(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021343
(43)【公開日】2023-02-10
(54)【発明の名称】二重管の内管サポート部材
(51)【国際特許分類】
F16L 3/10 20060101AFI20230202BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20230202BHJP
F16L 9/18 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
F16L3/10 Z
F16L57/00 A
F16L9/18
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199976
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2021199846の分割
【原出願日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2020210321
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000146814
【氏名又は名称】株式会社新来島どっく
(74)【代理人】
【識別番号】100090044
【弁理士】
【氏名又は名称】大滝 均
(72)【発明者】
【氏名】阿部 伸也
(72)【発明者】
【氏名】田窪 竜太
(57)【要約】
【課題】
内管と外管との間が金属接触(メタルタッチ)構造ではなく、内管や外管が伸縮等によって動く際にも、金属接触による摩耗が原因となる内管の破損及びスパーク(金属摩耗による発火)が起きない形状の内管サポート部材の提供、すなわち、二重管の内管支持において、内管の摺動性に優れ、作業性が改善すると共にメタルタッチが防止された安全な二重管の内管サポート部材を提供する。
【解決手段】
二重管の外管に溶接固定される断面T字状サポート部材と、断面T字状サポート部材の上に配置される高さ調整シムプレートと、高さ調整シムプレートの上に配置され、二重管の内管に接するPTFEシートと、内周面に配置されるピラフロン材とPTFEシート間に内管を把持するピラフロンUボルトと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重管の外管に溶接固定される断面T字状サポート部材と、
断面T字状サポート部材の上に配置される高さ調整シムプレートと、
高さ調整シムプレートの上に配置され、二重管の内管に接するPTFEシートと、
内周面に配置されるピラフロン材とPTFEシート間に内管を把持するピラフロンUボルトと、
を有することを特徴とする二重管の内管サポート部材。
【請求項2】
断面T字状内管サポート部材が、外管同士の接合時に外管内端部近傍に溶接配置される断面T字状内管サポート部材であることを特徴とする請求項1に記載の二重管の内管サポート部材。
【請求項3】
高さ調整シムプレート及びPTFEシートにより内管が外管と同心に配置されることを特徴とする請求項1に記載の二重管の内管サポート部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNGを燃料とするガス燃料船に使用される二重管の内管を外管内に支持する内管サポート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
LNG燃料船のガス燃料供給配管(以下、「ガス燃料管」)は、気化された天然ガス燃料を供給するガス供給管(以下、「内管」とも称する)を通気管(以下、「外管」とも称する)で囲った二重構造配管を使用することが義務付けられている区画がある。
【0003】
この種の二重管の内管サポート部材に関しては、例えば、実開平5-73383号公報に開示のものが知られている。
実開平5-73383号公報の開示は、考案名称「ディーゼル機関用二重管式燃料管支持構造」に係り、「二重管式燃料管を厚肉の高圧内管とこの内管の外側に配設されるベローズ管とで二重管構造に構成し、上記高圧内管を直接挟持可能な支持体を介してサポートブラケットにサポートできるようにした、ディーゼル機関用二重管式燃料管支持構造を提供することを目的とする」発明解決課題において(同公報明細書段落番号0008参照)、「厚肉の高圧内管と同高圧内管の外側に配設される外管とで構成された二重管式のディーゼル機関用燃料管支持構造において、上記外管がベローズ管で構成される一方、同ベローズ管に剥離部が形成され、同剥離部を通じて上記ベローズ管の内側に挿入されて上記高圧内管を直接支持可能な高圧内管支持体をそなえ、同高圧内管支持体が、上記ディーゼル機関に装着されたサポートブラケットに取付けられて上記高圧内管を受け入れ可能なV字溝を形成された受け金具と、同受け金具に締付けボルトで締付けられるとともに上記V字溝と協働して上記高圧内管を挟持可能なV字溝を形成された締付け金具とで構成されている」ことにより(同公報実用新案登録請求の範囲請求項1の記載参照)、「(1) 二重管構造の高圧内管を直接サポートすることが可能となり、その結果燃料管の振動応力を大幅に低減できる。(2) 締付けボルトの締付けにより、増締めを簡単に行なうことができる。」等の効果ないし利点が得られるとするものである(同公報明細書段落番号0025参照)。
【0004】
図4は、実開平5-73383号公報に
図1として添付される開示考案の一実施例としてのディーゼル機関用二重管式燃料管支持構造の平断面図である。
図4において、符号102は、 高圧内管、104は、受け金具、104b、105bは、V字溝、105は、締付け金具、105aは、締付けボルト、106は、カバー、120は、高圧内管支持体である(なお、符号は、先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、3桁に変更して説明した。)。
図4に示されるディーゼル機関用二重管式燃料管支持構造は、V字溝104b、105bを有する受け金具104及び締付金具105によって高圧内管102を支持する構造であり、高圧内管102とこれを支える金具104,105との間は金属(高圧内管102とこれを支える金具104,105の両金属)同士が接触するメタルタッチ構造であるので、線膨張による内管の伸縮で金属の摩耗等によって火花が生じ内管に穴が空き内管を流通するガス等が爆発する危険もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願発明は、この内管サポート部材について、内管と外管との間が金属接触(メタルタッチ)構造ではなく、内管や外管が伸縮等によって動く際にも、金属接触による摩耗が原因となる内管の破損及びスパーク(金属摩耗による発火)が起きない形状の内管サポート部材の提供、すなわち、二重管の内管支持において、内管の摺動性に優れ、作業性が改善すると共にメタルタッチが防止された安全な二重管の内管サポート部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本願請求項1に係る発明は、二重管の内管サポート部材において、二重管の外管内に溶接固定される断面T字状サポート部材と、断面T字状サポート部材の上に配置される高さ調整シムプレートと、高さ調整シムプレートの上に配置され、二重管の内管に接するPTFEシートと、内周面に配置されるピラフロン材とPTFEシート間に内管を把持するピラフロンUボルトと、を有することを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の二重管の内管サポート部材において、断面T字状内管サポート部材が、外管同士の接合時に外管内端部近傍に溶接配置される断面T字状内管サポート部材であることを特徴とする。
さらに、本願請求項3に係る発明は、前記請求項1に記載の二重管の内管サポート部材において、高さ調整シムプレート及びPTFEシートにより内管が外管と同心に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成からなる本願発明は次のような効果を有する。
(1)内部を流れる流体の温度変化の影響や、船体のホギング・サギング、船体運動の加速度の影響で内管と外管で変位・伸縮が異なる二重管において、内管と外管はそれぞれの動きに追従することなく一定位置に固定することができる。
(2)二重管の外管と内管を固定する際に容易に、かつ確実に外管の芯に対して内管の芯が重なるような施工ができ、さらに施工設置後の二重管の内管・外管が動く際に、メタルタッチ箇所がないので、金属接触による摩耗が原因となる内管の破損及びスパークが起きないという効果を奏する(分割原出願明細書段落番号0011の(3)(4))。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は、本実施例1に係る二重管の内管サポート部材であり、
図1(b)は、本実施例1に係る二重管の内管サポート部材に使用するピラフロンUボルト中央部の断面概略図である。
【
図2】
図2は、本実施例1に係る二重管の内管サポート部材のピラフロンUボルトを用いて内管100と外管101との間に組み立て固定する概略を示す図である。
【
図3】
図3(a)(b)(c)は、所定長の外管101の端部内近傍に本実施例1に係る二重管のサポート部材を溶接固定した概略を示す図であり、
図3(a)は、管端方向から見た図であり、
図3(b)は、側面図(外管101は判断面)、
図3(c)は平面図(外管101は判断面)である。
【
図4】
図4は、実開平5-73383号公報に
図1として添付される開示考案の一実施例としてのディーゼル機関用二重管式燃料管支持構造の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る二重管の内管サポート部材を実施するための一実施例を図面に基づき詳細に説明する。本件分割に係る特許出願においては、分割出願の基礎となる特許出願(特願2021-199846)明細書に実施例2として説明した内管サポート部材10を本実施例1に係る二重管の内管サポート部材の発明として特許化を図るものである。
【実施例0011】
図1-
図3は、本発明に係る二重管の内管サポート部材を実施するための一実施例である二重管の内管サポート部材の実施例1を示す図であり、そのうち、
図1(a)は、本実施例1に係る二重管の内管サポート部材である(原出願(特願2021-199846)明細書に実施例2に係る内管サポート部材10の斜視図として添付した
図2(a)と同じ図であり、
図1(b)は、本実施例1に係る二重管の内管サポート部材に使用するピラフロンUボルト中央部の断面概略図であり、分割原出願明細書添付の
図2(b)と同じ図である。)。また、
図2は、本実施例1に係る二重管の内管サポート部材のピラフロンUボルトを用いて内管100と外管101との間に組み立て固定する概略を示す図であり、
図3(a)(b)(c)は、所定長の外管101の端部内近傍に本実施例1に係る二重管のサポート部材を溶接固定した概略を示す図であり、
図3(a)は、管端方向から見た図であり、
図3(b)は、側面図(外管101は判断面)、
図3(c)は平面図(外管101は判断面)である(なお、
図1は、原出願明細書添付の
図2、
図2は、同
図3、
図3は、同
図4であり、いずれも原出願明細書添付の図の変更はない。)。
【0012】
図1-
図3においては、符号10は、本実施例1に係る二重管の内管サポート部材、11は、T型サポート、12は、SUS製高さ調整シムプレート、13は、PTFEシート、14は、ピラフロンUボルト、14aは、凹切欠き、14bは、ピラフロン材、15a、15bは、上ナット、16a、16bは、下ナット、100は、内管、101は、外管である(いずれも原出願明細書添付の図と符合して説明するために、分割原出願明細書添付の
図2-
図3で使用する同じ符号を付した。)。
【0013】
なお、PTFEとは、摩擦係数が非常に低い特性を有するポリテトラフルオロエチレン4フッ化エチレン樹脂「通称:テフロン(登録商標)R」をいい(https://kashima-kagaku.com/material/ptfe/)、また、ピラフロン(登録商標)は、ふっ素樹脂「PTFE」をベースレジンとした日本ピラー工業株式会社の各種シール材・すべり材製品をいう(https://premium.ipros.jp/pillar/product/category/27087/)。(原出願明細書段落番号0021参照)。
【0014】
図1(a)(b)に示すように、本実施例1に係る二重管の内管サポート部材10は、二重管の外管101に対して、SUS製フラットバーにて製作したT型サポート部材11を溶接接合し、T型サポート部材11に内管100を乗せる際、T型サポート部材11と内管100との間にPTFEシート13と高さ調整シムプレート12を挟みこむ構造としたものである。なお、シムプレート12の厚みは任意値としており、外管101の芯と内管100の芯が同一となるよう、シムプレート12で高さの調節を行うようにしたものである。
また、ピラフロンUボルト14は、U字状ボルトの内側に凹切欠き14aを形成し、この凹切欠き14aに摺動材たるピラフロン材14bを介装させた構造とするものである。(原出願明細書段落番号0022参照)
【0015】
図2は、ピラフロンUボルト14を用いて内管100と外管101との間に組み立て固定する概略を示す図である。
図2において、符号は
図1(a)(b)で示した同じ部材は同じ符号で示した。
図2に示すような組み立てを行った後、狭隘な外管101の端部近傍に溶接する。この結果、所定長の外管101の端部内に本実施例1に係る二重管の内管サポート部材10を取付けることができることなる。(原出願明細書段落番号0023参照)
【0016】
図3(a)(b)(c)は、所定長の外管101の端部内近傍に本実施例1に係る二重管の内管サポート部材10を溶接固定した概略を示す図であり、
図3(a)は、管端方向から見た図であり、
図3(b)は、側面図(外管101は判断面)、
図3(c)は平面図(外管101は判断面)である。
図3(a)(b)(c)においても符号は、
図1(a)(b)及び
図2で示した同じ部材は同じ符号で示し、その詳しい説明は省略する。(原出願明細書段落番号0024参照)
【0017】
図3(a)(b)(c)から明らかなように、本実施例1に係る二重管の内管サポート部材10は、適宜の厚さの高さ調整シムプレート12を介在させることにより、外管101と内管100が同心位置となるように組み立てており、また、所定長の外管101の端部内近傍に本実施例1に係る二重管の内管サポート部材10が溶接により取りつけられている構造とするものである。(原出願明細書段落番号0025参照)
【0018】
すなわち、本実施例1に係る二重管の内管サポート部10の構造ないし形状は、外管と内管を同心に外管内端部近傍に溶接配置する断面T字状サポート部材11と、当該サポート部材11上に内管を把持するUボルト14とを有する基本的構造ないしは形状としたものである。そして、断面T字状サポート材11は、その上に高さ調整シムプレート12が配置され、高さ調整シムプレート12上に内管に接して配置されるPTFEシート13と、内管に跨がるUボルト14の内周面にピラフロン14aが内管100に接するピラフロンUボルト14と、を有する構造ないし形状としたものである。(原出願明細書段落番号0026参照)
【0019】
また、内管100は、摺動性の優れたPTFEシート13及び同ピラフロン材14bと接触するようにしたので、本実施例1に係る二重管の内管サポート部材10は、内管100との接触部にPTFEシート13を挟むことで滑りを良くし、メタルタッチによる金属磨耗を防ぐ形状とし、さらに、内管100と外管101の変位量が異なることから、Uボルト14に対して内管100からの応力を受けないようにして、内管100の上下両サイドとUボルト14が干渉しないような"コの字形状"としたものである。(原出願明細書段落番号0027参照)
【0020】
この結果、内管100の内部を流れる流体の温度変化や船体のホギング・サギング、船体運動の加速度等の影響で船内配管自体が伸縮・変位し、その伸縮と変位は二重管の内管100と外管101では異なる動きをする二重管において、上記のような構造ないしは形状の本実施例1に係る二重管の内管サポート部材10を使用したので、内管100と外管101のそれぞれの動きに追従することなく、内管100を常に一定の状態で固定することができることとなる。(原出願明細書段落番号0028参照)
【0021】
また、本実施例1に係る二重管の内管サポート部材10を使用する二重管は、外管101と内管100を固定する際に容易に、かつ確実に外管の芯に対して内管の芯が重なるような施工ができ、さらに内管100・外管101が動く際に、メタルタッチ箇所がないので、金属接触による摩耗が原因となる内管100の破損及びスパークが起きないという効果を奏することとなる。(原出願明細書段落番号0029参照)