(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021204
(43)【公開日】2023-02-10
(54)【発明の名称】エレベータに応用される点字プレート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B66B 1/50 20060101AFI20230203BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
B66B1/50 Z
B32B3/30
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071852
(22)【出願日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】110128245
(32)【優先日】2021-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】516196037
【氏名又は名称】彩碁科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】No.6,Ln.6,Heping Rd.,Banqiao Dist.,New Taipei City 220,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 英傑
【テーマコード(参考)】
3F502
4F100
【Fターム(参考)】
3F502MA01
3F502MA35
4F100AD00B
4F100AG00B
4F100AK01A
4F100AK25B
4F100AK42B
4F100AK45B
4F100AK51A
4F100AK52B
4F100AK53A
4F100BA03
4F100CA02A
4F100DD01B
4F100GB90
4F100HB00C
4F100JB12B
4F100JB14B
(57)【要約】
【課題】 エレベータに応用される点字プレート及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】一実施例によれば、複数の基材と複数の凸点構造とを備えた、エレベータに応用される点字プレートであり、前記複数の基材が架橋剤を含み、エレベータ装飾板である本体に形成され、前記複数の凸点構造が少なくとも1つの主層を介して生成される点字プレートが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋剤を含み、エレベータ装飾板である本体に形成される複数の基材と、
凸点構造のいずれか1つが、前記基材のいずれか1つ上に形成され、少なくとも1つの主層によって生成される複数の凸点構造と、を含むエレベータに応用される点字プレートであって、
前記主層のいずれかは、最大直径及び最大高さを有し、前記主層のいずれかの最大直径と前記最大高さが一定の比率に従って上向きに連続的に積み重ねることによって形成されるエレベータに応用される点字プレート。
【請求項2】
前記主層の少なくとも一部が、装飾層をさらに含む請求項1に記載のエレベータに応用される点字プレート。
【請求項3】
前記複数の基材のパターン形状が、円形、多角形又はこれらの組み合わせである請求項1に記載のエレベータに応用される点字プレート。
【請求項4】
前記架橋剤が、ポリイソシアネート系塗料、エポキシ系塗料又はアンモニア系塗料である請求項1に記載のエレベータに応用される点字プレート。
【請求項5】
前記少なくとも1つの主層の材質は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、セラミック、ガラス又はこれらの組み合わせが挙げられる請求項1に記載のエレベータに応用される点字プレート。
【請求項6】
前記比率は、1.5~3の範囲である請求項1に記載のエレベータに応用される点字プレート。
【請求項7】
エレベータに組み付けられるエレベータ装飾板である本体を用意するステップ(A1)と、
架橋剤を介して前記本体にパターン形状を有する基材を形成するステップ(A2)と、
比率に従って前記基材に少なくとも1つの主層を形成するステップ(A3)と、
硬化動作に基づいて前記少なくとも1つの主層を硬化して凸点構造を形成するステップ(A4)と、
前記ステップ(A1)~前記ステップ(A4)を複数回繰り返すか、同時に実施して、最終的に前記本体に複数の前記凸点構造を介して点字を形成するステップ(A5)と、
を含むエレベータに応用される点字プレートの製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(A3)において、前記比率が、前記少なくとも1つの主層の最大直径及び最大高さに対応し、かつ前記比率が1.5~3の範囲である請求項7に記載のエレベータに応用される点字プレートの製造方法。
【請求項9】
前記ステップ(A4)において、前記硬化動作が、熱処理、光処理またはこれらの組み合わせの硬化方法である請求項7に記載のエレベータに応用される点字プレートの製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(A5)において、前記複数の凸点構造は、1つずつ又は同時の方法で前記点字を形成する請求項7に記載のエレベータに応用される点字プレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点字プレート及びその製造方法に関し、特に、エレベータに応用される点字プレート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、エレベータ内には指先の触覚による案内用の点字が設けられ、一般的に、前記点字は、プラスチックシートの形でエレベータ装飾板に貼着するか、又は金属加工によってエレベータ装飾板に直接形成されている。
【0003】
この場合、プラスチックシート形の貼着は、手作業に頼らなければならないため、貼着の位置ずれや歪みが発生することが多く、更には気泡が生じることで、後日温度の影響により脱落するリスクが発生し、かつプラスチックシートが透明状でも、本来の金属材質のエレベータ装飾板と一体成形のような仕上がりに見えないことで、全体的な質感が悪くなり、手の指又は鋭利な物で傷つきやすく脱落しやすい。スタンピング形成による凸点は、施工過程で金属材料の特性が異なるため、各エレベータ装飾板の全体的な形状が影響を受けないことを保証することは不可能であり、かつ大部分の小さな金属板をスタンピングして凸起させてから金属製エレベータ装飾板に貼着することを用いると、やはり貼着の位置ずれや歪みが発生し、一体成形のような仕上がりができないなどの問題があり、すなわち、この工程(スタンピング成形技術)は、すべての金属製エレベータ装飾板に適しているわけではない。高層ビルのエレベータ制御盤の場合、プラスチックシートと金属板の底面積が大きいため、取られるスペースが多く、スペースが限られたエレベータ制御盤に完全に貼着することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記少なくとも1つの問題を解決するため、本発明のいくつかの実施例は、点字プレート及びその製造方法、特にエレベータに用いられる点字プレート及びその製造方法を提案する。前記点字プレートは、あらゆる金属材質のエレベータ装飾板に適した利点を有する。具体的に、前記点字プレートは、架橋剤を含み、本体に形成された複数の基材を利用し、いずれかの前記基材に対向する構造を形成するため、前記エレベータ装飾板の外形又は表面に影響を与えないと共にスペースを節約する場合において、設定された凸点規則を介して点字を生成させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の少なくとも1つの実施例は、エレベータに応用される点字プレートであり、複数の基材と、及び複数の凸点構造と、を備え、前記複数の基材は架橋剤を含み、本体に形成され、前記複数の凸点構造が少なくとも1つの主層を介して生成され、前記本体がエレベータ装飾板である。
【0006】
本発明の少なくとも一つの実施例は、エレベータに応用される点字プレートの製造方法である。前記方法は、エレベータに組み付けられる本体を用意するステップと、架橋剤を介して前記本体にパターン形状を有する基材を形成するステップと、比率に従って前記基材に少なくとも1つの主層を形成するステップと、硬化動作に基づいて前記少なくとも1つの主層を硬化して凸点構造を形成するステップと、前述操作を複数回繰り返すか、同時に実施して、最終的に前記本体に前記複数の凸点構造を介して点字を形成するステップと、を含む。
【0007】
上記本発明の概要は、本発明の幾つか態様及び技術的特徴に対し基本的な説明をすることを目的とする。発明の概要は、本発明の詳細な説明ではないため、その目的は特別に本発明のキーとなるまたは重要な要素を挙げることではなく、本発明の範囲を特定するために用いられることもなく、単に本発明のいくつかの概念を簡潔に開示するだけである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のいくつかの実施例に係るエレベータに応用される点字プレートの概略図である。
【
図3】本発明の
図1の一部点字の別の概略図である。
【
図4】発明のいくつかの実施例に係るエレベータに応用される点字プレートの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の技術的特徴及び技術的内容をさらに理解するため、以下の本発明に関する詳細な説明及び図面を参照されたい。
【0010】
本発明の少なくとも1つの実施例は、点字プレート及びその製造方法に関し、特に、エレベータに用いられる点字プレート及びその製造方法に関する。
【0011】
図1を参照すると、本発明のいくつかの実施例に係るエレベータに応用される点字プレートの概略図である。
図1は、本体1を示している。本実施例において、本体1は、エレベータ装飾板(例えばPVCフィルムラミネート鋼板又は塗装鋼板等)であり、任意の適切な材料(例えばガラス、金属(アルミニウム、ステンレス鋼または鋼など)、木質材料(例えば丸太又は木質繊維等)または合成樹脂等)によって形成される。本体1に架橋剤(binder)を介してパターン形状(円形、多角形またはこれらの組み合わせなど)を有する基材30が形成される。次に、基材30に主層32が形成されることで、前記本体1に指先の触覚により認識できる点字2が形成される。
【0012】
本実施例において、本明細書中でいう場合、「主層32」とは、凸点構造31に含まれ、一定の高さを有する材料部分(例えば
図1に例示されている最大高さH)であり、ここで、前記材料はポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、セラミック、ガラス又はこれらの組み合わせであり得る(ただしこれらに限定されない)。また、本明細書中でいう場合、「基材30」とは、前記凸点構造31を支持でき、上記本体1に堅固に形成される単層又は多層の架橋剤材料(樹脂など)である。
【0013】
本実施例において、上記基材30は円形(又はほぼ円形)であると想定し、上記主層32が
図1に示すように、矢印方向に上記凸点構造31を形成し続けることで、主層32が最終的に最大高さHに対する比率で、最大直径D(すなわち、構造31の横断面積は、主層32の直径が狭くなるにつれて小さくなる)を有すると想定され、ここで、前記最大高さHは0.1mm~1.05mmの範囲、好ましくは0.65mm~0.85mmの範囲であり;前記最大直径Dは、0.1mm~1.6mmの範囲、好ましくは1.55mm~1.59mmの範囲であり;前記比率は、1.5~3の範囲(すなわち、1.5≦D/H≦3)である。この時、前記凸点構造31の外輪郭は、半球状又は少なくとも一部が同方向の連続曲面などであるため、上記本体1に、その上に凸起する前記凸点構造31を持たせることができる。この時、これら凸点構造31は、現在設定されている凸点(組み合わせ)規則(例えば米国で定められた点字サイズ仕様等による)に基づき順次(すなわち、凸点構造31を本体1上に1つずつ作製される)又は同時に生成して、上記点字2を形成する。
【0014】
当然、その他の実施例において、上記基材30は矩形(又はほぼ方形)またはその他の適切なパターン形状であると想定することもできる。この場合、上記凸点構造31の形成動作を次の通りに想定し、すなわちまず
図1に示すように矢印方向に上記主層32を前記パターン形状によって所定の高さに形成し、次にこの所定の高さにおいて、必要に応じて上記凸点構造31を連続して形成することで、最終的に上記本体1に上記点字2を形成する。本明細書中でいう場合、「連続して形成」とは、主層32が上記比率(すなわち、1.5≦D/H≦3)に基づいて所定の高さから最大高さHまで徐々に形成することができる過程である。
【0015】
ここで、上記本体1がガラス層である場合、架橋剤は、ポリイソシアネート系塗料(例えば水溶性イソシアネート化合物)、エポキシ系塗料(例えばポリエポキシ系化合物)又はアンモニア系塗料等の樹脂を含有する塗料を使用することができる。また、上記本体1がアルミニウム及び/または鋼を含有する金属層である場合、任意選択で、先に金属層の表面にアルカリ脱脂又は溶媒脱脂等の脱脂処理を施して表面の油分を除去し、次に塗布(またはインクジェット印刷)を通じて架橋剤を上記パターン形状に従い金属層の表面に形成させる。架橋剤は、単独で1種の塗料、又は2種類以上を組み合わせた塗料を使用できる。本実施例では、上記樹脂の種類を特に限定することなく、すなわち、上記樹脂は任意の適切な種類(例えばポリエステル樹脂またはアクリル樹脂等)であってもよい。
【0016】
ここで、上記主層32は、上記凸点構造31を形成する際に、任意選択で、
図2及び
図3に示す装飾層33を備えることができる。この場合において、装飾層33は、設計により本実施例の凸点構造31に視覚的変化(変色、マット仕上げ若しくは発光など)を持たせ、または機能(例えば耐摩耗性、耐傷付性若しくは抗細菌性)を持たせることができる。
【0017】
例えば、装飾層33が粒子を含む場合、前記凸点構造31の表面粗さの調整を介して手触り感を増加させるため、これら粒子は、金属粒子又は非金属粒子(石材の粒子など)であり得る。ここで、装飾層33に含まれる粒子は、ゴム粒子である場合、前記凸点構造31の表面が、調整されて手で触れることによって発生する力を適切に解消して、凸点構造31の安定性を高めることができる。
【0018】
例えば、装飾層33が粉末を有する層である場合、これら粉末は、金属粉末、金属酸化物粉末、蛍光粉末、セラミック粉末、セラミック蛍光粉末またはこれらの組み合わせであり得る(ただしこれらに限定されない)と共に接着剤の接着によって前記凸点構造31に賦形される。本実施例でいう場合、「賦形」とは、デジタルインクジェット印刷又はスクリーン印刷を利用して、特定の立体パターン(レリーフなど)または特定のフラットパターン(中空パターン又は全面パターンなど)を形成する過程である。前記接着剤は、追加で添加される材料又は主層32の材料の一部として添加される材料であり得、粉末を間接的(接着剤を介し)/または直接的に主層32に付着させて前記装飾層33を形成し得る。なお、前記接着剤として使用できる材料は、特に制限することなく、例えば異種媒体を接着するために用いられる材料であり得、前記凸点構造31の視覚的要件(光透過率など)に基づいて選択される材料であってもよい。
【0019】
図1及び
図4を合わせて参照すると、
図4は、本発明のいくつかの実施例に係るエレベータに応用される点字プレートの製造方法のフローチャートである。当該方法は、エレベータに組み付けられる本体1を用意すること(ステップ(A1))と、架橋剤を介して前記本体1にパターン形状を有する基材30を形成すること(ステップ(A2))と、比率(最大直径D及び最大高さHに対応)に従って前記基材30に少なくとも1つの主層32を形成すること(ステップ(A3))と、硬化動作(熱処理または光処理の硬化動作)に基づいて前記主層32を硬化して凸点構造31を形成すること(ステップ(A4))と、前述のステップ(A1)~ステップ(A4)を繰り返し(又は同時に実施し)、最終的に前記本体1に点字2を形成すること(ステップ(A5))と、を含む。
【0020】
本実施例中でいう場合、「比率」とは、主層32内の各直径及び対応する各高さ(例えば
図1に示される最大直径D及び対応する最大高さH)に対応することである。例えば、前で述べたように凸点構造31の外輪郭が半球状の場合、最大直径Dと最大高さHとの比は2(すなわち、D/H=2)である。凸点構造31の外輪郭の少なくとも一部が同方向の連続曲面である場合、最大直径Dと最大高さHとの比が1.5~3の範囲(すなわち、1.5≦D/H≦3)である。
【0021】
本実施例でいう場合、「硬化動作」とは、任意の適切な熱処理又は光処理を含む硬化動作である。具体的に、上記主層32が光硬化性材料(すなわち、感光性樹脂)で形成される場合、紫外線照射によって硬化される。また上記主層32が熱硬化性材料(すなわち、熱硬化性樹脂)で形成される場合、赤外線照射によって加熱硬化される。両方の特性を兼ね備えた場合も異なる硬化方法を交互に使用してもよく、本発明は限定されない。
【0022】
特に、本実施例のステップ(A3)においては、
図2に示すように、ステップ(A4)を介して上記主層32内または外側に装飾層33を形成させることもでき、任意選択で、上記凸点構造31に表面処理工法を施し、加工して他の視覚効果(例えば全部マット仕上げ、一部マット仕上げ、レリーフまたは梨地仕上げ等)を有するものを形成する。本明細書中でいう場合、「表面処理工法」とは、加工を介して実体物(又は有体物)に特定の視覚を生成する過程である。
【0023】
本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えることができる。従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で規定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0024】
1 本体
2 点字
30 基材
31 凸点構造
32 主層
33 装飾層
D 最大直径
H 最大高さ
(A1)~(A5) ステップ