(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021193
(43)【公開日】2023-02-10
(54)【発明の名称】粉粒体運搬車
(51)【国際特許分類】
B65D 88/70 20060101AFI20230203BHJP
B65D 88/12 20060101ALI20230203BHJP
B65D 90/00 20060101ALI20230203BHJP
B60P 3/22 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
B65D88/70
B65D88/12 F
B65D90/00 J
B60P3/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126339
(22)【出願日】2021-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】金澤 謙二
(72)【発明者】
【氏名】滑川 浩志
(72)【発明者】
【氏名】村田 俊樹
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA07
3E170AB11
3E170AB12
3E170EA07
3E170EA08
3E170EB10
3E170FA04
3E170VA13
(57)【要約】
【課題】排出管の内部に結露が生じることを防止ないし抑制することにより、排出管が粉粒体によって詰まることを防止する粉粒体運搬車を提供すること。
【解決手段】車台2に搭載され、内部に粉粒体が積載されるタンク5と、タンク5の内部からタンク5の外部に亘って設けられた排出管6と、タンク5の内部に積載される粉粒体が、排出管6を通じてタンク5の外部に排出されるように、タンクの内部に圧縮空気を供給する圧縮空気供給部16と、を備え、排出管6のタンク5内にある部分の少なくとも一部を加熱する加熱手段40を更に備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台に搭載され、内部に粉粒体が積載されるタンクと、
前記タンクの内部から前記タンクの外部に亘って設けられた排出管と、
前記タンクの内部に積載される粉粒体が、前記排出管を通じて前記タンクの外部に排出されるように、前記タンクの内部に圧縮空気を供給する圧縮空気供給部と、
を備える粉粒体運搬車において、
前記排出管の少なくとも一部を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする粉粒体運搬車。
【請求項2】
請求項1に記載の粉粒体運搬車において、
前記加熱手段が加熱する部分は、前記排出管の前記タンク内にある部分の少なくとも一部である、ことを特徴とする粉粒体運搬車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粉粒体運搬車において、
前記圧縮空気供給部は、エアコンプレッサを含み、
前記加熱手段は、
前記圧縮空気供給部に含まれる前記エアコンプレッサと、
前記エアコンプレッサが供給する圧縮空気を前記排出管に導く圧縮空気導管と、
を有する、
ことを特徴とする粉粒体運搬車。
【請求項4】
請求項3に記載の粉粒体運搬車において、
前記加熱手段は、
前記排出管の一部を覆いつつ当該排出管の外面との間に空気が通過する通気路を形成する排出管カバーを更に有し、
前記圧縮空気導管は、前記エアコンプレッサから導く圧縮空気が前記通気路を通過するように、前記通気路に連通している、
ことを特徴とする粉粒体運搬車。
【請求項5】
請求項4に記載の粉粒体運搬車において、
前記排出管は、曲部を有し、
前記排出管カバーは、前記排出管の前記曲部を覆いつつ当該曲部の外面との間に前記通気路を形成する、
ことを特徴とする粉粒体運搬車。
【請求項6】
請求項5に記載の粉粒体運搬車において、
前記通気路は、
前記圧縮空気が前記排出管の前記曲部の半径方向外側に沿って流れる外側通気路と、
前記圧縮空気が前記排出管の前記曲部の半径方向内側に沿って流れる内側通気路と、
を含み、
前記圧縮空気導管は、前記外側通気路と連通し、
前記圧縮空気導管から供給される圧縮空気が前記外側通気路を通過した後、前記内側通気路を通過するように、前記外側通気路と前記内側通気路とが連通されている、
ことを特徴とする粉粒体運搬車。
【請求項7】
請求項3に記載の粉粒体運搬車において、
前記圧縮空気導管は、前記排出管内に直接圧縮空気を導くように前記排出管に接続されており、
前記加熱手段は、前記圧縮空気導管と前記排出管との接続位置より下流側に、前記排出管内の流路を開閉する開閉弁を更に有する、
ことを特徴とする粉粒体運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内に粉粒体を積載して運搬する粉粒体運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンク内に粉粒体を積載して運搬する粉粒体運搬車が知られている。粉粒体運搬車には、タンクの上部のマンホールから粉粒体を投入することで、タンク内に粉粒体を積載し、タンク内にエアコンプレッサの圧縮空気を送り込むことで、排出管から粉粒体を排出するものがある。この種の粉粒体運搬車は、例えば特許文献1および2に開示されている。
【0003】
特許文献1および2に開示されている粉粒体運搬車は、タンクの内部に結露が生じることを防止するために、エアコンプレッサとタンクとを繋ぐ管路の途中に空気中の水分を除去する除湿装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4362100号公報
【特許文献2】特許第6781522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、粉粒体をタンクから排出するとき、エアコンプレッサからタンク内に供給される空気の温度が低下し、飽和水蒸気量が減少することから、タンク内に結露が生じやすくなる。また、タンク内の高湿度の空気が当該空気よりも温度の低い排出管を通ってタンク外に排出される場合、排出管の内部に高湿度の空気が多量に接することとなるため、排出管の内部にはタンク内の他の部分よりも多くの結露が生じる。排出管の内部に結露が生じると、粉粒体がその結露に付着し、次第に排出管内に粉粒体が堆積して排出管に詰まりが生じることがある。
【0006】
特許文献1,2に開示された技術を用いてタンク内に供給する空気を除湿しても、外気温によっては、排出管の内部に結露が生じる可能性がある。また、タンク内に供給する空気を除湿しても、粉粒体自体の水分が蒸発して湿度が上がることにより、排出管の内部に結露が生じる可能性もある。
【0007】
そこで、本発明は、排出管の内部に結露が生じることを防止ないし抑制することにより、排出管が粉粒体によって詰まることを防止する粉粒体運搬車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る粉粒体運搬車は、車台に搭載され、内部に粉粒体が積載されるタンクと、前記タンクの内部から前記タンクの外部に亘って設けられた排出管と、前記タンクの内部に積載される粉粒体が、前記排出管を通じて前記タンクの外部に排出されるように、前記タンクの内部に圧縮空気を供給する圧縮空気供給部と、を備え、前記排出管の少なくとも一部を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成を備える粉粒体運搬車によれば、加熱手段が排出管の少なくとも一部を加熱するので、排出管の内部に結露が生じることを防止ないし抑制できる。その結果、排出管が粉粒体によって詰まることを防止できる。
【0010】
前記構成を備える粉粒体運搬車において、前記加熱手段が加熱する部分は、前記排出管の前記タンク内にある部分の少なくとも一部である、ことが望ましい。
【0011】
上記構成を備える粉粒体運搬車によれば、排出管の中でも結露が生じやすいタンク内にある部分を加熱することで排出管の内部に結露が生じることを効果的に防止ないし抑制できる。
【0012】
前記構成を備える粉粒体運搬車において、前記圧縮空気供給部は、エアコンプレッサを含み、前記加熱手段は、前記圧縮空気供給部に含まれる前記エアコンプレッサと、前記エアコンプレッサが供給する圧縮空気を前記排出管に導く圧縮空気導管と、を有する、ことが望ましい。
【0013】
かかる構成を備える粉粒体運搬車によれば、エアコンプレッサが発生する高温の圧縮空気が圧縮空気導管を通じて排出管に導かれ、排出管が加熱されるので、排出管の内部に結露が生じることを防止ないし抑制できる。その結果、排出管が粉粒体によって詰まることを防止できる。また、従来例のように除湿装置を粉粒体運搬車に搭載する場合と比較して、除湿装置に掛けるコストが不要となることや、架装装置の重量増加が抑えられることにより粉粒体の積載重量を殆ど減らす必要がないことなどの利点がある。また、粉粒体運搬車において除湿装置の配置スペースが不要になる利点もある。
【0014】
前記構成を備える粉粒体運搬車において、前記加熱手段は、前記排出管の一部を覆いつつ当該排出管の外面との間に空気が通過する通気路を形成する排出管カバーを更に有し、前記圧縮空気導管は、前記エアコンプレッサから導く圧縮空気が前記通気路を通過するように、前記通気路に連通している、ものとしてもよい。
【0015】
かかる構成を備える粉粒体運搬車によれば、排出管の一部を覆う排出管カバーと排出管との間に形成される通気路に圧縮空気導管を通じてエアコンプレッサが発生する高温の圧縮空気が導かれる。このため、例えば、排出管の中で粉粒体が詰まり易い部分に排出管カバーを取り付けることでその部分を集中的に加熱し、その部分における結露の発生を防止ないし抑制することで、排出管全体が粉粒体によって詰まることを防止できる。
【0016】
前記構成を備える粉粒体運搬車において、前記排出管は、曲部を有し、前記排出管カバーは、前記排出管の前記曲部を覆いつつ当該曲部の外面との間に前記通気路を形成する、ものとしてもよい。
【0017】
排出管の曲部は、排出管の中でも特に粉粒体が詰まり易い部分であるため、排出管の曲部に排出管カバーを取り付けることで曲部を集中的に加熱でき、曲部内で結露が発生することを防止ないし抑制することで、排出管全体が粉粒体によって詰まることを防止できる。
【0018】
前記構成を備える粉粒体運搬車において、前記通気路は、前記圧縮空気が前記排出管の前記曲部の半径方向外側に沿って流れる外側通気路と、前記圧縮空気が前記排出管の前記曲部の半径方向内側に沿って流れる内側通気路と、を含み、前記圧縮空気導管は、前記外側通気路と連通し、前記圧縮空気導管から供給される圧縮空気が前記外側通気路を通過した後、前記内側通気路を通過するように、前記外側通気路と前記内側通気路とが連通されている、ものとしてもよい。
【0019】
排出管の曲部の内面は、半径方向外側が半径方向内側に比べて表面積が大きいことから、半径方向外側の方が結露による水滴付着量が多くなる。また、排出管を通じて粉粒体を排出するとき、排出管の曲部内を流れる粉粒体に遠心力が作用するため、半径方向外側が半径方向内側に比べて粉粒体の付着量が多くなる。上記構成を備える粉粒体運搬車によれば、排出管の曲部の半径方向外側に沿って流れながら当該排出管と熱交換をした後の圧縮空気が、排出管の曲部の半径方向内側に沿って流れるので、曲部の中でも粉粒体が堆積しやすい半径方向外側を半径方向内側よりも高温に加熱することができ、排出管の曲部が粉粒体によって詰まることを効率的に防止できる。
【0020】
前記構成を備える粉粒体運搬車において、前記圧縮空気導管は、前記排出管内に直接圧縮空気を導くように前記排出管に接続されており、前記加熱手段は、前記圧縮空気導管と前記排出管との接続位置より下流側に、前記排出管内の流路を開閉する開閉弁を更に有する、ものとしてもよい。
【0021】
かかる構成を備える粉粒体運搬車によれば、排出管内の流路を開閉する開閉弁を閉じた状態で、エアコンプレッサが発生する高温の圧縮空気を圧縮空気導管を通じて排出管内に導入することで、粉粒体を排出管を通じて排出する前に、排出管を加熱し、排出管の内部に結露が生じることを防止ないし抑制できる。その結果、排出管が粉粒体によって詰まることを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、排出管の内部に結露が生じることを防止ないし抑制することにより、排出管が粉粒体によって詰まることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る粉粒体運搬車の左側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る粉粒体運搬車の背面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る粉粒体運搬車の平面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る粉粒体運搬車の配管系統図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における排出管および排出管カバーを示すためにタンクを断面化した図である。
【
図6】本発明の第1実施形態における排出管および排出管カバーを示す正面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態における排出管および排出管カバーを示す底面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態における排出管および排出管カバーを示す左側面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る粉粒体運搬車の配管系統図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る粉粒体運搬車の配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る粉粒体運搬車について、図面を参照しつつ説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る粉粒体運搬車1は、走行可能な車台2と運転室3とを有する。車台2上には、サブフレーム4が設けられている。サブフレーム4上には、タンク5、排出管6、排出ホース7等が設けられている。
【0025】
タンク5内には、粉粒体が積載される。タンク5の上面には、粉粒体をタンク5内に投入するためのマンホールが設けられ、さらに、マンホールを開閉するマンホール蓋8が設けられている。粉粒体運搬車1によって運搬される粉粒体は、特定のものに限定されないが、排出管6内の結露によって排出管6内に詰まり易い粉粒体として、セメントを例示することができる。
【0026】
図4に示すように、タンク5内の底部には、粉粒体を流動化させるためのエアスライド部9が設けられている。エアスライド部9は、タンク5内の底面5aと、キャンバス11とで構成される。キャンバス11は、タンク5の底面5aとの間にエアチャンバ12を形成するように設けられている。エアチャンバ12には、後述する圧縮空気供給部16によって圧縮空気が供給される。タンク5の底面5aは、上から視て排出管6の上流端部6aと重なる位置に向かって下降するように傾斜している。この傾斜によって、粉粒体は、キャンバス11と、下向きに開口した排出管6の上流端部6aとの間に集積する。本実施形態では、排出管6の上流端部6aは上から視てタンク5の略中央に位置している。
【0027】
排出管6は、タンク5の内部の粉粒体をタンク5の外部に排出するために、タンク5の内部の底部に近い位置からタンク5の外部の車両片側後部に亘って設けられている。したがって、排出管6は、タンク5の内部に配された部分と、タンク5の外部に配された部分とで構成される。
【0028】
タンク5の外部に配された排出管6には、排出管6内の流路を開閉する開閉弁14が設けられている。開閉弁14には、例えば、レバー開閉式のバタフライ弁が用いられる。
【0029】
排出管6の下流側には、可撓性の排出ホース7が接続されている。粉粒体は、可撓性の排出ホース7を通じて所望の場所に排出される。
【0030】
粉粒体運搬車1には、圧縮空気供給部16が設けられている(
図4参照)。圧縮空気供給部16は、タンク5の内部に積載された粉粒体が、排出管6および排出ホース7を通じてタンク5の外部に排出されるように、タンク5の内部に圧縮空気を供給する。圧縮空気供給部16は、エアコンプレッサ17、エアフィルタ17a、主配管18および主配管18に設けられたバルブ類などで構成される。
【0031】
エアコンプレッサ17は、図示しない走行用エンジンによりPTOを介して駆動される。エアコンプレッサ17は、エアフィルタ17aを介して吸引した空気を圧縮して吐出口から吐出する。エアコンプレッサ17の吐出口から吐出される圧縮空気の温度は、吸引される空気の温度よりも高温(例えば約100℃)となる。エアコンプレッサ17として、例えば、スクリュ式エアコンプレッサ、揺動式エアコンプレッサなどを採用することができる。
【0032】
エアコンプレッサ17の吐出口には、主配管18が接続されている。主配管18からは、複数のタンク用分岐管21が分岐している。複数のタンク用分岐管21は、それぞれタンク5内のエアチャンバ12に圧縮空気を供給するようにタンク5に接続されている。各タンク用分岐管21の途中には、その管内の流路を開閉するエア開閉弁22が設けれている。主配管18には安全弁15が設けられている。主配管18のエアコンプレッサ17と安全弁15との間に逆止弁20が設けられている。また、主配管18の安全弁15より下流側かつエア開閉弁22より上流側にも逆止弁23が設けられている。
【0033】
また、主配管18と排出管6とを連通する排出管用配管19が設けられている。排出管用配管19の上流端は、主配管18の上記逆止弁23と上記安全弁15との間の位置に接続されている。排出管用配管19の下流端は、排出管6の上記開閉弁14より下流側に接続されている。なお、
図4に示すように、排出管用配管19の途中には、その管内の流路を開閉するエア開閉弁24が設けられ、その下流側に逆止弁25が設けられている。
【0034】
また、後述する排出管カバー42内に高温の圧縮空気を供給する加熱用分岐管28が排出管用配管19から分岐して設けられている。この加熱用分岐管28の途中にも、管内の流路を開閉するエア開閉弁29が設けられ、その下流側に逆止弁30が設けられている。
【0035】
なお、タンク5の前側と後側には、それぞれエア抜き弁26,27が設けれている。エア抜き弁26は、タンク5内の残圧を大気に解放する際に使用される。また、排出管用配管19にもその内部の残圧を大気に解放するために使用されるエア抜き弁27が設けられている。
【0036】
次に、排出管6の内部に結露が発生することを防止ないし抑制するための構成について説明する。粉粒体運搬車1は、排出管6の内部に結露が発生することを防止ないし抑制するために、排出管6のタンク5内にある部分の一部を加熱する加熱手段40を備えている。本実施形態では、加熱手段40は、エアコンプレッサ17、圧縮空気導管41、排出管カバー42等により構成される。
【0037】
圧縮空気導管41は、エアコンプレッサ17が発生する高温の圧縮空気を排出管6に導く。本実施形態では、圧縮空気導管41は、主配管18、排出管用配管19の一部、および加熱用分岐管28で構成されている。
【0038】
排出管カバー42は、例えば
図5に示すように、排出管6の一部を覆いつつ排出管6の外面との間に空気が通過する通気路43を形成する。本実施形態では、排出管カバー42は、排出管6の曲部6bを覆いつつ曲部6bとの間に通気路43A,43Bを形成する。圧縮空気導管41を構成する加熱用分岐管28は、排出管カバー42に形成された空気導入孔42aに接続され、排出管カバー42の内側の通気路43Aと連通している。また、排出管カバー42には、通気路43A,43Bを通過した圧縮空気を排出する排気孔42bが設けられている。
【0039】
排出管カバー42の具体例について
図6~
図9に基づいて詳細に説明する。同図に示す排出管カバー42は、筒部421、蓋部422,423および仕切板424,425を備えている。
【0040】
筒部421は、排出管6との間に通気路43A,43Bを形成するように、排出管6から離れた位置に配設されている。筒部421は、外板421a、内板421bおよび2枚の側板421cで構成されている。筒部421は、断面が矩形に形成され、
図6に示すように、全体的に排出管6の曲部6bに倣って湾曲した形状とされている。
【0041】
外板421aは、排出管6の曲部6bの半径方向外側に配され、排出管6の曲部6bに対して一定の距離を維持するように曲げられた矩形の薄板材からなる。内板421bは、排出管6の曲部6bの半径方向内側に配され、排出管6の曲部6bに対して一定の距離を維持するように、曲げられた矩形の薄板材からなる。2枚の側板421cは、
図6および
図7に示すように、排出管6の曲部6bの形状に応じて円弧状に形成された薄板材からなる。2枚の側板421cは、外板421aの内周面の側端部と、内板421bの外周面の側端部とに溶接により接合されている。
【0042】
蓋部422,423は、筒部421の両端部と排出管6との間の開口を塞いでいる。蓋部422,423には、中央に排出管6と同径の円孔を有する矩形の薄板が用いられている。蓋部422,423は、外板421a、内板421bおよび側板421cに対して溶接により隙間なく接合されることが望ましい。
【0043】
仕切板424,425は、排出管カバー42および排出管6に対してそれぞれ溶接により接合され、排出管カバー42と排出管6との間の空間を、半径方向外側の通気路43A(以下「外側通気路43A」ともいう。)と半径方向内側の通気路43B(以下「内側通気路43B」ともいう。)に仕切っている。但し、排出管カバー42の一端側(排出管6の上流側)では、仕切板424,425と蓋部423が離間しており、外側通気路43Aと内側通気路43Bとを連通する連通部43Cが形成されている。この仕切板424,425には、排出管6の曲部6bの中心線と同じ曲率半径で曲がった矩形状の薄板が用いられている。
【0044】
圧縮空気導管41の一部を構成する加熱用分岐管28(
図5参照)は、排出管カバー42内の外側通気路43Aの他端側(排出管6の下流側)に圧縮空気を供給するように、排出管カバー42の筒部421に形成された空気導入孔42aに接続されている。また、排出管カバー42の筒部421に形成された排気孔42bには、通気路43を通過した圧縮空気をエアチャンバ12内に導出する導出配管44(
図5参照)が接続されている。
【0045】
つぎに、粉粒体運搬車1において、タンク5内に積載された粉粒体をタンク5から排出する場合について説明する。以下の説明では、エアコンプレッサ17が停止しており、かつ、開閉弁14、エア開閉弁24,29およびエア抜き弁26が閉鎖し、エア開閉弁22およびエア抜き弁27が開放した状態を初期状態とする。なお、更にエア開閉弁29を開放した状態を初期状態としてもよい。
【0046】
上記初期状態からエアコンプレッサ17を駆動し、加熱用分岐管28に設けられたエア開閉弁29を全開放する(初期状態でエア開閉弁29が開放されている場合はそのまま開放状態を維持する)。
【0047】
加熱用分岐管28に設けられたエア開閉弁29を開放すると、エアコンプレッサ17が発生する高温の圧縮空気が、主配管18、排出管用配管19および加熱用分岐管28で構成される圧縮空気導管41を通じて、
図5内の矢印が示す方向に沿って、排出管カバー42と排出管6との間に設けられた通気路43A,43Bに導入される。
【0048】
高温の圧縮空気は、先ず、外側通気路43A内を排出管6の下流側から上流側に沿って流れる。次に、排出管カバー42の端部(連通部43C)で流れを反転させて、内側通気路43B内を排出管6の上流側から下流側に沿って流れる。このとき、排出管6は、外側通気路43Aおよび内側通気路43Bを流れる高温の空気により加熱される。排出管6が加熱されると、排出管6の内面に結露が発生し難くなり、排出管6の内部に粉粒体が堆積し難くなる。また、排出管6には、通常、金属材料が用いられるため、排出管6の曲部6bが加熱されると、熱伝導により曲部6b以外の部分も温度が上昇し、曲部6b以外の部分の内面にも結露が発生し難くなる。
【0049】
なお、本実施形態では、排出管カバー42の断面が円形ではなく、矩形であるため、排出管6から比較的離れた位置にある通気路43の角部43a(
図9参照)において、空気が滞留し易く流速が比較的遅くなる。この角部43aの空気が、排出管6の近傍にある比較的流速の速い部分の温度を低下し難くする保温膜のような機能を果たす。
【0050】
一方、タンク用分岐管21に設けられたエア開閉弁22も開放されていることから、エアコンプレッサ17が発生する圧縮空気は、タンク5内のエアチャンバ12に供給される。エアチャンバ12に圧縮空気が供給されると、タンク5内に積載された粉粒体が流動化するとともに、タンク5内の圧力が上昇する。また、
図5に基づいて説明したように、エアチャンバ12には、排出管カバー42内の通気路43および導出配管44を通過した圧縮空気も供給される。
【0051】
その後、タンク5内の圧力が所定圧力まで上昇すると、排出管6に設けられた開閉弁14が開放され、タンク5内で流動化した粉粒体が排出管6および排出ホース7を通じて外部に排出される。なお、高い場所に粉粒体を排出する場合などのように、粉粒体をスムーズに排出させることが難しい場合は、排出管用配管19に設けられたエア開閉弁24も開放される。そうすることで、圧縮空気が排出管6に直接供給され、排出管6内で排出方向への流れが促進され、粉粒体がスムーズに排出される。
【0052】
以上に説明した第1実施形態に係る粉粒体運搬車1によれは、次に掲げる作用効果が奏される。
【0053】
(1)第1実施形態に係る粉粒体運搬車1によれば、排出管6の曲部6bをエアコンプレッサ17が発生する高温の圧縮空気を用いて加熱することにより、排出管6の曲部6bの内部に結露が生じることを防止ないし抑制できる。その結果、排出管6が粉粒体によって詰まることを防止できる。排出管6の曲部6bは、排出管6の上流端部6aから流入した空気が最初に大きく流れ方向を変化させる部分であり、最初に粉粒体が排出管6の内面に衝突する部分であることから、排出管6の中でも特に粉粒体が堆積し易い部分である。このため、曲部6bを加熱することにより、排出管6の内部に粉粒体が詰まることを効率的に防止できる。なお、エアコンプレッサ17からエアチャンバ12に供給される圧縮空気は、一定以上膨張して温度が低下するが、エアコンプレッサ17から排出管カバー42内の通気路43には、一定以上膨張して温度低下する前の圧縮空気が導入される。このため、排出管6の曲部6bは高温に加熱される。
【0054】
なお、上述した実施形態では、タンク5内の粉粒体が排出されているとき、タンク用分岐管21に設けられたエア開閉弁22は全開放されたままであったが、当該エア開閉弁22の開度を小さくするか、もしくは閉鎖して、圧縮空気導管41を通じてより多くの圧縮空気を排出管カバー42に導入し、以って、排出管6の曲部6bを更に加熱することも可能である。タンク5内の粉粒体が外部に排出されているとき、排出管6の温度が下がり易いため、このように、排出管6を更に加熱することで、排出管6の温度を維持することができ、ひいては、排出管6の内部に粉粒体が詰まることを確実に防止できる。
【0055】
(2)排出管6の曲部6bの内面は、半径方向外側が半径方向内側に比べて表面積が大きいことから、半径方向外側の方が結露による水滴付着量が多い。また、排出管6を通じて粉粒体を排出するとき、排出管6の曲部6b内を流れる粉粒体に遠心力が作用するため、半径方向外側が半径方向内側に比べて粉粒体の付着量が多くなる。第1実施形態に係る粉粒体運搬車1によれば、排出管6の曲部6bの半径方向外側に沿って流れながら当該排出管6との間で熱交換をした後の圧縮空気が、排出管6の曲部6bの半径方向内側に沿って流れるので、曲部6bの中でも粉粒体が堆積しやすい半径方向外側を半径方向内側よりも高温に加熱することができ、排出管6の曲部6bが粉粒体によって詰まることを効率的に防止できる。
【0056】
(3)また、排出管6の内部に結露が発生するタイミングと、エアコンプレッサ17を駆動して圧縮空気をタンク5内に供給するタイミングが重複することから、エアコンプレッサ17が発生する高温の圧縮空気を利用して排出管6を加熱することができ、専ら結露発生を防止するための装置を駆動させることなく、排出管6の内部に結露が生じることを防止ないし抑制できる。
【0057】
(4)第1実施形態に係る粉粒体運搬車1によれば、排出管6のタンク5内にある部分が加熱するが、排出管6は上流側程結露が生じやすいため、排出管6の中でも結露が生じやすい部分を加熱することで効果的に結露を防止ないし抑制できる。
【0058】
(5)第1実施形態に係る粉粒体運搬車1によれば、従来例のように除湿装置を粉粒体運搬車に搭載する場合と比較して、除湿装置に掛けるコストが不要となることや、架装装置の重量増加が抑えられることにより粉粒体の積載重量を殆ど減らす必要がないことなどの利点がある。
【0059】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係る粉粒体運搬車について
図10に基づいて説明する。第2実施形態に係る粉粒体運搬車1Aは、第1実施形態に係る粉粒体運搬車1において、排出管カバー42を省略し、排出管用配管19から分岐して排出管カバー42に接続されていた加熱用分岐管28の代わりに、排出管用配管19から分岐して排出管6の開閉弁14より上流側に接続された加熱用分岐管28Aを設けたものである。加熱用分岐管28Aは、エアコンプレッサ17が発生した高温の圧縮空気を排出管6内に直接導入するために設けられている。第2実施形態に係る粉粒体運搬車1Aでは、加熱用分岐管28Aは、タンク5の外部にある排出管6のタンク5近傍位置に接続されているが、加熱用分岐管28Aが接続される位置はこれに限定されない。例えば、加熱用分岐管28Aが接続される位置は、タンク5の内部にある排出管6の曲部6bであってもよい。加熱用分岐管28Aが接続される位置は、曲部6bが複数ある場合は、最も上流側にある曲部であることが望ましい。
【0060】
このように構成された粉粒体運搬車1Aにおいて、タンク5内に積載された粉粒体を排出する場合について説明する。以下の説明では、エアコンプレッサ17が停止し、かつ、開閉弁14、エア開閉弁24,29およびエア抜き弁26が閉鎖し、エア開閉弁22およびエア抜き弁27が開放した状態を初期状態とする。なお、更にエア開閉弁29を開放した状態を初期状態としてもよい。
【0061】
上記初期状態からエアコンプレッサ17を駆動し、加熱用分岐管28Aに設けられたエア開閉弁29を全開放するとともに(初期状態でエア開閉弁29が開放されている場合はそのまま開放状態を維持する)。
【0062】
加熱用分岐管28Aに設けられたエア開閉弁29を開放すると、エアコンプレッサ17が発生する高温の圧縮空気が、主配管18、排出管用配管19および加熱用分岐管28Aで構成される圧縮空気導管41を通じて排出管6内に導入される。導入された高温の空気は、
図10に示す排出管6内の矢印が示す方向に沿って流れ、排出管6の開閉弁14が設けられた位置より上流側が加熱される。そして、排出管6が加熱されることにより、排出管6の内面に結露が発生し難くなる。
【0063】
一方、タンク用分岐管21に設けられたエア開閉弁22も開放されていることから、エアコンプレッサ17が発生する圧縮空気は、タンク5内のエアチャンバ12に供給される。エアチャンバ12に圧縮空気が供給されると、タンク5内に積載された粉粒体が流動化するとともに、タンク5内の圧力が上昇する。
【0064】
その後、タンク5内の圧力が所定圧力まで上昇すると、排出管6に設けられた開閉弁14が開放される。そうすると、
図11に示す排出管6内の矢印が示す方向に沿って、タンク5内で流動化した粉粒体が排出管6および排出ホース7を通じて外部に排出される。このとき、エア開閉弁29を開放したままにしておくことで、粉粒体の排出をアシストすることができる。更に粉粒体の排出をアシストするために排出管用配管19に設けられたエア開閉弁24を開放してもよい。
【0065】
なお、粉粒体が排出管6および排出ホース7を通じて排出されているときに、粉粒体が加熱用分岐管28A内を逆流する場合は、加熱用分岐管28Aに設けたエア開閉弁29を閉じて、排出管用配管19に設けられたエア開閉弁24を開放して、圧縮空気を排出管6の開閉弁14より下流側に供給するようにしてもよい。
【0066】
以上に説明した第2実施形態に係る粉粒体運搬車1Aによれは、次に掲げる作用効果が奏される。
【0067】
(1)第2実施形態に係る粉粒体運搬車1Aによれば、排出管6をエアコンプレッサ17が発生する高温の圧縮空気を用いて加熱することにより、排出管6の内部に結露が生じることを防止ないし抑制できる。その結果、排出管6が粉粒体によって詰まることを防止できる。なお、エアコンプレッサ17からエアチャンバ12に供給される圧縮空気は、一定以上膨張して温度が低下するが、エアコンプレッサ17から排出管6には、一定以上膨張して温度低下する前の圧縮空気が導入される。このため、排出管6は高温に加熱される。
【0068】
(2)また、排出管6の内部に結露が発生するタイミングと、エアコンプレッサ17を駆動して圧縮空気をタンク5内に供給するタイミングが重複することから、エアコンプレッサ17が発生する高温の圧縮空気を利用して排出管6を加熱することができ、専ら結露発生を防止するための装置を駆動させることなく、排出管6の内部に結露が生じることを防止ないし抑制できる。
【0069】
(3)第2実施形態に係る粉粒体運搬車1Aによれば、従来例のように除湿装置を粉粒体運搬車に搭載する場合と比較して、除湿装置に掛けるコストが不要となることや、架装装置の重量増加が抑えられることにより粉粒体の積載重量を殆ど減らす必要がないことなどの利点がある。
【0070】
<第1実施形態の変形例1>
第1実施形態に係る粉粒体運搬車1では、タンク5内にある排出管6の曲部6bに排出管カバー42を取り付けて、高温の圧縮空気により曲部6bを加熱したが、タンク5内にある排出管6のその他の部分あるいは、タンク5内にある排出管6の全体に排出管カバーを取り付けて加熱できるようにしてもよい。
【0071】
<第1実施形態の変形例2>
第1実施形態に係る粉粒体運搬車1において、排出管カバー42、加熱用分岐管28、エア開閉弁29および逆止弁30を省略し、加熱手段として、タンク5内の排出管6の曲部6bもしくはその他の部分、またはタンク5内の排出管6全体を覆う電熱ヒータを設けてもよい。この場合、粉粒体を排出する前に、電熱ヒータのスイッチをONにして、粉粒体が排出される前に、排出管6内に結露が生じないように排出管6を加熱しておくことが望ましい。
【0072】
<第1実施形態の変形例3>
第1実施形態に係る粉粒体運搬車1において、排出管カバー42の断面は矩形であったが、排出管カバー42の断面は円形であってもよい。この場合、排出管カバー42は、排出管6に対して断面が同心円を成すように配置することが好ましい。そうすることで、通気路43を通過する圧縮空気の流速が通気路43の場所に関わらず均等になり、効率的に排出管6を加熱できる。
【0073】
<上記実施形態の変形例1>
既述した実施形態では、エアスライド式の粉粒体運搬車を例示したが、本実施形態に係る発明は、エアスライド式以外の粉粒体運搬車にも適用可能である。例えば、タンク内の傾斜によって粉粒体を排出口に集めるエアレーション(エアアジテーション)式の粉粒体運搬車や、エアスライド式かつエアレーション式の粉粒体運搬車や、ダンプ式の粉粒体運搬車にも適用可能である。
【0074】
<上記実施形態の変形例2>
既述した実施形態では、タンク5内の排出管6を加熱する構成を例示したが、タンク5外の排出管6を加熱する構成としても良い。粉粒体を排出管6を通じてタンク5外に排出しているとき、排出管6内および排出ホース7内では排出ホース7の下流端部に近づくに従って圧力が徐々に低下していき、排出ホース7の下流端部では大気圧になる。粉粒体の排出作業の終了時は、タンク5内から排出ホース7の下流端部まで大気圧に低下する。排出管6内の圧力低下が大きいほど温度低下も大きいので、タンク5外の排出管6のうちタンク5に近い部分では圧力低下が大きく温度低下も大きい。よって、タンク5に近くて結露が発生しやすい部分を加熱することが好ましい。
【0075】
<上記実施形態の変形例3>
既述した実施形態では、仕切板424,425を設けて排出管カバー42内の通気路43を外側通気路43Aと内側通気路43Bに分けた構成としたが。通気路43を外側通気路43Aと内側通気路43Bに分けない構成としても良い。この構成でも排出管6を加熱することは可能である。
【符号の説明】
【0076】
1,1A 粉粒体運搬車
2 車台
5 タンク
6 排出管
6b 曲部
14 開閉弁
16 圧縮空気供給部
17 エアコンプレッサ
18 主配管
19 排出管用配管
28 加熱用分岐管
28A 分岐管
40 加熱手段
41 圧縮空気導管
42 排出管カバー
43 通気路
43A 外側通気路
43B 内側通気路
44 導出配管