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特開2023-21332自転車の手動制御装置、手動制御装置を備える自転車電子システム、自転車電子システムのコンフィギュレーション方法、および自転車のディレイラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021332
(43)【公開日】2023-02-10
(54)【発明の名称】自転車の手動制御装置、手動制御装置を備える自転車電子システム、自転車電子システムのコンフィギュレーション方法、および自転車のディレイラ
(51)【国際特許分類】
   B62M 25/08 20060101AFI20230202BHJP
   B62M 9/132 20100101ALI20230202BHJP
   B62M 25/04 20060101ALI20230202BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20230202BHJP
【FI】
B62M25/08
B62M9/132
B62M25/04 Z
B62J45/00
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022199915
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2018088220の分割
【原出願日】2018-05-01
(31)【優先権主張番号】102017000048414
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】592072182
【氏名又は名称】カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャコメッティ・ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】マイストレッロ・ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ボルトロッツォ・ジャンルカ
(57)【要約】
【課題】それ自体の種類又はモデルを認識させることを可能にする、自転車の手動制御装置を提供する。
【解決手段】自転車の手動制御装置10,22,24は、少なくとも1つの電気・電子的な指令を少なくとも1つの自転車装備品1004に発行するものであり、支持体12と、可動式に支持体12によって支持された少なくとも1つの手動作動部材14とを備える。手動制御装置10,22,24は、さらに、手動制御装置モデル識別信号OUTの発生器52を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電気・電子的な指令を少なくとも1つの自転車装備品(1004)に発行する、自転車の手動制御装置(10,22,24)であって、
支持体(12)と、
可動式に前記支持体(12)によって支持された少なくとも1つの手動作動部材(14)と、
を備える、自転車の手動制御装置(10,22,24)において、さらに、
手動制御装置モデル識別信号(OUT)の発生器(52)、
を備えることを特徴とする、自転車の手動制御装置(10,22,24)。
【請求項2】
請求項1に記載の自転車の手動制御装置(10,22,24)において、
モデル識別信号(OUT)の前記発生器(52)が、マイクロプロセッサ、より好ましくは一回プログラム可能なマイクロプロセッサである、自転車の手動制御装置(10,22,24)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自転車の手動制御装置(10,22,24)において、
当該手動制御装置(10,22,24)が、前記モデル識別信号(OUT)と前記少なくとも1つの電気・電子的な指令とを共通の出力部(A)に、相異なる時間に出力するように構成されている、自転車の手動制御装置(10,22,24)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の自転車の手動制御装置(10,22,24)において、
当該手動制御装置(10,22,24)が、モデル呼掛信号(64)を受信するように且つ当該モデル呼掛信号(64)に応答して前記モデル識別信号(OUT)を出力するように構成されている、自転車の手動制御装置(10,22,24)。
【請求項5】
請求項4に記載の自転車の手動制御装置(10,22,24)において、さらに、
前記少なくとも1つの手動作動部材(14)の手動作動を検出し、当該手動作動に応答して前記少なくとも1つの電気・電子的な指令を生成するように構成された少なくとも1つの作動検出器(28,30,32)、
を備え、前記モデル呼掛信号(64)が、当該手動制御装置(10,22,24)への供給電圧(PWout,PW)、特に、前記少なくとも1つの作動検出器(28,30,32)の供給電圧(PWout,PW)を変化させる、自転車の手動制御装置(10,22,24)。
【請求項6】
請求項5に記載の自転車の手動制御装置(10,22,24)において、
前記少なくとも1つの作動検出器(28,30,32)のそれぞれが、グランドに接地(40)されたライン(34,36,38)をそれぞれ遮断するノルマルオープンスイッチであり、当該ライン(34,36,38)が前記供給電圧(PWout,PW)である、自転車の手動制御装置(10,22,24)。
【請求項7】
請求項6に記載の自転車の手動制御装置(10,22,24)において、
前記手動制御装置モデル識別信号(OUT)の前記発生器(52)を実現するマイクロプロセッサが、グランド(40)と、前記ライン(34,36,38)のうちの第1のライン(34)との間に、前記少なくとも1つの作動検出器(28)のうちの第1の作動検出器と並列に、前記手動制御装置モデル識別信号(OUT)を当該第1のライン(34)に出力する出力部(56)を有するように接続されている、自転車の手動制御装置(10,22,24)。
【請求項8】
請求項6または7に記載の自転車の手動制御装置(10,22,24)において、
前記モデル識別信号(OUT)の前記発生器(52)を実現する前記マイクロプロセッサが前記呼掛信号(64)を受信する駆動入力部(54)を有し、好ましくは、前記マイクロプロセッサ(52)の当該駆動入力部(54)が、前記ライン(34,36,38)のうちの第2のライン(36)に、前記少なくとも1つの作動検出器(30)のうちの第2の作動検出器(30)と並列に、前記呼掛信号(64)を当該第2のライン(36)で受信するように、特に、前記供給電圧(PWout,PW)の変化として受信するように接続されている、自転車の手動制御装置(10,22,24)。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の自転車の手動制御装置(10,22,24)において、
少なくとも1つの前記ライン(34,36,38)が、当該手動制御装置(10,22,24)の外部とのインターフェースとして機能するコネクタ(42)の各端子(A,B,C)に接続されている、自転車の手動制御装置(10,22,24)。
【請求項10】
請求項3、または請求項3に従属する請求項4から9のいずれか一項に記載の自転車の手動制御装置(10,22,24)において、
前記モデル識別信号(OUT)が、通常使用条件下における前記少なくとも1つの電気・電子的な指令がないときの前記共通の出力部(A)の値と前記少なくとも1つの電気・電子的な指令があるときの前記共通の出力部(A)の値とに対応する最大2つの値(LOW,HIGH)を、予め定められた識別パターン(ID,ID2)に従って経時的に取る、自転車の手動制御装置(10,22,24)。
【請求項11】
請求項10に記載の自転車の手動制御装置(10,22,24)において、
前記予め定められた識別パターン(ID,ID2)が、当該手動制御装置(10,22,24)のモデルを、長さが1以上の符号、好ましくは長さが4の符号によって符号化するものであり、
好ましくは、前記モデル識別信号(OUT)の前記発生器(52)を実現するマイクロプロセッサが、当該マイクロプロセッサの駆動入力部(54)の電圧降下(64)であって、前記呼掛信号(64)を実現する電圧降下(64)に応答して、前記信号(OUT)を前記予め定められた識別パターン(ID,ID2)に従った電圧で出力するように構成されている、自転車の手動制御装置(10,22,24)。
【請求項12】
自転車の車載電子システム(1002)であって、
請求項1から11のいずれか一項に記載の手動制御装置(10,22,24)の少なくとも1つと、
少なくとも1つの自転車装備品(1004)と、
前記装備品(1004)の一部であるか又は当該装備品(1004)とは別体であるコントローラ(48)と、
を備え、前記コントローラ(48)が、前記モデル識別信号(OUT)を受信し、前記装備品(1004)の少なくとも1つの動作パラメータを、当該モデル識別信号(OUT)によって識別されたモデルに基づいて選択するように構成されている、自転車の車載電子システム(1002)。
【請求項13】
請求項12に記載の自転車の車載電子システム(1002)において、
前記コントローラ(48)が呼掛信号(64)を出力するように構成されており、
モデル識別信号(OUT)の前記発生器(52)が、前記呼掛信号(64)を受信すると、当該モデル識別信号(OUT)を出力するように構成されており、
好ましくは、前記少なくとも1つの装備品(1004)がディレイラ(1006,1008)、より好ましくはフロントディレイラ(1006)であり、かつ、前記少なくとも
1つの動作パラメータが当該ディレイラ(1006,1008)の動作パラメータのセットである、自転車の車載電子システム(1002)。
【請求項14】
コントローラ(48)を備える、自転車の電気機械式のディレイラ(1006,1008)であって、前記コントローラ(48)が、
-手動制御装置(10,22,24)に呼び掛ける手順(202,204,206)、
-これに応答して、前記手動制御装置(10,22,24)からモデル識別信号(OUT)を受信する手順、および
-前記モデル識別信号(OUT)によって識別されたモデルに基づいて、当該ディレイラ(1006,1008)の動作パラメータのセットを選択する手順(210,212,214,216)、
を実行するように構成されている、自転車の電気機械式のディレイラ(1006,1008)。
【請求項15】
自転車電子システム(1002)のコンフィギュレーション方法(200)であって、
-手動制御装置(10,22,24,26)に呼び掛ける過程(202,204,206)と、
-これに応答して、前記手動制御装置(10,22,24,26)から所定のパターンを有するモデル識別信号(OUT)が受信されると、当該手動制御装置(10,22,24,26)を自己識別手動制御装置(10,22,24)とみなす過程と、
-そうでない場合には、前記手動制御装置(10,22,24,26)を非自己識別手動制御装置(10,26)とみなす過程と、
-前記自転車電子システム(1002)の少なくとも1つの構成要素(1004)を、前記手動制御装置(10,22,24,26)が自己識別手動制御装置(10,22,24)と非自己識別手動制御装置(10,26)のいずれとみなされているかに応じて異なる様式でコンフィギュレーションする過程(208,210,212,214,216)と、
を備える、コンフィギュレーション方法(200)。
【請求項16】
自転車の電子式のギアシフト装置(1002)のコンフィギュレーション方法(200)であって、
-手動制御装置(10,22,24)に呼び掛ける過程(202,204,206)と、
-これに応答して、前記手動制御装置(10,22,24)からモデル識別信号(OUT)を受信する過程と、
-前記手動制御装置によって制御されるディレイラ(1006,1008)の動作パラメータのセットを、前記モデル識別信号(OUT)によって識別されたモデルに基づいて選択する過程(210,212,214,216)と、
を備える、コンフィギュレーション方法(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、自転車の手動制御装置、当該手動制御装置を備える自転車電子システム(自転車の電子システム)、および当該自転車電子システムの幾つかのコンフィギュレーション方法(設定方法)に関する。本発明は、さらに、自転車のディレイラに関する。
【0002】
本発明は、詳細には、少なくとも1つの電気・電子的な指令を自転車の少なくとも1つの装備品(特に、電気機械式のディレイラ、サイクルコンピュータなど)に発行する、自転車の手動制御装置に関する。
【0003】
本明細書及び特許請求の範囲において「少なくとも1つの電気・電子的な指令を発行する、自転車の手動制御装置」という表現は、当該手動制御装置が少なくとも1つの機械的な指令を発行できることを排除する限定的な意味で解釈されるべきではない。よって、本明細書及び特許請求の範囲において、「少なくとも1つの電気・電子的な指令を発行する、自転車の手動制御装置」、略称して「手動制御装置」、さらには単に「制御装置」という表現は、少なくとも1つの電気・電子的な指令を、場合によってはその上に機械的な指令を、自転車の少なくとも1つの電気・電子的および/または機械的および/または空気圧式の装備品(例えば、ディレイラ、ブレーキ、サイクルコンピュータ等)に発行できる手動制御装置を指すものとする。
【背景技術】
【0004】
自転車の既知の制御装置は、レバー型、すなわち、枢軸(ピボット)又は支点を中心とした回動運動で作動される剛体のタイプの、あるいは、ボタン型、すなわち、直線運動で作動されるタイプの、1本の指又は複数本の指で作動されることが可能な少なくとも1つの手動作動部材を備える。典型的に上記手動作動部材は、自転車に典型的にはハンドルバーのグリップ部で固定されるのに適合したボディによって支持されている。
【0005】
自転車における手動制御装置の数、種類、形状及び位置は、要件に従って(特に、自転車に設けられている制御対象の装備品の数及び種類に基づいて)変化し得る。
【0006】
具体的に述べると、自転車は典型的に、後輪のリアブレーキおよび/または前輪のフロントブレーキを装備している。これらのリアブレーキやフロントブレーキは、適切な制御装置により制御される。ブレーキの上記手動作動部材は典型的に、ブレーキレバーを含む。当該ブレーキレバーは、当該ブレーキレバーがハンドルバー側に引き寄せられると通常はシースが付いている非伸長性ケーブル(ボーデンケーブル)の牽引によってブレーキを作動させるように、支持体にヒンジ連結されている。
【0007】
自転車の伝動システムは、さらに、ペダルクランク軸に連結した歯車と後輪のハブに連結した歯車との間に延びるチェーンを具備する。ペダルクランク軸と後輪のハブの少なくとも一方に複数の歯車が存在し、且つそのため上記伝動システムにギアシフト装置が設けられているときには、フロントディレイラおよび/またはリアディレイラが配設される。
【0008】
手動作動部材が、ギヤ比を上げる指令及びギヤ比を下げる指令を発行するように設けられることができ、各々の指令を実行するようにフロントおよび/またはリアディレイラを適宜駆動する制御電子部が設けられている。
【0009】
あるいは、各ディレイラの一方向への変位指令及び反対方向への変位指令を発行するように1つ以上の手動作動部材が設けられることができる。
【0010】
典型的な構成では、通常、フロントディレイラの手動制御装置がハンドルバーにおいて当該ハンドルバーの前輪のブレーキを制御するブレーキレバーが設置される側のハンドグリップ付近に、リアディレイラの手動制御装置がハンドルバーにおいて当該ハンドルバーの後輪のブレーキを制御するブレーキレバーが設置される側のハンドグリップ付近に、運転者が操作し易いように装着される(より単純なギアシフト装置の場合には、これら2つのうちの一方の手動制御装置のみが装着される)。具体的に述べると、このような統合型の手動制御装置は、ブレーキレバーと、第1のギアシフトレバーと、第2のギアシフトレバーとを備えている。
【0011】
また、スピードレース用の特殊なハンドルバーであって、胴体を前方に大きく傾けた空気力学的に効率の良い位置を運転者が維持することを可能にするように著しく前方に向いた2つ又は4つのバー又は端部を有するハンドルバーが知られている。このようなハンドルバーの場合には、ブレーキ用とギアシフト装置用との双方に特殊な制御装置が使用される。これらの装置は、運転者が自身の位置を変える必要なく当該装置を容易に作動させることができるようにハンドルバーの端部に実際に収容されることから、一般的にバーエンドタイプと称される。
【0012】
また、単一のレバーが2つ又は3つの軸心を中心として回動することによって2つ又は3つの機能(典型的には、ブレーキの制御レバー機能と、アップシフト動作の制御レバー機能および/またはダウンシフト動作の制御レバー機能との、2つ又は3つの機能)を実行することが可能な手動制御装置が知られており、さらには、単一のレバーが相対する方向におよび/または相異なる角度で回動することによって相異なる指令を入力することが可能な手動制御装置、かつ/あるいは、相異なる期間での又は相異なるモードでの手動作動部材の作動が相異なる指令と対応付けられている手動制御装置が知られている。
【0013】
よって、同じ手動制御装置における手動作動部材の数、種類、形状及び位置も、要件および/または機能に基づいて変化し得る。
【0014】
本発明は、前述したどの種類の手動制御装置にも、原則的には少なくとも1つの電気・電子的な指令を自転車の少なくとも1つの装備品(例えば、ディレイラ、サスペンション、照明システム、衛星航法装置、トレーニング装置、盗難防止装置、自転車および/または運転者および/または経路の状態についての情報を提供することが可能なサイクルコンピュータ等)に発行するのに適したどの手動装置にも適用できる。
【0015】
上記手動制御装置には、電気・電子的な指令を発行するために、少なくとも1つの手動作動部材の位置および/または当該少なくとも1つの手動作動部材の位置の経時的変化(典型的には、休止位置と少なくとも1つの動作位置との間での経時的変化)を検出する少なくとも1つの作動検出器が設けられている。作動検出器の種類は、対応する手動作動部材の構成に応じたものとされる。
【0016】
上記作動検出器は、ドーム状の変形可能なダイアフラムを含む例えばマイクロスイッチ型等の電気的スイッチとされる場合がある。当該スイッチを切り替えるためには、各手動作動部材に固定された作動ヘッドが、当該手動作動部材の休止状態において上記変形可能なダイアフラムに対向し、当該手動作動部材の作動状態においてこの変形可能なダイアフラムに押し付けることで作用する。
【0017】
上記作動検出器は、上記手動作動部材により動かされる常磁性/強磁性体からなる少な
くとも1つのエレメントと協働する磁気式のセンサ、あるいは、光学式のセンサ等とされる場合もある。この種の検出器は、特許文献1に記載されている。
【0018】
上記手動制御装置は、電気的や電子的なものとして、前述した作動検出器しか備えていない場合がある。
【0019】
他方で、既知の手動制御装置のなかには、むしろ複雑な内蔵電子部品が設けられているものもある。このような手動制御装置の内蔵電子部は、上記手動作動部材の前述した作動検出器以外にも、例えば、当該作動検出器により生成された信号を処理する部品、かつ/あるいは、上記制御対象の装備品とのおよび/または上記手動制御装置と当該制御対象の装備品とが一部をなす自転車電子システムにおける他の構成要素との通信電子部(例えば、上記電子システムにおける全ての手動制御装置により生成される指令を受信して当該指令を制御対象の各種装備品に転送する制御ステーションとの通信電子部等)をさらに含むことができる。
【0020】
上記通信電子部は、典型的に、上記自転車電子システムのネットワーク内での制御装置の一意的な識別を可能にする、固有の識別信号を出力するように構成されている。例えば、このような固有の識別信号は特許文献2に、同文献を最良に理解できる限りにおいて、記載されている。
【0021】
本願の出願人による特許文献3に対応する特許文献4には、自転車の電子サーボ支援型のギアシフト装置であって、ディレイラと、指令値のテーブルに従って当該ディレイラを駆動する制御電子部とを備え、上記ディレイラは、ディレイラモデル識別信号を出力するように構成されており、上記制御電子部は、上記ディレイラモデル識別信号を受け取り、そのディレイラモデルに適した指令値のテーブルがある場合には上記ディレイラの駆動に当該テーブルを使用するように、そのようなテーブルがない場合には上記ディレイラの作動を阻止するように構成されている、ギアシフト装置が記載されている。これにより、ディレイラは、性能低下を伴い得る一時的な動作不良だけでなく機械系統の損傷にも繋がりかねない不適切な指令値を参照して作動されることが防止される。
【0022】
同文献には具体的に、自転車電子システム又は電子式のギアシフト装置が例えば4つの種類又はモデルのディレイラを、指令値のテーブル(すなわち、後で詳述するようにパラメータのセット)がこれらの種類又はモデルのディレイラのうちの一部にしか許可されていないとしても区別することが可能なものとされてもよい構成が教示されている。このような機会を利用すると、例えば、ある工場からのあらゆる既存の及び最新の種類のディレイラに対して許可されているパラメータのセットをそれぞれの自転車電子システムにロードすることで、将来的に製造される予定であるモデルについても認識を可能とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第9056651号明細書
【特許文献2】独国実用新案出願公開第202013100453号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/0006043号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2818394号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、本願の出願人は、新しいモデルのディレイラを製造することが所与の製造業者にとって必ずしも、自転車の装備品に施された変更に対処するための最適な解決策
ではないことを見出した。本願の出願人は、同じディレイラの駆動パラメータのセットを異ならせるのが有用となる場合があることを見出した。これにより、当該ディレイラは新しいモデルのディレイラであるかの如く実際に振る舞う。
【0025】
具体的に述べると、本願の出願人は、自転車の後輪にディスクブレーキが備え付けられている場合、自転車に別の種類のブレーキが備え付けられている場合に比べて、当該後輪のハブに連結される歯車のアセンブリ(すなわち、コグセット)が必然的にそのハブの軸心方向に沿ってずらされることになる結果、ペダルクランク軸に連結される歯車のアセンブリ(すなわち、クランクセット)も、伝動チェーンが当該歯車の軸心に対して傾き過ぎる配置とならないように必然的にずらされることに気付いた。このような場合には、特殊なディレイラを用意することも可能であるが、駆動パラメータのセットを単に変更することにより、同じディレイラを使用することができる。また、車載の電子システム(特に、電子式のギアシフト装置)は、どのクランクセットおよび/またはコグセットが装着されているのかや当該クランクセットおよび/またはコグセットがどのように装着されているのかを、具体的には、1つ以上のディレイラについて制御パラメータのどのセットが使用されるべきなのかを認識する必要がある。事実、不適切な指令値を参照してディレイラを作動させると、性能低下を伴い得る一時的な動作不良だけでなく機械系統の損傷にも繋がりかねない。
【0026】
本発明の根底をなす技術的課題は、そのような認識を可能にし、特には当該認識を簡単な方法で可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
一態様において本発明は、少なくとも1つの電気・電子的な指令を少なくとも1つの自転車装備品(自転車の装備品)に発行するように構成され、支持体と、可動式に前記支持体によって支持されている少なくとも1つの手動作動部材とを備える、自転車の手動制御装置において、さらに、手動制御装置モデル識別信号の発生器すなわち生成器を備えることを特徴とする、自転車の手動制御装置に関する。
【0028】
本明細書及び特許請求の範囲において「手動制御装置モデル識別信号」、しばしば略称して「モデル識別信号」とは、所与のモデル又は種類の全ての手動制御装置によって同一出力とされる一方で、前述した種類ではあるものの異なるモデルの手動制御装置では異なる出力とされる信号のことを指すものとする。具体的に述べると、前記モデル識別信号は、単一の手動制御装置の固有の識別信号(特に、ネットワーク内での識別信号など)とは異なり、手動制御装置を自転車電子システムの異なる構成要素と区別することを可能にする信号とも異なる。
【0029】
つまり、本発明にかかる手動制御装置は、自己識別手動制御装置である。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲において「自己識別」とは、前記手動制御装置自体を、類似ではあるが同一ではない手動制御装置に対して、認識させる能力のことを指すものとする。
【0031】
上記の構成によれば、制御対象の前記装備品および/または前記手動制御装置が一部をなす自転車電子システムは、前記モデル識別信号を出力することが可能な手動制御装置と前記モデル識別信号を出力することが可能でない手動制御装置とを、場合によっては手動制御装置の2つ以上のモデル同士を区別し、かつ、例えばこれに応じてそれ自体をコンフィギュレーションすることができる。
【0032】
具体的に述べると、所与のモデルの手動制御装置が、所与の歯車アセンブリ(歯車のア
センブリ)におよび/または自転車に備え付けられている所与のディレイラに対応付けられている場合、当該ディレイラをいかにして正確に駆動すべきなのかを認識するという前述した課題を、前述した構成によって解決することができる。
【0033】
特に、本願の出願人は、あたかも自転車の長手方向中央平面からクランクセット又はコグセットが実際よりも遠く離れているかの如くディレイラを駆動させるときのほうが、これとは反対の場合よりも有害であること、すなわち、自転車にディスクブレーキが備え付けられていないときにあたかも備え付けられているかの如くディレイラを駆動させるほうが、これとは反対に自転車にディスクブレーキが備え付けられている際にあたかも備え付けられていないかの如く駆動させるよりも有害であることに気付いた。
【0034】
なお、手動制御装置がそれ自体のモデルを知らせられることができるようにするという必要性は、このような手動制御装置がいつでも共通の単純な指令(典型的には、電子式のギアシフト装置の場合で言えば多くとも、アップシフト動作要求信号、ダウンシフト動作要求信号およびモード信号)を出力するのが典型的に望ましいとされてきた。結果としてこれまでの手動制御装置は互換可能であった(これまでは互換性が有利と考えられてきた)ために実感されることがなかったが、いずれにせよ本発明にかかる手動制御装置は、上記の用途以外にも有利な他の用途を有し得る。例えば、本発明にかかる手動制御装置の、上記の用途に類似した用途として、自転車に1つ又は2つの電磁ブレーキが備え付けられている場合が挙げられる。電磁ブレーキの場合も、前記歯車を同じくずらすことになるので、動作パラメータのさらに異なるセットを使用する必要性が生じる。
【0035】
好ましくは、モデル識別信号の前記発生器は、マイクロプロセッサである。
【0036】
この構成によれば、モデル識別信号は、デジタル信号との互換性を有する信号レベルであって、前記制御対象の装備品を制御するための電子部が直接利用できる信号レベルで出力可能である。
【0037】
より好ましくは、モデル識別信号の前記発生器は、プログラム可能なマイクロプロセッサであり、なおいっそう好ましくは一回プログラム可能である。
【0038】
この構成によれば、前記モデル識別信号を容易に異ならせることができる。ただし、前記マイクロプロセッサの(再)プログラム作業は、前記手動制御装置の製造時に当該手動制御装置のモデルに実際に基づいて工場で実行されるものと理解されたい。
【0039】
好ましくは、前記手動制御装置は、前記モデル識別信号と前記少なくとも1つの電気・電子的な指令とを共通の出力部に、相異なる時間に出力するように構成されている。
【0040】
この構成によれば、有利なことに、前記手動制御装置における外部とのインターフェースが、モデル識別信号の発生器を持たない従来技術の手動制御装置と変わらないものとなる。
【0041】
好ましくは、前記手動制御装置は、(外部から)モデル呼掛信号(モデル質問信号)を受信するように且つ当該モデル呼掛信号に応答して前記モデル識別信号を出力するように構成されている。
【0042】
好ましくは、前記手動制御装置は、さらに、前記少なくとも1つの手動作動部材の手動作動を検出し、当該手動作動に応答して前記少なくとも1つの電気・電子的な指令を生成するように構成された作動検出器を備え、特に、当該作動検出器が、前記少なくとも1つの手動作動部材の位置および/または当該少なくとも1つの手動作動部材の経時的な位置
変化(典型的には、休止位置と少なくとも1つの動作位置との間での経時的な位置変化)を検出するように構成されている。
【0043】
より好ましくは、前記モデル呼掛信号は、前記手動制御装置への供給電圧、特に、前記少なくとも1つの作動検出器の供給電圧を変化させる。
【0044】
なおいっそう好ましくは、前記少なくとも1つの作動検出器のそれぞれがグランドに接地されたラインをそれぞれ遮断する(interrupt)ノルマルオープンスイッチであり、当
該ラインは前記供給電圧である。
【0045】
好ましくは、前記モデル識別信号の前記発生器を実現する前記マイクロプロセッサが、グランドと、前記ラインのうちの第1のラインとの間に、前記作動検出器のうちの第1の作動検出器と並列に、前記手動制御装置モデル識別信号を当該第1のラインに出力する出力部を有するように接続されている。
【0046】
上記の構成に代えて、あるいは、上記の構成に加えて、好ましくは、前記モデル識別信号の前記発生器を実現する前記マイクロプロセッサが、前記呼掛信号を受信する駆動入力部を有している。
【0047】
より好ましくは、前記マイクロプロセッサの前記駆動入力部は、前記ラインのうちの第2のラインに、前記作動検出器のうちの第2の作動検出器と並列に、前記呼掛信号を当該第2のラインで受信するように、特に、前述した供給電圧の変化として受信するように接続されている。
【0048】
好ましくは、少なくとも1つの前記ラインは、前記手動制御装置の外部とのインターフェースとして機能するコネクタの各端子に接続されている。
【0049】
このようにして、前記手動制御装置は、外部から前記呼掛信号を受信し、かつ/あるいは、前記モデル識別信号を前記コネクタの前記端子で外部に送信する。
【0050】
前述した好適な様式で接続されている前記マイクロプロセッサの場合には、有利なことに、前記コネクタの前記端子の構成が、モデル識別信号の前記発生器を持たない従来技術の手動制御装置のコネクタの端子の構成と変わらない。したがって、本発明にかかる制御装置を自転車電子システムに、当該システムにおける他の構成要素を構造的に何ら変更することなく適用することができ、必要なのは機能的な又はソフトウェアの変更のみである。これにより、自転車電子システムには、本発明にかかる制御装置又は従来技術の制御装置が代替的に接続されることができる。よって、前記モデル識別信号の構成は、前記システムのうちの残りの部分にとって最大限に「トランスペアレント」となるので、前記手動制御装置を認識するように構成されていないシステムに対しては出来る限り妨げとならず、しかも、前記手動制御装置を認識するように当該システムを構成したい場合には、必要となる変更が最小限で済む。
【0051】
変形例として、前記手動制御装置にそれ自体の電源および/または制御電子部および/または通信電子部が設けられているときには、モデル識別信号の前記発生器が、当該手動制御装置内部で生成された呼掛信号を受け取ることができて、かつ/あるいは、前記モデル識別信号を前記制御用および/または通信電子部を介して生成および/または送信することができる。
【0052】
好ましくは、前記モデル識別信号は、通常使用条件下における前記少なくとも1つの電気・電子的な指令がないときの前記共通の出力部の値と前記少なくとも1つの電気・電子
的な指令があるときの前記共通の出力部の値とに対応する最大2つの値を、予め定められた識別パターンに従って経時的に取る。
【0053】
この構成も、前記モデル識別信号が、前記システムの、そのような2つの値を既に受信・区別することができる残りの部分にとって最大限に「トランスペアレント」になることを可能にする。
【0054】
好ましくは、前記予め定められた識別パターンの長さは、前記少なくとも1つの電気・電子的な指令の典型的な長さよりも短い。
【0055】
また、好ましくは、前記予め定められた識別パターンは、前記手動制御装置のモデルを、長さが1以上の符号、好ましくは長さが4の符号によって符号化するものである。
【0056】
なおいっそう好ましくは、前記モデル識別信号の前記発生器を実現する前記マイクロプロセッサは、当該マイクロプロセッサの駆動入力部の電圧降下であって、前記呼掛信号を実現する電圧降下に応答して、前記信号を前記予め定められた識別パターンに従った電圧で出力するように構成されている。
【0057】
一態様において本発明は、自転車の車載電子システムであって、前述した少なくとも1つの手動制御装置と、少なくとも1つの自転車装備品と、前記装備品の一部であるか又は当該装備品とは別体であるコントローラとを備え、前記コントローラが、前記モデル識別信号を受信し、前記装備品の少なくとも1つの動作パラメータを、当該モデル識別信号によって識別されたモデルに基づいて選択するように構成されている、自転車の車載電子システムに関する。
【0058】
前記コントローラが前記装備品の外部にあるときには、当該コントローラが、特に、インターフェースユニット内に存在できる。
【0059】
好ましくは、前記コントローラが呼掛信号を出力するように構成されており、モデル識別信号の前記発生器は、前記呼掛信号を受信すると、当該モデル識別信号を出力するように構成されている。
【0060】
好ましくは、前記少なくとも1つの装備品がディレイラであり、かつ、前記少なくとも1つの動作パラメータが当該ディレイラの動作パラメータのセットである。
【0061】
好ましくは、前記少なくとも1つの装備品は、フロントディレイラである。
【0062】
前記コントローラが制御対象の前記装備品の内部にあるときには、当該装備品を制御するための前記手動制御装置に基づいて自己コンフィギュレーションすることが可能な、極めて革新的な装備品が実現される。
【0063】
よって、さらなる一態様において本発明は、コントローラを備える、自転車の電気機械式のディレイラ(電動ディレイラ)であって、前記コントローラが、
-手動制御装置に呼び掛ける手順、
-これに応答して、前記手動制御装置からモデル識別信号を受信する手順、および
-前記モデル識別信号によって識別されたモデルに基づいて、当該ディレイラの動作パラメータのセットを選択する手順、
を実行するように構成されている、自転車の電気機械式のディレイラに関する。
【0064】
つまり、コントローラを備える、自転車の電気機械式のディレイラであって、前記コン
トローラが、
-手動制御装置に呼び掛ける手順、
-これに応答して、前記手動制御装置から所定のパターンを有するモデル識別信号を受信すると、当該手動制御装置を自己識別手動制御装置とみなす手順、
-そうでない場合には、前記手動制御装置を非自己識別手動制御装置とみなす手順、および
-当該ディレイラを、前記手動制御装置が自己識別手動制御装置と非自己識別手動制御装置のいずれとみなされているかに応じて異なる様式でコンフィギュレーションする手順、
を実行するように構成されている、革新的なディレイラが実現される。
【0065】
一態様において本発明は、自転車電子システムのコンフィギュレーション方法であって、
-手動制御装置に呼び掛ける過程と、
-これに応答して、前記手動制御装置から所定のパターンを有するモデル識別信号が受信されると、当該手動制御装置を自己識別手動制御装置とみなす過程と、
-そうでない場合には、前記手動制御装置を非自己識別手動制御装置とみなす過程と、
-前記自転車電子システムの少なくとも1つの構成要素を、前記手動制御装置が自己識別手動制御装置と非自己識別手動制御装置のいずれとみなされているかに応じて異なる様式でコンフィギュレーションする過程と、
を備える、コンフィギュレーション方法に関する。
【0066】
好ましくは、前記自転車電子システムの前記少なくとも1つの構成要素がディレイラであり、前記コンフィギュレーション過程が、当該ディレイラの動作パラメータのセットをコンフィギュレーションすることを含む。
【0067】
一態様において本発明は、自転車の電子式のギアシフト装置のコンフィギュレーション方法であって、
-手動制御装置に呼び掛ける過程と、
-これに応答して、前記手動制御装置からモデル識別信号を受信する過程と、
-前記手動制御装置によって制御されるディレイラの動作パラメータのセットを、前記モデル識別信号によって識別されたモデルに基づいて選択する過程と、
を備える、コンフィギュレーション方法に関する。
【0068】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面を参照しながら行う、本発明の幾つかの好適な実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになる。別々の形態について図示・説明した構成同士を、適宜互いに組み合わせることも可能である。以下の説明では、同一の機能又は同様の機能を有する構造的な又は機能的な構成要素に対して、図面の同一又は同様の参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】本発明にかかる電子システムを装備した自転車の側面図である。
図2図1の電子システムの幾つかの構成要素を示す図である。
図3図1の電子システムの初期化又は再設定の手順に関するブロック図である。
図4】自転車電子システム1002の、初期化又は再設定の手順直後の及び当該自転車電子システム1002の電源がオンにされるたびの処理に関するブロック図である。
図5】本発明の一実施形態における、手動制御装置の電気回路図であって、当該手動制御装置が、一部のみ図示するインターフェースユニットに接続されている図である。
図6】従来技術の手動制御装置の電気回路図である。
図7】本発明にかかる、手動制御装置の認識手順の第1の実施形態に関するブロック図である。
図8図7の手順の実行に含まれる幾つかの信号の時間経過を示した図である。
図9】本発明にかかる、手動制御装置の認識手順の第2の実施形態に関するブロック図である。
図10図9の手順の実行に含まれる幾つかの信号の時間経過を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1に、電子システム1002が設けられた自転車1000を示す。図2のブロック図に、電子システム1002の主要な構成要素が示されている。
【0071】
電子システム1002は、少なくとも1つの装備品1004を備えている。
【0072】
あくまでも一例として、図示の電子システム1002は自転車1000の電子式のギアシフト装置1002であり、具体的には電気機械的な2つの装備品1004(この場合では、フロントディレイラ1006およびリアディレイラ1008)を備えている。以降の記述では、このような構成についてのみ言及する。しかしながら、前記少なくとも1つの装備品1004は、サスペンション、照明システム、衛星航法装置、トレーニング装置、盗難防止装置、あるいは、自転車および/または運転者および/または経路の状態についての情報を提供することが可能なサイクルコンピュータ等であってもよいことを理解されたい。
【0073】
フロントディレイラ1006およびリアディレイラ1008は、自転車1000の伝動システムの一部である。当該伝動システムは、これら以外にも、ペダルクランク軸1016に連結した歯車1012と後輪1020のハブ1018に連結した歯車1014との間に延びるチェーン1010を具備している。
【0074】
具体的に述べると、ペダルクランク軸1016及び後輪1020のハブ1018のうちの少なくとも一方に図1に示されているように複数の歯車1012,1014を含む歯車1012,1014のアセンブリが存在しているときには、自転車1000の伝動システムにギアシフト装置が設けられて、かつ、そのため少なくともフロントディレイラ1006および/またはリアディレイラ1008が配設される。より基本的なシステムでは、フロントディレイラ1006及びリアディレイラ1008のうちの一方のみが配設されてもよい。
【0075】
フロントディレイラ1006および/またはリアディレイラ1008は、チェーン1010を歯車1012,1014間において変位させることによって自転車1000のギヤ比を変化させるという機能を果たす。
【0076】
ディレイラ1006,1008の作動は、自転車1000のハンドルバー1022に装着された少なくとも1つの制御装置10を介して運転者により手動で入力される指令に基づいて行われる。具体的に述べると、図1及び図2には、フロントディレイラ1006宛てのギアシフト動作要求指令を発行する手動制御装置10とリアディレイラ1008宛てのギアシフト動作要求指令を発行する手動制御装置10との、2つの手動制御装置10が示されている。本明細書で対象とする電子式のギアシフト装置1002の場合、これらのギアシフト動作要求指令は、しばしば制御信号とも称される電気・電子的な指令である。
【0077】
各手動制御装置10は、支持体12を備える。支持体12は、自転車1000に典型的には図示のようにハンドルバー1022のハンドグリップ1024,1025の箇所で、当該自転車1000の走行状態時に運転者が簡単に手を届かせられるように固定される。運転者による指令の入力は、手動制御装置10に設けられている典型的には図示のように
レバーの形態(又はボタンの形態)である少なくとも1つの手動作動部材14を介して行われる。
【0078】
図1では、あくまでも例示として、ドロップバー型のハンドルバー1022用に構成された手動制御装置10が示されている。しかしながら、手動制御装置10は、例えばTバー等の異なる種類のハンドルバーにも適合するように図示の構成とは異なる構成を有するものとされてもよい。変形例として、手動制御装置10は、本明細書の冒頭部分で述べたバーエンドタイプのものであってもよい。
【0079】
上記の構成に代えて、あるいは、上記の構成に加えて、手動制御装置10が、自転車1000のフレームにおける他の箇所に、例えばボトルホルダの取付部の箇所、シートチューブ近傍、ディレイラ1006,1008付近等に固定されることも可能である。
【0080】
一般的に述べると、自転車1000における手動制御装置10の数、種類、形状および位置は、本明細書の冒頭部分で述べたように要件に従って大幅に変化し得る。
【0081】
自転車1000の電子システム1002は、さらに、制御電子部16を備えている。
【0082】
制御電子部16は、ギヤ比を、運転者により制御装置10を介して手動で入力された指令に基づいて変更し、かつ/あるいは、例えば走行速度、ペダルクランクの回転ケイデンス、ペダルクランクに加わるトルク、走行地形の傾斜、運転者の心拍数などの1つ以上の検出変数および/または電子システム1002の適切なセンサ(図示せず)部分により検出されたギヤ比等に基づいて自動的に変更する。
【0083】
本明細書及び特許請求の範囲において「制御電子部」又は「コントローラ」とは、論理ユニットのことを意味するが、当該論理ユニットは複数の物理的ユニットで構成可能であり、特に、1つ以上のケーシング内に(場合によっては、前記自転車電子システムの他の構成要素と一緒に)収容されてもよい1つ以上の分散マイクロプロセッサで構成可能である。
【0084】
図1及び図2に示す、あくまでも一例としての制御電子部16は、互いに分離しているインターフェースユニット18とパワーユニット20との間で分散配置されているが、このような分離関係は必須ではない。さらに、制御電子部16は、手動制御装置10とも制御対象の装備品1004(すなわち、ディレイラ1004,1006)とも別体とされているが、このような別体関係も必須ではない。変形例として、これらインターフェースユニット18及びパワーユニット20に関して後述する機能(さらには、これらのユニットの典型的なさらなる他の機能)が、上記のような制御対象の装備品1004内部および/または上記のようなディレイラ1004,1006内部において全体的に又は部分的に実行されてもよい。
【0085】
したがって、構成要素の数を最小限に抑えたシステム1002の構成では、手動制御装置10が1つしか存在せず、当該手動制御装置10が制御対象である1つの装備品1004と直接通信するものとされてもよい。この構成は、特に、手動制御装置10がワイヤレス(無線)式のものである場合に適用される。
【0086】
図示の構成を再び参照する。インターフェースユニット18は、手動制御装置10が出力する前記制御信号を受信し、場合によっては当該制御信号同士を比較および/または組み合わせてから、当該制御信号を変更なしで又は適宜変更した後にパワーユニット20に転送する。パワーユニット20は当該制御信号を、再び変更なしで又はより典型的には適宜変更した後にフロントディレイラ1006及びリアディレイラ1008に転送および/
または中継する。
【0087】
実用的な一実施形態において、インターフェースユニット18は、ファームウェアが組み込まれているか又は適切なソフトウェアが実行されるプロセッサ(例えば、図5のマイクロプロセッサ48を参照)を含む。典型的には、インターフェースユニット18は、さらに、例えばRAMおよび/またはEEPROMタイプ等の揮発性および/または不揮発性のメモリユニット(図示せず)を含む。場合によっては、インターフェースユニット18が、手動制御装置10により実現されるユーザインターフェースに対して追加となるユーザインターフェースを含むものとされ、当該追加となるユーザインターフェースは、ディスプレイおよび/またはキー、ボタン、レバー、ジョイスティックもしくは他の(タッチスクリーンを含む)指令入力部材を具備している。図1では、インターフェースユニット18が一例として、ハンドルバー1022の中央に固定されている。
【0088】
パワーユニット20は、インターフェースユニット18から前記制御信号を受信し、場合によっては当該制御信号を処理してから、ディレイラ1006,1008(より包括的には、自転車1000における制御対象の装備品1004)の適切な駆動信号を生成するように構成されている。具体的に述べると、パワーユニット20は、ファームウェアが組み込まれているか又は適切なソフトウェアが実行されるプロセッサを含む。典型的には、パワーユニット20は、さらに、例えばRAMおよび/またはEEPROMタイプ等の揮発性および/または不揮発性のメモリユニット(図示せず)を含む。図1では、パワーユニット20があくまでも一例として、自転車1000のフレームのシートチューブに固定されている。
【0089】
具体的に述べると、パワーユニット20は、ディレイラ1006,1008を、特定の歯車に前記チェーンの係合が生じる際又は生じているときの当該ディレイラの位置に対応付けられているパラメータのセット又は指令値のテーブルの数値を参照して駆動する。
【0090】
さらに具体的に述べると、電子式のギアシフト装置1002の各ディレイラ1006,1008は、典型的に、当該技術分野においてそれ自体周知である様式で、当該ディレイラの可動部品を変位させる電気機械的なアクチュエータを備えている。当該電気機械的なアクチュエータは、電気モータを含む。
【0091】
前記アクチュエータを駆動させるために制御電子部16、特にパワーユニット20は、各歯車1012,1014につき、チェーン1010を当該歯車1012,1014との係合状態に配置させるのに前記ディレイラの変数が取らなければならない数値を含む数値のテーブルを利用する。このような数値は、隣接する歯車に対する差分値であってもよく、あるいは、所与の基準に対する(例えば、基準歯車、ストローク終了状態、前記モータの励起がない状態等を基準とした)絶対値であってもよい。
【0092】
数量に関して述べると、数値の前記テーブルにおけるアクチュエータ指令値は、例えば、前記ディレイラ上の可動点を基準とした際の当該可動点が移動する距離、前記モータが実行させられるべきステップ又は回転の数、前記モータの励磁時間の長さ、モータの供給電圧であって、この電圧に比例した変位を含む、モータの給電電圧の数値等、さらには、前記モータに設けられたフィードバックセンサ又はトランスデューサ(例えば、駆動軸の位置トランスデューサ等)により出力される数値、レジスタに記憶されて且つこれらの数量のうちの一つを表す数値等であってもよい。
【0093】
具体的に述べると、前記アクチュエータの前記モータは、各アップ又はダウンシフト動作にとって適切とされるステップの数、励磁時間の長さ又は電圧で駆動された後、自動的に停止されてもよい。この間、前記フィードバックセンサ又はトランスデューサが制御電
子部16にフィードバック信号を供給するように用いられ、これにより当該制御電子部16は前記アクチュエータの前記モータを、意図された位置まで到達していない場合、すなわち、ディレイラ1006,1008の前述した変数が前記テーブルの数値を未だ取っていない場合には作動させることができる。これは、例えば、前記ディレイラによる(運転者のペダル動作にある程度依存する)抵抗トルクが、前記モータから当該ディレイラのリンク機構を介して供給されることが可能な最大トルクを上回る過度に高いものであったこと等が原因となって起こり得る。
【0094】
指令値の前記テーブルの数値は、歯車1012,1014の数、それぞれの厚さおよび中心-中心間距離を考慮に入れて工場で設定された公称値である。
【0095】
数値の前記テーブルは、前記ギアシフト装置の電気機械的な部品に正確に対応している必要があり、特に、絶対位置および/または歯車1012,1014の中心-中心間距離および/または固定された基準もしくは可動基準としてのディレイラ1006,1008の前記モータもしくは前記リンク機構の部品同士の相互位置に正確に対応している必要があり、場合によっては、前記モータの作動電圧の進行、前記モータの回転の速度および/または加速度および/または方向等にも正確に対応している必要があり得る。
【0096】
すなわち、数値の前記テーブルは、特定のディレイラだけでなく、自転車1000に装着されている特定のクランクセット又は特定のコグセット、さらには、フレームに対する当該クランクセット又はコグセットの位置にも正確に対応している必要がある。
【0097】
本明細書の冒頭部分でも述べたように、そのクランクセット又はコグセット自体は同じものであっても、フレーム上における歯車1012,1014の取付位置(したがって、ディレイラ1006,1008に適した指令値のテーブル)は、後輪1020に装着されるブレーキの種類に依存し得る。
【0098】
不適切な指令値を参照した場合のディレイラ1006,1008の作動は、性能低下を伴い得る一時的な動作不良だけでなく機械系統の損傷にも繋がりかねない。
【0099】
本発明に従って構成された手動制御装置10は、(ほかにも当該手動制御装置10の有利な用途があるなかで特に)このような不適切な作動を阻止することができる。
【0100】
本発明にかかる手動制御装置10は、有利なことに、自己識別手動制御装置である。以下では、自己識別手動制御装置と一般的な手動制御装置10とを区別するために、自己識別手動制御装置のほうには符号22,24(符号22,24は、相異なる2つのモデルに対応している)が付されており、非自己識別手動制御装置のほうには符号26が付されている。自己識別手動制御装置22,24はしばしば「新しい」とも称され、非自己識別手動制御装置26はしばしば既存の又は「標準的な」手動制御装置とも称される。
【0101】
具体的に述べると、自己識別手動制御装置22,24は、手動制御装置モデル識別信号を出力するように構成されている。
【0102】
制御電子部16、特に、インターフェースユニット18は、前記モデル識別信号を受信したか否かを評価し、結果として、前記システム内に存在している制御装置10が自己識別制御装置22,24であるのか又はそうでないのかを確定するように構成されている。これに代えて、あるいは、これに加えて、制御電子部16、特に、インターフェースユニット18は、受信した前記モデル識別信号により識別されるモデルを評価し、結果として、制御装置のどの特定のモデルが存在しているのかを確定するように構成されている。
【0103】
これにより、様々なモデルの手動制御装置を様々な装備品1004、特に、様々なディレイラ1006,1008および/または様々なクランクセットもしくはコグセットと関連付けて、かつ、自転車電子システム1002の制御電子部16を当該電子システム1002内に存在している手動制御装置10のモデルに基づいて適宜コンフィギュレーションする。具体的に述べると、当該制御電子部16が装備品1004を、電子システム1002内に存在している手動制御装置10に応じて異なる様式で制御するようにする。本明細書の冒頭部分でも述べたように、極めて有用な用途は、自転車1000にディスク(又は電磁)ブレーキが備え付けられているときと自転車1000にディスク(又は電磁)ブレーキが備え付けられていないときとを区別し、これら2つの場合でフロントディレイラ1006および/またはリアディレイラ1008を相異なる様式によって駆動することで、同じフロントディレイラ1006および/または同じリアディレイラ1008が使用されることを可能にする。
【0104】
このようにして、電子システム1002のコンフィギュレーション方法であって、
-手動制御装置10に呼び掛ける過程と、
-これに応答して、手動制御装置10から所定のパターンを有するモデル識別信号が受信されると、当該手動制御装置を自己識別手動制御装置22,24とみなす過程と、
-そうでない場合には、手動制御装置10を非自己識別手動制御装置26とみなす過程と、
-電子システム1002の少なくとも1つの構成要素を、手動制御装置10が自己識別手動制御装置22,24であるとみなされているのか非自己識別手動制御装置26であるとみなされているのかに応じて異なる様式でコンフィギュレーションする過程と、
を備える、革新的なコンフィギュレーション方法が実現される。
【0105】
このようにして、さらに、電子式のギアシフト装置1002のコンフィギュレーション方法であって、
-手動制御装置22,24に呼び掛ける過程と、
-これに応答して、手動制御装置22,24からモデル識別信号を受信する過程と、
-手動制御装置22,24により制御されるディレイラ1006,1008の動作パラメータのセットを、前記モデル識別信号により識別されたモデルに基づいて選択する過程と、
を備える、革新的なコンフィギュレーション方法も実現される。
【0106】
以下では、自転車電子システム1002のこのようなコンフィギュレーション方法の幾つかの実施形態または当該コンフィギュレーション方法の各種ステップについて、図3図10を参照しながら説明する。
【0107】
具体的に述べると、このような方法のそれぞれは、装備品1004の制御電子部(特に、フロントディレイラ1006又はリアディレイラ1008の電子部)で直接、特に、当該装備品1004を制御するように意図された手動制御装置10と(有線で又は無線で)直接通信できる装備品1004の制御電子部(特に、フロントディレイラ1006又はリアディレイラ1008の電子部)で直接実現され得る。この場合には、自己コンフィギュレーションすることが可能な極めて革新的な装備品を実現することができる。
【0108】
したがって、コントローラを備える、自転車の電気機械式のディレイラであって、前記コントローラが、
-手動制御装置10に呼び掛ける手順、
-これに応答して、手動制御装置10から所定のパターンを有するモデル識別信号を受信すると、当該手動制御装置を自己識別手動制御装置22,24とみなす手順、
-そうでない場合には、手動制御装置10を非自己識別手動制御装置26とみなす手順
、および
-当該ディレイラ1006,1008を、手動制御装置10が自己識別手動制御装置22,24であるとみなされているのか非自己識別手動制御装置26であるとみなされているのかに応じて異なる様式でコンフィギュレーションする手順、
を実行するように構成されている、革新的なディレイラが実現される。
【0109】
つまり、コントローラを備える、自転車の電気機械式のディレイラであって、前記コントローラが、
-手動制御装置に呼び掛ける手順、
-これに応答して、前記手動制御装置からモデル識別信号を受信する手順、および
-前記モデル識別信号により識別されたモデルに基づいて、当該ディレイラの動作パラメータのセットを選択する手順、
を実行するように構成されている、革新的なディレイラが実現される。
【0110】
図3に、制御電子部16が図2に示す構成を有していると仮定した場合の、自転車電子システム1002の初期化又は再設定手続100を概略的に示す。
【0111】
ブロック102では、電子システム1002が、初期化又は再設定指令を受信する。好ましくは、当該初期化又は再設定指令は、制御電子部16により、より好ましくはインターフェースユニット18により受信される。
【0112】
前記初期化又は再設定指令は、例えば、自転車の少なくとも1つの手動制御装置10のうちの特定の手動作動部材14の作動もしくは複数の手動作動部材14の特定の組合せの作動により又はインターフェースユニット18における手動作動部材もしくは電子システム1002の別の構成要素における手動作動部材の作動により発行されるものであるか、あるいは、バッテリの挿入によって生成されるものである。
【0113】
好ましくは、前記初期化又は再設定指令は、モードタイプの指令を出力するように意図されている手動作動部材14を2つの手動制御装置10で同時に押圧することによって発行される。好ましくは、このような初期化又は再設定指令は、モードタイプのそれら2つの手動作動部材14の同時押圧が所定の最小閾値よりも、例えば40ms(ミリ秒)の閾値よりも長い時間にわたって生じたときに有効となる。
【0114】
次のブロック104では、既述したように制御電子部16、特に、インターフェースユニット18が、前記モデル識別信号をそれ自体が受信したか否かを評価し、結果として、前記システム内に存在している制御装置10が自己識別制御装置22,24であるのか又はそうではなくて非自己識別制御装置26であるのかを確定する、かつ/あるいは、受信した前記モデル識別信号により識別されるモデルを評価し、結果として、自己識別制御装置22,24のどのモデルが存在しているのかを確定するという、手動制御装置10のモデル認識ステップが行われる。
【0115】
モデル認識ステップ104の好適な実施形態については、図7図10に基づいて後述する。
【0116】
次のブロック106では、インターフェースユニット18が、認識又は識別した手動制御装置10のモデルを表す情報108をパワーユニット20に送信する。図示しない処理ではあるが、このような情報は、インターフェースユニット18の不揮発性メモリに適切に保存されてもよい。
【0117】
ブロック110では、識別された手動制御装置10のモデルを表す情報108が、パワ
ーユニット20により受信される。
【0118】
次のブロック112では、このような情報108がパワーユニット20の不揮発性メモリに、特に、対応する数値をComModと称される変数に代入することによって適切に保存される。そして、当該実行が終了する。
【0119】
制御電子部16がインターフェースユニット18とパワーユニット20とに分散されていない場合には、ステップ106およびステップ110が省略可能であり、識別された手動制御装置10のモデルを表す前記情報は制御電子部16の不揮発性メモリに直接保存される。
【0120】
図4は、自転車電子システム1002の、図3に関して説明した前記初期化又は再設定手順直後、及び当該自転車電子システム1002の電源がオンにされるたびの処理200に関するブロック図である。具体的に述べると、図4のブロック図の実行は、制御電子部16の構成が図2に示す構成であるときにはパワーユニット20で行われる。
【0121】
ブロック202では、システム1002の前述した初期化手続又は電源オンが行われる。
【0122】
次のブロック204では、図3のブロック104の認識ステップ時に検出された手動制御装置10のモデルを表す前記情報が、特に、前述したブロック112で記憶された変数ComModの数値をパワーユニット20の前記不揮発性メモリから読み出すことによって取得される。
【0123】
当然ながら、図3の初期化又は再設定手続100直後では、変数ComModの数値が既に取得済みであることを理由に図4のブロック204が省略可能である。
【0124】
次のブロック206において、システム1002は、変数ComModの数値に手動制御装置22,26,24のどのモデルが対応しているのかを確認する。
【0125】
変数ComModの数値が非自己識別又は標準的な手動制御装置26の数値に対応している場合には、ブロック208においてシステム1002が、前記ディレイラのパラメータの標準的なセットを使用するように設定する。
【0126】
あるいは、変数ComModの数値が第1のモデルの自己識別手動制御装置22の数値に対応している場合には、ブロック210において前記システムが、前記ディレイラのパラメータの第1の変更されたセットを使用するように設定する。
【0127】
変数ComModの数値が第2のモデルの自己識別手動制御装置24の数値に対応している場合には、ブロック212において前記システムが、前記ディレイラのパラメータの第2の変更されたセットを使用するように設定する。
【0128】
電子システム1002は、自己識別手動制御装置22,24と非自己識別手動制御装置26との区別のみを行うように構成されてもよく、この場合にはブロック212が存在しない。
【0129】
反対に、電子システム1002は、3つ以上の自己識別手動制御装置22,24間の区別を行うように構成されてもよい。このような場合に、変数ComModの数値が第3、第4…のモデルの自己識別手動制御装置24の数値に対応していれば前記システムが、ブロック214、ブロック216…に概略的に示されているように前記ディレイラのパラメ
ータの対応する変更されたセットを使用するように設定する。
【0130】
ブロック208,210,212,214,216のうちのいずれか一つのブロックを実行した後、ブロック218においてシステム1002が通常動作に戻る。通常動作は、例えば、少なくとも1つの手動制御装置10が出力する電気・電子的な指令(特に、場合によってはインターフェースユニット18により中継された後のギアシフト動作要求指令)を監視すること、電子システム1002および/または自転車1000の物理的な各種部品および/または運転者の状態を監視するために自転車に設けられているセンサの出力を監視すること、ギアシフト動作を行うべきか又は行うべきでないのかをこれらのセンサの数値に基づいて且つギアシフト動作要求指令を受信したときに決定するために現在のギヤ比を評価すること、対応のパラメータのセットに基づいて且つ受け取った指令に基づいてディレイラ1006,1008を適切に駆動すること等を含む。
【0131】
代替的な一実施形態では、単一の確認ブロック206に代えて、当業者にとって明らかであるカスケード方式の複数の確認ブロックが設けられてもよい。
【0132】
これまでは、ディレイラ1006,1008のパラメータの標準的なセットとディレイラ1006,1008のパラメータの1つ以上の変更されたセットとについて言及し、ディスク(又は電磁)ブレーキが存在しているときには当該ディレイラ1006,1008が変更された様式で使用され、一般的なブレーキが存在しているときときには当該ディレイラ1006,1008が標準的な様式で使用されるという前述の極めて有益な場合についても簡単に言及した。しかしながら、一般的にはパラメータのセット同士が互いに異なるものであれば十分であることを理解されたい。
【0133】
さらに、手動制御装置22,24,26の各モデルに、ディレイラ1006,1008の2つ以上のモデル(ディレイラの各モデルは、当該モデルごとに動作パラメータの複数のセットを有している)が関連付けられてもよい。この場合、どのディレイラが実際に自転車に装着されているのか(したがって、手動制御装置22,24,26の各モデルごとの、動作パラメータのどのセットが実際に使用されるべきなのか)については、電子システム1002によって適宜確定されるものとし、詳しくは説明しない。
【0134】
一例として、前述の特許文献4に記載されているような、ディレイラモデル識別信号を出力するように構成されたディレイラが使用されてもよい。
【0135】
図5は、本発明にかかる自己識別手動制御装置22,24の一実施形態を示す電気回路図又は回路図である。図5には、さらに、電子システム1002の、自己識別手動制御装置22,24に接続されている制御電子部16が部分的に示されている。図2のシステムの構成では、制御電子部16の図5に示されている構成要素が、インターフェースユニット18の入力段に相当する。
【0136】
具体的に述べると、図示されているのは、モードタイプの指令を入力するように意図されていて且つ作動検出器28が対応付けられた第1の手動作動部材と、ギアシフト動作要求信号(例えば、ダウンシフト方向)を送信するためのものであり且つ作動検出器30が対応付けられた第2の手動作動部材と、反対方向のギアシフト動作要求信号(例えば、アップシフト方向)を送信するためのものであり且つ作動検出器32が対応付けられた第3の手動作動部材とを備える、自己識別手動制御装置22,24である。
【0137】
この場合の作動検出器28,30,32は、関連する前記手動作動部材が作動されると閉成するノルマルオープンスイッチとして構成されている。
【0138】
変形例として、少なくとも1つの作動検出器28,30,32が、ノルマルクローズスイッチとされてもよい。また、前記スイッチに代えて、例えば「オープンコレクタ」形態のセンサ等のような異なる種類の作動検出器を設けることも可能である。前記手動制御装置における手動作動部材の数もしくは構成を異なるものにする場合および/または作動検出器28,30,32の種類を異なるものにする場合に前記電気回路図に対して行われなければならない変更は、図示の3つのノルマルオープンスイッチに関して行う以下の説明を参酌すれば当業者にとって明白である。
【0139】
具体的に述べると、各スイッチ28,30,32は電源電圧(供給電圧)PWに維持されたそれぞれのライン34,36,38と接地ライン40との間において、当該各スイッチ28,30,32が(関連付けられている手動作動部材14の作動に対応する)一時的に閉成した状態にあるときにはそのライン34,36,38を接地させて且つこのようにして手動制御装置22,24により発行される電気・電子的な指令を表す電圧降下をそのライン34,36,38に生じさせるように周知の様式で配置されている。
【0140】
本明細書では、ライン34,36,38の電圧の経時進行が、それぞれ制御信号S1,S2,S3と称される。制御信号S1,S2,S3は、前記電気・電子的な指令を搬送する。
【0141】
図示の場合では、自己識別手動制御装置22,24とインターフェースユニット18との間の接続が、有線接続とされている。具体的に述べると、自己識別手動制御装置22,24のライン34,36,38,40が自己識別手動制御装置22,24のコネクタ42のそれぞれの端子A,B,C,Dに繋がり、かつ、インターフェースユニット18がこれらの端子A,B,C,Dにそれぞれ対応する端子E,F,G,Hが設けられた相補的なコネクタ44を有している。
【0142】
インターフェースユニット18では、端子Hがライン41を介して接地されている。インターフェースユニット18では、さらに、端子E,F,Gに、対応するライン35,37,39が繋がっている。各ライン35,37,39の電圧の経時進行も(コネクタ42,44間で生じ得る電流漏れ/電圧損失については無視する)、それぞれ制御信号S1,S2,S3と称される。
【0143】
インターフェースユニット18は、コントローラ48を含む。コントローラ48は、広義の意味で前記制御信号S1,S2,S3を入力としてそれぞれ受け取り、当該制御信号S1,S2,S3により搬送される前記電気・電子的な指令を検出するように当該制御信号S1,S2,S3を評価する。事実、図示の場合では当該コントローラが、制御信号S1,S2,S3から後述する様式により導出される信号U1,U2,U3を受け取る。
【0144】
コントローラ48は、電源ライン50に接続された適切な出力として、電源電圧PWoutを生成する。電源ライン50は、電源を前記装置のライン34,36,38で搬送ように、ライン35,37,39にそれぞれ接続された3つの分岐ライン50a,50b,50cに分かれている。分岐ライン50a,50b,50cはそれぞれの抵抗R1,R2,R3、ライン35,37,39はそれぞれの抵抗R4,R5,R6を有している。そのため、手動制御装置22,24における電源電圧PWは、コントローラ48の出力として生成される電源電圧よりも低くなる。さらに、手動作動部材14が作動されておらず且つそのためスイッチ28,30,32が開放しているときには、電源電圧PWoutと電源電圧PWとが質的な観点からみて互いに対応することになり、つまり、電源電圧PWoutと電源電圧PWとは強度が異なるものの経時的変化が同じになる。以下では、これら2つの電源電圧を区別する必要がなければ、電源電圧PW,PWoutのように包括的に言及するものとし、手動制御装置10に関する限り、スイッチ28,30,32が開放して
いるときの電源電圧PWを意味するものとする。
【0145】
コントローラ48の入力はそれぞれ、分岐ライン50a,50b,50cとライン35,37,39との間のノードL,M,Nに、好ましくはそれぞれの抵抗体R7,R8,R9を介して接続されている。これにより、抵抗体R1と抵抗体R4、抵抗体R2と抵抗体R5、および抵抗体R3と抵抗体R6が、制御信号S1,S2,S3をコントローラ48の入力における信号U1,U2,U3に前述のように変換させる電圧分割器を実現する。
【0146】
したがって、前記作動検出器つまりスイッチ28,30,32の状態が、それぞれの制御信号S1,S2,S3、結果として信号U1,U2,U3を変化させる。すなわち、インターフェースユニット18のコントローラ48の入力としての論理状態は、電源電圧PWout,PWと作動検出器28,30,32の状態とに依存する。
【0147】
具体的に述べると、手動作動部材が解放されている通常状態、すなわち、それぞれのスイッチ28,30,32が開放しているときには、制御信号S1,S2,S3とコントローラ48に到達する信号U1,U2,U3との両方が、図示の回路の構成に起因してHIGHの論理レベルに対応する電圧値(以降では、HIGHと称する)を有することになる。他方で、手動作動部材が作動されている、すなわち、スイッチ28,30,32が閉成しているときには、制御信号S1,S2,S3とコントローラ48に到達する信号U1,U2,U3との両方が、LOWの論理レベルに対応する電圧値(以降では、LOWと称する)を有することになる。つまり、質的な又は論理的な観点から言えば、信号U1,U2,U3は手動制御装置22,24により発生される制御信号S1,S2,S3に対応している。
【0148】
インターフェースユニット18の入力段の上記のような構成は、後で理解される理由から極めて有利である。しかしながら、電源信号PWout,PWと制御信号S1,S2,S3又はコントローラ48の入力としての当該制御信号S1,S2,S3である信号U1,U2,U3とは、互いに完全に独立した物理的経路を辿るものとされてもよい。
【0149】
ここまでの説明における自己識別手動制御装置22,24は、非自己識別手動制御装置26と変わらない。全体像を説明するために、図6はこのような非自己識別手動制御装置26に関する電気回路図であり、図5の構成要素に対応する構成要素には、図5と同じ符号に100を足したものを付している。電源信号PWout,PWおよび制御信号S1,S2,S3は、同じ符号のままである。
【0150】
有利なことに、自己識別手動制御装置22,24は、図5に示すように手動制御装置モデル識別信号の発生器(エミッタ)52、略称して発生器52を備えている。
【0151】
発生器52は、手動制御装置モデル識別信号を、特に、図3のブロック104の認識ステップ時に出力する。
【0152】
図示の場合では、発生器52が、駆動入力部54及び出力部56を有する集積回路又はマイクロプロセッサ52により実現されている。
【0153】
発生器つまりマイクロプロセッサ52は、駆動入力部54での信号INに基づいて出力部56にてモデル識別信号OUTを出力するように構成されている。具体的に述べると、マイクロプロセッサ52は当該マイクロプロセッサ52の駆動入力部54にて呼掛信号、すなわち、入力信号INの変化(モジュレーション)を、特に、インターフェースユニット18のコントローラ48から受け取る。マイクロプロセッサ52はこのような呼掛信号を受け取ると、出力部56での信号を後で図7図10に基づいて詳述するような所定の
パターンに従って変化させることにより、モデル識別信号OUTを出力する。
【0154】
具体的に述べると、マイクロプロセッサ52の出力部については、接地ライン40とライン34との間において作動検出器28と並列に、モデル識別信号OUTをそのライン34に出力するように接続されている(より厳密には、接地ライン40とライン34の作動検出器28よりも下流側の箇所との間に接続されている)。このようにして、自己識別手動制御装置22,24は、手動制御装置モデル識別信号OUTと前記電気・電子的な指令(この場合は、モードタイプの指令)とをコネクタ42の端子Aに対応する共通の出力部にて、相異なる時間に出力するように構成されている。つまり、出力部Aでは、制御信号S1または手動制御装置モデル識別信号OUTが代替的に存在することになる。これは、信号U1としてのインターフェースユニット18のコントローラ48の入力部においても同じである。これら2つの信号S1,OUTが同時に存在する場合については、後で明らかにする様式によって管理される。
【0155】
さらに、マイクロプロセッサ52の入力部については、接地ライン40とライン36との間において別の作動検出器と並列に(図示の場合では、作動検出器30と並列に)、前記呼掛信号をそのライン36で受信するように接続されている。このようにして、マイクロプロセッサ52の入力信号INの変化(モジュレーション)は、有利なことに、自己識別手動制御装置22,24への電源電圧PWの変化(モジュレーション)となる。図示の構成では、マイクロプロセッサ52の入力信号INが、さらに、作動検出器30の状態に依存する。
【0156】
以下では、システム1002に接続されている手動制御装置10が自己識別手動制御装置22,24であるのか非自己識別手動制御装置26であるのかを認識する、当該手動制御装置10の認識方法300の一実施形態について、図7を参照しながら説明する。具体的に述べると、このような認識方法300は図3のブロック104で実行される。
【0157】
認識方法300は、手動制御装置22のモデル識別信号OUTの、予め定められたパターンIDに従った第1の実施形態を利用する。
【0158】
このような認識方法300の理解を容易にするために、図8には、当該認識方法300の実行に含まれる主要な信号の時間経過が示されている。具体的に述べると、
-同図の(a)には、インターフェースユニット18のコントローラ48が出力してライン34,36,38又はライン134,136,138へ搬送される電源信号PWout,PWの時間経過;
-同図の(b)には、図6の非自己識別又は標準的な手動制御装置26の場合におけるインターフェースユニット18のコントローラ48の入力の信号U1の時間経過;
-同図の(c)には、マイクロプロセッサ52の入力信号INの及び図5の自己識別手動制御装置22の場合におけるコントローラ48の入力の信号U2の、時間経過:ならびに
-同図の(d)には、自己識別手動制御装置22の場合におけるインターフェースユニット18のコントローラ48の入力の信号U1の時間経過;
が示されている。
【0159】
前述したように、コントローラ48の入力の信号U1は、手動制御装置22,24の出力での制御信号S1に質的に対応している。
【0160】
図7のブロック302では、信号PWがインターフェースユニット18のコントローラ48により、手動制御装置10の通常動作時と同じくHIGHに維持される。
【0161】
次のブロック304では、信号PWがインターフェースユニット18のコントローラ48によってLOWに設定され、このような値を期間T1にわたって維持する。ブロック306では、期間T1の経過が適宜監視される。その後、次のブロック308では、信号PWがコントローラ48によって再びHIGHに設定される。
【0162】
コントローラ48が電源信号PWの電圧降下を引き起こす図7のブロック302~308の実行は、当該信号PWにおける、図8のグラフ(a)に示されているような長さT1(時刻t0~t1)の負の矩形パルス60の出現に対応している。後述の図のように矩形パルス60で表される直角的な進行が理想的であるが、実際には当該信号が直角以外の進行を有するものとされてもよいことを理解されたい。
【0163】
標準的なつまり非自己識別(したがって、モデル識別信号OUTの発生器52を持たない)手動制御装置26に関する信号S1,U1は、作動検出器128がノルマルオープン状態であると仮定して電源信号PWの変動に追従する。事実、図8のグラフ(b)での信号S1,U1の進行についても、矩形パルス60と類似した長さT1(時刻t0~t1)の負の矩形パルス62の出現が見受けられる。
【0164】
他方で、自己識別手動制御装置22,24の場合には、パルス60の前記電圧降下が、モデル識別信号OUTの発生器52に対する前述した呼掛信号となる。事実、作動検出器30がノルマルオープン状態であると仮定した場合、発生器52の入力信号INも電源信号PWの変動に追従する。そのため、発生器52の入力信号INは、矩形パルス60,62に類似した図8のグラフ(c)に示されているような長さT1(時刻t0~t1)の負の矩形パルス64を有することになる。
【0165】
マイクロプロセッサ52は、入力信号IN又は呼掛信号のこのような変動に応答して、当該マイクロプロセッサ52の出力信号OUTにおいて手動制御装置モデル識別信号OUTを出力する。作動検出器28がノルマルオープン状態であると仮定した場合、手動制御装置モデル識別信号OUTは、前記手動制御装置の出力部での制御信号S1と置き換わるか又は当該制御信号S1よりも優先されて、インターフェースユニット18のコントローラ48の入力に信号U1として到達する。
【0166】
図8のグラフ(d)には、自己識別手動制御装置22の信号S1,U1が示されている。この例示的な場合では、マイクロプロセッサ52が当該マイクロプロセッサ52の出力部56での電圧を、所定の期間Tlowの間LOWに設定する。つまり、手動制御装置モデル識別信号OUTは、長さTlow(時刻t0~t4)の負の矩形パルス66を含む識別パターンIDを辿る。作動検出器28がノルマルオープン状態であるとここでも仮定した場合、矩形パルス66の後に信号S1,U1がHIGH値に戻る。
【0167】
具体的に述べると、図示の場合における識別パターンIDは、電源信号PW及びマイクロプロセッサ52の入力信号INの立下りエッジの箇所で始まる。しかしながら、識別パターンIDは、図示のものと極めて異なるものとされてもよく、例えば、異なる形状を有するものとされてもよく、信号IN,PWの変動とは異なる時刻(例えば、このような信号の立上りエッジ(時刻t1)の箇所等)に始まるものとされてもよい。
【0168】
図7を再び参照する。次のブロック310では、好ましくは期間T2の間待機される。
【0169】
ブロック312では、電子システム1002が、コントローラ48の入力の信号U1と信号U2との2つの確認を行い、特に、信号U1がLOW値を有しているのか否かと同時に、信号U2がHIGH値を有しているのか否かを確認する。
【0170】
図8のグラフ(b)及びグラフ(d)における時刻t2のサンプリング点68,69が、図7のブロック312の確認に相当する。具体的に述べると、期間T2の終了に対応する時刻t2では、非自己識別又は標準的な手動制御装置26の信号U1がHIGH値(グラフ(b))を有する一方で、自己識別手動制御装置22の制御信号U1はLOW値(グラフ(d))を有する。
【0171】
つまり、信号U1がHIGH値を有する場合には、想定される発生器52が確実に存在していないことになり(ブロック312からNOを出力する)、ブロック314において電子システム1002が手動制御装置のモデルを、非自己識別に設定する。認識方法300が終了し、システム1002は例えば図3のブロック106の実行に移行する。
【0172】
作動検出器30,130がノルマルオープン状態であると前述のように仮定した場合、信号U2は電源信号PWout,PWに追従して、図8のグラフ(c)に示されているようにマイクロプロセッサ52の入力部での信号INに対応するものとなる。つまり、このような仮定のもとでは信号U2が、LOWとなる時刻t0~t1の短い負のパルス64を除き、常にHIGHとなる。
【0173】
他方で、運転者が作動検出器30に対応する手動作動部材14を作動させている場合には、信号U2がLOWとなる。この状態は、前記認識手順の外乱状態とみなされる。
【0174】
よって、ブロック312の確認において信号U2がLOW値を有している場合には、安全性を上げるために電子システム1002が前述したブロック314を実行し、手動制御装置のモデルを非自己識別に設定する。
【0175】
他方で、図7のブロック312の確認の結果が肯定である場合には、システム1002内に自己識別手動制御装置22が存在している可能性がある。また、信号U1の低下は、運転者が作動検出器28,128に対応する手動作動部材14を作動させている場合にも相当し得る。このような状態も同じく前記認識手順の外乱状態とみなされる。よって、システム1002は、下記のさらなる確認を行うものであるのが好ましい。
【0176】
まず、任意のブロック316において、期間T3の間待機される。
【0177】
次に、随意のブロック318において前記システムが、ブロック312と同じように制御信号U1と制御信号U2との2つの確認を繰り返し、U1がLOW値を有していて且つU2がHIGH値を有していることを再度確認する。
【0178】
ブロック318において随意に行われる確認は、図8のグラフ(b)及びグラフ(d)における時刻t3のサンプリング点70,71に相当する。具体的に述べると、時刻t3では既述した時刻t2のように、非自己識別又は標準的な手動制御装置26の信号U1がHIGH値(グラフ(b))を有する一方で、自己識別手動制御装置22の制御信号U1はLOW値(グラフ(d))を有する。
【0179】
この確認の結果が否定である場合には、実行がブロック314に移行し、前記システムは標準的なつまり非自己識別手動制御装置26が含まれているものとみなして、すなわち、手動制御装置10が標準的なつまり非自己識別タイプのものであるとみなすことにより、既述した理由から当該認識を終了させる。
【0180】
逆に、ブロック318の確認の結果が肯定である場合には、任意のブロック320において期間T4の間待機される。
【0181】
期間T1、期間T2および任意に設けられる期間T3は、下記の関係式:
T1+T2+T3<Tlow (1)
を満足するように選択される。
【0182】
このような関係式が満足されているときには、ブロック312の確認およびブロック318の確認が、識別パターンIDの長さTlowのパルス内に収まる時刻t2、時刻t3で実行されることになる。
【0183】
識別パターンIDの認識のためには、当該識別パターンIDの長さTlowのパルス内に収まる時刻に確認を一回実行するだけで、すなわち、図7のブロック312の確認だけで十分である。図示の実施形態では、2回の確認が冗長化のために、特に、信号へのノイズや他の干渉に起因した誤肯定を排除する目的で実行される。確認ブロック318が設けられない場合には、2つの待機ブロック316,320の代わりに適切な長さの単一の待機ブロックが設けられるものと理解されたい。
【0184】
図7を再び参照する。ブロック320にて期間T4の間待機した後に、ブロック322において前記システムが、インターフェースユニット18のコントローラ48の入力の信号U1と信号U2との2つの確認を、ここでは当該信号U1と当該信号U2との両方がHIGH状態に相当する値を有しているか否かを確認することによって行う。
【0185】
信号U2の確認は、運転者が作動検出器30に対応する手動作動部材14を作動させている場合には当然ながら認識手順を中断させるという既述した理由から行われる。信号U1の確認は、先ほど検出されたLOW状態が認識信号の矩形パルス66に起因するものなのであって例えば運転者が作動検出器28に対応する手動作動部材14を作動させていたからではないことを確認するためのものである。これに関して述べると、マイクロプロセッサ52は、手動作動の長さよりも遥かに短い長さのパルスを生成することが可能であるという点に留意されたい。
【0186】
よって、ブロック322の確認の結果が否定である場合には、実行が前述したブロック314に移行し、システム1002は手動制御装置10が自己識別手動制御装置22であると確定できないため、標準的な手動制御装置26であると認識する
【0187】
他方で、ブロック322の確認の結果が肯定である場合にはブロック324において、システム1002内に自己識別手動制御装置22が存在していると確定されて、手動制御装置10のモデルが自己識別に設定される。当該方法が終了し、システム1002は例えば図3のブロック106の実行に移行する。
【0188】
期間T4は、下記の関係式:
T1+T2+T3+T4>Tlow (2)
を満足するように選択される。
【0189】
このような関係式により、ブロック322の確認が、モデル識別パターンIDの矩形パルス66が既に終了した後の時刻t5に実行される。
【0190】
前述したT1,T2,T3,T4,Tlowの実際の長さは、前述した関係式(1)および(2)を満足するように適宜選択される。また、これらの長さは、モデル識別ID信号OUTの長さTlowの長さがヒトによる手動作動部材の最小作動時間よりも短くなるような長さである 。
【0191】
一例として、実用的な一実施形態では、このような長さTlowが15msで、矩形パ
ルス60,62,64の長さT1が2msで、待機時間T2及び待機時間T3が5msで、待機時間T4が7msである。
【0192】
以下では、システム1002に接続されている手動制御装置10が非自己識別手動制御装置26であるのか第1のモデルの自己識別手動制御装置22であるのか第2のモデルの自己識別手動制御装置24であるのかを認識する、手動制御装置10の本発明にかかる認識方法400の一実施形態について、図9を参照しながら説明する。具体的に述べると、このような認識方法400は例えば図3のブロック104で実行される。
【0193】
認識方法400は、前記第1のモデルの自己識別手動制御装置22用の、既述したような予め定められたパターンIDに従った手動制御装置モデル識別信号OUTの実施形態と、前記第2のモデルの自己識別手動制御装置24用の、異なる予め定められたパターンID2に従った手動制御装置モデル識別信号OUTの実施形態との、2つの実施形態を利用するものである。
【0194】
予め定められたパターンID2は、発生器52を実現する前記マイクロプロセッサを適切にプログラムすることにより、発生器52によって前記パターンIDと同様の様式で生成される。
【0195】
有利なことに、発生器52を実現する前記マイクロプロセッサは、その発生器52が出力する識別パターンID,ID2を前記手動制御装置の製造時に当該手動制御装置のモデルに実際に基づいて変更することができるようにプログラム可能、好ましくは一回プログラム可能である。
【0196】
図10には、認識方法400の実行に含まれる主要な信号の時間経過が示されている。具体的に述べると、
-同図の(a)には、インターフェースユニット18のコントローラ48が出力するライン34,36,38又はライン134,136,138に搬送される電源信号PWout,PWの時間経過;
-同図の(b)には、図6の非自己識別つまり標準的な手動制御装置26の場合におけるインターフェースユニット18のコントローラ48の入力部での信号U1の時間経過;
-同図の(c)には、マイクロプロセッサ52の入力部での信号INの及び図5の自己識別手動制御装置22,24の場合におけるコントローラ48の入力部での信号U2の、時間経過:
-同図の(d)には、前記第1のモデルの自己識別手動制御装置22(略称として、第1の自己識別手動制御装置22)の場合におけるインターフェースユニット18のコントローラ48の入力部での信号U1の時間経過;ならびに
-同図の(e)には、前記第2のモデルの自己識別手動制御装置24(略称として、第2の自己識別手動制御装置24)の場合におけるインターフェースユニット18のコントローラ48の入力部での信号U1の時間経過;
が示されている。
【0197】
図7及び図8に関して既述した事項は、後述する点を除き、変更すべきところは変更したうえで当てはまる。
【0198】
具体的に述べると、図10のグラフ(a)、(b)、(c)及び(d)に示された時間経過は、サンプリング点が図示・後述のように異なっている点を除いて図8のグラフ(a)、(b)、(c)及び(d)に示された進行と変わらない。
【0199】
ブロック402~410は、ブロック406で待機される時間がT10(時刻t10~
t11)で、ブロック410で待機される時間がT11(時刻t11~t12)である点を除き、図7のブロック302~310と変わらない。
【0200】
まとめると、コントローラ48がまず、電源信号PWに電圧降下を、すなわち、負の矩形パルス60を引き起こす。
【0201】
標準的なつまり非自己識別手動制御装置26に関する信号S1,U1は、作動検出器128がノルマルオープン状態であると仮定してこのような変動に追従する。
【0202】
2つの自己識別手動制御装置22,24の場合、パルス60の前記電圧降下が、モデル識別信号OUTの発生器52に対する前述した呼掛信号となる。このような自己識別手動制御装置22,24のマイクロプロセッサ52が、当該マイクロプロセッサ52の出力信号OUTにおいて各々の手動制御装置モデル識別信号OUTを発生させる。作動検出器28がノルマルオープン状態であると仮定した場合、各々の手動制御装置モデル識別信号OUTは、前記手動制御装置の出力部での制御信号S1と置き換わるか又は当該制御信号S1よりも優先されて、インターフェースユニット18のコントローラ48の入力に信号U1として到達する。
【0203】
第1の自己識別手動制御装置22の信号S1,U1は、長さTlow(時刻t10~t13)の負の矩形パルス66を含む識別パターンIDを辿る。作動検出器28がノルマルオープン状態であるとここでも仮定した場合、矩形パルス66の後に信号S1,U1がHIGH値に戻る。
【0204】
グラフ(e)では、第2の自己識別手動制御装置24の信号S1,U1が見て取れる。この例示的な場合では、マイクロプロセッサ52が当該マイクロプロセッサ52の出力部56での電圧を、所定の期間Tlow1(時刻t10~t13)の間LOWに設定し、所定の期間Thigh(時刻t13~t15)の間HIGHに戻して設定し、所定の期間Tlow2(時刻t15~t17)の間LOWに再び設定する。好ましくは、期間Tlow1,Thigh,Tlow2は、図10に示されているように全て互いに等しく且つ第1の自己識別手動制御装置22に関する期間Tlowにも等しい。
【0205】
つまり、第2の手動制御装置24のモデル識別信号OUTは、互いに隔てられた第1の負の矩形パルス74及び第2の負の矩形パルス76を含む識別パターンID2を辿る。作動検出器28がノルマルオープン状態であるとここでも仮定した場合、パルス74とパルス76との間およびパルス76の後に信号S1,U1がHIGH値に戻る。
【0206】
図9に示す認識方法400の実行を再び参照する。ブロック412においてシステム1002は、信号U2がHIGH値を有しているのか否かを確認する。
【0207】
既述したように、運転者が作動検出器30,130に対応する手動作動部材14を作動させている場合には、信号U2がLOWとなる。そうでない場合には信号U2が、LOWとなる時刻t10~t11の短い負のパルス64を除き、常にHIGHとなる。
【0208】
図9のブロック412の確認の結果が否定である場合には、ブロック414において前記システムが、StateAと称される第1の変数を所定の好都合な値に(図示の場合では、HIGH値に)設定する。
【0209】
図9のブロック412の確認の結果が肯定である場合には、ブロック416において前記システムが第1の変数StateAを、対応する時刻(すなわち、ブロック410の待機T11の終了時の時刻t12)に信号U1が取る値に設定する。
【0210】
期間T11は、時刻t12が第1の自己識別手動制御装置22の識別パターンIDの矩形パルス66内に且つ第2の自己識別手動制御装置24の識別パターンID2の第1の矩形パルス74内に収まるように、すなわち、下記の関係式:
T10+T11<Tlow (3)
T10+T11<Tlow1 (4)
を満足するように選択される。
【0211】
図10のグラフ(b)、グラフ(d)及びグラフ(e)には、時刻t12のサンプリング点78,79,80が示されている。非自己識別手動制御装置26の信号U1はHIGH値を有する一方で、第1および第2の自己識別手動制御装置22,24の2つの制御信号U1はLOW値を有する。
【0212】
そのため、第1の変数StateAは、標準的な手動制御装置の場合とモデル識別信号OUTの発生器52が設けられた手動制御装置の場合とで異なる値を取る。
【0213】
さらに、前述したように信号U1は、運転者が作動検出器28に対応する手動作動部材14を作動させている場合にも同じくLOW値となる。これを理由として及び他の理由によって手動制御装置10を自己識別タイプであると誤認識するのを防ぐために、認識方法400はさらなる確認を実行する。
【0214】
信号U2の値がHIGH状態であるか否かの確認は、ブロック418での期間T12(時刻t12~t14)の間の待機後のブロック420と、ブロック426の期間T13(時刻t14~t16)の間の待機後のブロック428と、ブロック434の期間T14(時刻t16~t18)の間の待機後のブロック436とで三回繰り返される。
【0215】
ブロック420の確認の結果が否定である場合にはブロック422で変数StateBが、ブロック428の確認の結果が否定である場合にはブロック430で変数StateCが、ブロック436の確認の結果が否定である場合にはブロック438で変数StateDが、ブロック414及び変数StateAに関して説明した内容と同じようにHIGHに等しい所定の好都合な値に設定される。
【0216】
他方で、ブロック420,428,436の確認の結果が肯定である場合には、ブロック424,432,440において前記システムが変数StateB,StateC,StateDを、対応する時刻(すなわち、時刻t14,t16,t18)に信号U1が取る値に設定する。
【0217】
期間T12は、時刻t14が第1の自己識別手動制御装置22の識別パターンIDの矩形パルス66の後に且つ第2の自己識別手動制御装置24の識別パターンID2における第1の矩形パルス74と第2の矩形パルス76との間にある長さThighに等しい時間内に収まることで、下記の関係式:
T10+T11+T12>Tlow (5)
Tlow1<T10+T11+T12<Tlow1+Thigh (6)
を満足するように選択される。
【0218】
期間T13は、時刻t16が第2の自己識別手動制御装置24の識別パターンID2のうちの第2の矩形パルス76内に収まることで、下記の関係式:
Tlow1+Thigh<T10+T11+T12+T13<Tlow1+Thigh+Tlow2 (7)
を満足するように選択される。
【0219】
最後に、期間T14は、時刻t18が第2の自己識別手動制御装置24の識別パターンIDのうちの第2の矩形パルス76の後となることで、
T10+T11+T12+T13+T14>Tlow1+Thigh+Tlow2(8)
を満足するように選択される。
【0220】
図10のグラフ(b)、グラフ(d)及びグラフ(e)には、時刻t14のサンプリング点81,82,83、時刻t16のサンプリング点84,85,86、さらには、時刻t18のサンプリング点87,88,89が示されている。
【0221】
時刻t14および時刻t18では、システム1002内に存在している手動制御装置10のモデルにかかわらず、信号U1がHIGH値を有する。
【0222】
他方で、時刻t16では、非自己識別手動制御装置26の信号U1がHIGH値を有し、第1の自己識別手動制御装置22の信号U1もHIGHとなり、第2の自己識別手動制御装置24の信号U1がLOWとなる。
【0223】
つまり、運転者がどの手動作動部材14も作動させていないと仮定したうえで、図示のいずれの場合においても変数StateB及び変数StateDはHIGH値に設定される一方で、変数StateCについては値が異なるものになり得る。
【0224】
変数StateAと変数StateCとのペアは、標準的な手動制御装置26の場合と第1の自己識別手動制御装置22の場合と第2の自己識別手動制御装置24の場合とで3つの異なる値を取ることになる。
【0225】
運転者が認識手順時に作動検出器28に対応する手動作動部材14を作動させた場合には、少なくとも変数StateDと変数StateC、変数StateB及び変数StateAのうちの1つ以上の変数とが、システム1002内に存在している手動制御装置10のモデルにかかわらずLOWに設定されることになる(というのも、前述したように手動作動の長さは常に、発生器52により発生されるパルスよりも遥かに長いからである)。
【0226】
変数StateDを設定するブロック438,440の後には、ブロック442においてシステム1002がまず、4種類の変数の値が下記の組合せ:
StateA=LOW
StateB=HIGH
StateC=LOW
StateD=HIGH
に相当しているのか否かを確認する。
【0227】
この確認の結果が肯定である場合には、ブロック444においてシステム1002が、第2の自己識別手動制御装置24であると認識する。その後、当該方法は終了する。
【0228】
ブロック442の確認の結果が否定である場合には、ブロック446においてシステム1002が、4種類の変数の値の総確認を再び、ここでは当該値が下記の組合せ:
StateA=LOW
StateB=HIGH
StateC=HIGH
StateD=HIGH
に相当しているのか否かを確認することによって行う。
【0229】
この確認の結果が肯定である場合には、ブロック448においてシステム1002が、第1の自己識別手動制御装置22であると認識し、当該方法が終了する。
【0230】
ブロック446の確認の結果が否定である場合には、ブロック450においてシステム1002が、標準的なつまり非自己識別手動制御装置26が含まれているものと解釈して当該認識を完了させて、当該方法が終了する。
【0231】
前述した期間T10,T11,T12,T13,T14,Tlow,Tlow1,Thigh,Tlow2の実際の長さは、前述した関係式(3)~(8)を満足するように適宜選択されている。また、これらの長さは、識別パターンID,ID2に従ったモデル識別信号OUTの全長がヒトによる手動作動部材の最小作動時間よりも短くなるように設定される。
【0232】
一例として、実用的な一実施形態では、長さTlow,Tlow1,Thigh,Tlow2がいずれも15msで、矩形パルス60,62,64の長さT10が2msで、待機時間T11が7msで、待機時間T12,13,14が15msである。
【0233】
これらの各種待機時間は、有利なことに、モデル識別信号OUTの安定化を可能にする。
【0234】
ブロック444,448,450の後には当該方法からの出力として、特には図3のブロック106に関して前述したようにインターフェースユニット18からパワーユニット20に、手動制御装置のモデルに関する前記情報が送信される。
【0235】
つまり、システム1002は4種類の変数StateA,StateB,StateC,StateDの値に基づいて、存在している手動制御装置10のモデルを区別することができる。具体的に述べると、安全性を上げるためにシステム1002は、所定のパターンID,ID2に従ったモデル識別信号OUTを出力する手動制御装置のみを自己識別手動制御装置22,24であるとみなし、上記の組合せと異なる組合せについてはいずれも標準的なモデルであるとして対応付ける。
【0236】
認識方法400のより単純化された一実施形態では、変数StateB及び変数StateDが設けられなくてもよく、対応するブロックがなくてもよいが、システム1002の誤差マージンは大きくなる。
【0237】
なお、既述した場合ではモデル識別信号OUTが、通常使用条件下において運転者が作動検出器28に対応する手動作動部材14を用いて入力する前記電気・電子的な指令がないときの手動制御装置10の出力部Aが有する値と当該電気・電子的な指令があるときの手動制御装置10の出力部Aが有する値とに対応する最大2つの値を、予め定められた識別パターンID,ID2に従って経時的に取ることになる。
【0238】
この条件は、インターフェースユニット18のコントローラ48についての必要な変更が最小限で済むので極めて有利であるが、厳密には必須でない。
【0239】
なお、第1の認識方法300の場合には、予め定められた識別パターンIDが手動制御装置10,22,26のモデルを、ブロック322の確認が設けられない場合には長さが1の符号によって符号化するが、長さ2の符号によって符号化するのが好ましい。
【0240】
第2の認識方法400の場合には、予め定められた識別パターンID,ID2が手動制御装置10,22,24,26のモデルを、変数StateB及び変数StateDが設けられない場合には長さ2の、変数StateDが設けられない場合には長さ3の、好ましくは長さ4の符号によって符号化する。
【0241】
モデル識別信号OUTの前記発生器が出力する信号は、例示したパターンと大幅に異なるパターンを辿るものとされてもよく、その場合に前述した認識方法に対して行われなければならない変更は、当業者の能力の範疇であることを理解されたい。
【0242】
第2の作動検出器30への干渉を避けるために、ライン36からの分岐点と入力部54との間に配置されてマイクロプロセッサ52の駆動電圧を降下させるように特化されたスイッチを設けることも可能である。このようなスイッチは、ピンポイントで作動されるスイッチとされてもよい。この場合、いつ前記識別パターンがライン34に出現してモード制御信号S1と置き換わるのか又は当該モード制御信号S1よりも優先されるのかを電子部16は気付くことができず、具体的に述べると電子部16が時刻t0の時間基準を持たないことになるので、通常動作の間は当該識別パターンの認識に関する前述のステップが常に実行されているのが望ましい。
【0243】
変形例として、ワイヤレス(無線)式の制御装置の場合には、あるいは、いずれにせよ「インテリジェンス」制御装置が設けられている場合には、そのような専用のスイッチがMOSFETタイプの駆動型スイッチとされてもよい。
【0244】
電源を装備した制御装置(例えば、ワイヤレス(無線)式の装置等)の場合には、そのような専用のスイッチが、発生器52の入力部と、前記作動検出器が遮断するライン34,36,38以外の前記電源電圧を搬送するラインとの間に配置されてもよい。これにより、3つの作動検出器28,30,32のいずれの作動検出器への電源も低下させることなくマイクロプロセッサ52を駆動させることができる。
【0245】
さらに一般的に言えば、電源電圧PWが、信号U2及び信号U3の評価を行うコントローラ48と同じコントローラにより供給されるものである必要はない。
【0246】
図示の自己識別手動制御装置22,24は、手動制御装置モデル識別信号OUTをモードタイプの前記電気・電子的な指令と共通してコネクタ42の端子Aに対応する出力部で出力するように構成されたものであるが、当該電気・電子的な指令は、ギアシフト動作要求信号とされてもよく、制御対象の装備品1004の種類に応じて他の電気・電子的な指令とされてもよい。
【0247】
上記の説明では、相異なるモデルの自己識別手動制御装置が同一の構造を有しているものと仮定したが、これは厳密には必須でない。具体的に述べると、異なるモデルの場合の発生器52は、異なる様式で前記回路内に接続されるものであってもよく、あるいは、異なる部品により実現されるものであってもよい。
【0248】
特記すべきは、図2のように構成されたシステムでは図7及び図9のブロック図がインターフェースユニット18により実現されるものの、当該ブロック図はシステム1002の制御電子部16の別の箇所で実現されてもよいということである。
【0249】
具体的に述べると、ワイヤレス(無線)式の手動制御装置の場合には図7及び図9のブロック図の全ステップが、同じワイヤレス手動制御装置内に設けられているコントローラで実行されてもよい。
【0250】
反対に、これらのステップのうちの一部が、パワーユニット20で又は制御対象の装備品1004(特に、ディレイラ1006,1008)内に設けられているコントローラで実行されてもよい。具体的に述べると、これは、手動制御装置10がワイヤレス(無線)式であってディレイラ1006,1008を直接駆動するものであり、インターフェースユニット18及びパワーユニット20が設けられていないときに当てはまる。
【0251】
具体的に述べると、遠隔で実行されることのできるステップは、ブロック302~308,402~408に相当する前記呼掛信号を送信するステップおよび/またはブロック310~324,410~450に相当する各種信号を評価するステップであり、後者の場合には手動制御装置10から外部のコントローラへの各種サンプリング時刻での前記各種信号の現在値の送信が適宜行われる。
【0252】
変形例として、自己識別手動制御装置22,24は、モデル識別信号OUTの発生を制御信号S1の発生と共通の出力部Aで行う代わりに、当該モデル識別信号OUTを常に取得可能な状態にするものとされてもよい。例えば、手動制御装置22,24内で信号OUTに特化した専用ラインがインターフェースユニット18の入力段における又は当該インターフェースユニット18以外の接続されているユニットの入力段におけるそれぞれの専用ラインへと接続されて、当該専用ラインがコントローラ48の同じく信号OUTのみに特化した入力に繋がっているものとされてもよい。この場合、それら専用ライン同士は、例えば、図5に示す相補的なコネクタ42,44における追加の端子によって互いに接続されてもよい。しかし、この場合には、自己識別手動制御装置22,24が非自己識別手動制御装置26と完全に互換可能であるとは言えなくなる。
【0253】
これまでに、発明態様の様々な実施形態を説明してきたが、本発明の保護範囲から逸脱しない範囲でさらなる変更が施されてもよい。各種構成要素の形状および/または寸法および/または位置および/または向きおよび/または各種過程(ステップ)の順序が変更されてもよい。一つの構成要素又はモジュールの機能が、複数の構成要素又はモジュールによって実行されるものとして変更されてもよいし、その逆も然りである。図面において互いに直接接続または直接接触している構成要素間には、介在する構造が存在していてもよい。図面において互いに直接前後している過程(ステップ)間には、介在する過程(ステップ)が存在していてもよい。また、ある図面に示された詳細および/またはある図面若しくはある実施形態を参照しながら詳述した内容は、別の図面または別の実施形態にも適用可能である。また、同じ図面に示された詳細の全てまたは同じ文脈で説明されている詳細の全てが、必ずしも同じ実施形態内に存在していなければならないわけではない。単独で若しくは他の構成との組合せで従来技術に照らして革新的であることが判明した構成又は態様については、本明細書において革新的であると明示されているものとは別に、それら自体も革新的であると記載されているものと見なされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電気・電子的な指令を少なくとも1つの自転車装備品(1004)に発行する、少なくとも1つの手動制御装置(10,22,24)であって、
前記手動制御装置(10,22,24)は、
支持体(12)と、
可動式に前記支持体(12)によって支持された少なくとも1つの手動作動部材(14)と、を備え、
さらに、手動制御装置モデル識別信号(OUT)の発生器(52)を備える自転車の車載電子システム(1002)において、
前記車載電子システム(1002)は、
前記の少なくとも1つの自転車装備品(1004)と
前記装備品(1004)の一部であるか又は当該装備品(1004)とは別体で
あるコントローラ(48)と、を備え、
前記コントローラ(48)が、前記モデル識別信号(OUT)を受信し、前記装備品(
1004)の少なくとも1つの動作パラメータを、当該モデル識別信号(OUT)によっ て識別されたモデルに基づいて選択するように構成されている、自転車の車載電子システム(1002)
【請求項2】
請求項1に記載の自転車の車載電子システム(1002)において、
前記モデル識別信号(OUT)の前記発生器(52)が、マイクロプロセッサである、自転車の車載電子システム(1002)
【請求項3】
請求項2に記載の自転車の車載電子システム(1002)において、
前記モデル識別信号(OUT)の前記発生器(52)が、一回プログラム可能なマイクロプロセッサである、自転車の車載電子システム(1002)
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の自転車の車載電子システム(1002)において

当該手動制御装置(10,22,24)が、前記モデル識別信号(OUT)と前記少な
くとも1つの電気・電子的な指令とを、共通の出力部(A)に相異なる時間に出力するように構成されている、自転車の車載電子システム(1002)
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の自転車の車電子システム(1002)において、
当該手動制御装置(10,22,24)が、モデル呼掛信号(64)を受信するように且つ当該モデル呼掛信号(64)に応答して前記モデル識別信号(OUT)を出力するように構成されている、自転車の車載電子システム(1002)
【請求項6】
請求項に記載の自転車の車載電子システム(1002)において、さらに、
前記少なくとも1つの手動作動部材(14)の手動作動を検出し、当該手動作動に応答して前記少なくとも1つの電気・電子的な指令を生成するように構成された少なくとも1 つの作動検出器(28,30,32)、
を備え、前記モデル呼掛信号(64)が、当該手動制御装置(10,22,24)への 供給電圧(PWout,PW)を変化させる、自転車の車載電子システム(1002)
【請求項7】
請求項6に記載の自転車の車載電子システム(1002)において、前記モデル呼掛信号(64)が、前記少なくとも1つの作動検出器(28,30,32)の供給電圧(PWout,PW)を変化させる、自転車の車載電子システム(1002)
【請求項8】
請求項6に記載の自転車の車載電子システム(1002)において、
前記少なくとも1つの作動検出器(28,30,32)のそれぞれが、グランドに接地(40)されたライン(34,36,38)をそれぞれ遮断するノルマルオープンスイッチであり、当該ライン(34,36,38)が前記供給電圧(PWout,PW)である
自転車の車載電子システム(1002)
【請求項9】
請求項に記載の自転車の車載電子システム(1002)において、
前記手動制御装置モデル識別信号(OUT)の前記発生器(52)を実現するマイクロプロセッサが、グランド(40)と、前記ライン(34,36,38)のうちの第1のライン(34)との間に、前記少なくとも1つの作動検出器(28)のうちの第1の作動検出器と並列に、前記手動制御装置モデル識別信号(OUT)を当該第1のライン(34)に出力する出力部(56)を有するように接続されている、自転車の車載電子システム(1002)
【請求項10】
請求項8または9に記載の自転車の車載電子システム(1002)において、
前記モデル識別信号(OUT)の前記発生器(52)を実現するマイクロプロセッサが
、前記呼掛信号(64)を受信する駆動入力部(54)を有する、自転車の車載電子システム。
【請求項11】
請求項10に記載の自転車の車載電子システム(1002)において、前記マイクロプロセッサの駆動入力部(54)が、前記ライン(34,36,38)のうちの第2のライン(36)に前記の少なくとも1つの作動検出器(30)のうちの第2の作動検出器(30)と並列に、前記呼掛信号(64)を当該第2のライン(36)で受信するように接続されている、自転車の車載システム
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の自転車の車載電子システム(1002)において
、前記マイクロプロセッサの前記駆動入力部(54)が、前記呼掛信号(64)を前記供 給電圧(PWout,PW)の変化として受信する、自転車の車載電子システム
【請求項13】
請求項8から10のいずれか1項に記載の自転車の車載電子システム(1002)において、少なくとも1つの前記ライン(34,36,38)が、当該手動制御装置(10,22,24)の外部とのインターフェースとして機能するコネクタ(42)の各端子(A
,B,C)に接続されている、自転車の車載電子システム
【請求項14】
請求項3または請求項3に従属する請求項4から13のいずれか一項に記載の自転車の車載電子システム(1002)において、
前記モデル識別信号(OUT)が、通常使用条件下における前記少なくとも1つの電気
・電子的な指令がないときの共通の出力部(A)の値と前記少なくとも1つの電気・電子的な指令があるときの前記共通の出力部(A)の値とに対応する最大2つの値(LOW,HIGH)を、予め定められた識別パターン(ID,ID2)に従って経時的に取る、自転車の車載電子システム
【請求項15】
請求項14に記載の自転車の車載電子システムにおいて、
前記の予め定められた識別パターン(ID,ID2)が、当該手動制御装置(10,22,24)のモデルを、長さが1以上の符号によって符号化するものである、自転車の車載電子システム。
【請求項16】
請求項15に記載の自転車の車載電子システムにおいて、前記符号は、長さが4の符号によって符号化するものである、自転車の車載電子システム。
【請求項17】
請求項15または16に記載の自転車の車載電子システムにおいて、前記モデル識別信号(OUT)の前記発生器(52)を実現するマイクロプロセッサが、当該マイクロプロセッサの駆動入力部(54)の電圧降下(64)であって、前記呼掛信号(64)を実現する電圧降下(64)に応答して、前記信号(OUT)を前記予め定められた識別パターン(ID,ID2)に従った電圧で出力するように構成されている、自転車の車載電子システム。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の自転車の車載電子システムにおいて、
前記コントローラ(48)が呼掛信号(64)を出力するように構成されており、
前記モデル識別信号(OUT)の前記発生器(52)が、前記呼掛信号(64)を受信すると、当該モデル識別信号(OUT)を出力するように構成されている、自転車の車載電子システム。
【請求項19】
請求項18に記載の自転車の車載電子システムにおいて、前記少なくとも1つの装備品(1004)がディレイラ(1006,1008)であり、かつ、前記少なくとも1つの動作パラメータが当該ディレイラ(1006,1008)の動作パラメータのセットである、自転車の車載電子システム
【請求項20】
請求項19に記載の自転車の車載電子システムにおいて、前記少なくとも1つの装備品(1004)がフロントディレイラ(1006)である、自転車の車載電子システム
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の自転車の車載電子システムにおいて、
前記少なくとも1つの自転車装備品(1004)が自転車の電気機械式のディレイラ(1006,1008)であり、前記コントローラ(48)が前記自転車の電気機械式のディレイラ(1006,1008)の一部であり
手動制御装置(10,22,24)に呼び掛ける手順(2022,204,206)、
これに応答して、前記手動制御装置(10,22,24)からモデル識別信号(OUT
)を受信する手順、および
前記モデル識別信号(OUT)によって識別されたモデルに基づいて、ィレイラ(1006,1008)の前記動作パラメータの標準的なセットを選択する手順(210,212,214,216)、を実行するように構成されている自転車の車載電子システム
【請求項22】
自転車電子システム(1002)のコンフィギュレーション方法(200)であって、
-手動制御装置(10,22,24,26)に呼び掛ける過程(202,204,206)と、
-これに応答して、前記手動制御装置(10,22,24,26)から所定のパターンを有するモデル識別信号(OUT)が受信されると、当該手動制御装置(10,22,24,26)を自己識別手動制御装置(10,22,24)とみなす過程と、
-そうでない場合には、前記手動制御装置(10,22,24,26)を非自己識別手動制御装置(10,26)とみなす過程と、
もし手動制御装置(10,22,24,26)が、非自己識別手動制御装置(10,26)とみなされる場合には、少なくとも一つの構成要素(1004)の動作パラメータのスタンダードのセットを選択することによって、または
もし手動制御装置(10、22,24,26)が、自己識別手動制御装置(10,22,24)とみなされる場合には、少なくとも一つの構成要素(1004)の動作パラメータの変更されたセットを選択することによって、
前記自転車電子システム(1002)の少なくとも1つの構成要素(1004)を、前記手動制御装置(10,22,24,26)が自己識別手動制御装置(10,22,24)と非自己識別手動制御装置(10,26)のいずれとみなされているかに応じて異なる様式でコンフィギュレーションする過程(208,210,212,214,216)と、を備える、コンフィギュレーション方法(200)。
【請求項23】
自転車の電子式のギアシフト装置のコンフィギュレーション方法(200)であって、
-手動制御装置(10,22,24)に呼び掛ける過程(202,204,206)と、
-これに応答して、前記手動制御装置(10,22,24)からモデル識別信号(OUT)を受信する過程と、
-前記手動制御装置によって制御されるディレイラ(1006,1008)の動作パラメータのセットを、前記モデル識別信号(OUT)によって識別されたモデルに基づいて選択する過程(210,212,214,216)と、を備え、
前記ディレイラ(1006,1008)が、前記車載電子システム(1002)に存在する前記手動制御装置(10,22,24)のモデルに基づいて、異なる様式で制御される、コンフィギュレーション方法(200)
【外国語明細書】