(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021233
(43)【公開日】2023-02-10
(54)【発明の名称】Ga2O3系単結晶基板と、Ga2O3系単結晶基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/16 20060101AFI20230202BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C30B29/16
H01L21/304 611
H01L21/304 622W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193993
(22)【出願日】2022-12-05
(62)【分割の表示】P 2021049333の分割
【原出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】西口 健吾
(72)【発明者】
【氏名】古滝 敏郎
(57)【要約】
【課題】完全に双晶のない、Ga
2O
3系単結晶及びGa
2O
3系単結晶基板を作製できるようにし、ひいてはGa
2O
3系単結晶基板を用いた光デバイスや電力用デバイスを歩留まりよく生産できるようにする。
【解決手段】単結晶中に含有される不純物濃度が0.02mol%以上0.15mol%以下になるように不純物濃度が調整された酸化ガリウム原料を用いて、完全に双晶のない単結晶を育成し、その単結晶から完全に双晶のないGa
2O
3系単結晶基板を作製する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶中に含有する不純物の合計濃度が0.02mol%以上0.15mol%以下で、全く双晶のないGa2O3系単結晶基板。
【請求項2】
前記不純物がSi、Sn、C、Mg、N、Fe、P、Cu、Co、Niの何れか1つ以上の元素からなる請求項1に記載のGa2O3系単結晶基板。
【請求項3】
前記基板の主面が、(100)面、(010)面、(001)面、(-201)面、(101)面の何れかである請求項1又は2に記載のGa2O3系単結晶基板。
【請求項4】
前記主面が、(100)面、(010)面、(001)面、(-201)面、(101)面の何れかに対して、±7°以内(但し、0°は含まない)で傾斜した面である請求項1又は2に記載のGa2O3系単結晶基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ga2O3系単結晶基板と、Ga2O3系単結晶基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、新しい半導体基板であるGa2O3系単結晶基板を用いた、光デバイスや電力用デバイスなどの各種半導体素子開発が活発になっている。
【0003】
一般的に、単結晶基板上に各種デバイス構造を形成するにあたり、基板に双晶が存在すると、その部分に成長させた積層膜には割れないしはクラックや剥離が発生したり、また所望する面方位とは異なる面方位の積層膜が成長するため、デバイスとして使えなくなる。そのため、双晶を全く含まない双晶フリーの単結晶基板が必要になる。
【0004】
ただ、特許文献1や2に説明されているように、Ga2O3系単結晶はその結晶育成時に双晶が発生し易いという問題がある。そのため、特許文献3に記載のように、ダイの全幅と同じ幅の種結晶を用い、ネッキング及びスプレディングを行わずに結晶育成することで、双晶をほぼ0本にすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6097989号公報
【特許文献2】特許第5879102号公報
【特許文献3】特許第5777756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3に記載の方法でも、種結晶から新たに結晶化した部分において双晶は発生しており完全にはゼロではないため、不十分である。双晶の発生のし易さに影響を与える要素の一つに、その単結晶が属する結晶系が挙げられる。今日、半導体産業で使われているSi基板やInP基板、GaN基板などがそれぞれ立方晶、立方晶、六方晶の対称性の良い結晶系に属し、双晶が全くない単結晶基板が得られているのとは異なり、Ga2O3系単結晶は対称性が良くない結晶系である単斜晶系に属し、極めて強い劈開性をもつ珍しい結晶であるため、双晶が全くない単結晶を育成して、完全に双晶フリーな基板を作製できるか分からない。また、特許文献3に記載の方法はネッキング及びスプレディングを実施しないため、結晶欠陥が発生し易くなり結晶性が良くないという問題がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、完全に双晶がなく結晶性が良好なGa2O3系単結晶そしてGa2O3系単結晶基板を作製できるようにし、ひいてはGa2O3系単結晶基板を用いた光デバイスや電力用デバイスを歩留まりよく生産できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、以下の〔1〕~〔6〕の本発明により解決されることを見出した。
【0009】
〔1〕単結晶中に含有する不純物の合計濃度が0.02mol%以上0.15mol%以下で、全く双晶のないGa2O3系単結晶基板である。
【0010】
〔2〕上記不純物がSi、Sn、C、Mg、N、Fe、P、Cu、Co、Niの何れか1つ以上の元素からなる上記〔1〕に記載のGa2O3系単結晶基板である。
【0011】
〔3〕上記基板の主面が、(100)面、(010)面、(001)面、(-201)面、(101)面の何れかである上記〔1〕又は〔2〕に記載のGa2O3系単結晶基板である。
【0012】
〔4〕上記主面が、(100)面、(010)面、(001)面、(-201)面、(101)面の何れかに対して、7°以内(但し、0°は含まない)で傾斜した面である上記〔1〕又は〔2〕に記載のGa2O3系単結晶基板である。
【0013】
〔5〕誘導加熱方式の単結晶育成方法によって育成されるGa2O3系単結晶から基板加工されて、含有される不純物濃度が0.02mol%以上0.15mol%以下で、全く双晶のないGa2O3系単結晶基板の製造方法である。
【0014】
〔6〕上記Ga2O3系単結晶を育成する方向が、a軸方向、b軸方向、c軸方向、ないしはそれぞれの軸から7°以内(但し、0°は含まない)の範囲で傾斜させた何れかの方向である上記〔5〕に記載のGa2O3系単結晶基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、双晶が全くなく結晶性が良好なGa2O3系単結晶基板を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るEFG法によるGa
2O
3系単結晶の製造方法の一例の育成炉を説明する、模式断面図である。
【
図2】
図1のEFG法によるGa
2O
3系単結晶の製造方法の説明図である。
【
図3】(a) 本発明の実施形態に係るGa
2O
3系単結晶基板の一例を示す斜視図である。(b) 本発明の実施形態に係るGa
2O
3系単結晶基板の一例を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るGa
2O
3系単結晶基板の他の一例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施例1及び比較例1に係るGa
2O
3系単結晶中のSi不純物濃度[mol%]と、双晶の有無、又はグレインバウンダリーの有無のグラフである。
【
図6】本発明の実施例2及び比較例2に係るGa
2O
3系単結晶中のSi不純物濃度[mol%]と、双晶の有無、又はグレインバウンダリーの有無のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1から
図3を参照して、本実施形態を説明する。本実施の形態において、Ga
2O
3系単結晶13とは、Ga
2O
3単結晶、もしくはAlが含まれたGa
2O
3結晶である。Alを含む場合は、組成比が(Al
(1-x)Ga
x)
2O
3(0<X≦1)である結晶である。
【0018】
Ga
2O
3系単結晶基板16又は21の切り出し元のGa
2O
3系単結晶の製造の一例として、誘導加熱方式の単結晶育成方法であるEFG(Edge-defined Film-fed Growth)法によるβ型Ga
2O
3系単結晶(β-Ga
2O
3単結晶)育成が挙げられる。
図1は、EFG法を用いたβ-Ga
2O
3単結晶の製造装置1の構造を示す模式断面図である。なお、結晶育成方法は、EFG法に制限されず、CZ(Czochralski)法やブリッジマン(Bridgman)法等でもよい。
【0019】
図1に示すように、製造装置1の内部にはGa
2O
3系単結晶の原料を充填する坩堝3、そして、スリットが設けられているダイ5が、坩堝3内に設置されている。坩堝13の上面には、ダイ5の上面を除いて蓋6がある。
【0020】
坩堝13に充填する原料は、純度5N(99.999%)以上の高純度のGa2O3(酸化ガリウム)である。そして、結晶性が良好な状態を保ちつつ双晶が結晶育成中に発生しないようにするために、単結晶中の合計含有率が0.02mol%以上0.15mol%以下になるように不純物を添加する。これは、同時に、Ga2O3系単結晶基板が所望の半導体物性値(例えば、電気抵抗率、キャリアタイプ、キャリア密度、移動度等)になるようにすることでもある。さらに、不純物の添加により、結晶育成において多結晶が発生し難くなり結晶性が向上するため、単結晶の歩留まりが向上する。ただし、不純物濃度が高くなり過ぎるとかえって結晶性は悪くなる。不純物が無添加の場合は、多結晶が発生し易くなる。不純物元素として、SiやSn、C、N、P、FeやMg、Cu、Co、Niがあり、酸化ガリウムの出発原料に混ぜる場合は、それら元素の単体もしくは酸化物ないしは窒化物の形で用いる。
【0021】
なお、坩堝13に充填する原料は、できるだけ多く充填できるようにするために高密度な原料が好ましい。
【0022】
育成装置内で加熱されてβ-Ga2O3の融点である約1800℃以上の高温になり、β-Ga2O3の融液や蒸気にさらされる坩堝13やダイ5、蓋6などは、Ga2O3の融液や蒸気と反応しにくく、かつ約1800℃超の高融点である材質ものものが用いられる。現状、イリジウムが最も適しており、そのため育成雰囲気はアルゴンや窒素などの不活性ガス100Vol%、もしくは酸素を最大3Vol%程度まで含む不活性雰囲気である必要がる。坩堝3からの原料の蒸発を抑制するために加圧されていてもよい。
【0023】
坩堝3は、誘導コイルからなるヒータ部9により所定の温度に誘導加熱され、坩堝3内の原料が溶融し、融液が毛細管現象によりスリット5Aを上昇してくる。
【0024】
ここで、加熱方式には、一般的にSiのCZ法結晶育成で使われるような抵抗加熱もあるが、Ga2O3系結晶育成の場合は誘導加熱のほうが適している。なぜなら、Ga2O3は非常に昇華や蒸発し易い性質のため、ホットゾーン内全体の温度を上げざるを得ない抵抗加熱での結晶育成の場合は、種結晶や育成した結晶から昇華や分解蒸発が発生するため、それらの結晶はやせて細くなり、最悪、消失する。その結果、結晶育成の歩留まりが低下、ないしは結晶の育成自体ができなくなる。それに対し、誘導加熱の場合は、坩堝3や蓋6などイリジウム部分だけを加熱する局所加熱のため結晶は比較的冷えやすく、結晶部分からの昇華や分解蒸発はほぼ無視できる程度まで抑制される。また、無駄に加熱されることがないため坩堝からの昇華や蒸発も抑えられる。その結果、元の投入原料のうち単結晶になる分の重量割合を示す原料効率が向上する。
【0025】
スリット5Aの上方にある種結晶10を下げていき、融液が露出しているダイ上面部5Bに一部接触させる。その後、種結晶10を所定の速度で引き上げていくことで、種結晶の融液接触部から結晶化が開始される。
【0026】
まず、できるだけ高温下で引き上げ速度を調整しながら、種結晶10を引き上げていき、結晶中の転位除去のため細いネック部を作る(ネッキング13a)。具体的には、温度1800℃以上で、ネック部太さを、ダイ上面に接触する種結晶面積のおよそ半分以下にすることにより、Ga2O3系単結晶13の転位密度を1.0×105個/cm2以下に出来る。結晶育成の原理上、種結晶はできるだけ転位が少ないものが好ましい。
【0027】
次に、種結晶保持具11の上昇速度を所定の速度に設定し、種結晶10を中心にGa2O3系単結晶13をダイ5の幅方向に一定角度θで拡幅する様に結晶成長させる(スプレディング13b)。酸化ガリウム単結晶の双晶は、ネッキングやスプレディング、そして後述する直胴部のいずれの育成時にも発生するが、特にスプレディング段階において頻発する。そして、結晶中の(100)面に平行な方向に沿って双晶が成長し伸びていき、結晶の端部にぶつかるまで消えない。
【0028】
一般的に双晶の発生割合はθの大きさに依存する。双晶が発生しないようにするためには、θを小さくしてゆっくり広げることが好ましい。θを大きくすればするほど、融液中の原子が急激に並んで結晶化するため、原子並びの乱れである双晶がより多く発生する。具体的には30°以下にすると双晶が無くなり結晶性の高い単結晶を育成できるようになる。θが30°より大きくなると双晶が発生してくる。
【0029】
しかし、上記θの大小に関わらず、単結晶中の不純物濃度が0.02mol%以上の場合、双晶は発生しない。不純物濃度が0.02mol%より低いと双晶が発生する。なお、不純物濃度が0.15mol%より高い場合、双晶は発生しないものの、グレインバウンダリーが発生してきて結晶性は悪くなる。そのため、不純物濃度は0.15mol%以下が好ましい。
【0030】
次いで、Ga2O3系単結晶13が、ダイ5の全幅まで拡幅したら(フルスプレッド)、続いて、ダイ5の全幅と同じ幅を有する部分(直胴部13c) を、適切な長さまで引き上げる。直胴部の長さは特に限定されない。
【0031】
直胴部の育成終了後、室温まで降温してから、結晶を製造装置から取り出し、歪検査器及びX線回折装置を用いて双晶の有無と結晶性を評価する。単結晶中の不純物濃度が上記所定の範囲であれば、双晶は全く存在しない。また、グレインバウンダリーも全く存在しない。なお、上記評価は、取り出した結晶を基板加工した後に実施してもよい。
【0032】
さらに、単結晶中の不純物濃度が上記所定の範囲であれば、Ga2O3系単結晶13の結晶育成において、ダイ5の全幅と同じ幅をもつ双晶フリーの種結晶を使い、上記ネッキング及びスプレディングを省き、種結晶から直接直胴部を育成した場合でも双晶は全く発生せず、そして結晶性に優れた双晶フリーの単結晶を育成できるようになる。
【0033】
引き上げ面方位は、主面の面方位に応じて種々設定可能である。引き上げ方向は、a軸、b軸、c軸、ないしは各軸に対し±7°以内(但し0°は含まない)に傾斜した何れかの方向で引き上げる。ここでいう引き上げ方向が結晶の育成方向である。基板16の主面15としては、良好な表面モフォロジの半導体層を形成する事が可能となり紫外LED等の半導体デバイス構造の作製に適した、(100)面、(010)面、(001)面、(101)面、(-201)面、もしくは(100)面、(010)面、(001)面、(101)面、(-201)面の何れかに対して7°以内の角度範囲(但し0°は含まない)で傾斜した面の何れかが好ましい。
【0034】
なお、Ga2O3系単結晶13の引き上げ方向及び種結晶10の設置方向は、通常は、Ga2O3系単結晶13の面20の面方位が前記の通りとなる様に設定する。
【0035】
次に、結晶育成されたGa2O3系単結晶13をGa2O3系単結晶基板16に基板加工する方法について説明する。例えば、スライシングマシンやダイヤモンドコアドリル、超音波加工機等により、方形状又は円形に切り抜き加工を施して、所定形状の方形状基板又は円形状基板を切り出す。
【0036】
そして、端面研削盤を用いて基板外形の微調整整形を行う。
【0037】
また、上記切り抜き加工の前後において、必要に応じて、オリフラ(オリエンテーションフラット)を、基板16もしくは21に作製してもよい。
【0038】
上記オリフラ面は、主面が(100)面ないしは(100)面から7°以下の範囲で傾斜した面の場合は、少なくともオリフラの1つが主面に垂直かつb軸に対して平行になる端面である。上記主面が(100)面以外や(100)面から7°以下の範囲で傾斜した面以外の場合は、少なくともオリフラの1つが上記主面に垂直かつ上記主面と上記(100)との交線に対し平行になる端面である。
【0039】
オリフラを上記結晶方位に作製することで、加工時において基板にクラックやチッピング、剥離が生じないようにすることができる。
【0040】
次いで、作製した基板16の片面を主面15とし、少なくともその主面15に、ラッピング、ポリシングの研磨加工を施し、主面15を超平坦にすると同時に基板16の厚みを調整する。また裏面19にも必要に応じた研磨加工を施す。ラッピングの砥粒はアルミナが好ましい。ポリシングは、化学機械研磨(CMP)を用い、CMP砥粒にはコロイダルシリカが好ましい。
【0041】
上記により、主面15の表面粗さRaは3.0nm以下となり、裏面19の表面粗さRaは必要に応じて0.1nm以上となる。
【0042】
上記基板加工の終了後、基板に付着しているシリカ等の汚れを除去し、残留加工歪の除去調整や基板表面に清浄な酸化層を形成するため、アセトン等での有機洗浄後にフッ酸洗浄、さらにRCA洗浄の基板洗浄を実施する。
【0043】
さらに、上記基板加工工程において、SiやInP、サファイア等の単結晶の基板加工分野の当業者にとっては一般的である、残留熱歪や残留加工歪、着色を除去する目的並びに電気的特性を改善する目的のための熱処理を、適宜施してもよい。熱処理の雰囲気ガスは、水素ガスのような還元性ガスを除き、窒素、二酸化炭素、アルゴン、酸素、空気ならいずれでも、適宜組み合わせてもよい。処理温度は500℃~1600℃であり、好ましくは700~1400℃である。また、加圧されていてもよい。
【0044】
上記工程を経ることにより、主面に双晶が全く無くグレインバウンダリーも全く無い結晶性に優れたGa2O3系単結晶基板が作製される。
【0045】
なお、前記基板の平面方向の形状は、方形状、円形状、又はオリフラ面が設けられた方形状、円形状である。そして、形状を精密にコントロールできるようにするため、また同時に自立した基板としての剛性が確保可能で、かつハンドリングに不都合が生じない程度の強度を有し、さらにクラックやバリの発生を防止可能であるとの観点から、前記方形状の場合は長辺が15mm以上150mm以下であり、前記各円形状の場合は直径φ25mm以上φ160mm以下が好ましい。
【0046】
さらに、上記理由から基板厚みは、0.1mm以上、2.0mm以下が好ましい。
【0047】
また、上記EFG法のネッキング及びスプレディングを実施することにより育成した前記単結晶から切り出し、基板加工した前記基板16の転位密度は、1.0×105個/cm2以下である。転位密度が低く抑えられることにより、光デバイスにおける発光効率の向上やデバイス寿命の改善、並びに電力用デバイスにおける、電力変換効率の向上やデバイス寿命の向上ができる。
【0048】
上記転位密度は、例えば、基板をエッチングした場合における点状のエッチピット密度で代替でき、KOHエッチャントでエッチングして評価する。
【0049】
以下に本発明に係る実施例を説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例0050】
ここでは、ネッキング及びスプレディングを実施するEFG法による結晶育成の場合について説明する。まず、坩堝に投入する酸化ガリウム原料について、各実施例サンプル1~4ごとに表1のようになる濃度のSi不純物を混ぜた純度6NのGa2O3パウダー原料を焼結させて粉砕した。そして、高密度になった前記各原料を結晶育成毎に坩堝に投入し、以下、同じように各結晶育成及び研磨加工を施し基板を作製した。なお、Si不純物として、酸化物であるSiO2を用いた。
【0051】
結晶育成炉のガス雰囲気は、窒素大気圧にし、誘導加熱によりイリジウム製坩堝を加熱した。
【0052】
まず、所定の温度に到達したら種結晶を下げていき、ダイに種結晶先端を接触させ融解させる。ネッキング工程において、育成温度を1850℃以上の高め、種結晶引き上げ速度を10mm/hr以上でスタートし、その後ネック太さがφ4mmになるように、適宜、温度速度を調整した。
【0053】
次に、スプレディング工程において、引き上げ速度を10mm/hrにし、θが50°になるよう育成温度をゆっくり下げていきダイ幅55mmダイ厚み10mmにフルスプレッドさせた。
【0054】
フルスプレッド後、適宜、温度速度を調整しながら直胴部長さ55mmを育成する。
【0055】
その後、室温まで降温し結晶を育成装置から取り出した。結晶を歪検査器で評価したところ、各実施例サンプルの結晶とも双晶が全くない単結晶が得られた。
【0056】
なお、引き上げた単結晶の最も幅広の面が基板の主面になる面であり、今回は(-201)面になるように種結晶をセットしb軸方向に引き上げて育成した。
【0057】
結晶育成終了後に取り出した、各サンプルの切り出し元の結晶を歪検査器及びX線回折装置で評価したところ、いずれの結晶にも双晶は全く含まれていなかった。また、グレインバウンダリーも全く発生していなかった。
【0058】
次に、育成した単結晶から基板加工するため、まずオリフラとして、b軸方向に平行な方向に端面を1つ、[10-1]方向に平行な端面を一つ、合計2つの端面をスライシングマシンで形成した。その後、ダイヤモンドコアドリルによってφ2インチサイズの丸形に切り抜いた。
【0059】
次に、窒素ガス雰囲気下1000℃で5時間熱処理を行った後、基板の主面には、ラッピング及びポリッシングを施した。また裏面は、ラッピングのみを施した。研磨終了後、上記各洗浄を実施し、その後、歪検査器及びX線回折装置で評価したところ、全ての実施例サンプルとも、双晶の全くない完全に双晶フリーなφ2インチ基板が得られた。また、グレインバウンダリーも全く無く結晶性は良好であった。
【0060】
【0061】
(比較例1)
また、比較例サンプル5、6を、実施例1と同様に作製した。ただし、原料に混ぜて結晶中に含有されるSi不純物濃度は実施例サンプルとは異なり、表2の通りとした。
【0062】
【0063】
結晶育成終了後に取り出した各サンプルの切り出し元の結晶を、歪検査器及びX回折装置で評価したところ、サンプル5の切り出し元結晶には双晶が含まれていた。サンプル6の切り出し元結晶には双晶は全く含まれていなかったものの、グレインバウンダリーが発生していた。
【0064】
さらに、基板の上記比較例サンプル5、6を歪検査器及びX線回折装置で評価したところ、サンプル5には双晶が含まれ、サンプル6には双晶は全く含まれていなかった。ただ、サンプル6にだけグレインバウンダリーが存在しており結晶性は良くなかった。
【0065】
以上、実施例1及び比較例1の結果をまとめると
図5のようになり、ネッキングやスプレディングを作製した当該単結晶中の含有Si不純物濃度を0.02mol%~0.15mol%にすれば、双晶が全く無くグレインバウンダリーも全くない結晶性に優れた単結晶及び基板が得られた。
ダイ5の全幅と同じ幅の種結晶を使い、ネッキング及びスプレディングを省略したEFG法による結晶育成の場合について説明する。まず、坩堝に投入する酸化ガリウム原料について、各実施例サンプル7~10ごとに表3のようなSi不純物濃度になるように混ぜた純度6NのGa2O3パウダー原料を焼結させて粉砕した。そして、高密度になった前記各原料を結晶育成毎に坩堝に投入し、以下、実施例1と同じように各結晶育成及び研磨加工等を施し基板を作製した。なお、Si不純物として、酸化物であるSiO2を用いた。また、単結晶はb軸引き上げの(-201)面である。
まず、所定の温度に到達したら種結晶を下げていき、ダイに種結晶先端を接触させ融解させる。育成温度を1800℃以上、種結晶引き上げ速度を50mm/hr以下でスタートし、種結晶とダイ間の融液が切れないように、適宜、温度や速度を調整しながら直胴部長さ55mmを育成する。
その後、室温まで降温し結晶を育成炉から結晶を取り出した。結晶を歪検査器及びX線回折装置で評価したところ、各実施例サンプルの結晶とも双晶が全くない単結晶が得られた。また、グレインバウンダリーも全く発生していなかった。
次に、育成した単結晶から実施例1と同様にして基板加工し、歪検査器とX回折装置で各実施例サンプルを評価したところ、各サンプルとも、双晶の全くない完全に双晶フリーで、グレインバウンダリーが全く無い結晶性に優れたφ2インチ基板が得られた。
結晶育成終了後、育成装置から取り出した各サンプルの切り出し元結晶を、歪検査器及びX回折装置で評価したところ、サンプル11の切り出し元結晶には双晶が含まれていた。サンプル12のほうには双晶は全く無かったものの、グレインバウンダリーが発生していた。
上記結晶から基板加工したサンプル11には双晶が含まれ、サンプル12には双晶が全く含まれなかった。ただし、サンプル12にだけグレインバウンダリーが存在しており結晶性は良くなかった。
以上、説明したように本実施の形態によれば、結晶中にSiを0.02~0.15mol%含有していれば、双晶が全く無い結晶性に優れた単結晶を育成でき、上記単結晶を基板加工することで、双晶が全くない双晶フリーでグレインバウンダリーの全く無い結晶性に優れた基板を作製することができる。
なお、本発明は以上で説明した実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
そして、本発明の範囲は、特許請求項及びその同等物の許される最も広い解釈によって法によって許される最大限度まで決定されるものとし、前述した詳細な記載によって制限又は限定されないものとする。