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特開2023-21438油脂量が低減された乳化液状調味料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021438
(43)【公開日】2023-02-10
(54)【発明の名称】油脂量が低減された乳化液状調味料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/60 20160101AFI20230202BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20230202BHJP
【FI】
A23L27/60 A
A23L29/219
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022202065
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝太
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、加熱工程を必須としない、油脂量が低減された乳化液状調味料の簡便な製造方法を提供することと、油脂量が低減しても乳化液状調味料らしい食感及び味質を有する乳化液状調味料を提供することにある。
【解決手段】 油脂が25%以下の乳化液状調味料において、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を併用することより上記課題は解決される。より詳細には、(A)0.5~2.5質量%、(B)0.5~2.5質量%、及び(C)0.05~0.4質量%を含ませること、さらには(B)と(C)の比を1:(0.05~0.4)とすることにより、上記課題は解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂が25質量%以下の乳化液状調味料であって、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化デンプンを含む、乳化液状調味料。
【請求項2】
油脂が25質量%以下の乳化液状調味料であって、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物0.5~2.5質量%、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン0.5~2.5質量%、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化デンプン0.05~0.4質量%を含む、乳化液状調味料。
【請求項3】
油脂が25質量%以下の乳化液状調味料であって、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物0.5~2.5質量%、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン0.5~2.5質量%、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン0.05~0.4質量%を含み、かつ(B)と(C)の比が1:(0.05~0.4)である、乳化液状調味料。
【請求項4】
前記(B)のα化アセチル化リン酸架橋デンプンが、スプレードライヤーによりα化されたものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の乳化液状調味料。
【請求項5】
前記(C)のα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンが、ドラムドライヤーによりα化されたものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の乳化液状調味料。
【請求項6】
前記(B)のα化アセチル化リン酸架橋デンプンが、スプレードライヤーによりα化されたものであり、かつ前記(C)のα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンが、ドラムドライヤーによりα化されたものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の乳化液状調味料。
【請求項7】
さらに増粘多糖類を0.2~0.5質量%含む、請求項4記載の乳化液状調味料。
【請求項8】
さらに増粘多糖類を0.2~0.5質量%含む、請求項5記載の乳化液状調味料。
【請求項9】
さらに増粘多糖類を0.2~0.5質量%含む、請求項6記載の乳化液状調味料。
【請求項10】
油脂が25質量%以下である乳化液状調味料の製造方法であって、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを含む混合粉体原料を水に分散して水相を調製する工程と、油脂を含む油相を水相に混合して乳化する工程を含む、前記製造方法。
【請求項11】
油脂が25質量%以下である乳化液状調味料の製造方法であって、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを含む混合粉体原料を、それぞれが(A)0.5~2.5質量%、(B)0.5~2.5質量%、及び(C)0.05~0.4質量%となるように水に分散して水相を調製する工程と、油脂を含む油相を水相に混合して乳化する工程を含む、前記製造方法。
【請求項12】
油脂が25質量%以下である乳化液状調味料の製造方法であって、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを含む粉体原料を、それぞれが(A)0.5~2.5質量%、(B)0.5~2.5質量%、及び(C)0.05~0.4質量%となり、かつ(B)と(C)の比が1:(0.05~0.4)となるように水に分散して水相を調製する工程と、油脂を含む油相を水相に混合して乳化する工程を含む、前記製造方法。
【請求項13】
前記(B)のα化アセチル化リン酸架橋デンプンが、スプレードライヤーによりα化されたものである、請求項10~12のいずれか一項に記載の乳化液状調味料の製造方法。
【請求項14】
前記(C)のα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンが、ドラムドライヤーによりα化されたものである、請求項10~12のいずれか一項に記載の乳化液状調味料の製造方法。
【請求項15】
前記(B)のα化アセチル化リン酸架橋デンプンが、スプレードライヤーによりα化されたものであり、かつ前記(C)のα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンが、ドラムドライヤーによりα化されたものである、請求項10~12のいずれか一項に記載の乳化液状調味料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱工程を必須としない、油脂量が低減された乳化液状調味料の製造方法、及びその製造方法によって得られる、油脂量が低減した乳化液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣病予防の観点から、食品カロリー値・コレステロール値の低い飲食品に対する消費者ニーズが高まっており、そのニーズは主食となる食品のみならずドレッシングなどの調味料に対しても同様である。
【0003】
しかし、たとえば乳化ドレッシングの場合、配合する油脂量を低減すれば低カロリー化は容易に達成されるが、うまみやコクみがなくなり、油脂相と水相が分離しやすくなって乳化ドレッシングらしいマウスフィール(口中に含んだときの質感)がなくなる。また、乳化ドレッシングによく配合される卵黄を不使用とすることも考えられるが、卵黄は乳化剤の役割を果たすため、オクテニルコハク酸デンプンや増粘多糖類といった代替物の使用を余儀なくされ、それでも乳化力は不十分である。
【0004】
そこで、油を低減し、かつ、卵黄の代わりにオクテニルコハク酸デンプンと増粘多糖類を使用する乳化液状調味料において、架橋デンプン(アセチル化アジピン酸架橋デンプン)を併用する方法が提案され(特許文献1)、また、糊化された澱粉を含む第一の水相と、食用油脂および乳化剤を含有する油相とを混合乳化して油中水型乳化物を調製し、それを第二の水相と混合する工程を含む、乳化調味料の製造方法が提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかし、アセチル化アジピン酸架橋デンプンを併用するだけでは、乳化ドレッシングらしい自然なマウスフィールが得られず、また、糊化された澱粉を含む第一相の水相を調製する工程を採用するにしても、その第一相の水相と油相とを混合してからさらに第二相の水相とを混合する方法は、簡便さを目的とする加熱不要の乳化液状調味料の製造には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2013/084848号
【特許文献2】国際公開WO2018/168748号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加熱工程を必須としない、油脂量が低減された乳化液状調味料の製造方法、及び油脂量が低減しても乳化液状調味料らしい食感及び味質を有する乳化液状調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、加熱工程を必須としない低カロリー乳化ドレッシングの調製方法を提供できないかと種々検討したところ、油脂が25%以下の乳化液状調味料において、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物、α化アセチル化リン酸架橋デンプン、及びα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を併用することにより、加熱工程を要さずして簡便に、油脂量が低減した乳化液状調味料が調製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、以下の〔1〕~〔13〕から構成されるものである。
[1]油脂が25質量%以下の乳化液状調味料であって、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化デンプンを含む、乳化液状調味料。
[2]油脂が25質量%以下の乳化液状調味料であって、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物0.5~2.5質量%、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン0.5~2.5質量%、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化デンプン0.05~0.4質量%を含む、乳化液状調味料。
[3]油脂が25質量%以下の乳化液状調味料であって、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物0.5~2.5質量%、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン0.5~2.5質量%、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン0.05~0.4質量%を含み、かつ(B)と(C)の比が1:(0.05~0.4)である、乳化液状調味料。
[4]前記(B)のα化アセチル化リン酸架橋デンプンが、スプレードライヤーによりα化されたものである、前記[1]~[3]のいずれかひとつに記載の乳化液状調味料。
[5]前記(C)のα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンが、ドラムドライヤーによりα化されたものである、前記[1]~[4]のいずれかひとつに記載の乳化液状調味料。
[6]前記(B)のα化アセチル化リン酸架橋デンプンが、スプレードライヤーによりα化されたものであり、かつ前記(C)のα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンが、ドラムドライヤーによりα化されたものである、前記[1]~[5]のいずれかひとつに記載の乳化液状調味料。
[7]さらに増粘多糖類を0.2~0.5質量%含む、前記[1]~[6]のいずれかひとつに記載の乳化液状調味料。
[8]油脂が25質量%以下である乳化液状調味料の製造方法であって、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを含む混合粉体原料を水に分散して水相を調製する工程と、油脂を含む油相を水相に混合して乳化する工程を含む、前記製造方法。
[9]油脂が25質量%以下である乳化液状調味料の製造方法であって、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを含む混合粉体原料を、それぞれが(A)0.5~2.5質量%、(B)0.5~2.5質量%、及び(C)0.05~0.4質量%となるように水に分散して水相を調製する工程と、油脂を含む油相を水相に混合して乳化する工程を含む、前記製造方法。
[10]油脂が25質量%以下である乳化液状調味料の製造方法であって、(A)オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物、(B)α化アセチル化リン酸架橋デンプン、及び(C)α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを含む粉体原料を、それぞれが(A)0.5~2.5質量%、(B)0.5~2.5質量%、及び(C)0.05~0.4質量%となり、かつ(B)と(C)の比が1:(0.05~0.4)となるように水に分散して水相を調製する工程と、油脂を含む油相を水相に混合して乳化する工程を含む、前記製造方法。
[11]前記(B)のα化アセチル化リン酸架橋デンプンが、スプレードライヤーによりα化されたものである、前記[8]~[10]のいずれかひとつに記載の乳化液状調味料の製造方法。
[12]前記(C)のα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンが、ドラムドライヤーによりα化されたものである、前記[8]~[11]のいずれかひとつに記載の乳化液状調味料の製造方法。
[13]前記(B)のα化アセチル化リン酸架橋デンプンが、スプレードライヤーによりα化されたものであり、かつ前記(C)のα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンが、ドラムドライヤーによりα化されたものである、前記[8]~[12]のいずれかひとつに記載の乳化液状調味料の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加熱工程を要さず簡便に乳化液状調味料を調製することができ、しかも得られる乳化状調味料は、低カロリーかつマウスフィールに優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にいう「乳化液状調味料」は、水の中に油が乳化・分散された水中油滴型(O/W型)の乳化物からなる調味料であり、例えば、ドレッシング、タレ、ソースなどの形態がある。本発明の乳化液状調味料は、低カロリー・低コレステロールを目的とするため、原料として卵黄をほぼ使用せず、油脂の配合量は30質量%以下、好ましくは25質量%以下又は20質量%以下の乳化液状調味料である。使用する油脂の種類は特に限定されず、乳化状調味料の製造において一般に使用される食用油であればよい。
【0012】
本発明に用いる「オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物」は、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物である。その分解方法に制限はなく、酸、酸焙焼、酵素などにより分解できるが、なかでも酵素による分解が好ましい。
なお、その分解の程度はとくに問わないが、20質量%粘度により特定する場合は、10~400mP・s又は20~300mP・s程度であり、好ましくは30~200mP・sであるまた、この分解前の「オクテニルコハク酸デンプンナトリウム」(「OSA澱粉」などと略すこともある)は、原料となる澱粉に制限はなく、馬鈴薯澱粉、モチ種馬鈴薯粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、米澱粉、モチ米澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、甘藷澱粉、小麦澱粉、エンドウ豆澱粉、サゴ澱粉などを用いることができ、好ましくはワキシーコーンスターチ、ワキシータピオカ澱粉、モチ種馬鈴薯澱粉、さらに好ましくはワキシーコーンスターチを用いることができ、これら澱粉懸濁液に対して無水オクテニルコハク酸をアルカリ下で作用させることによって得られる。
この「オクテニルコハク酸デンプンナトリウム」を分解して得られる「オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物」は冷水可溶であり、本発明の乳化液状調味料に0.5~2.5質量%、好ましくは0.5~2.0質量%、より好ましくは0.5~1.5質量%、さらに好ましくは0.5~1.0、もっとも好ましくは0.5~0.8質量%含まれるように用いることができる。
【0013】
本発明にいう「α化アセチル化リン酸架橋デンプン」は、アセチル化リン酸架橋デンプンの約10~40質量%水懸濁液を約80~500℃の温度で糊化した液を乾燥等して得られるものである。その乾燥方法に制限はないが、例えば、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、エクストルーダーといった方法を用いることができる。スプレードライヤーによる方法は、スプレーで噴霧された澱粉懸濁液に対し高温の蒸気を当てて一気に糊化・乾燥を行う方法であり、粉砕等の物理的処理を行わずして粉体状の糊化乾燥物が得られるため、澱粉粒が比較的保たれている。本発明の乳化液状調味料のマウスフィールを達成するためには、このスプレードライヤー品を用いることがより好ましい。そして、この「α化アセチル化リン酸架橋デンプン」の原料となる澱粉は、馬鈴薯澱粉、モチ種馬鈴薯粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、米澱粉、モチ米澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、甘藷澱粉、エンドウ豆澱粉、サゴ澱粉などが挙げられ、馬鈴薯澱粉が好ましい。
なお、この「アセチル化リン酸架橋デンプン」は、アルカリを触媒とし、原料澱粉の懸濁液に酢酸ビニル又は無水酢酸を作用させて得られる酢酸デンプンに対してオキシ塩化リンやトリメタリン酸ナトリウムを用いて澱粉の分子内または分子間の水酸基を架橋することによって得られるものである。
本発明に用いる「α化アセチル化リン酸架橋デンプン」は、本発明の乳化液状調味料に0.5~2.5質量%、好ましくは0.5~2.0質量%、より好ましくは1.0~1.5質量%含まれるように用いることができる。
【0014】
本発明に用いる「α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」は、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの約10~40質量%水懸濁液を約80~500℃の温度で糊化した液を乾燥等して得られるものである。その乾燥方法に制限はないが、先述のとおり、例えば、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、エクストルーダーといった方法を用いることができる。ドラムドライヤーによる方法は、高温のドラムロール上に澱粉懸濁液を流して糊化・乾燥を一気に行い、そのドラムロール上に形成された糊化澱粉膜をスクレイパーナイフでかき取り粉砕する方法であるため、澱粉粒はほぼ崩壊しており、利用する食品によっては好ましくない糊感が突出する不具合を生じる場合がある。本発明の油を低減した乳化液状調味料においては、油感を表現するためにこのドラムドライヤー品を用いることがより好ましい。
「α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」の原料となる澱粉としては、馬鈴薯澱粉、モチ種馬鈴薯粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、米澱粉、モチ米澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、甘藷澱粉、エンドウ豆澱粉、サゴ澱粉などがあり、好ましくは馬鈴薯澱粉、ワキシーコーンを用いることができる。
なお、この「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」は、原料澱粉に対してアルカリ存在下でプロピレンオキサイドを作用させてヒドロキシプロピル基を導入することに加えて、オキシ塩化リンやトリメタリン酸ナトリウムを作用させて澱粉の分子内または分子間の水酸基を架橋することによって得られるものである。
本発明に用いる「α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」は、本発明の乳化液状調味料において0.05~0.4質量%、好ましくは0.05~0.3質量%、より好ましくは0.1~0.2質量%含まれるように用いることができ、先の「α化アセチル化リン酸架橋デンプン」1質量部に対して、0.05~0.4質量部、好ましくは0.05~0.3質量部、より好ましくは0.1~0.2質量部となるように使用することができる。
【0015】
本発明の乳化液状調味料には、増粘多糖類を含むことができる。その種類は特に制限されず、タマリンドシードガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、プルラン、寒天、グルコマンナンなどが挙げられるが、水相と油相の分離をより防ぐ観点から、キサンタンガムを用いるのが好ましい。この増粘多糖類は、0.05~0.5質量%、好ましくは0.1~0.4質量%、より好ましくは0.2~0.4質量%含まれるように用いることができる。
【0016】
本発明の乳化液状調味料の調製手順は限定されないが、少なくとも上述の「オクテニルコハク酸デンプンナトリウムの分解物」、「α化アセチル化リン酸架橋デンプン」及び「α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」をあらかじめ粉体混合しておくことが好ましく、砂糖、食塩、デキストリン、香辛料、増粘多糖類といった粉体原料も同時に混合しておくことが好ましい。そして、この粉体混合物を水相(調味料等を含んでいてもよい)に分散し、水に膨潤又は溶解させるために5分以上、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上静置又は攪拌しておき、そこへ油脂を含有する油相を加えて攪拌、ホモジナイズ等して乳化する手順を採用するのが好ましい。
【0017】
本発明の乳化液状調味料は、離水を抑制するため、粘度を一定の範囲に調整することが好ましい。その粘度数値は、低いと離水が容易に起こりやすくなるが、高いほどに離水が防止できるというのでもなく、好ましくはおおよそ500~4000mPa・s、1000~3500mPa・s、又は1500~3000mPa・sである。なお、この粘度数値は、乳化液状調味料を調製直後24時間以上静置し、B型粘度計(12rpm、60秒、20℃)で測定することが好ましい。
【0018】
以下、本発明の実施形態を記載するが、実施例に特に限定されるものではない。
【実施例0019】
表1に示す各配合の乳化ドレッシング(フレンチドレッシング)を調製し、粘度測定と官能評価を行った。乳化ドレッシングの調製は、あらかじめ混合しておいた粉体原料(砂糖、キサンタンガム、澱粉系分解物、加工澱粉)を、容器に入った水を攪拌しながら当該水に投入・分散させ、30分間静置後に残りの調味料等を加えて攪拌し、油を加えてホモミキサー(プライミクス社製「ホモミクサーMARK II」)、10000rpm、3分)で乳化することにより行った。粘度測定は、冷蔵庫に一晩静置し、B型粘度計(12rpm、60秒、20℃)を用いて行い、官能評価は、表1に示す3つの項目にかかる評価をパネラー10名により行った。なお、評価点は10名の平均値(四捨五入)であり、最終的な評価は、3項目合計点による絶対評価で行った。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
その結果、アセチル化リン酸架橋デンプンのα化品とヒドロキシプロピル化デンプンのα化品を組み合わせたときに、目標とする油脂35%の一般的な乳化ドレッシング(ポジティブコントロール)と同等の口当たり(口に含んだときの油感)、持続性(口中の油感の広がり)、質感(乳化ドレッシングとしてのとろみの質感)があり、油脂低減かつ卵黄不使用であっても極めて良好な乳化液状調味料であると評価できた。
【0023】
次に、アセチル化リン酸架橋デンプンのα化品とヒドロキシプロピル化デンプンのα化品の配合比についてさらに検討した(表3)。その結果、アセチル化リン酸架橋デンプンのα化品1質量部に対してヒドロキシプロピル化デンプンのα化品を0.05、0.1、0.2質量部の割合で使用したときにも、良好な乳化ドレッシングが得られた(表4)。
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】