと、前記金属パッド(301)は、前記端ぐり孔(202)内への前記寄生電磁放射の伝播を少なくとも部分的に阻止するように選択されることとを特徴とする、請求項1又は2に記載の多層印刷回路基板(10)。
【請求項4】
金属パッド(301)の幾何学的特性は、前記対応する端ぐり孔(202)内に形成され、且つ/又はその中に貫通する傾向がある前記寄生電磁放射の1つ又は複数の特性に応じて選択されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の多層印刷回路基板(10)。
【請求項5】
金属パッド(301)の電気特性は、前記対応する端ぐり孔(202)内に形成され、且つ/又はその中に貫通する傾向がある前記寄生電磁放射の1つ又は複数の特性に応じて選択されることを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の多層印刷回路基板(10)。
【請求項6】
前記金属パッド(301)は、同一であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層印刷回路基板(10)。
【請求項7】
前記金属パッド(301)は、電源を必要としない受動型コンポーネントであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層印刷回路基板(10)。
【請求項8】
多層印刷回路基板(10)を製造し、且つコンポーネントを追加するプロセスであって、前記多層印刷回路基板(10)は、電子コンポーネント(304)を接続するように意図される、プロセスにおいて、
- 複数の導電層(100)の積層体を生成するステップ(51)であって、前記導電層(100)は、2つの表面層(101)と、1つ又は複数の内部層(102)とを含み、2つの隣接する導電層(100)間の分離は、絶縁層(120)によって確保される、ステップ(51)、
- 1つ又は複数の金属化されたスルーホール(201)によって前記導電層(100)間に電気接続を生成するステップ(52)、
- 少なくとも1つの金属化されたスルーホール(201)を端ぐり孔(202)に、前記端ぐり孔(202)を樹脂プラグで充填することなく変換するステップ(53)であって、前記端ぐり孔(202)は、前記2つの表面層(101)の1つの上に開放している、金属化を有する部分(2021)と、他の表面層(101)上に開放している、金属化を有しない部分(2022)とを含み、端ぐり孔(202)の前記金属化を有する部分(2021)及び前記金属化を有しない部分(2022)は、層積層平面に垂直な方向に延在する、ステップ(53)、
- 前記2つの表面層(101)の少なくとも1つの上に電気トラック(302)及び接続パッド(303)を生成するステップ(54)
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項9】
- 1つ又は複数の金属パッド(301)を1つ又は両方の表面層(101)に結合するステップ(55)であって、それぞれの金属パッド(301)は、対応する端ぐり孔(202)の前記金属化を有しない部分(2022)を隠蔽するように結合される、ステップ(55)、
- 1つ又は複数の電子コンポーネント(304)を、1つ又は両方の表面層(101)に属する接続パッド(303)に結合するステップ(56)
を更に含むことを特徴とする、請求項8に記載の多層印刷回路基板(10)を製造し、且つコンポーネントを追加するプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電子システムのための印刷回路基板に関し、より詳細には、多層印刷回路基板及び多層印刷回路基板を製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子システムは、従来、そのシステムの容積及び電力消費に影響を及ぼす複雑な処理動作を実装している。例えば、レーダータイプの電子システムの動作は、一般に、専用のアンテナを装備した送信モジュールによって空間を通して送信される、生成された電磁信号に基づく。レーダーは、ターゲットによって反射された電磁信号を検出するように意図された受信モジュールと、検出された信号に基づいて、その位置及びその運動の速度など、ターゲットに関する情報を判定するように意図された処理モジュールとを更に含む。
【0003】
レーダーは、地上に固定され得るか、地上車両又は船舶若しくはボートに搭載して配置され得るか、或いは航空機によって空中に存在し得る。いずれの場合にも、レーダーは、特に容積に関連する多くの制約を満たさなければならない。具体的には、例えば、AESAレーダー(AESAは、アクティブ電子走査アレイを表す)の分野では、機能は、レーダーのアンテナ部分内に一層統合されつつある。当初、マイクロ波機能(信号の送信及び受信並びに補助機能)に限定されていたが、レーダーのアンテナ部分は、現在、信号に適用されるデジタル処理動作の増え続ける割合をホストティングすることが期待されている。加えて、レーダーは、一層小さく且つ/又は機動的なものになりつつある対象のターゲットに適合するために、一層多くの機能を実装する能力を有しなければならない。
【0004】
レーダー内における容積制約を満たすために、複数の電子コンポーネントをそれぞれ含む1つ又は複数の単層印刷回路基板を使用することが知られている。所与の印刷回路基板の電子コンポーネントは、レーダーの動作で必要とされる様々な信号に対して電子機能を実行するように、電気トラックによって且つ所与の回路図に従って電気的に接続される。このような電子機能は、例えば且つ限定を伴うことなく、信号の生成、フィルタリング、変調及び周波数転移を含む。従って、単層印刷回路基板の電気トラックによって搬送される電気信号は、様々な形態(デジタル又はアナログ)、様々な周波数(ベースバンド信号及び高周波信号)及び/又は様々な電力を有することができる。しかし、単層印刷回路基板の寸法は、単層印刷回路基板上に配置される様々な電子コンポーネントを接続する電気トラックの数及び長さに強力に関連する。この結果、単層印刷回路基板は、多数の電子コンポーネントを必要とする多数の電子機能を内蔵する現在のレーダーに適合しない。
【0005】
レーダーにおける単層印刷回路基板の使用に関連する制限を軽減するために、複数の層(2つの表面層及び1つ又は複数の内部層)の積層体を含む多層印刷回路基板を使用することが知られている。この場合、電子コンポーネントは、多層印刷回路基板の1つ又は複数の層内に生成された電気トラックにより、他の電子コンポーネントに接続することができる。これを実行するために、一般的には、金属化された孔が多層印刷回路基板の様々な層間の電気接続を確保するために使用される。多層印刷回路基板のすべての層を電気的に接続するために、例えば金属化されたスルーホールを使用することができる。2つの表面層の1つを1つ又は複数の内部層に電気的に接続するために、金属化された端ぐり孔を使用することも知られている。一般に、端ぐり孔は、有用な信号の反射及び/又は歪をもたらす特定の現象の原因となる未使用の又は有用ではない金属化を除去することにより、金属化されたスルーホールから生成される。しかし、特定の場合、端ぐりは、多層印刷回路基板で利用される特定の電子コンポーネントの動作を局所的に劣化させ得る寄生電磁放射の発生源となり得る。
【0006】
図1には、寄生電磁放射を防止するための1つの既知の解決策が示されている。このような既知の解決策は、非導電性樹脂でそれぞれの端ぐり孔を充填するステップと、表面実装電子コンポーネント間に金属相互接続トラックを生成するために利用されるものに類似したプロセスを使用して堆積された金属化により、このように充填された端ぐり孔を塞ぐステップとを含む。しかし、このような既知の解決策は、実装が複雑であり、且つ多層印刷回路基板の製造の歩留まりをかなり低減させる。具体的には、樹脂フィラーは、金属化されたスルーホールなどの他のタイプの金属化された孔内に容易に貫通し得、従ってそれらから樹脂を除去するために更なるステップが必要とされる。更に、閉塞金属化の生成は、更なる金属層が多層印刷回路基板の表面層上に堆積されることを必要とし、この場合、最終的な金属化の厚さが結果として大きくなり、且つ薄さ及びエッチング公差を低減させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、改善された多層印刷回路基板に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、電子コンポーネントを接続するように意図された多層印刷回路基板であって、複数の導電層の積層体を含み、導電層は、2つの表面層と、1つ又は複数の内部層とを含み、2つの隣接する導電層間の分離は、電気絶縁層によって確保され、印刷回路基板は、1つ又は複数の端ぐり孔を含み、それぞれの端ぐり孔は、2つの表面層の1つを1つ又は複数の内部層に電気的に接続するように構成され、且つ2つの表面層の1つの上に開放している、金属化を有する部分と、他の表面層上に開放している、金属化を有しない部分とを含み、端ぐり孔の金属化を有する部分及び金属化を有しない部分は、層積層平面に垂直な方向に延在する。有利には、多層印刷回路基板は、1つ又は複数の金属パッドを更に含み、それぞれの金属パッドは、対応する端ぐり孔の金属化を有しない部分を隠蔽するように2つの表面層の1つに結合される、多層印刷回路基板を提供する。
【0009】
一実施形態では、寄生電磁放射は、端ぐり孔の内側に形成される傾向があり、及び金属パッドは、端ぐり孔からの寄生電磁放射の伝播を少なくとも部分的に阻止するように選択され得る。
【0010】
別の実施形態では、寄生電磁放射は、端ぐり孔内に貫通する傾向があり、及び金属パッドは、端ぐり孔内への寄生電磁放射の伝播を少なくとも部分的に阻止するように選択され得る。
【0011】
有利には、金属パッドの幾何学的特性は、対応する端ぐり孔内に形成され、且つ/又はその中に貫通する傾向がある寄生電磁放射の1つ又は複数の特性に応じて選択され得る。
【0012】
一変形形態として、金属パッドの電気特性は、対応する端ぐり孔内に形成され、且つ/又はその中に貫通する傾向がある寄生電磁放射の1つ又は複数の特性に応じて選択され得る。
【0013】
一実施形態では、金属パッドは、同一であり得る。
【0014】
別の実施形態では、金属パッドは、電源を必要としない受動型コンポーネントであり得る。
【0015】
多層印刷回路基板を製造し、且つコンポーネントを追加するプロセスであって、多層印刷回路基板は、電子コンポーネントを接続するように意図される、プロセスが更に提供される。有利には、プロセスは、
- 複数の導電層の積層体を生成するステップであって、導電層は、2つの表面層と、1つ又は複数の内部層とを含み、2つの隣接する導電層間の分離は、絶縁層によって確保される、ステップ、
- 1つ又は複数の金属化されたスルーホールによって導電層間に電気接続を生成するステップ、
- 少なくとも1つの金属化されたスルーホールを端ぐり孔に変換するステップであって、端ぐり孔は、2つの表面層の1つの上に開放している、金属化を有する部分と、他の表面層上に開放している、金属化を有しない部分とを含み、端ぐり孔の金属化を有する部分及び金属化を有しない部分は、層積層平面に垂直な方向に延在する、ステップ、
- 2つの表面層の少なくとも1つの上に電気トラック及び接続パッドを生成するステップ
を含む。
【0016】
有利には、多層印刷回路基板を製造し、且つコンポーネントを追加するプロセスは、
- 1つ又は複数の金属パッドを1つ又は両方の表面層に結合するステップであって、それぞれの金属パッドは、対応する端ぐり孔の金属化を有しない部分を隠蔽するように結合される、ステップ、
- 1つ又は複数の電子コンポーネントを、1つ又は両方の表面層に属する接続パッドに結合するステップ
を更に含むことができる。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明及び以下の図から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来技術の解決策による端ぐり孔を示す。
図2】本発明の実施形態による多層印刷回路基板を示す。
図3】本発明の実施形態による、多層印刷回路基板を製造し、且つコンポーネントを追加するプロセスを示す。
図4A】本発明の実施形態による、金属パッドを多層印刷回路基板の表面層に結合するために実行されるステップを示す。
図4B】本発明の実施形態による、金属パッドを多層印刷回路基板の表面層に結合するために実行されるステップを示す。
図4C】本発明の実施形態による、金属パッドを多層印刷回路基板の表面層に結合するために実行されるステップを示す。
図5A】従来技術の解決策による、端ぐり孔及びスルーホールを生成するために使用されるステップを示す。
図5B】従来技術の解決策による、端ぐり孔及びスルーホールを生成するために使用されるステップを示す。
図5C】従来技術の解決策による、端ぐり孔及びスルーホールを生成するために使用されるステップを示す。
図5D】従来技術の解決策による、端ぐり孔及びスルーホールを生成するために使用されるステップを示す。
図5E】従来技術の解決策による、端ぐり孔及びスルーホールを生成するために使用されるステップを示す。
図5F】従来技術の解決策による、端ぐり孔及びスルーホールを生成するために使用されるステップを示す。
図5G】従来技術の解決策による、端ぐり孔及びスルーホールを生成するために使用されるステップを示す。
図6A】本発明の実施形態による、端ぐり孔及びスルーホールを生成するために使用されるステップを示す。
図6B】本発明の実施形態による、端ぐり孔及びスルーホールを生成するために使用されるステップを示す。
図6C】本発明の実施形態による、端ぐり孔及びスルーホールを生成するために使用されるステップを示す。
図6D】本発明の実施形態による、端ぐり孔及びスルーホールを生成するために使用されるステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の様々な実施形態による多層印刷回路基板10は、電子コンポーネント304を電気的に接続し、且つこれらの電子コンポーネントが様々な形態(デジタル又はアナログ)、様々な周波数(ベースバンド信号及び高周波信号)及び/又は様々な電力の電気信号を交換することを可能にするように意図される。
【0020】
図2は、本発明の実施形態による多層印刷回路基板10を示す。多層印刷回路基板10は、複数の導電層100の積層体を含み、この場合、2つの隣接する導電層100間の分離は、1つ又は複数の絶縁材料に基づいて電気絶縁層120によって確保される。導電層100は、2つの表面層101と、1つ又は複数の内部層102とを含む。更に、導電層100のそれぞれは、多層印刷回路基板10の1つ又は複数の導電層100に追加された、即ちはんだ付けされた電子コンポーネント304を接続するように意図された電気トラック302の組を含む。多層印刷回路基板10は、多層印刷回路基板10の様々な導電層100間で電気接続が実施されることを可能にする、ビアとも呼称される1つ又は複数の接続孔200を更に含む。例えば、電気トラック302は、接続孔200と協働して、多層印刷回路基板10の所与の層に追加された又は2つの異なる層に追加された2つの電子コンポーネント304間で電気接続が実施されることを可能にする。更に、多層印刷回路基板10は、少なくとも1つの端ぐり孔202を含む。端ぐり孔202は、2つの表面層101の1つが1つ又は複数の内部層102に接続されることを可能にし、この目的のために、接続される導電層100を垂直方向に通過し、対象の表面層101上に開放している、即ちその上で終端している、金属化を有する部分2021を含む。端ぐり孔202は、他の導電層100を通過し、且つ他の表面層101上に開放している、金属化を有しない部分2022を更に含む。産業的な視点から、端ぐり孔202は、内部金属化の1つの部分が層積層平面に垂直な方向に除去される前に、まず、その内部表面が完全に金属化された、即ち金属によってカバーされた、金属化されたスルーホール201を生成することにより取得することができる。本発明の実施形態では、多層印刷回路基板10は、1つ又は複数の金属パッド301を更に含む。金属パッド301のそれぞれは、対応する端ぐり孔202の金属化を有しない部分2022を隠蔽するように2つの表面層101の1つに追加される。それぞれの金属パッド301は、寄生電磁放射を阻止する能力を有する絶縁金属パッドである。
【0021】
多層印刷回路基板10のそれぞれの層は、例えば、対象の導電層100の電気トラック302の終端に対応する接続パッド303を更に含む。接続パッド303は、ビアによって2つ以上の導電層100間に電気接続を生成するか、又は電子コンポーネント304間で電気的接続を実施することを目的として穿孔することができる。代わりに、接続パッド303は、穿孔されなくてもよく、むしろ表面実装電子コンポーネント304をはんだ付けするように意図され得る。
【0022】
本発明の実施形態では、寄生電磁放射は、端ぐり孔202の内側に形成される傾向がある。このような寄生電磁放射の発生源は、例えば且つ限定を伴うことなく、端ぐり孔202の金属化を有する部分2021であり得、これは、それを通過する電磁波を放射するアンテナとして機能することができる。本発明のこのような実施形態では、端ぐり孔202を隠蔽する金属パッド301は、対応する端ぐり孔202からのこのような寄生電磁放射の伝播を少なくとも部分的に阻止するように選択される。有利には、多層印刷回路基板10内で利用されるそれぞれの金属パッド301は、対応する端ぐり孔202からの寄生電磁放射の伝播を完全に阻止するように選択される。
【0023】
本発明の他の実施形態では、寄生電磁放射は、端ぐり孔202の外側に形成される傾向がある。本発明のこのような実施形態では、端ぐり孔202を隠蔽する金属パッド301は、対応する端ぐり孔202内へのこのような寄生電磁放射の貫通を少なくとも部分的に阻止するように選択される。
【0024】
有利には、多層印刷回路基板10の端ぐり孔202を隠蔽する金属パッド301は、同一であり得、即ち、金属パッド301は、同じ幾何学的特性及び具体的には同じ厚さを有し得、この場合、厚さは、層積層平面に対して垂直に計測される。
【0025】
本発明の実施形態では、端ぐり孔202を隠蔽する金属パッド301の幾何学的特性は、対応する端ぐり孔202内又はその外側に形成される傾向がある寄生電磁放射の1つ又は複数の特性に応じて選択され得る。例えば、金属パッド301の厚さは、対象の寄生電磁放射と関連する表皮深さよりも数倍だけ大きくてもよく、且つ通常百倍だけ大きくてもよく、この場合、表皮深さは、対象の寄生電磁放射の周波数に依存する。
【0026】
本発明の他の実施形態では、端ぐり孔202を隠蔽する金属パッド301の電気特性は、対応する端ぐり孔202内又はその外側に形成される傾向がある寄生電磁放射の1つ又は複数の特性に応じて選択され得る。このような電気特性は、例えば且つ限定を伴うことなく、金属パッド301の導電率を含む。
【0027】
有利には、多層印刷回路基板10の端ぐり孔202を隠蔽する金属パッド301は、電源を必要としない受動型コンポーネントである。更に、多層印刷回路基板10の2つの表面層101の1つに追加された金属パッド301は、同じ表面層101に追加されたすべての他の金属パッド301から電気的に絶縁することができる。
【0028】
本発明の実施形態では、1つ又は複数の金属パッド301は、それぞれ化学組成の観点で均一であり得、即ち銅又はアルミニウムなどの金属であり得る単一の化学元素から構成することができる。代わりに、1つ又は複数の金属パッド301は、それぞれ複数の化学元素の合金から構成することもできる。
【0029】
図3は、本発明の実施形態による、多層印刷回路基板10を製造し、且つコンポーネントを追加するプロセスを示す。製造プロセスは、多層印刷回路基板10を製造するステップを含む第1フェーズと、このようにして製造された多層印刷回路基板10に金属パッド301及び電子コンポーネント304を追加するステップを含む第2フェーズとを含む。第1フェーズは、ステップ51~54を含み、及び第2フェーズは、ステップ55及び56を含み、以下でステップ51~56について説明する。本発明の様々な実施形態による製造プロセスは、任意の数の導電層100を有する印刷回路基板に適用可能であり、これは、通常、4つ以上である。
【0030】
ステップ51では、複数の導電層100の積層体が生成され、この場合、2つの隣接する導電層100間の分離は、1つ又は複数の絶縁材料に基づいて絶縁層120によって確保される。導電層100は、2つの表面層101と、1つ又は複数の内部層102とを含む。それぞれの導電層100及び具体的にはそれぞれの内部層102は、所与の回路図に従って予め生成された電気トラック302の組及び接続パッド303の組を含むことができる。ステップ51は、1つ又は複数の埋め込まれた孔によって内部層102間に電気接続を生成するステップと、1つ又は複数のブラインドホールによって表面層101と内部層102との間に電気接続を生成するステップとを更に含むことができる。一般に、埋め込まれた孔又はブラインドホールは、導電層100のサブ積層体内において、金属化されたスルーホールを生成することにより得られる。例えば、埋め込まれた孔の導電層100のサブ積層体は、多層印刷回路基板10の内部導電層102及びその電気絶縁層120のみを含む。
【0031】
ステップ52では、導電層100間の電気接続が1つ又は複数の金属化されたスルーホール201によって生成される。金属化されたスルーホールの201の生成は、孔の内側に銅などの金属の層を堆積する前に、実装された層のすべてを通して孔を穿孔するステップを含む。金属化されたスルーホール201は、具体的には、実装された導電層100のすべて及び具体的には2つの表面層101が電気的に接続されることを可能にする。
【0032】
ステップ53では、1つ又は複数の金属化されたスルーホール201は、積層平面に垂直な方向において、有用ではない金属化を除去する、即ち取り除くことにより、1つ又は複数の端ぐり孔202に変換される。従って、端ぐり孔202は、接続される導電層100を垂直に通過し、且つ2つの表面層101の1つの上に開放している、金属化を有する部分2021を含む。端ぐり孔202は、他の導電層100を通過し、且つ他の表面層101上に開放している、金属化を有しない部分2022を更に含む。本発明の実施形態による端ぐり孔202は、空であり、即ち、これらは、従来技術の解決策に関して記述されるような何らの樹脂プラグでも充填されないことに留意されたい。
【0033】
ステップ54では、電気トラック302及び接続パッド303が多層印刷回路基板10の1つ又は両方の表面層101上に生成される。
【0034】
ステップ55では、金属パッド301は、それぞれの端ぐり孔202の金属化を有しない部分2022を隠蔽するように1つ又は両方の表面層101に結合される、即ち堅固に固定又は追加される。金属パッド301は、そのすべてが同一であり得る。代わりに、少なくとも2つの金属パッド301は、幾何学的特性の観点及び/又は電気特性の観点で異なり得る。
【0035】
ステップ56では、電子コンポーネント304は、表面層101の1つ又は両方の上に生成された接続パッド303に結合される。当業者は、ステップ55及び56が時間において並行して又は順番に実行され得ることを理解するであろう。
【0036】
図4A図4B及び図4Cは、金属パッド301を多層印刷回路基板10の2つの表面層101の1つに結合するために実行されるステップ(上述のステップ55)を示す。より正確には、図4Aは、表面層101の金属部分上にはんだペーストを堆積するステップを含む第1ステップを示し、これは、金属パッド301を収容するように意図され、この場合、金属部分は、場合により、例えば且つ限定を伴うことなく、接続パッド303である。図4Bは、予め準備された表面層101の金属部分上に金属パッド301を配置するステップを含む第2ステップを示す。第2ステップは、手動で又は表面実装コンポーネント(SMC)を配置する機械を使用して自動的に実行することができる。図4Cは、多層印刷回路基板10の表面層101に金属パッド301を堅固に固定するステップを含むはんだ付けの第3ステップを示す。はんだ付けステップは、リフローはんだ付け技法を使用して実行することができる。更に、はんだペーストの堆積(第1ステップ)及びリフロー(第3ステップ)は、金属パッド301及び電子コンポーネント304について同時に実行することもできる。
【0037】
図5A図5B図5C図5D図5E図5F及び図5Gは、従来技術の解決策による、多層印刷回路基板10内における端ぐり孔202及び金属化されたスルーホール201の生成を示す。従来技術の解決策は、金属化によって端ぐり孔202を閉鎖する前に、非導電性樹脂で端ぐり孔202を充填するステップを含む。図6A図6B図6C及び図6Dは、本発明の実施形態による、端ぐり孔202及び金属化されたスルーホール201を生成するために必要とされるステップを示す。
【0038】
図5A及び図6Aは、具体的には、端ぐり孔202が金属化されたスルーホール201を生成することによって準備されることを可能にする孔あけ及び金属化ステップに対応する。より正確には、図6Aは、端ぐり孔の生成及び金属化されたスルーホール201の生成は、本発明の実施形態によれば、2つの金属化されたスルーホール201の生成を有する同じ製造ステップで開始し得ることを示す。更に、図5Aは、従来技術の解決策が、金属化されたスルーホール201及び端ぐり孔202の生成においてこのような並行性を与えないことを示す。
【0039】
図5B及び図6Bは、金属化されたスルーホール201から端ぐり孔202を生成するステップを含む端ぐりステップに対応する。これは、層積層平面に対して垂直の方向において、金属化されたスルーホール201の金属化の一部分を除去するステップをもたらす。
【0040】
図5Cは、従来技術の解決策で実装される充填ステップに対応し、この場合、充填ステップは、このようにして得られた端ぐり孔を非導電性樹脂で完全に充填するステップを含む。
【0041】
図5Dは、従来技術の解決策で実装される平坦化ステップに対応し、この場合、平坦化ステップは、多層印刷回路基板10の2つの表面層101を平坦化するステップを含む。
【0042】
図5Eは、従来技術の解決策で実装される堆積ステップを示し、この場合、堆積ステップは、2つの予め平坦化された表面層101上に導電層100を堆積するステップを含む。堆積ステップは、具体的には、寄生電磁放射が端ぐり孔202から伝播すること及び/又は端ぐり孔202内に貫通することを防止するために、端ぐり孔202が隠蔽されることを可能にする。図5Eは、金属化されたスルーホール201を生成するための孔あけ及び金属化ステップ(類似のステップは、図6Aを参照して記述される)の別の実装形態を更に示す。従来技術の解決策によれば、金属化されたスルーホール201は、端ぐり孔202が充填及び閉塞された後にのみ生成され得る。これは、金属化されたスルーホール201の非導電性樹脂による充填を回避することを可能にする。
【0043】
図5Fは、従来技術の解決策で実装されるエッチングステップを示し、この場合、エッチングステップは、1つの又は両方の表面層101上に電気トラック302及び/又は接続パッド303を生成するステップを含む。エッチングステップは、具体的には、それぞれの端ぐり孔202を隠蔽する金属化が電気的に絶縁されることを可能にする。
【0044】
図5Gは、従来技術の解決策で実装される、電子コンポーネント304を追加するステップを示し、この場合、電子コンポーネント304を追加するステップは、電子コンポーネント304を1つ又は両方の表面層101に結合するステップを含む。より正確には、それぞれの電子コンポーネント304は、2つ以上の専用の接続パッド303に結合することができる。
【0045】
図6Cは、1つ又は両方の表面層101上に電気トラック302及び/又は接続パッド303を生成するステップを含むエッチングステップに対応し、この場合、このエッチングステップは、本発明の実施形態による以前の製造ステップに直接後続する。
【0046】
図6Dは、1つ又は両方の表面層101に電子コンポーネント304を結合するステップを含む、電気コンポーネントを追加するステップに対応する。このステップで結合される電子コンポーネント304は、端ぐり孔202を隠蔽するように意図された金属パッド301を含む。従って、金属パッド301は、任意の他の表面実装電子コンポーネント304に類似した方式で表面層101に結合することができる。
【0047】
従って、本発明の実施形態は、端ぐり孔202の電気的隔離が従来技術の解決策よりも少ない数の製造ステップによって実現されることを可能にし、且つ従って相対的に良好な製造の歩留まりを確保する。更に、本発明の実施形態は、このような端ぐり孔202が非導電性樹脂で充填されることを必要とすることなく、端ぐり孔202の電気的絶縁を可能にする。これは、例えば、重量の低減の実現を可能にする。更に、端ぐり孔202を隠蔽するために1つ又は複数の表面層101上に導電層100(図5E)を堆積する追加ステップを必要とする従来技術の解決策と異なり、本発明の実施形態は、導電表面層100の初期厚さが保持されることを可能にし、これは、エッチング精度の観点及び重量の観点における改善を可能にする。
【0048】
本発明は、非限定的な例として上述された実施形態に限定されない。具体的には、本発明は、この説明で言及される電子システムの例に限定されない。本発明は、当業者によって想起され得る任意の変形実施形態を包含する。
【符号の説明】
【0049】
10 多層印刷回路基板
100 導電層
101 表面層
102 内部層
120 電気絶縁層
200 接続孔
201 スルーホール
202 端ぐり孔
301 金属パッド
302 電気トラック
303 接続パッド
304 電子コンポーネント
2021 金属化を有する部分
2022 金属化を有しない部分
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6A
図6B
図6C
図6D
【外国語明細書】