IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 松谷化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021357
(43)【公開日】2023-02-10
(54)【発明の名称】食品素材の結着用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20230202BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20230202BHJP
【FI】
A23L5/00 A
A23L29/219
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022200240
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森本 倫典
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、結着性、成形性、経済性の点において、従前より優れた食品素材の結着用組成物を提供することにある。特に、これまではプルランが食品素材の結着に有意な素材として利用されてきたが、そのプルランより結着性、成形性、経済性の点において優れた食品素材の結着用組成物を提供することにある。
【解決手段】 ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物、又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物とα化澱粉とを含む組成物が、食品素材の結着に適するため、これを利用することにより結着性、成形性、経済性の点において従前より優れた食品素材の結着用組成物を提供することができる。ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物とα化澱粉の好ましい組成比は、(100~80):(0~20)質量部であり、溶液として食品素材に付着させて使用することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物、又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物とα化澱粉を含む食品素材の結着用組成物であって、前記α化澱粉が少なくとも馬鈴薯澱粉又はタピオカ澱粉である、食品素材の結着用組成物。
【請求項2】
前記α化澱粉がヒドロキシプロピル化処理されたものである、請求項1記載の食品素材の結着用組成物。
【請求項3】
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物100~80質量部に対してα化澱粉を0~20質量部の割合で含む、請求項1又は2に記載の食品素材の結着用組成物。
【請求項4】
1~30質量%溶液として使用される、請求項3記載の食品素材の結着用組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の食品素材の結着用組成物の1~30質量%溶液により食品素材が結着成形されてなる成形食品。
【請求項6】
請求項3記載の食品素材の結着用組成物の1~30質量%溶液により食品素材が結着成形されてなる成形食品。
【請求項7】
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物、又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物とα化澱粉を1~30質量%で含む溶液を食品素材に付着させて成形する食品素材の結着成形方法であって、前記α化澱粉が少なくとも馬鈴薯澱粉又はタピオカ澱粉である、食品素材の結着成形方法。
【請求項8】
前記α化澱粉がヒドロキシプロピル化処理されたものである、請求項7記載の食品素材の結着成形方法。
【請求項9】
前記溶液がヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物100~80質量部に対してα化澱粉を0~20質量部の割合で含むものである、請求項7又は8記載の食品素材の結着成形方法。
【請求項10】
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物、又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物とα化澱粉を1~30質量%で含む溶液を食品素材に付着させて成形する成形食品の製造方法であって、前記α化澱粉が少なくとも馬鈴薯澱粉又はタピオカ澱粉のα化澱粉である、成形食品の製造方法。
【請求項11】
前記α化澱粉がヒドロキシプロピル化処理されたものである、請求項10記載の成形食品の製造方法。
【請求項12】
前記溶液がヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物100~80質量部に対してα化澱粉を0~20質量部の割合で含むものである、請求項10又は11記載の成形食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小片状、顆粒、粉状の食品素材どうしを結着して成形するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナッツやドライフルーツ、穀物フレークやパフ(シリアル)、クラッカー、クッキーといった食品素材の小片物を糖質シロップ等で結着・成形させてなる成形食品がある。しかし、その結着に用いられるシロップ等には、結着性、保形性、吸湿性など改善すべき課題があり、これらを改善する新たなシロップ等が提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、シリアルバーの結着に用いられる糖質と油脂とを含む乳化型シロップが開示され、特許文献2には、シリアルなどの結着剤としての水溶性食物繊維が開示されている。また、成形スナック菓子の結着に用いる組成物として、特許文献3には、DE10~18のマルトデキストリン及びα化澱粉を1:1.63~2.8の割合で含む組成物が、特許文献4には、DE10~18のマルトデキストリン及び酸化澱粉を50~99:50~1の割合で含む組成物が開示されている。また、特許文献5には、食品素材の小片物の結着剤として、プルラン/分岐α―グルカンの混合比が1.5~4の組成物が開示されている。
【0004】
このように、これまでの食品素材の結着剤は、多くは多糖類を主体とするものであり、なかでも多糖類であるプルランを主体とする結着剤は、他のものに比べて結着性や成形性に優れることから注目されてきた(例えば、特許文献5の0003参照)。しかし、そのプルランであっても、結着力が十分でないために衝撃耐性が不足し、製品歩留まりが低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-289369号公報
【特許文献2】特開2019-154253号公報
【特許文献3】特開2018-68264号公報
【特許文献4】特開2015-164418号公報
【特許文献5】特開2018-33453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、結着性や成形性の点において従前より優れた、食品素材の結着用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、プルランに優る結着剤を検討していたところ、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物、又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物とα化澱粉とを含む組成物が、食品素材の結着に適することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、以下の〔1〕~〔12〕から構成されるものである。
[1]ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物、又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物とα化澱粉を含む食品素材の結着用組成物であって、前記α化澱粉が少なくとも馬鈴薯澱粉又はタピオカ澱粉である、食品素材の結着用組成物。
[2]前記α化澱粉がヒドロキシプロピル化処理されたものである、上記[1]に記載の食品素材の結着用組成物。
[3]ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物100~80質量部に対してα化澱粉を0~20質量部の割合で含む、上記[1]又は[2]に記載の食品素材の結着用組成物。
[4]1~30質量%溶液として使用される、上記[3]に記載の食品素材の結着用組成物。
[5]上記[1]又は[2]のいずれかに記載の食品素材の結着用組成物の1~30質量%溶液により食品素材が結着成形されてなる成形食品。
[6]上記[3]記載の食品素材の結着用組成物の1~30質量%溶液により食品素材が結着成形されてなる成形食品。
[7]ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物、又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物とα化澱粉を1~30質量%で含む溶液を食品素材に付着させて成形する食品素材の結着成形方法であって、前記α化澱粉が少なくとも馬鈴薯澱粉又はタピオカ澱粉である、食品素材の結着成形方法。
[8]前記α化澱粉がヒドロキシプロピル化処理されたものである、上記[7]記載の食品素材の結着成形方法。
[9]前記溶液がヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物100~80質量部に対してα化澱粉を0~20質量部の割合で含むものである、上記[7]又は[8]記載の食品素材の結着成形方法。
[10]ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物、又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物とα化澱粉を1~30質量%で含む溶液を食品素材に付着させて成形する成形食品の製造方法であって、前記α化澱粉が少なくとも馬鈴薯澱粉又はタピオカ澱粉のα化澱粉である、成形食品の製造方法。
[11]前記α化澱粉がヒドロキシプロピル化処理されたものである、上記[10]記載の成形食品の製造方法。
[12]前記溶液がヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物100~80質量部に対してα化澱粉を0~20質量部の割合で含むものである、上記[10]又は[11]記載の成形食品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物を利用すれば、効率的に食品素材どうしを結着させて成形することができるとともに、安定性のよい成形食品を提供することができる。また、本発明の組成物は使用量を加味してもプルランより低コストとなるため、経済性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にいう「食品素材」とは、比較的水分の少ない固形状の食品素材、例えば、ナッツなどの種実類、穀物フレークやパフといった穀物加工品、乾燥された果実や野菜などのほか、スナック・クッキー・チョコ・キャンディーといった菓子類の生地やその焼成粉砕品、澱粉やガムのような多糖類、油脂類、タンパクなどの動植物からの抽出物又はそれらの加工品などであって、比較的水分の少ない固形状の食品原料すべてを指す。これら食品素材の形態や大きさはとくに問わないが、成形時に複数素材を組み合わせる場合は、少なくともそのうちの一素材が小片状、顆粒状又は粉状のいずれかの形態のもの、具体的には目安として長径おおよそ0.01~30mm、0.05~20mm、又は0.1~10mm程度のものであることが好ましい。また、結着・成形後の保存安定性の面から、食品素材として用いる際の水分量は30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下、さらには15%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明にいう「ヒドロキシプロピルデンプン」は、原料澱粉にプロピレンオキサイドを作用させて得られる水酸基置換型加工澱粉である。本発明で用いるヒドロキシプロピルデンプンの加工度に制限はないが、本発明の効果をより効率的に得る観点から、置換度であるDS(Degree of Substitiutionの略。澱粉を構成するグルコース残基の3つのフリーの水酸基すべてが置換されたときの置換度を3とする。)が0.02~0.2のものが好ましく、0.06~0.19、さらには0.10~0.18のものがより好ましい。このDSの詳細な測定方法は、例えば、「第9版 食品添加物公定書(2018年、厚生労働省 消費者庁)」のヒドロキシプロピルデンプン(p.847)などに記載がある。
【0012】
本発明にいう「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」は、上述のヒドロキシプロピル化の処理に加えてトリメタリン酸ナトリウムやオキシ塩化リンなどの架橋剤による処理を施した加工澱粉であり、「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物」とは、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを酸や酵素で分解したものをいう。その分解の程度はとくに問わないが、DEが2~16、2~10、又は3~5であることが好ましく、また、数平均分子量Mnが1000~18000、2000~18000、又は6000~15000であることがより好ましい。
【0013】
本発明にいう上記の「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物」の原料澱粉の種類に制限はなく、米澱粉、小麦澱粉、コーン澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、エンドウ豆澱粉、これらのワキシー種の澱粉など、種々のものを利用することができる。もっとも、本発明の効果を効率的に得る観点から、ワキシーコーン澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉を原料とすることが好ましく、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉を原料としておくことがより好ましい。
【0014】
本発明にいう「α化澱粉」の原料澱粉に制限はなく、米澱粉、小麦澱粉、コーン澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、エンドウ豆澱粉、これらのワキシー種の澱粉などを用いることができる。もっとも、本発明の効果を効率的に得る観点から、ワキシーコーン澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉などを選択するのがよく、馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉を選択することが好ましく、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉を選択することがより好ましい。
【0015】
上記の「α化澱粉」は、澱粉の水懸濁液をスプレードライ、ドラムドライ、押出造粒などの加熱による糊化乾燥方法によって糊化乾燥させたものであり、一部又は全部が冷水可溶の状態となる糊化乾燥方法であれば手段はとくに限定されない。
【0016】
また、上記の「α化澱粉」の原料となる澱粉は、エーテル化、エステル化、架橋、酸化、酸処理といった加工処理がされた加工澱粉でない、いわゆる未加工澱粉であればよい。もっとも、加工澱粉を用いてもよく、その場合、エーテル化又はアセチル化された加工澱粉を用いることが好ましく、エーテル化された加工澱粉を用いることがより好ましく、ヒドロキシプロピル化された加工澱粉を用いることがもっとも好ましい。また、その原料澱粉種に限定はないが、ワキシーコーン澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉などを原料とすることが好ましく、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉を原料とすることがより好ましい。
【0017】
本発明の組成物は、上記ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物、又は、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物及びα化ヒドロキシプロピルデンプンを含めばよく、その配合比は特に限定されないが、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物100~80質量部又は99.5~85質量部に対し、α化ヒドロキシプロピルデンプン0~20質量部又は0.5~15質量部の割合で用いることが好ましい。
【0018】
本発明にいう「成形食品」とは、上記食品素材の一以上に対して本発明の組成物を配合することにより、当該食品素材を本発明の組成物を介して結着・成形させた食品のことをいう。その成形操作は、食品素材そのもの又はその食品素材に予め油脂や糖質で被覆したものに対し、本発明の組成物の溶解液を噴霧、滴下、投入、攪拌混合、浸漬などの手段により配合することによって行う。当該溶解液は、本発明の組成物を1~40質量%、好ましくは1~30、7~30、又は10~15質量%となるよう非加熱又は加熱により溶解した溶液を、配合対象となる食品素材が溶融しない温度を選択するなど当該食品素材の特性に応じて、4~100℃、好ましくは10~50℃、より好ましくは15~40℃の範囲の液温で配合して成形するのが好ましい。また、当該組成物の溶解液の食品素材に対する配合比は、当該食品素材100質量部に対して2~50質量部、好ましくは3~40質量部、より好ましくは5~30質量部であり、出来上がりの成形食品中の本発明の組成物の含有量は、0.1~20質量%、0.3~15質量%又は0.5~10質量%程度である。
【0019】
本発明の組成物を食品素材に配合した後の「成形」の方法に限定はなく、食品素材の一以上に対し、本発明の組成物の溶解液を結着用液(バインダー液)として噴霧、滴下、投入、浸漬、混合などの各種添加方法により配合し、通気による浮遊・飛散のほか、攪拌、振動、圧縮などの物理的な力を加えるなどして、その素材どうしが結着した造粒物や不揃いな塊状としてもよいし、バー状、シート状、球状、多角形状などの成形器に投入して固める方法により成形してもよいし、そのように成形してから適宜切断するなどして再成形するのでもよい。また、焼成前のパン生地、クッキー生地、スナック生地や、冷やし固める前のチョコレート生地、キャンディー生地といった可塑性ある食品素材に対し、本発明の組成物を先に例示した手段により付着させた食品素材を押し付けるなどして焼成又は冷やし固めた形態の成形食品とすることもできる。なお、可塑性のある生地は、対向する食品素材の形状に沿って変形して付着しやすくなるため、比較的低濃度、例えば、0.5~10質量%、好ましくは1~5質量%の溶液として用いれば十分に本発明の効果を発揮することができる。
【0020】
本発明の成形食品を製造する際、本発明の組成物自体の効果を阻害しない限りにおいて、さらに副原料を使用することができる。例えば、単糖、二糖、糖アルコール、オリゴ糖、デキストリン、水あめ、難消化性デキストリン、難消化性グルカン、分岐α-グルカン、ポリデキストロース、イヌリンなどの水溶性食物繊維、でん粉、ガム類(分解物含む)のほか、油脂、塩、アミノ酸、調味料、甘味料、乳化剤、香料、アルコール類などを用いることができる。
【0021】
以下、本発明の実施形態を記載するが、実施例に特に限定されるものではない。
【実施例0022】
(結着試験1)
各試料溶液300mlにアーモンドダイスカット5g(みの屋、5mmカット仕様品)の入った目開き600μmのメッシュ容器を浸漬後、5秒後に引き上げ余分な試料溶液を切ってから、内径23mmのアルミ製円柱型に投入してほぼ同径の注射器ピストンで押出成形した。その成形物の評価は、(1)型から取り出したときの「型離れ」状態の観察、(2)型から取り出して100℃乾燥機で1時間乾燥したものの官能評価(「食感」)、(3)成形物(1試験区あたり3個)を手で崩さないよう匙で丁寧に透明スタンディングパウチ(LZ-16)に移し入れ、300rpmの上下振動を10秒間与えたときの崩壊状態の観察により行った。結果は表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
デキストリンを用いると、食品素材どうしが一旦結着して成形物を調製することはできたが、匙などを用いて注意深く持ち上げないとすぐに崩れる状態にあった。一方、「フードテックス」(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物)又は「プルラン」を用いると、成形操作時の型離れや成形乾燥後の食感に優れるだけでなく、その成形物に過酷な振動を与えても、その形状が一定程度保持されていた。
【0025】
(結着試験2)
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物に優れた結着効果が認められたため、さらなる改良を目的として、試料No.4のα化澱粉及びその他のα化澱粉との併用について検討した。具体的には、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物90質量部:各α化澱粉10質量部からなる組成物の10%溶液を用い、上の付着性試験1と同じ手順で実施した。得られた結果は表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
タピオカのα化澱粉の場合、未加工品又はヒドロキシプロピル化処理品に好ましい結着効果が認められたが(No.7、10)、架橋処理品については未加工品やヒドロキシプロピル化処理品ほどの効果はなかった(No.9)。また、馬鈴薯のα化澱粉の場合、タピオカのα化澱粉と同じく未加工品に好ましい結着効果が認められた(No.6)。一方、コーンのα化澱粉にはタピオカのα化澱粉ほどの好ましい結着効果は認められなかった。
【0028】
(結着試験3)
表2のとおり、試料No.10(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物90質量部:タピオカ原料のα化ヒドロキシプロピル化澱粉10質量部)の10%溶液に最も優れた結着効果が認められたため、その1、3、5、7、10、13、15、20、30、40%溶液についても結着等の効果を確認した(表3)。
【0029】
【表3】
【0030】
表3のとおり、試料No.10の1、3、5%溶液では結着力はやや弱く、掴むと崩れる傾向にあった。一方、7、10、13、15%溶液では成形時の型離れ、結着力、食感ともに良好であった。20%以上になると型離れが劣るようになり、40%になると型離れが悪く、また、その成形物は硬く噛みにくかった。
【0031】
(結着試験4)
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物に対するα化澱粉の使用割合を検討した。ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物(「フードテックス」)の99.5、99、97、95、90、85、80、70、60、50質量部に対し、α化澱粉(「マツノリンTG600」)をそれぞれ0.5、1、3、5、10、15、20、30、40、50質量部配合した組成物を調製し、その10%溶液を用いて上と同様の方法で食品素材成形物を作製し、その状態を確認した(表4)。
【0032】
【表4】
【0033】
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの分解物100質量部のうち0~3質量部をα化澱粉としたときは、そのα化澱粉の量が多くなるにつれて、型離れ、結着性及び食感のすべてが良好となり、その効果は3質量部で最大であった。また、3質量部を超えて15質量部までα化澱粉としたときにも、型離れ、結着性及び食感のすべてが良好であった。一方、α化澱粉の量が20質量部を超えて多くなるにつれ、結着性は良好であるものの型離れにやや難があり、食感は口中で容易に崩れて歯つきはないもののやや硬めの傾向となった。
【0034】
(付着試験1)
アーモンドクッキー(粒アーモンド1粒をクッキー生地の表面にのせて焼成した菓子)を用いて付着試験を行った。まず、表5記載の配合のクッキー生地を直径4cm、厚さ3mmに成形し、その中心部に、先述の試料No.5(0.5%)とNo.10(1%)の各水溶液に粒アーモンドを1分間浸漬してから網上に取り出したものを1粒ずつ押し付け、175℃で23分間焼成した。このアーモンドクッキーは、1試験区あたり15個作製し、うち10個を透明スタンディングパウチ(LZ-16)袋に入れ、そのパウチに300rpmの上下振動を2分与えた後、クッキーから剥がれ落ちた粒アーモンドの数を観察した(表6)。
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
クッキー生地などの可塑性のある食品素材に対して、本発明の組成物を付着させた食品素材を結着させる場合は、1%程度の溶液で十分な結着力が得られた。
【0038】
本発明の組成物は、プルラン(試料No.5)より付着性が良好であるだけでなく重量単価が安くコストメリットがあるため、結着性だけでなく経済性に優れた結着用組成物といえる。