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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021248
(43)【公開日】2023-02-10
(54)【発明の名称】肺感染症を処置するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7036 20060101AFI20230202BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230202BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A61K31/7036
A61P11/00
A61P31/04
A61K9/127
A61K9/12
A61K9/08
A61K9/72
A61K47/24
A61K47/28
A61M15/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022195530
(22)【出願日】2022-12-07
(62)【分割の表示】P 2021134797の分割
【原出願日】2013-05-21
(31)【優先権主張番号】61/649,830
(32)【優先日】2012-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513204012
【氏名又は名称】インスメッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター パーキンス
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミール マリニン
(72)【発明者】
【氏名】シンコン リー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ザイデル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ホルツマン
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ハーン
(57)【要約】
【課題】肺感染症を処置するためのシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、エアロゾル化されたリポソーム製剤を吸入により送達するためのシステムを提供することにより、マイコバクテリア感染症を含むさまざまな肺感染症を処置するための方法を提供する。一態様において、本発明は、肺感染症を処置または予防するためのシステムを提供する。一実施形態では、システムが、リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む医薬製剤(ここで、製剤は分散物(例えばリポソーム溶液または懸濁物)であり、リポソームの脂質成分は電気的に中性な脂質からなる)と、毎分約0.53gを上回る速度で医薬製剤のエアロゾルを生成するネブライザとを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2012年5月21日に出願された米国仮特許出願第61/649,830号からの優先権の利益を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
吸入による投与に適した一定の技術ではリポソームが使用され、肺では脂質複合体が薬物の治療効果を長時間にわたって供給する。また、これらの技術は持続的活性を有する薬物を提供すると共に、疾患部位に薬物をターゲティングし、疾患部位への薬物の取り込みを強化することを可能にする。
【0003】
リポソームの吸入送達は、リポソームが噴霧化時の剪断誘発応力を受けやすく、それが物理的特徴(例えば封入率、サイズ)の変化をもたらしうることによって複雑化する。しかし、特徴の変化に再現性があって許容基準を満たす限り、それらは必ずしも医薬開発の妨げにはならない。
【0004】
嚢胞性線維症(CF)患者には、肺における濃厚な粘液および/または喀痰分泌、頻繁な二次感染、細菌のコロニー形成によるバイオフィルムが見られる。これらの流体および物質は全て、アミノグリコシドによる感染症の効果的なターゲティングにとって障壁になる。リポソームアミノグリコシド製剤は、細菌性バイオフィルムと戦うのに役立ちうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、エアロゾル化されたリポソーム製剤を吸入により送達するためのシステムを提供することにより、マイコバクテリア感染症(例えば非結核性マイコバクテリウムが引き起こす肺感染症、本明細書では、これを非結核性マイコバクテリア(NTM)感染症ともいう)を含むさまざまな肺感染症を処置するための方法を提供する。例えば、ここに提供されるシステムおよび方法は、肺の非結核性マイコバクテリア感染症、例えば肺のM.avium、M.avium subsp.hominissuis(MAH)、M.abscessus、M.chelonae、M.bolletii、M.kansasii、M.ulcerans、M.avium、M.avium複合体(MAC)(M.aviumおよびM.intracellulare)、M.conspicuum、M.kansasii、M.peregrinum、M.immunogenum、M.xenopi、M.marinum、M.malmoense、M.marinum、M.mucogenicum、M.nonchromogenicum、M.scrofulaceum、M.simiae、M.smegmatis、M.szulgai、M.terrae、M.terrae複合体、M.haemophilum、M.genavense、M.gordonae、M.ulcerans、M.fortuitumまたはM.fortuitum複合体(M.fortuitumおよびM.chelonae)感染症を処置するために使用することができる。
【0006】
一態様において、本発明は、肺感染症を処置または予防するためのシステムを提供する。一実施形態では、システムが、リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む医薬製剤(ここで、製剤は分散物(例えばリポソーム溶液または懸濁物)であり、リポソームの脂質成分は電気的に中性な脂質からなる)と、毎分約0.53gを上回る速度(rate)で医薬製剤のエアロゾルを生成するネブライザとを含む。一実施形態では、エアロゾルの空気力学的質量中央径(mass median aerodynamic diameter)(MMAD)が、アンダーセンカスケードインパクタ(Anderson Cascade Impactor)(ACI)により測定した場合約4.2μm未満、ACIにより測定した場合約3.2μm~約4.2μm、または次世代インパクタ(Next Generation Impactor)(NGI)により測定した場合約4.9μm未満、NGIにより測定した場合約4.4μm~約4.9μmである。
【0007】
もう一つの実施形態では、肺感染症を処置または予防するためのシステムが、リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む医薬製剤(ここで、製剤は分散物(例えばリポソーム溶液または懸濁物)であり、リポソームの脂質成分は電気的に中性な脂質からなる)と、毎分約0.53gを上回る速度で医薬製剤のエアロゾルを生成するネブライザとを含む。エアロゾルの細粒分率(fine particle fraction)(FPF)は、アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)により測定した場合、約64%より高いかもしくは約64%に等しく、または次世代インパクタ(NGI)により測定した場合、約51%より高いかもしくは約51%に等しい。
【0008】
一実施形態では、ここに提供されるシステムが、アミノグリコシドを含む医薬製剤を含む。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン(rhodestreptomycin)、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダミシン(verdamicin)またはそれらの組み合わせである。さらにもう一つの実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。もう一つの実施形態では、アミノグリコシドが、下記の表Aに記載のアミノグリコシドまたはそれらの組み合わせから選択される。
【表A】
【0009】
ここに提供される医薬製剤は、リポソームの分散物(すなわち、リポソーム溶液またはリポソーム懸濁物のどちらであってもよい、リポソーム分散物または水性リポソーム分散物)である。一実施形態では、リポソームの脂質成分が、1つ以上の電気的に中性な脂質から本質的になる。さらなる一実施形態では、電気的に中性な脂質がリン脂質およびステロールを含む。さらなる一実施形態では、リン脂質がジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)であり、ステロールがコレステロールである。
【0010】
一実施形態では、アミノグリコシド医薬製剤(アミノグリコシドリポソーム溶液または懸濁物)における脂質対薬物比が、約2:1、約2:1以下、約1:1、約1:1以下、または約0.7:1である。
【0011】
一実施形態では、エアロゾル化されたアミノグリコシド製剤が、噴霧化時に、約1μm~約3.8μm、約1.0μm~4.8μm、約3.8μm~約4.8μm、または約4.0μm~約4.5μmのエアロゾル液滴径を有する。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。さらにもう一つの実施形態では、アミカシンが硫酸アミカシンである。
【0012】
一実施形態では、製剤中に存在するアミノグリコシドのうち、約70%~約100%が、噴霧化前に、リポソーム複合体化(例えば複数のリポソームに被包)されている。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドが、表Aに提示するアミノグリコシドから選択される。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。さらにもう一つの実施形態では、約80%~約100%のアミカシンがリポソーム複合体化されているか、または約80%~約100%のアミカシンが複数のリポソームに被包されている。もう一つの実施形態では、噴霧化前に、製剤中に存在するアミノグリコシドのうちの約80%~約100%、約80%~約99%、約90%~約100%、90%~約99%、または約95%~約99%が、噴霧化前にリポソーム複合体化されている。
【0013】
一実施形態では、噴霧化後のリポソーム複合体化(本明細書では「リポソーム会合」ともいう)アミノグリコシド百分率が、約50%~約80%、約50%~約75%、約50%~約70%、約55%~約75%、または約60%~約70%である。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドが、表Aに提示するアミノグリコシドから選択される。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。さらにもう一つの実施形態では、アミカシンが硫酸アミカシンである。
【0014】
もう一つの態様において、本発明は、肺感染症を処置または予防するための方法を提供する。一実施形態では、肺感染症が、グラム陰性細菌が引き起こす肺感染症(本明細書ではグラム陰性細菌感染症ともいう)である。一実施形態では、肺感染症がPseudomonas感染症、例えばPsuedomonas aeruginosa(緑膿菌)感染症である。もう一つの実施形態では、肺感染症が下記の表Bに提示するPseudomonas属の種の1つによって引き起こされる。一実施形態では、患者が、ここに提供されるシステムの1つによるマイコバクテリア肺感染症の処置を受ける。さらなる一実施形態では、マイコバクテリア肺感染症が、非結核性マイコバクテリア肺感染症、Mycobacterium abscessus肺感染症またはMycobacterium avium複合体肺感染症である。前述の実施形態の1つ以上において、患者は嚢胞性線維症患者である。
【0015】
一実施形態では、嚢胞性線維症を有する患者が、ここに提供されるシステムの1つによる肺感染症の処置を受ける。さらなる一実施形態では、肺感染症が、Mycobacterium abscessus、Mycobacterium avium複合体、またはP.aeruginosa(緑膿菌)によって引き起こされる。もう一つの実施形態では、肺感染症が、M.avium、M.avium subsp.hominissuis(MAH)、M.abscessus、M.chelonae、M.bolletii、M.kansasii、M.ulcerans、M.avium、M.avium複合体(MAC)(M.aviumおよびM.intracellulare)、M.conspicuum、M.kansasii、M.peregrinum、M.immunogenum、M.xenopi、M.marinum、M.malmoense、M.marinum、M.mucogenicum、M.nonchromogenicum、M.scrofulaceum、M.simiae、M.smegmatis、M.szulgai、M.terrae、M.terrae複合体、M.haemophilum、M.genavense、M.asiaticum、M.shimoidei、M.gordonae、M.nonchromogenicum、M.triplex、M.lentiflavum、M.celatum、M.fortuitum、M.fortuitum複合体(M.fortuitumおよびM.chelonae)またはそれらの組み合わせから選択される非結核性マイコバクテリウムによって引き起こされる。
【0016】
もう一つの態様では、患者の肺感染症を処置または予防するための方法が提供される。一実施形態において、本方法は、リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む医薬製剤をエアロゾル化することを含み、ここでは医薬製剤が、リポソームの水性分散物(例えばリポソーム溶液またはリポソーム懸濁物)であって、毎分約0.53グラムを上回る速度でエアロゾル化される。本方法は、エアロゾル化された医薬製剤を患者の肺に投与することをさらに含み、ここでは、エアロゾル化された医薬製剤が、遊離アミノグリコシドとリポソーム複合体化アミノグリコシドとの混合物を含み、リポソームの脂質成分は電気的に中性な脂質からなる。さらなる一実施形態では、エアロゾルの空気力学的質量中央径(MMAD)が、ACIにより測定した場合、約1.0μm~約4.2μmである。前述の実施形態のいずれか一つでは、エアロゾルのMMADが、ACIにより測定した場合、約3.2μm~約4.2μmである。前述の実施形態のいずれか一つでは、エアロゾルのMMADが、NGIにより測定した場合、約1.0μm~約4.9μmである。前述の実施形態のいずれか一つでは、エアロゾルのMMADが、NGIにより測定した場合、約4.4μm~約4.9μmである。
【0017】
一実施形態では、本方法が、リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む医薬製剤をエアロゾル化することを含み、ここでは、医薬製剤が水性分散物であって、毎分約0.53グラムを上回る速度でエアロゾル化される。本方法は、エアロゾル化された医薬製剤を患者の肺に投与することをさらに含み、ここでは、エアロゾル化された医薬製剤が遊離アミノグリコシドとリポソーム複合体化アミノグリコシド(例えばリポソームに被包されたアミノグリコシド)との混合物を含み、製剤のリポソーム成分は電気的に中性な脂質からなる。さらにもう一つの実施形態では、エアロゾルの細粒分率(FPF)が、ACIにより測定した場合、約64%より高いかもしくは約64%に等しくであるか、またはNGIにより測定した場合、約51%より高いかもしくは約51%に等しい。
【0018】
もう一つの態様では、リポソーム複合体化アミノグリコシドエアロゾル(例えばリポソーム複合体化アミノグリコシド)が提供される。一実施形態では、エアロゾルが、アミノグリコシドと、DPPCおよびコレステロールを含む複数のリポソームとを含み、ここでは、約65%~約75%のアミノグリコシドがリポソーム複合体化されており、エアロゾルは毎分約0.53グラムを上回る速度で生成される。さらなる一実施形態では、約65%~約75%のアミノグリコシドがリポソーム複合体化されており、エアロゾルは毎分約0.53グラムを上回る速度で生成される。前述の実施形態のいずれか一つでは、エアロゾルが、毎分約0.54グラムを上回る速度で生成される。前述の実施形態のいずれか一つでは、エアロゾルが、毎分約0.55グラムを上回る速度で生成される。前述の実施形態のいずれか一つでは、アミノグリコシドが、表Aに提示するアミノグリコシドから選択される。
【0019】
一実施形態では、リポソーム複合体化アミノグリコシドエアロゾルのMMADが、ACIにより測定した場合、約3.2μm~約4.2μm、またはNGIにより測定した場合、約4.4μm~約4.9μmである。さらなる一実施形態では、エアロゾルが、アミノグリコシドと、DPPCおよびコレステロールを含む複数のリポソームとを含み、ここでは、約65%~約75%のアミノグリコシドがリポソーム複合体化(例えば複数のリポソームに被包)されており、リポソームアミノグリコシドエアロゾルは、毎分約0.53グラムを上回る速度で生成される。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドが、表Aに提示するアミノグリコシドから選択される。
【0020】
一実施形態では、脂質複合体化アミノグリコシドエアロゾルのFPFが、アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)により測定した場合、約64%より高いかもしくは約64%に等しく、または次世代インパクタ(NGI)により測定した場合、約51%より高いかもしくは約51%に等しい。さらなる一実施形態では、エアロゾルが、アミノグリコシドと、DPPCおよびコレステロールを含む複数のリポソームとを含み、ここでは、アミノグリコシドの約65%~約75%がリポソーム複合体化、例えば複数のリポソームに被包されており、リポソームアミノグリコシドエアロゾルは毎分約0.53グラムを上回る速度で生成される。前述の実施形態のいずれか一つでは、エアロゾルが毎分約0.54グラムを上回る速度で生成される。前述の実施形態のいずれか一つでは、エアロゾルが毎分約0.55グラムを上回る速度で生成される。前述の実施形態のいずれかでは、アミノグリコシドが、表Aに提示するアミノグリコシドから選択される。
【0021】
一実施形態では、エアロゾルが、アミノグリコシドと、DPPCおよびコレステロールを含む複数のリポソームとを含み、ここでは、約65%~約75%のアミノグリコシドがリポソーム複合体化されている。さらなる一実施形態では、約65%~約75%のアミノグリコシドが、複数のリポソーム中に被包されている。さらなる一実施形態では、エアロゾルが、毎分約0.53グラムを上回る速度、毎分約0.54グラムを上回る速度、または毎分約0.55グラムを上回る速度で生成される。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシン(例えば硫酸アミカシン)である。
【0022】
一実施形態では、リポソーム複合体化アミノグリコシドにおけるアミノグリコシドの濃度が、約50mg/mL以上である。さらなる一実施形態では、リポソーム複合体化アミノグリコシドにおけるアミノグリコシドの濃度が、約60mg/mL以上である。さらなる一実施形態では、リポソーム複合体化アミノグリコシドにおけるアミノグリコシドの濃度が、約70mg/mL以上、例えば約70mg/mL~約75mg/mLである。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドが、表Aに提示するアミノグリコシドから選択される。さらにもう一つの実施形態では、アミノグリコシドがアミカシン(例えば硫酸アミカシン)である。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
患者における肺感染症を処置または予防を提供するためのシステムであって、前記システムは、
(a)リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む医薬製剤であって、前記製剤は水性分散物であって、前記リポソームの脂質成分は電気的に中性な脂質からなる医薬製剤と、
(b)毎分約0.53gを上回る速度で前記医薬製剤のエアロゾルを生成するネブライザと
を含み、前記エアロゾルの空気力学的質量中央径(MMAD)が、アンダーセン(Anderson)カスケードインパクタ(ACI)により測定した場合、約4.2μm未満、または次世代インパクタ(NGI)により測定した場合、約4.9μm未満である、システム。
(項目2)
肺感染症を処置または予防を提供するためのシステムであって、前記システムは、
(a)リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む医薬製剤であって、前記製剤は水性分散物であって、前記リポソームの脂質成分は電気的に中性な脂質からなる医薬製剤と、
(b)毎分約0.53gを上回る速度で前記医薬製剤のエアロゾルを生成するネブライザと
を含み、前記エアロゾルの細粒分率(FPF)が、ACIにより測定した場合、約64%より高いかもしくは約64%に等しくであるか、NGIにより測定した場合、約51%より高いかもしくは約51%に等しい、システム。
(項目3)
前記アミノグリコシドが、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン(rhodestreptomycin)、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダミシン、またはそれらの組み合わせから選択される、項目1または2に記載のシステム。
(項目4)
前記アミノグリコシドがアミカシンである、項目1~3のいずれか一項に記載のシステム。
(項目5)
前記アミノグリコシドが硫酸アミカシンである、項目1~4のいずれか一項に記載のシステム。
(項目6)
前記リポソームがユニラメラベシクル、マルチラメラベシクル、またはそれらの混合物を含む、項目1~5のいずれか一項に記載のシステム。
(項目7)
前記電気的に中性な脂質が、電気的に中性なリン脂質または電気的に中性なリン脂質およびステロールを含む、項目1~6のいずれか一項に記載のシステム。
(項目8)
前記電気的に中性な脂質がホスファチジルコリンおよびステロールを含む、項目1~7のいずれか一項に記載のシステム。
(項目9)
前記電気的に中性な脂質がジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびステロールを含む、項目1~8のいずれか一項に記載のシステム。
(項目10)
前記電気的に中性な脂質がDPPCおよびコレステロールを含む、項目1~9のいずれか一項に記載のシステム。
(項目11)
前記アミノグリコシドがアミカシンであり、前記電気的に中性な脂質がDPPCおよびコレステロールからなり、前記リポソームがユニラメラベシクル、マルチラメラベシクル、またはそれらの混合物を含む、項目1~10のいずれか一項に記載のシステム。
(項目12)
遊離アミノグリコシド対前記リポソーム複合体化アミノグリコシドの重量比が約1:100~約100:1である、項目1~11のいずれか一項に記載のシステム。
(項目13)
遊離アミノグリコシド対前記リポソーム複合体化アミノグリコシドの重量比が約1:10~約10:1である、項目1~12のいずれか一項に記載のシステム。
(項目14)
遊離アミノグリコシド対前記リポソーム複合体化アミノグリコシドの重量比が約0.3:1~約2:1である、項目1~13のいずれか一項に記載のシステム。
(項目15)
医薬製剤の体積が約8mLである、項目1~14のいずれか一項に記載のシステム。
(項目16)
前記エアロゾルが、約55%~約75%のリポソーム複合体化アミカシンを含む、項目1~15のいずれか一項に記載のシステム。
(項目17)
前記リポソーム複合体化アミノグリコシドが、ACIにより測定した場合、約3.2μm~約4.2μm、またはNGIにより測定した場合、約4.4μm~約4.9μmのMMADを有する、項目1~16のいずれか一項に記載のシステム。
(項目18)
前記リポソーム複合体化アミノグリコシドが、ACIにより測定した場合、約3.6μm~約3.9μm、またはNGIにより測定した場合、約4.5μm~約4.8μmのMMADを有する、項目1~17のいずれか一項に記載のシステム。
(項目19)
前記エアロゾル化された製剤のFPFが、ACIにより測定した場合、約64%より高いかもしくは約64%に等しく、またはNGIにより測定した場合、約51%より高いかもしくは約51%に等しい、項目1~18のいずれか一項に記載のシステム。
(項目20)
前記エアロゾル化された製剤のFPFが、ACIにより測定した場合、約64%~約80%、またはNGIにより測定した場合、約51%~約65%である、項目1~19のいずれか一項に記載のシステム。
(項目21)
前記ネブライザが前記医薬製剤のエアロゾルを毎分約0.54gを上回る速度で生成する、項目1~20のいずれか一項に記載のシステム。
(項目22)
前記エアロゾルが、前記肺感染症に対する即時殺細菌活性または即時抗生物質活性を与えるのに有効な量の遊離アミノグリコシドと、前記肺感染症に対する持続的殺細菌活性または持続的抗生物質活性を与えるのに有効な量のリポソーム複合体化アミノグリコシドとを含む、項目1~21のいずれか一項に記載のシステム。
(項目23)
前記医薬製剤が約500mg~約650mgのアミノグリコシドを含む、項目1~22のいずれか一項に記載のシステム。
(項目24)
前記医薬製剤が約550mg~約625mgのアミノグリコシドを含む、項目1~22のいずれか一項に記載のシステム。
(項目25)
前記医薬製剤が約550mg~約600mgのアミノグリコシドを含む、項目1~22のいずれか一項に記載のシステム。
(項目26)
前記医薬製剤が約560mgのアミノグリコシドを含む、項目1~22のいずれか一項に記載のシステム。
(項目27)
前記医薬製剤が約580mgのアミノグリコシドを含む、項目1~22のいずれか一項に記載のシステム。
(項目28)
前記医薬製剤が約590mgのアミノグリコシドを含む、項目1~22のいずれか一項に記載のシステム。
(項目29)
前記医薬製剤が約600mgのアミノグリコシドを含む、項目1~22のいずれか一項に記載のシステム。
(項目30)
患者における肺感染症を処置または予防するための方法であって、前記方法は:
リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む医薬製剤をエアロゾル化する工程であって、ここで、前記医薬製剤は水性分散物であり、毎分約0.53グラムを上回る速度でエアロゾル化される、工程;および
前記エアロゾル化された医薬製剤を前記患者の肺に投与する工程
を含み、
前記エアロゾル化された医薬製剤が、遊離アミノグリコシドとリポソーム複合体化アミノグリコシドとの混合物を含み、
前記リポソームの脂質成分が電気的に中性な脂質からなり、そして
前記エアロゾルのMMADが、ACIにより測定した場合、約4.2μm未満、またはNGIにより測定した場合、約4.9μm未満である、方法。
(項目31)
前記エアロゾルのMMADが、ACIにより測定した場合、約3.2μm~約4.2μm、またはNGIにより測定した場合、約4.4μm~約4.9μmである、項目30に記載の方法。
(項目32)
患者における肺感染症を処置または予防を提供するための方法であって、前記方法は:
リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む医薬製剤をエアロゾル化する工程であって、ここで、前記医薬製剤は水性分散物であり、毎分約0.53グラムを上回る速度でエアロゾル化される、工程;および
前記エアロゾル化された医薬製剤を前記患者の肺に投与する工程
を含み、
前記エアロゾル化された医薬製剤が遊離アミノグリコシドとリポソーム複合体化アミノグリコシドとの混合物を含み、
前記リポソームの脂質成分が電気的に中性な脂質からなり、そして
前記エアロゾルのFPFが、ACIにより測定した場合、約64%より高いかもしくは約64%に等しく、またはNGIにより測定した場合、約51%より高いかもしくは約51%に等しい、方法。
(項目33)
前記医薬製剤が毎分約0.55グラムを上回る速度でエアロゾル化される、項目30~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記医薬製剤が毎分約0.56グラムを上回る速度でエアロゾル化される、項目30~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記医薬製剤が毎分約0.58グラムを上回る速度でエアロゾル化される、項目30~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記医薬製剤が毎分約0.60~0.80グラムの速度でエアロゾル化される、項目30~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記医薬製剤が毎分約0.60~0.70グラムの速度でエアロゾル化される、項目30~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記医薬製剤が、約70~約75mg/mLのアミカシン、約32~約35mg/mLのDPPCおよび約16~約17mg/mLのコレステロールを含む、項目30~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記医薬製剤が約8mLの体積を有する、項目30~38のいずれか一項に記載の方法。(項目40)
前記アミノグリコシドが、AC4437、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ボホルマイシン、ブルラマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ダクチミシン、エチミシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、H107、ハイグロマイシン、ハイグロマイシンB、イノサマイシン、K-4619、イセパマイシン、KA-5685、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、プラゾミシン、リボスタマイシン、シソマイシン、ロドストレプトマイシン、ソルビスチン、スペクチノマイシン、スポラリシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダミシン、ベルチルマイシン、またはそれらの組み合わせから選択される、項目30~39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記エアロゾル化された医薬製剤が、1日1回、1回の投与セッションで投与される、項目30~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記アミノグリコシドがアミカシンである、項目30~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記アミノグリコシドが硫酸アミカシンである、項目30~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記遊離アミノグリコシドが、前記非結核性マイコバクテリア感染症に対する即時殺細菌活性または即時抗生物質活性を与えるのに有効な量であり、前記リポソーム複合体化アミノグリコシドが、前記非結核性マイコバクテリア感染症に対する持続的殺細菌活性または持続的抗生物質活性を与えるのに有効な量である、項目30~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記医薬製剤が約500mg~約650mgのアミノグリコシドを含む、項目30~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記医薬製剤が約550mg~約625mgのアミノグリコシドを含む、項目30~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記医薬製剤が約550mg~約600mgのアミノグリコシドを含む、項目30~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記医薬製剤が約560mgのアミノグリコシドを含む、項目30~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記医薬製剤が約580mgのアミノグリコシドを含む、項目30~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記医薬製剤が約590mgのアミノグリコシドを含む、項目30~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記医薬製剤が約600mgのアミノグリコシドを含む、項目30~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
約8~約9グラムのアミノグリコシドの水性リポソーム分散物を約16分未満で噴霧化して、リポソームアミノグリコシドエアロゾルを得る工程、および
前記リポソームアミノグリコシドエアロゾルを患者の肺に吸入により送達する工程
を含む、リポソームアミノグリコシドエアロゾルを送達する方法。
(項目53)
約8~約9グラムのアミノグリコシドの水性リポソーム分散物を約10~約15分で噴霧化して、リポソームアミノグリコシドエアロゾルを得る工程、および
前記リポソームアミノグリコシドエアロゾルを患者の肺に吸入により送達する工程
を含む、リポソームアミノグリコシドエアロゾルを送達する方法。
(項目54)
アミノグリコシドの水性リポソーム分散物が、約15分未満、約14分未満、約13分未満、約12分未満、または約11分未満で噴霧化される、項目52または53に記載の方法。
(項目55)
アミノグリコシドの水性リポソーム分散物が、約10分~約14分、約10分~約13分、約10分~約12分、約10分~約11分、約11分~約15分、約12分~約15分、約13分~約15分または約14分~約15分で噴霧化される、項目52または53に記載の方法。
(項目56)
前記リポソームアミノグリコシドエアロゾルが、アミノグリコシドと、DPPCおよびコレステロールから構成されるリポソームとを含み、約55%~約75%のアミノグリコシドがリポソーム複合体化されている、項目52~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記リポソームアミノグリコシドエアロゾルが、
ACIにより測定した場合、約3.2μm~約4.2μm、またはNGIにより測定した場合、約4.4μm~約4.9μmのMMAD;
約1.75~約1.80のGSD;
ACIにより測定した場合、約64%より高いかもしくは約64%に等しく、またはNGIにより測定した場合、約51%より高いかもしくは約51%に等しいFPF;または
約35~約41のFPD
を有する、項目52~56のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
約25%~約35%の前記リポソームアミノグリコシドエアロゾルが気管支および患者の肺の肺胞領域に沈着する、項目52~57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記アミノグリコシドの水性リポソーム分散物が、アミノグリコシドと、DPPCおよびコレステロールから構成されるリポソームとを含み、約95%を上回るアミノグリコシドが前記リポソームに被包されている、項目52~58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
アミノグリコシドの水性リポソーム分散物が、約70~約75mg/mLのアミノグリコシド、約32~約35mg/mLのDPPC、および約16mg/mL~約17mg/mLのコレステロールを含む、項目52~59のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記水性リポソーム分散物の体積が約8mLである、項目52~60のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記アミノグリコシドがアミカシンである、項目52~61のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記アミノグリコシドが硫酸アミカシンである、項目52~62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
約500mg~約650mgのアミノグリコシドが前記患者の肺に吸入により送達される、項目52~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
約550mg~約625mgのアミノグリコシドが前記患者の肺に吸入により送達される、項目52~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
約550mg~約600mgのアミノグリコシドが前記患者の肺に吸入により送達される、項目52~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
約560mgのアミノグリコシドが前記患者の肺に吸入により送達される、項目52~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
約580mgのアミノグリコシドが前記患者の肺に吸入により送達される、項目52~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
約590mgのアミノグリコシドが前記患者の肺に吸入により送達される、項目52~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
約600mgのアミノグリコシドが前記患者の肺に吸入により送達される、項目52~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
アミノグリコシドとDPPCおよびコレステロールを含むリポソームとを含むリポソームアミノグリコシドエアロゾルであって、約65%~約75%のアミノグリコシドがリポソーム複合体化されており、リポソームアミノグリコシドエアロゾルが毎分約0.53グラムを上回る速度で生成される、リポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目72)
毎分約0.54グラムより高いかまたは約0.54グラムに等しいか、毎分約0.55グラムより高いかまたは約0.55グラムに等しいか、または毎分約0.60グラムより高いかまたは約0.60グラムに等しい速度で生成される、項目71に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目73)
毎分約0.60~約0.70グラムの速度で生成される、項目71または72に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目74)
1回の投与セッションで約500mgまたは約560mgのアミカシンが提供される、項目71~73のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目75)
前記投与セッションが1日1回である、項目74に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目76)
前記エアロゾルのMMADが、ACIにより測定した場合、約4.2μm未満、またはNGIにより測定した場合、約4.9μm未満である、項目71~75のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目77)
前記エアロゾルのMMADが、ACIにより測定した場合、約1.0μm~約4.2μm、ACIにより測定した場合、約2.0μm~約4.2μm、ACIにより測定した場合、約3.2μm~約4.2μm、NGIにより測定した場合、約1.0μm~約4.9μm、NGIにより測定した場合、約2.0μm~約4.9μm、NGIにより測定した場合、約4.4μm~約4.9μmである、項目71~76のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目78)
前記エアロゾルの細粒分率(FPF)が、ACIにより測定した場合、約64%より高いかもしくは約64%に等しく、またはNGIにより測定した場合、約51%より高いかもしくは約51%に等しい、項目71~77のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目79)
前記エアロゾルが約50%より高いか、または約50%に等しいリポソーム複合体化アミカシンを含む、項目71~78のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目80)
前記エアロゾルが約60%より高いか、または約60%に等しいリポソーム複合体化アミカシンを含む、項目71~79のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目81)
前記エアロゾルが約55%~約85%のリポソーム複合体化アミカシンを含む、項目71~80のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目82)
前記エアロゾルが約55%~約75%のリポソーム複合体化アミカシンを含む、項目71~81のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目83)
前記リポソームが、ユニラメラベシクル、マルチラメラベシクル、またはそれらの混合物を含む、項目71~82のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目84)
前記アミノグリコシドが、AC4437、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ボホルマイシン、ブルラマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ダクチミシン、エチミシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、H107、ハイグロマイシン、ハイグロマイシンB、イノサマイシン、K-4619、イセパマイシン、KA-5685、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、プラゾミシン、リボスタマイシン、シソマイシン、ロドストレプトマイシン、ソルビスチン、スペクチノマイシン、スポラリシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダミシン、ベルチルマイシン、またはそれらの組み合わせから選択される、項目71~83のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目85)
アミノグリコシドとDPPCおよびコレステロールを含む複数のリポソームとを含むリポソームアミノグリコシドエアロゾルであって、約65%~約75%のアミノグリコシドがリポソーム複合体化されており、前記複数のリポソームが、光散乱により測定した場合、約245nm~約290nmの直径を有する、リポソームアミノグリコシドエアロゾル。(項目86)
毎分約0.53グラムを上回る速度で生成される、項目85に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目87)
1投与セッションで約560mgのアミカシンが提供される、項目85または86に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目88)
前記投与セッションが1日1回である、項目85~87のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目89)
前記エアロゾルのMMADが、ACIにより測定した場合、約1.0μm~約4.2μm、ACIにより測定した場合、約2.0μm~約4.2μm、ACIにより測定した場合、約3.2μm~約4.2μm、NGIにより測定した場合、約1.0μm~約4.9μm、NGIにより測定した場合、約2.0μm~約4.9μm、NGIにより測定した場合、約4.4μm~約4.9μmである、項目85~88のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目90)
前記エアロゾルのMMADが、ACIにより測定した場合、約3.2μm~約4.2μm、またはNGIにより測定した場合、約4.4μm~約4.9μmである、項目85~89のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目91)
前記エアロゾルのFPFが、ACIにより測定した場合、約64%より高いかもしくは約64%に等しく、またはNGIにより測定した場合、約51%より高いかもしくは約51%に等しい、項目85~90のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目92)
前記エアロゾルが、約55%を上回るリポソーム複合体化アミカシン、約60%を上回るリポソーム複合体化アミカシン、約65%を上回るリポソーム複合体化アミカシン、または約70%を上回るリポソーム複合体化アミカシンを含む、項目85~91のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目93)
前記エアロゾルが約55%~約75%のリポソーム複合体化アミカシンを含む、項目85~92のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目94)
前記リポソームが、ユニラメラベシクル、マルチラメラベシクル、またはそれらの混合物を含む、項目85~93のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目95)
前記アミノグリコシドが、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダミシン、またはそれらの組み合わせから選択される、項目85~94のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目96)
毎分約0.55~約0.70グラムの速度で、または毎分約0.60~約0.70グラムの速度で、または毎分約0.65~約0.70グラムの速度で生成される、項目71~95のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目97)
平均リポソームサイズが光散乱により測定した場合、約265nmである、項目85~96のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目98)
前記患者が嚢胞性線維症を有する、項目30~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目99)
前記肺感染症が非結核性マイコバクテリア感染症である、項目30~51および98のいずれか一項に記載の方法。
(項目100)
前記肺感染症がPseudomonas感染症である、項目30~51および98のいずれか一項に記載の方法。
(項目101)
前記肺感染症がBurkholderia感染症である、項目30~51および98のいずれか一項に記載の方法。
(項目102)
前記Pseudomonas感染症がPseudomonas aeruginosa感染症である、項目100に記載の方法。
(項目104)
前記Burkholderia感染症が、B.pseudomallei、B.cepacia、B.cepacia複合体、B.dolosa、B.fungorum、B.gladioli、B.multivorans、B.vietnamiensis、B.pseudomallei、B.ambifaria、B.andropogonis、B.anthina、B.brasilensis、B.caledonica、B.caribensisまたはB.caryophylliである、項目101に記載の方法。
(項目105)
前記非結核性マイコバクテリア感染症がM.aviumである、項目99に記載の方法。(項目106)
前記M.avium感染症がMycobacterium avium subsp.hominissuis感染症である、項目105に記載の方法。
(項目107)
前記非結核性マイコバクテリア感染症がMycobacterium abscessus感染症である、項目99に記載の方法。
(項目108)
前記非結核性マイコバクテリア感染症がMycobacterium avium複合体(M.aviumおよびM.intracellulare)である、項目99に記載の方法。
(項目109)
前記非結核性マイコバクテリア感染症が、M.avium、M.avium subsp.hominissuis(MAH)、M.abscessus、M.chelonae、M.bolletii、M.kansasii、M.ulcerans、M.avium、M.avium複合体(MAC)(M.aviumおよびM.intracellulare)、M.conspicuum、M.kansasii、M.peregrinum、M.immunogenum、M.xenopi、M.marinum、M.malmoense、M.marinum、M.mucogenicum、M.nonchromogenicum、M.scrofulaceum、M.simiae、M.smegmatis、M.szulgai、M.terrae、M.terrae複合体、M.haemophilum、M.genavense、M.asiaticum、M.shimoidei、M.gordonae、M.nonchromogenicum、M.triplex、M.lentiflavum、M.celatum、M.fortuitum、M.fortuitum複合体(M.fortuitumおよびM.chelonae)、またはそれらの組み合わせから選択される、項目99に記載の方法。
(項目110)
前記アミノグリコシドの濃度が約50mg/mL以上、または約60mg/mL以上、または約70mg/mL以上である、項目1~29のいずれか一項に記載のシステム。
(項目111)
前記アミノグリコシドの濃度が約70mg/mL、約71mg/mL、約72mg/mL、約73mg/mL、約74mg/mL、約75mg/mL、約76mg/mL、約77mg/mL、約78mg/mL、または約79mg/mLである、項目1~29のいずれか一項に記載のシステム。
(項目112)
前記アミノグリコシドの濃度が約60mg/mL~約80mg/mLである、項目1~29のいずれか一項に記載のシステム。
(項目113)
前記アミノグリコシドがアミカシンである、項目110~112のいずれか一項に記載のシステム。
(項目114)
前記アミノグリコシドが硫酸アミカシンである、項目113に記載のシステム。
(項目115)
前記アミノグリコシドの濃度が約50mg/mL以上、または約60mg/mL以上、または約70mg/mL以上である、項目30~70および98~109のいずれか一項に記載の方法。
(項目116)
前記アミノグリコシドの濃度が約70mg/mL、約71mg/mL、約72mg/mL、約73mg/mL、約74mg/mL、約75mg/mL、約76mg/mL、約77mg/mL、約78mg/mLまたは約79mg/mLである、項目30~70および98~109のいずれか一項に記載の方法。
(項目117)
前記アミノグリコシドの濃度が約60mg/mL~約80mg/mLである、項目30~70および98~109のいずれか一項に記載の方法。
(項目118)
前記アミノグリコシドの濃度が約70mg/mL~約80mg/mLである、項目30~70および98~109のいずれか一項に記載の方法。
(項目119)
前記アミノグリコシドがアミカシンである、項目116~118のいずれか一項に記載の方法。
(項目120)
前記アミノグリコシドが硫酸アミカシンである、項目119に記載の方法。
(項目121)
前記アミノグリコシドの濃度が約50mg/mL以上、または約60mg/mL以上、または約70mg/mL以上である、項目71~97のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目122)
前記アミノグリコシドの濃度が約70mg/mL、約71mg/mL、約72mg/mL、約73mg/mL、約74mg/mL、約75mg/mL、約76mg/mL、約77mg/mL、約78mg/mLまたは約79mg/mLである、項目71~97のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目123)
前記アミノグリコシドの濃度が約60mg/mL~約80mg/mLである、項目71~97のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目124)
前記アミノグリコシドの濃度が約70mg/mL~約80mg/mLである、項目71~97のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目125)
前記アミノグリコシドがアミカシンである、項目122~124のいずれか一項に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目126)
前記アミノグリコシドが硫酸アミカシンである、項目125に記載のリポソームアミノグリコシドエアロゾル。
(項目127)
前記肺感染症が非結核性マイコバクテリア肺感染症である、項目1~29のいずれか一項に記載のシステム。
(項目128)
前記肺感染症がPseudomonas肺感染症である、項目1~29のいずれか一項に記載のシステム。
(項目129)
前記肺感染症がBurkholderia肺感染症である、項目1~29のいずれか一項に記載のシステム。
(項目130)
前記Pseudomonas感染症がPseudomonas aeruginosa肺感染症である、項目128に記載のシステム。
(項目131)
前記Burkholderia肺感染症が、B.pseudomallei、B.cepacia、B.cepacia複合体、B.dolosa、B.fungorum、B.gladioli、B.multivorans、B.vietnamiensis、B.pseudomallei、B.ambifaria、B.andropogonis、B.anthina、B.brasilensis、B.caledonica、B.caribensisまたはB.caryophylli肺感染症である、項目129に記載のシステム。
(項目132)
前記非結核性マイコバクテリア肺感染症が、M.avium、M.abscessus、M.chelonae、M.bolletii、M.kansasii、M.ulcerans、M.avium、M.avium複合体(MAC)(M.aviumおよびM.intracellulare)、M.conspicuum、M.kansasii、M.peregrinum、M.immunogenum、M.xenopi、M.marinum、M.malmoense、M.marinum、M.mucogenicum、M.nonchromogenicum、M.scrofulaceum、M.simiae、M.smegmatis、M.szulgai、M.terrae、M.terrae複合体、M.haemophilum、M.genavense、M.asiaticum、M.shimoidei、M.gordonae、M.nonchromogenicum、M.triplex、M.lentiflavum、M.celatum、M.fortuitum、M.fortuitum複合体(M.fortuitumおよびM.chelonae)肺感染症、またはそれらの組み合わせである、項目127に記載のシステム。
(項目133)
前記非結核性マイコバクテリア肺感染症がM.abscessus肺感染症である、項目132に記載のシステム。
(項目134)
前記非結核性マイコバクテリア肺感染症がM.avium肺感染症である、項目132に記載のシステム。
(項目135)
前記非結核性マイコバクテリア肺感染症がM.avium subsp.hominissuis肺感染症である、項目134に記載のシステム。
(項目137)
前記アミノグリコシドが、AC4437、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ボホルマイシン、ブルラマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ダクチミシン、エチミシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、H107、ハイグロマイシン、ハイグロマイシンB、イノサマイシン、K-4619、イセパマイシン、KA-5685、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、プラゾミシン、リボスタマイシン、シソマイシン、ロドストレプトマイシン、ソルビスチン、スペクチノマイシン、スポラリシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダミシン、ベルチルマイシン、またはそれらの組み合わせから選択される、項目30~39、41および44~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目138)
前記アミノグリコシドが、AC4437、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ボホルマイシン、ブルラマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ダクチミシン、エチミシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、H107、ハイグロマイシン、ハイグロマイシンB、イノサマイシン、K-4619、イセパマイシン、KA-5685、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、プラゾミシン、リボスタマイシン、シソマイシン、ロドストレプトマイシン、ソルビスチン、スペクチノマイシン、スポラリシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダミシン、ベルチルマイシン、またはそれらの組み合わせから選択される、項目1~3、6~29および110~114のいずれか一項に記載のシステム。
(項目139)
前記水性分散物がリポソーム複合体化アミノグリコシドの水性懸濁物である、項目1~29、110~114および138のいずれか一項に記載のシステム。
(項目140)
前記水性分散物がリポソーム複合体化アミノグリコシドの水溶液である、項目1~29、110~114および138のいずれか一項に記載のシステム。
(項目141)
前記水性分散物がリポソーム複合体化アミノグリコシドの水性懸濁物である、項目30~70、115~120および137のいずれか一項に記載の方法。
(項目142)
前記水性分散物がリポソーム複合体化アミノグリコシドの水溶液である、項目30~70、115~120および137のいずれか一項に記載の方法。
(項目143)
前記肺感染症が気管支拡張症と関連する、項目30~51および98のいずれか一項に記載の方法。
(項目144)
前記水性分散物がリポソーム複合体化アミノグリコシドの水性懸濁物である、項目143に記載の方法。
(項目145)
前記水性分散物がリポソーム複合体化アミノグリコシドの水溶液である、項目143に記載の方法。
(項目146)
前記肺感染症が気管支拡張症と関連する、項目1~29のいずれか一項に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明を実現することができるネブライザ(エアロゾル生成器)の図である。
【0024】
図2図2は、図1に示すネブライザ図の拡大表示である。
【0025】
図3図3は、WO2001/032246に記載の一般に知られたエアロゾル生成器の断面図である。
【0026】
図4図4は、本明細書に記載するアミノグリコシド製剤と共に使用するために改変されたPARI eFlow(登録商標)ネブライザの画像、およびネブライザの膜の引き伸ばし図である。
【0027】
図5図5は、比較的長いノズル部分を有する膜を示すコンピュータ断層撮影(CT)断面像である。
【0028】
図6図6は、比較的短いノズル部分を有するステンレス鋼膜のコンピュータ断層撮影(CT)断面像である。
【0029】
図7図7は、例えば嚢胞性線維症を有する患者などに見られる喀痰/バイオフィルムの模式的断面図である。
【0030】
図8図8は、液溜め内の初期ガスクッション(V)の関数としての、液溜め内での液体の完全な放出時のエアロゾル生成の期間(噴霧化時間)のグラフである。
【0031】
図9図9は、液溜めからの医薬製剤の完全な放出までのエアロゾル生成の時間(噴霧化時間)の関数としてのネブライザにおける陰圧のグラフである。
【0032】
図10図10は、ネブライザにおける陰圧の関数としてのエアロゾル生成効率のグラフである。
【0033】
図11図11は、液溜めの増加時体積VRNと液溜め内の液体の初期体積(V)との間の比(VRN/V)の関数としての、液体の完全な放出時のエアロゾル生成のための期間(噴霧化時間)のグラフである。
【0034】
図12図12は、それぞれの製剤の噴霧化速度の関数として、エアロゾル化された製剤のMMADを示すグラフである。
【0035】
図13図13は、それぞれの製剤の噴霧化速度の関数として、エアロゾル化された製剤のFPFを示すグラフである。
【0036】
図14図14は、噴霧化後研究のためのエアロゾル回収に使用したシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本明細書に記載する発明は、一つには、例えば肺障害を処置するために、対象の肺にアミノグリコシド医薬製剤を投与するためのシステムに向けられる。
【0038】
用語「処置すること」は、(1)当該状況、障害または状態に苦しんでいるかまたはその素因は有しうるが、前記状況、障害または状態の臨床または準臨床症状をまだ経験または呈示していない対象において発生する前記状況、障害または状態の臨床症状の出現を防止するまたは遅延させること;(2)当該状況、障害または状態を阻害すること(すなわち、疾患の、または維持処置の場合であればその再燃の、その少なくとも一つの臨床または準臨床症状の発生を、抑止、低減または遅延させること);および/または(3)当該状態を軽減すること(すなわち、当該状況、障害もしくは状態、またはその臨床もしくは準臨床症状の少なくとも一つの後退を引き起こすこと)を包含する。処置される対象にとっての利益は、統計的に有意であるか、または少なくとも対象にとってもしくは医師にとって感知できるものである。
【0039】
一実施形態において、ここに提供されるシステムおよび製剤では、以下の細菌が引き起こす肺感染症を処置することができる:Pseudomonas(例えばP.aeruginosa(緑膿菌)、P.paucimobilis、P.putida、P.fluorescens、およびP.acidovorans)、Burkholderia(例えばB.pseudomallei、B.cepacia、B.cepacia複合体、B.dolosa、B.fungorum、B.gladioli、B.multivorans、B.vietnamiensis、B.pseudomallei、B.ambifaria、B.andropogonis、B.anthina、B.brasilensis、B.caledonica、B.caribensis、B.caryophylli)、Staphylococcus(例えばS.aureus(黄色ブドウ球菌)、S.auricularis、S.carnosus、S.epidermidis、S.lugdunensis)、メチシリン耐性Staphylococcus
aureus(黄色ブドウ球菌)(MRSA)、Streptococcus(例えばStreptococcus pneumoniae(肺炎レンサ球菌))、Escherichia coli(大腸菌)、Klebsiella、Enterobacter、Serratia、Haemophilus、Yersinia pestis、Mycobacterium(例えば非結核性マイコバクテリウム)。
【0040】
一実施形態では、患者が、ここに提供されるシステムの1つによる非結核性マイコバクテリア肺感染症の処置を受ける。さらなる一実施形態では、非結核性マイコバクテリア肺感染症が、不応性非結核性マイコバクテリア肺感染症である。
【0041】
一実施形態では、ここに提供されるシステムが、Pseudomonasによって引き起こされる肺感染症を有する患者の処置に使用される。さらなる一実施形態では、肺感染症が、下記の表Bに提示する種から選択されるPseudomonas属の種によって引き起こされる。
【表B-1】
【表B-2】
【0042】
非結核性マイコバクテリア肺感染症は、一実施形態では、M.avium、M.avium subsp.hominissuis(MAH)、M.abscessus、M.chelonae、M.bolletii、M.kansasii、M.ulcerans、M.avium、M.avium複合体(MAC)(M.aviumおよびM.intracellulare)、M.conspicuum、M.kansasii、M.peregrinum、M.immunogenum、M.xenopi、M.marinum、M.malmoense、M.marinum、M.mucogenicum、M.nonchromogenicum、M.scrofulaceum、M.simiae、M.smegmatis、M.szulgai、M.terrae、M.terrae複合体、M.haemophilum、M.genavense、M.asiaticum、M.shimoidei、M.gordonae、M.nonchromogenicum、M.triplex、M.lentiflavum、M.celatum、M.fortuitum、M.fortuitum複合体(M.fortuitumおよびM.chelonae)またはそれらの組み合わせから選択される。さらなる一実施形態では、非結核性マイコバクテリア肺感染症がM.abscessusまたはM.aviumである。さらなる一実施形態では、M.avium感染症がM.avium subsp.hominissuisである。一実施形態では、非結核性マイコバクテリア肺感染症が不応性非結核性マイコバクテリア肺感染症である。
【0043】
もう一つの実施形態では、嚢胞性線維症患者が、ここに提供されるシステムの1つによる細菌感染症の処置を受ける。さらなる一実施形態では、細菌感染症が、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)による肺感染症である。さらにもう一つの実施形態では、患者が、ここに提供されるシステムの1つによる、気管支拡張症に関連する肺感染症の処置を受ける。
【0044】
本明細書で使用する場合、「予防」は、感染症または疾患の完全な防止、またはその感染症もしくは疾患の症状の発生の防止;感染症もしくは疾患またはその症状の開始の遅延;または後に発生する感染症もしくは疾患またはその症状の重症度の低下を意味することができる。
【0045】
用語「抗細菌性」は当技術分野において認識されており、細菌の微生物成長を防止し、阻害しまたは破壊する本発明の化合物の能力を指す。細菌の例は上に提示されている。
【0046】
用語「抗微生物」は当技術分野において認識されており、細菌、真菌、原生動物およびウイルスなどの微生物成長を防止し、阻害し、遅延させ、または破壊する本発明のアミノグリコシド化合物の能力を指す。
【0047】
「有効量」とは、所望の治療応答をもたらすのに十分な、本発明において使用されるアミノグリコシド(例えばアミカシン)の量を意味する。ここに提供される有効量の製剤は、遊離アミノグリコシドとリポソーム複合体化アミノグリコシドを、どちらも含む。例えばリポソーム複合体化アミノグリコシドは、一実施形態では、リポソームに被包されたアミノグリコシド、もしくはリポソームと複合体化されたアミノグリコシド、またはそれらの組み合わせを含む。
【0048】
一実施形態では、アミノグリコシドが、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンまたはベルダミシンから選択される。もう一つの実施形態では、アミノグリコシドが、下記の表Cに記載するアミノグリコシドから選択される。
【表C】
【0049】
一実施形態では、アミノグリコシドが、アミノグリコシド遊離塩基、またはその塩、溶媒和物、または他の非共有結合誘導体である。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。本発明の薬物製剤において使用される適切なアミノグリコシドとして、薬物の医薬上許容され得る付加塩および複合体が包含される。化合物が1つ以上のキラル中心を有しうる場合、別段の指定がある場合を除き、本発明は、ユニークなラセミ化合物のそれぞれ、ならびにユニークな非ラセミ化合物のそれぞれを含む。活性剤が不飽和炭素-炭素二重結合を有する場合は、シス(Z)異性体とトランス(E)異性体の両方が、本発明の範囲に含まれる。活性剤がケト-エノール互変異性体などの互変異性体型で存在する場合、各互変異性体型は本発明に包含されると考えられる。アミカシンは、一実施形態では、アミカシン塩基、またはアミカシン塩、例えば硫酸アミカシン、すなわちアミカシン二硫酸塩として、医薬製剤中に存在する。一実施形態では、上記アミノグリコシドの1つ以上の組み合わせを、本明細書に記載する製剤、システムおよび方法に使用する。さらなる一実施形態では、前記組み合わせがアミカシンを含む。
【0050】
治療応答は、ユーザー(例えば臨床家)が治療に対する有効な応答と認識することになる任意の応答であることができる。治療応答は、一般的には、上述の1つ以上の細菌の成長または増殖の低減、阻害、遅延もしくは防止、または上述の1つ以上の細菌の殺滅であるだろう。治療応答は、肺機能、例えば1秒間努力呼気量(FEV)などの改善にも反映されうる。さらに、治療応答の評価に基づいて、適当な処置継続時間、適当な用量、および任意の潜在的併用処置を決定することは、当業者の技能の範囲内にある。
【0051】
「リポソーム分散物」とは、複数のリポソームを含む溶液または懸濁物を指す。
【0052】
本明細書で使用する場合、「エアロゾル」は、液体粒子の気相懸濁物である。ここに提供されるエアロゾルは、リポソーム分散物の粒子を含む。
【0053】
「ネブライザ」または「エアロゾル生成器」は、液体を、気道に吸入されうるサイズのエアロゾルに転化する装置である。ニューマティック(pneumotic)ネブライザ、超音波ネブライザ、電子ネブライザ、例えば受動的電子メッシュネブライザ、能動的電子メッシュネブライザおよび震動メッシュネブライザなどは、その特定ネブライザが、要求される性質のエアロゾルを、要求される吐出速度で放出するのであれば、本発明と共に使用するのに適している。
【0054】
空気でバルク液体を小さな液滴に転化するプロセスは霧化と呼ばれる。ニューマティックネブライザの作動には、液体霧化のための駆動力として、加圧ガス供給が必要である。超音波ネブライザは、液溜め中の圧電素子によって導入される電気を使って、液体を呼吸可能な液滴に転化する。さまざまなタイプのネブライザがRespiratory Care,Vol.45,No.6,pp.609-622(2000)に記載されており、その開示は、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。用語「ネブライザ」および「エアロゾル生成器」は、本明細書の全体を通して、互換的に使用される。文献では「吸入装置」、「吸入システム」および「アトマイザ」も、用語「ネブライザ」および「エアロゾル生成器」と互換的に使用されている。
【0055】
本明細書で使用する場合、「細粒分率(Fine particle fraction)」または「FPF」は、カスケードインパクションによって測定した場合に直径5μm未満の粒径を有するエアロゾルの分率を指す。FPFは、通常、パーセンテージとして表現される。
【0056】
「質量中央径」または「MMD」は、レーザー回折またはインパクタ測定によって決定され、質量基準の平均粒子径である。
【0057】
「空気力学的質量中央径」または「MMAD」は、水性エアロゾル液滴の空気力学的分離に関して標準化されており、インパクタ測定、例えばアンダーセンカスケードインパクタ(ACI)または次世代インパクタ(NGI)によって決定される。ガス流速は、一実施形態において、アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)では毎分28リットル、次世代インパクタ(NGI)では毎分15リットルである。「幾何標準偏差」または「GSD」は、空気力学的粒径分布の広がりの尺度である。
【0058】
一実施形態において、本発明は、肺感染症を処置するかまたは肺感染症を予防するためのシステムを提供する。処置は、噴霧化を介した吸入によるアミノグリコシド製剤の送達を介して達成される。一実施形態では、医薬製剤がアミノグリコシド剤、例えばアミノグリコシドを含む。
【0059】
ここに提供される医薬製剤はリポソーム分散物である。具体的に述べると、医薬製剤は、「リポソーム複合体化アミノグリコシド」または「リポソームに被包されたアミノグリコシド」を含む分散物である。「リポソーム複合体化アミノグリコシド」は、アミノグリコシド(またはアミノグリコシドの組み合わせ)がリポソームに被包されている実施形態を包含し、少なくとも約1重量%のアミノグリコシドが、リポソームとの複合体の一部として、またはアミノグリコシドが水相または疎水性二重層相中にあるか、リポソーム二重層の界面ヘッドグループ領域に存在しうるリポソームとして、リポソームと会合している、任意の形態のアミノグリコシド組成物を包含する。
【0060】
一実施形態では、リポソームの脂質成分が電気的に中性な脂質、正荷電脂質、負荷電脂質、またはそれらの組み合わせを含む。もう一つの実施形態では、脂質成分が電気的に中性な脂質を含む。さらなる一実施形態では、脂質成分が電気的に中性な脂質から本質的になる。さらにもう一つの実施形態では、脂質成分が電気的に中性な脂質、例えばステロールおよびリン脂質からなる。
【0061】
上に提示したとおり、リポソーム複合体化アミノグリコシド実施形態は、アミノグリコシドがリポソームに被包された実施形態を包含する。加えて、リポソーム複合体化アミノグリコシドは、少なくとも約1重量%のアミノグリコシドが、リポソームとの複合体の一部として、またはアミノグリコシドが水相または疎水性二重層相中にあるか、リポソーム二重層の界面ヘッドグループ領域に存在しうるリポソームとして、脂質と会合している、任意の組成物、溶液または懸濁物を示す。一実施形態では、噴霧化前に、製剤中のアミノグリコシドのうち、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%または少なくとも約95%が、そのように会合している。会合は、一実施形態では、脂質と脂質会合薬物とが保持され(すなわち保持液中に保持され)、遊離の薬物が濾液に入るような、フィルタによる分離によって測定される。
【0062】
ここに提供される製剤、システムおよび方法は、脂質被包アミノグリコシド剤または脂質会合アミノグリコシド剤を含む。本発明の医薬製剤において使用される脂質は、リン脂質、トコフェロール、ステロール、脂肪酸、負荷電脂質およびカチオン性脂質を含む、合成、半合成または天然脂質であることができる。
【0063】
一実施形態では、少なくとも1つのリン脂質が医薬製剤中に存在する。一実施形態では、リン脂質が、ホスファチジルコリン(EPC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびホスファチジン酸(PA);大豆対応物、大豆ホスファチジルコリン(SPC);SPG、SPS、SPI、SPE、およびSPA;水素化卵および大豆対応物(例えばHEPC、HSPC)、12~26炭素原子の鎖を含有する、グリセロールの2位および3位にある脂肪酸のエステル結合と、コリン、グリセロール、イノシトール、セリン、エタノールアミンを含む、グリセロールの1位にあるさまざまなヘッドグループとで構成されるリン脂質、ならびに対応するホスファチジン酸から選択される。これらの脂肪酸の炭素鎖は飽和または不飽和であることができ、リン脂質は、鎖長が異なり不飽和度が異なる脂肪酸で構成されうる。
【0064】
一実施形態では、医薬製剤が、天然肺サーファクタントの主要構成要素であるジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を含む。一実施形態では、医薬製剤の脂質成分はDPPCとコレステロールとを含むか、DPPCとコレステロールとから本質的になるか、またはDPPCとコレステロールとからなる。さらなる一実施形態では、DPPCとコレステロールが、約19:1~約1:1、または約9:1~約1:1、または約4:1~約1:1、または約2:1~約1:1、または約1.86:1~約1:1の範囲のモル比を有する。さらにもう一つの実施形態では、DPPCとコレステロールが、約2:1または約1:1のモル比を有する。一実施形態では、DPPCとコレステロールが、アミノグリコシド製剤、例えばアミノグリコシド製剤に入れて提供される。
【0065】
本発明と共に使用される脂質の他の例には、ジミリストイルホスファチジルコリン(dimyristoylphosphatidychloline)(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoylphosphatidcholine)(DPPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)、混合リン脂質、例えばパルミトイルステアロイルホスファチジル-コリン(PSPC)、および一アシル化リン脂質、例えばモノオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)があるが、これらに限るわけではない。
【0066】
一実施形態では、前記少なくとも1つの脂質成分がステロールを含む。さらなる一実施形態では、前記少なくとも1つの脂質成分がステロールとリン脂質とを含むか、またはステロールとリン脂質とから本質的になるか、またはステロールとリン脂質とからなる。本発明と共に使用されるステロールには、コレステロール、コレステロールのエステル、例えばコレステロールヘミスクシナート、コレステロールの塩、例えばコレステロール水素スルファートおよびコレステロールスルファート、エルゴステロール、エルゴステロールのエステル、例えばエルゴステロールヘミスクシナート、エルゴステロールの塩、例えばエルゴステロール水素スルファートおよびエルゴステロールスルファート、ラノステロール、ラノステロールのエステル、例えばラノステロールヘミスクシナート、ラノステロールの塩、例えばラノステロール水素スルファート、ラノステロールスルファート、およびトコフェロールなどがあるがこれらに限るわけではない。トコフェロールには、トコフェロール、トコフェロールのエステル、例えばトコフェロールヘミスクシナート、トコフェロールの塩、例えばトコフェロール水素スルファートおよびトコフェロールスルファートを含めることができる。用語「ステロール化合物」は、ステロール、トコフェロールなどを包含する。
【0067】
一実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質(正荷電脂質)が、本明細書に記載のシステムに入れて提供される。使用されるカチオン性脂質には、脂肪酸のアンモニウム塩、リン脂質(phospholids)およびグリセリドを含めることができる。脂肪酸は、飽和または不飽和である炭素鎖長が12~26炭素原子の脂肪酸を包含する。具体例をいくつか挙げる:ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミンおよびステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)およびジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロパ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、および1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)。
【0068】
一実施形態では、少なくとも1つのアニオン性脂質(負荷電脂質)が、本明細書に記載のシステムに入れて提供される。使用することができる負荷電脂質には、ホスファチジル-グリセロール(PG)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびホスファチジルセリン(PS)などがある。例としてDMPG、DPPG、DSPG、DMPA、DPPA、DSPA、DMPI、DPPI、DSPI、DMPS、DPPSおよびDSPSが挙げられる。
【0069】
理論に束縛されることは望まないが、DPPCなどのホスファチジルコリンは、肺内の細胞(例えば肺胞マクロファージ)によるアミノグリコシド剤の取り込みを助け、肺においてアミノグリコシド剤を維持するのに役立つ。PG、PA、PSおよびPIなどの負荷電脂質は、粒子凝集の低減に加えて、吸入製剤の持続的活性特徴、ならびに全身性取り込みのための肺を横切る製剤の輸送(トランスサイトーシス)に役割を果たすと考えられる。理論に束縛されることは望まないが、ステロール化合物は、製剤の放出特徴に影響を及ぼすと考えられる。
【0070】
リポソームは、ある量の封入された水を含有する完全に閉じた脂質二重層膜である。リポソームはユニラメラベシクル(単一の膜二重層を有する)もしくはマルチラメラベシクル(それぞれが次の膜二重層とは水層によって分離された多数の膜二重層を特徴とするタマネギ様の構造)またはそれらの組み合わせでありうる。二重層は、疎水性「テール」領域と親水性「ヘッド」領域とを有する2つの脂質単層で構成される。膜二重層の構造は、脂質単層の疎水性(無極性)「テール」が二重層の中心に向かって配向し、一方、親水性「ヘッド」は水相に向かって配向するようになっている。
【0071】
リポソームはさまざまな方法によって作製することができる(例えばCullis et al.(1987)参照)。一実施形態では、米国特許出願公開第2008/0089927号に記載されている方法のうちの1つ以上を、ここでは、アミノグリコシド被包脂質製剤(リポソーム分散物)を作製するために使用する。米国特許出願公開第2008/0089927号の開示は、すべての目的上、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。例えば一実施形態では、少なくとも1つの脂質およびアミノグリコシドを、コアセルベート(すなわち別個の液相)と混合して、リポソーム製剤を形成させる。コアセルベートは、脂質との混合に先立って形成させるか、脂質との混合中に形成させるか、または脂質との混合後に形成させることができる。また、コアセルベートは、活性剤のコアセルベートであることができる。
【0072】
一実施形態では、1つ以上の脂質を有機溶媒に溶解して脂質溶液を形成させることによってリポソーム分散物を形成させ、アミノグリコシドの水溶液を脂質溶液と混合することでアミノグリコシドコアセルベートが形成される。さらなる一実施形態では、有機溶媒がエタノールである。さらにもう一つの実施形態では、前記1つ以上の脂質がリン脂質およびステロールを含む。
【0073】
一実施形態では、リポソームが、超音波処理、押出、ホモジナイゼーション、膨潤、エレクトロフォーメーション、逆エマルジョン(inverted emulsion)または逆相蒸散法によって作製される。Bangham法(J.Mol.Biol.(1965))では通常のマルチラメラベシクル(MLV)が作製される。Lenkら(米国特許第4,522,803号、同第5,030,453号および同第5,169,637号)、Fountainら(米国特許第4,588,578号)およびCullisら(米国特許第4,975,282号)は、水性コンパートメントのそれぞれにおける層間溶質分布が実質的に等しいマルチラメラリポソームを作製するための方法を開示している。Paphadjopoulosらの米国特許第4,235,871号には、逆相蒸発によるオリゴラメラリポソームの調製が開示されている。これらの方法はそれぞれ本発明と共に使用するのに適している。
【0074】
ユニラメラベシクルは、いくつかの技法で、例えば米国特許第5,008,050号および米国特許第5,059,421号の押出技法によって、MLVから作製することができる。超音波処理およびホモジナイゼーションも、大きなリポソームから小さなユニラメラリポソームを作製するために使用することができる(例えばPaphadjopoulosら(1968);DeamerおよびUster(1983);ならびにChapmanら(1968)参照)。
【0075】
Banghamら(J.Mol.Biol.13,1965,pp.238-252)のリポソーム調製では、リン脂質が有機溶媒に懸濁され、次にそれを蒸発乾固すると、反応槽上にリン脂質フィルムが残る。次に適当な量の水相を加え、その60混合物を「膨潤」させ、その結果生じたマルチラメラベシクル(MLV)からなるリポソームを機械的手段によって分散させる。この調製は、Papahadjopoulosら(Biochim.Biophys.Acta.135,1967,pp.624-638)によって記載された小型超音波処理ユニラメラベシクル、および大型ユニラメラベシクルの開発の基礎になる。
【0076】
大型ユニラメラベシクル(LUV)を作製するための技法、例えば逆相蒸発、インフュージョン法、および洗浄剤希釈を使って、ここに提供される医薬製剤に使用するためのリポソームを作製することができる。リポソームを作製するためのこれらの方法および他の方法の概説は、参照により本明細書に組み込まれる成書「Liposome」Marc Ostro編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1983の第1章に見出すことができる。同様に、すべての目的上、参照により本明細書に組み込まれるSzoka,Jr.ら(Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9,1980,p.467)も参照されたい。
【0077】
リポソームを作るための他の技法には、逆相蒸発ベシクル(REV)を形成させるもの、米国特許第4,235,871号がある。使用することができるもう一種類のリポソームは、実質的に等しいラメラ溶質分布を有することを特徴とする。この種類のリポソームは、米国特許第4,522,803号における定義では安定プルリラメラベシクル(SPLV)と呼ばれ、米国特許第4,588,578号に記載の単相ベシクル、および上記の凍結融解マルチラメラベシクル(FATMLV)を包含する。
【0078】
さまざまなステロールおよびそれらの水溶性誘導体、例えばコレステロールヘミスクシナートを使って、リポソームが形成されている。例えば米国特許第4,721,612号を参照されたい。MayhewらのPCT公開番号WO85/00968には、α-トコフェロールおよびその一定の誘導体を含むリポソームで薬物を被包することによって、薬物の毒性を低減する方法が記述されている。また、さまざまなトコフェロールおよびその水溶性誘導体を使ってリポソームが形成されている。PCT公開第87/02219号を参照されたい。
【0079】
医薬製剤は、一実施形態では、噴霧化前に、光散乱法によって測定される平均直径がおよそ0.01ミクロン~およそ3.0ミクロン、例えば約0.2~約1.0ミクロンの範囲にあるリポソームを含む。一実施形態では、製剤中のリポソームの平均直径が約200nm~約300nm、約210nm~約290nm、約220nm~約280nm、約230nm~約280nm、約240nm~約280nm、約250nm~約280nmまたは約260nm~約280nmである。リポソーム製品の持続的活性プロファイルは、脂質膜の性質によって、また組成物中に他の賦形剤を含めることによって、制御することができる。
【0080】
投与体積を最小限に抑え、患者投与時間を低減するために、一実施形態では、アミノグリコシド(例えばアミノグリコシドであるアミカシン)のリポソーム封入が著しく効率的であること、およびL/D比が可能な限りかつ/または実用上取りうる限り低い値をとり、同時に、患者の粘液およびバイオフィルム、例えばPseudomonasバイオフィルムに浸透するのに十分なほど小さくリポソームを保つことが重要である。一実施形態では、ここに提供されるリポソームにおけるL/D比は0.7または約0.7(w/w)である。さらなる一実施形態では、ここに提供されるリポソームが、細菌性バイオフィルム(例えばPseudomonasバイオフィルム)に効果的に浸透するのに十分なほど小さい。さらにもう一つの実施形態では、リポソームの平均直径が、光散乱により測定した場合、約260~約280nmである。
【0081】
ここに提供される医薬製剤における脂質対薬物比は、一実施形態では、3対1以下、2.5対1以下、2対1以下、1.5対1以下、または1対1以下である。ここに提供される医薬製剤における脂質対薬物比は、もう一つの実施形態では、3対1未満、2.5対1未満、2対1未満、1.5対1未満、または1対1未満である。さらなる一実施形態では、脂質対薬物比が約0.7対1以下または約0.7対1である。一実施形態では、下記の表1にある脂質または脂質の組み合わせのうちの1つが、本発明の医薬製剤に使用される。
【表1】
【0082】
一実施形態では、ここに提供されるシステムが、アミノグリコシド製剤、例えばアミカシン製剤、例えばアミカシン塩基製剤を含む。一実施形態では、システムに入れて提供されるアミノグリコシドの量が、約450mg、約500mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、約600mgまたは約610mgである。もう一つの実施形態では、システムに入れて提供されるアミノグリコシドの量が、約500mg~約600mg、または約500mg~約650mg、または約525mg~約625mg、または約550mg~約600mgである。一実施形態では、対象に投与されるアミノグリコシドの量が約560mgであり、8mLの製剤に入れて提供される。一実施形態では、対象に投与されるアミノグリコシドの量が約590mgであり、8mLの製剤に入れて提供される。一実施形態では、対象に投与されるアミノグリコシドの量が約600mgであり、8mLの製剤に入れて提供される。一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンであり、システムに入れて提供されるアミカシンの量が約450mg、約500mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、約600mgまたは約610mgである。もう一つの実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンであり、システムに入れて提供されるアミカシンの量が約500mg~約650mg、または約525mg~約625mg、または約550mg~約600mgである。一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンであり、対象に投与されるアミカシンの量が約560mgであって、8mLの製剤に入れて提供される。一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンであり、対象に投与されるアミカシンの量が約590mgであって、8mLの製剤に入れて提供される。一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンであり、対象に投与されるアミノグリコシドの量が約600mgであって、8mLの製剤に入れて提供される。
【0083】
一実施形態では、ここに提供されるシステムが、アミノグリコシド製剤、例えばアミカシン(塩基製剤)を含む。一実施形態では、ここに提供されるアミノグリコシド製剤が、約60mg/mLのアミノグリコシド、約65mg/mLのアミノグリコシド、約70mg/mLのアミノグリコシド、約75mg/mLのアミノグリコシド、約80mg/mLのアミノグリコシド、約85mg/mLのアミノグリコシド、または約90mg/mLのアミノグリコシドを含む。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。
【0084】
一実施形態では、ここに提供されるシステムが、約8mLのリポソームアミカシン製剤を含む。一実施形態では、リポソームアミカシン製剤の密度が約1.05グラム/mLであり、一実施形態では、1回量あたりおよそ8.4グラムのリポソームアミカシン製剤が、本発明のシステム中に存在する。さらなる一実施形態では、製剤の全体積が、それを必要とする対象に投与される。
【0085】
一実施形態では、ここに提供される医薬製剤が、少なくとも1つのアミノグリコシド、少なくとも1つのリン脂質およびステロールを含む。さらなる一実施形態では、医薬製剤が、アミノグリコシド、DPPCおよびコレステロールを含む。一実施形態では、医薬製剤が下記の表2に提示する製剤である。
【表2】
【0086】
アミノグリコシド濃度だけを増加させても、投与時間の低減につながらないであろうことに、留意すべきである。例えば一実施形態では、脂質対薬物比が固定され、アミカシン濃度を増加させる(そしてそれゆえに、両者の比が例えば約0.7:1に固定されているので、脂質濃度も増加させる)につれて、溶液の粘度も増加し、それが噴霧化時間を遅くする。
【0087】
一実施形態では、アミノグリコシド製剤の噴霧化前に、製剤中に存在するアミノグリコシドのうちの約70%~約100%がリポソーム複合体化されている。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドが、1つのアミノグリコシドである。さらにもう一つの実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。もう一つの実施形態では、噴霧化前に、製剤中に存在するアミノグリコシドのうちの約80%~約99%、または約85%~約99%、または約90%~約99%、または約95%~約99%、または約96%~約99%が、リポソーム複合体化されている。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンまたはトブラマイシンである。さらにもう一つの実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。もう一つの実施形態では、噴霧化前に、製剤中に存在するアミノグリコシドのうちの約98%がリポソーム複合体化されている。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンまたはトブラマイシンである。さらにもう一つの実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。
【0088】
一実施形態では、噴霧化時に、約20%~約50%のリポソーム複合体化アミノグリコシド剤が、リポソームに対する剪断応力ゆえに放出される。さらなる一実施形態では、アミノグリコシド剤がアミカシンである。もう一つの実施形態では、噴霧化時に、約25%~約45%、または約30%~約40%のリポソーム複合体化アミノグリコシド剤が、リポソームに対する剪断応力ゆえに放出される。さらなる一実施形態では、アミノグリコシド剤がアミカシンである。
【0089】
本明細書に提示するとおり、本発明は、噴霧化を介したリポソームアミノグリコシド製剤の吸入によって肺感染症を処置するための方法およびシステムを提供する。一実施形態では、対象の肺に送達するための製剤のエアロゾルミストを提供するネブライザを介して、製剤が投与される。
【0090】
一実施形態では、本明細書に記載のネブライザが、毎分約0.53gを上回る、毎分約0.54gを上回る、毎分約0.55gを上回る、毎分約0.58gを上回る、毎分約0.60gを上回る、毎分約0.65gを上回る、または毎分約0.70gを上回る速度で、アミノグリコシド医薬製剤のエアロゾルを生成する(すなわち、総吐出速度を達成する)。もう一つの実施形態では、本明細書に記載のネブライザが、毎分約0.53g~毎分約0.80g、毎分約0.53g~毎分約0.70g、毎分約0.55g~毎分約0.70g、毎分約0.53g~毎分約0.65g、または毎分約0.60g~毎分約0.70gの速度で、アミノグリコシド医薬製剤のエアロゾルを生成する(すなわち、総吐出速度を達成する)。さらにもう一つの実施形態では、本明細書に記載のネブライザが、毎分約0.53g~毎分約0.75g、毎分約0.55g~毎分約0.75g、毎分約0.53g~毎分約0.65g、または毎分約0.60g~毎分約0.75gの速度で、アミノグリコシド医薬製剤のエアロゾルを生成する(すなわち、総吐出速度を達成する)。
【0091】
噴霧化時に、医薬製剤中のリポソームは薬物を漏出させる。一実施形態では、噴霧化後のリポソーム複合体化アミノグリコシドの量は、約45%~約85%、または約50%~約80%または約51%~約77%である。これらのパーセンテージを、本明細書では、「噴霧化後の会合アミノグリコシド百分率」ともいう。本明細書に提示するとおり、一実施形態では、リポソームが、アミノグリコシド、例えばアミカシンを含む。一実施形態では、噴霧化後の会合アミノグリコシド百分率が、約60%~約70%である。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。もう一つの実施形態では、噴霧化後の会合アミノグリコシド百分率が約67%、または約65%~約70%である。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。
【0092】
一実施形態において、噴霧化後の会合アミノグリコシド百分率は、冷トラップでの凝縮によってエアロゾルを空気から再生することによって測定され、次にその液体が、遊離アミノグリコシドと被包化アミノグリコシド(会合アミノグリコシド)についてアッセイされる。
【0093】
一実施形態では、医薬製剤のエアロゾルのMMADが、約28L/分のガス流速においてACIにより測定した場合、または約15L/分のガス流速において次世代インパクタNGIで、4.9μm未満、4.5μm未満、4.3μm未満、4.2μm未満、4.1μm未満、4.0μm未満または3.5μm未満である。
【0094】
一実施形態では、医薬製剤のエアロゾルのMMADが、ACIにより測定した場合、約1.0μm~約4.2μm、約3.2μm~約4.2μm、約3.4μm~約4.0μm、約3.5μm~約4.0μm、または約3.5μm~約4.2μmである。一実施形態では、医薬製剤のエアロゾルのMMADが、NGIにより測定した場合、約2.0μm~約4.9μm、約4.4μm~約4.9μm、約4.5μm~約4.9μm、または約4.6μm~約4.9μmである。
【0095】
もう一つの実施形態では、本明細書に記載のネブライザが、毎分約0.53gを上回る速度、毎分約0.55gを上回る速度、または毎分約0.60gを上回る速度、または毎分約0.60g~毎分約0.70gの速度で、アミノグリコシド医薬製剤のエアロゾルを生成する。さらなる一実施形態では、エアロゾルのFPFが、ACIにより測定した場合、約64%より高いかもしくは約64%に等しく、ACIにより測定した場合、約70%より高いかもしくは約70%に等しく、NGIにより測定した場合、約51%より高いかもしくは約51%に等しく、またはNGIにより測定した場合、約60%より高いかもしくは約60%に等しい。
【0096】
一実施形態では、ここに提供されるシステムが、電子メッシュネブライザ、ニューマティック(pneumonic)(ジェット)ネブライザ、超音波ネブライザ、呼吸強化型(breath-enhanced)ネブライザおよび呼吸作動式(breath-actuated)ネブライザから選択されるネブライザを含む。一実施形態では、ネブライザがポータブルである。
【0097】
ニューマティック(pneumonic)ネブライザの作動原理は当業者には広く知られており、例えばRespiratory Care,Vol.45,No.6,pp.609-622(2000)に記載されている。簡単に述べると、ニューマティックネブライザでは液体霧化の駆動力として、加圧ガス供給を使用する。圧縮ガスが送出され、それが陰圧の領域を生じさせる。次に、エアロゾル化しようとする溶液がガス流れ中に送出され、液膜へと剪断される。この膜は不安定であり、表面張力により、液滴に砕ける。次に、エアロゾル流れ中にバッフルを置くことにより、より小さい粒子、すなわち上述のMMADおよびFPF性質を有する粒子を形成させることができる。ニューマティック(pneumonic)ネブライザの一実施形態では、出口ポート(ノズル)を離れてバッフルと相互作用する前に、ガスと溶液とが混合される。もう一つの実施形態では、液体とガスとが出口ポート(ノズル)を離れるまでは、混合が行われない。一実施形態では、ガスが空気、Oおよび/またはCOである。
【0098】
一実施形態では、ニューマティック(pneumonic)ネブライザ内で液滴径および吐出速度が調整される。ただし、噴霧化される製剤と、製剤の性質(例えば会合アミノグリコシド%)がネブライザの調節によって変化するかどうかとを、考慮すべきである。例えば一実施形態では、本発明の吐出速度および液滴径を達成するために、ガス速力および/または医薬製剤速力が調節される。これに加えて、またはこれに代えて、本発明の液滴径および吐出速度を達成するために、ガスおよび/または溶液の流速を調整することができる。例えば、ガス速力の増加が、一実施形態では、液滴径を減少させた。一実施形態では、本発明の液滴径および吐出速度を達成するために、医薬製剤流量対ガス流量の比が調整される。一実施形態では、液体流量対ガス流量の比の増加が粒径を増加させる。
【0099】
一実施形態では、液溜め中の充填体積を増加させることによって、ニューマティック(pneumonic)ネブライザの吐出速度を増加させる。理論に束縛されることは望まないが、吐出速度の増加は、ネブライザにおけるデッドボリュームの低減によるのであろう。一実施形態では、ネブライザを駆動する流量を増加させることによって、噴霧化時間を低減させる。例えばClayら(1983)Lancet 2,pp.592-594およびHessら(1996)Chest 110,pp.498-505を参照されたい。
【0100】
一実施形態では、リザーババッグを使って噴霧化プロセス中にエアロゾルを捕捉し、次に、そのエアロゾルが吸入により対象に提供される。もう一つの実施形態では、ここに提供されるネブライザが、バルブ付きオープンベント設計を含む。この実施形態では、患者がネブライザを介して吸入すると、ネブライザの吐出量が増加する。呼気相では、一方向バルブが、ネブライザチャンバから離れる向きに患者フローを方向転換する。
【0101】
一実施形態では、ここに提供されるネブライザが連続ネブライザである。言い換えると、1回量の投与中に医薬製剤をネブライザに再充填する必要がない。逆に、ネブライザは、少なくとも8mLの容量または少なくとも10mLの容量を有する。
【0102】
一実施形態では、震動メッシュネブライザを使って、本発明のアミノグリコシド製剤が、それを必要とする患者に送達される。一実施形態では、ネブライザ膜が、約100kHz~約250kHz、約110kHz~約200kHz、約110kHz~約200kHz、約110kHz~約150kHzの超音波周波数で震動する。一実施形態では、電流の適用時に、ネブライザ膜が約117kHzの周波数で震動する。
【0103】
一実施形態では、ここに提供されるネブライザが空気圧縮機を使用せず、それゆえに気流を生成しない。一実施形態では、エアロゾルが、装置の混合チャンバに進入するエアロゾルヘッドによって生み出される。患者が吸入すると、混合チャンバの背面にある一方向吸入バルブを通って空気が混合チャンバに進入し、マウスピース越しにエアロゾルを患者に運ぶ。呼息時には、患者の息が装置のマウスピース上の一方向呼息バルブを通って流れる。一実施形態では、ネブライザが、混合チャンバ中にエアロゾルを生成し続け、次いでそれが次の呼吸時に患者によって吸い込まれる。このサイクルが、ネブライザの投薬リザーバが空になるまで続く。
【0104】
本発明は、一態様では、図1、2、3および4に図示するエアロゾル生成器(ネブライザ)の1つを使って行われるが、それらに限定されるわけではない。また、本発明のシステムは、一実施形態では、欧州特許出願第11169080.6号および/または同第10192385.2号に記載のネブライザを含む。これらの出願は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0105】
図1は、噴霧化チャンバ2、マウスピース3、および振動膜5を伴う膜エアロゾル生成器4を有する治療用エアロゾル装置1を示す。振動膜は、例えば環状圧電素子(図示していない)によって震動させることができ、その例は、WO1997/29851に記載されている。
【0106】
使用時は、医薬製剤が、振動膜5の一面に置かれ(図1、2および4参照)、次に、この液体が、振動膜5中の開口部を通して輸送され、振動膜5の他方の面(図1図2の下部参照)で、噴霧化チャンバ2中にエアロゾルとして放出される。患者は、噴霧化チャンバ2中に存在するエアロゾルをマウスピース3から吸うことができる。
【0107】
振動膜5は複数の貫通孔を含む。アミノグリコシド医薬製剤が膜を通過する時にアミノグリコシド製剤の液滴が生成する。一実施形態では、膜が震動可能な、いわゆる能動的電子メッシュネブライザ、例えばPARI PharmaのeFlow(登録商標)ネブライザ、Health and LifeのHL100ネブライザ、またはAerogen(Novartis)のAeroneb Go(登録商標)である。さらなる一実施形態では、膜が、約100kHz~約150kHz、約110kHz~約140kHz、または約110kHz~約120kHzの超音波周波数で震動する。さらなる一実施形態では、電流の適用時に膜が約117kHzの周波数で震動する。さらなる一実施形態では、膜が固定されており、流体リザーバまたは流体供給部の別の部分が震動可能な、いわゆる受動的電子メッシュネブライザ、例えばオムロンMicroAir電子ネブライザU22型またはPhilips RespironicsのI-Neb I-neb AAD吸入システムである。
【0108】
一実施形態では、膜(例えば震動可能膜)に形成された貫通孔のノズル部分の長さが、エアロゾル生成器の総吐出速度(TOR)に影響する。特に、ノズル部分の長さは総吐出速度に正比例し、ノズル部分が短いほどTORは高く、逆もまた同様であることが見出されている。
【0109】
一実施形態では、ノズル部分が、貫通孔の上流部分と比較して十分に短く、直径が小さい。さらなる一実施形態では、貫通孔内でノズル部分の上流にある部分の長さが、TORに有意な影響を有さない。
【0110】
一実施形態では、ノズル部分の長さが、アミノグリコシド医薬製剤の液滴径分布の幾何標準偏差(GSD)に影響を及ぼす。低いGSDは、狭い液滴径分布(均一なサイズを持つ液滴)を特徴づけるものであり、これは、呼吸器系へのエアロゾルのターゲティングにとって、例えば嚢胞性線維症患者における細菌感染症(例えばPseudomonasまたはMycobacteria)の処置、または患者における非結核性マイコバクテリア、気管支拡張症(例えば嚢胞性線維症または非嚢胞性線維症患者の処置)、PseudomonasまたはMycobacteriaの処置にとって、有利である。すなわちノズル部分が長いほどGSDは低くなる。一実施形態では、平均液滴径が5μm未満であり、1.0~2.2、または約1.0~約2.2、または1.5~2.2、または約1.5~約2.2の範囲のGSDを有する。
【0111】
一実施形態では、上に提示したとおり、ここに提供されるシステムが、アミノグリコシド医薬製剤のエアロゾルを毎分約0.53gを上回る速度、または毎分約0.55gを上回る速度で生成するネブライザを含む。さらなる一実施形態では、ネブライザが、流体と接触する第1面と液滴が出現する反対側の第2面とを有する震動可能膜を含む。
【0112】
膜、例えばステンレス鋼膜は、圧電アクチュエータまたは他の任意の適切な手段を使って震動させることができる。膜は、第1面から第2面に向かう延長方向に膜を貫く複数の貫通孔を有する。貫通孔は、レーザー光源、エレクトロフォーミングまたは他の任意の適切なプロセスによって、既述のように形成させることができる。膜が震動している時に、アミノグリコシド医薬製剤が第1面から第2面へと貫通孔を通過することで、第2面にエアロゾルが生成する。一実施形態では、貫通孔のそれぞれが、入口開口部と出口開口部とを含む。さらなる一実施形態では、貫通孔のそれぞれが、出口開口部から貫通孔の一部を通って入口開口部に向かって延びるノズル部分を含む。ノズル部分は、貫通孔の最小直径を含み、貫通孔のより大きな直径を境界とする、延長方向の貫通孔の連続部分によって画定される。一実施形態では、貫通孔のより大きな直径が、最小直径の3倍、約3倍、2倍、約2倍、1.5倍、または約1.5倍に最も近い直径と定義される。
【0113】
一実施形態では、貫通孔の最小直径が出口開口部の直径である。もう一つの実施形態では、貫通孔の最小直径が、出口開口部の直径の約0.5×、約0.6×、約0.7×、約0.8×または約0.9×の直径である。
【0114】
一実施形態では、ここに提供されるネブライザが、貫通孔の各ノズル部分の延長方向の長さに対する、少なくとも1つの貫通孔の延長方向の全長の比が、少なくとも4、または少なくとも約4、または少なくとも4.5、または少なくとも約4.5、または少なくとも5、または少なくとも約5であるか、または約5を上回る、貫通孔を含む。もう一つの実施形態では、ここに提供されるネブライザが、貫通孔の各ノズル部分の延長方向の長さに対する、大部分の貫通孔の延長方向の全長の比が、少なくとも4、または少なくとも約4、または少なくとも4.5、または少なくとも約4.5、または少なくとも5、または少なくとも約5であるか、約5を上回る、貫通孔を含む。
【0115】
上に記載した延長比は、一実施形態では、既知のネブライザと比較して、増加した総吐出速度を与え、十分なGSDも与える。これらの比構成により、一実施形態では、適用期間が短くなり、それが患者の快適さとアミノグリコシド化合物の有効性の増大につながる。これは、製剤中のアミノグリコシド化合物が、その性質ゆえに、低濃度で調製され、それゆえに、許容され得る時間、例えば1回の投与セッション(dosing session)内に、より大きな体積のアミノグリコシド医薬製剤を投与しなければならない場合には、特に有利である。
【0116】
一実施形態によれば、ノズル部分が、第2面と同一平面で終わる。それゆえに、ノズル部分の長さは、一実施形態では、第1面に向かって第2面から始まり、最小直径の約3倍、約2倍、約2.5×、または約1.5×に最も近い直径に至って、そこを境界とする部分と定義される。この実施形態における最小直径は出口開口部の直径である。
【0117】
一実施形態では、最小直径(すなわちノズル部分の一方の境界)が、第2面に隣接して延長方向にノズル部分の端部に位置する。一実施形態では、ノズル部分の他方の境界に位置する貫通孔のより大きな直径が、作動中に流体が複数の貫通孔を通過する方向において、最小直径の上流に位置する。
【0118】
一実施形態によれば、最小直径は約4.5μmより小さいか、約4.0μmより小さいか、約3.5μmより小さいか、または約3.0μmより小さい。
【0119】
一実施形態では、少なくとも1つの貫通孔の延長方向の全長が、少なくとも約50μm、少なくとも約60μm、少なくとも約70μm、または少なくとも約80μmである。さらなる一実施形態では、複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの全長が、少なくとも約90μmである。一実施形態では、複数の貫通孔の大部分の延長方向の全長が、少なくとも約50μm、少なくとも約60μm、少なくとも約70μm、または少なくとも約80μmである。さらなる一実施形態では、複数の貫通孔の大部分の全長が、少なくとも約90μmである。
【0120】
ノズル部分の長さは、一実施形態では、約25μm未満、約20μm未満または約15μm未満である。
【0121】
一実施形態によれば、貫通孔は、ノズル部分を形成させる1段階と貫通孔の残りの部分を形成させる残りの段階との少なくとも2段階で形成された、レーザードリルによる貫通孔である。
【0122】
もう一つの実施形態では、使用される製造方法が、許容差が最小直径の+100%未満、最小直径の+75%未満、最小直径の+50%未満、最小直径の+30%未満、最小直径の+25%未満、または最小直径の+15%未満である実質的に円柱形または円錐形のノズル部分をもたらす。
【0123】
これに代えて、またはこれに加えて、貫通孔は、エレクトロフォーミングプロセスで形成される。一実施形態では、貫通孔が、第1面に第1漏斗状部分を、また第2面に第2漏斗状部分を有し、ノズル部分は、それら第1漏斗状部分と第2漏斗状部分の間にあって、出口開口部とより大きな直径との間に画定される。この場合は、貫通孔の全長も同様に、第1面から出口開口部(最小直径)までの距離だけによって定義されうる。
【0124】
加えて、総吐出速度(TOR)は、膜に設けられた貫通孔の数を増加させることによって、さらに増加させることができる。一実施形態では、膜の活性穿孔表面を増加させ、貫通孔の互いの距離を同じレベルに保つことによって、貫通孔の数の増加が達成される。もう一つの実施形態では、貫通孔の互いの距離を低減し、膜の活性面積を維持することによって、貫通孔の数を増加させる。加えて、上記の戦略の組み合わせも使用しうる。
【0125】
一実施形態では、膜における貫通孔の密度を増加させることによって、本明細書に記載のネブライザの総吐出速度を増加させる。一実施形態では、貫通孔間の平均距離が、約70μm、または約60μm、または約50μmである。
【0126】
一実施形態では、膜が、約200~約8,000個の貫通孔、約1,000~約6,000個の貫通孔、約2,000~約5,000個の貫通孔、または約2,000~約4,000個の貫通孔を含む。一実施形態では、上述した貫通孔の数がTORを増加させ、TORは、ノズルパラメータが上述のとおりに実現されるかどうかとは無関係に増加する。一実施形態では、ここに提供されるネブライザが、約3,000個の貫通孔を含む。さらなる一実施形態では、貫通孔が、六角形配列で、例えば膜(例えばステンレス鋼膜)のほぼ中心に置かれる。さらなる一実施形態では、貫通孔間の平均距離が約70μmである。
【0127】
図3は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2001/032246に開示されているエアロゾル生成器(ネブライザ)を示している。このエアロゾル生成器は、混合チャンバ3中にエアロゾルの形態で放出され、かつ開口部41を介してマウスピース4を使って吸入される医薬製剤を含有するための流体リザーバ21を含む。
【0128】
このエアロゾル生成器は、圧電アクチュエータ23を使って震動させられる震動可能膜22を含む。震動可能膜22は、流体容器21に対面する第1面24と、混合チャンバ3に対面する第2の反対面25とを有する。使用時は、震動可能膜22の第1面24が、流体容器21に含まれる流体と接触する。第1面24から第2面25へと膜を貫く複数の貫通孔26が膜22に設けられている。使用時は、流体が流体容器21から貫通孔26を通って第1面24から第2面25へと通過し、この時、第2面25でエアロゾルを生成させて、それを混合チャンバ3中に放出させるために、膜22を震動させる。このエアロゾルは、次に、混合チャンバ3からマウスピース4およびその吸入開口部41を介して、患者の吸入によって吸い込まれうる。
【0129】
図5に、そのような震動可能膜22の3つの貫通孔26を示すコンピュータ断層撮影断面スキャンを示す。この特定実施形態の貫通孔26は、3段階の、それぞれに異なるプロセスパラメータを使ったレーザードリルによって、形成される。第1段階では、部分30が形成される。第2段階では、部分31が形成され、第3段階ではノズル部分32が形成される。この特定実施形態では、ノズル部分32の長さが約26μmであり、一方、部分31は約51μmの長さを有する。第1部分30は約24.5μmの長さを有する。結果として、各貫通孔の全長は、部分30、部分31およびノズル部分32の長さの和になり、それはこの特定実施形態では、約101.5μmである。したがって、ノズル部分32の各々の延長方向Eの長さに対する各貫通孔26の延長方向Eの全長の比は、およそ3.9である。
【0130】
図6の実施形態では、第1部分30が約27μmの長さを、部分31が約55μmの長さを、そしてノズル部分が約19μmの長さを有する。結果として、貫通孔26の全長は約101μmになる。したがって、この実施形態では、対応するノズル部分32の長さに対する貫通孔26の全長の比は、およそ5.3である。
【0131】
図5および図6の震動可能膜はどちらも、6,000個の貫通孔26を持つように製造された。下記の表(表3)に、膜の第2面で放出される粒子の、レーザー回折によって決定された質量中央径(MMD)、一定量の液体を完全に放出するのに要する時間(噴霧化時間)、ならびにTORを示す。試験はアミカシンのリポソーム製剤を使って行なった。
【表3】
【0132】
表3は、短いノズル部分を有する膜2が、増加したTORと、膜1と比較しておよそ36%少ない、5.3分短縮された噴霧化時間とを与えることを示している。表3は、MMDが試験した膜ごとに有意に変動しなかったことも示している。これは膜ごとに観察されるTORの相違とは対照的である。このように、一実施形態において、本明細書に記載のネブライザでは、噴霧化時間が、MMDによって測定される液滴径には影響を及ぼさずに、従来技術のネブライザと比較して有意に短縮される。
【0133】
図5および図6に示す膜に加えて、さらに縮小されたノズル部分と3000個の貫通孔26とを有する膜も製造した(表3の膜3および膜4)。具体的には、膜3ではノズル部分が短くなるようにレーザードリルし、膜4は膜3よりノズル部分を短くなるように製造した。表3は、3000個の孔(膜3および膜4)でも、ノズル部分の長さを低減することによって、6,000個の孔を持つ膜1と比較して、TORが増加することを示している。膜3および膜4を膜2と比較すると、孔数の多さ(3,000個と比較して6,000個)およびノズル部分の長さの低減によってネブライザのTORは増加することが、さらに示される。
【0134】
一実施形態では、貫通孔の製造に、エレクトロフォーミングよりレーザードリルプロセスを使用することが有利である。レーザードリルによって製造された図5および図6に示す貫通孔は、例えばWO01/18280に開示されているようなエレクトロフォーミングによる貫通孔の漏斗状の入口および出口と比較して、実質的に円柱形または円錐形である。エレクトロフォーミングによる貫通孔の漏斗状の入口および出口と比較して、貫通孔が実質的に円柱形または円錐形である場合は、膜の震動、すなわちその震動速力が、摩擦を利用することで、より広い面積にわたって医薬製剤に伝達されうる。次に、医薬製剤は、自らの慣性ゆえに貫通孔の出口開口部から射出されて、崩壊してエアロゾルを形成する液体ジェットをもたらす。理論に束縛されることは望まないが、エレクトロフォーミングによる膜は著しく屈曲した貫通孔表面を含むので、膜から液体へとエネルギーを伝達するための表面または面積が低減していると考えられる。
【0135】
しかし本発明は、エレクトロフォーミングによる膜でも実現することができ、その場合、ノズル部分は、延長方向に、貫通孔の最小直径から始まり、第1面に向かって、それが孔の最小直径の2×または3×の直径に達するまで続く、貫通孔の連続部分によって画定される。一実施形態では、貫通孔の全長が最小直径から第1面まで測定される。
【0136】
再び図1を参照して説明すると、患者がエアロゾルの吸入後に治療装置を取り除く必要もその口から下ろす必要もないように、マウスピース3は、弾性バルブ要素7(呼息バルブ)によって封止された開口部6を有する。患者がマウスピース3中に、そしてそれゆえに噴霧化チャンバ2中に吐き出すと、呼気が治療用エアロゾルの内部から逃れることができるように、弾性バルブ要素7が開く。吸入時は、周囲の空気が噴霧化チャンバ2を通って流れる。噴霧化チャンバ2は、さらなる弾性バルブ要素(吸入バルブ)によって封止された開口部(図示していない)を有する。患者がマウスピース3を介して吸入し、噴霧化チャンバ2から吸い込むと、周囲空気が噴霧化チャンバの中に進入してエアロゾルと混合され、吸入されるべく噴霧化チャンバ2の内部に残るように、弾性バルブ要素が開く。このプロセスのさらなる説明は、すべての目的上、参照により本明細書にそのまま組み込まれる米国特許第6,962,151号に提示されている。
【0137】
図2に示すネブライザは、膜5に投入される液体を供給するための円柱形貯蔵槽10を含む。図2に示すとおり、振動膜5は、エアロゾル生成器を図1に示す位置に保持した時に液溜めに注がれた液体が膜5と直接接触することを保証するために、円柱形液溜め10の末端壁12に配置することができる。しかし、液溜めに陰圧を生じさせるための本発明の装置の設計に何ら変更を加える必要なく、振動膜に液体を投入するために他の方法も使用することができる。
【0138】
末端壁12に対面する面では、円柱形液体容器10が開いている。開口部は液溜め10に液体を注ぎこむために使用される。周壁14の外表面13上の開口部の少し下には突起15があり、これは、筐体35の適当に実現された開口部に液体容器を挿入した時に、支持体として役立つ。
【0139】
液体容器10の開放端は柔軟な封止要素16によって閉じられる。封止要素16は液体容器10の周壁14の端部にあって、液体容器10の内部に壺状に延びることにより、円錐状に延びる壁区画17が封止要素16に形成され、封止要素16の平坦壁区画18によって閉じられる。以下にさらに論じるように、力は、封止要素16上のこの平坦壁区画18を介して作用するので、一実施形態では、平坦壁区画18が、封止要素16の他の区画より厚い。平坦壁区画18の外周部には、平坦壁区画18が図2における表示と比較して上向きに動いた時に円錐壁区画17が折りたたまれうるように、円錐壁区画17までの距離がある。
【0140】
液体容器の内部とは反対側にある平坦壁区画18の面には、円錐台区画19と円柱形区画20とを含む突起がある。封止要素16の柔軟な素材が円錐台区画19の変形を許すので、このデザインにより、突起は、円柱形区画が合致するように適合させた開口部に導入されて、ラッチ止めされることが可能になる。
【0141】
一実施形態では、エアロゾル生成器4が、このタイプの開口部を備えた摺動可能スリーブ21を含み、これは実質的に一面が開いた中空の円柱である。封止要素16を取り付けるための開口部は、摺動可能スリーブ21の末端壁に実現される。円錐台19が所定の位置にラッチ止めされた状態では、開口部を含む摺動可能スリーブ21の末端壁が、平坦な封止要素壁区画18上にある。摺動可能スリーブへの円錐台19のラッチ止めにより、封止区画18が液体容器10の中心長手軸方向の摺動可能スリーブ21の運動に追随するように、摺動可能スリーブ21から封止要素16の平坦壁区画18へと力を伝達することが可能になる。
【0142】
一般化された形態では、摺動可能スリーブ21を、例えばドリル孔に嵌め込むまたは挿入することができる摺動可能な棒として実現することもできる摺動可能要素と見ることができる。摺動可能要素21の特徴は、封止要素16の平坦壁要素18上に実質上直線方向の力を適用するために、それを使用することができるという事実である。全体として、本発明のエアロゾル生成器の作動様式にとって決定的因子は、液溜め10内で体積の増加が起こるように、摺動可能要素が封止要素に直線的運動を伝達するという事実である。液溜め10は他の点では気密なので、これが液溜め10における陰圧の生成を引き起こす。
【0143】
封止要素16および摺動可能要素21は、一体にして、すなわち一工程で、ただし異なる素材から、作製することができる。このための作製技術は、ネブライザの一体コンポーネントが例えば全自動作製ステップで作り出されるように、利用することができる。
【0144】
一実施形態では、摺動可能スリーブ21が円錐台用のドリル孔に対面する端部で開いているが、少なくとも2つの直径方向に対向した突片22および23が、摺動可能スリーブ21の内部に放射状に突き出している。摺動可能スリーブを取り囲む鍔24は外向きに放射状に延びる。鍔24は、図5に示す位置において摺動可能スリーブ21のための支持体として使用されるが、摺動可能スリーブ21の内部に付きだした突起22および23は、摺動可能スリーブ21に作用する特に中心長手軸に平行な力を吸収するために使用される。一実施形態では、これらの力を、回転スリーブ26の周壁の外側にある2つのらせん状溝25を使って生じさせる。
【0145】
一実施形態では、突起22または23の一方および1つの溝25を使って、ネブライザを実現することができる。さらなる一実施形態では、均等に分布するように配置された2つ以上の突起と、対応する数の溝とが設けられる。
【0146】
一実施形態では、回転スリーブ26も、一面が開いた円柱であり、開放端が摺動可能スリーブ21内に配置されることで、円錐台19に対面しており、円錐台19が回転スリーブ26に入り込むことを可能にしている。加えて、回転スリーブ26は、突起22および23がらせん状溝25内にあるような形で、摺動可能スリーブ21内に配置されている。らせん状溝25の傾きは、回転スリーブ26を摺動可能スリーブ21に対して回転させた時に、突起22および23がらせん状溝25に沿って摺動して、中心長手軸に平行な方向の力が、摺動する突起22および23に、したがって摺動可能スリーブ21に発揮されることになるように設計される。この力は、摺動可能スリーブ21を中心長手軸の方向に変位させるので、円錐台を使って摺動可能スリーブのドリル孔中にラッチ止めされている封止要素16も、中心長手軸に対して平行な向きに、実質的に変位する。
【0147】
液体容器10の中心長手軸方向への封止要素16の変位は、なかんずく摺動可能スリーブ21が中心長手軸の方向に変位した距離によって決まる陰圧を、液体容器10に生じさせる。この変位は、気密液体容器10の初期体積VRIを体積VRNへと増加させることによって、陰圧を生じさせる。そしてまた、この変位は、回転スリーブ26中のらせん状溝25の設計によって規定される。こうして、本発明のエアロゾル生成器は、単純な構造的手段を使って液溜め10における陰圧を関連領域に生じさせうることを保証する。
【0148】
装置を取り扱う際に陰圧を生じさせるために適用される力が低く保たれることを保証するために、回転スリーブ26は、ユーザーがハンドル27を、したがって回転スリーブ26を、苦もなく手で回転させることができるように選択されたサイズを有するハンドル27と一体にして実現される。ハンドル27は、実質的に、ハンドル27を回すためにユーザーの手が触れる辺縁把持領域28がハンドル27の外縁に形成されるように、一面が開いた平坦な円柱または円錐台の形状を有する。
【0149】
らせん状溝25の設計と、十分な陰圧を生じさせるために摺動可能スリーブ21が長手方向に移動すべき距離が全体として比較的短いことにより、一実施形態では、ハンドル27を、したがって回転スリーブ26を、比較的小さな回転角だけ回せば十分である。一実施形態では、回転角が45度~360度の範囲にある。この実施形態は、本発明の装置およびそれを装備した治療用エアロゾル生成器の容易な取り扱いを可能にする。
【0150】
摺動可能スリーブ21と、ハンドル27を含む回転スリーブ26とから、簡単かつ均一に作動させることができるユニットを作り出すために、一実施形態では、本明細書に記載のエアロゾル生成器が、摺動可能スリーブ21を受けるための軸受スリーブ29を有し、これは実質的に、一面が開いた平坦な円柱を含む。軸受スリーブ29の周壁30の直径はハンドル27の内径より小さく、記載した実施形態の例では、ハンドル27の把持領域28と同心円状に設けられているが、回転スリーブ26も配置されているハンドル27の面上で、より小さい直径を有している円柱形ラッチ止めリング31の内径に合わせられる。回転スリーブに対面する円柱形ラッチ止めリング31の面上には、軸受スリーブ29の周壁30上に間をあけて置かれたラッチ止め突片33と係合させることができる辺縁ラッチ止め端縁32が実現される。これによってハンドル27を軸受スリーブ29上に置くことが可能になり、それにより、図5に示すように、ハンドル27が軸受スリーブ29の開放端の上に置かれ、ラッチ止め端縁32がラッチ止め突片33とインターラッチされる。
【0151】
摺動可能スリーブ21を保持するために、図2で確認することができるように、軸受スリーブ29の封止端の中心に開口部が設けられ、その中に摺動可能スリーブ21が配置される。摺動可能スリーブ21の鍔24は、ハンドルに対面する軸受スリーブ29の末端壁の表面上、図2に示す位置にある。軸受開口部中に伸びているのは、2つの直径方向に対向した突起51および52であり、これは、摺動可能スリーブ21の辺縁表面上の2つの縦溝53および54中に突き出している。縦溝53および54は、摺動可能スリーブ21の長手軸に対して平行に走っている。ガイド突起51および52ならびに縦溝53および54は、摺動可能スリーブ21にとって回転防止ロッキングとなるので、回転スリーブ26の回転運動は、摺動可能スリーブ21の回転をもたらすのではなくて、直線的変位をもたらす。図2から明らかなように、これにより、摺動可能スリーブ21が、軸方向には変位可能であるが、回転に対してはロックされて、ハンドル27と軸受スリーブ29との組み合わせ中に保持されることが保証される。ハンドル27を軸受スリーブ29に対して回転させると、回転スリーブ26も摺動可能スリーブ21に対して回転し、それによって、摺動突起22および23がらせん状溝25に沿って動く。これが、摺動可能スリーブ21を、軸受スリーブ29の開口部において、軸方向に変位させることになる。
【0152】
軸受開口部におけるガイド突起51および52ならびに摺動可能スリーブ21における縦溝53および54なしで済ませることも可能である。一実施形態では、ガイド突起51および52ならびに縦溝53および54がエアロゾル生成器には存在せず、円錐台19、封止要素16の円柱区画20、および平坦な封止要素区画18上の円錐台を保持する摺動可能スリーブ21用の大面積支持体が、摩擦を使って、摺動可能スリーブ21の回転防止ロッキングを達成する。さらなる一実施形態では、封止要素16が、軸受スリーブ29に対して回転することができないように固定される。
【0153】
一実施形態では、軸受スリーブ19の封止端の、ハンドルとは反対側の表面に、摺動可能スリーブを保持する開口部と同心の環状第1封止リップ34が設けられる。第1封止リップ34の直径は、液体容器10の周壁14の直径と一致する。図2に提示するとおり、これにより、液溜め10が封止されるような形で、第1封止リップ34が封止要素16を液溜め10に周壁の端部で押し付けることが保証される。加えて、第1封止リップ34は、封止要素16を、液溜め10および軸受スリーブ29に対して回転することができないように固定することもできる。一実施形態では、装置の前述のコンポーネントが互いに回転することができないことを保証するために極端な力を適用する必要がない。
【0154】
一実施形態では、必要な力を、少なくともある程度は、ハンドル27と筐体35との間の相互作用を使って生じさせ、筐体には、医薬製剤リザーバが一体的に実現されるか、または医薬製剤(液体)リザーバ10が図2に示すように挿入される。この場合、辺縁突起15を使ってケーシングに挿入された医薬製剤リザーバ10は、筐体35の内部に放射状に延びる筐体35中の支持体36上に、間隔をあけて置かれる。これにより、液溜め10を洗浄のために筐体35から容易に取り出すことが可能になる。図2に示す実施形態では、支持体が飛び飛びにしか設けられないので、以下に詳述するように、患者が吸入する時の周囲空気のための開口部が設けられる。
【0155】
図2では、一方ではハンドル27を使って、また他方では筐体35を使って実現される、回転ロックを確認することができる。筐体35上のロッキング突起62および63が示されている。ただし、本発明の装置が液溜め10における陰圧の生成に関係する限りにおいて、回転ロックの設計に関して特別な要件はない。
【0156】
一実施形態では、例えばエアロゾルの形で放出させようとする8mL量の液体(例えばアミノグリコシド医薬製剤)が液溜め10に含まれ(充填または注入され)る場合に、8mLまたは約8mLの空気クッションが得られるように、液溜め10は、少なくとも16mL、少なくとも約16mL、少なくとも18mL、少なくとも約18mL、少なくとも20mLまたは少なくとも約20mLの体積VRNを有するように構成される。すなわち、液溜め10内の液体の初期体積Vに対する体積VRNの比は少なくとも2.0であり、ガスの体積Vと液体の体積Vの間の比は少なくとも1.0である。約15.5mL、約19.5mLおよび約22.5mLの体積VRNを有する液溜めは効率がよいこと、および効率はVRNの増加とともに増加することが示されている。
【0157】
一実施形態では、VRNとVの間の比が少なくとも2.0、少なくとも約2.0、少なくとも2.4、少なくとも約2.4、少なくとも2.8または少なくとも約2.8である。一実施形態では、VとVの間の比が、少なくとも1.0、少なくとも1.2、少なくとも1.4、少なくとも1.6または少なくとも1.8である。もう一つの実施形態では、VとVの間の比が、少なくとも約1.0、少なくとも約1.2、少なくとも約1.4、少なくとも約1.6または少なくとも約1.8である。
【0158】
空気クッションの体積は、一実施形態では、少なくとも2mL、少なくとも約2mL、少なくとも4mL、少なくとも約4mL、少なくとも6mL、少なくとも約6mL、少なくとも8mL、少なくとも約8mL、少なくとも10mL、少なくとも約10mL、少なくとも11mL、少なくとも約11mL、少なくとも12mL、少なくとも約12mL、少なくとも13mL、少なくとも約13mL、少なくとも14mLまたは少なくとも約14mLである。一実施形態では、空気クッションの体積が少なくとも約11mLまたは少なくとも約14mLである。一実施形態では、空気クッションの体積が約6mL~約15mLであり、VRNとVの間の比が少なくとも約2.0~少なくとも約3.0である。さらなる一実施形態では、VRNとVの間の比が、少なくとも約2.0~少なくとも約2.8である。
【0159】
空気クッションの体積は、一実施形態では、約2mL、約4mL、約6mL、約8mL、約10mL、約11mL、約12mL、約13mL、または約14mLである。
【0160】
一実施形態では、液体の初期体積Vに対する体積VRNの比が、少なくとも2.0である。理論的に、液溜め10の増加時体積VRNの無限の拡大は、ほぼ安定した陰圧範囲をもたらすであろう。一実施形態では、液体の初期体積Vに対する体積VRNの比が2.0~4.0の範囲にあり、さらなる一実施形態では、2.4~3.2である。4mL~8mLの異なる初期液体体積Vについて、比範囲(VRN/V)の2つの例を、下記の表4に提示する。
【表4】
【0161】
ここに提供されるシステムは、肺感染症の処置を必要とする対象におけるさまざまな肺感染症の処置に使用することができる。本発明の方法で処置することができる肺感染症(例えば嚢胞性線維症患者におけるもの)には、グラム陰性感染症が含まれる。一実施形態では、以下の細菌によって引き起こされる感染症が、ここに提供されるシステムおよび製剤で処置可能である:Pseudomonas(例えばP.aeruginosa(緑膿菌)、P.paucimobilis、P.putida、P.fluorescens、およびP.acidovorans)、Burkholderia(例えばB.pseudomallei、B.cepacia、B.cepacia複合体、B.dolosa、B.fungorum、B.gladioli、B.multivorans、B.vietnamiensis、B.pseudomallei、B.ambifaria、B.andropogonis、B.anthina、B.brasilensis、B.caledonica、B.caribensis、B.caryophylli)、Staphylococcus(例えばS.aureus(黄色ブドウ球菌)、S.auricularis、S.carnosus、S.epidermidis、S.lugdunensis)、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)(MRSA)、Streptococcus(例えばStreptococcus pneumoniae(肺炎レンサ球菌))、Escherichia coli(大腸菌)、Klebsiella、Enterobacter、Serratia、Haemophilus、Yersinia pestis(ペスト菌)、Mycobacterium、非結核性マイコバクテリウム(例えばM.avium、M.avium subsp.hominissuis(MAH)、M.abscessus、M.chelonae、M.bolletii、M.kansasii、M.ulcerans、M.avium、M.avium複合体(MAC)(M.aviumおよびM.intracellulare)、M.conspicuum、M.kansasii、M.peregrinum、M.immunogenum、M.xenopi、M.marinum、M.malmoense、M.marinum、M.mucogenicum、M.nonchromogenicum、M.scrofulaceum、M.simiae、M.smegmatis、M.szulgai、M.terrae、M.terrae複合体、M.haemophilum、M.genavense、M.asiaticum、M.shimoidei、M.gordonae、M.nonchromogenicum、M.triplex、M.lentiflavum、M.celatum、M.fortuitum、M.fortuitum複合体(M.fortuitumおよびM.chelonae))。
【0162】
一実施形態では、本明細書に記載するシステムが、非結核性マイコバクテリア感染が引き起こす感染症の処置に使用される。一実施形態では、本明細書に記載するシステムが、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)、Mycobacterium abscessus、Mycobacterium aviumまたはM.avium複合体が引き起こす感染症の処置に使用される。さらなる一実施形態では、嚢胞性線維症を有する患者が、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)、Mycobacterium abscessus、Mycobacterium avium、またはMycobacterium avium複合体感染症について、本明細書に記載するシステムの1つ以上で処置される。さらにもう一つの実施形態では、Mycobacterium avium感染症がMycobacterium avium subsp.hominissuisである。
【0163】
一実施形態では、嚢胞性線維症を有する患者が、肺感染症について、ここに提供されるシステムの1つで処置される。さらなる一実施形態では、肺感染症がPseudomonas感染症である。さらにもう一つの実施形態では、Pseudomonas感染症がP.aeruginosa(緑膿菌)である。さらなる一実施形態では、システム中のアミノグリコシドがアミカシンである。
【0164】
一実施形態では、ここに提供されるシステムが、嚢胞性線維症患者または非嚢胞性線維症患者におけるPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)、Mycobacterium abscessus、Mycobacterium aviumまたはMycobacterium avium複合体肺感染症の処置または予防に使用される。さらなる一実施形態では、ここに提供されるシステムが、リポソームアミノグリコシド製剤を含む。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドが、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダミシンまたはそれらの組み合わせから選択される。さらにもう一つの実施形態では、アミノグリコシドがアミカシン、例えば硫酸アミカシンである。
【0165】
嚢胞性線維症患者における慢性疾病の主要原因であるPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)などの感染性疾患の処置にとっての障害は、上皮細胞上の喀痰/バイオフィルム障壁への薬物浸透である(図7)。図7において、ドーナツ形はリポソーム/複合体化アミノグリコシドを表し、「+」記号は遊離アミノグリコシドを表し、「-」記号はムチン、アルギナートおよびDNAを表し、実線バー記号はPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)を表す。この障壁は、いずれも正味の負電荷を有する細菌由来のアルギナートまたは菌体外多糖ならびに損傷した白血球由来のDNAおよび肺上皮細胞由来のムチンに包埋された、コロニー形成したP.aeruginosa(緑膿菌)と浮遊性のP.aeruginosa(緑膿菌)をどちらも含む。負電荷は、アミノグリコシドなどの正荷電薬物を縛り付け、その浸透を妨げて、生物学的に無効にする(Mendelmanら、1985)。理論に束縛されることは望まないが、リポソームまたは脂質複合体へのアミノグリコシドの封入は、喀痰/バイオフィルムへの非特異的結合からアミノグリコシドを遮蔽または部分的に遮蔽して、リポソームまたは脂質複合体(アミノグリコシドが封入されているもの)の浸透を可能にする(図7)。
【0166】
もう一つの実施形態では、患者が、非結核性マイコバクテリア肺感染症について、ここに提供されるシステムの1つで処置される。さらなる一実施形態では、ここに提供されるシステムが、リポソームアミカシン製剤を含む。
【0167】
もう一つの実施形態では、ここに提供されるシステムが、嚢胞性線維症患者における1つ以上の細菌感染症の処置または予防に使用される。さらなる一実施形態では、ここに提供されるシステムが、リポソームアミノグリコシド製剤を含む。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。
【0168】
もう一つの実施形態では、ここに提供されるシステムが、気管支拡張症を有する患者における1つ以上の細菌感染症の処置または予防に使用される。さらなる一実施形態では、ここに提供されるシステムがリポソームアミノグリコシド製剤を含む。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンまたは硫酸アミカシンである。
【0169】
さらにもう一つの実施形態では、ここに提供されるシステムが、非CF気管支拡張症患者におけるPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)肺感染症の処置または予防に使用される。さらなる一実施形態では、ここに提供されるシステムがリポソームアミノグリコシド製剤を含む。さらなる一実施形態では、アミノグリコシドがアミカシンである。
【0170】
本明細書に提示するとおり、本発明は、吸入により投与されるアミノグリコシド製剤を提供する。一実施形態では、エアロゾルのMMADが、アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)により測定した場合、約3.2μm~約4.2μm、または次世代インパクタ(NGI)により測定した場合、約4.4μm~約4.9μmである。
【0171】
一実施形態では、ここに提供される有効量のアミノグリコシド製剤の噴霧化時間が、20分未満、18分未満、16分未満または15分未満である。一実施形態では、ここに提供される有効量のアミノグリコシド製剤の噴霧化時間が15分未満または13分未満である。一実施形態では、ここに提供される有効量のアミノグリコシド製剤の噴霧化時間が約13分である。
【0172】
一実施形態では、本明細書に記載の製剤が、それを必要とする患者に毎日1回投与される。
【実施例0173】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに例解する。ただし、これらの実施例は上記の実施形態と同様に例示であって、本発明の範囲を制限するとは決して解釈すべきでないことに留意すべきである。
実施例1:ネブライザリザーバ体積の比較
【0174】
この実施例では、エアロゾル生成器が、ここに提供されるリポソームアミノグリコシド製剤と共に使用するために改変されたPari Pharma GmbH(ドイツ)の調査用eFlow(登録商標)ネブライザであった。1つ目のエアロゾル生成器は液溜めの初期体積VRIが13mLであり(A)、2つ目は17mL(B)、3つ目は22mL(C)、および4つ目は20mL(D)であった。すなわち、1つ目の増加時体積VRNは15.5mL、2つ目は19.5mL、3つ目は24.5mL、4つ目は22.5mLであった。
【0175】
8mLのリポソームアミカシン製剤を液溜め10に注ぎ込んだ。図8に示すように、8mLの空気クッションは、液溜め中の8mLの製剤の完全な放出時に、14~16分のエアロゾル生成期間をもたらした。しかし、12mLの空気クッションは、エアロゾル生成時間を12~およそ13分の範囲に減少させた。17mLの空気クッションはエアロゾル生成時間を10~12分の量までさらに減少させる(図6)。
【0176】
さらに、1つ目(A)および3つ目(C)のエアロゾル生成器は、8mLのリポソームアミカシン製剤と一緒に使用されていた。50mbar以下の初期陰圧を液溜め内に生成させた。加えて、エアロゾル生成中の陰圧を測定した。それを、図9に、エアロゾル生成時間に対して示す。言い換えると、図9は、24.5mLの体積VRNを有する液溜め(C)と15.5mLの体積VRNを有する液溜め(A)とについて、エアロゾル生成時間中の陰圧範囲を比較した実験データを示す。アミカシン製剤の初期量Vは8mLであり、初期陰圧は約50mbarであった。グラフは、大きい方の空気クッションが、300mbarの臨界値を上回って陰圧が増加するのを防止することを示している。
【0177】
異なる陰圧に対するエアロゾル生成器効率(液体吐出速度または総吐出速度に比例)の依存性を、上記のネブライザで測定した。1.1~7.4Paのせん断力で5.5~14.5mPa×sの範囲の粘度を有するリポソームアミカシン製剤(チキソトロープ)を実験に使用した。図10に示すように、効率は150mbar~300mbarの陰圧範囲において最適である。同じく図10に示すように、およそ150mbar未満の陰圧と300mbarを上回る陰圧では、効率が減少する。
【0178】
さらにまた、図8と同じリポソームアミカシン製剤を、改変eFlow(登録商標)に基づく4つの異なるエアロゾル生成器で使用した。ここで、1つ目のエアロゾル生成器(A)は、液溜めの増加時体積VRNが19.5mLであって、8mLのリポソームアミカシン製剤が充填された、改変eFlow(登録商標)である。
【0179】
2つ目のエアロゾル生成器(B)は、増加時体積VRNが16mLであって、8mLの上記リポソームアミカシン製剤が充填されたリザーバを有し、3つ目のエアロゾル生成器(C)は24.5mLの増加時体積VRNを有し、8mLの上記液体が充填された。4つ目のエアロゾル生成器は、液溜めの増加時体積VRNが22.5mLであり、8mLの上記リポソームアミカシン製剤が充填された。
【0180】
図11に、8mLのリポソームアミカシン製剤を充填したこれら4つのエアロゾル生成器の実験データを示す。これらの結果は、液溜め内のリポソームアミカシン製剤を完全に放出するためのエアロゾル生成時間を、使用前の液溜め中の液体の初期体積(V)に対する液溜めの増加時体積(VRN)の比との関連で示している。図11は、改変エアロゾル生成器装置(A)では、およそ16分のエアロゾル生成時間が必要であったのに対し、エアロゾル生成時間は比VRN/Vの増加と共に減少したことを示している。このデータは、3つ目のエアロゾル生成器装置(C)では、エアロゾル生成時間がおよそ4分短縮されて12分未満になりえたことも示している。
【0181】
それゆえに、実施例1で得られたデータは、空気クッションを大きくすればエアロゾル生成器を効率のよい陰圧範囲で長時間にわたって作動させることが可能になるので、総エアロゾル生成時間を有意に低減させうることを示している。それゆえに、例えば8mLという多量の液体でさえ、12分未満の期間で噴霧化(エアロゾルの形態で放出)することができる。
実施例2:アミカシン製剤のエアロゾル特性
【0182】
ロットが異なる11のリポソームアミカシン製剤を、本明細書に記載するように製作された改変40メッシュ膜と8mLの液体容量および上記の空気クッションを持つリザーバとを有する改変eFlow(登録商標)ネブライザ(すなわち本明細書に記載のリポソームアミノグリコシド製剤と共に使用するために改変されたもの)で調べた。ACI(アンダーセンカスケードインパクタ)またはNGI(次世代インパクタ)のいずれかを使ってカスケードインパクションを行なうことで、エアロゾルの特性、すなわち空気力学的質量中央径(MMAD)、幾何標準偏差(GSD)、および細粒分率(FPF)を確定した。ACIによる空気力学的質量中央径(MMAD)測定
【0183】
MMAD測定にはアンダーセンカスケードインパクタ(ACI)を使用し、噴霧化作業は、噴霧化時の温度と相対湿度%を維持するために、ClimateZoneチャンバ(Westech Instruments Inc.、ジョージア州)の内部で行なった。ClimateZoneは温度18℃および相対湿度50%にプリセットした。ACIを組み立てて、ClimateZoneの内部に装填した。プローブ温度計(VWRデュアル温度計)を、ACIのステージ3の表面に取り付けて、ACIの温度をモニタリングした。ACIの温度が18±0.5℃に達した時に噴霧化を開始した。
【0184】
8mLハンドセットに8mLを装填したところ、ACIは8mLの用量全体を扱うことができないことがわかった。すなわち、ACIプレート3に沈着したアミカシンリポソーム製剤がオーバーフローした。ACIステージ3における液体オーバーフローがない限り、各ACIステージでの薬物分布百分率は、ACI内部で収集されるリポソームアミカシン製剤の量による影響を受けないことが決定された(未掲載データ)。そこで噴霧化のために、ネブライザに4mLのリポソームアミカシン製剤を充填して、空になるまで噴霧化するか、8mLのリポソームアミカシン製剤を充填して、約6分間の収集時間にわたって(すなわち約4mL)噴霧化した。
【0185】
噴霧化物を、18℃に冷却したACI中、28.3L/分の流速で収集した。噴霧化時間を記録し、重量差(噴霧化量)を時間間隔で割ったものに基づいて、噴霧化速度を算出した。
【0186】
噴霧化物を収集した後、ACI収集プレート0、1、2、3、4、5、6および7を取り出し、それぞれを、各自のペトリ皿に載せた。各プレートに沈着した製剤を溶解するために、適当な量の抽出溶液(プレート2、3、および4については20mL、プレート0、1、5、6、および7については10mL)を各ペトリ皿に加えた。プレート0、1、2、3、4、5および6からの試料をさらに、HPLC分析用の移動相Cで適当に希釈した。プレート7からの試料は、さらなる希釈を行わずに、そのままHPLCで分析した。ACIフィルタも20mLバイアルに移し、10mLの抽出溶液を加え、蓋をしたバイアルをボルテックスにかけることで、そこに付着した製剤をすべて溶解させた。バイアルからの液体試料を、HPLC分析のために、HPLCバイアル中に濾過(0.2μm)した。導入ポートとコネクタも、そこに沈着した製剤を溶解するために、10mLの抽出溶液ですすぎ、試料を収集し、2倍希釈でHPLC分析を行なった。インパクタの各ステージで沈着したアミカシン量に基づいて、空気力学的質量中央径(MMAD)、幾何標準偏差(GSD)および細粒分率(FPF)を算出した。
【0187】
8mLを装填し6分間噴霧化したネブライザの場合、すべての実験について横断的にFPDを比較するために、細粒量(FPD)を、噴霧化された製剤の体積に対して標準化した。FPD(噴霧化された製剤の体積に標準化したもの)は次の等式にしたがって算出した。
【数1】
NGIによる空気力学的質量中央径(MMAD)測定
【0188】
MMAD測定には次世代インパクタ(NGI)も使用し、噴霧化作業は、噴霧化時の温度とRH%を維持するために、ClimateZoneチャンバ(Westech Instruments Inc.、ジョージア州)の内部で行なった。ClimateZoneは温度18℃および相対湿度50%にプリセットした。NGIを組み立てて、ClimateZoneの内部に装填した。プローブ温度計(VWRデュアル温度計)を、NGIの表面に取り付けて、NGIの温度をモニタリングした。NGIの温度が18±0.5℃に達した時に噴霧化を開始した。
【0189】
8mLのリポソームアミカシン製剤をネブライザに加えて噴霧化した。新たなエアロゾルがもはや観察されなくなった時に、タイマーを停止した。噴霧化物を、18℃に冷却したNGIにおいて、15L/分の流速で収集した。噴霧化時間を記録し、重量差(噴霧化量)を時間間隔で割ったものに基づいて、噴霧化速度を算出した。
【0190】
エアロゾル収集を行なった後、NGIトレイをトレイホルダーと共にNGIから取り出した。適当量の抽出溶液をNGIカップ1、2、3、4、5、6、7およびMOCに加えて、これらのカップに沈着した製剤を溶解した。この材料をそれぞれメスフラスコに移した。NGIカップ1、2、および6には、25mlメスフラスコを使用し、NIGカップ2、3、4には、50mlメスフラスコを使用した。さらなる抽出溶液をカップに追加し、再びメスフラスコに移した。NGIカップに沈着した製剤をメスフラスコに完全に移すために、この手順を数回繰り返した。メスフラスコに注ぎ足して最終体積を25mlまたは50mlとし、よく振とうしてから、サンプリングした。カップ1、2、3、4、5、6および7からの試料をさらに、HPLC分析用の移動相Cで適当に希釈した。MOCからの試料は、さらなる希釈を行わずに、そのままHPLCで分析した。NGIフィルタも20mLバイアルに移し、10mLの抽出溶液を加え、蓋をしたバイアルをボルテックスにかけることで、そこに付着した製剤をすべて溶解させた。バイアルからの液体試料を、HPLC分析のために、HPLCバイアル中に濾過(0.2ミクロン)した。導入ポートとコネクタも、そこに沈着した製剤を溶解するために、10mLの抽出溶液ですすぎ、試料を収集し、11倍希釈でHPLC分析を行なった。
【0191】
インパクタの各ステージで沈着したアミカシン量に基づいて、MMAD、GSDおよびFPFを算出した。
【0192】
すべての実験について横断的にFPDを比較するために、FPDを、噴霧化された製剤の体積に対して標準化した。FPD(噴霧化された製剤の体積に標準化したもの)は次の等式にしたがって算出した。
【数2】
【0193】
これらの実験の結果を、図12および図13ならびに下記の表5に提示する。
【表5-1】
【表5-2】
実施例3:噴霧化速度研究
【0194】
噴霧化速度研究(1分あたりに噴霧化される製剤のグラム数)を、バイオ安全キャビネット(モデル1168、タイプB2、FORMA Scientific)中で行なった。組み立てたネブライザ(マウスピースとエアロゾルヘッドとを伴うハンドセット)をまず空で重量測定(W)してから、一定体積の製剤を加え、ネブライザ装置を再び重量測定(W)した。ネブライザおよびタイマーを開始し、噴霧化された製剤を、約8L/分の流速で、冷却インピンジャに収集した(実験設定の詳細については図14参照)。エアロゾルがもはや観察されなくなった時に、タイマーを停止した。ネブライザを再び重量測定(W)し、噴霧化の時間(t)を記録した。噴霧化製剤総量はW-Wと計算し、噴霧化後の総薬物残量はW-Wとして算出した。製剤の噴霧化速度は次式にしたがって算出した:
【数3】
【0195】
本明細書に従って製作したネブライザ(これらの研究では24のエアロゾルヘッドを選択し、使用した)を使って噴霧化されたリポソームアミカシンに関する噴霧化速度(単位g/分)ならびに他の関連する結果を、表6に記録する。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
実施例4:噴霧化後の会合アミカシンの百分率および噴霧化物の特徴づけ
【0196】
実施例3の噴霧化物における遊離アミカシンとリポソーム複合体化アミカシンを測定した。実施例3で述べたように、噴霧化物を8L/分の流速で冷却インピンジャ(図14)に収集した。
【0197】
インピンジャに収集された噴霧化物を、1.5%NaClですすぎ、100mLまたは50mLメスフラスコに移した。次に、インピンジャに沈着した製剤をすべてフラスコに移すために、インピンジャを1.5%NaClで数回すすいだ。噴霧化物の遊離アミカシン濃度を測定するために、メスフラスコの内部にある希釈された噴霧化物のうち、0.5mLをとって、Amicon(登録商標)Ultra-0.5mL30K遠心分離フィル
タ装置(再生セルロース、30K MWCO、Millipore)に載せ、この装置を5000G、15℃で15分間、遠心分離した。適当な量の濾液をとり、移動相C溶液で51倍希釈した。アミカシン濃度をHPLCで決定した。噴霧化物の総アミカシン濃度を測定するために、メスフラスコの内部にある希釈された噴霧化物のうち、適当な量をとり、抽出溶液(パーフルオロペンタン酸:1-プロパノール:水(25:225:250、v/v/v)に101倍希釈(かつ溶解)し、アミカシン濃度をHPLCで決定した。
【0198】
噴霧化後の会合アミカシン百分率は、次式によって算出した。
【数4】
【0199】
表6に記載した噴霧化実験からの、噴霧化後の会合アミカシン百分率と、総用量回収率を、表7に要約する。対応する噴霧化速度も表7に含めた。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【0200】
この研究中に残りの試料で同じHPLCおよびアミカシン標品を使ってリポソームアミカシン製剤中のアミカシンの総濃度を測定した。得られた値は64mg/mLアミカシンであった。噴霧化後の会合アミカシン%値は58.1%から72.7%までの範囲にあり、平均値は65.5±2.6%であった。8mLのリポソームアミカシン製剤を噴霧化した場合、アミカシンの総回収量は426mgから519mgまでの範囲にあり、平均値は476±17mgであった。噴霧化されたアミカシンの算出量(表7における噴霧化されたリポソームアミカシン製剤の重量によるもの)は、471mgから501mgまでの範囲にあり、平均値は490±8mgであった。総アミカシン回収率は91%から104%までの範囲にあり、平均値は97±3%(n=72)であった。
リポソームサイズ
【0201】
噴霧化前または噴霧化後のリポソームアミカシン製剤(64mg/mLアミカシン)を、1.5%NaClで適当に希釈し、リポソーム粒径を、光散乱により、Nicomp380 Submicron Particle Sizer(Nicomp、カリフォルニア州サンタバーバラ)を使って測定した。
【0202】
24のネブライザエアロゾルヘッドを8mLリザーバハンドセットと共に使ってエアロゾル化したリポソームアミカシン製剤の噴霧化後のリポソームサイズを測定した。リポソームサイズは248.9nmから288.6nmまでの範囲にあり、平均は264.8±6.7nm(n=72)であった。これらの結果を表8に提示する。噴霧化前のリポソーム平均直径はおよそ285nm(284.5nm±6.3nm)であった。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【0203】
本願において引用される文書、特許、特許出願、刊行物、製品説明、およびプロトコールはいずれも、すべての目的上、参照により、本明細書にそのまま組み込まれる。
【0204】
本明細書に例示し説明した実施形態は、本発明をなし、使用するための、本発明者らが知る最善の方法を、当業者に教示することを意図しているに過ぎない。上記の教示内容に照らせば当業者には理解されるとおり、本発明の上記実施形態には、本発明から逸脱することなく、改変および変更を加えることができる。したがって、本願請求項およびそれらの均等物の範囲内で、具体的に説明した方法とは異なる方法で本発明を実施しうることは、言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】