(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021322
(43)【公開日】2023-02-10
(54)【発明の名称】時間依存的生体組織足場
(51)【国際特許分類】
A61F 2/08 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
A61F2/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199598
(22)【出願日】2022-12-14
(62)【分割の表示】P 2021133238の分割
【原出願日】2016-11-04
(31)【優先権主張番号】62/250,568
(32)【優先日】2015-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516228958
【氏名又は名称】ポリ-メッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ヒラス ゲオルギオス ティー
(72)【発明者】
【氏名】テイラー マイケル スコット
(72)【発明者】
【氏名】マクレン セス ディラン
(72)【発明者】
【氏名】クリンクスケールズ ケネス ダブリュー
(57)【要約】
【課題】慢性炎症反応を抑えるために、埋め込み部位における残留物質の少ないメッシュ。また、当初は支持的であって最終的に適合性が高くなることにより、柔軟な腹壁と比較的柔軟性のないメッシュ/組織複合体との間の高圧の移行部を排除するメッシュ。
【解決手段】早期創傷安定性を可能にした後に、移植片の寿命を通じて実質的に不変のマクロ多孔質な細孔構造を示す適合性の高い状態に移行して、架橋を伴わずに良好な組織の取り込みを促す生地又はメッシュ構造及びその製造方法。
【選択図】
図3C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュであって、
少なくとも1つの生体吸収性繊維と少なくとも1つの徐々に生体吸収される繊維とを含み、
前記生体吸収性繊維と前記徐々に生体吸収される繊維とが組み合わせられて、互いに垂直なX方向及びY方向を有する吸収性メッシュを形成し、
前記吸収性メッシュは前記徐々に生体吸収される繊維によって形成された細孔を含み、前記生体吸収性繊維が前記細孔の周囲に編み込まれ前記細孔を補強し、複数の細孔が平均直径を有しているものとして特徴付けられ、前記細孔の前記平均直径の変化が、前記生体吸収性繊維の除去後に5%未満である、メッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2015年11月4日に出願された米国仮特許出願第62/250,568号の合衆国法典第35編第119条(e)に基づく利益を主張するものであり、この出願はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、早期創傷安定性を可能にした後に、インプラント(移植片)の寿命を通じて実質的に不変のマクロ多孔質構造を示す適合性の高い状態に移行して、架橋を伴わずに良好な組織の取り込みを促す生地又はメッシュ構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
吸収性及び非吸収性繊維材料は、とりわけ組織分離、ヘルニア修復、腹膜置換、硬膜置換、骨盤底再建を含む様々な膜応用のための補強足場を提供することができる。これらのタイプの組織修復及び組織支持のうち、ヘルニア修復は米国において最も頻繁に行われている外科手術の1つであり、その数は年間約100万件に近い。
【0004】
これらの修復の大部分では、様々な配列の吸収性及び非吸収性フィルム、繊維及びヤーンで構成された、主に伝統的な編み構造及び織り構造に基づく外科用合成メッシュが使用されている。これらの材料は、ヘルニアの再発頻度を減少させはしたものの、文献ではその割合が依然として高く、鼠径ヘルニア及び瘢痕ヘルニアの修復では最大15%が報告されている。また、現在の外科用メッシュの使用後には、慢性疼痛、腹壁硬直の増加、線維症及びメッシュ収縮などの長期にわたる合併症が持続し、これらが患者の生活の質に著しく影響を与えている。
【0005】
合成ヘルニア修復用メッシュの開発における1つの動きは、吸収性材料の一部を含む材料を創出することである。しかしながら、実際には、これらのメッシュの吸収性成分は、ヘルニアメッシュの構造を生理的に適切な範囲内で変化させるのに役立つものではなく、むしろ埋め込み部位における恒久的材料の総量を減少させたいという要望に対処するものである。また、これらの部分的吸収性メッシュを使用すると、残留移植片の剛性と、恒久的材料が少ないことに関連する強度及び安定性の低下とに起因して、新たな製品破損モードが生じる恐れもある。
【0006】
通常、現在市販されている部分的吸収性メッシュでは、編みパターン内に単純に吸収性成分が存在し又は撚り合わされているだけなので、吸収性成分の分解時に著しい強度の低下が見られる。メッシュの引裂又は引裂強度は、この種の外科装置の典型的な破損モードであるため、重要な特徴になりつつある。また、通常、ヘルニアの再発はメッシュの縁部(すなわち、自然組織に縫い込まれる箇所)において生じるので、メッシュ縫合糸の引き抜き強度の著しい低下は、この部位におけるヘルニア再発の要因となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当業では、慢性炎症反応を抑えるために、埋め込み部位における残留物質の少ないメッシュが必要とされている。また、当業では、当初は支持的であって最終的に適合性が高くなることにより、柔軟な腹壁と比較的柔軟性のないメッシュ/組織複合体との間の高圧の移行部を排除するメッシュが必要とされている。
【0009】
背景技術の節で考察した主題は、必ずしも全てが先行技術であるとは限らず、背景技術の節における考察の結果のみに基づいて先行技術であると考えるべきではない。この考えに沿えば、背景技術の節で考察した、又はこのような主題に関連する先行技術におけるあらゆる課題の認識は、明確に先行技術であると述べていない限り先行技術として取り扱うべきではない。或いは、背景技術の節におけるあらゆる主題の考察は、特定の課題に対する本発明者の取り組みの一部として扱うべきであり、この取り組み自体を発明的とすることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
手短に言えば、本発明はメッシュに関し、具体的には、外科用メッシュ及びヘルニアメッシュなどの、医療用途において役立つメッシュに関する。本開示のメッシュは、医療用途での使用に特に適している。
【0011】
本開示は、一実施形態において、少なくとも1つの生体吸収性繊維と少なくとも1つの生体安定性繊維とを含む部分的吸収性メッシュを提供する。このメッシュは、被験者への埋め込み時に生体吸収性繊維が分解し、換言すれば生体吸収性繊維が宿主に吸収されて、生体安定性繊維によって形成されたメッシュが残るという意味で部分的に生体吸収性である。部分的吸収性メッシュは、その宿主への最初の埋め込みに適した特性を有する一方で、生体安定性繊維によって形成される残留メッシュは、治癒過程が所望の程度まで進行した後でも宿主に埋め込まれたままのメッシュに適した異なる特性を有する。
【0012】
生体吸収性繊維及び生体安定性繊維は、組み合わさって部分的吸収性メッシュを形成する。部分的吸収性メッシュは、平らに置いた時に、かなりの長さ、かなりの幅及び比較的薄い厚みを有する、基本的に二次元構造である。便宜上、部分的吸収性メッシュは、X方向と垂直なY方向とを、すなわち互いに垂直なX方向とY方向とを有するものとして説明することができる。一実施形態では、このメッシュを、X方向に対応するウェール方向と、Y方向に対応するコース方向とを有するものとして説明することができる。別の実施形態では、製編機上でメッシュを調製した時に、結果として得られるメッシュを、X方向に対応する機械方向と、Y方向に対応する機械横方向とを有するものとして説明することができる。
【0013】
部分的吸収性メッシュは、細孔を含む。(単複の)吸収性繊維が吸収され、又は部分的吸収性メッシュから別様に除去又は解離された後には、部分的吸収性メッシュの残渣塊が生体安定性繊維を含む。この生体安定性繊維は、生体安定性メッシュの形をとる。この生体安定性メッシュも細孔を含む。本開示によれば、メッシュの細孔を細孔径によって特徴付けることができ、メッシュ内の複数の細孔を平均細孔径によって特徴付けることができる。本明細書では、この細孔径、従って平均細孔径の決定方法について説明する。従って、部分的吸収性メッシュは細孔を含み、これらの複数の細孔は平均径を有しているものとして特徴付けられる。
【0014】
メッシュの一実施形態は、部分的生体吸収性メッシュが分解しても、元々のメッシュ内に存在する細孔のサイズが大幅に変化しないようなものであるという利点を有する。例えば、部分的吸収性メッシュから生体吸収性繊維が除去された後には、複数の細孔の平均径の変化が、(元々の部分的吸収性メッシュと比べて)25%未満、20%未満、又は15%未満、又は10%未満又は5%未満である。換言すれば、部分的吸収性メッシュの成分である生体安定性メッシュは、部分的吸収性メッシュの平均細孔径と基本的に同じ平均細孔径を有する。
【0015】
本開示によれば、この細孔径の維持は、生体安定性繊維によって形成された細孔を通じてではなく、これらの細孔の周囲に生体吸収性繊維を編み込むことによって部分的に達成することができる。換言すれば、生体吸収性繊維は、生体安定性繊維によって形成された細孔と交わらず、又はこれらの細孔を別様に塞がない。むしろ、生体吸収性繊維は、生体安定性メッシュ内に存在する細孔を補強する。従って、生体吸収性繊維が宿主内で生体吸収を受けても、メッシュに隣接する組織は、そのメッシュの細孔との(単複の)相互作用に変化が生じない。組織は、隣接するメッシュの主要細孔内に向かって成長する傾向があり、これらの主要細孔が一定又はほぼ一定のサイズを維持する場合には、成長する組織が部分的吸収性メッシュの生体吸収によって妨げられにくくなるので、このことは非常に望ましい。従って、一実施形態では、生体吸収性繊維が生体安定性繊維と共に編み込まれる。別の実施形態では、生体吸収性繊維が、部分的吸収性メッシュの細孔の周縁部を補強する。
【0016】
上述したように、一実施形態では、生体安定性繊維が生体安定性メッシュを形成し、この生体安定性メッシュは部分的吸収性メッシュの成分である。任意に、生体安定性繊維は、35~70g/m2の重量を有する生体安定性メッシュを形成する。この重量範囲内であれば、生体安定性メッシュは、宿主内で支持メッシュとして残存するために望ましい高強度を有するが、宿主内で望ましくない刺激を引き起こすほど大きくはない。この重量範囲は、この生体安定性メッシュの重量に生体吸収性繊維を追加しても重量の大きな(>140g/m2の)メッシュが作製されないという点でも望ましい。
【0017】
生体吸収性繊維は、生体安定性繊維によって形成された生体安定性メッシュに編み込まれることが好ましい。このことは、必ずしも最初に生体安定性メッシュが形成されて、そこに生体吸収性繊維が追加されることを意味するわけではなく、1つの選択肢である。しかしながら、例えば部分的吸収性メッシュが形成されると同時に生体安定性繊維と生体吸収性繊維とを1つにまとめることによって、生体安定性メッシュと部分的吸収性メッシュとを同時に形成することも1つの選択肢である。従って、生体吸収性繊維が生体安定性メッシュに編み込まれるという表現は、構造を意味するものであってメッシュの作製方法ではない。
【0018】
同様に、生体吸収性繊維は、パターンの観点から部分的吸収性メッシュ内に存在するものとして説明することもできる。例えば、生体吸収性繊維は、鎖編みなどの認識される編目パターンで存在することができる。一実施形態では、生体吸収性繊維が、部分的吸収性メッシュ内に鎖編みの形で存在する。別の実施形態では、生体吸収性繊維によって形成された鎖編みが生体安定性メッシュを通過することにより、結果として得られるメッシュが部分的吸収性メッシュになる。一実施形態では、鎖編みの形の生体吸収性繊維が、生体安定性繊維と共に編み込まれる。
【0019】
一実施形態では、部分的吸収性メッシュが異方性を有する。換言すれば、X方向で測定したメッシュ特性の値が、Y方向で測定した時にその同じメッシュ特性について観察した値と異なる。一例として、メッシュの伸び(1つのメッシュ特性)を16N/cmなどの標準条件下で測定すると、この伸びがX方向よりもY方向で大きくなり得る。任意に、部分的吸収性メッシュの成分を形成する生体安定性メッシュは、それ自体が異方性を有する。しかしながら、一実施形態では、生体吸収性繊維を追加すると、生体吸収性繊維の不在時には観察されない部分的吸収性メッシュの異方性特性が誘発又は修正される。異方性の別の例として、一実施形態では、16N/cmでの測定時における本開示のメッシュのX方向の伸びが、生体吸収性繊維の除去後に少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%増加する。
【0020】
これと同様に、又はこれとは別に、メッシュの構造も異方性とすることができる。例えば、一実施形態では、生体吸収性繊維がメッシュのX方向に延びる。別の実施形態では、生体吸収性繊維が、メッシュのX方向に延びてメッシュのY方向に延びない。さらに別の実施形態では、メッシュが、有色の生体吸収性繊維と無色の生体吸収性繊維とを含み、有色の生体吸収性繊維がメッシュのX方向に延びてメッシュのY方向に延びない。或いは、一実施形態では、生体吸収性繊維がメッシュのY方向に延び、別の実施形態では、生体吸収性繊維がメッシュのY方向に延びてメッシュのX方向に延びない。さらに別の実施形態では、メッシュが、有色の生体吸収性繊維と無色の生体吸収性繊維とを含み、有色の生体吸収性繊維がメッシュのY方向に延びてメッシュのX方向に延びない。
【0021】
有色の糸が一方向に延びて垂直方向に延びないようにすると、外科医は、メッシュの物理的異方特性に変換できるメッシュの異方性を確認できるようになる。これにより、外科医は、どの方向がどの物理的特性をもたらすかを推測する必要なく、好ましい配置と一致するようにメッシュを配置できるようになる。
【0022】
部分的吸収性メッシュの生体安定性繊維成分は、メッシュを患者の体内に配置した後に体内で分解しない。生体安定性繊維を調製できる生体安定性であるポリマーの例としては、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィンが挙げられる。任意に、生体安定性繊維成分は、全体又は一部を徐々に生体吸収される繊維に置き換えることもできる。徐々に生体吸収される繊維は、宿主内への配置後に、少なくとも6ヶ月にわたってその物理的特性の少なくとも90%を維持する。徐々に吸収される生体吸収性繊維の例としては、ポリ乳酸、PLLA、例えば88%のl-ラクチド及び12%のトリメチレンカーボネートなどの、l-ラクチド誘導単位の大部分を含むセグメント化ブロックコポリマー、及びポリ(4-ヒドロキシブチレート)などのポリエステルが挙げられる。
【0023】
部分的吸収性メッシュの生体吸収性繊維成分は、患者の体内にメッシュを配置した後に体内で分解する。この分解は、例えばメッシュが患者の体液環境に触れるとすぐに開始し、典型的には配置から2週間以内に本格化する。一実施形態では、メッシュの吸収性成分が、2~16週の期間内に完全に分解してしまう。別の実施形態では、メッシュの吸収性成分が、6~12週の期間内に完全に分解してしまう。一実施形態では、部分的吸収性メッシュをpH7.4及び37℃のリン酸塩緩衝液に12週にわたって浸漬した後に、生体吸収性繊維が完全に溶解する。
【0024】
以下は、本開示の6つのさらなる例示的な実施形態である。
1.少なくとも1つの生体吸収性繊維と、少なくとも1つの生体安定性繊維とを含み、生体吸収性繊維と生体安定性繊維とが編み合わされて細孔を含む構造を形成し、生体吸収性繊維の吸収後に細孔のサイズが実質的に変化しないメッシュ。
2.生体安定性/生体吸収性複合物の形成方法であって、編目パターンを用いて生体安定性繊維と生体吸収性繊維を編み合わせて細孔を含む構造を形成するステップを含み、構造内の細孔のサイズ寸法が生体吸収性繊維の生体吸収性によって実質的に変化しない方法。
3.少なくとも1つの生体吸収性繊維と、少なくとも1つの生体安定性繊維とを含み、生体吸収性繊維と生体安定性繊維とが編み合わされて細孔を含むパターンを形成し、生体安定性繊維が細孔の周縁部を補強するメッシュ。
4.少なくとも1つの生体吸収性繊維と、少なくとも1つの生体安定性繊維とを含み、生体吸収性繊維と生体安定性繊維とが編み合わされて細孔を含む初期パターンを形成し、生体吸収性繊維の吸収後にパターンが実質的に変化しないメッシュ。
5.少なくとも1つの生体吸収性繊維と、少なくとも1つの生体安定性繊維とを含むメッシュであって、生体吸収性繊維と生体安定性繊維とが編み合わされて細孔を含む初期パターンを形成し、生体吸収性繊維の分解後に残るメッシュが、生体吸収性繊維の分解前のメッシュと比べて減少したY方向の伸びを示し、X方向の伸びが、約100%、又は別の実施形態では約80%超増加するメッシュ。
6.少なくとも1つの生体吸収性繊維と、少なくとも1つの生体安定性繊維とを含むメッシュであって、生体吸収性繊維と生体安定性繊維とが編み合わされて細孔を含む初期パターンを形成し、生体吸収性繊維の分解後に残るメッシュが、生体吸収性繊維の分解前のメッシュと比べて増加したY方向の伸びを示し、X方向の伸びが、約100%、又は別の実施形態では約80%超増加するメッシュ。
【0025】
本開示は、メッシュを提供することに加えてメッシュの用途も、具体的にはメッシュの医学的用途も提供する。例えば、本開示は、一実施形態において、本開示によるメッシュを患者内に配置するステップと、具体的には物理的支持の恩恵を受ける組織に隣接してメッシュを配置するステップとを含む方法を提供する。一例としては、臓器、腸又は脂肪組織が周囲の筋肉又は結合組織の穴又は脆弱点からはみ出した時に発症するヘルニアが挙げられる。治癒が行われるように足場及び支持を提供する一方で、臓器、腸又は脂肪組織が腹壁を通過しないように保護するために、本開示のメッシュを腹壁に隣接して又は腹壁内に配置して、筋肉又は結合組織の穴又は脆弱点を補強することができる。本開示の方法に従って治療することができるヘルニアの例としては、(内鼠径部に生じる)鼠径ヘルニア、(上腿部/外鼠径部に生じる)大腿へルニア、(腹部の切開部又は瘢痕を貫いて生じる)瘢痕ヘルニア、(腹部/腹壁全般に生じる)腹壁ヘルニア、(臍に生じる)臍ヘルニア、及び(上腹部/横隔膜に沿って腹部内に生じる)食道裂孔ヘルニアが挙げられる。一実施形態では、支持を必要とする組織上に伸びに関して異方性を有するメッシュを配置し、大きな伸びを示すメッシュの方向が大きな伸びを示す組織の方向に一致するようにメッシュを位置付ける。このようにすると、組織の動きに対するメッシュの適合性が良好になる。
【0026】
本開示は、メッシュ及びその使用法を提供することに加えて、メッシュの調製方法も提供する。例えば、一実施形態では、生体安定性メッシュを形成する生体安定性繊維と、生体安定性メッシュが形成されるのと同時に生体安定性メッシュと共に編み込まれる生体吸収性繊維とを同時に使用してメッシュを形成する。任意に、生体安定性繊維は、鎖編みを用いて部分的生体吸収性メッシュに導入され、すなわち生体吸収性繊維は、鎖編みの形で編み込まれる。
【0027】
この概要は、以下の詳細な説明においてさらに詳細に説明するいくつかの概念を簡略化した形で紹介するために示したものである。別途明確に述べている場合を除き、この概要は、特許請求する主題の重要な又は基本的な特徴を特定するものでも、特許請求する主題の範囲を限定するものでもない。
【0028】
以下の説明では、1又は2以上の実施形態の詳細を示す。1つの例示的な実施形態に関連して図示又は説明する特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。従って、本明細書で説明する様々な実施形態のいずれかを組み合わせてさらなる実施形態を提供することができる。必要であれば、実施形態の態様は、本明細書で識別する様々な特許、出願及び出版物の概念を用いてさらに別の実施形態を提供するように修正することもできる。説明、図面及び特許請求の範囲からは、他の特徴、目的及び利点が明らかになるであろう。
【0029】
以下、本開示を実施するように設計された構成を他の特徴と共に説明する。本開示は、以下の明細書を読むとともに、明細書の一部を成す、本開示の一例を示す添付図面を参照することによってさらに容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】1つの繊維タイプによって形成された細孔を別の繊維タイプが塞ぐ先行技術のメッシュ構造の特徴を示す図である。
【
図2】本開示による、1つの繊維タイプによって形成された細孔を別の繊維タイプが補強するメッシュ構造の特徴を示す図である。
【
図3A】本開示のメッシュの、メッシュの細孔に注目した例示的なサンプルを示す図である。
【
図3B】本開示のメッシュの、メッシュの細孔径の決定方法に注目した例示的なサンプルを示す図である。
【
図3C】本開示のメッシュの、メッシュ内の生体吸収性繊維の例示的な配置に注目した例示的なサンプルを示す図である。
【
図4】今日のメッシュヘルニア根治手術を示す図である。
【
図5B】生体吸収性成分を失った本開示の分解したメッシュの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
当業者であれば、本開示の1又は2以上の態様によって達成できる目的もあれば、1又は2以上の他の態様によって達成できる目的もあると理解するであろう。各目的は、その全ての点において本開示の全ての態様に等しく当てはまるわけではない。従って、上述の目的は、本開示のいずれか1つの態様に関して選択的に見ることができる。添付図及び実施例と共に以下の詳細な説明を読めば、本開示のこれらの及びその他の目的及び特徴がさらに完全に明らかになるであろう。しかしながら、本開示の上記の概要及び以下の詳細な説明は、いずれも好ましい実施形態についてのものであり、本開示、又は本開示の他の代替実施形態を限定するものではないと理解されたい。特に、本明細書では複数の具体的な実施形態を参照しながら本開示を説明するが、この説明は本開示の例示であり、本開示の限定として構成されるものではないと理解されるであろう。当業者には、添付の特許請求の範囲に記載するような本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び応用が思い浮かぶ可能性がある。同様に、本概要及び後述するいくつかの実施形態からは、本開示の他の目的、特徴、利益及び利点が明らかになり、当業者にも容易に明らかになるであろう。上記からは、添付の実施例、データ、図及びこれらから引き出される全ての妥当な推論と併せて、単独で又は本明細書に組み入れられる参考文献を考慮して、このような目的、特徴、利益及び利点が明らかになるであろう。
【0032】
以下、図面を参照しながら本開示をさらに詳細に説明する。特に定めがない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本明細書に開示する主題が属する技術分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有する。本明細書に開示する主題の実施又は試験においては、本明細書で説明するものと同様又は同等のあらゆる方法、装置及び材料を使用することができるが、本明細書では代表的な方法、装置及び材料について説明する。
【0033】
具体的に述べていない限り、本文書において使用する用語及び語句、並びにこれらの変形は、別途明確に述べていない限り、限定的とは対照的に制約のないものとして解釈されたい。同様に、「及び(and)」という接続詞で結ばれた項目群については、これらの項目の一つ一つがその群内に存在する必要があると解釈すべきではなく、別途明確に述べていない限り「及び/又は(and/or)」として解釈されたい。同様に、「又は(or)」という接続詞で結ばれた項目群については、その群間に相互排他性が必要であると解釈すべきではなく、やはり別途明確に述べていない限り「及び/又は(and/or)」として解釈されたい。
【0034】
さらに、明細書又は特許請求の範囲には本開示の項目、要素又は成分を単数形で記載していることがあるが、単数形に限定することを明確に述べていない限り、その範囲には複数形が含まれることも検討される。「1又は2以上の(one or more)」、「少なくとも(at least)」、「~に限定されるわけではない(but not limited to)」などの範囲を広げる単語及び語句、又はいくつかの例における他の同様の語句の存在については、このような範囲を広げる語句が存在しない例においてさらに狭い状況が意図又は必要とされることを意味するものとして解釈すべきではない。
【0035】
部分的吸収性メッシュの利点は、埋め込み部位における残留物質が少なく、長期間の埋め込みに関連する慢性炎症反応を抑えることができる点である。本開示は、一実施形態において、非吸収性メッシュ、すなわち本明細書では生体安定性繊維とも呼ぶ非吸収性繊維によって形成されたメッシュを提供し、本明細書では対応するメッシュを生体安定性メッシュと呼ぶことができ、この非吸収性メッシュが吸収性繊維と組み合わせられる。非吸収性繊維によって形成されたメッシュ構造に吸収性繊維を編み込むことによって部分的吸収性メッシュを提供する。
【0036】
埋め込み部位に残る残留材料の量は、本開示の部分的吸収性メッシュ内に存在する非吸収性メッシュの量に部分的に依存する。任意に、本明細書に開示するこの実施形態及び他の実施形態では、本発明の部分的吸収性メッシュの非吸収性メッシュ成分が超軽量メッシュ、すなわち質量が35g/m2未満のメッシュである。別の選択肢として、本発明の部分的吸収性メッシュの非吸収性メッシュ成分は、軽量メッシュ、すなわち質量が35~70g/m2のメッシュである。さらに別の選択肢として、本発明の部分的吸収性メッシュの非吸収性メッシュ成分は、標準重量メッシュ、すなわち質量が70~140g/m2のメッシュである。別の選択肢として、本発明の部分的吸収性メッシュの非吸収性メッシュ成分は、大重量メッシュ、すなわち質量が140g/m2を上回るメッシュである。
【0037】
1つのメッシュの実施形態では、本明細書でさらに詳細に説明するように、部分的吸収性メッシュの平均細孔径と、部分的吸収性メッシュの成分である非吸収性メッシュの平均細孔径とが、共に外部応力を受けていない時には基本的に同じである。これを達成するために、非吸収性(生体安定性)繊維によって形成されたメッシュ細孔の周縁部に吸収性繊維を編み込むことができる。従って、生体吸収性繊維は、非吸収性繊維によって形成された細孔の周縁部を補強すると言える。
【0038】
本開示の一実施形態では、メッシュが、少なくとも1つの生体吸収性繊維と、少なくとも1つの生体安定性繊維とによって形成される。一実施形態では、部分的に非分解性とすることができるメッシュ製編生地を作製して、ヘルニア再発に対する恒久的な予防的保護を行うことができる。一実施形態では、本開示のメッシュが、引っ張られている時に伸長し、すなわち伸びを示すが弾性的ではなく、すなわち伸長した後に元の形状に戻らない。
【0039】
生体吸収性繊維は、マルチフィラメント繊維又はモノフィラメント繊維とすることができる。一実施形態では、生体吸収性繊維がマルチフィラメント繊維を含み、又はマルチフィラメント繊維から成る。別の実施形態では、生体吸収性繊維がモノフィラメント繊維を含み、又はモノフィラメント繊維から成る。さらに別の実施形態では、本開示の部分的吸収性メッシュ内にモノフィラメント生体吸収性繊維とマルチフィラメント生体吸収性繊維の両方が存在する。
【0040】
生体吸収性繊維は、患者に埋め込まれた後にその強度及び/又はその構造的完全性を失う。生体吸収性繊維は、生分解性繊維と呼ぶこともできる。例示的な生体吸収性繊維は、l-ラクチド、dl-ラクチド、グリコリド及びトリメチレンカーボネートから成る群から選択された少なくとも1つの環状モノマーとε-カプロラクトンとの混合物で末端がグラフト化された非晶質、多軸の重合開始剤によって形成されたセグメント化多軸コポリエステルによって形成することができる。一方で、非晶質の重合開始剤は、触媒、好ましくはオクタン酸第一スズと、トリエタノールアミン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールから成る群から選択されたモノセントリック多官能性開始剤との存在下におけるトリメチレンカーボネートの開環重合によって形成することができる。或いは、非晶質の重合開始剤は、トリメチレンカーボネートと、p-ジオキサノン、ε-カプロラクトン及び1,5-ジオキセパン-2-オンから選択された少なくとも1つのモノマーとの混合物の開環重合によって形成することもできる。
【0041】
他の選択肢として、生体吸収性繊維は、絹タンパク質、線状セグメント化ラクチド誘導コポリエステル、又はポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)によって形成することもできる。さらに具体的に言えば、生体吸収性繊維は、精練された白色ブラジル産生カイコガ天蚕繊維の形態の絹タンパク質によって形成することもできる。或いは、生体吸収性繊維は、ラクチド、及びグリコリド、ε-カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、p-ジオキサノン又はモルホリンジオンから選択された少なくとも1つのモノマー、及び/又は(3)ポリ(3-ヒドロキシブチレート)及びポリ(3-ヒドロキシブチラート-co-3-ヒドロキシバレレート)から選択されたポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)によって形成されたセグメント化コポリマーによって形成することもできる。
【0042】
生体安定性繊維は、1又は複数のポリマーから作製された少なくとも1つのマルチフィラメントヤーン又はモノフィラメントヤーンを含むことができる。一実施形態では、生体安定性繊維がモノフィラメント繊維である。別の実施形態では、生体安定性繊維がマルチフィラメントである。さらに別の実施形態では、本開示のメッシュが、モノフィラメント生体安定性繊維とマルチフィラメント生体安定性繊維の両方によって形成される。
【0043】
例示的な生体安定性繊維としては、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレンなどのポリエチレン、脂肪族ポリアミド(例えば、ナイロン6及びナイロン66)及び芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEK)などのポリアミド、並びにポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリアルキレンテレフタレートが挙げられる。生体安定性繊維を調製できる他の生体安定性ポリマー材料としては、PTFEとして知られているポリ(テトラフルオロエチレン)、及びポリ(ヘキサフルオロプロピレン-VDF)が挙げられる。生体安定性繊維は、有機ポリマーから生産する必要はなく、代わりにステンレス鋼モノフィラメント又は加撚マルチフィラメントなどの金属によって形成することもできる。
【0044】
生体安定性ポリマー対生体吸収性ポリマーの考えられる重量比としては、90:10、80:20、70:30、60:40及び50:50、並びにこれらの値及び選択肢から選択される範囲を挙げることができる。一般に、生体吸収性繊維は部分的吸収性メッシュの伸びを制限し、従って生体安定性繊維と生体吸収性繊維との比が90:10から50:50に減少すると、部分的吸収性メッシュの伸びが減少するようになる。メッシュを最初に宿主に埋め込む際には、組織を緊急に支持する必要がある時に支持を必要とする組織をメッシュが高度に支持することが望ましいため、このことは有利である。しかしながら、その組織が治癒してその組織自体及び隣接する組織を良好に支持できるようになるにつれ、メッシュが安定した支持を行う必要性は低下する。実際に、メッシュは、治癒した組織が宿主の普段の活動中に自然に生じる伸びに適応するために大きく伸びることが有利である。組織が治癒して外部的な支持の必要性が低下した後もメッシュが組織を制約し続けた場合には、治癒した組織が損傷を受けることなく自然な伸びに耐える能力を再び十分に発揮しなくなる。
【0045】
本開示の部分的吸収性メッシュによってもたらされる初期支持量は、部分的吸収性メッシュ内に存在すべき適切な量の生体吸収性繊維を選択することによって部分的に調整することができる。換言すれば、上述したように、生体吸収性ポリマーに対する生体安定性ポリマーの重量比が90:10から80:20、70:30、60:40及び50:50に、並びにこれらの値及び選択肢から選択される範囲に減少するにつれて、メッシュにおける生体吸収性繊維の量は相対的に増加し、従って、例えば伸びにくいという点において相対的に高度な支持を行うようになる。一実施形態では、部分的吸収性メッシュの重量の大部分が生体安定性繊維に起因する。様々な任意の実施形態では、生体吸収性繊維が、部分的吸収性メッシュの重量の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は最大49%を占め、残りの重量が生体安定性繊維によってもたらされる。本開示は、生体吸収性繊維が、上述した重量パーセント値から選択できる重量パーセントの下限及び上限によって定められた範囲内に収まる重量を部分的吸収性メッシュにもたらすような実施形態を提供する。例えば、生体吸収性繊維は、部分的吸収性メッシュの重量の10~49%、或いは他の2つの選択肢として10~40%又は15~35%を占めることができる。
【0046】
本明細書で使用する共に編み合わされた繊維は、編み込まれたものと考えられる。換言すれば、これらの繊維は、一方の繊維がもう一方の繊維の周囲に巻き付き又は絡み付く形で組み合わされる。編み込まれた繊維は、絡み合ったもの又は結び付いたものと考えることもできる。編み込まれた繊維は、手縫い、或いは機械編み又は機械縫い、或いは刺繍工程、或いはこれらのいずれかの組み合わせによって形成することができる。生体吸収性繊維は、編み込まれて密に部分的吸収性メッシュの一部となることにより、部分的吸収性メッシュの生体安定性メッシュに接触しているにすぎない状態とは対照的に、メッシュの伸びなどの部分的吸収性メッシュの物理的特性に効果的に影響を与える。
【0047】
一実施形態では、生体安定性繊維及び生体吸収性繊維が、これらが両方同時に製編機に供給される製編工程を用いて、すなわち1ステップの製編工程で組み合わされる。或いは、生体安定性繊維を製編機内に供給して生体安定性メッシュを形成した後に、例えば製編工程又は手動の製織工程又は刺繍工程によって生体安定性メッシュに生体吸収性繊維を加えることもできる。
【0048】
製編は、繊維、ヤーン又は糸によって形成された生地を作製する技術である。製織では、通常、糸が縦方向(縦糸)又は横方向(横糸)のいずれかに平行に延びる。対照的に、製編生地は、ヤーンの中立経路の上下にループを形成する蛇行経路(コース)をたどる糸によって形成される。これらの蛇行ループは、異なる方向に引き伸ばすことができ、製織メッシュと比べて高柔軟性の可能性を提供する。このため、製編は、当初、ユーザの動きに応答して伸縮又は伸長しなければならない素材のために開発された。因みに、織布は、主に縦糸と横糸との間のおおよそ対角線上における関連する一対の方向の一方又は他方に沿っては伸びるが、この対の逆方向には縮み(バイアスでの伸縮)、通常は伸縮性素材で織られていない限りそれほど伸縮しない。一実施形態では、生体安定性繊維も生体吸収性繊維も特に伸縮性ではなく、すなわちこれらの繊維がほとんど又は全く弾性を有していない。
【0049】
製編には、横編みと縦編みという2つの主な種類がある。横編みでは、ウェールがヤーンのコースに対して垂直であり、ラスタ走査のように生地を横切って移動しながら各ウェールに次々に編目を追加することによって、単一のヤーンから生地全体を作製することができる。対照的に、縦編みでは、ウェール毎に少なくとも1本のヤーンが必要である。このため、縦編み生地は、横編み生地よりも高い切断抵抗及び引裂抵抗をもたらすことができる。
【0050】
一実施形態では、本開示の部分的吸収性メッシュが縦編みによって作製される。従って、一実施形態では、本開示の部分的吸収性メッシュがウェール及びコースを含む。好適なタイプの縦編みパターンとしては、トリコット、ミラニーズ、ラッシェル、マーキゼット、サンドフライ、ボビー、クロス、ヘリンボーン、リネン、ケーブル、サテン、アトラス、シャルムーズ、ヴォイル、アコーディオン及びイングリッシュネットを挙げることができる。
【0051】
一実施形態では、生体安定性繊維が、1バー又は2バー編みパターンを用いて安定した編み構成に形成される。さらなる実施形態では、より高い引裂抵抗をもたらすという理由で2バー編みパターンを使用することができる。別の実施形態では、(単複の)生体吸収性繊維を1バー編みパターンで又は2バーパターンを通じて追加して、構造を安定化/強化することができる。
【0052】
別の実施形態では、鎖編みを用いて生体安定性メッシュに(単複の)生体吸収性繊維を追加して、本開示の部分的吸収性メッシュを提供することができる。この実施形態では、生体吸収性繊維が単独でメッシュを形成せず、すなわち本開示の部分的吸収性メッシュから生体安定性繊維を除去した場合、結果として得られる構造はメッシュではなく、緩く結合した生体吸収性糸の形になる。従って、例えば一実施形態では、本開示のメッシュが、組み合わさってメッシュ構造に配列された第1の繊維と第2の繊維とを含み、第1の繊維が鎖編みで配列され、第2の繊維がメッシュを形成して鎖編みで配列されない。本開示は、メッシュの形成方法であって、メッシュの形態を有する構造に第1の繊維と第2の繊維とを組み込むステップを含み、第1の繊維が鎖編みを用いてメッシュに組み込まれ、第2の繊維が生体安定性メッシュを形成し、鎖編みを用いて部分的吸収性メッシュに組み込まれない方法も提供する。
【0053】
別の実施形態では、パターンを、(バー1:吸収)/(バー2:吸収)/(バー3:非吸収)/(バー4:非吸収)とすることができる。別の実施形態では、パターンを、(バー1:非吸収)/(バー2:吸収)/(バー3:非吸収)/(バー4:非吸収)とすることができる。さらに、パターンは、(バー1:吸収と撚り合わせた非吸収)/(バー2:非吸収)とすることもできる。当業者には周知のように、多くのバリエーションのパターンが可能である。好ましい実施形態では、パターンを、(バー1:非吸収)/(バー2:非吸収)/(バー3:吸収)とすることができる。
【0054】
現在のメッシュ加工のための合成技術は、(1)編み合わせ構造、例えば同じ編みパターンで撚り合わされ、又は同時に押し出されて二成分繊維を形成する繊維と、(2)主要細孔の変化に依拠して適合性/機械的遷移を生じる編み合わせテキスタイルと、(3)早期安定性を促すフィルムを含む層状構造と、を形成することを含む。任意に、本明細書で説明する生体安定性繊維及び生体吸収性繊維は、生産の複雑性を高める層化又はその他の生地形成後工程とは対照的に、1ステップ加工工程を通じてテキスタイル製品に形成することもできる。限定を意図とするものではなくほんの一例として、一実施形態では、非吸収性ヤーンがメッシュ及びメッシュの主要細孔網の基礎を形成し、吸収性ヤーンが鎖編みなどの最低限の編みパターンで編まれることによって主要細孔網を塞がない編み合わせパターンで吸収性ヤーン及び非吸収性ヤーンがメッシュを形成する1ステップ工程でメッシュ又は生地を製編することができる。従って、この1ステップ工程は、編物加工工程中に全ての繊維/ヤーンが構造内に送り込まれて後の工程ステップで追加されない1回のステップで全ての製編が行われるようなものである。
【0055】
本開示は、一実施形態において、メッシュの形成方法であって、編目パターンを用いて生体安定性繊維と生体吸収性繊維とを編み合わせて細孔を含む構造を形成するステップを含み、構造内の細孔のサイズ寸法が生体吸収性繊維の生体吸収性によって実質的に変化しない方法を提供する。
【0056】
本開示は、別の実施形態において、メッシュの形成方法であって、編目パターンを用いて生体安定性繊維と生体吸収性繊維とを編み合わせて細孔を含むメッシュ構造を形成するステップを含み、生体吸収性繊維が鎖編みで縫い合わされる方法を提供する。
【0057】
本開示は、別の実施形態において、メッシュの構成方法であって、生体安定性繊維及び生体吸収性繊維が製編機に同時に供給されてメッシュを形成する1ステップ製編工程を実行するステップを含み、メッシュの生体安定性繊維が、細孔を含むパターンで配列され、メッシュの生体吸収性繊維が、生体安定性繊維のパターンによって形成された細孔を塞がないパターンで配列される方法を提供する。
【0058】
本開示は、一実施形態において、生体安定性繊維によって形成された生体安定性メッシュを提供する。生体吸収性繊維は、生体吸収性繊維とは無関係に生体安定性メッシュを形成する生体安定性繊維の周囲に絡み付くようにして生体安定性メッシュに編み込むことができる。
【0059】
外科用メッシュの分野における先行技術では、自然な腹壁の伸長特性及び異方特性に厳密に一致する形で適合性の高い状態に移行し、移植片の寿命全体を通じてマクロ多孔性の開いた細孔構造を示して架橋を伴わずに良好な組織の取り込みを促す早期創傷安定性が可能にならず、このことは、メッシュ細孔内への及びメッシュ細孔を通じた実際のコラーゲン統合に対してメッシュの全体的封入として定義することができる。従って、メッシュの細孔を横切る「架橋」が存在する。
【0060】
例えば、本開示は、一実施形態において、少なくとも1つの生体吸収性繊維と少なくとも1つの生体安定性繊維と含むメッシュであって、生体吸収性繊維と生体安定性繊維とが組み合わさって、生体吸収性繊維の吸収後にも実質的に変化しないままの平均径を有する細孔を含む構造を形成するメッシュを提供する。
【0061】
別の例として、本開示は、少なくとも1つの生体吸収性繊維と少なくとも1つの生体安定性繊維と含むメッシュであって、生体吸収性繊維と生体安定性繊維とが編み合わされて、生体安定性繊維によって補強された周縁部を有する細孔を含むパターンを形成するメッシュを提供する。
【0062】
本開示は、別の例において、少なくとも1つの生体吸収性繊維と少なくとも1つの生体安定性繊維と含むメッシュであって、生体吸収性繊維と生体安定性繊維が編み合わされて、生体吸収性繊維の吸収後に実質的に変化しないままの、細孔を含む初期パターンを形成するメッシュを提供する。
【0063】
本開示は、もう一つの例において、メッシュであって、メッシュが静止状態にある時に平均細孔径を有する細孔を含むメッシュ構造の形の少なくとも1つの生体安定性繊維と、メッシュに組み込まれた少なくとも1つの生体吸収性繊維とを含み、メッシュから生体吸収性繊維が除去された時にメッシュの平均細孔径が25%を超えて、20%を超えて、15%を超えて、又は10%を超えて変化しないメッシュを提供する。
【0064】
本開示の一実施形態では、少なくとも1つの吸収性繊維を、非吸収性メッシュの一部を制約する鎖編みとして配置することができる。生体吸収性成分が吸収されると、結果として得られる又は最終的なメッシュ構造は、多くのテキスタイル強度試験シナリオ(ボール破裂、引張、引裂、縫合糸引き抜き)において同様の、また多くの場合に高い強度を示す。以下を含む範囲が本開示の範囲に含まれるとの限定及び理解を意図するわけではないが、一実施形態では以下の測定値が測定された。
引張(ウェール)=155.6N(初期)、189.6N(分解後)、
引張(コース)=188.3N(初期)、202.8N(分解後)、
引裂(ウェール)=66.13N(初期)、78.52N(分解後)、
引裂(コース)=65.41N(初期)、78.11N(分解後)、
縫合糸引き抜き(ウェール)=34.73N(初期)、31.53N(分解後)、
縫合糸引き抜き(コース)=33.79N(初期)、32.52N(分解後)、
ボール破裂=362.35N(初期)、341.85N(分解後)。
通常、現在市販されている部分的吸収性メッシュでは、編みパターン内に単純に吸収性成分が存在し又は撚り合わされているだけなので、生体吸収性成分の分解時に著しい強度の低下が見られる。メッシュの引裂又は引裂強度は、この種の外科装置の典型的な破損モードであるため、重要な特徴になりつつある。
【0065】
一実施形態では、繊維を、主要細孔径が0.7mmを上回る、主要細孔径が1mmを上回る、又は主要細孔径が2mmを上回るメッシュ構造に形成することができる。一実施形態では、2mmを上回る細孔径が好ましい。細孔径は、便宜上細孔内に仮想円を配置することによって求められ、細孔内に収まることができる最も大きな円は、直径及び面積の一方又は両方によって特徴付けられる。この直径及び面積は、細孔自体を(仮想円の直径に対応する)距離と(仮想円の面積に対応する)面積とを有するものとして説明できるように、対応する細孔の特徴を特性化するものとして使用することができる。仮想円は、細孔の周縁部を定める繊維のいずれかを覆うほどの大きさを有するべきではない。しかしながら、この円は、細孔の周縁部を定める(単複の)繊維にぴったりと隣接するほどの、すなわち細孔内に完全に収まることができる最大の円であるほどの十分な大きさを有するべきである。仮想円は、静止したメッシュ、すなわちいずれの方向にも引張又は伸長されておらず平衡状態にあるメッシュの細孔内に配置される。細孔径の決定は、画像解析ソフトウェアを用いて行うことができる。
【0066】
生体安定性メッシュは、周囲の生体安定性繊維に取り囲まれることによって形成される主要細孔のパターンを含む。「主要細孔」という用語は、繊維の領域間に存在し得る小さな間隙と区別するために使用するものであり、後者の間隙は「副細孔」と呼ぶことができる。
【0067】
円、従って細孔自体は、平方ミリメートル(mm2)などの面積で記述することも、或いはミリメートル(mm)などの直径で記述することもでき、いずれにせよ細孔内に完全に収まる最大の円である。円の直径で記述すると、本開示のメッシュの細孔径は、様々な実施形態において、0.1mmよりも大きく、又は0.5mmよりも大きく、又は0.6mmよりも大きく、又は0.7mmよりも大きく、又は0.8mmよりも大きく、又は0.9mmよりも大きく、又は1.0mmよりも大きく、又は1.1mmよりも大きく、又は1.2mmよりも大きく、又は1.3mmよりも大きく、又は1.4mmよりも大きく、又は1.5mmよりも大きく、又は1.6mmよりも大きく、又は1.7mmよりも大きく、又は1.8mmよりも大きく、又は1.9mmよりも大きく、又は2.0mmよりも大きく、又は2.1mmよりも大きく、又は2.2mmよりも大きく、又は2.3mmよりも大きく、又は2.4mmよりも大きく、又は2.5mmよりも大きく、又は2.6mmよりも大きく、又は2.7mmよりも大きく、又は2.8mmよりも大きく、又は2.9mmよりも大きく、又は3.0mmよりも大きく、又は3.1mmよりも大きく、又は3.2mmよりも大きく、又は3.3mmよりも大きく、又は3.4mmよりも大きく、又は3.5mmよりも大きく、又は3.6mmよりも大きく、又は3.7mmよりも大きく、又は3.8mmよりも大きく、又は3.9mmよりも大きく、又は4.0mmよりも大きく、最大約5.0mmであり、細孔径は、例えば2つの選択肢として0.7~2.0mm、又は1.5~2.5mmなどの、それぞれが上述した値から選択された細孔径の下限及び上限によって定められる潜在的な細孔径の範囲によって記述することもできる。
【0068】
細孔径は、編みパターン及び編んだ後の処理に依存する。様々な細孔径は、ランナを送り込む長さ(棒状のヤーンから製編機に供給されるヤーンの量)、編みパターン(すなわち、編目表記法)及びアニーリングを含む後処理作業を含む様々な縦編みパラメータによって形成することができる。上述したように、異なる縦編みパターンを使用するとともに編目の長さの変更も使用して異なる細孔径を得ることができる。最後に、アニーリングは、異なる細孔径及び生地の寸法的安定性を与えるのに役立つことができる。生地に適用する伸長又は伸縮のレベルに基づいて、異なる細孔径を形成することができる。しかしながら、上述したように、細孔径は、静止したメッシュ、すなわち特性評価の時点でいずれの方向にも引張又は伸長されておらず平衡状態にあるメッシュの特性に基づいて決定される。
【0069】
本開示のメッシュは、アパーチャと呼ぶこともできる細孔を含む。一実施形態では、これらのメッシュが、基本的に同じサイズの複数の細孔を含む。様々な実施形態では、この複数が、少なくとも100個、又は少なくとも200個、又は少なくとも300個、又は少なくとも400個、又は少なくとも500個の細孔を意味する。実際の細孔数は、メッシュの総表面積及び細孔の平均面積に依存する。
【0070】
任意に、細孔を列の形で配置することもできる。換言すれば、メッシュは、10~100個又はそれよりも多くの細孔を含む第1の細孔列と、やはり10~100個又はそれよりも多くの細孔を含む第2の細孔列とを有し、この場合、第1の細孔列と第2の細孔列とは互いに平行であり、すなわち第1の列と第2の列とは互いに交わらない。本開示のメッシュは、複数列の細孔を有することができ、この場合の平行な細孔列の数は、任意に少なくとも10、又は少なくとも15、又は少なくとも20、又は少なくとも25、又は少なくとも30、又は少なくとも35、又は少なくとも40、又は少なくとも45、又は少なくとも50とすることができ、また任意に、平行な列の数は、例えば10~50列などのように上述した値から選択することができる上限及び下限によって定められる潜在的な値の範囲に含まれるものとして記述することもできる。細孔列の数は、メッシュの領域サイズ及び細孔の領域サイズに部分的に依存する。
【0071】
本開示のメッシュは、異方性とすることができる。異方性メッシュは、メッシュのX方向で物理的特性を測定した時に、メッシュの垂直なY方向で物理的特性を測定した時に比べて異なる物理的特性を有する。例えば、メッシュは、Y方向よりもX方向に大きな伸びを示すことができる。より一般的に言えば、本開示は、一実施形態において、少なくとも1つの生体吸収性繊維と少なくとも1つの生体安定性繊維とを含むメッシュであって、生体吸収性繊維と生体安定性繊維とが組み合わさって細孔を含むメッシュパターンを形成し、メッシュがX方向と、垂直なY方向とを有し、生体吸収性繊維の分解後にメッシュのX方向の引張伸びが約100%増加するメッシュを提供する。任意に、メッシュのX方向の引張伸びは、生体吸収性繊維の分解後に少なくとも80%増加する。任意に、メッシュのY方向の引張伸びは、生体吸収性繊維の分解後に50%未満しか変化しない。任意に、メッシュのY方向の引張伸びは、生体吸収性繊維の分解後に25%未満しか変化しない。任意に、メッシュのY方向の引張伸びは、生体吸収性繊維の分解後に減少する。任意に、X方向及びY方向の少なくとも一方は、生体吸収性繊維の分解時に16N/cmにおける伸びを少なくとも50%変化させる。
【0072】
本開示の一実施形態では、生体吸収性繊維が、メッシュの最終形状の細孔径を変化又は分断させない。この実施形態は、1又は複数の吸収性繊維がメッシュの縁部周辺におけるメッシュの可動性を制限するが、これらの吸収性繊維が細孔の空所を通過しないようにメッシュを構成することによって達成することができる。
【0073】
一実施形態では、本開示に従って作製された生地が、生体吸収性成分の分解後に基本的に同じ細孔径を示すことができる。
図1に、2つの異なる繊維タイプによって形成された先行技術のメッシュ101を示す。一方の繊維タイプ102a及び102bを白い(網掛けしていない)繊維によって示し、他方の繊維タイプ103a及び103bを暗い(斑点で網掛けした)繊維によって示す。繊維103a及び103bの配列を見ると、これらは位置104及び105などの複数の位置で互いに交差することにより、位置104と105との間にこれらの位置を含めて細孔106を定めている。しかしながら、この細孔は、繊維102aの破線107で囲んだ部分が細孔106を横切ることによって部分的に塞がれている。従って、先行技術のメッシュ101では、繊維102aが不在の時には辛うじて細孔106を通り抜けることができた物体が、繊維102aに邪魔されて細孔106を通り抜けることができない。
図1では、事実上糸102aの部分107が細孔106を2つのほぼ等しいサイズのアパーチャに分割することにより、細孔106を2等分する部分107の存在によって細孔106のサイズが事実上半減されている。一般に、先行技術のメッシュでは、例えば102a/102bと103a/103bなどの2つの異なる繊維タイプが、一方の繊維タイプ(この場合は102a)が他方の繊維タイプ(この場合は103a/103b)によって形成される細孔のサイズに与える影響を能動的に制御することなく組み合わさっている。この状況において、例えば繊維102aなどの一方の繊維タイプが生体吸収性繊維である場合、その分解後には部分107が消滅してもはや細孔106を2等分しなくなるので、メッシュの生体吸収性がメッシュの細孔径の変化を引き起こす。
【0074】
また一方、
図2には、本開示の考えられるメッシュ201を示す。
図2には、2つの異なる繊維タイプによって形成されたメッシュ201を示す。一方の繊維タイプ202a、202b及び202cを白色(網掛けしていない)繊維によって示し、他方の繊維タイプ203a及び203bを暗い(斑点で網掛けした)繊維によって示す。繊維203a及び203bの配列を見ると、これらは位置204及び205などの複数の位置で互いに交差することにより、位置204と205との間にこれらの位置を含めて細孔206を定めている。
図1に示す状況とは対照的に、これらの繊維にはいずれも細孔206を横切る部分が存在しないので、この細孔206は、繊維202a、202b又は202cのいずれかによって部分的に塞がれていない。代わりに、繊維202aは、基本的に繊維203a及び203bの周囲に編み込まれている。従って、本開示のメッシュ201では、繊維202aが不在の時には辛うじて細孔206を通り抜けることができた物体が、繊維202aに邪魔されないので依然として容易に細孔206を通り抜ける。
図1に示す状況とは対照的に、糸202aに細孔206を通過している部分は存在せず、従って糸202aの存在が、糸203a及び203bによって形成された細孔206のサイズを減少させることはない。一般に、本開示のメッシュでは、例えば202a/202bと203a/203bなどの2つの異なる繊維タイプが、一方の繊維タイプ(この場合は202a)が他方の繊維タイプ(この場合は203a/203b)によって形成される細孔のサイズに与える影響を能動的に制御しながら組み合わさっている。この状況において、例えば繊維202aなどの一方の繊維タイプが生体吸収性繊維である場合、その分解後に繊維202aが細孔206のサイズに影響を与えることはないので、メッシュの部分的生体吸収性がメッシュの細孔径の変化を引き起こすことはほとんど又は全くない。吸収性ヤーン202aは、非吸収性ヤーン203a/203bによって形成された主要細孔網の周縁部に制限されて、主要細孔網を横断又は2等分することがない。従って、生体吸収性繊維が吸収されても、細孔径は実質的に変化しない。
【0075】
一実施形態では、メッシュの部分的分解時に細孔径が縮小又は阻害されないことが望ましい。細孔径が維持される利点は、この装置により、新たに沈着した組織の再形成及び成熟が生体吸収性足場材料と比べて早くなるように促す恒久的足場内への組織の内方成長が可能になる点である。生体吸収性足場材料は、他の特性の中でもとりわけ細孔径、細孔構造の時間的変化を示し、創傷部位における長期にわたる組織のさらなる沈着を必要とする。足場構造(すなわち、空隙率及び細孔径)を維持することにより、メッシュ構造の依存性及び維持に起因して、メッシュが周囲組織に一体化する速度が速くなることができる。
【0076】
図3Aに、本開示のメッシュの例示的な部分を示す。
図3Aでは、メッシュ300が、列304の形に構成された隣接する細孔301、302及び303を含む。メッシュ300は、列308の形に構成された隣接する細孔305、306及び307も含む。メッシュ300は、列312の形に構成された隣接する細孔309、310及び311も含む。注目すべき点は、列304、308及び312が互いに平行であり、すなわち1つの細孔列が別の細孔列を横切らない点である。
【0077】
図3Bには、細孔径をどのように決定できるかを示す。
図3Bに示すように、例えば細孔305などの細孔内に、細孔を取り囲んで画定する繊維上に周縁部が載らないような考えられる最大直径を有する円313を配置することができる。この円の直径を用いて、細孔のサイズを記述することができる。
図3Bでは、細孔305内に収まる最大の円が、1900μmの直径を有する。
図3Bのメッシュの細孔は、基本的に全て同じサイズを有しており、従って
図3Bのメッシュは、1900μmの平均細孔径を有していると考えることができる。この方法は、細孔自体が円形ではなく、正方形、菱形又は六角形などの非円形形状を取る場合であっても採用することができる。
【0078】
図3Cには、吸収性繊維314及び315(暗い破線)を、生体安定性繊維(白い糸)によって形成されたメッシュとどのように組み合わせることができるかを示す。
図3Cでは、吸収性繊維314及び315が細孔の周縁部に位置し、いずれの細孔も横断又は閉塞していない。やはり
図3Cに示すように、生体吸収性繊維314及び315は、隣接する1対の細孔列304及び308の上方及び下方にそれぞれ位置する。本開示は、一実施形態において、生体吸収性繊維が隣接する1対の細孔列の頂部及び底部に沿って延びる、
図3Cに示すようなメッシュを提供する。本開示は、別の実施形態において、生体吸収性繊維が細孔列の頂部又は底部に沿って延び、これらの細孔列の両方に沿って延びていないメッシュを提供する。別の実施形態では、生体吸収性繊維が、隣接する細孔列間に延びる。
【0079】
構造的支持を行う編み構成で吸収性成分を配置することにより、メッシュ/創傷の適合性の増加を達成することができる。従って、この成分の分解時には、メッシュが、より適合性が高く拘束が少ない編み構成に推移する。メッシュがほどけるのを抑える選択パターンによって、引裂伝播及び縫合糸引き抜きに対する抵抗を制御することができる。病的状態を防ぐには、メッシュ収縮の低減、張力を感じる細胞の能力が必要である。例えば、皮膚切開では、切開部を直接取り囲む組織が張力を「失う」ことによって身体に異常を伝える。従って、柔らかい組織上に堅い構造を配置すると、組織が「負荷」を記録しないようになり、異常のある感覚が維持されて、組織が張力を再構築するために収縮するようになる。
【0080】
本開示の一態様では、吸収性材料が、メッシュの一方向における大幅な強度損失を受けて大幅な伸長の増加を実現することによって最終的な構造を異方性にするように配置される。腹壁を含む組織の検査では、この組織が高度に異方性を有し、すなわち特定の方向における伸縮性が高くなるように組織が配向されていることが示される。本開示は、生体吸収性成分の生分解後にウェール方向の伸長を大きくすることによってこの機能を模倣する。
【0081】
さらなる実施形態では、本開示に従って作製されたメッシュ又は生地に印を付けることができる。例えば、一実施形態では、選択的吸収性メッシュ装置の部分的分解後に適合性が増した方向を示すために、吸収性鎖編みの一部を鮮やかな色に染め、又は別様にユーザに見やすくすることができる。
【0082】
さらなる実施形態では、メッシュ全体、メッシュの一部、又は選択したメッシュ内の繊維に薬剤を含む被覆を施して、活性薬剤を局所的に送達するための補給所(depot)を形成することができる。例えば、抗菌剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、麻酔剤、組織成長促進剤、又はこれらの組み合わせから、少なくとも1つの生体活性剤を選択することができる。
【0083】
本明細書の開示から生地を生産した場合には、外科用メッシュ、再建用メッシュ、ヘルニアメッシュ、薬物送達用生地、支持足場、補強足場として使用することができる。例えば、この生地は、(1)顎顔面組織を修復又は置換するための再生医学用足場、(2)軟組織の修復又は再生医学のための外科用メッシュ、又は(3)編み構成を含むヘルニア修復用メッシュとすることができる。
【0084】
本開示は、ボール破裂試験構成において、生理学的負荷(16N/cm)における10~14%の初期伸長などの、自然組織に比べて初期に相対的に高い弾性/低い弾性を示すことができる生地を作製することもできる。この生地は、生体内への配置後に、初期の生地に比べて相対的に伸張性の高い材料に移行して自然組織と同様の特性を示す。ほんの一例として、また理解を目的として、引張(ウェール)=34.6%(初期)及び71.3%(分解後)、及び/又は引張(コース)=33.6%(初期)及び39.5%(分解後)という量を含む範囲は、本開示の範囲内と見なされる。自然な腹壁組織を見てみると、強度及び伸長に非常に方向性がある(すなわち、他方向よりも一方向に伸びやすい)。本開示のメッシュは、この特性を達成する。従って、医師は、より伸長させたいと望む方向にメッシュを配向することができる。
【0085】
本開示の生地は、生体吸収性成分の分解後に比較的高い適合性及び伸長性を有することができる。分解は、使用する(単複の)生体吸収性繊維と生地の構造とに依存して2~16週で生じることができる。分解は、移植片の縁部に弾性率の不一致が生じないことによって埋め込み部位におけるヘルニア再発又は合併症の可能性が低下するように操作することができる。生体吸収プロファイルは、2週未満、2~6週、6~12週、12~16週、12週超及び16週超の範囲に及ぶことができる。これらのプロファイルは、設計するメッシュのタイプだけでなく、上述したようなヤーンの投入によって生成することもできる。例えば、高グリコリド吸収性成分は、2~4週の間に強度損失を示すことができる。
他の実施形態では、ポリジオキサノンを用いて、6~11週の間に吸収性成分の強度損失が生じる製品を生産することもできる。治癒が早い若年個体には、移行時間が早い方が適切となり得る。治癒能力の低い高齢者又は太り過ぎの患者には、長い移行時間が必要となり得る。
【0086】
本技術は、吸収性及び/又は非吸収性ポリマー系を使用する様々な需要のために使用することができる。このような需要としては、以下に限定するわけではないが、数ある中でもとりわけ、ヘルニア修復用メッシュ、移植片支持足場、組織置換装置、組織増強装置、組織足場、薬剤送達などを挙げることができる。
【0087】
患者の生涯にわたって構造的に剛性である外科用メッシュ構造は理想的でなく、現在メッシュヘルニア根治手術で見られる長期合併症の多くの原因である可能性がある。その場で特性を調整して適合性の高い長期構造とその後の修復とをもたらす独自の選択的吸収性メッシュ設計の使用が好ましい。また、不十分な組織統合は多くの臨床的問題と関連があり、従って高多孔率及び素早い分解プロファイルの表面被覆を開発して、開発されたメッシュ構造の表面生体活性を高めることもできる。
【0088】
図4は、組織402上にメッシュ401が固定されたメッシュヘルニア根治手術の状況を示す図である。組織402は、例えば腹壁組織とすることができ、メッシュ401は、例えば縫合糸又はタックを用いて組織に固定することができる。ヒトの腹壁試料の機械的試験では、16N/cmの生理学的力における約18~32%の伸び(弾性と呼ばれることもある)と、約120Nの最大破裂強度とが明らかになっている。対照的に、典型的な先行技術の外科用メッシュは、16N/cmの生理学的力における伸びが16%未満であり、最大破裂強度が400Nを上回る。この状況では、例えば下にある組織402よりもメッシュ401の弾性の方が低いことなどの機械的特性の相違に起因して、メッシュ401の縁部403が高い剪断力及び張力を受ける。対照的に、メッシュ401によって包まれた、すなわちメッシュ401によって覆われた組織404は応力遮蔽されている。先行技術のメッシュ/組織複合体401の低伸縮能力は、高弾性の腹壁組織402とは対照的である。この結果、メッシュ/組織複合体401の縁部403に高剪断力が生じる。先行技術のヘルニアメッシュの機械的特性は、
図4に示すように修復中の自然な腹壁の機械的特性と大きく異なる。
【0089】
さらに、これらのメッシュ構造の内部及び周囲におけるコラーゲン沈着も、必然的にこれらの構造の適合性をさらに低下させる。ある研究では、外植したポリプロピレンメッシュの機械的試験が、新品の装置に比べて30倍の剛性を示した。この長期にわたる適合性の欠如は、患者の可動性を低下させて埋め込み部位の不快感を高めるとともに、患者にメッシュ補綴材の感覚を引き起こす。本開示のメッシュは、本明細書で説明したように、例えば、非吸収性メッシュの内部及びその周囲に吸収性繊維を配置することによって伸縮能力が抑制された軽量の非吸収性メッシュを提供することによってこれらの問題に対処する。
【0090】
本開示によるメッシュの任意の利点は、最終的なメッシュ/組織複合体の適合性が高まるように高適合性状態に移行し、柔軟な腹壁と比較的柔軟でないメッシュ/組織複合体との間に、高応力と、ヘルニア用途では最終的に再発、異物感及びその他の関連する合併症とをもたらす張力の高い移行部を生じない点である。生理学的に妥当な範囲内の時間的特性及び機能を提供する材料を生成するために、安定した「恒久的」な繊維と、一時的なメッシュ安定性を提供する吸収性繊維との組み合わせをメッシュ生地に編み込む。一時的なメッシュ安定性は、例えば非吸収性繊維によって形成された成分のメッシュの方が元々の部分的吸収性メッシュよりも高い伸長性を有するという点で観察される。埋め込み後には、吸収性繊維がその機械的完全性を失うことにより、メッシュが高伸長性/高適合性材料に移行する。
【0091】
本開示のメッシュでは、非吸収性繊維によって形成されるメッシュの伸長性を吸収性繊維が制限する。従って、部分的吸収性メッシュは、非吸収性成分のメッシュよりも伸長性が低く、或いは換言すれば、非吸収性メッシュ成分の方が部分的吸収性メッシュよりも伸長性が高い。
【0092】
以下は、本開示の例示的な実施形態である。
1)部分的吸収性メッシュであって、少なくとも1つの生体吸収性繊維と少なくとも1つの生体安定性繊維とを含み、生体吸収性繊維と生体安定性繊維とが組み合わさって、X方向と垂直なY方向とを有する部分的吸収性メッシュを形成し、部分的吸収性メッシュが細孔を含み、細孔のうちの複数の細孔が平均直径を有しているものとして特徴付けられ、細孔の平均直径の変化が、生体吸収性繊維の除去後に25%未満であるメッシュ。
2)生体吸収性繊維が、生体安定性繊維と共に編み込まれる、実施形態1のメッシュ。
3)生体吸収性繊維が、細孔の周縁部を補強する、実施形態1~2のメッシュ。
4)生体安定性繊維が生体安定性メッシュを形成し、生体安定性メッシュが、部分的吸収性メッシュの成分である、実施形態1~3のメッシュ。
5)生体安定性繊維が、35~70g/m2の重量を有する生体安定性メッシュを形成し、この生体安定性メッシュが、部分的吸収性メッシュの成分である、実施形態1~3のメッシュ。
6)生体吸収性繊維が、生体安定性繊維によって形成された生体安定性メッシュに編み込まれ、生体吸収性繊維が、鎖編みによって編み込まれる、実施形態1~5のメッシュ。
7)異方性を有する、実施形態1~6のメッシュ。
8)生体吸収性繊維が、部分的吸収性メッシュの生体安定性メッシュ成分の異方性と比べて部分的吸収性メッシュにおける増大した異方性度合いを生じる、実施形態1~7のメッシュ。
9)16N/cmでの測定時にX方向の伸びよりもY方向の伸びの方が大きい、実施形態1~8のメッシュ。
10)16N/cmでの測定時におけるX方向の伸びが、生体吸収性繊維の除去後に少なくとも50%増加する、実施形態1~9のメッシュ。
11)生体吸収性繊維が、メッシュのX方向に延びる、実施形態1~9のメッシュ。
12)生体吸収性繊維が、メッシュのX方向に延びてメッシュのY方向に延びない、実施形態1~11のメッシュ。
13)有色の生体吸収性繊維と無色の生体吸収性繊維とを含み、有色の生体吸収性繊維が、メッシュのX方向に延びてメッシュのY方向に延びない、実施形態1~12のメッシュ。
14)生体安定性繊維が、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンから成る群から選択されたポリマーから調製される、実施形態1~13のメッシュ。
15)生体吸収性繊維が、部分的吸収性メッシュをpH7.4及び37℃のリン酸塩緩衝液に12週にわたって浸漬した後に完全に溶解する、実施形態1~14のメッシュ。
16)殺菌されている、実施形態1~15のメッシュ。
17)ホイルパウチに詰められる、実施形態1~16のメッシュ。
【0093】
以下に示す実施例は、本発明をさらに説明して例示するものである。本発明の範囲は、決して以下の実施例の範囲によって限定されるものではないと理解されたい。メッシュ及び/又はその成分の特性評価では、以下の試験プロトコルのうちの1つ又は2つ以上を使用することができる。ASTM D3776-09a 生地の単位面積質量(重量)のための標準試験法による面積重量、ASTM D6797-07 生地の定速伸長(CRE)ボール破裂試験の破裂強度のための標準試験法による破裂荷重、ASTM D5034-09 テキスタイル生地の破壊強度及び破断伸長のための標準試験法(グラブ試験)による引張及び伸長、ASTM D5587-14 台形法による生地の引裂強度のための標準試験法による引裂抵抗。
【0094】
(実施例)
吸収性モノフィラメント及び非吸収性モノフィラメントからメッシュを調製した。吸収性モノフィラメントは、開始剤としてのトリエタノールアミンと、モノマーとしてのグリコリド/トリメチレンカーボネート/l-ラクチドとを重量比86/9/5で使用して米国特許第7,129,319号に記載されているような2ステップ工程で調製した吸収性半結晶性3軸性ブロックコポリエステルから形成した。このポリマーは、Poly-Med社から、40~100μmの直径と、90~120KSIの破壊強度と、約10~20日の強度保持率とを有するGlycoprene(登録商標)8609という製品として配向モノフィラメントの形態で市販されている。このモノフィラメントのいくつかのさらなる特性としては、(マルチフィラメントではなくモノフィラメントを示す)1の繊維数、117g/9000mのデニール値、6.8gf/denir(60.2cN/tex;ASTM D-3217-01aを参照)の破断強度、21%の最大引張、及び染料の色を有するモノフィラメント形態への押し出し前にポリマーに染料が加えられていない限り半透明/オフホワイトである色が挙げられる。本実施例では、D&Cバイオレット#2で着色したモノフィラメントを用いてメッシュを調製した。
【0095】
生体安定性モノフィラメントは、半結晶性ポリプロピレンホモポリマーから調製した。
このポリマー及び/又はそのモノフィラメント形態は、例えばMountainside Medical Equipment社(ニューヨーク州マーシー、米国)、SMB社(インド国)、及びFitco社(オステンド、ベルギー国)などの多くの供給元から市販されている。本実施例で使用したポリプロピレンモノフィラメントの特徴は、(マルチフィラメントではなくモノフィラメントを示す)1の繊維数、130g/9000mのデニール値、6.1gf/denir(54.0cN/tex)の破断強度、21%の最大引張、及び透明から乳白色の色であった。
【0096】
吸収性モノフィラメントと非吸収性モノフィラメントとを編み合わせることによってメッシュを調製した。18ゲージのラッシェル縦編み機を1イン1アウトの糸通しで使用して1ステップ工程で製編を行った。編みパターンについては、ポリプロピレンモノフィラメント繊維は2バーサンドフライパターンとし、Glycoprene(登録商標)8609モノフィラメント繊維は1バー鎖編みとした。4番目の鎖編み毎にGlycoprene(登録商標)8609の染色(パープル)繊維を用いて対照的な縞模様を与えた。この製品メッシュを熱処理してメッシュ構造を安定させた。その後、メッシュをエチレンオキシドに曝すことによって滅菌し、乾燥させ、最後に気密ホイルパウチに詰めた。
【0097】
結果として得られたメッシュの特性を表に示しており、この表の初期特性は、気密ホイルパウチから取り出したメッシュの特性を意味し、末期特性は、pH7.4のリン酸塩緩衝液中で37℃で12週間にわたって体外処理した後のメッシュの特性を意味する。
【0098】
初期メッシュの画像を
図5Aに示し、末期メッシュの画像を
図5Bに示す。注目すべき点として、初期メッシュの画像では、隣接する2列のアパーチャ毎に、その上下両方に基本的に水平方向に延びる追加の繊維が示されている。この追加繊維は、体外処理時に溶けて無くなったため、末期メッシュの画像では見られない。また、初期状態のメッシュと末期状態のメッシュとの間でアパーチャのサイズが基本的に変化していない点にも注目すべきである。
【表1】
*ASTM D5587-14の基準によれば「引裂可能」とは見なされない。
【0099】
表内のデータから分かるように、本開示によって提供する部分的吸収性メッシュ(「初期」メッシュ)では、生体吸収性繊維が、部分的吸収性メッシュの生体安定性メッシュ成分(「末期」メッシュ)と比べて部分的吸収性メッシュの異方性度合いの増加を促す。生体吸収性繊維を含まない末期メッシュは、16N/cmにおいてX方向(機械方向)及びY方向(機械横方向)の各々でほぼ同じ引張伸びを有し、2つの伸び値の平均は、(43%+38%)/2=40.5%であり、この平均からの偏差は、43%-40.5%=2.5%であり、2.5%/40.5%×100=6.2%である。従って、X方向又はY方向のいずれかにおける伸びは、末期メッシュの平均引張から6.2%である。一方で、初期メッシュは、平均引張が(22%+34%)/2=28%であり、この平均からの偏差は、34%-28%=6.0%であり、6.0%/28%×100=21.4%である。従って、末期の生体安定メッシュは、伸びに関する異方性度合いがわずか(平均引張と比較したX方向とY方向との間の変動が6.2%)であるが、初期の部分的吸収性メッシュは、伸びに関する異方性度合いがはるかに大きい(平均引張と比較したX方向とY方向との間の変動が21.4%)。別の見方をすると、末期メッシュは、X方向の伸びの方がY方向の伸びよりも5%(43%-38%)大きく、初期メッシュは、Y方向の伸びの方がX方向の伸びよりも12%(34%-22%)大きい。従って、本開示によって提供する部分的吸収性メッシュ(例えば、「初期」メッシュ)では、生体吸収性繊維が、部分的吸収性メッシュの生体安定性メッシュ成分(例えば、「末期」メッシュ)と比べて部分的吸収性メッシュの異方性度合いの増加を誘発する。本開示は、一実施形態において、16N/cmでの測定時にX方向の伸びよりもY方向の伸びの方が大きなメッシュを提供し、別の実施形態において、16N/cmでの測定時に、生体吸収性繊維の除去後にX方向の伸びが少なくとも50%増加するメッシュを提供する(実施例では、X方向の伸びが(43%-22%)/22%×100=95%、すなわち約100%増加している)。
【0100】
特定の例示的な実施形態及びその方法に関して本主題を詳細に説明したが、当業者であれば、上述の内容を理解した時点でこのような実施形態の修正形態、変形形態及び同等形態を容易に構築することができると理解されるであろう。従って、本開示の範囲は、限定ではなく一例としてのものであり、当業者には本明細書で開示した教示を用いて容易に明らかになるように、本主題の開示は、このような本発明の修正、変形及び/又は追加の包含を除外するものではない。
【0101】
本明細書で参照する、及び/又は出願データシートにリストする全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許文献は、その全体が引用により本明細書に組み入れられる。このような文献は、例えば刊行物に記載されている、本発明に関連して使用できることもある材料及び方法の記載及び開示を行う目的で引用により組み入れることができる。上記で及び本文全体を通じて言及した刊行物は、本出願の出願日前におけるこれらの開示を示す目的で提供するものにすぎない。本明細書の全ての記載は、あらゆる引用文献に先行する権利が先行発明を理由として本発明者らに与えられていないことを認めるものであると解釈すべきではない。
【0102】
一般に、以下の特許請求の範囲において使用する用語は、本明細書及び特許請求の範囲に開示した特定の実施形態に特許請求の範囲を限定するものとして解釈すべきではなく、全ての考えられる実施形態、並びにこのような特許請求の範囲が権利を有する同等物の全ての範囲を含むものとして解釈すべきである。従って、特許請求の範囲は、本開示によって限定されるものではない。
【0103】
以下に本発明の実施態様を記載する。
(実施態様1)メッシュであって、
少なくとも1つの生体吸収性繊維と少なくとも1つの徐々に生体吸収される繊維とを含み、
前記生体吸収性繊維と前記徐々に生体吸収される繊維とが組み合わせられて、互いに垂直なX方向及びY方向を有する吸収性メッシュを形成し、
前記吸収性メッシュは前記徐々に生体吸収される繊維によって形成された細孔を含み、前記生体吸収性繊維が前記細孔の周囲に編み込まれ前記細孔を補強し、複数の細孔が平均直径を有しているものとして特徴付けられ、前記細孔の前記平均直径の変化が、前記生体吸収性繊維の除去後に5%未満である、メッシュ。
(実施態様2)前記生体吸収性繊維は、前記徐々に生体吸収される繊維と共に編み込まれている、実施態様1に記載のメッシュ。
(実施態様3)前記生体吸収性繊維は、前記細孔の周縁部を補強する、実施態様1又は2に記載のメッシュ。
(実施態様4)前記徐々に生体吸収される繊維は、前記メッシュの成分である徐々に生体吸収されるメッシュを形成している、実施態様1~3のいずれか1項に記載のメッシュ。
(実施態様5)前記徐々に生体吸収される繊維は、35~70g/m2の重量を有する徐々に生体吸収されるメッシュを形成し、該徐々に生体吸収されるメッシュは、前記メッシュの成分である、実施態様1~4のいずれか1項に記載のメッシュ。
(実施態様6)前記生体吸収性繊維は、前記徐々に生体吸収される繊維によって形成された徐々に生体吸収されるメッシュに編み込まれており、前記生体吸収性繊維は、鎖編みによって編み込まれている、実施態様1~5のいずれか1項に記載のメッシュ。
(実施態様7)前記メッシュは異方性を有する、実施態様1~6のいずれか1項に記載のメッシュ。
(実施態様8)前記生体吸収性繊維は、前記メッシュの徐々に生体吸収されるメッシュ成分の異方性と比べて、前記吸収性メッシュにおいて増加した異方性度合いを生じる、実施態様1~7のいずれか1項に記載のメッシュ。
(実施態様9)16N/cmで測定した場合に、前記X方向の伸びよりも前記Y方向の伸びの方が大きい、実施態様1~8のいずれか1項に記載のメッシュ。
(実施態様10)16N/cmで測定した場合における前記X方向の伸びが、前記生体吸収性繊維の除去後に少なくとも50%増加する、実施態様1~9のいずれか1項に記載のメッシュ。
(実施態様11)前記生体吸収性繊維は、前記メッシュの前記X方向に延びている、実施態様1~10のいずれか1項に記載のメッシュ。
(実施態様12)前記生体吸収性繊維は、前記メッシュの前記X方向に延びており、前記メッシュの前記Y方向に延びていない、実施態様1~11のいずれか1項に記載のメッシュ。
(実施態様13)有色の生体吸収性繊維と無色の生体吸収性繊維とを含み、
前記有色の生体吸収性繊維は、前記メッシュの前記X方向に延びており、前記メッシュの前記Y方向に延びていない、実施態様1~12のいずれか1項に記載のメッシュ。
(実施態様14)前記徐々に生体吸収される繊維は、ポリ乳酸(PLLA)、l-ラクチドコポリマー、l-ラクチドトリメチレンカーボネートコポリマー(88%のラクチド/12%のトリメチレンカーボネート)、又はポリ(4-ヒドロキシブチレート)のポリマーから調製されている、実施態様1~13のいずれか1項に記載のメッシュ。
(実施態様15)前記生体吸収性繊維は、前記メッシュをpH7.4及び37℃のリン酸塩緩衝液に12週にわたって浸漬した後に完全に溶解する、実施態様1~14のいずれか1項に記載のメッシュ。
(実施態様16)前記徐々に生体吸収される繊維は、宿主内への配置後に、少なくとも6ヶ月にわたって物理的特性の少なくとも90%を維持する、実施態様1~15のいずれか1項に記載のメッシュ。
【符号の説明】
【0104】
300 メッシュ
308 列
314 吸収性繊維
315 吸収性繊維