(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021315
(43)【公開日】2023-02-10
(54)【発明の名称】苗の移植装置
(51)【国際特許分類】
A01G 31/02 20060101AFI20230202BHJP
A01G 9/08 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A01G31/02
A01G9/08 610B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199373
(22)【出願日】2022-12-14
(62)【分割の表示】P 2020044146の分割
【原出願日】2020-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000211592
【氏名又は名称】株式会社日立産機中条エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】泉田 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】大図 智弥
(57)【要約】
【課題】
良好に苗の移植ができる苗の移植装置を提供する。
【解決手段】
播種され生育した苗を、苗床から個別苗床に切り離して、苗間距離をより大きく確保する水耕パネルへ移植する苗の移植装置であって、前記個別苗床を把持する把持手段と、前記把持手段を苗床から水耕パネルへ移動する移動機構と、を備え、前記把持手段4は、前記個別苗床を両側から把持する把持爪42と、前記把持爪の上方に配置したノズル45と、を有し、前記ノズル45は、前記把持爪42の内側に水を供給するものである。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
播種され生育した苗を、苗床から個別苗床に切り離して、苗間距離をより大きく確保する水耕パネルへ移植する苗の移植装置であって、
前記個別苗床を把持する把持手段と、
前記把持手段を苗床から水耕パネルへ移動する移動機構と、を備え、
前記把持手段は、
前記個別苗床を両側から把持する把持爪と、
前記把持爪の上方に配置したノズルと、を有し、
前記ノズルは、前記把持爪の内側に水を供給することを特徴とする苗の移植装置。
【請求項2】
請求項1に記載の苗の移植装置において、
ノズル固定ねじを有し、
前記ノズルを回転させて水の当たる位置を調整し、前記ノズル固定ねじで固定可能としたことを特徴とする苗の移植装置。
【請求項3】
請求項1に記載の苗の移植装置において、
前記把持手段および前記移動機構を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
個別苗床である個別ウレタンを把持爪で把持して水耕パネルの穴位置上方に移動し、
停止状態で前記ノズルから前記把持爪の内側へ水を流し、
所定時間後に把持爪を下降して水耕パネルの穴に個別ウレタンを挿入する
ように制御することを特徴とする苗の移植装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種から発芽した苗或いは生育した苗を、苗床から切り離して、苗間距離をより大きく確保する水耕パネルへ移植する苗の移植装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培において、種が撒かれ発芽した苗が植えられている苗床では、苗は縦横に区分された単位苗床毎に植えられている。苗が生育して大きくなると、苗間距離を確保するために、苗は移植装置により水耕パネルへ移植される。
【0003】
特許文献1には、苗の移植装置が開示されている。特許文献1には「個別に苗が植えられ、互いに分離し得る単位苗床が平面上、二方向に配列して構成された苗床を支持し、フレームに支持された苗トレイと、 前記フレームに支持され、前記苗トレイ上の前記単位苗床の移植先となり、前記単位苗床が納まる孔が形成された水耕パネルと、 前記フレームに鉛直軸回りに回動自在で、昇降自在に支持され、前記苗トレイ上の単位苗床を前記苗床から分離させて保持し、前記水耕パネルの前記孔内に前記保持している単位苗床を挿入し、離脱させる保持部材とを備え、 前記保持部材は前記苗床の最も外周側に配列し、前記単位苗床が隣接しない側面を有するいずれか1個、もしくは複数個の単位苗床を前記単位苗床の前記側面側から前記単位苗床の幅方向に保持して前記苗床から分離させることを特徴とする苗の移植装置。」(請求項1)と記載され、また、「前記保持部材は前記フレームに鉛直軸回りに回動自在に支持されたアームに支持される本体部と、この本体部に、先端部が開閉自在に支持された一対の把持爪を備えることを特徴とする請求項1に記載の苗の移植装置。」(請求項4)と記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、「多数の穴を小ピッチで並設する育苗パネルの穴内で水耕栽培したみつば,ねぎ等の野菜の大苗を、多数の穴を大ピッチで並設した生育パネルの穴内に機械的に順次移植する水耕苗の自動移植機において、上記生育パネルを間欠搬送する第2コンベヤの上方に瞬間放水ホースを配設し、開閉挟み具により大苗を挟持している移動台が上記第2コンベヤの上方へ移動したときに上記瞬間放水ホースから上記大苗の株元に注水してその水により大苗の根を垂下させる自動注水を行う。」(要約)と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/230408号
【特許文献2】特開平11-103703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単位苗床に用いるウレタンシートとしては、様々な種類のものが市販されている。自動機用に柔らかいものも販売されているが、手動用のものも合わせて、ウレタンの硬さや個別にある切込みのカット位置・カット寸法は多種多様である。このため、今まで実現された移植装置、定植装置では、単位苗床となる個別ウレタンを把持爪で把持出来ない、個別ウレタンが途中でちぎれてしまうという問題が発生した。
特許文献1に記載の苗の移植装置では、単位苗床を確実に把持し分離する把持爪の構造については、考慮されていない。
【0007】
また、水耕栽培は養液栽培の一つで土などの固形培地を必要としない栽培方法である。ウレタンシートに播種され生育した苗は、ウレタンシートの切込み(スリット)から根を伸ばしてさらに苗トレイの底面にも伸ばしていく。この苗(個別ウレタン)を移植する時に、水耕パネルの穴に真っすぐに根を入れて穴から根を出さないと、その下の養液を吸収することが困難になり苗の生育に影響が出る。装置で移植・定植する場合、把持部を固定するロボットアーム等の移動機構の移動動作により根が振れてしまい、そのまま水耕パネルの穴に移植・定植を行うと根がはみ出たり、挟まったりすることがあった。
特許文献2に記載の水耕苗の自動移植機では、上方に配設した瞬間放水ホースから、苗の株元に向かって斜め方向に瞬間放水するもので、苗の根が傾く恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、これらの課題を解決し、良好に苗の移植ができる苗の移植装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本発明の「苗の移植装置」の一例を挙げるならば、播種され生育した苗を、苗床から個別苗床に切り離して、苗間距離をより大きく確保する水耕パネルへ移植する苗の移植装置であって、前記個別苗床を把持する把持手段と、前記把持手段を苗床から水耕パネルへ移動する移動機構と、を備え、前記把持手段は、前記個別苗床を両側から把持する把持爪と、前記把持爪の上方に配置したノズルと、を有し、前記ノズルは、前記把持爪の内側に水を供給するものである。
【0010】
なお、本発明の移植装置は、収穫まで置くべき場所に苗を移植する定植装置も含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、個別の苗床となる個別ウレタンを苗床から良好に確実に切り離すことができる。
【0012】
また、苗の根を水耕パネルの穴に真っすぐ入れて穴から根を出さないように移植することができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】実施例1の把持手段を示す正面図および側面図である。
【
図5】実施例1の把持爪の使用状態を示す図である。
【
図9】実施例2の把持手段の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。なお、実施の形態を説明するための各図において、同一の構成要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例0016】
先ず、苗の移植装置の概略を説明する。
図1に、苗の移植装置の一例の、上面から見た概略平面図を示す。図の右側の苗トレイ1上に苗床2が配置され、図の左側には水耕パネル3が配置されている。
【0017】
苗床2に種が撒かれ成長すると、苗の成長に合わせて苗間距離を大きく確保するために、水耕パネル3へ移植する必要がある。移植装置は、苗床から個別苗床を切り離して水耕パネルへ移植する、個別苗床の把持手段4と移動機構5を備えている。把持手段4は、移動機構5により、図の横方向(x方向)、縦方向(y方向)、および必要あれば上下方向(z方向)に移動できるように構成されている。図示した移動機構5は、横方向および縦方向に配置したレール(支持棒)上をモータ等の駆動手段により移動するものであるが、これに限らず、ロボットアームなど、x,y,z方向の3軸方向に移動できるものであれば何れのものでもよい。把持手段の移動は、制御部6により制御される。
【0018】
苗床2は、ウレタンシートなどの発泡樹脂で平板状に構成されている。ウレタンシートには、縦横に格子状に切り込みが入れられて、後述するように、個別苗床に切り離しできるように構成されている。苗床2に種を撒き、水を供給することにより、発芽し、苗が生長する。
【0019】
水耕パネル3も、ウレタンシートなどの発泡樹脂で平板状に構成され、縦横に区分けしたそれぞれの中央部に穴を備えている。把持手段4により、苗床2から切り取った個別苗床をそれぞれの穴に挿入して、水耕栽培を行う。
【0020】
図2に、把持手段の斜視図を示す。
図2は、苗床であるウレタンシートの切込みに、把持手段の把持爪を挿入した状態を示している。また、
図3(a)に苗床側から見た把持手段の正面図を、
図3(b)に把持手段の側面図を示す。
【0021】
把持手段4は、苗床側に一対のL字状の把持アーム41を備えている。把持アーム41の先端側には、それぞれ下方に伸びる把持爪42が取り付けられている。把持アーム41の他端側には、把持アーム41を開閉する把持アーム開閉機構43が設けられている。図の把持アーム開閉機構43は、把持アーム41の他端とモータとを連結棒で連結し、モータを回転させることにより把持アーム41を開閉するものであるが、これに限らず、電磁プランジャーなど何れの開閉機構を用いてもよい。
【0022】
図3に把持手段の移動の動作を示す。把持手段の移動は、制御部6により移動機構および把持手段を制御することにより行われる。
先ず、
図3(b)の左向きの矢印に示すように、把持手段の把持爪42を切り離そうとする個別苗床のウレタンシートの切込み上に移動する。把持爪42の位置決めは、例えばテレビカメラで撮像し、制御部6で位置決め制御すればよい。
次に、
図3(b)の下向きの矢印で示すように、把持手段4を下降させ把持爪42をウレタンシートの切込みに挿入する。なお、把持手段全体を下降するに代えて、把持アーム41を下降する機構を設けて把持爪42を切込みに挿入するようにしてもよい。
次に、
図3(a)の矢印で示すように、把持アーム開閉機構43により把持爪42を閉じて、個別苗床を把持する。
次に、
図3(b)の右向きの矢印で示すように、個別苗床を把持した状態で把持手段4を水平に移動することにより、苗床から目的とする個別苗床を切り離す。
【0023】
苗床に用いるウレタンシートには様々な種類のものが市販されている。自動機用に柔らかいものも販売されているが、手動用のものも合わせてウレタンの硬さや個別にある切込みのカット位置・カット寸法は多種多様である。このため、今まで実現された移植装置では個別ウレタンを把持できないとか、個別ウレタンが途中でちぎれてしまうという問題が発生した。本実施例は、この課題を解決するものである。
【0024】
図4に、本実施例の把持手段の把持爪を示す。
図4(a)は把持爪の斜視図、
図4(b)は把持爪の三面図である。図に示すように、把持爪42の個別苗床を把持する内側の面には、上下方向に伸びる複数の溝421またはくぼみが設けられている。溝421は把持爪の先端まで設けられている。例えば溝421の幅は略0.5mm、溝間の間隔は略0.5mmが好ましい。また、把持爪42には、先端側から取付部側に向かってスリット423が設けられており、把持爪は逆U字状に形成されている。
【0025】
図5に、把持爪42で個別苗床21である個別ウレタンを把持した状態を示す。個別ウレタンを把持爪42で両側から挟んだ状態で、把持爪42を矢印方向(水平方向)に移動させると、溝421またはくぼみである出っ張りがウレタンに引っ掛かり抵抗となるため、個別ウレタンを苗床から良好に確実に切り離すことができる。
また、上下方向に溝421またはくぼみを設けたため、把持爪42を上方から下方に向けてウレタンシートの切込みに挿入する場合に、溝またはくぼみである出っ張りがウレタンシートに引っ掛かることがなく、容易に挿入することができる。
図では上下方向に伸びる複数の溝またはくぼみとしたが、上下方向に伸びる複数の凸部としても良い。
【0026】
図6に、把持爪の変形例を示す。この変形例においても、把持爪42の内側の面に、斜めに交差する格子状の複数の溝422またはくぼみを設けたものである。この変形例によれば、斜めに交差する格子状の複数の溝またはくぼみである出っ張りがウレタンに引っ掛かり抵抗となるため、個別ウレタンを良好に確実に切り離すことができる。この変形例においても、斜めに交差する格子状の複数の凸部としてもよい。
【0027】
さらに、把持爪の内側の面に、それぞれ分離する複数の半球状、三角形状、四角形状などの凹部または凸部を設けてもよい。
【0028】
本実施例によれば、把持爪の個別苗床を把持する内側の面に、複数の凹部または凸部を設けたので、凹部または凸部である出っ張りがウレタンに引っ掛かり抵抗となるため、個別ウレタンを良好に確実に切り離すことができる。
特許文献2には、生育パネルを間欠搬送するコンベヤの上方に瞬間放水ホースを配設し、開閉挟み具により大苗を挟持している移動台が上記コンベヤの上方へ移動したときに瞬間放水ホースから大苗の株元に注水してその水により大苗の根を垂下させること、が記載されているが、特許文献2記載のものは、ホースで苗の根に水を放水するものであり、把持爪の上部に水を供給するノズルを設け、把持爪の内側に当たるように水を供給するものではない。
本実施例によれば、把持爪の上部に水を供給するノズルを設け、把持爪の内側に当たるように水を供給できるようにしたので、苗の移植時に苗の根を真っ直ぐにでき、水耕パネルの穴に個別苗床の苗を根がはみ出ることなく移植することができる。