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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021118
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】補体成分C5抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230202BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230202BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12P21/08
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/18
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K51/10
A61P27/02
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022181697
(22)【出願日】2022-11-14
(62)【分割の表示】P 2021144055の分割
【原出願日】2015-02-19
(31)【優先権主張番号】61/768,374
(32)【優先日】2014-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/944,943
(32)【優先日】2014-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(71)【出願人】
【識別番号】501154035
【氏名又は名称】ゼンコー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XENCOR、 INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】バチウ ピーター シー
(72)【発明者】
【氏名】リャン ヤンビン
(72)【発明者】
【氏名】グウ ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】バーネット マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ムクハル ウメシュ
(72)【発明者】
【氏名】デジャルレ ジョン
(57)【要約】
【課題】抗体及びその組成物、当該抗体をコードするポリヌクレオチド、当該抗体の産生のための発現ベクター及び宿主細胞、ならびに補体が媒介する疾患を診断及び処置するための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】本開示は、補体経路の活性を阻害、制御または低減するために用いることができる、抗体及び当該抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。加えて、本開示は、補体C5が媒介または関与する疾患を診断及び処置するための組成物及び方法に関する。具体的には、本開示は、C5抗体に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C5に結合し、補体依存性溶血を抑制するが、C5a形成を阻止しない、抗C5抗体。
【請求項2】
ヒト補体成分6及び/または7に結合するC5を阻止する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
膜侵襲複合体(MAC)の形成を抑制する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
第1のアミノ酸配列と、第2のアミノ酸配列とを含み、
(a)前記第1の配列は、
(i)配列番号13、18、23、28、33及び38からなる群から選択されるCDR1と、
(ii)アミノ酸配列GTS、SGS、RTS、YTS及びWASからなる群から選択されるCDR2と、
(iii)配列番号14、19、24、29、34及び39からなる群から選択されるCDR3とを含み、
(b)前記第2の配列は、
(i)配列番号15、20、25、30、35及び40からなる群から選択されるCDR1と、
(ii)配列番号16、21、26、31、36及び41からなる群から選択されるCDR2と、
(iii)配列番号17、22、27、32、37及び42からなる群から選択されるCDR3とを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
重鎖及び軽鎖を更に含み、
前記軽鎖は、配列番号1、3、5、7、9及び11からなる群から選択される配列に少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、
前記重鎖は、配列番号2、4、6、8、10及び12からなる群から選択される配列に少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
重鎖及び軽鎖可変配列:配列番号1/配列番号2;配列番号3/配列番号4;配列番号5/配列番号6;配列番号7/配列番号8;配列番号9/配列番号10及び配列番号11/配列番号12から選択される重鎖及び軽鎖可変ドメインを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体またはこれらの抗体断片である、請求項1に記載の抗体。
【請求項8】
抗体断片であり、前記抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ダイアボディまたは一本鎖抗体分子である、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
IgG1型、IgG2型、IgG3型またはIgG4型である、請求項7に記載の抗体。
【請求項10】
IgG1型である、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
標識基に結合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項12】
前記標識基が、光学標識、放射性同位体、放射性核種、酵素基及びビオチニル基である、請求項12に記載の抗体。
【請求項13】
請求項1に記載の単離された抗体を作製するためのプロセスであって、前記抗体を分泌する宿主細胞から前記抗体を作製することを含む、前記プロセス。
【請求項14】
請求項1に記載の単離された抗体をコードする核酸分子。
【請求項15】
制御配列に機能的に連結している、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項16】
請求項1に記載の少なくとも1つの抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項17】
追加の活性物質を更に含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
処置または予防を必要とする患者の徴候を処置または予防するための方法であって、
有効量の請求項1に記載の抗体を前記患者に投与することを含み、これにより、前記徴候を処置または予防する、前記方法。
【請求項19】
前記症状が眼症状である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記症状が加齢黄斑変性である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2014年2月20日出願の米国特許仮出願第61/768,374号、及び2014年2月26日出願の米国特許仮出願第61/944,943号の優先権を主張するものであり、両出願は、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、抗体及びその組成物、当該抗体をコードするポリヌクレオチド、当該抗体の産生のための発現ベクター及び宿主細胞、ならびに補体が媒介する疾患を診断及び処置するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
補体系は、50個近くの別個のタンパク質から構成され、初期の宿主防御、外来物質のオプソニン化及び組織恒常性をもたらす自然免疫系の一部として機能する(Ricklin D.,2010,Complement:a Key system for immune surveillance and homeostasis.Nature:Immunology,785-795)。補体系は、全ての多細胞生物にみられ、適応免疫系の形成に系統発生的に先んずるものである(Zarkadis I.K.,2001 Phylogenetic aspects of the complement system.Development and Comparative Immunology,745-762)。補体系の活性化は、3つの主要経路である、古典経路、レクチン経路及び第2経路に沿って生じる。図1は、3つの主要な補体経路の概略図を示している。Donosoらの「The Role of Inflammation in the Pathogenesis of Age-related Macular Degeneration」(Survey of Ophthalmology,Vol.51,No.2,Mar-Apr 2006)も参照されたい。
【0004】
活性化プロセス中、逐次的なタンパク質-タンパク質相互作用及びタンパク質分解活性により、C3及びC5転換酵素の生成に至る。これらの転換酵素は、オプソニン化、アナフィラトキシンの生成及び膜侵襲複合体(MAC)の形成に重要な補体カスケードのエフェクター分子である補体活性化分解産物の産生を担っている。これらのなかでもMACは、補体カスケードの溶解活性に不可欠である(Ricklin D.,2010)。正常状態下において、補体カスケードの活性化は、病原菌、ウイルスに対する防御のみならず、患部組織及び損傷組織の除去ももたらす。通常、MACの形成は、細胞表面に存在すること、ならびにCFH、CFH関連タンパク質、C4BP、CD46、CD55、CD59及び補体因子I(CFI)を含む、可溶性制御成分に起因して、周囲組織に影響を与えない。しかしながら、過剰な活性化が生じた場合、または補体制御成分に障害がある場合、急性疾患と慢性疾患の両状態が誘発される。非制御補体活性化がヒト病態の原因となることが認識されている例には、糸球体腎炎、全身性エリテマトーデス、発作性夜間血色素尿症、アルツハイマー病、遺伝性血管浮腫、重症筋無力症及び加齢黄斑変性(AMD)が挙げられる(Ricklin&Lambris,2013,Complement in Immune and inflammatory Disorders:Pthaological Mechanisms.Journal of Immunology,3831-3838)。
【0005】
C5は、190kDaのタンパク質であり、ジスルフィド結合で互いに結合された2つのポリペプチド鎖(αが115kDa及びβが75kDa)を含む。C5転換酵素は、C5α鎖のN末端から75個下流のアミノ酸であるアルギニン残基で切断し、7.4KdのC5aと、180KdのC5b補体分解産物とを生成する。C5b成分は、C6、C7、C8及びC9の逐次付加を介する、膜侵襲複合体(MAC)の組み立ての開始成分として機能する。C6~C8サブユニットは、C5bに対して1:1の関係で組み立てられるのに対して、C9サブユニットは複数が複合体に組み込まれ、原核生物及び真核生物の両方の原形質膜に非特異的な孔を形成する(図2)。Bubeck D.,2014,「The making of a macromolecular machine:assembly of the membrane attack complex」(Biochemistry,53(12):1908-15)も参照されたい。細胞表面上のMACの形成は、細胞にいくつかの結果を招く。程度が進むと、溶質が制限なく流入及び流出して、細胞膨潤及び最終的な細胞溶解に至る。これにより、細胞物質の制限のない放出が生じ、炎症性環境及び細胞損失が促進される。半溶解性濃度での細胞表面上のMACの形成は、炎症性及び血管新生誘導性のサイトカイン及び成長因子の放出、細胞ストレスの上昇、ならびに最終的な壊死性細胞死に寄与し得る。
【0006】
加齢黄斑変性(AMD)は、高齢化先進国において失明の主要な原因である。視野損失に関連する進行した状態のAMDの罹患率は、米国人口単独で、200万人近くにのぼる。中程度のAMDを患う別の700万人も、進行した状態のAMDを発症するリスクが高い。欧州人口を含めると、影響を受けた人の数はほぼ2倍になる。AMDは、進行性の視野損失を特徴とし、神経網膜、ならびに網膜色素上皮(RPE)及び脈絡毛細管板を含む支持組織の進行性変性を引き起こす低炎症プロセスに起因すると考えられる。臨床的に重要な視野損失の大部分は、神経変性による変化が、良好な視力を担う眼の高度に特殊化された領域内の網膜中央、すなわち、黄斑に影響を及ぼすときに生じる。この疾患は、視野損失、及び日常作業の実施において家族への依存が高まることから、個人の身体的及び精神的健康に極めて大きな影響が出る。
【0007】
補体系の制御異常は、AMDの発症と高度に関連している。第1に、20を超える遺伝子の遺伝子突然変異が、AMDを発症する人のリスクに関連付けられており、全リスク推定の70%を占める(Fritscheら、「Age related Macular Degeneration:Genetics and Biology Coming Together」,Annu Rev Genomics Hum Genet.2014;15:151-71)。これらの20の遺伝子のうち、5つが補体遺伝子であり、これだけで、進行した状態のAMDを発症する全リスクの57%を占める。加えて、組織病理学的分析によって体循環及びAMD組織内における補体活性化産物の上昇で示される、補体活性のAMD関連炎症及び関連制御異常は、補体タンパク質の既知の遺伝子多型が存在しない場合でも生じる。新しい発見では、患部組織及び進行状態のAMDの発症における膜侵襲複合体の特定及び存在によって、補体の病理学的影響の可能性が強調されている(Whitmore Sら、2014,「Complement activation and choriocapillaris loss in early AMD:Implications for pathophysiology and therapy.」 Progress in Retinal and Eye Research,December 5.2014 EPub ahead of print;Nishigauchi KMら、2012 「C9-R95X polymorphism in patients with neovascular age-related macular degeneration」,Jan 131;53(1)508-12)。これらの結果は、AMDを処置するための治療標的として、最終補体経路成分を阻止することの可能性を示唆している。現在までのところ、MAC形成を標的にするほとんどの治療が、MAC形成を開始するために必要とされる主要な基本要素であるC5bの形成を阻止することによって行われている。しかしながら、C5b形成を阻止する際には、C5aの形成も同様に阻止されることから、組織恒常性(オプソニン化粒子の除去)、神経の生存及び抗血管新生応答の促進に関連付けられているC5aの機能活性も失われてしまう。ヒトにおいて、MAC形成を選択的に阻止するこのプロセスは、通常、MACの組み立てを阻止する細胞表面タンパク質CD59によって、ならびに可溶性因子であるビトロネクチン及びクラステリンによって行われる。自然の機構を模倣し、補体活性化の好ましい上流活性を保持するために、本出願は、C5に結合するが、C5分子のC5a及びC5bへのプロセシングを独自に可能にし、MACの形成を抑制することにより(図2)、AMDに関連する主要な病原性成分の形成を妨げる、新規の治療用モノクローナル抗体の開発を明らかにする。MAC形成を阻止することによって、眼の主要な支持組織(すなわち、脈絡毛細管板及びRPE)を保持しつつ、視力の維持に極めて重要な神経網膜の機能及び生存が維持される。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、抗補体C5抗体または抗C5抗体を含む医薬製剤に関する方法及び組成物を包含する。一態様において、抗C5抗体は、C5aに結合せず、補体依存性溶血を抑制する。別の態様では、抗C5抗体は、患者においてC5bに結合し、膜侵襲複合体(MAC)の形成を抑制する。一実施形態において、抗C5抗体は、ヒト補体成分6に結合するC5を阻止する。別の実施形態では、抗C5抗体は、ヒト補体成分7に結合するC5を阻止する。別の態様では、抗C5抗体は、膜侵襲複合体に一度組み込まれたC5(またはそのサブユニット)にはもう結合しない、または弱い結合しかないという特性によって特徴付けられる。
【0009】
別の態様では、抗補体C5抗体または抗C5抗体は、約10pM未満のKdでC5に結合する。別の態様では、抗C5抗体は、モノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗C5抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体及び抗体断片からなる群から選択される。一実施形態において、抗C5抗体は、抗体断片であり、この抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ダイアボディ、または一本鎖抗体分子である。別の実施形態では、抗C5抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。別の実施形態では、抗C5抗体は、IgG1である。
【0010】
別の態様では、抗C5抗体は、標識基に結合している。別の実施形態では、抗C5抗体は、標識基に結合しており、当該標識基は、光学標識、放射性同位体、放射性核種、酵素基及びビオチニル基である。
【0011】
別の態様では、本発明は、抗体を分泌する宿主細胞から当該抗体を単離することを含む、補体C5に結合する単離された抗体を作製するためのプロセスを含む。
【0012】
別の態様では、本発明は、配列番号13、18、23、28、33及び38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む抗補体C5抗体である。別の態様では、抗C5抗体は、配列番号14、19、24、29、34及び39からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。別の態様では、抗C5抗体は、GTS、SGS、RTS、YTS及びWASからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。別の態様では、抗C5抗体は、配列番号15、20、25、30、35及び40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。別の態様では、抗C5抗体は、配列番号16、21、26、31、36及び41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。別の態様では、抗C5抗体は、配列番号17、22、27、32、37及び42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。別の態様では、本発明は、第1及び第2のアミノ酸配列を含む抗体であって、第1のアミノ酸配列は、配列番号13、18、23、28、33及び38からなる群から選択されるCDR1、アミノ酸配列GTS、SGS、YTS及びWASからなる群から選択されるCDR2、配列番号14、19、24、29、34及び39からなる群から選択されるCDR3を含み、第2のアミノ酸配列は、配列番号15、20、25、30、35及び40からなる群から選択されるCDR1、配列番号16、21、26、31、36及び41からなる群から選択されるCDR2、ならびに配列番号17、22、27、32、37及び42からなる群から選択されるCDR3を含む、抗体である。他の実施形態において、本発明は、配列番号10及び配列番号2のアミノ酸配列を含む抗体である。
【0013】
別の態様では、本発明は、補体C5に結合する単離された抗体をコードする核酸分子を含む。一実施形態において、補体C5に結合する抗体をコードする核酸分子は、制御配列に機能的に連結している。
【0014】
別の態様では、本発明は、抗補体C5抗体及び薬学的に許容可能な担体を含む。一実施形態において、抗補体C5抗体は、追加の活性物質を更に含む。別の実施形態では、抗補体C5抗体及び追加の活性物質はまた、薬学的に許容可能な担体を含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、処置または予防を必要とする患者の徴候を処置または予防するための方法を含み、この方法は、有効量の少なくとも1つの抗補体C5抗体を患者に投与することを含む。一実施形態において、徴候は、加齢黄斑変性(AMD)である。別の実施形態では、処置または予防を必要とする患者の疾患または障害は、眼症状である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】補体経路の概略図を示す。
図2】MAC形成の模式図を示し、またMAC生成を阻止するが、C5a生成を阻止しない、モノクローナル抗体治療の機序を示す。
図3】抗C5抗体サブクローンによるMACの抑制パーセントを示す。
図4A】抗C5抗体サブクローンによるMACの抑制パーセントを示す。
図4B】抗C5抗体サブクローンによるMACの抑制パーセントを示す。
図5A】抗C5抗体サブクローンによるMACの抑制パーセントを示す。
図5B】抗C5抗体サブクローンによるMACの抑制パーセントを示す。
図5C】抗C5抗体サブクローンによるMACの抑制パーセントを示す。
図6A】一点測定の実施または抗体の滴定によるC5aの形成抑制を示す。
図6B】一点測定の実施または抗体の滴定によるC5aの形成抑制を示す。
図6C】一点測定の実施または抗体の滴定によるC5aの形成抑制を示す。
図7】ELISAプレート上にC5を直接コーティングした場合のモノクローナル抗体の用量依存的作用を示す。
図8】抗C5モノクローナル抗体のC5に対する結合親和性を示す。
図9】バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いた溶液中でのモノクローナル抗体のC5タンパク質への結合を示す。
図10】IgMでの補体活性化の後に、ELISAプレートの底部に付着したときのC5b-9複合体中のC5を認識する能力を示す。
図11A】バイオレイヤー干渉法(BLI)技術を用いた、モノクローナル抗体の可溶性C5b-9に結合する能力を示す。
図11B】バイオレイヤー干渉法(BLI)技術を用いた、モノクローナル抗体の可溶性C5b-9に結合する能力を示す。
図12A】10C9のヒト化重鎖及び軽鎖を有する完全長抗体に関するMACの抑制を示す。
図12B】10C9のヒト化重鎖及び軽鎖を有する完全長抗体に関するMACの抑制を示す。
図12C】10C9のヒト化重鎖及び軽鎖を有する完全長抗体に関するMACの抑制を示す。
図13A】10C9のヒト化重鎖及び軽鎖を有するFab断片の活性を示す。
図13B】10C9のヒト化重鎖及び軽鎖を有するFab断片の活性を示す。
図13C】10C9のヒト化重鎖及び軽鎖を有するFab断片の活性を示す。
図14A】H5L2(ヒト化10C9)抗体が、非ヒト霊長類軽傷モデルにおいて、対照と比較して、網膜の補体沈着を阻止するのに効果的であることを示す。
図14B】H5L2(ヒト化10C9)抗体が、非ヒト霊長類軽傷モデルにおいて、対照と比較して、脈絡膜の補体沈着を阻止するのに効果的であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書にて使用する段落見出しは、単に構成を目的にしたものであり、記載する主題の限定を意図するものではない。
【0018】
組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養及び形質転換、タンパク質精製などについては、標準的な技術を用いることができる。酵素反応及び精製技術は、製造業者の説明書に従って、または当該技術分野において一般に実施される通りに、または本明細書に記載する通りに、実施することができる。以下の手順及び技術は、概して、当該技術分野において周知の従来の方法に従って、また本明細書全体を通して引用し論じる種々の一般的かつより具体的な参考文献に記載されている通りに、実施することができる。例えば、Sambrookら、2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)を参照されたい(参照によりこの全体を本明細書に援用する)。別途、具体的な定義が記載される場合を除き、本明細書に記載する分子生物学、生化学、物理化学、生物物理化学、分析化学、有機化学、医薬化学及び製薬化学に関連して使用される用語ならびに実験手順及び技術は、当該技術分野においてよく知られ、一般的に使用されるものである。化学合成、化学分析、薬剤調製、製剤化及び送達ならびに患者の処置には、標準的な技術を用いることができる。
【0019】
本明細書では、以下の定義が使用される。
【0020】
「AMD」とは、加齢黄斑変性の全ての形態を指し、限定するものではないが、疾患の発症(すなわち、早期及び晩期)、疾患の段階(すなわち、初期、中期または進行期)、疾患の種類(地図状萎縮または新生血管黄斑症)、疾患の分布(すなわち、片側、両側、中央または周辺)、またはドルーゼン沈着の有無、網状偽ドルーゼンの有無、網膜色素上皮異常、光受容体異常、萎縮性加齢黄斑変性、地図状萎縮(GA)及び新生血管黄斑症を含む。
【0021】
「タンパク質」とは、本明細書で使用するとき、共有結合した少なくとも2つのアミノ酸を指すことが意図され、ポリペプチド、オリゴペプチド及びペプチドと同じ意味で用いられる。共有結合した2つまたはそれ以上のアミノ酸は、ペプチド結合によって結合されている。
【0022】
「C5」とは、ヒト補体成分5を指す。本明細書で使用するとき、因子C5、補体因子5は、C5と同義である。
【0023】
「C5a」とは、C5が補体カスケードで活性化されて、C5転換酵素によって切断されたときに生成される、より小さいC5の断片を指し、およそ77~74のアミノ酸を有し、約7kDaである。「C5b」とは、C5が補体カスケードで活性化されて、C5転換酵素によって切断されたときに生成される、より大きいC5の断片を指す。C5bは、1つのジスルフィド残基によって結合されているアルファ鎖(約104kDa)及びベータ鎖(約75kDa)から構成される。
【0024】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、抗体上の複数のCDRと抗原のエピトープとの結合を介して特定の抗原と相互作用する、1つまたは複数のポリペプチド鎖を含むタンパク質を指すために、その最も広範な意味で、区別なく用いられる。抗体は、モノクローナル抗体(例えば、完全長またはインタクトモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、多価抗体及び/または多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体であるが、所望の生物活性を示す場合に限る)であってよい。抗体は、抗体断片であってもよいし、抗体断片を含んでもよい(本明細書に記載する通り)。
【0025】
「エピトープ」は、抗体によって認識され、抗体が結合する、配列、構造または部分を指すために使用される。エピトープは、「抗原部位」と呼ぶ場合がある。
【0026】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部分のみを含み、この部分は、当該部分がインタクト抗体中に存在する場合に通常伴う機能のうちの少なくとも1つ、大部分または全てを保持する。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片、ダイアボディ、直鎖抗体、一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。一実施形態において、抗体断片は、インタクト抗体の抗原結合部位を含み、そのため、抗原に結合する能力を保持する。別の実施形態では、抗体断片、例えば、Fc領域を含むものは、当該Fc領域がインタクト抗体に存在する場合に通常伴う生物学的機能のうちの少なくとも1つ、例えば、FcR結合、抗体半減期調節、ADCC機能及び補体結合を保持する。一実施形態において、抗体断片は、インタクト抗体と実質的に同等の生体内半減期を有する一価抗体である。例えば、このような抗体断片は、当該断片に体内安定性を付与することができるFc配列に連結した抗原結合アームを含み得る。
【0027】
本明細書で使用する「モノクローナル」とは、細胞集団から得られた抗体を指し、この細胞集団は、単一の親細胞にクローン的に由来する。モノクローナル抗体は、同種の抗体であり、すなわち、この集団に含まれる個々の抗体は、微量に存在し得る自然に発生する可能性のある突然変異、及びある場合には異なり得る翻訳後修飾を除き、同じ遺伝子に由来し、同じアミノ酸配列及びタンパク質構造を有するという点で、同一である。モノクローナル抗体は、いくつかの実施形態において、高度に特異的であり得る。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、単一の抗原部位を標的にし得る。更に、異なる決定基(エピトープ)を標的にする異なる抗体を典型的に含む他の抗体作製とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の同じエピトープを標的にする。個々のモノクローナル抗体は、任意の特定の方法によって作製することができる。例えば、本開示に従って用いられるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature 256:495に初めて記載されたハイブリドーマ法によって作製することができ、または組み換えDNA法によって作製することができ(例えば、米国特許第4,816,567号参照)、またはClacksonら(1991)Nature 352:624-628及びMarksら(1991)J.Mol.Biol.222:581-597に記載されている技術を用いてファージ抗体ライブラリーから作製することができる。
【0028】
「ポリクローナル」は、異種集団の親抗体産生細胞に由来する異種集団の抗体を記載するために用いられる。ほとんどの場合、ポリクローナル抗体は、異なるエピトープに対して異なる親和性を有し、異なる配列を有する遺伝子から産生される。
【0029】
「キメラ」抗体は、2つまたはそれ以上の異なる種に由来するアミノ酸配列を含む抗体である。
【0030】
「ヒト化」抗体は、非ヒト親抗体に由来するキメラ抗体である。多くの場合、ヒト化抗体の特定のアミノ酸位置が、ヒト抗体に対応する位置のアミノ酸の同一性に一致するように変更されている。多くの場合、親(非ヒト)抗体の可変領域の位置が、ヒト種の可変領域に由来するアミノ酸と置き換わっている。これにより、所望の特異性、親和性及び能力を有するヒト化されたマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類抗体が作製される。
【0031】
「バリアント」とは、親配列と比較して少なくとも1つの差異を含む配列を指す。バリアントポリペプチドは、親配列と少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質である。バリアントタンパク質は、親アミノ酸配列と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有し得る。ある場合には、バリアント抗体は、アミノ酸配列中に、親抗体と比較して1つまたは複数の差異を有する抗体である。ヒト化抗体及びキメラ抗体は、バリアント抗体である。したがって、バリアント抗体は、親抗体と100%未満の配列同一性を有する。バリアントヌクレオチド配列は、親ヌクレオチド配列と約100%未満の配列同一性を有する。
【0032】
「単離された」または「精製された」とは、その天然環境の少なくとも1つの構成成分から分離及び/または回収された分子を指し、この構成成分は、当該分子の使用または活性と干渉し得る物質である。構成成分には、ペプチド、糖、核酸、酵素、ホルモン及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が挙げられる。
【0033】
「相補性決定領域」(CDR)は、抗体中の1つまたは複数の領域を指し、1つまたは複数のCDRの残基は、抗原結合に役立つ。多くの場合、CDRの個々のアミノ酸は、標的抗原の原子に極めて接近することができる。いくつかの実施形態において、CDRは、免疫グロブリン中に位置し得、3つのCDR領域からなり得る。ある場合、例えば、より大きいアミノ酸配列中に2つ以上のCDR配列がある場合は、CDRは、他の配列と分離され得、番号が付けられる。ある場合には、複数のCDRは、CDR1、CDR2及びCDR3と区別される。各CDRは、Kabatによって定義される相補性決定領域に由来するアミノ酸残基を含み得る(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。CDRだけでなく、抗体または抗体断片中の他の配列のアミノ酸番号付けは、Kabatの番号付けに従う。多くの場合、CDRは、可変領域配列におけるその位置によって定義することができ(Kabatでの番号付け)、例えば、軽鎖CDR1については位置24~位置33、LC CDR2については位置50~位置56、及びLC CDR3については位置89~位置97のアミノ酸配列を含み得、重鎖CDRは、CDR1については位置26~位置33、HC CDR2については位置50~位置66及びHC CDR3については位置97~位置103に存在し得、かつ/または超可変ループは、軽鎖残基26~32(LC CDR1)、残基50~52(LC CDR2)及び残基91~96(LC CDR3)、ならびに重鎖残基26~32(HC CDR1)、残基53~55(HC CDR2)及び残基97~101(HC CDR3)に存在し得る。いくつかの場合、相補性決定領域は、Kabatに従って定義したCDR領域と超可変ループの両方に由来するアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態において、例えば、抗体が単鎖免疫グロブリンである場合、2つ以上のCDR、3つ以上のCDR、4つ以上のCDR、5つ以上のCDR、または6つ以上のCDRが存在し得る。いくつかの実施形態において、抗体は、6つのCDRから構成され得る。
【0034】
「フレームワーク領域」、FRは、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。ほとんどの実施形態において、可変ドメインは、順に特定される2~4個のFRを有する。例えば、3つのCDRを含む可変領域は、4つのFR:FR1、FR2、FR3及びFR4を有する。CDRをKabatに従って定義する場合、軽鎖FR残基は、残基1~23(LCFR1)、34~49(LCFR2)、57~88(LCFR3)及び98~107(LCFR4)にほぼ位置し、重鎖FR残基は、重鎖残基中、約1~25(HCFR1)、34~49(HCFR2)、67~96(HCFR3)及び104~113(HCFR4)にほぼ位置する。CDRが超可変ループに由来するアミノ酸残基を含む場合、軽鎖FR残基は、軽鎖中、残基1~23(LCFR1)、34~49(LCFR2)、57~88(LCFR3)及び98~107(LCFR4)にほぼ位置し、重鎖FR残基は、重鎖残基中、残基1~25(HCFR1)、34~49(HCFR2)、67~96(HCFR3)及び104~113(HCFR4)にほぼ位置する。いくつかの場合、CDRが、Kabatによって定義されるCDR及び超可変ループによって定義されるものの両方に由来するアミノ酸を含む場合、FR残基は、適宜調整される。例えば、HC CDR1がアミノ酸H26~H35を含む場合、重鎖FR1残基は位置1~25であり、FR2残基は位置36~49である。
【0035】
「可変ドメイン」は、相補性決定領域(CDR)及びフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む、従来の抗体分子の軽鎖及び重鎖の位置を指す。VHは、重鎖の可変ドメインである。VLは、軽鎖の可変ドメインである。
【0036】
「Fv」または「Fv断片」は、完全な抗原認識及び結合部位を備える抗体断片を指し、FR及びCDR配列を含む。多くの実施形態において、Fvは、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインが強く結合した二量体からなり、この結合は、実際には、例えば、一本鎖Fv分子(scFv)における共有結合であり得る。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH-VLポリペプチドの表面に抗原結合部位を画定する。全体として、6つのCDRまたはそのサブセットは、その抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、通常、完全な結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(または1つの抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、ある場合には、抗原を認識し、結合する能力を有する。
【0037】
「Fab」または「Fab断片」は、軽鎖の可変ドメイン及び定常ドメイン(CL)と、重鎖の可変ドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)とを含む。F(ab’)2抗体断片は、通常、Fab断片間がそのカルボキシ末端近傍でヒンジシステインによって共有結合されている、一対のFab断片を含む。抗体断片の他の化学的結合も、当該技術分野にて知られている。
【0038】
「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列をアラインメントし、必要に応じて、最大パーセント配列同一性を得るためにギャップを導入した後の、配列同一性の一部としてあらゆる保存的置換を考慮しない、参照配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、当該技術分野の技術範囲内である種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアなどの公開されている入手可能なコンピュータソフトウエアを用いて、達成することができる。当業者であれば、比較する配列の完全長にわたる最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを評価するための適切なパラメータを決定することができる。次いで、長いほうの配列に対する配列同一性が算出される。すなわち、短いほうの配列が長いほうの配列の一部と100%配列同一性を示す場合でも、全体の配列同一性は100%未満となる。
【0039】
「パーセント(%)アミノ酸配列相同性」は、配列をアラインメントし、必要に応じて、最大パーセント配列相同性を得るためにギャップを導入した後の、参照配列中のアミノ酸残基と相同である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。この方法は、保存的置換を考慮する。保存的置換は、アミノ酸が類似のアミノ酸で置換されてもよいアミノ酸置換である。アミノ酸は、いくつかの特徴、例えば、大きさ、形状、疎水性、親水性、電荷、等電点、極性、芳香族性などにおいて類似し得る。パーセントアミノ酸配列相同性を決定するためのアラインメントは、当業者の通常技術の範囲内である種々の方法で達成することができる。ある場合には、アミノ酸配列は、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアなどの公開されている入手可能なコンピュータソフトウエアを用いてアラインメントすることができる。当業者であれば、比較する配列の完全長にわたる最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを評価するための適切なパラメータを決定することができる。次いで、長いほうの配列に対する配列相同性が算出される。すなわち、短いほうの配列が長いほうの配列の一部と100%配列同一性を示す場合でも、全体の配列同一性は100%未満となる。
【0040】
「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列をアラインメントし、必要に応じて、最大パーセント配列同一性を得るためにギャップを導入した後の、参照配列中のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセンテージとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、当該技術分野の技術範囲内である種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアなどの公開されている入手可能なコンピュータソフトウエアを用いて、達成することができる。当業者であれば、比較する配列の完全長にわたる最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを評価するための適切なパラメータを決定することができる。次いで、長いほうの配列に対する配列同一性が算出される。すなわち、短いほうの配列が長いほうの配列の一部と100%配列同一性を示す場合でも、全体の配列同一性は100%未満となる。
【0041】
分子の「活性」または「生物活性」は、分子の種類及び所与の活性を分析するための試験の利用可能性に依存し得る。例えば、C5抗体との関係において、活性とは、C5の生物活性、例えば、他の補体タンパク質への結合、C5転換酵素に代表されるタンパク質分解酵素若しくはC5を切断することができる外因性活性化経路の他の既知のタンパク質分解酵素による切断(Krisinger M.J.ら、Thrombin generates previously unidentified C5 products that support the terminal complement activation pathway.Blood,2012 120(8)1717-1725)、またはMAC形成を、部分的にまたは完全に抑制する能力を指す。特許請求するC5抗体の好ましい生物活性は、C5分子の活性化に関連するプロセスを阻止する能力である。好ましくは、抑制活性は、状態、例えば、補体に関連する眼症状などのC5関連疾患または症状の病的状態において、測定可能な改善を達成する。ある場合には、本開示の抗C5抗体によって抑制される活性は、C5タンパク質分解酵素またはC5切断を阻止することによるものである。他の場合、活性は、膜挿入及び細胞溶解を防ぐ、複合体の他の補体タンパク質に結合する能力である。いくつかの実施形態において、本開示の抗C5抗体の活性は、溶血、C5a生成、MAC形成または他の補体タンパク質とC5との会合を抑制する能力によって測定される。活性は、結合アッセイ、MAC形成アッセイ、補体分解産物の生成、サイトカイン放出の誘導を含む、インビトロ若しくはインビボ検査の使用によって、または関連する動物モデル若しくはヒト臨床試験の使用によって、決定することができる。
【0042】
「補体に関連する眼症状」は、その最も広範な意味で用いられ、全ての眼症状を含むものであり、その病的状態には、古典経路、レクチン経路、第2経路または外因性経路のいずれかによって活性化された補体が関与する。補体に関連する眼症状には、限定するものではないが、ドライ及びウェット(非滲出及び滲出)型を含む全ての段階の加齢黄斑変性(AMD)などの黄斑変性症、脈絡膜新生血管(CNV)、ぶどう膜炎、糖尿病黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)を含む糖尿病性及び他の虚血関連網膜症、ならびに糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼のヒストプラスマ症、角膜血管新生及び網膜血管新生などの他の眼内血管新生疾患が挙げられる。補体に関連する眼症状の好ましい群には、ドライ型及びウェット型(非滲出型及び滲出型)加齢黄斑変性(AMD)を含むAMD、脈絡膜新生血管(CNV)、黄斑部毛細血管拡張症、ぶどう膜炎、糖尿病性及び他の虚血関連血管新生関連網膜症、または細胞変性糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼のヒストプラスマ症、ドイン蜂巣状網膜ジストロフィ/Malattia Leventinese、シュタルガルト病、緑内障、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生が挙げられる。
【0043】
「薬学的に許容可能」とは、動物、より具体的にはヒトでの使用について、連邦政府または州政府の規制機関によって承認を受けている若しくは承認可能であること、または米国薬局方若しくは他の一般に認識されている薬局方に記載されていることを指す。
【0044】
「薬学的に許容可能な塩」とは、親化合物の所望の薬理活性を所有する化合物の塩を指す。このような塩には、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などと形成された、または有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、3級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などと形成された酸付加塩、及び親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン若しくはアルミニウムイオンによって置き換えられて形成される塩、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、Nメチルグルカミンなどの有機塩基と配位結合したものが挙げられる。ある特定の実施形態において、薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩である。ある特定の実施形態において、薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩である。
【0045】
「薬学的に許容可能な賦形剤」とは、薬学的に許容可能な希釈剤、薬学的に許容可能なアジュバント、薬学的に許容可能なビヒクル、薬学的に許容可能な担体または前述のうちのいずれかの組み合わせを指し、本開示に記載される化合物とともに患者に投与することができ、化合物またはその薬理学的活性代謝物の治療的有効量をもたらすのに十分な投与量で投与されたとき、その薬理活性を無効にせず、かつ非毒性であるものである。
【0046】
「処置」は、障害の発生を防止するまたは病的状態を変えるための少なくとも1つの治療薬の投与である。したがって、処置とは、治療的処置及び予防的または防止的措置の両方を指す。処置の必要な人には、障害をすでに有している人及び障害を予防すべき人が挙げられる。本明細書にて開示するように、投与に好ましい薬剤は、本開示の抗C5抗体のうちの少なくとも1つを含む。補体関連疾患の処置において、本開示の抗体のうちの少なくとも1つまたは当該抗体のコード配列を含む治療薬は、補体経路の構成成分の応答の程度を直接的に若しくは間接的に変えるか、または他の治療薬、例えば、抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬、化学療法などによる処置に対する当該疾患の感受性を高めることができる。
【0047】
「治療的有効量」とは、薬剤の量であって、疾患または疾患の臨床症状のうちの少なくとも1つを処置するために対象に投与されたとき、当該疾患またはその症状の当該処置を達成するのに十分な量を指す。具体的な治療的有効量は、例えば、薬剤、疾患及び/または疾患の症状、疾患の重症度及び/または疾患の症状、処置が施される患者の年齢、体重及び/または健康、ならびに処方を行う医師の判断に応じて変化し得る。任意の所与の化合物における適切な量は、当業者によって確定され得、かつ/または慣用的実験によって決定することができる。
【0048】
「治療的に有効な投与量」とは、患者の疾患に有効な処置をもたらす投与量を指す。治療的に有効な投与量は、薬剤ごと及び/または患者ごとに変わり得、患者の状態及び疾患の重症度などの要因に左右され得る。治療的に有効な投与量は、当業者に知られた慣用的薬理学手順に従って決定することができる。
【0049】
疾患の「病的状態」、例えば、補体に関連する眼症状は、患者の良好な健康状態を損なう全ての現象を含む。これには、限定するものではないが、異常なまたは制御できない細胞増殖、タンパク質産生、異常なまたは制御できない細胞死、自己抗体産生、補体産生、補体活性化、MAC形成、近隣細胞の正常機能への干渉、サイトカインまたは他の分泌産生物の異常レベルでの放出、任意の炎症性または免疫性応答の抑制または悪化、炎症性細胞の細胞空間への浸潤、浮腫などが挙げられる。
【0050】
本明細書で使用する「哺乳動物」とは、限定するものではないが、ヒト、高等霊長類、家畜動物及び動物園、競技またはペット動物、例えば、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ及びフェレットなどを含む、哺乳動物に分類されるあらゆる動物を指す。本発明の好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0051】
1つまたは複数の更なる治療薬と「組み合わせた」投与は、同時投与(同時併用)及び任意の順序での連続投与を含む。
【0052】
本開示は、補体成分5タンパク質に結合する抗体を提供する。具体的には、C5及びC5bに結合するが、C5aには結合しない抗体が本明細書にて開示される。本開示の抗体は、C5切断を抑制しないが、MAC形成及びMAC依存性細胞溶解を抑制する。
【0053】
本明細書に記載の抗体は、1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)とともに足場構造を含む。ある特定の実施形態において、CDRは、親配列、例えば、配列番号13~48の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、ならびに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3のうちの1つまたは複数に2つ以下のアミノ酸付加、欠失または置換を含む。
【0054】
他の実施形態において、CDRは、共通に保存されているアミノ酸配列を有するコンセンサス配列と、本明細書に記載される可変アミノ酸配列とによって定義される。
【0055】
ある特定の実施形態において、本開示のC5抗体の足場構造は、限定するものではないが、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(例えば、抗体模倣物)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合体(例えば、抗体複合体)及びそれぞれの各断片を含む、抗体に基づき得る。種々の構造は、以下において更に記載し、定義する。いくつかの実施形態において、足場構造は、配列番号1~12のうちの1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態において、足場配列は、配列番号1~12と比較して、1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失または置換を含む。
【0056】
抗C5抗体は、補体活性化に関連する帰結、症状及び/または病的状態の処置に有用である。これらには、アテローム性動脈硬化症、急性心筋梗塞後の虚血再灌流、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎、免疫複合体性血管炎、関節リウマチ、動脈炎、動脈瘤、脳卒中、心筋症、出血性ショック、圧挫傷、多臓器不全、血液量減少性ショック及び腸管虚血、移植拒絶反応、心臓手術、PTCA、自然流産、神経損傷、脊髄損傷、重症筋無力症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、急性呼吸促迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、輸血関連急性肺損傷、急性肺損傷、グッドパスチャー病、心筋梗塞、心肺バイパス後の炎症、心肺バイパス、敗血性ショック、移植拒絶反応、異種移植、熱傷、全身性エリテマトーデス、膜性腎症、脳性マラリア、ベルジェ病、乾癬、類天疱瘡、皮膚筋炎、抗リン脂質症候群、炎症性腸疾患、血液透析、白血球瀉血、血漿瀉血、ヘパリン誘導性体外膜型酸素付加LDL沈殿、体外膜型酸素付加白血球瀉血、血漿瀉血、ヘパリン誘導性体外膜型酸素付加LDL沈殿、体外膜型酸素付加などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本開示の抗体の他の使用には、例えば、補体及びC5に関連する疾患の診断が挙げられる。
【0058】
本開示の態様は、抗C5抗体、特に、以下により完全に記載する重鎖及び/若しくは軽鎖CDRまたはこれらの組み合わせを含む少なくとも1つのCDRを含む抗体を提供する。
【0059】
一態様において、抗C5抗体は、C5及び/またはC5bの活性を抑制し、C5bのタンパク質複合体を形成する能力を抑制する。特定の機構または理論に束縛されるものではないが、いくつかの実施形態において、この抗体は、補体経路を遮断し、これにより、補体カスケード、MACの形成及び細胞溶解を妨げる。この分断により、限定するものではないが、地図状萎縮及び滲出型AMD、ぶどう膜炎、糖尿病性及び他の血管新生性または虚血に関連する網膜症、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜血管腫状増殖、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生などにおける疾患の進行を防止または変更することができる。いくつかの実施形態において、抗C5抗体は、MAC形成のC5b開始を抑制することができる。
【0060】
したがって、本開示の抗体は、C5若しくは補体系に関連する状態、または関連疾患若しくは状態を特定するのに役立ち得る。加えて、抗体は、C5及び/または他の下流の補体タンパク質によって媒介される作用を制御及び/または抑制するのに用いることができ、そのため、補体及び/またはC5に関連する種々の疾患及び状態の処置及び予防に有効性を有する。
【0061】
より詳細には、本開示は、抗C5抗体及び当該抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。種々の態様において、抗C5抗体は、C5、C5b及び/または他の補体タンパク質によって媒介される生物学的応答のうちの少なくとも1つを抑制し、それ自体、補体関連及びC5関連疾患及び障害の影響を改善するのに有用であり得る。抗C5抗体の産生のための哺乳動物細胞株及び細菌細胞を含む発現系、ならびに補体活性化に関連する疾患を処置する方法もまた、本開示によって提供される。
【0062】
本開示の抗体は、足場構造と、C5に結合する1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)とを含む。各種実施形態において、抗体は、第1及び/または第2のアミノ酸配列を含む。
【0063】
一実施形態において、第1及び/または第2のアミノ酸配列は、配列番号1~48からなる群から選択される配列を含む。
【0064】
各種実施形態において、抗体は、第1及び第2のアミノ酸配列のうちの1つまたは両方を含み得る。第1及び第2のアミノ酸配列は、単一の直鎖状アミノ酸配列であってもよいし、ジスルフィド架橋によって共有結合されていてもよいし、非共有結合されていてもよい。
【0065】
補体成分5、C5
膜侵襲複合体(MAC)は、通常、3つの主要経路、例えば、補体系の第2経路、レクチン経路若しくは古典経路のうちの1つ若しくは複数の活性化の結果として、またはあまり一般的でない外因性経路によるC5の確立若しくは活性化における変化によって形成される。MACは、免疫系のエフェクタータンパク質の1つであり、膜貫通チャンネルを形成する。これらのチャンネルは、標的細胞のリン脂質二重層を破壊し、細胞溶解及び死をもたらす。MACの組み立てにおいて不可欠なタンパク質がC5である。C5は、約190kDa(約1600aa)の分子量を有し、2つのポリペプチド鎖である、アルファ鎖(α、115kDa)とベータ鎖(β、75kDa)とから構成される。アルファ鎖及びベータ鎖は、ジスルフィド結合によって連結されている。アルファ鎖のN末端から75残基下流のアルギニンで、C5転換酵素がC5を切断する。この切断により、強力な炎症性分子である、小さなC5a断片(およそ77~74aaの長さ及び約11kDa)が放出される。また、C5転換酵素の切断により、C5bの活性化が生じ、次いで、膜侵襲複合体(MAC)の形成が開始され得る。C5bタンパク質は、アルファ鎖(この時点で104kDa)及びベータ鎖(75kDa)から構成される。
【0066】
C5転換酵素によるC5の切断は、C5a及びC5bの形成に至る。新しく形成されたC5b断片は、C6を動員し、C7、C8及び複数のC9分子を順次付加して、MACを組み立てる。活性MACは、C5b-C6-C7-C8-C9{n}のサブユニット構成を有する。C9によって形成された環状構造は、標的細胞の膜上の孔となる。十分な孔が形成されると、細胞は、細胞内外の分子の自由な拡散により、これ以上生存することができなくなる。これらの孔は、半溶解性濃度で、炎症性細胞の活性化に寄与することができ、また溶解濃度での孔形成は、細胞死をもたらす。MACの形成について、図2に模式的に示す。C5aとC5bは、2つとも炎症性分子である。C5aは、C5aレセプター(C5aR)に結合し、ヒト白血球によるTNF-アルファ、IL-1ベータ、IL-6及びIL-8などの炎症性サイトカインの合成及び放出を刺激する。C5aはまた、組織恒常性(オプソニン化粒子の除去)、神経の生存及び抗血管新生応答の促進に関連付けられている。ほとんどの抗C5抗体は、C5a及びC5bの形成を抑制するが、C5b形成を阻止することによってMACの活性化を妨げるだけでなく、網膜の健康維持に寄与し得るC5a活性も不利益に阻止することになる。C5aの作用を保持しつつ、C5bを選択的に阻止して、MAC形成を抑制する抗体が必要である。
【0067】
C5bの形成減少は、補体系の多くの疾患及び炎症性疾患の処置に役立ち得る。こうした疾患の1つは、加齢黄斑変性またはAMDである。AMDは、網膜変性に起因して視野損失を招く医学的状態である。補体系は、補体系のいくつかの遺伝子とAMDを発症する人のリスクとの間に強い関連があることから、AMDに関与していることが示されている。したがって、C5bタンパク質のMACへの集合を防ぐことによって補体系を抑制することが、AMDの治療的処置に重要であり得る。
【0068】
抗C5抗体
一態様において、本開示は、C5に結合し、C5aに結合せず、C5aの形成を抑制しない抗体を提供する。ある特定の態様において、本開示は、C5に結合する組み換え抗体、すなわち、抗C5抗体を提供する。本文脈中、組み換え抗体は、組み換え技術、すなわち、以下に記載する組み換え核酸の発現による技術を用いて作製することができる。組み換えタンパク質の作製のための方法及び技術は、当該技術分野においてよく知られている。
【0069】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、単離または精製される。単離または精製された抗体は、その天然状態において通常付随する物質(汚染物質)の少なくともいくつかを伴い得ない。一実施形態において、汚染物質は、所与のサンプルの総重量の重量に対して、約50%未満、あるいは約20%未満、及びあるいは約10%未満を構成する。いくつかの実施形態において、汚染物質はタンパク質であり得る。
【0070】
多くの実施形態において、精製された抗C5抗体は、当該抗体に由来する有機体以外の有機体中でまたは有機体から産生される。いくつかの実施形態において、抗C5抗体は、当該抗体が高濃度にて産生されるように誘導性プロモーターまたは高発現プロモーターを使用することによって、通常みられるよりも極めて高濃度にて作製することができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、単離または精製された抗体は、当該抗体の診断的使用及び/または治療的使用に干渉し得る構成成分から取り出すことができる。いくつかの実施形態において、抗体は、例えばローリー法によって総タンパク質濃度を特定し、タンパク質ゲルなどの視覚化法によってパーセント抗体濃度を特定した場合、抗体の重量に対して90%超まで精製される。一実施形態において、抗C5抗体は、99重量%超、例えば、一般的なアミノ酸配列決定技術(例えば、エドマン分解及び質量分析)の使用によって、N末端若しくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な、またはクマシーブルー染色若しくは銀染色を用いる還元若しくは非還元条件下でのSDS-PAGEによる均質性に十分な純度である。単離された抗体は、当該抗体の天然環境の少なくとも1つの構成成分が存在しないことから、組み換え細胞内のin situ抗体を含む。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって作製される。
【0072】
本開示の抗体は、C5に特異的に結合することができ、C5及びC5bの生物活性を抑制または調節するために用いることができる。ある特定の実施形態において、本開示の抗体は、動物の免疫化によって作製され、他の場合には、抗体は、組み換えDNA技術を用いて作製される。更なる実施形態において、抗C5抗体は、従来の抗体の酵素的または化学的切断によって作製することができる(従来の抗体は、ヒト抗体と同義であり得る)。いくつかの実施形態において、抗体は、四量体を含み得る。これらの実施形態のいくつかにおいて、各四量体は、通常、2つの同一のポリペプチド鎖の対で構成され、各対が1つの軽鎖(通常、約25kDaの分子量を有する)及び1つの重鎖(通常、約50~70kDaの分子量を有する)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、約100~110またはそれ以上のアミノ酸からなる可変領域を含み、抗原認識を担い得る。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う、定常領域を画定し得る。ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖とラムダ軽鎖に分類される。重鎖は、ミュウ、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンに分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEの抗体のアイソタイプを定義する。IgGは、複数のサブクラスがあり、限定するものではないが、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4が挙げられる。
【0073】
いくつかの抗体、例えば、ラクダ及びラマにみられる抗体は、2つの重鎖からなる二量体であり得、軽鎖を含まない。Muldermansら、2001,J.Biotechnol.74:277-302;Desmyterら、2001,J.Biol.Chem.276:26285-26290。ラクダ抗体の結晶学研究では、これらの抗体のCDR3領域が、抗原と相互作用し、これによって、典型的な四量体抗体と同様の抗原結合に不可欠である表面を形成することが明らかとなっている。本開示は、C5及び/若しくはC5bに結合することができ、かつ/またはその生物活性を抑制することができる、2つの重鎖からなる二量体抗体またはその断片を包含する。
【0074】
本開示の抗体は、ヒトC5に特異的に結合する。抗体は、あらゆる他の抗原またはタンパク質に対する結合親和性よりも、当該C5に対してより高い結合親和性を有するとき、C5に特異的に結合することができる。各種実施形態において、結合親和性は、平衡結合定数、例えば、Kd(またはKd)、またはKa(またはKa)を特定することによって測定される。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、約10-7M~約10-13M、または約10-9M~約10-12M、または約10-11M~約10-12MのKdで標的抗原に結合する。各種実施形態において、Kdは、約10-8M、10-9M、10-10M、10-11Mまたは10-12M未満、約10-13M、10-12M、10-11M、10-10M、10-9M超である。
【0075】
ある場合には、他の抗原に対するKdは、標的抗原Kdの1倍超、標的抗原Kdの2倍超、標的抗原Kdの3倍超、標的抗原Kdの4倍超、標的抗原Kdの5倍超、標的抗原Kdの6倍超、標的抗原Kdの7倍超、標的抗原Kdの8倍超、標的抗原Kdの9倍超、標的抗原Kdの10倍超(例えば、抗体のKdが標的抗原に対してX-09Mである場合、別抗原に対する抗体のKdは10倍を超え得る(すなわちX-08M))、または100倍を超える(例えば、抗体のKdが標的抗原に対してX-10Mである場合、別抗原に対する抗体のKdは10倍を超え得る(すなわちX-08M))。ある場合には、平衡結合定数は、平衡会合定数、KaまたはKaで表すことができる。
【0076】
平衡結合定数は、各種方法を使用して特定することができる。ある場合には、本開示の抗体の平衡結合定数は、タンパク質結合アッセイで結合速度(k1)及び解離速度(k-1)を測定することによって特定される。平衡結合定数を特定する1つの例示的方法は、バイオレイヤー干渉法(BLI)によるものである。BLIは、溶液中における結合速度論を特定することができるラベルフリー技術である。1つの例示的方法において、抗体は、ヒトIgGであり得、抗C5抗体は、抗ヒトIgG Fcキャプチャー(AHC)バイオセンサーチップ(ForteBio,Menlo Park,CA,USA)によって製造者の指示に従って捕捉することができる。他の種類のタンパク質結合アッセイには、免疫共沈降、蛍光タンパク質再構成法、親和性電気泳動、プルダウンアッセイ、ラベルトランスファー法、酵母ツーハイブリッドスクリーン法、ファージディスプレイ、光反応性アミノ酸類似体を用いたタンパク質複合体の生体内架橋、タンデムアフィニティー精製、化学的架橋、化学的架橋に続く高質量MALDI質量分析、SPINE(Strepタンパク質相互作用実験)、ノックダウンと組み合わせた定量的免疫沈降、近接ライゲーションアッセイバイオレイヤー干渉法、二面偏波式干渉計、静的光散乱法、動的光散乱法、表面プラズモン共鳴、蛍光偏光/異方性、蛍光相関分光法、蛍光共鳴エネルギー移動、NMR緩和または2D-FT分光法のデータセットの非線形回帰分析と組み合わせたNMR多核緩和測定または溶液中の2D-FTNMR分光法によるタンパク質活性特定、タンパク質-タンパク質ドッキング、等温滴定型熱量測定法、及びマイクロスケール熱泳動が挙げられる。
【0077】
抗C5抗体が治療用途で使用される実施形態において、抗C5抗体の1つの特徴は、C5の1つまたは複数の生物活性またはC5によって媒介される1つまたは複数の生物活性を調節及び/または抑制することができることである。この場合、抗体は、C5に特異的に結合することができ、C5及び/若しくはC5bの活性を実質的に調節でき、かつ/またはC5bの他のタンパク質(例えば、C6、C7)への結合を抑制することができる。
【0078】
多くの実施形態において、C5活性及びその活性を抑制する抗体の能力は、10%ヒト血清の存在中で赤血球の溶解を分析することによって測定される。第2経路(AP)の活性化には、古典経路よりも高濃度の血清が必要とされる。一般に、5mMのEGTAの存在下における5mM Mg++の最終濃度がアッセイにて用いられ、EGTAはCa++を優先的にキレートする。ほとんどの哺乳動物種のAPは、ウサギ赤血球によって自然に活性化されるため、簡便な標的である。ウサギ赤血球(Complement Technology,Inc.)を、GVB0(CompTech製品)で3回洗浄し、5×108/mL中に再懸濁することによって、調製する。異なる量の抗因子C5抗体をGVB0で希釈した。100uLの反応物を、連続希釈した抗因子Bb抗体、0.1M MgEGTA(CompTech製品)、1/2NHS(GVB0で1/2に希釈した正常ヒト血清)、及びウサギErの順に、氷上で混合する。次いで、反応物を振盪器上で37℃にて30分間インキュベートする。1.0mLの冷GVBEを添加する。混合した後、およそ1000×g以上で3分間、遠心分離にかけ、細胞をペレット化する。100uLの上清を96ウェルプレートに移し、412nmで読み取る(SoftMax Pro4.7.1)。GraphPad Prism4を用いてデータを分析した。
【0079】
抗原に特異的に結合する全ての抗体がその通常のリガンドへの抗原結合を阻止できるわけではなく、したがって、全ての抗体が抗原の生物学的作用を抑制または調節することができるわけではない。当該技術分野で周知のように、このような作用は、抗原のどの部分が抗体に結合するか、ならびに抗原及び抗体(この場合、C5抗体)の絶対的濃度及び相対的濃度の両濃度に依存し得る。抗体が、例えば、少なくとも約20%、40%、60%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上、ヒト血清を媒介にする溶血を抑制することができるとき、本発明にて意味するC5及び/またはC5bの生物活性を抑制または調節することができると考えられる。
【0080】
C5及び/またはC5b活性を抑制するのに必要な抗体の濃度は、大幅に異なり得、抗体がどの程度強くC5及び/またはC5bに結合するかに依存し得る。例えば、生物活性を抑制するには、C5の1分子あたり1分子以下の抗体で十分であり得る。いくつかの実施形態において、C5の生物活性を抑制するには、約2:1、1:1、1:2、1:4、1:6、1:8、1:10、1:20、1:40、1:60、1:100、1:500、1:1,000以上といった、約1,000:1~約1:1,000のC5:抗C5抗体の比が求められ得る。多くの場合、C5活性を抑制する能力は、C5の濃度及び/または抗C5抗体の濃度に依存し得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、(a)足場と、(b)抗原結合特異性及び親和性に決定的な領域である、1つまたは複数のCDRとを含む。相補性決定領域またはCDRは、抗原結合のための主表面接点を構成する抗体の領域である。1つまたは複数のCDRは、抗体の足場構造内に埋め込まれている。本開示の抗体の足場構造は、抗体またはその断片若しくはそのバリアントであってもよいし、本質的に完全に合成であってもよい。本開示の抗体の種々の足場構造については、以下に更に記載する。
【0082】
本開示の抗体の一実施形態において、抗体は、親アミノ酸配列のアミノ酸配列と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性、相同性または類似性があるアミノ酸配列を有するバリアント抗体であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、バリアント抗体の重鎖または軽鎖可変ドメイン配列は、親配列の重鎖または軽鎖可変ドメイン配列と75%、あるいは少なくとも80%、あるいは少なくとも85%、あるいは少なくとも90%、及びあるいは少なくとも95%同一である。ほとんどの場合、バリアント抗体は、CDR配列にほどんとまたは全く変化がなく、したがって、ほとんどの場合、類似の親和性で標的抗原に結合する。この配列に関する同一性または類似性は、配列をアラインメントし、必要に応じて、最大パーセント配列同一性を得るためにギャップを導入した後の、親抗体アミノ酸配列と同一(すなわち、同じ残基)または類似(すなわち、共通の側鎖特性に基づいた同じ群に由来するアミノ酸残基、以下参照)であるバリアント配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして本明細書にて定義される。
【0083】
CDR
本開示の抗体は、足場領域及び1つまたは複数のCDRを含む。本開示の抗体は、1~6個のCDR、例えば、1つの重鎖CDR1(「HC CDR1」または「CDRH1」)、及び/または1つの重鎖CDR2(「HC CDR2」または「CDRH2」)、及び/または1つの重鎖CDR3(「HC CDR3」または「CDRH3」)、及び/または1つの軽鎖CDR1「LC CDR1」または「CDRL1」)、及び/または1つの軽鎖CDR2(「LC CDR2」または「CDRL2」)、及び/または1つの軽鎖CDR3(「LC CDR3」または「CDRL3」)を有し得る(通常、天然抗体と同様)。ポリペプチド、核酸、宿主細胞などの生体物質に関連して本明細書全体を通じて使用される「天然」という用語は、自然中にみられる物質を指す。天然抗体において、重鎖CDR1は、通常、約5~約7個のアミノ酸を含み、重鎖CDR2は、通常、約16~約19個のアミノ酸を含み、重鎖CDR3は、通常、約3~約25個のアミノ酸を含む。軽鎖のCDR1は、通常、約10~約17個のアミノ酸を含み、軽鎖CDR2は、通常、約7個のアミノ酸を含み、軽鎖CDR3は、通常、約7~約10個のアミノ酸を含む。
【0084】
本開示のアミノ酸は、天然及び合成アミノ酸(例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリン、オルニチン及びノルロイシン)を含む。このような合成アミノ酸は、特に、抗体が当該技術分野において知られた従来の方法によってインビトロで合成される場合、組み込むことができる。加えて、ペプチド模倣、合成及び天然の残基/構造の任意の組み合わせも用いることができる。アミノ酸は、プロリン及びヒドロキシプロリンなどのイミノ酸残基を含む。アミノ酸の「R基」または「側鎖」は、(L)-または(S)-立体配置のいずれかであり得る。具体的な実施形態において、アミノ酸は(L)-または(S)-立体配置である。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、ペプチド模倣構造、すなわち、ペプトイドなどのペプチドまたはタンパク質類似体を形成し得(Simonら、1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:9367を参照(参照により本明細書に援用する))、タンパク質分解酵素若しくは他の生理学的状態及び/または保存状態に耐性であり得る。
【0085】
天然抗体中のCDRの構造及び特性については、以下にて更に記載する。簡潔に述べれば、従来の抗体足場において、CDRは、抗原結合及び抗原認識を担う領域を構成する重鎖及び軽鎖可変領域のフレームワーク内に埋め込まれる。可変領域は、フレームワーク領域内に少なくとも3つの重鎖または軽鎖CDRを含むものであり、上掲を参照されたい(Kabatら、1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,MD;またChothia及びLesk、1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothiaら、1989,Nature 342:877-883も参照のこと)(フレームワーク領域は、上掲のKabatら、1991によりフレームワーク領域1~4、FR1、FR2、FR3及びFR4と命名されている;上掲のChothia及びLesk、1987も参照のこと)。以下を参照されたい。しかしながら、本開示によって提供されるCDRは、従来の抗体構造の抗原結合ドメインを画定するために用いられ得るだけでなく、本明細書に記載される他の種々の足場構造に埋め込むことができる。
【0086】
本開示の抗体にて使用する具体的なCDRを表1に示す。



【0087】
別の実施形態では、本開示は、C5に結合する抗体を提供し、当該抗体は、配列番号16~18、22~24、28~30、34~36、40~42及び46~48のうちのいずれかに2つ以下のアミノ酸付加、欠失若しくは置換を有する少なくとも1つのHC CDR領域、ならびに/または配列番号13~15、19~21、25~27、31~33、37~39及び43~45のうちのいずれかに2つ以下のアミノ酸付加、欠失若しくは置換を有する少なくとも1つのLC CDR領域を含む。本開示の種々の重鎖及び軽鎖可変領域の実施形態について、表2及び配列番号1~12に示す。いくつかの実施形態において、HC CDR3及び/またはLC CDR3領域を有する抗体が特に有用である。更に、いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号16~18、22~24、28~30、34~36、40~42及び46~48のうちのいずれかのHC CDR領域から選択される配列に2つ以下のアミノ酸付加、欠失または置換を有する1つのCDRと、配列番号13~15、19~21、25~27、31~33、37~39及び43~45のうちのいずれかに2つ以下のアミノ酸付加、欠失または置換を有するLC CDRとを有し得る(例えば、抗体は、1つのHC CDRと1つのLC CDRの2つのCDR領域を有し、具体的な実施形態は、HC CDR3とLC CDR3、例えば、配列番号45及び48の両方を有する抗体である)。



【0088】
バリアントCDR配列
別の実施形態では、本開示は、C5タンパク質に結合する抗体を提供し、当該抗体は、配列番号16~18、22~24、28~30、34~36、40~42及び46~48のうちのいずれかのHC CDR1、HC CDR2またはHC CDR3領域(上述した通り)に2つ以下のアミノ酸付加、欠失若しくは置換を有する少なくとも1つのHC CDR領域、ならびに/または配列番号13~15、19~21、25~27、31~33、37~39及び43~45のうちのいずれかのLC CDR1、LC CDR2、またはLC CDR3領域(上述した通り)に2つ以下のアミノ酸付加、欠失若しくは置換を有する少なくとも1つのLC CDR領域を含む。本実施形態において、HC CDR3またはLC CDR3領域を有する抗体が特に有用である。更なる実施形態は、配列番号16~18、22~24、28~30、34~36、40~42及び46~48のうちのいずれかのHC CDR領域から選択される配列に2つ以下のアミノ酸付加、欠失または置換を有する1つのCDRと、配列番号13~15、19~21、25~27、31~33、37~39及び43~45のうちのいずれかに2つ以下のアミノ酸付加、欠失または置換を有するLC CDR領域とを有する抗体を利用する(例えば、抗体は、1つのHC CDRと1つのLC CDRの2つのCDR領域を有し、具体的な実施形態は、HC CDR3とLC CDR3の両領域、例えば、配列番号45及び48を有する抗体である)。
【0089】
当業者であれば理解するように、示された配列のなかから2つ以上のCDRを有する任意の抗体の場合、記載した配列から独立して選択されるCDRの任意の組み合わせが有用である。したがって、独立して選択した1、2、3、4、5または6つのCDRを有する抗体を作製することができる。しかしながら、当業者であれば理解するように、具体的な実施形態は、一般に、繰り返しではないCDRの組み合わせを用いる。例えば、抗体は、2つのHC CDR2領域から作られることは通常ないことなどである。
【0090】
本開示の更なる態様は、C5に結合する単離された抗体を提供し、当該単離された抗体は、配列番号16~18、22~24、28~30、34~36、40~42及び46~48のうちのいずれかに2つ以下のアミノ酸付加、欠失または置換を有する重鎖アミノ酸配列と、配列番号13~15、19~21、25~27、31~33、37~39及び43~45のうちのいずれかに2つ以下のアミノ酸付加、欠失または置換を有する軽鎖アミノ酸配列とを含む。重鎖配列のいずれかは、軽鎖配列のいずれかと組み合わせ、適合され得ることに留意されたい。
【0091】
一般に、本明細書に記載する個々のバリアントCDR間のアミノ酸相同性、類似性または同一性は、本明細書に開示する配列と比較したとき、少なくとも80%である。多くの場合、aa相同性、類似性または同一性は、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%である。
【0092】
配列同一性/相同性
当該技術分野にて周知のように、タンパク質または核酸と第2の配列との配列同一性または類似性の程度を特定するために、多数の異なるプログラムを用いることができる。
【0093】
アミノ酸配列に関して、配列同一性及び/または類似性は、当該技術分野において知られている標準的技術を用いて特定され、限定するものではないが、Smith及びWaterman、1981,Adv.Appl.Math.2:482の局所的配列同一性アルゴリズム、Needleman及びWunsch、1970,J.Mol.Biol.48:443の配列同一性アラインメントアルゴリズム、Pearson及びLipman、1988,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.85:2444の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ処理(GAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.))、Devereuxら、1984,Nucl.Acid Res.12:387-395の記載による最適一致配列プログラムが挙げられ、デフォルト設定を用いるか、または精査により使用する。パーセント同一性は、次のパラメータ:ミスマッチペナルティ1、ギャップペナルティ1、ギャップサイズペナルティ0.33、結合ペナルティ30、「Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,」 Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications、127-149頁(1988),Alan R.Liss,Inc.に基づいて、FastDBによって算出することができる。
【0094】
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、ペアワイズアラインメントのプログレッシブ法を用いて、一群の関連する配列から多重配列アラインメントを生成する。PILEUPは、アラインメントを生成するのに使用されるクラスタリング関係を示す系統樹をプロットすることもできる。PILEUPは、Feng及びDoolittle、1987,J.Mol.Evol.35:351-360のプログレッシブアラインメント法を単純化させて用いる。この方法は、Higgins及びSharp、1989,CABIOS 5:151-153により説明されるものと類似である。有用なPILEUPパラメータとしては、3.00のデフォルトギャップ加重、0.10のデフォルトギャップ長加重及び加重末端ギャップが挙げられる。
【0095】
有用なアルゴリズムの別の例は、Altschulら、1990,J.Mol.Biol.215:403-410;Altschulら、1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402;及びKarinら、1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:5873-5787の記載によるBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altschulら、1996,Methods in Enzymology 266:460-480から得られるWU-BLAST-2プログラムである。WU-BLAST-2は、複数の検索パラメータを使用するが、これらのうちのほとんどはデフォルト値に設定される。調整可能なパラメータは、タンパク質について次の値:オーバーラップスパン=1、オーバーラップ部分=0.125、ワード閾値T=11に設定される。HSP S及びHSP S2パラメータは、動的な値であり、特定の配列の組成、及び目的配列を検索する特定のデータベースの組成に基づきプログラム自体によって確立されるが、これらの値は、感度を上げるように調整することができる。
【0096】
更なる有用なアルゴリズムは、Altschulら、1993,Nucl.Acids Res.25:3389-3402が報告したギャップ付加BLASTである。ギャップ付加BLASTは、BLOSUM-62置換スコアを用い、閾値Tパラメータは9に設定、ギャップなし伸長を開始する2ヒット法でギャップ長kに10+kのコストを負荷、Xuは16に設定、Xgはデータベース検索段階で40、アルゴリズムの出力段階で67に設定する。ギャップ付加アラインメントは、約22ビットに相当するスコアによって開始される。
【0097】
一般に、個々のバリアントCDR間または可変領域間のアミノ酸相同性、類似性または同一性は、当該配列に対して少なくとも80%であり、あるいは少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%及びほぼ100%の高相同性または同一性である。
【0098】
同様に、本開示の抗体をコードする核酸配列に関するパーセント(%)核酸配列同一性は、当該抗体のコード配列中のヌクレオチド残基と同一である、候補配列中のヌクレオチド残基のパーセンテージである。具体的な方法は、デフォルトパラメータに設定したWU-BLAST-2のBLASTNモジュールであり、オーバーラップスパンとオーバーラップ部分をそれぞれ1及び0.125にして用いる。
【0099】
一般に、個々のバリアントCDR及びバリアント可変ドメイン配列をコードするヌクレオチド配列間の核酸配列相同性、類似性または同一性は、少なくとも80%であり、あるいは少なくとも85%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%及びほぼ100%の高相同性または同一性である。多くの場合、非同一核酸配列は、遺伝コードの縮重のために、同じアミノ酸配列をコードしている場合がある。
【0100】
ヌクレオチド配列間の相同性は、多くの場合、互いにハイブリダイズする能力によって定義される。いくつかの実施形態において、選択的ハイブリダイゼーションとは、特異性の高い結合を指し得る。本開示に係るポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びこれらの断片は、非特異的核酸への検出可能な結合のかなりの量を最小限にするハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で、核酸鎖に選択的にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件を用いて、当技術分野において知られている及び本明細書にて論じられる選択的ハイブリダイゼーション条件を達成することができる。
【0101】
ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーは、当業者であれば容易に決定することができ、一般に、プローブ長、プローブ濃度/組成、標的濃度/組成物、洗浄温度及び塩濃度に応じて経験則的に算定される。一般に、プローブが長いほど適切なアニーリングには高い温度が求められ、一方、プローブが短いほど求められる温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般に、相補鎖が融解温度未満の環境で存在するときの、変性DNAのリアニール能力に依存する。プローブとハイブリダイズ可能配列との間の所望の相同性の程度が高いほど、使用され得る相対的温度は高くなる。その結果、相対的温度が高くなるほど、反応条件もよりストリンジェントになる傾向があり、一方、温度が低くなるほどその傾向は弱まる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーに関する更なる詳細及び説明は、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers(1995)を参照されたい。
【0102】
高ストリンジェンシー条件は、当該技術分野において知られており、例えば、上掲のSambrookら、2001及びShort Protocols in Molecular Biology、第2版、Ausubelら編、John Wiley&Sons,1992を参照されたい。両文献は、参照により本明細書に援用する。ストリンジェントな条件は配列に依存するため、様々な状況によって異なる。より長い配列は、より高温で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範な手引きは、Tijssen,Techniques In Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probes,「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993)に見出される。
【0103】
いくつかの実施形態において、ストリンジェントな条件または高ストリンジェンシー条件は、(1)洗浄に、低イオン強度及び高温、例えば、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを50℃にて使用する、(2)ハイブリダイゼーション時に、ホルムアミドなどの変性剤、例えば、50%(v/v)ホルムアミドを、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)とともに42℃にて使用する、または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、音波処理サケ精子DNA(50μg/mL)、0.1%SDS、及び10%硫酸デキストランを42℃にて使用し、42℃にて0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)及び55℃にて50%ホルムアミドで洗浄した後、55℃にてEDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を行うことによって特定され得る。
【0104】
一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度及びpHでの特定の配列に対する熱的融点(Tm)よりも約5~10℃低くなるように選択される。Tmは、標的配列に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である(規定のイオン強度、pH、及び核酸濃度下にて)(標的配列が過剰に存在する場合、Tmにて、プローブの50%が平衡状態で占有される)。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0~8.3において約1.0M未満のナトリウムイオン、通常は、約0.01~1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば10~50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば約50ヌクレオチド超)では少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミド等の不安定化剤の添加によって達成することもできる。
【0105】
別の実施形態では、より低いストリンジェントのハイブリダイゼーション条件が用いられ、例えば、当該技術分野において知られているように、中程度または低ストリンジェンシー条件を用いることができる。上掲のSambrookら、2001、上掲のAusubelら、1992及び上掲のTijssen、1993を参照されたい。
【0106】
ある場合には、中程度のストリンジェントな条件は、上述の条件よりもストリンジェントの低い、洗浄液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含み得る。中程度のストリンジェントな条件の一例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン及び20mg/mL変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で37℃にて一晩インキュベーションした後、1×SSC中で約37~50℃にてフィルタを洗浄することである。プローブ長などの要素に適合させる必要性に応じて、温度、イオン強度などを調整する方法については、当業者であれば、わかるであろう。
【0107】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体及びそのバリアントは、当該抗体をコードするDNA配列中のヌクレオチドに部位特異的な変異を導入することによって作製することができる。これは、カセット若しくはPCR変異導入または当該技術分野においてよく知られた他の技術を用いて、バリアントをコードするDNAを作製し、その後、本明細書にて概略するように細胞培養で組み換えDNAを発現させることで、達成することができる。ある場合には、確立された技術を用いるインビトロ合成によって、最大約100~150残基を有するバリアントCDRを含む抗体断片を作製することができる。これらのバリアント断片は、天然類似体と質的に同じ生物活性(例えば、C5結合及び補体の抑制)を示すが、以下に更に概説するように、改変された特徴を有するバリアントを選択することもできる。
【0108】
アミノ酸配列変異を導入する部位または領域は予め決定されているが、変異自体を予め決定する必要はない。例えば、所与の部位での変異を最適化するために、標的コドンまたは領域でランダム変異導入を行い、発現した抗体CDRまたは可変領域配列バリアントを所望の最適の抗体活性についてスクリーニングすることができる。既知の配列を有するDNA中の所与の部位に置換変異を施すための技術は、よく知られており、例えば、M13プライマー変異導入及びPCR変異導入がある。変異体のスクリーニングは、C5結合などの抗体活性アッセイを用いて行われる。
【0109】
アミノ酸置換は、通常、単一の残基に関するものであり、挿入は、一般に、約1~約20のアミノ酸残基の範囲におけるものであるが、大幅に大きい挿入も許容され得る。欠失は、約1~約20のアミノ酸残基の範囲であるが、ある場合には、はるかに大きいこともある。
【0110】
置換、欠失、挿入またはこれらの任意の組み合わせは、最終的な誘導体またはバリアントに達するように用いることができる。一般に、これらの変化は、分子の変更、特に、抗体の免疫原性及び特異性の変更を最小限にするように、数個のアミノ酸に対して行われる。しかしながら、ある特定の状況では、より多くの変化が許容されることもある。保存的置換は、一般に、表3に示すチャートに従って行われる。
【0111】
機能性または免疫学的同一性における変更は、表3に示す置換よりも保存性が低い置換を選択することによって行うことができる。例えば、変化の領域におけるポリペプチド主鎖の構造(例えば、アルファヘリックス構造若しくはベータシート構造)、標的部位における分子の電荷若しくは疎水性、または側鎖の嵩に対して、より顕著な影響を与える置換を行うことができる。一般的に、ポリペプチドの特性に最大の変化をもたらすことが期待される置換は、(a)親水性残基(例えば、セリルまたはスレオニル)で疎水性残基(例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニル)を置換する(または置換される)、(b)システイン若しくはプロリンで任意の他の残基を置換する(または置換される)、(c)正電荷側鎖を有する残基(例えば、リシル、アルギニルまたはヒスチジル)で負電荷側鎖(例えば、グルタミルまたはアスパルチル)を置換する(または置換される)、または(d)嵩高い側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)で側鎖を有さない残基(例えば、グリシン)を置換する(または置換される)ことである。
【0112】
バリアントは、通常、天然類似体と質的に同じ生物活性を示し、同じ免疫応答を誘発するが、バリアントはまた、必要に応じて、本開示のC5抗体の特徴を改変するように選択される。あるいは、本開示の抗体の生物活性が改変されたバリアントを選択することができる。例えば、本明細書に論じるように、グリコシル化部位を改変または除去することができる。
【0113】
配列番号1~48と相同であるポリペプチド配列が本明細書にて開示される。本明細書に開示するポリペプチドは、本開示のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含み得る。他の場合、特許請求するポリペプチドは、本開示の配列と比較して保存的アミノ酸置換を含み得るアミノ酸配列を含む。保存的アミノ酸置換には、置換されたアミノ酸と特徴を共有するアミノ酸を挙げることができる。種々の場合、保存的置換は、ポリペプチドの構造及び機能に顕著な変化をもたらすことなく行うことができる。
【0114】
保存的アミノ酸置換は、側鎖、大きさ、電荷、疎水性、親水性、等電点などの相対的類似性に基づいて行うことができる。種々の場合、置換は、慣用的試験により、タンパク質の機能に対する置換の影響についてアッセイすることができる。保存的アミノ酸置換は、類似の親水性値を有するアミノ酸を含み、この場合、アミノ酸は、アミノ酸の疎水性及び電荷に基づき得る疎水性親水性指標を有する。種々の場合、保存的アミノ酸置換は、同じ種類のアミノ酸、例えば、非極性アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、及び中性アミノ酸の間で行うことができる。保存的置換はまた、大きさまたは容積に基づいて行うことができる。アミノ酸はまた、アルファヘリックス、ベータシートなどの所与の構造または分子内若しくは分子間相互作用を形成するまたは壊す能力に基づいて分類することができる。種々の場合、保存的アミノ酸置換は、2つ以上の特徴に基づく。
【0115】
本開示のポリペプチドは、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸の両方を含み得る。種々の場合、天然アミノ酸の側鎖は、非天然側鎖によって置換され得る。種々の場合、アミノ酸は、誘導体化され得る。
【0116】
本開示のポリペプチドには、配列番号1~48の配列に相同であるポリペプチドが挙げられる。相同性は、%同一性または%類似性若しくは%ポジティブとして表される。種々の場合、%同一性は、アラインメントされた2つのポリペプチド間で一致するアミノ酸のパーセンテージであり、%類似性または%ポジティブは、同一ではないが保存的置換を示すアミノ酸のパーセンテージである。保存的置換は、好ましい電荷のアミノ酸、好ましい大きさのアミノ酸、好ましい極性のアミノ酸などの置換であってよい。例えば、リシンからアルギニンへは、電荷を考慮した保存的置換と考えることができる。
【0117】
種々の場合、2つのポリペプチドは、アルゴリズム、例えば、BLASTpによってアラインメントすることができる。種々の場合、BLASTpパラメータは、2つのポリペプチドの長いほうのポリペプチドの長さと同じか、それより大きいまたはそれを下回る最大標的配列長に設定され得、期待閾値は10、ワードサイズは3に設定され得、スコア行列はBLOSUM62であり、ギャップコストは存在について11、伸長について1に設定され得る。BLASTpは、アラインメントされたポリペプチドの相同性を、「同一性」及び「ポジティブ」としてレポートすることができる。アラインメントされた配列は、アラインメントを達成するためにギャップを含み得る。
【0118】
種々の場合、アミノ酸配列の相同性は、上述した通り、最適にアラインメントされたときの同一性またはポジティブのパーセンテージを反映し得る。種々の場合、%相同性(%ポジティブ)または%同一性は、比較領域内のアライメントされたアミノ酸数を除算することによって算出することができる。比較領域は、2つのポリペプチドが同一の長さでない場合、一方または他方のポリペプチドの全長であり得る。他の場合、比較領域は、一方のポリペプチドの一部であり得る。種々の場合、2つのポリペプチド配列の相同性または同一性を評価するための比較領域は、約40aa(アミノ酸)、45aa、50aa、55aa、60aa、65aa、70aa、75aa、80aa、85aa、90aa、95aa、100aa、150aa若しくは200aa超、及び/または約200aa、150aa、100aa、95aa、90aa、85aa、80aa、75aa、70aa、65aa、60aa、55aa、50aa若しくは45aa未満である。いくつかの実施形態において、例えばCDR配列の場合などにおいて、比較領域は、40aa未満、例えば、約25aa、24aa,23aa,22aa,21aa,20aa,19aa,18aa、17aa、16aa、15aa、14aa、13aa、12aa、11aa、10aa、9aa,8aa、7aa、6aa、5aaまたは4aa未満から、約3aa、4aa、5aa、6aa、7aa、8aa、9aa、10aa,11aa、12aa、13aa,14aa,15aa、16aa、17aa,18aa、19aa、20aa、21aa、22aa、23aaまたは24aa超の間であってよい。
【0119】
種々の場合、特許請求するアミノ酸配列は、所与の比較領域にわたって、約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%超、及び/または約100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、85%、80%、75%若しくは70%未満である%同一性または%相同性(%ポジティブ)を有し得る。
【0120】
種々の場合、配列アラインメントは、動的、局所的及び全体的アラインメントを含む、種々のアルゴリズムを用いて実施することができる。例えば、Smith及びWaterman、1981,Adv.Appl.Math 2:482のアルゴリズム、Needleman及びWunsch、1970,J.Mol.Biol.48:443のアラインメントアルゴリズム、Pearson及びLipman、1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444の類似性方法。種々の場合、コンピュータプログラムにより、これらのアルゴリズムを実施することができる(例えば、EMBOSS、GAP、BESTFIT、FASTA、TFASTA BLAST、BLOSUMなど)。
【0121】
代替の場合、アミノ酸残基が同じ種類の別のアミノ酸残基で置き換えられる、保存的アミノ酸置換を行うことができ、例えば、アミノ酸は、次のように、非極性、酸性、塩基性及び中性の各種類に分けられる。非極性:Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Pro、Met、酸性:Asp、Glu、塩基性:Lys、Arg、His、中性:Gly、Ser、Thr、Cys、Asn、Gln、Tyr。
【0122】
ある場合には、アミノ酸残基が類似の親水性値(例えば、プラスまたはマイナス2.0の範囲内の値)を有する別の残基で置換される、保存的アミノ酸置換を行うことができ、Tyr(-1.3)またはPro(-1.6)などの約-1.6の疎水性親水性指標を有するアミノ酸であり得、アミノ酸残基は次のように指定される。Arg(+3;0);Lys(+3.0);Asp(+3.0);Glu(+3.0);Ser(+0.3);Asn(+0.2);Gin(+0.2);Gly(O);Pro(-0.5);Thr(-0.4);Ala(-0.5);His(-0.5);Cys(-1.0);Met(-1.3);Val(-1.5);Leu(-1.8);Ile(-1.8);Tyr(-2.3);Phe(-2.5);及びTrp(-3.4)。
【0123】
代替の場合、アミノ酸残基が類似の疎水性親水性指標(例えば、プラスまたはマイナス2.0の範囲内の値)を有する別のアミノ酸残基で置換される、保存的アミノ酸置換を行うことができる。かかる場合、各アミノ酸残基は、次のように、その疎水性及び電荷の特徴に基づいて、疎水性親水性指標が指定される。Ile(+4.5);Val(+4.2);Leu(+3.8);Phe(+2.8);Cys(+2.5);Met(+1.9);Ala(+1.8);Gly(-0.4);Thr(-0.7);Ser(-0.8);Trp(-0.9);Tyr(-1.3);Pro(-1.6);His(-3.2);Glu(-3.5);Gln(-3.5);Asp(-3.5);Asn(-3.5);Lys(-3.9);及びArg(-4.5)。
【0124】
代替の場合、保存的アミノ酸の変化には、親水性若しくは疎水性、大きさ若しくは容積、または電荷を考慮した変化が含まれる。アミノ酸は、一般に、主にそのアミノ酸側鎖の性質に応じて、疎水性または親水性の特徴を決定することができる。Eisenbergら(J.Mol.Bio.179:125-142、184)の標準化コンセンサス疎水性スケールに基づくと、疎水性アミノ酸は、ゼロより大きい疎水性を示し、親水性アミノ酸は、ゼロを下回る親水性を示す。遺伝子にコードされた疎水性アミノ酸には、Gly、Ala、Phe、Val、Leu、lie、Pro、Met及びTrpが挙げられ、遺伝子にコードされた親水性アミノ酸には、Thr、His、Glu、Gln、Asp、Arg、Ser及びLysが挙げられる。遺伝子にコードされていない疎水性のアミノ酸には、t-ブチルアラニンが挙げられ、遺伝子にコードされていない親水性アミノ酸には、シトルリン及びホモシステインが挙げられる。
【0125】
疎水性または親水性アミノ酸は、その側鎖の特徴に基づいて、更に分類することができる。例えば、芳香族アミノ酸は、側鎖に少なくとも1つの芳香族または芳香族複素環を含む疎水性アミノ酸であり、-OH、-SH、-CN、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-NO、-NH2、-NHR、-NRR、-C(O)R、-C(O)OH、-C(O)OR、-C(O)NH2、-C(O)NHR、-C(O)NRRなどの1つまたは複数の置換基を含み得、式中、Rは、独立して、(C1~C6)アルキル、置換された(C1~C6)アルキル、(C0~C6)アルケニル、置換された(C1~C6)アルケニル、(C1~C6)アルキニル、置換された(C0~C6)アルキニル、(C5~C20)アリール、置換された(C0~C20)アリール、(C6~C26)アルカリル、置換された(C6~C26)アルカリル、5~20員ヘテロアリール、置換された5~20員ヘテロアリール、6~26員アルクヘテロアリールまたは置換された6~26員アルクヘテロアリールである。遺伝子にコードされた芳香族アミノ酸には、Phe、Tyr及びTrpが挙げられる。
【0126】
非極性または無極性アミノ酸は、生理的なpHで電荷を持たず、かつ2つの原子間の共有電子対が2つの原子のそれぞれによって等しく概して保持されている結合を有する側鎖(すなわち、側鎖は極性でない)を有する疎水性アミノ酸である。遺伝子にコードされた無極性アミノ酸には、Gly、Leu、Val、Ile、Ala及びMetが挙げられる。無極性アミノ酸は、脂肪族アミノ酸を含むように更に分類することができ、これは、脂肪族炭化水素側鎖を有する疎水性アミノ酸である。遺伝子にコードされた脂肪族アミノ酸には、Ala、Leu、Val及びIleが挙げられる。
【0127】
極性アミノ酸は、生理的なpHで電荷を持たないが、2つの原子間の共有電子対が一方の原子によって偏って保持されている1つの結合を有する側鎖を有する親水性アミノ酸である。遺伝子にコードされた極性アミノ酸には、Ser、Thr、Asn及びGlnが挙げられる。
【0128】
酸性アミノ酸は、7未満の側鎖pKa値を有する親水性アミノ酸である。酸性アミノ酸は、通常、生理的なpHで、水素イオンを失うことによって負電荷を帯びた側鎖を有する。遺伝子にコードされた酸性アミノ酸には、Asp及びGluが挙げられる。塩基性アミノ酸は、7より大きい側鎖pKa値を有する親水性アミノ酸である。塩基性アミノ酸は、通常、生理的なpHで、ヒドロニウムイオンと会合することによって正電荷を帯びた側鎖を有する。遺伝子にコードされた塩基性アミノ酸には、Arg、Lys及びHisが挙げられる。
【0129】
パーセントアミノ酸配列同一性の値は、一致する同一残基数を、比較領域中の「より長い」配列の残基総数で除算することによって特定される。「より長い」配列は、比較領域中に最多の実際の残基を有する配列である(アラインメントスコアを最大にするためにWU-Blast-2によって導入されるギャップは無視される)。
【0130】
アラインメントは、アライメントされる配列中へのギャップの導入を伴い得る。加えて、配列同一性のパーセンテージは、本開示のポリペプチド配列によってコードされるタンパク質よりも多数または少数のアミノ酸を含む配列についても、ある場合では、アミノ酸の総数に対する同一アミノ酸の数に基づいて決定されると理解される。パーセント同一性の算出において、配列変異、例えば、挿入、欠失、置換などの種々の出現に対して、相対的重み付けは課されない。
【0131】
ある場合において、同一性のみがポジティブ(+1)のスコア付けであり、ギャップを含む配列変異の全ての形態は「0」の値に指定される。これにより、配列類似性の算出に関して以下に記載する重み付けスケールまたはパラメータの必要性が回避される。パーセント配列同一性は、例えば、一致する同一残基数を、アラインメントされた領域中の「より短い」配列の残基総数で除算し、100を乗算することによって、算出することができる。「より長い」配列は、アラインメントされた領域中に最多の実際の残基を有する配列である。
【0132】
足場
本明細書にて記載する通り、本開示の抗体は、上記のCDRが接合された足場構造を含み得る。一実施形態において、足場構造は、従来の抗体構造、すなわち、2つの重鎖及び2つの軽鎖可変ドメイン配列を含む抗体である。ある場合には、本明細書に記載する抗体組み合わせは、重鎖及び/または軽鎖を構成する追加の構成要素(フレームワーク、J及びD領域、定常領域など)を含み得る。いくつかの実施形態は、ヒト足場構成要素の使用を含む。
【0133】
したがって、各種実施形態において、本開示の抗体は、従来の抗体の足場を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、ヒト及びモノクローナル抗体、二重特異性抗体、ダイアボディ、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体、キメラ抗体、抗体融合体及びそれぞれの各断片であり得る。上記のCDR及びCDRの組み合わせは、以下の足場のうちのいずれかに接合され得る。
【0134】
本開示のキメラ抗体は、特定種に由来する、対応配列に同一または相同である重鎖及び/または軽鎖配列を含み得る。例えば、一実施形態において、抗C5抗体は、ヒトFcドメインを含み、抗体の残りの部分は、対応するマウスまたは齧歯類の配列に同一または相同であり得るキメラ抗体である。キメラ抗体は、かかる抗体の断片であり得るが、当該断片が所望の生物活性を示し、別の種、抗体クラスまたは抗体サブクラスに由来する配列を含む場合に限る(米国特許第4,816,567号、及びMorrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855)。
【0135】
いくつかの実施形態において、本開示の抗C5抗体の可変領域は、フレームワーク領域内に埋め込まれた、少なくとも3つの重鎖または軽鎖CDRを含むものであり、上掲を参照されたい(Kabatら、1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,MD;またChothia及びLesk、1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothiaら、1989,Nature 342:877-883も参照のこと)(フレームワーク領域は、上掲のKabatら、1991によりフレームワーク領域1~4、FR1、FR2、FR3及びFR4と命名されている;上掲のChothia及びLesk、1987も参照のこと)。
【0136】
ある場合には、抗体は、重鎖可変ドメイン配列または軽鎖可変ドメイン配列から構成され得る。ある場合には、重鎖または軽鎖可変ドメイン配列は、表1の配列から選択される配列を含み得る。
【0137】
従来の抗体構造単位は、ほとんどの場合、四量体を含む。各四量体は、通常、2つの同一のポリペプチド鎖の対で構成され、各対が1つの軽鎖(通常、約25kDaの分子量を有する)及び1つの重鎖(通常、約50~70kDaの分子量を有する)を有する。各鎖のアミノ末端部分には、主として抗原認識を担う、約100~110またはそれ以上のアミノ酸からなる可変領域が含まれる。各鎖のカルボキシ末端部分は、定常領域を画定し、重鎖は、合計で3つの定常領域(CH1、CH2及びCH3)を含み得、定常領域は、エフェクター機能を制御するのに役立ち得る。ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖とラムダ軽鎖に分類される。重鎖は、ミュウ、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンに分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEの抗体のアイソタイプを定義する。IgGは、複数のサブクラスを有し、限定するものではないが、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4が挙げられる。IgMは、サブクラスを有し、限定するものではないが、IgM1及びIgM2が挙げられる。
【0138】
軽鎖及び重鎖中では、可変領域と定常領域が約12またはそれ以上のアミノ酸からなる「J」領域によって連結され、重鎖はまた約10以上のアミノ酸からなる「D」領域を含んでいる。Paul,W.編、1989,Fundamental Immunology、第7章、第2版、Raven Press,N.Y.を広く参照されたい。各軽鎖及び重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。
【0139】
いくつかの天然抗体、例えば、ラクダ及びラマにみられる抗体は、2つの重鎖からなる二量体であり、軽鎖を含まない。Muldermansら、2001,J.Biotechnol.74:277-302;Desmyterら、2001,J.Biol.Chem.276:26285-26290。ラクダ抗体の結晶学研究では、CDR3領域が、抗原と相互作用し、これによって、典型的な四量体抗体の場合と同様の抗原結合に不可欠である表面を形成することが明らかとなっている。本開示は、C5に結合することができ、かつ/またはその生物活性を抑制することができる、2つの重鎖からなる二量体抗体またはその断片を包含する。
【0140】
重鎖及び軽鎖の可変領域は、通常、3つの相補性決定領域またはCDRによって連結された比較的保存的なフレームワーク領域(FR)からなる同じ一般的構造を示す。CDRは、抗原認識及び結合を担う、抗体の超可変領域を含む。各対の2つの鎖に由来するCDRは、フレームワーク領域によって整列され、支持されることにより、特定のエピトープへの結合を可能にしている。軽鎖と重鎖の両鎖は、N末端からC末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4のドメインを含む。アミノ酸の各ドメインへの割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest、Chothiaら、1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothiaら、1989,Nature 342:878-883の定義に従う。
【0141】
CDRは、抗原結合のための主要な表面接点を構成する。例えば、Chothia及びLesk、1987,J.Mol.Biol.196:901-917を参照。更に、軽鎖のCDR3、及び特に重鎖のCDR3は、軽鎖及び重鎖可変領域中で抗原結合の最も重要な決定要素を構成し得る。例えば、上掲のChothia及びLesk、1987;Desiderioら、2001,J.Mol.Biol.310:603-615;Xu及びDavis、2000,Immunity 13:37-45;Desmyterら、2001,J.Biol.Chem.276:26285-26290;ならびにMuyldermans,2001,J.Biotechnol.74:277-302を参照されたい。いくつかの抗体において、重鎖CDR3は、抗原と抗体の間の主要な接触面を構成すると考えられる。上掲のDesmyterら、2001。CDR3のみを変更させるインビトロ選択スキームを、抗体の結合特性を変えるために用いることができる。上掲のMuyldermans、2001;上掲のDesiderioら、2001。
【0142】
天然抗体は、通常、シグナル配列を含み、このシグナル配列は、タンパク質分泌のための細胞経路に抗体を向かわせるものであり、成熟抗体中に存在しない。本開示の抗体をコードするポリヌクレオチドは、天然シグナル配列または以下に記載する異種シグナル配列をコードしてよい。
【0143】
一実施形態において、抗C5抗体は、モノクローナル抗体であり、本明細書にて概略する1~6個のCDRを有する。本開示の抗体は、IgM、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4を含む)、IgD、IgAまたはIgE抗体を含む、任意の種類であってよい。いくつかの実施形態において、抗体は、IgG型抗体である。一実施形態において、抗体は、IgG2型抗体である。
【0144】
いくつかの実施形態において、抗体は完全な重鎖及び軽鎖を含み得、CDRは全て同じ種、例えば、ヒト由来である。あるいは、例えば、抗体が、上記で概略を述べた配列のうちから6つ未満のCDRを含む実施形態において、更なるCDRは、他の種(例えば、ネズミCDR)に由来するCDRであっても、当該配列中に示されるものとは異なるヒトCDRであってもよい。例えば、本明細書にて特定する適切な配列からのヒトHC CDR3及びLC CDR3領域を、代替種若しくは異なるヒト抗体配列またはこれらの組み合わせから任意に選択されるHC CDR1、HC CDR2、LC CDR1及びLC CDR2とともに用いることができる。例えば、商業関連のキメラまたはヒト化抗体のCDR領域を本開示のCDRで置き換えることができる。
【0145】
具体的な実施形態は、ヒト配列を含む、抗体の足場を含み得る。
【0146】
しかしながら、いくつかの実施形態において、足場構成要素は、異なる種に由来する混合物であり得る。したがって、抗体は、キメラ抗体及び/またはヒト化抗体であり得る。一般に、キメラ抗体及びヒト化抗体はいずれも、2つ以上の種に由来する領域またはアミノ酸を組み合わせた抗体であり得る。例えば、キメラ抗体は、ほとんどの実施形態において、マウス、ラット、ウサギまたは他の好適な非ヒト動物に由来する可変領域と、ヒトに由来する定常領域とを含む。他の実施形態において、キメラ抗体は、ヒトFR配列及び非ヒトCDRを含む。
【0147】
ヒト化抗体は、非ヒト抗体、例えば、マウス抗体に本来由来する抗体である。ヒト化抗C5抗体の各種実施形態において、可変ドメインフレームワーク領域またはフレームワークアミノ酸は、非ヒト抗体に由来する場合、ヒト抗体中の対応する位置でみられるアミノ酸同一性に変更され得る。ヒト化抗体のいくつかの実施形態において、抗体全体は、CDRを除いて、ヒト起源のポリヌクレオチドによってコードされてもよいし、そのCDR内を除いてかかる抗体と同一であってもよい。他の実施形態において、ヒト化抗体は、その同一性が、対応するヒト抗体中の同じまたは類似する位置の同一性に変更された、特定のアミノ酸位置を含み得る。CDRは、一部または全部が非ヒト生物に由来する核酸によってコードされ得、抗体を作製するために、ヒト抗体可変領域のベータシートフレームワークに接合される。この抗体の特異性は、埋め込まれたCDRによって決定される。このような抗体の作製は、例えば、WO92/11018、Jones,1986,Nature 321:522-525、Verhoeyenら、1988,Science 239:1534-1536に記載されている。ヒト化抗体はまた、遺伝子操作した免疫系を有するマウスを用いて作製することもできる。Roqueら、2004,Biotechnol.Prog.20:639-654。いくつかの実施形態において、CDRは、ヒトであり得、したがって、ヒト化抗体とキメラ抗体はどちらも、この文脈において、いくつかの非ヒトCDRを含み得る。ある場合には、HC CDR3及びLC CDR3領域を含み、他のCDR領域のうちの1つまたは複数が異なる特定の起源である、ヒト化抗体を作製することができる。
【0148】
一実施形態において、C5抗体は、多重特異性抗体、とりわけ二重特異性抗体、(例えば、ダイアボディ)であり得る。これらは、2つ(またはそれ以上)の異なる抗原、例えば、C5と別の抗原、またはC5の2つの異なるエピトープに結合する抗体である。ダイアボディは、当該技術分野において知られている様々な方法で製造することができ(Holliger及びWinter、1993,Current Opinion Biotechnol.4:446-449)、例えば、化学的にまたはハイブリッドハイブリドーマから作製することができる。
【0149】
一実施形態において、抗C5抗体は、ミニボディである。ミニボディは、CH3ドメインに結合したscFvを含む、最小化した抗体様タンパク質である。Huら、1996,Cancer Res.56:3055-3061。
【0150】
一実施形態において、抗C5抗体は、ドメイン抗体である。例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい。ドメイン抗体(dAb)は、ヒト抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)のいずれかの可変領域に対応する、抗体の機能性結合ドメインである。dABは、およそ13kDaの分子量、または完全な抗体のサイズの10分の1未満である。dABは、細菌、酵母菌及び哺乳動物細胞系を含む、種々の宿主にて良好に発現する。加えて、dAbは、凍結乾燥または熱変性などの厳しい条件に曝された後でさえも、極めて安定であり、かつ活性を保持する。例えば、米国特許第6,291,158号、同第6,582,915号、同第6,593,081号、同第6,172,197号、米国特許出願第2004/0110941号、欧州特許第0368684号、米国特許第6,696,245号、WO04/058821、WO04/003019及びWO03/002609を参照されたい(全ての特許文献全体を参照により援用する)。
【0151】
一実施形態において、抗C5抗体は、C5に対する結合特異性を保持する、本明細書にて概略した抗体のうちのいずれかの断片である、抗体断片である。各種実施形態において、抗体は、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、または一本鎖Fv断片である。最低でも、抗体は、本明細書にて意味するように、抗原に特異的に結合することができるポリペプチドを含み、このポリペプチドは、軽鎖及び/または重鎖可変領域の全部または一部を含む。
【0152】
具体的な抗体断片には、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片、(ii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iii)単一の抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片、(iv)単一の可変からなるdAb断片(Wardら、1989、Nature 341:544-546)、(v)単離されたCDR領域、(vi)2つの連結したFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片、(vii)VHドメイン及びVLドメインがペプチドリンカーによって連結され、2つのドメインが抗原結合部位を形成するように関連付けられた、一本鎖Fv分子(scFv)(Birdら、1988,Science 242:423-426、Hustonら、1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:5879-5883)、(viii)二重特異性一本鎖Fv二量体(PCT/US92/09965)、ならびに(ix)遺伝子融合によって構築された多価または多重特異性断片である、ダイアボディまたはトリアボディ(TomLinsonら、2000,Methods Enzymol.326:461-479;WO94/13804;Holligerら、1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6444-6448)が挙げられるが、これらに限定されない。抗体断片は、修飾され得る。例えば、VHとVLドメインを連結するジスルフィド架橋を組み込むことによって、分子を安定化することができる(Reiterら、1996,Nature Biotech.14:1239-1245)。
【0153】
一実施形態において、C5抗体は、従来の抗体、例えば、ヒト免疫グロブリンである。本実施形態では、上記で概略を述べたように、具体的構造は、CDR領域を含む、示された完全な重鎖及び軽鎖を含む。更なる実施形態は、本開示のCDRのうちの1つまたは複数を使用し、他のCDR、フレームワーク領域、J及びD領域、定常領域などは、他のヒト抗体に由来する。例えば、任意数のヒト抗体、特に商業関連の抗体のCDRを本開示のCDRに置き換えることができる。
【0154】
一実施形態において、C5抗体は、抗体融合タンパク質(例えば、抗体複合体)である。この実施形態において、抗体は、複合パートナーに融合される。複合パートナーは、タンパク質性または非タンパク質性であり得、非タンパク質性の複合パートナーは、一般に、抗体上(抗体の共有結合的修飾に関する記載を参照)及び複合パートナー上の官能基を用いて作製される。例えば、リンカーは、当該技術分野において知られており、例えば、ホモまたはヘテロニ官能性リンカーがよく知られている(参照により本明細書に援用する、Pierce Chemical Companyのカタログ、technical section on cross-linkers、155-200頁を参照)。
【0155】
一実施形態において、C5抗体は、抗体類似体である。ある場合には、抗体類似体は、合成抗体と称する場合もある。例えば、様々な最近の研究は、接合されたCDRを有する代替タンパク質足場または人工的足場のいずれかを利用している。このような足場には、抗体の三次元構造を安定化させるために導入される変異、更に、例えば、生体適合性ポリマーからなる完全に合成である足場が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Korndorferら、2003,Proteins:Structure,Function,and Bioinformatics,Volume 53,Issue 1:121-129、Roqueら、2004,Biotechnol.Prog.20:639-654を参照。加えて、ペプチド抗体模倣物(PAM)、及びフィブロネクチン構成要素を足場として用いる抗体模倣物に基づいた作成物も用いることができる。
【0156】
VH及びVLバリアント
上記で概略を述べたように、いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号2、4、6、8、10及び12を含む重鎖可変領域、ならびに/若しくは配列番号1、3、5、7、9及び11の軽鎖可変領域をそれぞれ含むまたはそれぞれからなる抗体、または上記に定義するこれらの断片を提供する。したがって、これらの実施形態において、抗体は、少なくとも1つのCDRまたはバリアントだけでなく、示されたフレームワーク配列の少なくとも一部も含む。加えて、本開示は、かかる重鎖可変配列または軽鎖可変配列のバリアントを包含する。
【0157】
バリアント可変領域は、一般に、本明細書にて開示するものなどの親可変領域と、少なくとも80%のアミノ酸相同性、類似性または同一性を共有する。いくつかの実施形態において、バリアントと親配列の相同性または同一性は、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%及びほぼ100%である。個々のバリアントVH及びVLをコードするヌクレオチド配列と本明細書に示した核酸配列との間の核酸配列相同性、類似性または同一性は、本明細書に示したものと少なくとも70%であり、あるいは少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%及びほぼ100%の高相同性または同一性である。加えて、バリアント可変領域は、多くの実施形態において、限定するものではないが、親CDRの特異性及び/または活性の少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%を含む、生物学的機能を共有し得る。いくつかの場合、相同性及び/または同一性は、同一であり得るCDR配列以外のみが評価される。他の場合、相同性及び/または同一性は、CDR配列を含む配列全体を通して評価される。いくつかの実施形態において、定常領域バリアントが含まれてもよい。
【0158】
種々の場合、アミノ酸配列の相同性は、上述した通り、最適にアラインメントされたときの同一性またはポジティブのパーセンテージを反映し得る。種々の場合、%相同性(%ポジティブ)または%同一性は、比較領域内のアライメントされたアミノ酸数を除算することによって算出することができる。比較領域は、2つのポリペプチドが同一の長さでない場合、一方または他方の比較ポリペプチドの全長であり得る。他の場合、比較領域は、一方のポリペプチドの一部であり得る。種々の場合、2つのポリペプチド配列の相同性または同一性を評価するための比較領域は、約40aa(アミノ酸)、45aa、50aa、55aa、60aa、65aa、70aa、75aa、80aa、85aa、90aa、95aa、100aa、150aa若しくは200aa超、及び/または約200aa、150aa、100aa、95aa、90aa、85aa、80aa、75aa、70aa、65aa、60aa、55aa、50aa若しくは45aa未満である。いくつかの実施形態において、例えば本開示の様々なCDR配列の場合において、比較領域は、40aa未満、例えば、約25aa、24aa,23aa,22aa,21aa,20aa,19aa,18aa、17aa、16aa、15aa、14aa、13aa、12aa、11aa、10aa、9aa,8aa、7aa、6aa、5aaまたは4aa未満から、約3aa、4aa、5aa、6aa、7aa、8aa、9aa、10aa,11aa、12aa、13aa,14aa,15aa、16aa、17aa,18aa、19aa、20aa、21aa、22aa、23aaまたは24aa超の間であってよい。
【0159】
種々の場合、特許請求するアミノ酸配列は、所与の比較領域にわたって、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%超、及び/または約100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、85%、80%若しくは75%未満である%同一性または%相同性(%ポジティブ)を有し得る。
【0160】
抗C5抗体の共有結合的修飾
抗体の共有結合的修飾は、本開示の範囲内に含まれ、常にというわけではないが、一般的に、翻訳後に行われる。例えば、いくつかの種類の抗体の共有結合的修飾は、抗体の特定のアミノ酸残基を、選択された側鎖またはN末端若しくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることによって、分子に導入される。
【0161】
システイニル残基は、最も一般的には、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのα-ハロアセテート(及び対応するアミン)と反応して、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を生じる。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロメルクリ安息香酸塩、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応により誘導体化される。
【0162】
ヒスチジル残基は、pH5.5~7.0でジエチルピロカルボネートとの反応により、誘導体化される。これは、この作用物質が比較的にヒスチジル側鎖に特異的であるからである。パラ-ブロモフェナシルブロミドもまた有用であり、この反応は、pH6.0で0.1Mカコジル酸ナトリウム中にて行うことができる。
【0163】
リシニル残基及びアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応する。これらの作用物質での誘導体化は、リシニル残基の電荷を逆転させる効果がある。アルファ-アミノ含有残基を誘導体化するための他の好適な試薬には、ピコリンイミド酸メチルなどのイミドエステル;ピリドキサルホスフェート;ピリドキサル;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O-メチルイソ尿素;2,4-ペンタンジオン;及びグリオキシル酸とのアミノ基転移酵素触媒反応が挙げられる。
【0164】
アルギニル残基は、1つまたは複数の従来の試薬、とりわけ、フェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、及びニンヒドリンとの反応によって修飾される。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基のpKaが高いので、反応をアルカリ条件で行う必要がある。更に、これらの試薬は、リシンの各基及びアルギニンイプシロン-アミノ基と反応し得る。
【0165】
チロシル残基の特定の修飾を行うことができ、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によって、チロシル残基にスペクトル標識を導入することは特に興味深い。最も一般的には、N-アセチルイミダゾール及びテトラニトロメタンを用いて、O-アセチルチロシル種及び3-ニトロ誘導体をそれぞれ形成する。ラジオイムノアッセイに使用するための標識したタンパク質を作製するには、チロシル残基を125Iまたは131Iを用いてヨウ素化する。上述したクロラミンT方法が適している。
【0166】
カルボキシル側基(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R’-N=C=N-R’)(式中、R及びR’は、任意に異なるアルキル基、例えば1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドなどである)との反応によって選択的に修飾される。更に、アスパルチル残基及びグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニル残基及びグルタミニル残基に変換される。
【0167】
二官能性物質との誘導体化は、種々の方法で用いる非水溶性支持体マトリックスまたは表面に抗体を架橋するのに有用である。一般に用いられる架橋剤には、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば、4-アジドサリチル酸とのエステル、3,3’-ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル)などのジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、及びビス-N-マレイミド-1,8-オクタンなどの二官能性マレイミドが挙げられる。メチル-3-[(p-アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートなどの誘導体化剤は、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化中間体を生じる。あるいは、臭化シアン活性化炭水化物などの反応性非水溶性マトリックス、ならびに米国特許第3,969,287号、同第3,691,016号、同第4,195,128号、同第4,247,642号、同第4,229,537号及び同第4,330,440号(全ての特許全体を参照により本明細書に援用する)に記載の反応性基質が、タンパク質固定化に用いられる。
【0168】
グルタミニル残基及びアスパラギニル残基は、多くの場合、対応するグルタミル残基及びアスパルチル残基にそれぞれ脱アミド化される。あるいは、これらの残基は、弱酸性条件下で脱アミド化される。これらの残基のいずれの形態も本開示の範囲内である。
【0169】
他の修飾には、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル残基またはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,1983、79-86頁)、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0170】
グリコシル化
本開示の範囲内に含まれる、抗体の別のタイプの共有結合的修飾には、タンパク質のグリコシル化パターンを改変することが挙げられる。当該技術分野で知られているように、グリコシル化パターンは、タンパク質の配列(例えば、以下に論じる特定のグリコシル化アミノ酸残基の有無)、またはタンパク質が産生される宿主細胞若しくは生物の両方に依存し得る。特定の発現系について、以下で論じる。
【0171】
ポリペプチドのグリコシル化は、通常、N-結合型またはO-結合型のいずれかである。N-結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列、アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在が潜在的グリコシル化部位をもたらす。O-結合型グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへのN-アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースの糖のうちの1つの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリシンも用いることができる。
【0172】
本開示の抗体へのグリコシル化部位の付加は、上記のトリペプチド配列のうちの1つまたは複数を含むように、アミノ酸配列を変えることによって簡便に実施される(N-結合型グリコシル化部位に関して)。この変更はまた、出発配列に1つまたは複数のセリン残基若しくはスレオニン残基の付加、またはこれらの残基による置換によって行うことができる(O-結合型グリコシル化部位に関して)。簡単にするために、抗体のアミノ酸配列は、DNAレベルでの変化によって、特に、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンが生成されるように、標的ポリペプチドをコードするDNAを事前に選択した塩基で変異させることによって、改変される。
【0173】
抗体上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、タンパク質へのグリコシドの化学的または酵素的結合によるものである。これらの手順は、N-結合型及びO-結合型グリコシル化のためのグリコシル化能を有する宿主細胞におけるタンパク質の産生を必要としないという点で有利である。使用される結合様式に応じて、糖は、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基、例えば、システインのもの、(d)遊離ヒドロキシル基、例えば、セリン、スレオニン若しくはヒドロキシプロリンのもの、(e)芳香族残基、例えば、フェニルアラニン、チロシン若しくはトリプトファンのもの、または(f)グルタミンのアミド基に結合することができる。これらの方法は、1987年9月11日に公開されたWO87/05330、ならびにAplin及びWriston、1981,CRC Crit.Rev.Biochem.259-306頁に記載されている。
【0174】
出発抗体上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的または酵素的に実施することができる。化学的脱グリコシル化には、タンパク質をトリフルオロメタンスルホン酸化合物または等価化合物に曝すことが必要である。この処理により、結合糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除く、ほとんどまたは全ての糖が切断されるが、ポリペプチドは未変性のままとなる。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinら、1987,Arch.Biochem.Biophys.259:52及びEdgeら、1981,Anal.Biochem.118:131によって記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら、1987,Meth.Enzymol.138:350によって記載されているように、種々のエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼの使用によって達成することができる。潜在性グリコシル化部位でのグリコシル化は、Duskinら、1982,J.Biol.Chem.257:3105によって記載されているツニカマイシン化合物の使用によって防ぐことができる。ツニカマイシンは、タンパク質-Nグリコシド結合の形成を阻害する。
【0175】
PEG化
別のタイプの抗体の共有結合的修飾は、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号または同第4,179,337号に記載されている方法で、抗体を種々の非タンパク質性ポリマーに結合することを含み、これらのポリマーには、限定するものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンなどの種々のポリオールが挙げられる。加えて、当該技術分野において知られているように、PEGなどのポリマーの付加を容易にするために、抗体中の種々の位置でアミノ酸置換を行うことができる。
【0176】
標識
【0177】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体の共有結合的修飾は、1つまたは複数の標識の付加を含む。
【0178】
「標識基」という用語は、任意の検出可能な標識を意味する。好適な標識基の例には、放射性同位体若しくは放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素基(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、または二次レポータによって認識される所与のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、標識基は、立体障害の可能性を低減するために、種々の長さのスペーサーアームを介して抗体に結合される。タンパク質を標識するための各種方法は、当該技術分野において知られており、本開示を実施するのに用いることができる。
【0179】
一般に、標識は、検出が行われるアッセイに応じて、種々の種類:a)放射性同位体または重同位体であり得る、同位体標識、b)磁気標識(例えば、磁気粒子)、c)酸化還元活性部分、d)光学色素、酵素基(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、e)ビオチン化基、及びf)二次レポータによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)に分類される。いくつかの実施形態において、標識基は、立体障害の可能性を低減するために、種々の長さのスペーサーアームを介して抗体に結合される。タンパク質を標識するための各種方法は、当該技術分野において知られており、本開示を実施するのに用いることができる。
【0180】
具体的な標識には、限定するものではないが、発色団、リン光体及びフルオロフォアを含む光学色素が挙げられ、フルオロフォアは、多くの場合、特異的である。フルオロフォアは、「小分子」蛍光体またはタンパク質性蛍光体のいずれであってもよい。
【0181】
蛍光標識は、その固有の蛍光特性によって検出することができる任意の分子であり得る。好適な蛍光標識には、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、Malaciteグリーン、スチルベン、Lucifer Yellow、Cascade BlueJ、Texas Red、IAEDANS、EDANS、BODIPY FL、LC Red640、Cy5、Cy5.5、LC Red705、Oregonグリーン、Alexa-Fluor色素(Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680)、Cascade Blue、Cascade Yellow及びR-フィコエリトリン(PE)(Molecular Probes,Eugene,OR)、FITC、ローダミン及びTexas Red(Pierce,Rockford,IL)、Cy5、Cy5.5、Cy7(Amersham Life Science,Pittsburgh,PA)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な光学色素は、フルオロフォアを含め、Molecular Probes Handbook by Richard P.Hauglandに記載されており、当該文献を参照により明示的に本明細書に援用する。
【0182】
好適なタンパク質性蛍光標識にはまた、ウミシイタケ(Renilla)、ウミエラ(Ptilosarcus)またはオワンクラゲ(Aequorea)種のGFPを含む、緑色蛍光タンパク質(Chalfieら、1994,Science 263:802-805)、EGFP(Clontech Laboratories,Inc.、Genbank受託番号U55762)、青色蛍光タンパク質(BFP,Quantum Biotechnologies,Inc.1801 de Maisonneuve Blvd.West,8th Floor,Montreal,Quebec,Canada H3H 1J9;Stauber,1998,Biotechniques 24:462-471;Heimら、1996,Curr.Biol.6:178-182)、高感度黄色蛍光タンパク質(EYFP,Clontech Laboratories,Inc.)、ルシフェラーゼ(Ichikiら、1993,J.Immunol.150:5408-5417)、βガラクトシダーゼ(Nolanら、1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2603-2607)及びウミシイタケ(WO92/15673、WO95/07463、WO98/14605、WO98/26277、WO99/49019、米国特許第5292658号、同第5418155号、同第5683888号、同第5741668号、同第5777079号、同第5804387号、同第5874304号、同第5876995号、同第5925558号)が挙げられるが、これらに限定されない。上記に引用した参考文献の全てを参照により明示的に本明細書に援用する。
【0183】
抗C5抗体をコードするポリヌクレオチド
ある特定の態様において、本開示は、本明細書に記載の抗体をコードする核酸分子を提供する。ある場合には、本開示の核酸は、本明細書に記載の抗体、可変領域またはCDRをコードする。核酸は、DNAとRNAの両分子を含む。核酸は、天然核酸、非天然核酸、核酸類似体または合成核酸のいずれであってもよい。本開示の核酸は、通常、ポリ核酸、すなわち、ホスホジエステル結合によって共有結合されている個々のヌクレオチドの高分子である。種々の場合、ヌクレオチド配列は、一本鎖、二本鎖またはこれらの組み合わせであり得る。ヌクレオチド配列は、アミノ酸及び他のモノマーなどの他の非核酸分子を更に含み得る。
【0184】
多くの実施形態において、コード配列は、単離された核酸分子であってよい。単離された核酸分子は、天然源において通常会合している少なくとも1つの構成成分から同定され、分離されるものである。ある場合には、構成成分は、ヌクレオチド配列、タンパク質または非タンパク質性分子であり得る。単離された抗C5抗体をコードする核酸分子は、天然にみられる形態または環境以外のものである。したがって、単離された抗C5抗体をコードする核酸分子は、天然細胞中に存在する場合のコード核酸分子とは区別される。しかしながら、例えば、核酸分子が天然細胞中の染色体位置とは異なる染色体位置にある場合、単離された抗C5抗体をコードする核酸分子は、抗C5抗体を通常発現する細胞内に含まれる抗C5抗体をコードする核酸分子を含む。したがって、単離された核酸分子は、生物中に存在する場合の核酸分子とは区別される。しかしながら、ある場合には、例えば、単離核酸分子が細胞に導入され、かつ染色体外の位置またはその本来の位置とは異なる染色体の位置のいずれかに存在する場合、単離された核酸分子は、細胞内に含まれる核酸であり得る。
【0185】
核酸は、その使用に応じて、二本鎖でも、一本鎖でもよく、二本鎖配列または一本鎖配列の両方の部分を含んでもよい。当業者であれば理解するように、一方の一本鎖(「ワトソン」鎖と呼ばれることもある)の記述は、他方の鎖(「クリック」鎖と呼ばれることもある)の配列も定義する。組み換え核酸は、インビトロ、一般的にエンドヌクレアーゼによる核酸の操作によって本来形成された、天然には通常みられない形態の核酸であり得る。したがって、単離された抗体は、直鎖状の核酸、または通常は連結していないDNA分子をライゲーションすることによってインビトロで形成された発現ベクターによってコードされ得、これらは両方とも、本開示の目的上、組み換え体とみなされる。必要な全ての制御エレメントを有する組み換え核酸を作製し、宿主細胞または有機体中に再導入すれば、その核酸は、非組み換え的に、すなわち、インビトロ操作ではなく、宿主細胞のインビボ細胞機構を用いて、複製され得ることは理解される。しかしながら、このような核酸は、組み換え的に産生されて、次いで非組み換え的に複製されるが、本開示の目的上、組み換え体とみなされる。
【0186】
いくつかの実施形態において、組み換え核酸は、1つまたは複数の制御エレメントまたは制御配列を含み得る。制御エレメント及び制御配列は、特定の宿主生物中における機能的に連結したコード配列の発現に必要な核酸配列を指す。原核細胞に適した制御配列には、例えば、プロモーター、任意にオペレーター配列及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。本明細書で使用するとき、機能的に連結した配列は、別の核酸配列と機能的関係にある核酸配列である。例えば、核酸コード配列は、核酸制御配列に機能的に連結し得る。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するタンパク質前駆体として発現される場合、ポリペプチドのDNAに機能的に連結し得、プロモーターまたはエンハンサーは、当該配列の転写に影響を与える場合、コード配列に機能的に連結しており、あるいはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように位置付けられている場合、コード配列に機能的に連結している。ほとんどの実施形態において、機能的に連結した配列は、例えば、分泌リーダー配列に共有結合したDNA配列である。しかしながら、上述したように、いくつかの制御配列は、RNA配列として活性であり得る。多くの実施形態において、エンハンサー配列は、コード配列に隣接している必要はなく、むしろ、2つの配列は、1つまたは複数の核酸によって分離され得る。
【0187】
種々の場合、本開示のヌクレオチド配列の核酸は、天然ヌクレオチドに類似の方法で代謝されるヌクレオチドを含み得る。また合成の骨格類似体を有する核酸様構造も含まれ、限定するものではないが、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホロアミデート、アルキルホスホトリエステル、スルファメート、3’-チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3’-N-カルバメート、モルホリノカルバメート及びペプチド核酸(PNA)が挙げられる(例えば、「Oligonucleotides and Analogues,a Practical Approach,」F.Eckstein編、IRL Press at Oxford University Press(1991);「Antisense Strategies,」 Annals of the New York Academy of Sciences、第600巻、Baserga及びDenhardt編(NYAS 1992);Milligan(1993)J.Med.Chem.36:1923-1937;ならびに“Antisense Research and Applications”(1993,CRC Press)参照)。PNAは、N-(2-アミノエチル)グリシン単位などの非イオン性骨格を含む。ホスホロチオエート連結については、WO97/03211;WO96/39154;及びMata(1997)Toxicol.Appl.Pharmacol.144:189-197に記載されている。本用語に包含される他の合成骨格には、メチル-ホスホネート連結、または交互になっているメチル-ホスホネート連結とホスホジエステル連結(Strauss-Soukup(1997)Biochemistry 36:8692-8698)、ならびにベンジル-ホスホネート連結(Samstag(1996)Antisense Nucleic Acid Drug Dev 6:153-156)が挙げられる。
【0188】
当業者であれば理解するように、遺伝コードの縮重により、極めて多数の核酸を作製することができ、これらの全てが本開示のCDR(ならびに当該抗体の重鎖及び軽鎖または他の構成要素)をコードする。したがって、特定のアミノ酸配列が特定されれば、当業者は、コードされたタンパク質のアミノ酸配列を変えない方法で、1つまたは複数のコドン配列を単に変更することにより、任意の数の異なる核酸を作製することができる。
【0189】
種々の場合、配列番号1~48のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が含まれる。これらのヌクレオチドコード配列は、本開示のポリペプチド配列と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドに翻訳され得る。多くの場合、同一のポリペプチドをコードするヌクレオチドは、同一のヌクレオチド配列を有している必要はない。本開示のコード配列は、非翻訳配列、例えば、ポリアデニル化配列を更に含み得る。本発明のコード配列はまた、翻訳前に転写mRNAからスプライシングされるイントロンまたは介在非翻訳配列を含み得る。種々の場合、転写mRNAは、末端が7-メチルグアノシンでキャップされ得る。いくつかの実施形態において、コード配列は、最終の抗体に表れないアミノ酸のコード配列、例えば、抗体の輸送に必要な配列を含む。
【0190】
ヌクレオチドコード配列は、上述のようにBLASTnによってアライメントすることができる。種々の場合、アラインメントされたこれらのヌクレオチド配列の相同性(またはBLASTnにおける同一性)は、約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%若しくは95%超、及び/または約100%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%若しくは45%未満であり得る。種々の場合、アラインメントされた相同配列は、約700nt、600nt、500nt、400nt、300nt、200nt、100nt、90nt、80nt、70nt、60nt、50nt若しくは40nt未満、及び/または約50nt、60nt、70nt、80nt、90nt、100nt、200nt、300nt、400nt、500nt若しくは600nt超であり得る。
【0191】
種々の場合、コード配列は、標準的な遺伝コードに従ってアミノ酸配列に翻訳され得るリボ核酸配列の転写を導く。種々の場合、コードは、標準形のコードの変形形態を含み得る。いくつかの変形形態において、コード配列は、アミノ酸をコードしないイントロンまたは介在配列を含み得るが、これは、転写された後に除去され得、その後、リボ核酸がポリペプチドに翻訳される。
【0192】
抗体の作製方法
本開示はまた、少なくとも1つの上記のポリヌクレオチドを含む、プラスミド、発現ベクター、転写または発現カセットの形態の発現系及び発現構築物を提供する。更に、本開示は、こうした発現系または発現構築物を含む宿主細胞を提供する。
【0193】
通常、宿主細胞のいずれかに用いられる発現ベクターは、プラスミド維持のための配列ならびに外因性ヌクレオチド配列のクローニング及び発現のための配列を含む。こうした配列は、特定の実施形態にてフランキング配列と総称され、通常、プロモーター、1つまたは複数のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナー及びアクセプタスプライス部位を含む完全なイントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現させるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択マーカー要素のヌクレオチド配列のうち1つまたは複数を含む。これらの配列のそれぞれについては、以下に論じる。
【0194】
必要に応じて、ベクターは、「タグ」をコードする配列、すなわち、C5抗体をコードする配列の5’末端または3’末端に位置する、オリゴヌクレオチド分子を含んでよく、このオリゴヌクレオチド配列は、ポリHisタグ(ヘキサHisなど)、またはFLAG、HA(ヘマグルチニンインフルエンザウイルス)若しくはmycなどの別の「タグ」をコードしてよく、これらについては市販の抗体がある。このタグは、通常、ポリペプチドの発現時にポリペプチドに融合し、宿主細胞からのC5抗体のアフィニティー精製または検出のための手段として機能することができる。アフィニティー精製は、例えば、タグに対する抗体を親和性マトリックスとして用いるカラムクロマトグラフィーにより行うことができる。その後、必要に応じて、特定の切断用ペプチダーゼを用いるなどの各種手段により、精製した抗C5抗体からタグを取り除くことができる。
【0195】
フランキング配列は、同種(すなわち、宿主細胞と同じ種及び/または系統由来)、異種(すなわち、宿主細胞種または系統以外の種由来)、ハイブリッド(すなわち、2つ以上の供給源からのフランキング配列の組み合わせ)でも、合成でも、天然でもよい。したがって、フランキング配列の供給源は、フランキング配列が、宿主細胞機構内で機能でき、かつ当該機構により活性化され得るのであれば、いずれの原核生物若しくは真核生物、いずれの脊椎動物若しくは無脊椎動物またはいずれの植物であってもよい。
【0196】
本開示のベクターに有用なフランキング配列は、当該技術分野においてよく知られた複数の方法のいずれかにより得ることができる。通常、マッピングにより及び/または制限エンドヌクレアーゼ消化により本明細書にて有用なフランキング配列を事前に特定しておき、適切な制限エンドヌクレアーゼを用いて、適切な組織源から当該配列を単離することができる。場合により、フランキング配列の完全なヌクレオチド配列が知られていることもある。この場合、核酸合成またはクローニングについて本明細書に記載した方法を用いて、そのフランキング配列を合成してもよい。
【0197】
既知のフランキング配列が全配列であっても、その一部であっても、フランキング配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により及び/または同種若しくは別種由来のオリゴヌクレオチド及び/またはフランキング配列断片などの好適なプローブでゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。フランキング配列がわからない場合は、例えば、コード配列または更には別の遺伝子を含み得るより大きなDNA片から、フランキング配列を含むDNA断片を単離することができる。単離は、制限エンドヌクレアーゼ消化により適切なDNA断片を生成し、次いで、アガロースゲル精製、Qiagen(登録商標)カラムクロマトグラフィー(Chatsworth,CA)、または当業者に知られた他の方法を用いることにより単離することができる。この目的を達成するのに適した酵素の選択は、当業者には容易に明らかであろう。
【0198】
複製起点は、通常、市販されている原核生物発現ベクターの一部であり、この起点は、宿主細胞中におけるベクターの増幅を助けるものである。最適なベクターが複製起点部位を含まない場合、既知の配列に基づいて化学的に合成し、ベクターにライゲーションしてもよい。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs,Beverly,MA)由来の複製起点は、大部分のグラム陰性菌に好適であり、種々のウイルス性起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)またはHPV若しくはBPVなどのパピローマウイルス)は、哺乳動物細胞でのクローニングベクターに有用である。通常、哺乳動物の発現ベクターには複製起点成分を必要としない(例えば、SV40起点は、ウイルス初期プロモーターも含むという理由でのみ用いられることが多い)。
【0199】
転写終結配列は、通常、ポリペプチドコード領域末端の3’側に位置し、転写を終結させる働きがある。一般に、原核細胞の転写終結配列は、G-Cに富んだ断片であり、後にポリ-T配列が続く。当該配列はライブラリーから簡単にクローニングでき、またベクターの一部としても市販されているが、本明細書に記載の方法などの核酸合成方法を用いて容易に合成することもできる。
【0200】
選択マーカー遺伝子は、選択培地中で増殖する宿主細胞の生存及び増殖に必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)抗生物質若しくは他の毒素、例えば、原核生物宿主細胞の場合、アンピシリン、テトラサイクリン若しくはカナマイシンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)細胞の栄養要求性欠損を補うタンパク質、または(c)複合培地若しくは規定培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。具体的な選択マーカーは、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子及びテトラサイクリン耐性遺伝子である。有利には、ネオマイシン耐性遺伝子は、原核生物及び真核生物のいずれの宿主細胞の選択にも用いることもできる。
【0201】
他の選択遺伝子を用いて、発現させる遺伝子を増幅することができる。増幅とは、増幅または細胞生存に重要なタンパク質の産生に必要な遺伝子が、組み換え細胞の継代の染色体内でタンデムに繰り返されるプロセスである。哺乳動物細胞に好適な選択マーカーの例には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)及びプロモーターのないチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられる。哺乳動物細胞の形質転換体は、ベクター内に存在する選択遺伝子により形質転換体のみが生存するように一意的に適合させた選択圧下に置く。選択圧を加えるには、培地中の選択剤の濃度を連続的に高める条件下で形質転換細胞を培養する。これにより、選択遺伝子と、C5ポリペプチドまたはC5エピトープに結合する抗体などの別の遺伝子をコードするDNAとの両方の増幅がもたらされる。その結果、増幅したDNAから、抗C5抗体などの多量のポリペプチドが合成される。
【0202】
リボソーム結合部位は、通常、mRNAの翻訳開始に必要であり、Shine-Dalgarno配列(原核生物)またはKozak配列(真核生物)を特徴とする。この要素は、通常、プロモーターの3’側及び発現させるポリペプチドのコード配列の5’側に位置する。
【0203】
真核生物宿主細胞の発現系においてグリコシル化が望まれるような場合、種々のプレ配列またはプロ配列を操作して、グリコシル化または収率を改善してもよい。例えば、特定のシグナルペプチドのペプチダーゼ切断部位を変更してもよいし、グリコシル化に作用し得るプロ配列を加えてもよい。最終のタンパク質産物は、完全に除去され得なかった、発現に伴う1つまたは複数の付加アミノ酸を(成熟タンパク質の最初のアミノ酸に対して)-1位に有し得る。例えば、最終のタンパク質産物は、アミノ末端に結合したペプチダーゼ切断部位に認められる1つまたは2つのアミノ酸残基を有し得る。あるいは、いくつかの酵素切断部位を用いて、酵素で成熟ポリペプチド内の当該領域を切断すると、わずかに短縮した型の所望のポリペプチドが生じ得る。
【0204】
本開示の発現及びクローニングベクターは、通常、宿主生物により認識され、かつC5抗体をコードする分子に機能的に連結したプロモーターを含む。プロモーターは、構造遺伝子の開始コドンの上流(すなわち5’側)(通常、約100~1000bp以内)に位置し、構造遺伝子の転写を制御する非転写配列である。プロモーターは、慣習的に、誘導的プロモーターと構成的プロモーターの2つのクラスの1つに分類される。誘導的プロモーターは、栄養素の有無または温度変化などの培養条件の何らかの変化に応じて、プロモーターの制御下でDNAから高レベルの転写を開始する。一方、構成的プロモーターは、機能的に連結された遺伝子を均一に翻訳する。すなわち、遺伝子発現に対する制御はほとんどまたは全くない。候補となる種々の宿主細胞により認識される多数のプロモーターがよく知られている。好適なプロモーターは、制限酵素消化によりDNA源からプロモーターを取り出し、所望のプロモーター配列をベクターに挿入することによって、本開示のC5抗体に含まれる重鎖または軽鎖をコードするDNAに機能的に連結される。
【0205】
いくつかの実施形態において、酵母菌細胞を用いて本開示の抗C5抗体を産生することができる。酵母宿主との使用に好適なプロモーターもまた当該技術分野においてよく知られている。酵母エンハンサーは、酵母プロモーターとともに有利に用いられる。哺乳動物宿主細胞との使用に好適なプロモーターは、よく知られており、限定するものではないが、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及びまたはシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるものが挙げられる。他の好適な哺乳動物プロモーターには、異種哺乳動物プロモーター、例えば、熱ショックプロモーター及びアクチンプロモーターなどが挙げられる。
【0206】
対象となり得る更なるプロモーターには、SV40初期プロモーター(Benoist及びChambon、1981,Nature 290:304-310);CMVプロモーター(Thornsenら、1984,Proc.Natl.Acad.U.S.A.81:659-663);ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamotoら、1980,Cell 22:787-797);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1444-1445);メタロチオネイン遺伝子由来のプロモーター及び制御配列(Prinsterら、1982,Nature 296:39-42);ならびにベータ-ラクタマーゼプロモーター(Villa-Kamaroffら、1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727-3731)またはtacプロモーター(DeBoerら、1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21-25)などの原核生物プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。また、組織特異性を示し、トランスジェニック動物に用いられてきた、次の動物転写制御領域も対象である。膵腺房細胞で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら、1984,Cell 38:639-646;Ornitzら、1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399-409;MacDonald,1987,Hepatology 7:425-515);膵ベータ細胞で活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan,1985,Nature 315:115-122);リンパ系細胞で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら、1984,Cell 38:647-658;Adamesら、1985,Nature 318:533-538;Alexanderら、1987,Mol.Cell.Biol.7:1436-1444);精巣細胞、乳腺細胞、リンパ系細胞及びマスト細胞で活性なマウス乳腺癌ウイルス制御領域(Lederら、1986,Cell 45:485-495);肝臓で活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら、1987,Genes and Devel.1:268-276);肝臓で活発なアルファ-フェトプロテイン遺伝子制御領域(KrumLaufら、1985,Mol.Cell.Biol.5:1639-1648;Hammerら、1987,Science 253:53-58);肝臓で活発なアルファ1-アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら、1987,Genes and Devel.1:161-171);骨髄細胞で活性なベータ-グロビン遺伝子制御領域(Mogramら、1985,Nature 315:338-340;Kolliasら、1986,Cell 46:89-94);脳内の希突起膠細胞で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら、1987,Cell 48:703-712);骨格筋で活性なミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Sani,1985,Nature 314:283-286);ならびに視床下部で活性な生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら、1986,Science 234:1372-1378)。
【0207】
高等真核細胞による、本開示のC5抗体に含まれる軽鎖または重鎖をコードするDNAの転写を高めるために、エンハンサー配列をベクターに挿入することができる。エンハンサーは、DNAのシス作用エレメントであり、通常約10~300bpの長さであり、プロモーターに作用して転写を増加させる。エンハンサーは、配向及び位置に比較的依存せず、転写ユニットの5’側と3’側の両方の位置で確認されている。哺乳動物の遺伝子から入手できる複数のエンハンサー配列(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ-フェトプロテイン及びインスリン)が知られている。しかしながら、通常、ウイルス由来のエンハンサーが使用される。当該技術分野において知られている、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが真核生物プロモーターの活性化を増強する例示的な要素である。エンハンサーは、コード配列の5’側または3’側のいずれかでベクター内に配置されるが、通常はプロモーターの5’側の位置に置かれる。抗体の細胞外分泌を促進するために、適切な天然または異種シグナル配列(リーダー配列またはシグナルペプチド)をコードする配列を発現ベクターに組み込むことができる。シグナルペプチドまたはリーダーの選択は、抗体を産生させる宿主細胞の種類に依存し、天然シグナル配列を異種シグナル配列に置き換えてもよい。哺乳動物宿主細胞で機能するシグナルペプチドの例には、米国特許第4,965,195号に記載されているインターロイキン-7(IL-7)のシグナル配列、Cosmanら、1984,Nature 312:768に記載されているインターロイキン-2受容体のシグナル配列、欧州特許第0367566号に記載に記載されているインターロイキン-4受容体シグナルペプチド、米国特許第4,968,607号に記載されているI型インターロイキン-1受容体シグナルペプチド、欧州特許第0460846号に記載されているII型インターロイキン-1受容体シグナルペプチドが挙げられる。
【0208】
本開示に係る本特許請求する抗体を発現するための発現ベクターは、市販のベクターなどの出発ベクターから構築することができる。こうしたベクターは、所望のフランキング配列を全て含む場合もあれば、含まない場合もある。本明細書に記載のフランキング配列のうち1つまたは複数がまだベクターに存在していない場合、そのフランキング配列を個別に得て、ベクターにライゲーションしてもよい。フランキング配列のそれぞれを得るのに用いられる方法は、当業者によく知られている。
【0209】
ベクターを構築し、抗C5抗体コード配列に含まれる軽鎖、重鎖または軽鎖及び重鎖をコードする核酸分子をベクターの適切な部位に挿入した後、完成したベクターを、増幅及び/またはポリペプチド発現に好適な宿主細胞に挿入することができる。選択した宿主細胞への抗C5抗体の発現ベクターの形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共沈殿、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE-デキストランによるトランスフェクションまたは他の既知の技術などのよく知られた方法により行うことができる。選択する方法は、用いる宿主細胞の種類に応じてある程度決まる。これらの方法及び他の好適な方法は、当事者によく知られており、例えば、上掲のSambrookら、2001に記載されている。
【0210】
宿主細胞は、適切な条件下で培養すると、抗C5抗体を合成する。次いで当該抗体を培地から回収してもよいし(宿主細胞が培地中に分泌する場合)、当該抗体を産生する宿主細胞から直接回収してもよい(分泌されない場合)。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性に望ましいまたは必要なポリペプチド修飾(グリコシル化またはリン酸化など)及び生物活性分子への折りたたまれやすさなどの様々な要因に左右される。宿主細胞は、真核生物であっても原核生物であってもよい。
【0211】
発現のための宿主として入手可能な哺乳動物細胞株は、当該技術分野においてよく知られており、限定するものではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)を含むがこれらに限定されない米国培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手可能な不死化細胞株、及び他の多数の細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、細胞株は、どの細胞株が高発現レベルを有し、かつC5結合特性を有する抗体を恒常的に産生するかの決定を通じて選択することができる。別の実施形態では、その細胞自身の抗体を産生しないが、異種抗体を産生し分泌する能力を有するB細胞系統由来の細胞株を選択することができる。
【0212】
診断及び治療を目的とした抗C5抗体の使用
本開示の抗体は、生体試料中のC5及び/またはC5bの検出、ならびにC5タンパク質を産生する細胞または組織の特定に有用である。いくつかの実施形態において、本開示の抗C5抗体は、診断アッセイ、例えば、組織若しくは細胞中に発現されたC5、または血清若しくは組織中、若しくは細胞上のC5bを検出及び/または定量化する結合アッセイに使用することができる。
【0213】
いくつかの実施形態において、C5に特異的に結合する本開示の抗体は、処置を必要とする患者における補体またはC5媒介疾患の処置に使用することができる。加えて、本開示の抗C5抗体は、C5が他の補体タンパク質と複合体を形成するのを抑制するために使用することができ、これにより細胞または組織中のC5の生物活性が調節される。このように、C5に結合する抗体は、他の結合化合物との相互作用を調節及び/または阻止することができ、したがって、補体及びC5媒介疾患を改善する治療用途を有し得る。
【0214】
いくつかの実施形態において、抗C5抗体によるC5の結合により、C5媒介補体カスケードの崩壊が生じ得る。
【0215】
診断方法
本開示の抗体は、補体またはC5に関連する疾患及び/または状態を検出、診断または観察する、診断目的に使用することができる。本開示は、当業者に知られている従来の免疫組織学法を用いる、試料中のC5の存在の検出を提供する(例えば、Tijssen,1993,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays、15巻(R.H.Burdon及びP.H.van Knippenberg編、Elsevier,Amsterdam);Zola,1987,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques、147-158頁(CRC Press,Inc.);Jalkanenら、1985,J.Cell.Biol.101:976-985;Jalkanenら、1987,J.Cell Biol.105:3087-3096)。C5の検出は、インビボまたはインビトロで行うことができる。
【0216】
本明細書にて提供される診断用途は、C5の発現を検出するための抗体の使用を含む。C5の存在の検出に有用な方法の例には、酵素結合免疫吸着法(ELISA)及びラジオイムノアッセイ(RIA)などのイムノアッセイが挙げられる。
【0217】
診断用途の場合、抗体は、通常、検出可能な標識基で標識され得る。好適な標識基には、放射性同位体若しくは放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素基(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、または二次レポータによって認識される所与のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、標識基は、立体障害の可能性を低減するために、種々の長さのスペーサーアームを介して抗体に結合される。タンパク質を標識するための各種方法は、当該技術分野において知られており、本開示を実施するのに用いることができる。
【0218】
本開示の一態様は、C5を発現する1つの細胞または複数の細胞を特定することを提供する。具体的な実施形態において、抗体は、標識基で標識され、標識された抗体のC5への結合を検出する。更なる具体的な実施形態において、抗体のC5への結合は、インビボで検出することができる。更なる具体的な実施形態において、抗体/C5複合体を単離し、当該技術分野において知られた技術を用いて測定する。例えば、Harlow及びLane、1988,Antibodies:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor(ed.1991 and periodic supplements);John E.Coligan編、1993,Current Protocols In Immunology New York:John Wiley&Sonsを参照されたい。
【0219】
本開示の別の態様は、C5への結合に関して本開示の抗C5抗体と競合する試験分子の存在を検出することを提供する。このような1つのアッセイの例は、試験分子の存在または非存在下で、ある量のC5を含む溶液中の遊離抗体の量を検出することを伴う。遊離抗体(すなわち、C5に結合していない抗体)の量の増加は、試験分子が、C5結合に関して抗C5抗体と競合することができることを示す。一実施形態において、抗体は標識基で標識される。あるいは、試験分子が標識され、抗体の存在または非存在下で、遊離試験分子の量が観察される。
【0220】
徴候
補体系は、アテローム性動脈硬化症、急性心筋梗塞後の虚血再灌流、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎、免疫複合体性血管炎、関節リウマチ、動脈炎、動脈瘤、脳卒中、心筋症、出血性ショック、圧挫傷、多臓器不全、血液量減少性ショック及び腸管虚血、移植拒絶反応、心臓手術、PTCA、自然流産、神経損傷、脊髄損傷、重症筋無力症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、急性呼吸促迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、輸血関連急性肺損傷、急性肺損傷、グッドパスチャー病、心筋梗塞、心肺バイパス後の炎症、心肺バイパス、敗血性ショック、移植拒絶反応、異種移植、熱傷、全身性エリテマトーデス、膜性腎症、ベルジェ病、乾癬、類天疱瘡、皮膚筋炎、抗リン脂質症候群、炎症性腸疾患、血液透析、白血球瀉血、血漿瀉血、ヘパリン誘導性体外膜型酸素付加LDL沈殿、体外膜型酸素付加、ならびに黄斑変性症を含む、いくつかの急性及び慢性状態の要因となることが示されている。
【0221】
ドライ及びウェット(非滲出及び滲出)型を含む全ての段階の加齢黄斑変性(AMD)などの黄斑変性症、脈絡膜新生血管(CNV)、ぶどう膜炎、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生及び網膜血管新生などの糖尿病性及び他の虚血関連網膜症、ならびに他の眼内血管新生疾患が挙げられる。補体に関連する眼症状の1つの群には、非滲出型(ウェット型)及び滲出型(ドライ型または萎縮性)AMD、脈絡膜新生血管(CNV)、糖尿病性網膜症(DR)及び眼内炎を含む、加齢黄斑変性(AMD)が挙げられる。
【0222】
本開示の抗C5抗体は、1つまたは複数のサイトカイン、リンフォカイン、造血因子及び/または抗炎症物質と組み合わせて用いることができる。
【0223】
本明細書にて引用する疾患及び障害の処置は、本明細書にて提供する抗C5抗体のうちの1つまたは複数での処置と組み合わせた疼痛及び炎症の制御のための第一選択薬の使用(前処置、後処置またはまたは併用処置)を含み得る。ある場合には、薬剤は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)に分類される。第二治療薬には、コルチコステロイド、遅効性抗リウマチ薬(SAARD)、または疾患修飾(DM)薬が挙げられる。以下の化合物に関する情報は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、第16版、Merck,Sharp&Dohme Research Laboratories,Merck&Co.,Rahway,N.J.(1992)及びPharmaprojects,PJB Publications Ltd.に見出すことができる。
【0224】
具体的な実施形態において、本開示は、本明細書に引用される疾患及び障害の処置のための、抗体及び1つまたは複数のNSAIDのうちのいずれかの使用に関する。NSAIDは、少なくとも部分的に、プロスタグランジン合成の阻害による抗炎症作用を有する(Goodman and Gilman in 「The Pharmacological Basis of Therapeutics,」 MacMillan 第7版(1985))。NSAIDは、少なくとも9つの群:(1)サリチル酸誘導体、(2)プロピオン酸誘導体、(3)酢酸誘導体、(4)フェナム酸誘導体、(5)カルボン酸誘導体、(6)酪酸誘導体、(7)オキシカム、(8)ピラゾール及び(9)ピラゾロンに特徴付けられる。
【0225】
別の具体的な実施形態において、本開示は、1つまたは複数のサリチル酸誘導体、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。このようなサリチル酸誘導体、これらのプロドラッグエステル及びこれらの薬学的に許容可能な塩には、アセトアミノサロール、アロキシピリン、アスピリン、ベノリラート、ブロモサリゲニン、アセチルサリチル酸カルシウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、ジフルシナル、エテルサラート、フェンドサール、ゲンチシン酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸イミダゾール、アセチルサリチル酸リシン、メサラジン、サリチル酸モルホリン、サリチル酸1-ナフチル、オルサラジン、パルサルミド、アセチルサリチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、サラセタミド、サリチルアミドO-酢酸、サルサラート、サリチル酸ナトリウム及びスルファサラジンが含まれる。類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連するサリチル酸誘導体もまた、この群に包含されることが意図される。
【0226】
追加の具体的な実施形態において、本開示は、1つまたは複数のプロピオン酸誘導体、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。プロピオン酸誘導体、これらのプロドラッグエステル及びこれらの薬学的に許容可能な塩には、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシ酸、カルプロフェン、デキシンドプロフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、フルクロプロフェン、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロキサム、インドプロフェン、イソプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピケトプロフェン、ピメプロフェン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プロチジン酸、ピリドキシプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸及びチオキサプロフェンが含まれる。類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連するプロピオン酸誘導体もまた、この群に包含されることが意図される。
【0227】
更に別の具体的な実施形態において、本開示は、1つまたは複数の酢酸誘導体、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。酢酸誘導体、これらのプロドラッグエステル及びこれらの薬学的に許容可能な塩には、アセメタシン、アルクロフェナク、アンフェナク、ブフェキサマク、シンメタシン、クロピラク、デルメタシン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、エトドラク、フェルビナク、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェンクロジック酸、フェンチアザク、フロフェナック、グルカメタシン、イブフェナック、インドメタシン、イソフェゾラック、イソキセパク、ロナゾラク、メチアジン酸、オキサメタシン、オキシピナク、ピメタシン、プログルメタシン、スリンダク、タルメタシン、チアラミド、チオピナク、トルメチン、トルメチンナトリウム、ジドメタシン及びゾメピラクが含まれる。類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連する酢酸誘導体もまた、この群に包含されることが意図される。
【0228】
別の具体的な実施形態において、本開示は、1つまたは複数のフェナム酸誘導体、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。フェナム酸誘導体、これらのプロドラッグエステル及びこれらの薬学的に許容可能な塩には、エンフェナム酸、エトフェナマート、フルフェナム酸、イソニキシン、メクロフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム、メドフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、タルニフルマート、テロフェナマート、トルフェナム酸及びウフェナマートが含まれる。類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連するフェナム酸誘導体もまた、この群に包含されることが意図される。
【0229】
追加の具体的な実施形態において、本開示は、1つまたは複数のカルボン酸誘導体、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。使用することができるカルボン酸誘導体、これらのプロドラッグエステル及びこれらの薬学的に許容可能な塩には、クリダナク、ジフルニサル、フルフェニサール、イノリジン、ケトロラク及びチノリジンが含まれる。類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連するカルボン酸誘導体もまた、この群に包含されることが意図される。
【0230】
更に別の具体的な実施形態において、本開示は、1つまたは複数の酪酸誘導体、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。酪酸誘導体、これらのプロドラッグエステル及びこれらの薬学的に許容可能な塩には、ブマジゾン、ブチブフェン、フェンブフェン及びキセンブシンが含まれる。類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連する酪酸誘導体もまた、この群に包含されることが意図される。
【0231】
別の具体的な実施形態において、本開示は、1つまたは複数のオキシカム、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。オキシカム、これらのプロドラッグエステル及びこれらの薬学的に許容可能な塩には、ドロキシカム、エノリカム、イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカム、テノキシカム及び4-ヒドロキシル-1,2-ベンゾチアジン1,1-ジオキシド4-(N-フェニル)-カルボキサミドが含まれる。類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連するオキシカムもまた、この群に包含されることが意図される。
【0232】
また別の具体的な実施形態において、本開示は、1つまたは複数のピラゾール、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。使用することができるピラゾール、これらのプロドラッグエステル及びこれらの薬学的に許容可能な塩には、ジフェナミゾール及びエピリゾールが含まれる。類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連するピラゾールもまた、この群に包含されることが意図される。
【0233】
追加の具体的な実施形態において、本開示は、1つまたは複数のピラゾロン、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。使用することができるピラゾロン、これらのプロドラッグエステル及びこれらの薬学的に許容可能な塩には、アパゾン、アザプロパゾン、ベンゾピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、モラゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピペブゾン、プロピルフェナゾン、ラミフェナゾン、スキシブゾン及びチアゾリノブタゾンが含まれる。類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連するピラゾロンもまた、この群に包含されることが意図される。
【0234】
別の具体的な実施形態において、本開示は、次のNSAID:ε-アセトアミドカプロン酸、S-アデノシル-メチオニン、3-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン、アニトラザフェン、アントラフェニン、ベンダザック、ベンダザックリシナート、ベンジダミン、ベプロジン、ブロペラモール、ブコローム、ブフェゾラク、シプロクアゾン、クロキシマート、ダジダミン、デボキサメト、デトミジン、ジフェンピラミド、ジフェンピラミド、ジフィサラミン、ジタゾール、エモルファゾン、メシル酸ファネチゾール、フェンフルミゾール、フロクタフェニン、フルミゾール、フルニキシン、フルプロクアゾン、ホピルトリン、ホスホサール、グアイメサール、グアイアズレン、イソニキシルン(isonixirn)、レフェタミンHCl、レフルノミド、ロフェミゾール、ロチファゾール、リシンクロニキシナート、メセクラゾン、ナブメトン、ニクチンドール、ニメスリド、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサセプロール、オキサパドール、パラニリン、ペリソキサール、クエン酸ペリソキサール、ピホキシム、ピプロキセン、ピラゾラク、ピルフェニドン、プロクアゾン、プロキサゾール、チエラビンB、チフラミゾール、チメガジン、トレクチン、トルパドール、トリプトアミドならびに480156S、AA861、AD1590、AFP802、AFP860、AI77B、AP504、AU8001、BPPC、BW540C、CHINOIN127、CN100、EB382、EL508、F1044、FK-506、GV3658、ITF182、KCNTEI6090、KME4、LA2851、MR714、MR897、MY309、ONO3144、PR823、PV102、PV108、R830、RS2131、SCR152、SH440、SIR133、SPAS510、SQ27239、ST281、SY6001、TA60、TAI-901(4-ベンゾイル-1-インダンカルボン酸)、TVX2706、U60257、UR2301及びWY41770などの企業コード番号によって指定されるもののうちの1つまたは複数のいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。NSAIDに類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連するNSAIDもまた、この群に包含されることが意図される。
【0235】
また別の具体的な実施形態において、本開示は、リューマチ疾患などの急性及び慢性炎症、移植片対宿主病、ならびに多発性硬化症を含む、本明細書に列記した疾患及び障害の処置のための、1つまたは複数のコルチコステロイド、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。コルチコステロイド、これらのプロドラッグエステル及びこれらの薬学的に許容可能な塩には、ヒドロコルチゾン及びヒドロコルチゾンに由来する化合物、例えば、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、酪酸クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロロニド、フルメタゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルニソリド、フルオシノニド、フルオロシノロンアセトニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、ヘキサン酸フルオコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニソロン、フルランデノリド、ホルモコルタール、ハルシノニド、ハロメタソン、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタマート、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンリン酸エステル、ヒドロコルチゾンコハク酸21-ナトリウム、テブト酸ヒドロコルチゾン、マジプレドン、メドリソン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルバート、プレドニゾロン、21-ジエドリアミノ酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、21-m-スルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウム、21-ステアログリコール酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、21-トリメチル酢酸プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニバール、プレドニリデン、プレドニリデン21-ジエチルアミノアセタート、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド及びトリアムシノロンヘキサアセトニドが含まれる。類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連するコルチコステロイドもまた、この群に包含されることが意図される。
【0236】
別の具体的な実施形態において、本開示は、リューマチ疾患などの急性及び慢性炎症、移植片対宿主病、ならびに多発性硬化症を含む、本明細書に列記した疾患及び障害の処置のための、1つまたは複数の遅効性抗リウマチ薬(SAARD)または疾患修飾抗リウマチ薬(DMARDS)、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。SAARDまたはDMARDS、これらのプロドラッグエステル及び薬学的に許容可能な塩には、アロクプレイドナトリウム、オーラノフィン、金チオグルコース、金チオグリカニド、アザチオプリン、ブレキナルナトリウム、ブシラミン、3-金チオ-2-プロパノール-1-スルホン酸カルシウム、クロラムブシル、クロロキン、クロブザリット、クプロキソリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、ダプソン、15-デオキシスペルグアリン、ジアセレイン、グルコサミン、金塩(例えば、シクロキン金塩、金チオリンゴ酸ナトリウム、金チオ硫酸ナトリウム)、ヒドロキシクロロキン、ヒドロキシクロロキン硫酸塩、ヒドロキシウレア、ケブゾン、レバミゾール、ロベンザリット、メリチン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミゾリビン、ミコフェノール酸モフェチル、ミオラル(myoral)、ナイトロジェンマスタード、D-ペニシラミン、SKNF86002及びSB203580などのピリジノールイミダゾール、ラパマイシン、チオール、チモポイエチン及びビンクリスチンが含まれる。類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連するSAARDまたはDMARDもまた、この群に包含されることが意図される。
【0237】
別の具体的な実施形態において、本開示は、急性及び慢性炎症を含む、本明細書に列記した疾患及び障害の処置のための、1つまたは複数のCOX2阻害剤、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。COX2阻害剤、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩の例は、例えば、セレコキシブが挙げられる。類似の鎮痛作用及び抗炎症特性を有する構造的に関連するCOX2阻害剤もまた、この群に包含されることが意図される。COX-2選択的阻害剤の例には、限定するものではないが、エトリコキシブ、バルデコキシブ、セレコキシブ、リコフェロン、ルミラコキシブ、ロフェコキシブなどが挙げられる。
【0238】
また別の具体的な実施形態において、本開示は、急性及び慢性炎症を含む、本明細書に列記した疾患及び障害の処置のための、1つまたは複数の抗菌剤、これらのプロドラッグエステルまたはこれらの薬学的に許容可能な塩のうちのいずれかと組み合わせた抗体の使用(前処置、後処置または併用処置)に関する。抗菌剤には、例えば、広範な種類のペニシリン、セファロスポリン及び他のベータ-ラクタム、アミノグリコシド、アゾール、キノロン、マクロライド、リファマイシン、テトラサイクリン、スルホンアミド、リンコサミド及びポリミキシンが挙げられる。ペニシリンには、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フロキサシリン、アンピシリン、アンピシリン/スルバクタム、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸、ヘタシリン、シクラシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、チカルシリン/クラブラン酸、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリン及びメシリナムが挙げられるが、これらに限定されない。セファロスポリン及び他のベータ-ラクタムには、セファロチン、セファピリン、セファレキシン、セフラジン、セファゾリン、セファドロキシル、セファクロル、セファマンドール、セフォテタン、セフォキシチン、セフロキシム、セフォニシド、セフラジン、セフィキシム、セフォタキシム、モキサラクタム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジム、イミペネム及びアズトレオナムが挙げられるが、これらに限定されない。アミノグリコシドには、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、カナマイシン及びネオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。アゾールには、フルコナゾールが挙げられるが、これらに限定されない。キノロンには、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン及びテマフロキサシンが挙げられるが、これらに限定されない。マクロライドには、エリスロマイシン、スピラマイシン及びアジスロマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。リファマイシンには、リファンピシンが挙げられるが、これらに限定されない。テトラサイクリンには、スピサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、グアメシクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン、ロリテトラサイクリン、サンサイクリン、セノサイクリン(senociclin)及びテトラサイクリンが挙げられるが、これらに限定されない。スルホンアミドには、スルファニルアミド、スルファメトキサゾール、スルファセタミド、スルファジアジン、スルフイソキサゾール及びコ-トリモキサゾール(トリメトプリム/スルファメトキサゾール)が挙げられるが、これらに限定されない。リンコサミドには、クリンダマイシン及びリンコマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。ポリミキシン(ポリペプチド)には、ポリミキシンB及びコリスチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0239】
処置方法:医薬製剤、投与経路
治療的有効量の本開示の抗体の1つまたは複数を、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/またはアジュバントとともに含む組成物が開示される。加えて、本開示は、このような医薬組成物を投与することによって患者を処置する方法を提供する。患者は、ヒト対象または動物対象のいずれかであり得る。
【0240】
1つまたは複数の抗C5抗体を含む医薬組成物は、C5活性を低減するために用いることができる。1つまたは複数の抗体を含む医薬組成物は、C5活性に関連する帰結、症状及び/または病的状態の処置に用いることができる。各種実施形態において、1つまたは複数の抗体を含む医薬組成物は、補体経路を阻害する方法にて用いることができる。1つまたは複数の抗体を含む医薬組成物は、C5活性に関連する帰結、症状及び/または病的状態を処置する方法にて用いることができる。1つまたは複数の抗体を含む医薬組成物は、MAC形成を抑制する方法にて用いることができる。1つまたは複数の抗体を含む医薬組成物は、黄斑変性症を防ぐ方法にて用いることができる。
【0241】
種々の許容可能な製剤化材料は、使用される用量及び濃度にて、レシピエントに対して非毒性である。具体的な実施形態において、治療的有効量の抗C5抗体を含む医薬組成物が提供される。
【0242】
ある特定の実施形態において、許容可能な製剤化材料は、使用される用量及び濃度にて、レシピエントに対して非毒性である。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧モル濃度、粘性、透明度、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解若しくは放出速度、吸着または浸透を改変する、維持するまたは保持するための製剤化材料を含んでもよい。このような実施形態において、好適な製剤化材料には、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシンなど)、抗菌剤、酸化防止剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムなど)、緩衝剤(ホウ酸、重炭酸、Tris-HCl、クエン酸、ホウ酸または他の有機酸など)、増量剤(マンニトールまたはグリシンなど)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)、錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど)、充填剤、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリンなど)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど)、着色剤、矯味剤及び希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、低分子量ポリペプチド、塩生成対イオン(ナトリウムなど)、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素など)、溶剤(グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど)、糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど)、懸濁剤、界面活性剤または湿潤剤(プルロニック(登録商標)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20などのポリソルベート、ポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポールなど)、安定化向上剤(スクロースまたはソルビトールなど)、張性向上剤(アルカリ金属ハロゲン化物、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、マンニトールソルビトールなど)、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤及び/または薬剤アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第18版(A.R.Genrmo編)、1990,Mack Publishing Companyを参照されたい。
【0243】
ある特定の実施形態において、最適な医薬組成物は、例えば、意図する投与経路、送達形態及び所望の用量に応じて、当業者によって決定される。例えば、上掲のREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESを参照されたい。ある特定の実施形態において、このような組成物は、本開示の抗体の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度及びインビボでのクリアランス速度に影響し得る。ある特定の実施形態において、医薬組成物中の主要なビヒクルまたは担体は、水性の性質であっても、非水性の性質であってもよい。例えば、好適なビヒクルまたは担体は、非経口的投与用の組成物に一般的である他の物質が添加されている場合もある、注入用水溶液、生理食塩水または人工脳脊髄液であり得る。血清アルブミンと混合した中性緩衝食塩水または食塩水は、更なる代表的なビヒクルである。具体的な実施形態において、医薬組成物は、約pH7.0~8.5のTris緩衝液または約pH4.0~5.5の酢酸緩衝液を含み、ソルビトールまたは好適な代替物を更に含んでもよい。本開示のある特定の実施形態において、C5抗体組成物は、所望の程度の純度を有する選択した組成物を任意の製剤化剤(上掲のREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES)と混合することによって、凍結乾燥したケークまたは水溶液の形態として、保存用に調製することができる。更に、ある特定の実施形態において、C5抗体生成物は、スクロースなどの適切な賦形剤を用いて、凍結乾燥物として製剤化することができる。
【0244】
本開示の医薬組成物は、非経口送達用に選択することができる。あるいは、組成物は、吸入用または経口などの消化管を介した送達用に選択することができる。このような薬学的に許容可能な組成物の調製は、当業者の技術範囲内である。
【0245】
製剤成分は、投与部位に許容可能な濃度で存在し得る。ある特定の実施形態において、組成物を生理的なpHまたはわずかに下回るpH、通常は約5~約8のpH範囲内に維持するために、緩衝液が用いられる。
【0246】
非経口的投与が企図される場合、本開示にて使用するための治療組成物は、薬学的に許容可能なビヒクル中に所望のC5抗体を含む、パイロジェンフリーの非経口的に許容可能な水溶液の形態で提供され得る。非経口注入に特に好適なビヒクルは、滅菌蒸留水であり、C5抗体は、適切に保存された滅菌等張溶液として製剤化される。ある特定の実施形態において、調製は、所望の分子と、蓄積注射によって送達することができる製品の制御放出または持続放出をもたらし得る、注入可能な微粒子、生体内分解性粒子、高分子化合物(ポリ乳酸またはポリグリコール酸など)、ビーズまたはリポソームなどの作用物質との製剤化を伴い得る。ある特定の実施形態において、循環継続期間を助長する効果を有する、ヒアルロン酸も用いることができる。ある特定の実施形態において、埋め込み型薬剤送達デバイスを使用して、所望の抗体を導入することができる。
【0247】
本開示の医薬組成物は、吸入用に製剤化することができる。これらの実施形態において、C5抗体は、吸入可能な乾燥粉末として有利に製剤化される。具体的な実施形態において、C5抗体の吸入溶液はまた、エアロゾル送達用の噴射剤とともに製剤化してもよい。ある特定の実施形態において、溶液は、噴霧化され得る。経肺投与及びその製剤化方法は、国際特許出願番号PCT/US94/001875に更に記載されており、化学修飾したタンパク質の経肺送達について記載されている(参照により援用する)。製剤が経口投与可能であることも企図される。この様式で投与されるC5抗体は、錠剤及びカプセル剤などの固体剤形の配合に通常使用される担体を含有してまたは含まずに、製剤化することができる。ある特定の実施形態において、カプセル剤は、生物学的利用能が最大化され、プレシステミック分解が最小化される胃腸管内の時点で、製剤の有効成分を放出するように設計することができる。C5抗体の吸収を促進するために、更なる作用物質を含めることができる。希釈剤、矯味剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤及び結合剤も使用され得る。
【0248】
本開示の医薬組成物は、錠剤の製造に好適な非毒性の賦形剤との混合物中に、有効量の1つまたは複数のC5抗体を含むように提供される。錠剤を滅菌水または別の適切なビヒクル中に溶解することによって、溶液を単位剤形に調製することができる。好適な賦形剤には、炭酸カルシウム、炭酸若しくは重炭酸ナトリウム、ラクトース若しくはリン酸カルシウムなどの不活性希釈剤、またはデンプン、ゼラチン若しくはアカシアなどの結合剤、またはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸若しくはタルクなどの潤滑剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0249】
更なる医薬組成物は、当業者に明らかであり、持続送達製剤または制御送達製剤中にC5抗体を含む製剤が挙げられる。リポソーム担体、生体内分解性微小粒子または多孔性ビーズ及び蓄積注射などの種々の他の持続送達手段または制御送達手段を製剤化するための技術もまた、当業者に知られている。例えば、国際特許出願番号PCT/US93/00829を参照されたい(参照により援用する)。これには、医薬組成物の送達のための多孔性ポリマー微小粒子の制御放出について記載されている。徐放性調製物は、成形された物品の形態、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの半透過性ポリマーマトリクスを含み得る。徐放性マトリクスには、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号及び欧州特許出願公開番号EP058481に記載のもの(この各々を参照により援用する))、L-グルタミン酸とガンマエチル-L-グルタミン酸のコポリマー(Sidmanら、1983,Biopolymers 2:547-556)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)(Langerら、1981,J.Biomed.Mater.Res.15:167-277及びLanger,1982,Chem.Tech.12:98-105)、エチレンビニルアセテート(上掲のLangerら、1981)またはポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許出願公開番号EP133,988)を挙げることができる。徐放性組成物はまた、当該技術分野において知られた複数の方法のうちのいずれかによって調製することができるリポソームを含んでもよい。例えば、Eppsteinら、1985,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:3688-3692;欧州特許出願公開番号EP036,676、EP088,046及びEP143,949を参照されたい(参照により援用する)。
【0250】
インビボ投与に使用される医薬組成物は、通常、滅菌した調製物として提供される。滅菌は、濾過滅菌膜を通す濾過によって行うことができる。組成物が凍結乾燥される場合、この方法を用いる滅菌は、凍結乾燥及び再構成の前または後のいずれかで行うことができる。非経口的投与用の組成物は、凍結乾燥の形態または溶液で保存することができる。非経口組成物は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注入針によって貫通可能な栓を有する静脈注入用溶液バッグまたはバイアル中に置かれる。
【0251】
医薬組成物は、製剤化された後、溶液、懸濁液、ゲル、エマルション、固体、結晶として、または無水粉末若しくは凍結乾燥粉末として、滅菌バイアル中に保存することができる。このような製剤は、即時使用可能な形態または投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥)のいずれかで保存することができる。本開示はまた、単回投与単位を調製するためのキットも提供する。本開示のキットは、乾燥させたタンパク質を有する第1の容器と水性製剤を有する第2の容器との両方をそれぞれ含み得る。本開示のある特定の実施形態において、単一及び多数の区画に区切られた事前充填シリンジ(例えば、液体シリンジ及びリオシリンジ)を含むキットが提供される。
【0252】
使用されるC5抗体含有医薬組成物の治療的有効量は、例えば、治療状況及び治療目的によって異なる。当業者であれば、処置に適切な用量レベルが、ある程度、送達される分子、C5抗体の使用に対する適応症、投与経路、ならびに患者の体格(体重、体表または器官の大きさ)及び/または状態(年齢及び全般的健康)に応じて変わることを理解するであろう。ある特定の実施形態において、臨床医は、最適な治療効果を得るために、用量を調節し、投与経路を変えることができる。一般的な用量は、上述の要因に応じて、約0.1μg/kg~最大約30mg/kgまたはそれ以上の範囲であってよい。具体的な実施形態において、用量は、0.1μg/kg~最大約30mg/kg、任意に1μg/kg~最大約30mg/kgまたは10μg/kg~最大約5mg/kgの範囲であってよい。
【0253】
投薬頻度は、使用される製剤中の特定のC5抗体に関する薬物動態学パラメータによって異なる。通常、臨床医は、所望の効果が得られる用量に達するまで組成物を投与する。したがって、組成物は、単回投与として、またはある期間の間に2回またはそれ以上の投与(同じ量の所望の分子を含んでいても、含まなくてもよい)として、または埋め込みデバイス若しくはカテーテルを介した連続的注入として、投与され得る。更なる適切な用量の改善は、当業者によって慣用的に行われ、当業者によって実施される慣用的作業の範囲内である。適切な用量は、適切な用量反応データの使用により確認することができる。ある特定の実施形態において、本開示の抗体は、長時間にわたって、患者に投与することができる。本開示の抗体の長期投与により、完全にヒトではない抗体、例えば、非ヒト動物中にてヒト抗原に対して生じた抗体、例えば、非ヒト種中で産生された完全にヒトではない抗体または非ヒト抗体に通常関連する不都合な免疫応答またはアレルギー応答を最小限に抑えられる。
【0254】
医薬組成物の投与経路は、既知の方法に従うものであり、例えば、経口的に、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、側脳室内、筋肉内、眼内、硝子体内、網膜下、動脈内、門脈内若しくは病巣内経路による注入を介して、徐放性システムによりまたは埋め込みデバイスによる。ある特定の実施形態において、組成物は、ボーラス注入により、または輸液によって連続的に、または埋め込みデバイスによって投与され得る。
【0255】
組成物はまた、所望の分子が吸収または封入されている膜、スポンジまたは別の適切な材料の埋め込みにより、局所的に投与することができる。ある特定の実施形態において、埋め込みデバイスを用いる場合、このデバイスは、任意の好適な組織または器官内に埋め込むことができ、拡散、徐放性ボーラス、または連続的投与によって所望の分子の送達がなされ得る。眼への埋め込みの場合、埋め込み物は、眼内注入、硝子体内注入、網膜下注入、脈絡膜上注入、球後注入またはテノン腔下への注入によって埋め込むことができる。
【0256】
本開示に係るC5抗体医薬組成物のエクスビボでの使用が望ましい場合もある。このような場合、患者から取り出した細胞、組織または器官をC5抗体医薬組成物に曝露させた後、次いで、その細胞、組織及び/または器官を患者に戻して移植する。
【0257】
特に、C5抗体は、本明細書に記載されているものなどの方法を用いて、C5抗体を発現及び分泌するように遺伝子操作された特定の細胞を移植することによって、送達することができる。ある特定の実施形態において、このような細胞は、動物細胞またはヒト細胞であってよく、自己由来、非相同由来、または異種由来であり得る。ある特定の実施形態において、細胞は、不死化され得る。他の実施形態において、免疫応答の可能性を低減するために、細胞をカプセル封入して周囲組織の浸潤を避けることができる。更なる実施形態において、カプセル封入材料は、通常、タンパク質生成物の放出を可能とするが、患者の免疫系または周囲組織からの他の有害要因による細胞の破壊を防ぐ、生体適合性の半透過性ポリマー封入物または膜である。
【0258】
本明細書の本文内に引用した全ての参考文献は、参照によりその全体を明示的に本明細書に援用する。
【実施例0259】
以下の実施例は、実施した実験及び得られた結果を含め、例示のみを目的に提供するものであり、本開示を限定するものと解釈すべきではない。
【0260】
実施例1-免疫化及びハイブリドーマ作製
ハイブリドーマ及びモノクローナル抗体の作製に関する免疫化及びスクリーニングは、基本的にAntibodies,A laboratory Mannual,Cold Spring Harbor Laboratoryに記載の通りに実施した。本出願に記載の抗C5モノクローナル抗体の作製に関する手順を以下に簡潔に記載する。補体C5が欠損したB10.D2-HcOH2dH2-T18c/02SnJマウス(Jackson Labs(登録商標)、Bar Harbor maine)を、完全フロイントアジュバント中の75μgのヒトC5(Quidel(登録商標)cat#A403)を用いて足蹠注入し、次いで、28日に、75μgのC5タンパク質を不完全フロイントアジュバントとともに用いて腹腔内(I.P.)投与により逐次的に二次ブーストすることによって、免疫化した。C5タンパク質に対する反応性について、血清力価に関するELISAスクリーニングを、二次ブースト後9~10日に実施した。最初の融合群のために、好ましい力価を示すマウスを82日、83日及び84日に融合ブースト(pBS中C5 75μg、I.P.)で免疫化し、85日に標準的技術を用いてマウスミエローマSP2/0に脾臓融合した。第2のマウスコホートを68日及び175日に更に免疫化し、次いで、195日、196日及び197日に融合ブーストを行い、198日に融合した。全ての融合ウェルを、融合後18日に、C5タンパク質に対する反応性についてELISAによってスクリーニングし、陽性のハイブリドーマを標準的技術を用いてサブクローニングし、モノクローナル抗体を誘導させた。
【0261】
実施例2-ハイブリドーマ培養
ハイブリドーマを、15%Fetal Clone II、OPI、HAT、非必須アミノ酸及び組み換えマウスIL-6を含有するDMEM中に維持した。ハイブリドーマの上清を酵素結合免疫吸着法(ELISA)によってスクリーニングして、抗ヒトC5抗体を検出した。C5陽性培養物を、15%Fetal Clone II、OPI及び非必須アミノ酸を含有するDMEM中に広げ、限界希釈法により2回サブクローニングした。サブクローニングしたハイブリドーマのアイソタイプを、SBA Clonotyping System/HRP(SouthernBiotech)を製造者のプロトコルに従って用いて同定した。
【0262】
実施例3-モノクローナル可変重鎖ドメイン及び軽鎖ドメインのクローニング及び配列決定
可変軽鎖(VL)及び重鎖(VH)の各ドメインをde novo RT-PCR増幅に従ってクローニングした。簡潔に述べれば、全RNA分離キット(Qiagen(登録商標))を用いて、選択したサブクローニングハイブリドーマ細胞株から全RNAを分離した。First Strand cDNA合成キット(Invitrogen(登録商標))を用いて、cDNA合成を行った。フォワードプライマーは、VL及びVH領域のN末端アミノ酸配列に特異的であり、LC及びHCリバースプライマーは、定常軽鎖(CL)及び定常重鎖ドメイン1(CH1)中の領域をアニーリングするように設計した。do novoクローニングに使用したプライマーを以下に記載する。標準的技術を用いて、増幅させたVLまたはVH断片を単離し、pCR(登録商標)II-TOPベクター(Invitrogen(登録商標)、Life Technologies(登録商標))にサブクローニングし、配列決定した。

【0263】
PCRは、次の通りに実施した。
cDNA5μL
10×PCRバッファ5μL
dNTP1μL
プライマーミックス2.5μL
ポリメラーゼ1μL
dH2O 35.5μL
全量、50μL
【0264】
実施例4-抗C5抑制活性スクリーニング(CH50溶血アッセイ)
ヒツジ赤血球(RBC)(Innovative Research IC100-0210)を、抗RBCストロマ抗体(Sigma Aldrich,Cat.No.S8014)と37℃で1時間インキュベートすることによって感作させた後、洗浄し、5×108/mLの濃度のGVB++緩衝液中に再懸濁して、使用するまで4℃で保存した。溶血活性を分析するために、ヒト血清の存在下にてGVB++緩衝液でRBCを最終濃度4.1×107/mLに希釈した後、37℃で1時間インキュベーションした。非溶解RBC及び細胞残屑を10,000×gにて4℃で10分間ペレット化し、上清中に放出されたヘモグロビンレベルを541nmでの吸光度をモニタすることで測定することによって、溶血活性レベルを特定した。抗体の機能活性を試験する検査において、血清及び抗体を4℃で20分間インキュベートし、その後、赤血球を添加した。ハイブリドーマ細胞培養上清の活性を試験するために、上清を3%NHSのGVB緩衝液と1:1の比にて4℃で60分間インキュベートし、その後、感作RBCを添加した。対照には、血清のみ(陽性対照)、dH2O(100%溶解)、及び血清+EDTA 10mM(陰性対照)を含めた。第2経路の分析のために、GVB+10mM EGTA(Boston Bioproducts IBB-310)及びC1Q欠損ヒト血清(Quidel,A509)を用いた。いくつかのアッセイでは、ヒツジ赤血球に代えて未感作ウサギ赤血球(1×107)を使用し、0.5mM EGTAを含むGVB緩衝液(Boston Bioproducts IBB-310)の存在下でアッセイを行う。
【0265】
図3は、スクリーニングした選択した番号のクローンに関する溶血アッセイの結果のグラフ表示である。クローン5B201と5D7-5との間の黒い線は、購入した市販品のマウスモノクローナル抗体A239(Quidel A239)による結果を表す。この線の左側のクローンは、補体活性化(この活性により細胞の溶解が生じる)に対して高い/良好な抑制を示した抗体である。特に注目すべき1つのサブクローンは、10C9(及び10C9-Xと命名した子孫細胞(Xは親とは異なるサブクローン番号を表す))であった。
【0266】
実施例5-抗C5抑制活性スクリーニング(IgM ELISAアッセイ)
96ウェルEIAプレート(Costar#3590)を、コーティング緩衝液(pH9.5)(BD-biosciences 51-2713KC)中のヒトIgM 2μg/mLを用いて、4℃で一晩コーティングした。プレートを洗浄緩衝液(BD-biosciences 51-9003739)を用いて洗浄した。血清をGVB(BD-biosciences 51-2713KC)で2%に希釈し、各種濃度のハイブリドーマ上清または精製IgGと混合し、4℃で20分間インキュベートした。インキュベーション期間後、100uLの血清/抗体混合物を、洗浄したIgM被覆プレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション期間後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、次いで、アッセイ希釈剤(BD-biosciences 51-2641KC)で1:10.000に希釈した抗C5b-9マウスモノクローナル抗体(Quidel A239)とともに室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを3回洗浄し、次いで、アッセイ希釈剤で1:3000に希釈したヤギ抗マウスHRP複合体でプローブした。プレートを30分間インキュベートし、洗浄緩衝液で3回洗浄し、シグナルを基質(BD-biosciences 51-2606KZ及びBD-biosciences 51-2607KZ)の添加により検出し、続いて、室温で10分間インキュベートした後、反応停止液(BD-biosciences 51-2608KZ)を加えた。次いで、補体活性化のレベルを450nmでの吸光度を読み取ることによって特定した。
【0267】
図5A、5B及び5Cは、全ての補体経路が活性である全血清、第2経路のみが活性であるC2欠損血清、ならびに古典経路及びレクチン経路が活性であるB因子欠損血清を用いたIgM ELISAの結果を示すものである。C5に対するA239抗体(Quidel A239)(図5A~5Cでは抗C5と表示)を陰性対照として用いた。抗D因子抗体(図5A~5Cでは抗FDと表示)を第2経路の陽性対照比較として用いた(図5B)。全体的に、10C9-19抗体は、3つ全ての条件の血清条件下で等しく良好に機能した。
【0268】
実施例6-抗C5ELISA
96ウェルEIAプレート(Costar#3590)を、コーティング緩衝液(pH9.5)(BD-biosciences 51-2713KC)中のヒトC5 1μg/mLを用いて、4℃で一晩コーティングする。翌日、プレートを洗浄し、プレートを洗浄緩衝液(BD-biosciences 51-9003739)を用いて洗浄し、次いで、アッセイ希釈剤(BD-biosciences 51-2641KC)を用いて30分間ブロックした。次いで、精製したモノクローナル抗体またはハイブリドーマ上清をアッセイ希釈剤で希釈し、C5を予めコーティングしたウェルに加え、室温で60分間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、結合したモノクローナルのレベルを、マウスHPR二次複合体及び基質を用いて検出した。結合した抗体のレベルを450nMでの吸光度を測定することによって特定した。図7は、選択したモノクローナル抗体/ハイブリドーマ上清を用いたC5の結合に関するグラフ表示である。
【0269】
実施例7-不溶性C5b-9の検出アッセイ
96ウェルEIAプレート(Costar#3590)を、コーティング緩衝液(pH9.5.)(BD-biosciences 51-2713KC)中のヒトIgM IgM(V) 2μg/mLを用いて、4℃で一晩コーティングする。プレートを洗浄緩衝液(BD-biosciences 51-9003739)を用いて洗浄する。正常ヒト血清をGVB(BD-biosciences 51-2713KC)で2%まで希釈し、100μLの血清/GVB混合物を洗浄したIgM被覆プレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション期間後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、次いで、アッセイ希釈剤で図に示す濃度まで希釈した抗C5モノクローナル抗体とともにインキュベートする。インキュベーション後、プレートを3回洗浄し、次いで、アッセイ希釈剤で1:3000に希釈した抗マウスHRP二次複合体で30分間プローブした後、洗浄緩衝液で3回洗浄した。次いで、結合した抗体を基質(BD-biosciences 51-2606KZ及びBD-biosciences 51-2607KZ)の添加により検出し、続いて、室温で10分間インキュベートした後、反応停止液(BD-biosciences 51-2608KZ)を加えた。次いで、補体活性化のレベルを450nmでの吸光度を読み取ることによって特定する。
【0270】
図10は、この結果のグラフ表示を示す。スクリーニングしたモノクローナル抗体のうち、10C9-19r(rは、使用した抗体が10C9-19クローンの組み換え型であることを示すために使用)は、不溶性C5b9に結合しない。これは、この抗体が、MACに組み込まれた後のC5を認識しないまたは当該C5に結合しないという仮説に
一致する。
【0271】
実施例8-可溶性C5b-9の検出
アミン反応性チップ(AR2G)(ForteBio(登録商標)、18-5092)を、OCTET RED 96(ForteBio(登録商標))における抗体の固定化に用いた。まず、AR2Gチップをローディングトレイ中にてddH20で10分間再水和した。次いで、OCTETプロトコルの開始時に、チップをddH20の二次水和溶液に60秒間移し、異常な読み取りがないことを確実にした。再水和後、チップを、新しく混合した20mM 1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)、10mM スルホ-N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(s-NHS)中で300秒間活性化した。AR2Gチップに結合する抗体を、10mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)で20μg/mLに希釈した。AR2Gチップを活性化した後、チップを抗体溶液中に600秒間置いた。次いで、チップを、1Mエタノールアミン(pH8.5)で300秒間クエンチした。クエンチ後、チップをカイネティクス緩衝液に120秒間移し、ベースラインの読み取りを行った。可溶性C5b-9(CompTech,A127)をカイネティクス緩衝液(KB)で30μg/mLに希釈した。ベースライン後、抗体が結合したチップを可溶性C5b-9溶液中に300秒間置き、結合を測定した。最後に、ベースラインを測定したKB溶液にチップを戻し、解離工程を600秒間測定した。結合の300秒時点でのベースラインからの偏差レベルを、結合親和性の指標として用いた。使用した全ての溶液は、96ウェル平底黒プレート(Greiner Bio-One,655209)で1ウェル当たり200μL容量とした。OCTETプロトコルは、1000rpm及び30℃で行った。
【0272】
結果を図11A及び11Bに示す。Quidel A239抗体(図11A及び11Bでは、A239と表示)は、C5b-9(MACの一部)に結合するため、陽性対照として用いた。結果から、予期された通り、10C9-19r抗体との結合は、全く/極めて少量しか観察されなかった。これは、10C9(及びその子孫細胞/サブクローン)が可溶性C5b-9に結合しないという仮説に一致する。
【0273】
実施例9-C5a生成アッセイ
96ウェルEIAプレート(Costar#3590)を、コーティング緩衝液(pH9.5.)(BD-biosciences 51-2713KC)中のヒトIgM 2μg/mLを用いて、4℃で一晩コーティングした。プレートを洗浄緩衝液(BD-biosciences 51-9003739)を用いて洗浄した。血清を精製IgG(抗C5抗体)の存在または非存在下にてGVB(BD-biosciences 51-2713KC)で10%に希釈し、4℃で20分間インキュベートした。インキュベーション期間後、100uLの血清/抗体混合物を、洗浄したIgM被覆プレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、上清を回収した。次いで、上清中のC5aのレベルを、MicroVue C5a EIAキット(Quidel,cat#A021)を用いて特定した。
【0274】
図6A、6B及び6Cは、アッセイの結果を示すものである。図6Aは、スクリーニングして選択した抗C5抗体の上清中におけるC5aレベルを示す。黒色の水平な線は、バックグラウンドレベルを示す。グラフからわかるように、いくつかの抗体は、他の抗体よりもC5a形成を多く阻害する。図6Bは、C5a形成に関して10C9-19抗体を比較する。グラフに示すように、Ms IgG条件を陽性対照とし、「CVFなし」(コブラ毒因子なし)対照をタンパク質分解酵素なしの陰性対照とした。別の抗C5抗体である8C7-26は、5μg/mL濃度では、C5a形成を抑制したが、0.05ug/mLの濃度では、C5a形成を抑制しなかった。しかしながら、10C9-19は、5μg/mLまたは0.05ug/mLの濃度のいずれでもC5a形成を抑制しない。
【0275】
実施例10-統計分析
本実施例セクションに記載した実験における抑制パーセント及び他の統計分析の実施方法について以下に記載する。
【0276】
溶血アッセイ:抑制%=1-((T-N)/(P-N))*100
【0277】
Tは、試験OD(アッセイ中に放出されたヘモグロビンの量)である。
【0278】
N=陰性対照OD(EDTAを10mMまで添加することによって補体活性が阻害される条件下でのアッセイ中のヘモグロビン放出)
【0279】
P=陽性対照OD(赤血球を血清存在下、抑制物質の非存在下でインキュベートしたときのヘモグロビン放出であり、100%活性を示す)。
【0280】
Z値:Z値=1-((3*(Dp-Dn))/(abs(Mp-Mn)))。式中、Dpは陽性対照の標準偏差、Dnは陰性対照の標準偏差、Mpは陽性対照の平均、Mnは陰性対照の平均である。
【0281】
カーブフィッティング(Graphpad Prism)IC90:Y=Y最小+(Y最大-Y最小)/(1+10(ECx-X)*m)
式中、ECxは、log IC90-(1/m)*log(90/(100-90))である。
【0282】
実施例11-C5欠損マウスの免疫化
C5欠損マウスの免疫化により、CH50溶血アッセイで決定されるように補体媒介赤血球溶解を抑制することができるハイブリドーマ細胞培養上清を作製した。選択したハイブリドーマによる応答は、図3中に黒い線で示す従来の市販抗体を用いたときに認められる応答よりも極めて大きかった。
【0283】
主要なハイブリドーマを増大及びクローニングし、IgGで連続精製すれば、IgGの濃度を滴定することによって、補体媒介細胞溶解の阻止に関する機能効果分析が可能である。図4A及び4Bに示す通り、補体媒介細胞溶解を抑制する所与のモノクローナルの相対効果に関して、より綿密な理解が得られる。
【0284】
抗C5モノクローナル抗体の機能活性は、選択した補体経路を抑制する効果に基づいて特徴付けることができる。図5A、5B及び5Cに示すように、抑制作用のある抗体を、抗体によって抑制される特定の経路に基づいて選択した。
【0285】
細胞溶解の阻止は、膜侵襲複合体の組み立てを妨げるか、またはC5転換酵素によるC5のC5bへの転換を阻止するかのいずれかによって生じ得る。更なる特性決定は、抑制機序、すなわち、抑制物質が、C5bの生成及びC5b-9複合体の組み立てに至るC5のタンパク質分解による切断を阻害するか、C5aの生成を阻止することなくC5b-9複合体の組み立てのみを阻止するかを調べることによってなされ得る。後者の場合、転換酵素活性を阻止する抑制物質の特定は、C5bの生成における必須の副生成物であるC5aの生成を調べることによって特定した。これは、図6A、6B及び6Bに示す通り、一点測定を実施するか、抗体の滴定により行った。
【0286】
モノクローナル抗体のC5に対する特異性は、図7に示すように、ELISAプレートにC5を直接コーティングして、その作用の用量依存的作用を調べることによって特定した。
【0287】
更なる特性決定は、図8に示すように、モノクローナル抗体のKD値及び相対的特異性の特定を可能とするバイオレイヤー干渉法(BLI)を用いて、モノクローナル抗体の親和性を調べることによって、見出すことができる。図9に示すように、溶液中でのモノクローナル抗体のC5タンパク質への結合を調べることによって、更なる特性決定を得た。
【0288】
実施例12-C5抗体の選択
好ましい1つの実施形態は、膜侵襲複合体に一度組み込まれたC5を認識しない、抗体の選択である。図10に示すように、IgMでの補体活性化の後に、ELISAプレートの底部に付着したときのC5b-9複合体中のC5を認識する能力に関して、モノクローナル抗体を検討した。
【0289】
更に、図11に示すように、バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いてモノクローナルの可溶性C5b-9に結合する能力を調べて、偏差レベルを特定することによって、C5b-9中のC5との交差反応性を特定した。
【0290】
実施例13-ヒト化抗体の作製
最も重要な抗体を選択し、ヒト化した。ストリング含有量最適化のヒト化方法(Lazarら、2010年2月2日発行のUS7657380B2、2011年4月19日発行のUS7930107B2、2004年12月3日出願のUS20060008883A1、2007年10月31日出願のUS20080167449A1、2011年3月21日出願のUS20110236969A1、2012年3月12日出願のUS20100190247A1、全てを参照により全て援用)をネズミ10C9抗体に応用した。選択したヒト化配列を配列番号1~12及び表2に記載する。
【0291】
標準的な技術を用いて、IgGを作製した。実施例6にて上述したELISAアッセイを用いた、完全長抗体の抑制パーセントを図12A、12B及び12Cに示す。更に、Fab断片を標準的な技術を用いて作製した。これらの活性は、実施例6に記載したELISAアッセイを用いると、親分子に類似した活性であった。結果のグラフ表示を図13A、13B及び13Cに示す。
【0292】
実施例14-網膜及び脈絡膜組織におけるC5b-9沈着阻害のためのC5抗体の使用
更に、網膜及び脈絡膜組織におけるC5b-9形成の阻止に関する硝子体内送達による化合物の治療可能性は、AL-78898A Inhibits Complement Deposition in a Primate Light Damage Model,ARVO Ab A387 2012に記載の目的組織における補体活性化をもたらす標準モデルの使用により評価することができる。ヒト化H5L2(それぞれ配列番号10及び配列番号2)抗体を、マウスモノクローナル抗体サブクローン10C9からヒト化した。H5L2を非ヒト霊長類軽傷モデルにて試験した。H5L2抗体を硝子体内に投与すると、網膜における補体沈着の阻害に有効であり、これは陰性対照(PBS軽傷なし、「PBS BLなし」と表示)に匹敵した。軽傷を有するPBSの陽性対照(「PBS」と表示)も用いた。結果のグラフ表示を図14A(網膜)及び14B(脈絡膜)に示す。これらのデータは、H5L2抗体の局所送達が、黄斑変性症及び他の眼の徴候の処置に関するインビボモデルにて有効であることを示している。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
【配列表】
2023021118000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C5に結合し、補体依存性溶血を抑制するが、C5a形成を阻止しない、抗C5抗体であって、
(a)配列番号13のCDR1と配列番号14のCDR2と配列番号15のCDR3とを含む軽鎖可変ドメインと
(b)配列番号16のCDR1と配列番号17のCDR2と配列番号18のCDR3とを含む重鎖可変ドメインとを含む、前記抗C5抗体
【請求項2】
ヒト補体成分6及び/または7に結合するC5を阻止する、請求項1に記載の抗C5抗体。
【請求項3】
膜侵襲複合体(MAC)の形成を抑制する、請求項1に記載の抗C5抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体またはこれらの抗体断片である、請求項1に記載の抗C5抗体。
【請求項5】
抗体断片であり、前記抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ダイアボディまたは一本鎖抗体分子である、請求項に記載の抗C5抗体。
【請求項6】
IgG1型、IgG2型、IgG3型またはIgG4型である、請求項に記載の抗C5抗体。
【請求項7】
IgG1型である、請求項に記載の抗C5抗体。
【請求項8】
標識基に結合している、請求項1に記載の抗C5抗体。
【請求項9】
前記標識基が、光学標識、放射性同位体、放射性核種、酵素基及びビオチニル基である、請求項に記載の抗C5抗体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗C5抗体をコードする核酸分子。
【請求項11】
制御配列に機能的に連結している核酸分子を含む発現ベクターをさらに含む、請求項10に記載の核酸分子。
【請求項12】
請求項10に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項13】
請求項12に記載の宿主細胞中で抗体を発現することを含む抗体を作製する方法。
【請求項14】
前記抗体が前記宿主細胞から分泌される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗C5抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項16】
処置または予防を必要とする患者の徴候を処置または予防するための方法であって、
有効量の請求項1に記載の抗C5抗体を前記患者に投与することを含み、これにより、前記徴候を処置または予防する、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
別の態様では、本発明は、処置または予防を必要とする患者の徴候を処置または予防するための方法を含み、この方法は、有効量の少なくとも1つの抗補体C5抗体を患者に投与することを含む。一実施形態において、徴候は、加齢黄斑変性(AMD)である。別の実施形態では、処置または予防を必要とする患者の疾患または障害は、眼症状である。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕C5に結合し、補体依存性溶血を抑制するが、C5a形成を阻止しない、抗C5抗体。
〔2〕ヒト補体成分6及び/または7に結合するC5を阻止する、前記〔1〕に記載の抗体。
〔3〕膜侵襲複合体(MAC)の形成を抑制する、前記〔1〕に記載の抗体。
〔4〕第1のアミノ酸配列と、第2のアミノ酸配列とを含み、
(a)前記第1の配列は、
(i)配列番号13、18、23、28、33及び38からなる群から選択されるCDR1と、
(ii)アミノ酸配列GTS、SGS、RTS、YTS及びWASからなる群から選択されるCDR2と、
(iii)配列番号14、19、24、29、34及び39からなる群から選択されるCDR3とを含み、
(b)前記第2の配列は、
(i)配列番号15、20、25、30、35及び40からなる群から選択されるCDR1と、
(ii)配列番号16、21、26、31、36及び41からなる群から選択されるCDR2と、
(iii)配列番号17、22、27、32、37及び42からなる群から選択されるCDR3とを含む、前記〔1〕に記載の抗体。
〔5〕重鎖及び軽鎖を更に含み、
前記軽鎖は、配列番号1、3、5、7、9及び11からなる群から選択される配列に少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、
前記重鎖は、配列番号2、4、6、8、10及び12からなる群から選択される配列に少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記〔4〕に記載の抗体。
〔6〕重鎖及び軽鎖可変配列:配列番号1/配列番号2;配列番号3/配列番号4;配列番号5/配列番号6;配列番号7/配列番号8;配列番号9/配列番号10及び配列番号11/配列番号12から選択される重鎖及び軽鎖可変ドメインを含む、前記〔1〕に記載の抗体。
〔7〕モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体またはこれらの抗体断片である、前記〔1〕に記載の抗体。
〔8〕抗体断片であり、前記抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’) 2 断片、Fv断片、ダイアボディまたは一本鎖抗体分子である、前記〔7〕に記載の抗体。
〔9〕IgG1型、IgG2型、IgG3型またはIgG4型である、前記〔7〕に記載の抗体。
〔10〕IgG1型である、前記〔9〕に記載の抗体。
〔11〕標識基に結合している、前記〔1〕に記載の抗体。
〔12〕前記標識基が、光学標識、放射性同位体、放射性核種、酵素基及びビオチニル基である、前記〔12〕に記載の抗体。
〔13〕前記〔1〕に記載の単離された抗体を作製するためのプロセスであって、前記抗体を分泌する宿主細胞から前記抗体を作製することを含む、前記プロセス。
〔14〕前記〔1〕に記載の単離された抗体をコードする核酸分子。
〔15〕制御配列に機能的に連結している、前記〔14〕に記載の核酸分子。
〔16〕前記〔1〕に記載の少なくとも1つの抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
〔17〕追加の活性物質を更に含む、前記〔16〕に記載の医薬組成物。
〔18〕処置または予防を必要とする患者の徴候を処置または予防するための方法であって、
有効量の前記〔1〕に記載の抗体を前記患者に投与することを含み、これにより、前記徴候を処置または予防する、前記方法。
〔19〕前記症状が眼症状である、前記〔18〕に記載の方法。
〔20〕前記症状が加齢黄斑変性である、前記〔19〕に記載の方法。
【外国語明細書】