(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021451
(43)【公開日】2023-02-10
(54)【発明の名称】屋根用木質パネルの取付構造
(51)【国際特許分類】
E04B 7/20 20060101AFI20230202BHJP
E04B 1/348 20060101ALI20230202BHJP
E04B 7/22 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
E04B7/20 521Z
E04B1/348 L
E04B7/22
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202304
(22)【出願日】2022-12-19
(62)【分割の表示】P 2019060445の分割
【原出願日】2019-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 遼
(57)【要約】
【課題】複数の天井梁の上面に複数の屋根用木質パネルを設置する際の位置決めをずれなく、容易に行うことである。
【解決手段】四隅の柱20の上端部同士を連結する複数の天井梁21,22の上面に対し、断熱性能を有する複数の屋根用木質パネル5が取り付けられる構造であって、複数の天井梁21,22の上面における第一方向両端部のそれぞれに、上方に突出する凸部29が形成され、複数の屋根用木質パネル5は、複数の天井梁21,22の上面における第一方向の一端部の凸部29から第一方向の他端部の凸部29との間に並べられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四隅の柱の上端部同士を連結する複数の天井梁の上面に対し、
断熱性能を有する複数の屋根用木質パネルが取り付けられる構造であって、
前記複数の天井梁の上面における第一方向両端部のそれぞれに、上方に突出する凸部が形成され、
前記複数の屋根用木質パネルは、前記複数の天井梁の上面における前記第一方向の一端部の前記凸部から前記第一方向の他端部の前記凸部との間に並べられていることを特徴とする屋根用木質パネルの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根用木質パネルの取付構造において、
前記複数の天井梁の上面における前記第一方向両端部には、前記凸部から外側に、かつ前記複数の屋根用木質パネルと連続して並べられる端部用屋根パネルが取り付けられ、
前記端部用屋根パネルの下面には、前記凸部が収容される凹型の収容部が形成されていることを特徴とする屋根用木質パネルの取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の屋根用木質パネルの取付構造において、
前記複数の天井梁の上面における前記第一方向両端部のそれぞれに形成された前記凸部は、前記複数の天井梁の上面における前記第一方向と直交する第二方向両端部の二か所に形成されていることを特徴とする屋根用木質パネルの取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載の屋根用木質パネルの取付構造において、
前記凸部は、前記四隅の柱の上方に位置していることを特徴とする屋根用木質パネルの取付構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の屋根用木質パネルの取付構造において、
前記複数の天井梁の第一方向における天井梁の上面には、前記屋根用木質パネルを支持する断面逆ハット型の支持金物が、前記第一方向の天井梁に沿って設けられており、
前記複数の屋根用木質パネルは、自身の長辺方向が前記複数の天井梁の前記第一方向と直交する第二方向に沿うように配置され、かつ前記支持金物間に跨って設けられていることを特徴とする屋根用木質パネルの取付構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の屋根用木質パネルの取付構造において、
前記屋根用木質パネルは、縦横の框材により外周枠が形成された矩形枠体の両面若しくは片面に面材が貼設され、内部に断熱材が充填された状態に構成されていることを特徴とする屋根用木質パネルの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根用木質パネルの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直方体フレーム状に形成された複数の建物ユニットを組み合わせてユニット式建物を建築する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。建物ユニットは、四隅の柱と、各柱の上端部同士を連結する複数の天井梁と、各柱の下端部同士を連結する複数の床梁と、を備えており、四隅の柱と各梁とを剛接合してラーメン構造を構成している。
【0003】
また、特許文献2には、建物ユニットの上面に、複数の屋根パネルを並べて載置し、屋根を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-214530号公報
【特許文献2】特開2004-250915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建物ユニットは寒冷地や極地で使用される場合があるため、断熱性能を有する複数の屋根用木質パネルによって建物ユニットの上面を被覆することが望まれている。ところが、建物ユニットの上面に複数の屋根用木質パネルを並べて載置する際に、建物ユニット(以下、居住用ユニット)の上面には特に位置決めのための手段が設けられていないため、位置決めが困難な場合がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、複数の天井梁の上面に複数の屋根用木質パネルを設置する際の位置決めをずれなく、容易に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1~
図25に示すように、四隅の柱20の上端部同士を連結する複数の天井梁21,22の上面に対し、
断熱性能を有する複数の屋根用木質パネル5が取り付けられる構造であって、
前記複数の天井梁21,22の上面における第一方向両端部のそれぞれに、上方に突出する凸部29が形成され、
前記複数の屋根用木質パネル5は、前記複数の天井梁21,22の上面における前記第一方向の一端部の前記凸部29から前記第一方向の他端部の前記凸部29との間に並べられていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、複数の天井梁21,22の上面における第一方向両端部のそれぞれに、上方に突出する凸部29が形成され、複数の屋根用木質パネル5は、複数の天井梁21,22の上面における第一方向の一端部の凸部29から第一方向の他端部の凸部29との間に並べられているので、複数の天井梁21,22の上面における第一方向両端部のそれぞれに形成された凸部29を、複数の屋根用木質パネル5を複数の天井梁21,22の上面に並べて載置する際の位置決め手段として用いることができる。これにより、複数の天井梁21,22の上面に複数の屋根用木質パネル5を設置する際の位置決めをずれなく、容易に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば
図6~
図8,
図20,
図21に示すように、請求項1に記載の屋根用木質パネル5の取付構造において、
前記複数の天井梁21,22の上面における前記第一方向両端部には、前記凸部から外側に、かつ前記複数の屋根用木質パネル5と連続して並べられる端部用屋根パネル6が取り付けられ、
前記端部用屋根パネル6の下面には、前記凸部29が収容される凹型の収容部(凹部6a)が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、複数の天井梁21,22の上面における第一方向両端部には、凸部29から外側に、かつ複数の屋根用木質パネル5と連続して並べられる端部用屋根パネル6が取り付けられているので、複数の屋根用木質パネル5と端部用屋根パネル6によって複数の天井梁21,22の上面を広く被覆することができる。
さらに、端部用屋根パネル6の下面には、凸部29が収容される凹型の収容部(凹部6a)が形成されているので、凸部29を、端部用屋根パネル6を複数の天井梁21,22の上面に並べて載置する際の位置決め手段として用いることができる。これにより、複数の天井梁21,22の上面に端部用屋根パネル6を設置する際の位置決めをずれなく、容易に行うことができる。すなわち、複数の天井梁21,22の上面を広く被覆する複数の屋根用木質パネル5及び端部用屋根パネル6を正確に設置できることになる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば
図6~
図8,
図20,
図21に示すように、請求項1又は2に記載の屋根用木質パネル5の取付構造において、
前記複数の天井梁21,22の上面における前記第一方向両端部のそれぞれに形成された前記凸部29は、前記複数の天井梁21,22の上面における前記第一方向と直交する第二方向両端部の二か所に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、複数の天井梁21,22の上面における第一方向両端部のそれぞれに形成された凸部29は、複数の天井梁21,22の上面における第一方向と直交する第二方向両端部の二か所に形成されているので、複数の天井梁21,22の上面における第一方向両端部のそれぞれにおいて、複数の凸部29を位置決め手段として利用できる。これにより、複数の天井梁21,22の上面に複数の屋根用木質パネル5を設置する際の位置決めをより正確に、かつ容易に行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば
図6~
図8に示すように、請求項3に記載の屋根用木質パネル5の取付構造において、
前記凸部29は、前記四隅の柱20の上方に位置していることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、凸部29は、四隅の柱20の上方に位置しているので、凸部29自体を、四隅の柱20の位置を基準にして設けることができる。これにより、凸部29が設けられる位置に誤差が生じにくくなるので、凸部29の位置を基準にして設けられる複数の屋根用木質パネル5の位置決めにおける正確性を向上できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば
図11,
図12に示すように、請求項1~4のいずれか一項に記載の屋根用木質パネ5ルの取付構造において、
前記複数の天井梁21,22の第一方向における天井梁21,22の上面には、前記屋根用木質パネル5を支持する断面逆ハット型の支持金物30が、前記第一方向の天井梁21に沿って設けられており、
前記複数の屋根用木質パネル5は、自身の長辺方向が前記複数の天井梁21,22の前記第一方向と直交する第二方向に沿うように配置され、かつ前記支持金物30間に跨って設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、複数の天井梁21,22の第一方向における天井梁21の上面には、屋根用木質パネル5を支持する支持金物30が、第一方向の天井梁21に沿って設けられ、複数の屋根用木質パネル5は、自身の長辺方向が複数の天井梁21,22の第一方向と直交する第二方向に沿うように配置され、かつ支持金物30間に跨って設けられており、当該支持金物30が断面ハット型であるので、屋根用木質パネル5の下面に対して接する箇所の数が多くなる。そのため、屋根用木質パネル5を、断面ハット型の支持金物30における接触部分に固定することで固定箇所の数を増やすことができるので、複数の天井梁21,22に対する屋根用木質パネル5の固定強度を向上できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の屋根用木質パネル5の取付構造において、
前記屋根用木質パネル5は、縦横の框材A,Bにより外周枠が形成された矩形枠体の両面若しくは片面に面材D,Eが貼設され、内部に断熱材Fが充填された状態に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の天井梁の上面に複数の屋根用木質パネルを設置する際の位置決めをずれなく、容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】居住用ユニットの使用例を説明する斜視図である。
【
図3】一方の居住用ユニットと他方の居住用ユニットの連結状態を示す斜視図である。
【
図4】連結された一方及び他方の居住用ユニットを示す平断面図である。
【
図5】連結された一方及び他方の居住用ユニットを示す縦断面図である。
【
図6】ユニット本体の妻側部における構造を示す図である。
【
図7】ユニット本体の桁側部における構造を示す図である。
【
図8】ユニット本体の上端部における構造を示す図である。
【
図9】ユニット本体の下端部における構造を示す図である。
【
図10】ユニット本体における柱の構造を示す図である。
【
図11】屋根用木質パネルの設置状態を示す部分拡大断面図である。
【
図12】屋根用木質パネルの設置状態を示す部分拡大断面図である。
【
図13】床梁と、床梁に設けられた部材を示す図である。
【
図14】複数の木質パネルの配置を示す断面図である。
【
図15】フレーム材用パネルの配置を示す断面図である。
【
図16】フレーム材用パネルの配置を示す図である。
【
図17】壁用木質パネルの上端部における取付構造を示す斜視図である。
【
図18】壁用木質パネルの下端部における取付構造を示す斜視図である。
【
図19】緩衝材が潰れる態様を説明するための図である。
【
図22】居住用ユニットの上端部における角部の構造を示し、(a)は断熱性が充填されていない状態、(b)は断熱材が充填された状態を示す断面図である。
【
図23】居住用ユニットの下端部における角部の構造を示す断面図である。
【
図24】連結スペースの側方付近の構造を示す平断面図である。
【
図25】連結スペースの上方付近の構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0021】
本実施形態は、
図1~
図25に示すように、四隅の柱20と、四隅の柱20の上端部同士を連結する複数の天井梁21,22と、四隅の柱20の下端部同士を連結する複数の床梁23,24と、を有してラーメン構造を構成する略直方体フレーム状の居住用ユニット1の上面に対し、縦横の框材A,Bにより外周枠が形成された矩形枠体の両面若しくは片面に面材D,Eが貼設され、内部に断熱材Fが充填されてなる複数の屋根用木質パネル5が取り付けられる構造である。
そして、居住用ユニット1の上面における長辺方向両端部のそれぞれに、上方に突出する凸部29が形成され、複数の屋根用木質パネル5は、居住用ユニット1の上面における長辺方向一端部の凸部29から長辺方向他端部の凸部29との間に並べられている。
【0022】
居住用ユニット1は、それ単体で内部に居住スペースSを有するか、複数が連結されて内部に拡張された居住スペースSを有する状態に使用されるものである。本実施形態における居住用ユニット1は、
図1~
図5に示すように、二つの居住用ユニット1(1A,1B)の長辺側同士が連結スペース50を介して連結された状態で使用されるが、これに限られるものではなく、単体で使用されてもよい。
なお、連結スペース50による二つの居住用ユニット1(1A,1B)の連結態様は、本実施形態のように二つの居住用ユニット1A,1Bの長辺側同士を連結するパターンの他にも、短辺側同士を連結するパターンや、略L字状に連結するパターンがある。また、三つ以上の居住用ユニット1を適宜連結してもよい。さらに、略L字状に連結するパターンでは、L字の内角側に、居住用ユニットでは構成されない居住スペース拡張構造(本実施形態において後述する連結床構造及び被覆構造を応用する。)を採用し、矩形状の居住スペースSを形成できるようにしてもよい。
【0023】
また、居住用ユニット1は、少なくともラーメン構造を構成する略直方体フレーム状のユニット本体2が工場生産され、ユニット本体2に取付可能な各種の部材(ユニット本体2を被覆する複数の木質パネルを含む壁材、水道やガスの配管、電気線、通信線等々)は、工場で取り付けられてもよいし、現場で取り付けられてもよい。
なお、本実施形態におけるユニット本体2は、鉄骨造によるラーメン構造とされるが、これに限られるものではなく、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造によるラーメン構造でもよい。
【0024】
また、居住用ユニット1は、上記のように、ユニット本体2が複数の木質パネルによって被覆されるものとしたが、複数の木質パネルは、
図1に示すように、外装材1a(外皮)によって更に被覆されるものとする。外装材1aは、居住用ユニット1が用いられる環境に応じて適宜変更可能である。基本的には耐候性に優れたものであり、居住用ユニット1が例えば寒冷地や熱帯、極地、砂漠、月面等の比較的過酷な環境下で使用される場合は、特に断熱性に優れた外装材が選択される。
なお、本実施形態においては、居住用ユニット1が寒冷地や極地、月面等で使用されることが想定されている。月面で使用される場合は、断熱性と共に気密性の高さも求められる。また、このような居住用ユニット1は、当該居住用ユニット1を支持する架台40に載せられて連結される。
【0025】
〔ユニット本体の構成について〕
ユニット本体2は、上記のように、四隅の柱20と、四隅の柱20の上端部同士を連結する複数の天井梁21,22と、四隅の柱20の下端部同士を連結する複数の床梁23,24と、を有する。また、ユニット本体2の下端部における四隅には、連結部25が設けられている。ユニット本体2を構成する当該各鉄骨フレーム材20~25は、ボルトや溶接等により剛接合されている。
【0026】
柱20は、
図6~
図10に示すように、角柱(角筒柱)であり、上端部において直交して隣接する二つの側面に、天井梁21,22が固定される天井梁被固定板20aが一体的に設けられている。また、上端面には、後述する凸部29が固定される凸部被固定板20bが一体的に設けられている。
天井梁被固定板20a及び凸部被固定板20bには、ボルトが通される通し孔が形成されており、それぞれ、天井梁21,22と凸部29がボルト留めされる。
【0027】
柱20の下端部には、上記の連結部25が一体的に設けられている。これにより、ユニット本体2の下端部における四隅に連結部25が配置された状態となる。柱20は、連結部25における上面(上面プレート25a)のユニット本体2の中央側の隅部に立設されている。
【0028】
複数の天井梁21,22は、ウェブ21a,22aと、ウェブ21a,22aの上端部に設けられる上フランジ21b,22bと、ウェブ21a,22aの下端部に設けられる下フランジ21c,22cと、からなるH型鋼又は二つの溝型鋼を一体化した型鋼材が使用されている。また、ウェブ21a,22a、上フランジ21b,22b、下フランジ21c,22cには、必要に応じて部材がボルト留めされるため、ボルト用の通し孔が複数形成されている。
【0029】
複数の天井梁21,22は、ユニット本体2の長辺方向に沿って長尺な長辺天井梁21と、ユニット本体2の短辺方向に沿って長尺な短辺天井梁22と、を含む。これら長辺天井梁21及び短辺天井梁22は、本実施形態においては二本ずつ使用されており、柱20の上端部を含んで矩形枠体を構成している。
【0030】
複数の床梁23,24は、ウェブ23a,24aと、ウェブ23a,24aの上端部に設けられる上フランジ23b,24bと、ウェブ23a,24aの下端部に設けられる下フランジ23c,24cと、からなるH型鋼又は二つの溝型鋼を一体化した型鋼材が使用されている。また、ウェブ23a,24a、上フランジ23b,24b、下フランジ23c,24cには、必要に応じて部材がボルト留めされるため、ボルト用の通し孔が複数形成されている。
【0031】
複数の床梁23,24は、ユニット本体2の長辺方向に沿って長尺な長辺床梁23と、ユニット本体2の短辺方向に沿って長尺な短辺床梁24と、を含む。これら長辺床梁23及び短辺床梁24は、本実施形態においては二本ずつ使用されており、連結部25を含んで矩形枠体を構成している。
【0032】
連結部25は、ユニット本体2における複数の床梁23,24よりも外側にはみ出すように形成され、上面プレート25aと、立ち上がり部25bと、床梁被固定板25cと、連結ボックス25dと、補強板25eと、を備える。
【0033】
上面プレート25aは、
図10(f)に示すように略四角形状に形成されており、一つの隅部に柱20が立設され、その対角線上の隅部に、平面視L字状に形成された立ち上がり部25bが一体的に設けられている。
立ち上がり部25bは、後述する木質柱8を上面プレート25a上に立設する場合に使用される。
【0034】
床梁被固定板25cは、直交して隣接する二つの側面に設けられており、複数の床梁23,24が固定される。床梁被固定板25cには、ボルトが通される通し孔が形成されており、複数の床梁23,24がボルト留めされる。
【0035】
連結ボックス25dは、架台40との連結に用いられるものであり、外部に向けられた直交する二つの側面及び下面に、居住用ユニット1と架台40との連結作業用の孔がそれぞれ形成されている。なお、図示はしないが、架台40には、連結ボックス25dの位置に対応してボルトが上方に突出して設けられており、当該ボルトは、連結ボックス25dの下面に形成された孔から連結ボックス25d内部に設けられた状態となる。そして、二つの側面に形成された孔からナットを入れて、締付作業を行うことが可能となっている。
【0036】
補強板25eは、少なくとも、柱20の側面の下方に位置するようにして設けられており、上面プレート25aを補強する役割を果たす。また、
図10のように、上面プレート25aに対する下面プレートとして設けられてもよい。
【0037】
なお、複数の床梁23,24は、床梁被固定板25cに固定された場合に、連結部25の一側面における中央部に設けられた状態となる。すなわち、複数の床梁23,24は、柱20の下端部からずれた位置に設けられた状態となる。これに対し、複数の天井梁21,22は、柱20の上端部に設けられているため、ユニット本体2は、複数の天井梁21,22を含んで構成された矩形枠体よりも、複数の床梁23,24を含んで構成された矩形枠体の方が、外側に広がって形成されている。換言すれば、ユニット本体2自体の下端部の方が上端部よりも長辺方向及び短辺方向の寸法が長くなっている。
【0038】
柱20の上端面には、
図6,
図7に示すように、角柱(角筒柱)状に形成された凸部29が固定されている。凸部29は、後述する複数の屋根用木質パネル(屋根用木質パネル5及び端部用屋根パネル6)をユニット本体の上面に設置する際に位置決め手段として機能する突起である。
柱20の上端に対する固定の手段は溶接でもよいし、凸部29側面に貫通孔を形成し、貫通孔を利用して柱20の上端とボルト連結してもよい。
なお、凸部29の上面には、ボルトが通される通し孔が形成されており、端部用屋根パネル6がボルト留めできるようになっている。
【0039】
凸部29は、四隅の柱20における上端面にそれぞれ固定されているため、本実施形態においては四つの凸部29が、ユニット本体2の上端部における四隅に設けられた状態となっている。ただし、凸部29の数及び設置箇所はこれに限られるものではなく、ユニット本体2の長辺方向両端部に少なくとも一つずつ設置されていればよいものとする。
例えば、凸部29を、長辺方向に隣り合う二本の柱20の上端面にそれぞれ設置してもよいし、同一対角線上に位置する二本の柱20の上端面にそれぞれ設置してもよいし、平行する短辺天井梁22の上端面における中央付近にそれぞれ設置してもよい。
【0040】
複数の天井梁21,22のうち、少なくとも長辺天井梁21の上面には、
図11及び
図12に示すように、複数の屋根用木質パネル5を支持する支持金物30が、長辺天井梁21に沿って設けられている。
なお、短辺天井梁22の上面にも支持金物30が設けられてもよい。この場合、端部用屋根パネル6が短辺天井梁22上の支持金物30によって支持される。
支持金物30は、略逆ハット型に形成されており、天井梁21,22の上面に載置固定される載置面30aと、載置面30aに両側縁に一体形成された立ち上がりの上端部に一体形成された二つの支持面30bと、を有する。複数の屋根用木質パネル5,6は、二つの支持面30bに跨って設けられる。
【0041】
複数の長辺天井梁21には、
図8及び
図22に示すように、複数の天井梁21,22を含んで構成された矩形枠体の対角線を結ぶようにして配置される水平ブレース31が設けられている。
【0042】
複数の床梁23,24における内側面には、
図9,
図13,
図23に示すように、後述する床用木質パネル7を支持するための床受けブラケット32及び床受け部33が設けられている。
床受けブラケット32は、複数の床梁23,24におけるウェブ23a,24aの内側面に、互いに間隔を空けて複数固定されており、それぞれがユニット本体2の中央側に突出している。その突出方向先端部に、長尺な床受け部33が一体的に設けられている。すなわち、複数の床受けブラケット32における突出方向先端部間に、長尺な床受け部33が架け渡されて設けられている。
床受け部33は、複数の床受けブラケット32における突出方向先端部の上面に沿って設けられた上面板部33aと、上面板部33aの先端に一体形成されて下方に延びる垂直板部33bと、垂直板部33bの下端部からユニット本体2の中央側に突出する受け板部33cと、を有する。複数の床用木質パネル7は、受け板部33cに載せられた状態となる。
【0043】
複数の床梁23,24における外側面には、
図13,
図23に示すように、後述する調整材9が固定される調整材受け部34が設けられている。
調整材受け部34は、床受けブラケット32と同様の間隔で設けられ、かつ同様のボルトによって床梁23,24に対して固定されている。このような調整材受け部34は、床梁23,24に固定される基端板部34aと、基端板部34aから外側に突出する突出板部34bと、突出板部34bの突出方向先端部から基端板部34aと同方向に折曲形成された被固定板部34cと、を有する。
調整材9は、被固定板部34cに固定されている。なお、調整材受け部34は、上記のように、床受けブラケット32と同様の間隔で設けられているため、調整材9は、複数の調整材受け部34に跨って配置されて固定されている。
【0044】
ユニット本体2は、以上のようにして構成されている。
なお、複数の天井梁21,22及び複数の床梁23,24には、複数の壁用木質パネル4がユニット本体2に設けられるときに使用される第一取付金物26と第二取付金物27が取り付けられるが、これらについては後述する。
【0045】
〔複数の木質パネルについて〕
以上のようなユニット本体2は、上記のように、断熱性能を有する複数の木質パネルによって外側面が被覆されている。本実施形態における複数の木質パネルには、フレーム材用パネル3(3A,3B)、壁用木質パネル4、屋根用木質パネル5(端部用屋根パネル6)、床用木質パネル7が含まれており、コーナー部には木質柱8が立設されている。また、壁用木質パネル4の下方には、調整材9が設けられている。
さらに、フレーム材用パネル3(3A,3B)の外側には、当該フレーム材用パネル3(3A,3B)に沿ってコーナー用被覆材15が設けられている。
【0046】
木質パネルの基本構造としては、縦横の框材A,Bが矩形状に組み立てられるとともに、縦横の框材A,Bからなる矩形枠体の内部に補助桟材Cが縦横に組み付けられてパネル枠体が構成され、このパネル枠体の両面もしくは片面に、面材D,Eが貼設され、内部中空な構造となっている。さらに、その内部中空な部分には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材Fが装填される。
また、木質パネルを構成する縦横の框材A,B、補助桟材C、面材D,E同士は、接着剤により強固に接合されている。
【0047】
縦方向の框材Aとは、矩形状に組み立てられた矩形枠体において長辺方向に延在する框材を指しており、横方向の框材Bとは、短辺方向に延在する框材を指している。
これらの框材A,Bは、例えば木質パネルの剛性を向上させるため、被固定面の拡張等の目的で、必要に応じて複数枚重ねにして使用されてもよい。
【0048】
補助桟材Cは、木質パネルの剛性を向上させるために必要に応じて、縦横の框材A,Bによって組み立てられる矩形枠体に対して組み付けられるものであり、縦方向(長辺方向)のみに組み付けられてもよいし、横方向(短辺方向)のみに組み付けられてもよい。また、矩形枠に組み付けられなくてもよい。
補助桟材Cも、上記の框材A,Bと同様に、必要に応じて複数枚重ねにして使用されてもよい。
【0049】
面材D,Eは、いずれか一方が外部(屋外)側、他方が内部(居住スペース)側に設けられるものであり、本実施形態においては説明の便宜上、面材Dが外部側(以下、外側面材D)、面材Eが内部側(以下、内側面材E)に設けられるものとする。また、面材D,Eは、必ずしも枠体の両面に設けられるものではなく、片面のみに設けられるものとしてもよい。
【0050】
断熱材Fとしては、上記のようにグラスウールやロックウール等の繊維系断熱材が主に使用されているが、これに限られるものではなく、例えばフェノールフォームやポリエチレンフォーム等のような発砲樹脂系断熱材が使用されてもよい。
木質パネル内部に部材等が設けられる場合、断熱材Fは、当該部材等を避けて設けられるが、断熱性能の低下を防ぐために、当該部材等を包囲するように設けられることが望ましい。なお、各図面中において網目状に表現された断熱材は繊維系断熱材であり、網目状に表現されていない断熱材は発泡樹脂系断熱材である。
【0051】
框材A,B、補助桟材C、面材D,Eには、貫通孔が適宜形成され、水道やガスの配管、電気線、通信線が通されたり、木質パネルの取り付け時に作業用に使用されたりする。
図17,
図18には、壁用木質パネル4の取り付け作業用に、内側面材Eに対して貫通孔が形成された例が示されている。すなわち、貫通孔から内部にナットや金物等を差し入れたり、手や工具等を差し入れたりする。
なお、木質パネルに形成される貫通孔には、木質パネルを他の部材に対して固定する際のボルトが通される通し孔が含まれるものとし、このような通し孔は、必要な箇所に適宜形成されているものとする。また、ボルト留め(ボルト連結)を行う際は、ボルトの雄ネジと噛み合う雌ネジが形成されたナット等の部材又は構造が適宜利用されるものとする。
【0052】
木質パネルに対しては、防蟻シートや透湿防水シートが適宜貼り付けられているものとする。特に、木質パネルにおける外側面材Dには、これらのシートが貼り付けられることが望ましい。防蟻シートに替えて、防蟻剤を框材A,Bや補助桟材Cに含侵させて木質パネルを形成するようにしてもよい。
【0053】
木質柱8は、上記のように、ユニット本体2の下端部における四隅の連結部25に立設されている。すなわち、連結部25の上面プレート25aには、四隅の柱20が立設された隅部の対角線上に位置する隅部に、平面視L字状に形成された立ち上がり部25bが設けられている。木質柱8は、その下端部における直交して隣接する二つの側面が、立ち上がり部25bに接し、ビス等により固定されている。
木質柱8の下端部における上記の二つの側面は、立ち上がり部25bの厚さ(板厚)分だけ欠き込み加工されている。つまり、木質柱8の下端部における上記の二側面を、L字状の立ち上がり部25bに合わせて固定すると、木質柱8の二側面と、L字状の立ち上がり部25bにおける外側(外角側)の側面とが面一の状態になる。
【0054】
(フレーム材用パネル)
本実施形態におけるフレーム材用パネル3には、
図15,
図16,
図22,
図24,
図25に示すように、柱20を被覆するフレーム材用パネル3Aと、天井梁21,22を被覆するフレーム材用パネル3Bと、が含まれている。
【0055】
柱20を被覆するフレーム材用パネル3Aは、縦横の框材A,B、外側面材D、断熱材Fを備える。
フレーム材用パネル3Aは、
図15,
図16に示すように、居住用ユニット1の四つのコーナー部に対して二つずつ設けられており、木質柱8における直交して隣接する二つの側面に対してそれぞれ固定されている。すなわち、木質柱8と、二つのフレーム材用パネル3Aは、平面視においてL型を為すように配置されている。また、フレーム材用パネル3Aは、連結部25の上面プレート25a上に設置された状態となっている。さらに、上端面には、端部用屋根パネル6が載せられた状態となっている。ここで、上記のように、木質柱8の二側面と、L字状の立ち上がり部25bにおける外側の側面は面一の状態で、段差が生じないため、フレーム材用パネル3Aを、木質柱8の側面に沿って隙間なく固定できるようになっている。
フレーム材用パネル3Aは、柱20の側面から間隔を空けて配置されている。そして、これらフレーム材用パネル3Aと柱20の側面との間の隙間には、
図24に示すように、
フレーム材用パネル3Aの内側に位置する内側断熱材3aが充填されている。
【0056】
天井梁21,22を被覆するフレーム材用パネル3Bは、縦横の框材A,B、補助桟材C、外側面材D、断熱材Fを備える。補助桟材Cは、長辺方向の框材Aの中央部間を接続するように設けられている。
フレーム材用パネル3Bは、
図15,
図16に示すように、柱20を被覆するフレーム材用パネル3Aの上端部間に架け渡されて設けられ、柱20を被覆するフレーム材用パネル3Aの上端部同士を連結している。すなわち、二本のフレーム材用パネル3Aと、一本のフレーム材用パネル3Bは門型に組まれた状態となっている。
また、フレーム材用パネル3Bの上面には、屋根用木質パネル5及び端部用屋根パネル6が載せられた状態となっている。
フレーム材用パネル3Bは、天井梁21,22から間隔を空けて配置されている。そして、これらフレーム材用パネル3Bと天井梁21,22との間の隙間には、
図22に示すように、フレーム材用パネル3Bの内側に位置する内側断熱材3bが充填されている。内側断熱材3bは、複数の天井梁21,22の外側に設けられた断熱材であり、上方の屋根用木質パネル5,6と側方のフレーム材用パネル3Bに到達するとともに、複数の天井梁21,22のウェブ21a,22aの位置まで充填されている。
【0057】
各フレーム材用パネル3A,3Bは、四隅の柱20及び複数の天井梁21,22に沿って設けられているため、これらと同期して動作する。つまり、例えば居住用ユニット1が風や地震等により揺動(振動)した際は、居住用ユニット1におけるユニット本体2の骨組みである四隅の柱20及び複数の天井梁21,22と同一の方向に揺動(動作)する。
換言すれば、各フレーム材用パネル3A,3Bは、門型に組まれた状態であり、更にユニット本体2の連結部25に立設された木質柱8に固定されているため、あたかもユニット本体2と一体化しているかのようにユニット本体2に組み込まれている。
【0058】
(壁用木質パネル)
本実施形態における壁用木質パネル4は、
図14に示すように、縦横の框材A,B、縦横の補助桟材C、両側面材D,E、断熱材Fを備える。
壁用木質パネル4は、柱20の側面を被覆するフレーム材用パネル3A間に複数並べられて配置されている。本実施形態における居住用ユニット1の場合、長辺方向においては六つの壁用木質パネル4が並べられ、短辺方向においては二つの壁用木質パネル4が並べられている。そして、これら壁用木質パネル4の上には、天井梁21,22を被覆するフレーム材用パネル3Bが設けられた状態となっている。
【0059】
壁用木質パネル4は、
図17に示すように、第一取付金物26によって、複数の天井梁21,22に取り付けられている。
第一取付金物26は、天井梁21,22における下フランジ21c,22cの下面に取り付けられており、壁用木質パネル4における矩形枠体の上辺を構成する框材Bに固定されている。
より詳細に説明すると、第一取付金物26は、天井梁21,22における下フランジ21c,22cの下面に取り付けられ、かつ外側に延出する第一板部26aと、第一板部26aの延出方向側端部から下方に延びる第二板部26bと、第二板部26bの下端部から外側に延出して框材Bの下面に固定される第三板部26cと、を有する。第三板部26cは、壁用木質パネル4における内側面材Eを貫通しており(内側面材Eに形成された貫通孔に通されており)、框材Bの下面に対して下方から接する。
また、第一取付金物26における基端部となる第一板部26aは、中央部が、天井梁21,22における下フランジ21c,22cに対してボルト28留めされており、左右方向に対して僅かに回転可能となっている。図示はしないが、第一板部26aには、ボルト28が通される通し孔が形成されている。この通し孔は、円孔でもよいし、天井梁21,22の長さ方向に長い長孔でもよい。
なお、本実施形態においては、第一取付金物26は、一つの壁用木質パネル4に対して二つ設けられている。すなわち、壁用木質パネル4の上端部における左右側端部のそれぞれに第一取付金物26の第三板部26cが固定されている。
【0060】
壁用木質パネル4は、
図18に示すように、第二取付金物27によって、複数の床梁23,24に取り付けられている。
第二取付金物27は、床梁23,24における上フランジ23b,24bの、居住スペースS側の上面に取り付けられており、壁用木質パネル4における矩形枠体の下辺を構成する框材Bに固定されている。
より詳細に説明すると、第二取付金物27は、床梁23,24における上フランジ23b,24bの、居住スペースS側の上面に取り付けられ、かつ外側に延出する第一板部27aと、第一板部27aの延出方向側端部から上方に延出し、かつ内側面材Eを介して框材Bの側面に固定される第二板部27bと、を有する。そして、壁用木質パネル4の下端部は、床梁23,24における上フランジ23b,24bの、外側の上面に載せられた状態となっている。
また、第二取付金物27における基端部となる第一板部27aは、中央部が、床梁23,24における上フランジ23b,24bに対してボルト28留めされており、左右方向に対して僅かに回転可能となっている。図示はしないが、第一板部27aには、ボルト28が通される通し孔が形成されている。この通し孔は、円孔でもよいし、天井梁21,22の長さ方向に長い長孔でもよい。
なお、本実施形態においては、第二取付金物27は、一つの壁用木質パネル4に対して三つ設けられている。すなわち、壁用木質パネル4の下端部における中央及び左右側端部のそれぞれに第二取付金物27の第二板部27bが固定されている。
【0061】
壁用木質パネル4は、第一取付金物26及び第二取付金物27を介して複数の天井梁21,22及び複数の床梁23,24に取り付けられている。しかも、外側に延出する第一取付金物26及び第二取付金物27によって、複数の天井梁21,22及び複数の床梁23,24よりも外側に位置し、なおかつ左右方向に対して僅かに回転可能となっている。そのため、ユニット本体2に取り付けられた複数の壁用木質パネル4は、カーテンウォールとして機能することになる。すなわち、例えば居住用ユニット1が風や地震等により揺動(振動)した際は、居住用ユニット1におけるユニット本体2の骨組みである四隅の柱20及び複数の天井梁21,22と同一の動作を行わないため、壁用木質パネル4の脱落や破損を防ぐことができるようになっている。
【0062】
各壁用木質パネル4の外周端面には、
図19に示すように、弾力性を有する緩衝材10が設けられ、当該緩衝材10は、隣接する木質パネル(フレーム材用パネル3、壁用木質パネル4)との間で潰れた状態となっている。また、緩衝材10は、隣接する木質パネルとの間だけでなく、壁用木質パネル4の外周端面に強く接する部材(緩衝材10が潰れる程度の圧力で接する部材)との間では潰れた状態となる。
緩衝材10は、フィラー材、パッキン材、気密シール等とも呼ばれるものであり、所定の壁用木質パネル4と、当該所定の壁用木質パネル4の外周端面に強く接する部材との間における緩衝機能を発揮するとともに、気密性の向上を図ることができる。緩衝材10の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば天然ゴムやクロロプレンゴム、エチレンプロピンゴム等のゴム系素材が好適に使用されるが、これに限られるものではなく、ポリエチレンなどの樹脂性の素材を使用してもよい。すなわち、弾力性(クッション性)があり、潰れた状態での気密性がある素材であればよい。
なお、本実施形態においては、壁用木質パネル4の外周端面にのみ緩衝材10が設けられるものとするが、他の木質パネル(フレーム材用パネル3、屋根用木質パネル5,6、床用木質パネル7)の外周端面に緩衝材10が設けられてもよい。
【0063】
壁用木質パネル4は、上記のように、複数の天井梁21,22及び複数の床梁23,24よりも外側に位置している。その分を利用し、壁用木質パネル4の居住スペースS側には、
図22に示すように、中間断熱材4a及び内側断熱材4bが更に設けられている。
内側断熱材4bは、居住用ユニット1における壁のうち、居住スペースSに最も近い位置に設けられた断熱材である。中間断熱材4aは、壁のうち最も外側に位置する壁用木質パネル4内部の断熱材Fと、内側断熱材4bとの間に位置する断熱材である。
また、壁用木質パネル4の内側面材Eにおける両側縁部には、上下方向に沿って角材である下地材4cが取り付けられている。
図24に示すように、内側断熱材4bは下地材4cを取付下地として設けられている。中間断熱材4aは、下地材4cと並列に設けられており、壁用木質パネル4、内側断熱材4b、下地材4cに囲まれた状態となっている。
さらに、内側断熱材4bの居住スペースS側面には、内装仕上げ材である内壁材12が設けられている。内壁材12を石膏ボードとし、この石膏ボードの居住スペースS側面に壁クロスを貼り付けてもよい。
【0064】
壁用木質パネル4には、
図1,
図2,
図14に示すように、ドアDoや窓W等の開口部を有するものが含まれている。壁用木質パネル4にドアDoや窓Wが形成される場合は、框材A,Bや補助桟材Cの組み方(開口部用枠)が適宜変更されて開口部が形成される。開口部には、ドアDo用のサッシや窓W用のサッシが組み付けられる。また、居住用ユニット1が寒冷地や極地で使用される場合には、これらサッシはいずれも寒冷地や極地に対応できる仕様とされている。
【0065】
本実施形態における壁用木質パネル4及びフレーム材用パネル3A,3Bは、外装材1aによって被覆されるものとするが、これに限られるものではなく、壁用木質パネル4及びフレーム材用パネル3A,3Bに外壁材が設けられてもよいし、太陽光発電アレイが設けられてもよい。
【0066】
(屋根用木質パネル)
本実施形態における屋根用木質パネル5,6は、
図11,
図12,
図20~
図22等に示すように、縦横の框材A,B、縦横の補助桟材C、外側面材D、断熱材Fを備える。外側面材Dは上側に設けられている。
屋根用木質パネル5,6には、通常の屋根用木質パネル5と、居住用ユニット1(ユニット本体2)の長辺方向両端部に設けられる端部用屋根パネル6と、が含まれている。
【0067】
通常の屋根用木質パネル5は、
図14,
図20に示すように、自身の長辺方向とユニット本体2の短辺方向とが揃うように配置され、計六つの屋根用木質パネル5が、ユニット本体2の長辺方向に並べられて設けられている。
そして、これらの屋根用木質パネル5は、ユニット本体2の長辺方向両端部(四隅の柱20の上端面)に設けられた凸部29を位置決め手段としてユニット本体2の上面に設置されている。すなわち、屋根用木質パネル5をユニット本体2の長辺方向に並べる際に、一つ目の屋根用木質パネル5を凸部29に当接するように配置し、二つ目の屋根用木質パネル5を一つ目の屋根用木質パネル5に当接するように配置する。以降、屋根用木質パネル5を一つ前の屋根用木質パネル5に当接するように配置していけば、ユニット本体2の長辺方向両端部に設けられた凸部29間に、通常の屋根用木質パネル5がぴったりと納まることになる。通常の屋根用木質パネル5を、ユニット本体2の長辺方向両端部側から中央に向かって次々と納めていく方法を採ってもよいものとする。
なお、屋根用木質パネル5として、例えばユニット本体2の長辺方向に沿って長大なものを使用する場合においても、ユニット本体2の長辺方向両端部に設けられた凸部29間に納めればよい。
【0068】
隣接する通常の屋根用木質パネル5は、長辺方向の框材A同士が接しているため、これら框材A同士がボルト連結されることで、すべての屋根用木質パネル5が一繋ぎの状態になる。また、これらの屋根用木質パネル5は、長辺天井梁21を被覆するフレーム材用パネル3Bの上面に対してボルト留めされている。
なお、
図20には、長辺方向の框材A同士をボルト連結する際にボルトが通される通し孔が形成されている点と、各屋根用木質パネル5の長さ方向両端部における短辺方向両端部に対してボルトが通される通し孔が形成されている点が示されている。
【0069】
端部用屋根パネル6は、
図21に示すように、長さ方向両端部に設けられた凹部6aを有する。当該凹部6aは、端部用屋根パネル6の下面に形成されており、端部用屋根パネル6をユニット本体2の長辺方向両端部に設置したときに凸部29が収容される部位となっている。
端部用屋根パネル6は、このように凹部6aを有するため、長辺方向の框材Aが凹部6aの位置で途切れた状態となっている。すなわち、凹部6aは、下方及び側方に開放された状態となっている。さらに、凹部6aを形成するために、補助桟材CがH型に組まれて長辺方向の框材A同士間に組み付けられている。
【0070】
端部用屋根パネル6を構成する外側面材Dのうち、凹部6aの位置に対応する箇所と長さ方向両端部の箇所には、ボルトが通される通し孔が形成されている。端部用屋根パネル6をユニット本体2の上面に設置する際は、凹部6a内に凸部29が納まるようにして設置し、凸部29の上面と、短辺天井梁22を被覆するフレーム材用パネル3Bに対してボルト留めを行う。そして、端部用屋根パネル6を、凸部29に隣接する屋根用木質パネル5に設けるようにする。
【0071】
また、凹部6aの位置で途切れるように形成された框材Aは、通常の屋根用木質パネル5のうち凸部29に隣接する屋根用木質パネル5における框材Aに対して接する。そして、当該端部用屋根パネル6の框材Aには、ボルトが通される複数の通し孔が形成されており、隣接する通常の屋根用木質パネル5及び端部用屋根パネル6における隣接する框材A同士がボルト連結されるようになっている。
【0072】
複数の通常の屋根用木質パネル5と、ユニット本体2の長辺方向両端部の端部用屋根パネル6は全てが互いにボルト連結され、ユニット本体2の上面における長さ方向に連続して一繋ぎの状態となっている。さらに、それぞれの屋根用木質パネル5,6が複数の天井梁21,22を被覆するフレーム材用パネル3Bに対してボルト留めされている。これらの屋根用木質パネル5,6が連結された居住用ユニットの屋根は、ユニット本体2の上面よりも外側に広く形成されており、あたかも一枚の大判な屋根用木質パネルとして、ユニット本体2の上面を被覆できるようになっている。
【0073】
屋根用木質パネル5,6は、上記のように、支持金物30と、フレーム材用パネル3Bと、凸部29とによって、複数の天井梁21,22よりも上方に設けられた状態となっている。さらに、複数の天井梁21,22とフレーム材用パネル3Bとの間には、壁用木質パネル4が複数の天井梁21,22及び複数の床梁23,24よりも外側に位置しているのに合わせて隙間が形成されている。その分を利用し、屋根用木質パネル5,6の居住スペースS側には、
図22,
図25に示すように、内側断熱材5aが更に設けられている。
内側断熱材5aは、複数の天井梁21,22よりも内側に設けられ、居住スペースSの上に配置された断熱材であり、複数の天井梁21,22のウェブ21a,22aの位置まで充填されている。
さらに、内側断熱材5aの居住スペースS側面には、内装仕上げ材である天井材13が設けられている。天井材13を石膏ボードとし、この石膏ボードの居住スペースS側面に天井クロスを貼り付けてもよい。
【0074】
本実施形態における屋根用木質パネル5,6は、外装材1aによって被覆されるものとするが、これに限られるものではなく、屋根用木質パネル5,6の上に屋根材が設けられてもよいし、太陽光発電アレイが設けられてもよい。
【0075】
(床用木質パネル)
本実施形態における床用木質パネル7は、
図14,
図23等に示すように、縦横の框材A,B、縦横の補助桟材C、外側面材D、断熱材Fを備える。外側面材Dは下側に設けられている。
床用木質パネル7のサイズは、通常の屋根用木質パネル5のサイズと同等に設定されており、通常の屋根用木質パネル5と同じく六つの床用木質パネル7が用いられている。これら床用木質パネル7は、互いにボルト連結されている。
【0076】
床用木質パネル7は、自身の長辺方向とユニット本体2の短辺方向とが揃うように配置され、計六つの床用木質パネル7が、ユニット本体2の長辺方向に並べられて設けられている。そして、外周縁部が、複数の床梁23,24に対して床受けブラケット32を介して設けられた床受け部33によって受けられている。
なお、複数の床梁23,24は、上記のように、複数の天井梁21,22よりも外側に位置しているが、複数の床受けブラケット32によって床受け部33が居住スペースS側に位置しているため、屋根用木質パネル5と同サイズの床用木質パネル7を、屋根用木質パネル5の真下に設けることができる。
【0077】
床用木質パネル7の上方には、当該床用木質パネル7の上面(パネル枠体の上面)に設けられた床支持具14aによって支持される床面材14が設けられている。
図23に示すように、壁における各断熱材4a,4b及び壁面材12は、下端部が、複数の床梁23,24の上面及び床受けブラケット32の上方まで設けられている。そのため、床面材14の外周端部と壁面材12との間にはパッキン材14bが充填されている。
なお、床面材14の表裏両面には蓄熱材が貼り付けられており、居住スペースSにおける熱を蓄熱できるようになっている。
【0078】
床用木質パネル7は、上記のように、床支持具14aによって支持された床面材14との間に隙間が形成されている。その分を利用し、床用木質パネル7の居住スペースS側には、内側断熱材7aが更に設けられている。また、複数の床受けブラケット32間にも内側断熱材7bが充填されている。
内側断熱材7aは、床面材14よりも下方に延びる壁における各断熱材4a,4b及び壁面材12に接するまで充填されている。
【0079】
(調整材)
壁用木質パネル4の下方には、
図23に示すように、調整材9が設けられている。すなわち、壁用木質パネル4の下端部は、上記のように、床梁23,24における上フランジ23b,24bの、外側の上面に載せられた状態となっている。そのため、壁用木質パネル4の外側半分は、床梁23,24の上フランジ23b,24bよりも外側にはみ出した状態となっている。調整材9は、このように外側にはみ出した壁用木質パネル4の下端面の下方に位置するようにして設けられている。
【0080】
より具体的に説明すると、調整材9は、床梁23,24のウェブ23a,24aにおける外側面に設けられた調整材受け部34の被固定板部34cに対して固定されている。また、調整材9は、その上下寸法が、床梁23,24の上下寸法と略等しく設定されていることで、壁用木質パネル4の下方であって、かつ床梁23,24の側方に生じる凹みを埋めるようにして設けられることになる。
【0081】
調整材9は、複数の床梁23,24の外側に設けられて、当該複数の床梁23,24を被覆する役割を果たす。また、調整材9は、ユニット本体2の下端部における四隅に設けられた各連結部25間に亘って設けられている。
【0082】
(コーナー用被覆材)
コーナー用被覆材15は、上記のように、フレーム材用パネル3A,3Bの外側において当該フレーム材用パネル3A,3Bに沿って設けられている。より詳細に説明すると、コーナー用被覆材15は、
図22,
図24,
図25に示すように、居住用ユニット1の四つの側面のそれぞれに、当該側面の上辺と両側辺に沿って設けられている。上辺に設けられたコーナー用被覆材15と、両側辺に設けられたコーナー用被覆材15は、門型に接続された状態となっている。本実施形態におけるコーナー用被覆材15は、居住用ユニット1側面の下辺や、居住用ユニット1の上面には設けられていないが、適宜設けられるものとしてもよい。
【0083】
コーナー用被覆材15は、中央部が凹んだ状態となるように断面視凹型に形成されており、二つの下地部15aと、カバー部15bと、凹溝部15cと、を有する。凹溝部15cは、コーナー用被覆材15における中央部の上記の凹んだ状態の部分(下地部15a間の凹みに沿って形成されたカバー部15bの凹み)を指し、当該凹溝部15cは、コーナー用被覆材15の長さ方向に沿って形成されている。
【0084】
二つの下地部15aは角材であり、互いに間隔を空けて居住用ユニット1の側面における上辺及び両側辺に沿って固定される。より具体的には、上辺の場合は、
図22及び
図25に示すように、屋根用木質パネル5,6側とフレーム材用パネル3B側に間隔を空けて二つの下地部15aが設けられている。両側辺の場合は、
図24に示すように、木質柱8側とフレーム材用パネル3A側に間隔を空けて二つの下地部15aが設けられている。
なお、木質柱8のうち最も外側に位置する角部を介して直交方向に配置されて隣接する二つの下地部15aは、いずれか一方の幅寸法を短くするか、隣接する幅方向側端を斜め45度にカットする。
【0085】
カバー部15bは、二つの下地部15aと、これら二つの下地部15a間の凹みを被覆するようにして設けられる鋼板のカバーであり、二つの下地部15aに対してビス等で固定されている。
なお、木質柱8のうち最も外側に位置する角部を介して直交方向に配置されて隣接する二つのカバー部15bは一体形成されてもよい。
【0086】
コーナー用被覆材15における中央部の凹溝部15cは、例えば
図24,
図25に示すように、連結スペース50の被覆材62を取り付けるために使用されたり、屋根面からの雨水を二段階で受けて下方に流す水切部材として使用されたりする。
【0087】
〔架台について〕
居住用ユニット1が連結される架台40は、居住用ユニット1が載せられた状態で牽引車両(図示省略)による移動を可能とする輸送用架台とされており、居住用ユニット1が載置固定されるユニット設置部41と、ユニット設置部41を支持する支持脚部42と、を備える。
【0088】
ユニット設置部41は、その外周端部が、居住用ユニット1の下端面よりも外側にはみ出すように寸法設定されたフレーム体又は板状体であり、四隅には、ユニット本体2四隅の連結部25における連結ボックス25d内部に挿入されるボルト(図示省略)が上方に突出して設けられている。
なお、ユニット本体2に対して複数の木質パネルを装着する作業は、このユニット設置部41上で行うことが可能となっている。ユニット本体2自体は、予め工場などで組み立てられるため、場合によっては、ユニット設置部41上にユニット本体2が設置された状態で架台40ごと現場に輸送されてもよい。複数の木質パネルを装着する作業についても、工場で行われてもよいし、現場で行われてもよい。
【0089】
支持脚部42は、架台40を居住用ユニット1輸送用とするための仕様が適用される。すなわち、居住用ユニット1が寒冷地や極地で使用される場合、支持脚部42は、
図1等に示すように、橇部42aを有する。また、居住用ユニット1が寒冷地や極地以外で使用される場合は車輪を有してもよいし、工事現場や農地、砂漠等の不整地でも輸送ができるように無限軌道(キャタピラーなどともいう)を有してもよい。
【0090】
なお、本実施形態においては、支持脚部42が橇部42aを有し、居住用ユニット1が寒冷地や極地で使用されることが想定されているため、牽引車両としては例えば雪上車が用いられる。このような牽引車両と、ユニット設置部41又は支持脚部42は、牽引チェーン43や牽引ベルトによって接続される。
【0091】
また、本実施形態においては、二つの居住用ユニット1(1A,1B)が連結スペース50を介して連結された状態で使用される。そのため、二つの居住用ユニット1(1A,1B)はそれぞれが架台40に載せられており、牽引車両によって同時に牽引できるようになっている。このような場合には、一方の架台40と他方の架台40とを連結する連結装置が適宜用いられてもよい。
【0092】
〔連結スペースについて〕
二つの居住用ユニット1(1A,1B)を連結する連結スペース50は、
図1,
図3~
図5,
図22,
図24,
図25に示すように、二つの居住用ユニット1A,1Bを連結手段51及び被覆手段61によって連結したときに形成される空間を含む場所全体を指している。また、二つの居住用ユニット1A,1Bのうち、連結スペース50によって連結される箇所には壁用木質パネル4が設けられず、二つの居住用ユニット1A,1Bは、連結スペース50に向かって開放された状態となっている。
【0093】
連結スペース50は、二つの居住用ユニット1A,1Bの床同士(連結スペース50に面する床用木質パネル7同士)を連結する連結床構造と、連結スペース50のうち少なくとも上部と両側部を被覆材62によって被覆する被覆構造と、によって構成される。
二つの居住用ユニット1A,1Bは、異なる構造体として形成されたもので、それぞれ別の架台40に設置されたものであるため、振動が発生したときに、それぞれ異なる動作を行う場合がある。連結床構造及び被覆構造は、連結スペース50を構成しつつ、そのような異なる動作を効果的に吸収できるようになっている。
【0094】
(連結床構造)
連結スペース50における床を構成する連結床構造は、
図3,
図5に示すように、一方の居住用ユニット1Aにおける床梁23と、他方の居住用ユニット1Bにおける床梁23との間に架け渡されて設けられた連結手段51と、連結手段51から上方に間隔を空けた位置に設けられた連結床部55と、を有する。
そして、連結手段51は、可動機構52と、床フレーム53と、下面材54と、吊部材54aと、を備える。また、連結床部55は、第一床部56と、第二床部57と、を備える。
【0095】
連結手段51において、可動機構52は、一方及び他方の居住用ユニット1A,1Bにおける床梁23のそれぞれに設けられるとともに互いに間隔を空けて配置され、かつ上下方向及び左右方向への動作が可能に構成されている。
このような可動機構52としては、例えばヒッチボールと、このヒッチボールに対して上下方向及び左右方向に動作可能なヒッチカプラと、からなるヒッチ構造が採用される。
【0096】
床フレーム53は、一方の居住用ユニット1A側の可動機構52と、他方の居住用ユニット1Bの可動機構52との間に架け渡されて設けられている。床フレーム53は、双方の可動機構52間に設けられ、これら可動機構52に同期して動作を行う。
【0097】
下面材54は、いわゆるエキスパンションジョイントとも呼ばれ、可撓性を有する蛇腹状の面材であり、例えば熱可塑性エラストマーにより製造されて耐寒性を有する。そして、一方の居住用ユニット1Aにおける床梁23と、他方の居住用ユニット1Bにおける床梁23との間に架け渡されるとともに外部に面して設けられている。
また、このような下面材54は、上記のように可撓性を有するため、吊部材54aによって中央付近が吊り下げられている。吊部材54aは、アングル材であり、上面が床フレーム53の下面に固定されており、下方に延びる部分に下面材54が固定されている。
【0098】
連結床部55において、第一床部56は、いわゆる床用エキスパンションジョイントとも呼ばれ、一方及び他方の居住用ユニット1(1A,1B)のそれぞれにおける床梁23の上方に位置し、かつ水平方向へのスライド機構を有する。また、第一床部56は、一方及び他方の居住用ユニット1A,1Bにおける床面材14と隣り合って配置されている。
【0099】
第二床部57は、双方の第一床部56間に位置しており、床フレーム53の上方に支持されている。なお、この第二床部57は、居住用ユニット1A,1Bに設けられる床面材14と同一のものであって、第一床部56とは異なり、それ自体がスライド機構を有するものではなく、床フレーム53と同期して変位する。
【0100】
なお、以上のような連結床構造(連結床部55の下方)には、断熱材が適宜充填されるものとする。
本実施形態における連結床構造は、以上のようにして構成されている。すなわち、連結手段51には、上記のように、フレキシブル性の高い構造が採用されており、一方の居住用ユニット1Aと他方の居住用ユニット1Bとの間で破壊的な力が伝達されないようにすることができる。
【0101】
(被覆構造)
連結スペース50のうち少なくとも上部と両側部を被覆材62によって被覆する被覆構造は、
図24,
図25に示すように、被覆材62が、一方の居住用ユニット1Aから他方の居住用ユニット1Bに跨って設けられるとともに、連結スペース50のうち少なくとも上部と両側部を被覆している。そして、被覆材62は、当該被覆材62における一方及び他方の居住用ユニット1A,1B側端部に沿って連続して設けられるとともに当該端部を保持する留付フレーム70によって、一方及び他方の居住用ユニット1A,1Bに留め付けられている。
【0102】
被覆材62は、少なくとも耐候性及び防水性を有するシート(膜)であり、第一被覆材621と、第二被覆材622と、防水ファスナー63と、を備える。
第一被覆材621は、連結スペース50における一方の居住用ユニット1A側を被覆するものであり、一方の居住用ユニット1Aに留め付けられている。
第二被覆材622は、連結スペース50における他方の居住用ユニット1B側を被覆するものであり、他方の居住用ユニット1Bに留め付けられている。
防水ファスナー63は、第一被覆材621と第二被覆材622とを接続し、接続時において防水機能を発揮する。
なお、本実施形態においては、被覆材62はシート(膜)であるとしたが、これに限られるものではなく、シートよりも剛性の高い面材(板材)を用いてもよい。
【0103】
留付フレーム70は、被覆材62における一方及び他方の居住用ユニット1A,1B側端部の内側面に接する第一フレーム71と、被覆材62における一方及び他方の居住用ユニット1A,1B側端部の外側面に接し、第一フレーム71との間に被覆材62を挟み込む第二フレーム72と、を備える。
すなわち、留付フレーム70は、一方の居住用ユニット1A側と他方の居住用ユニット1B側にあり、第一被覆材621及び第二被覆材622における一方及び他方の居住用ユニット1A,1B側端部を、連結スペース50の内側と外側から挟み込んだ状態で、一方の居住用ユニット1A及び他方の居住用ユニット1Bにそれぞれ留め付けられている。
なお、第一フレーム71と第二フレーム72はボルト連結されている。そのため、被覆材62(第一被覆材621、第二被覆材622)における一方及び他方の居住用ユニット1A,1B側端部にもボルトを通す孔が形成されているものとする。
【0104】
また、留付フレーム70は、一方の居住用ユニット1Aにおける他方の居住用ユニット1B側面に設けられたコーナー用被覆材15と、他方の居住用ユニット1Bにおける一方の居住用ユニット1A側面に設けられたコーナー用被覆材15の、それぞれの凹溝部15cに設けられた被留付フレーム75に対して留め付けられている。
被留付フレーム75が設けられた一方及び他方の居住用ユニット1A,1Bにおけるコーナー用被覆材15同士は互いに真正面に対向しており、第一被覆材621と第二被覆材622とを真っ直ぐに張設できるようになっている。
【0105】
以上のように張設された被覆材62の内側には断熱材が充填される。連結スペース50の側方においては、留付フレーム70に対して下地受けブラケット714が一体的に設けられ、下地受けブラケット714に対して木質の下地材65aが設けられている。そして、下地材65aに対して内側断熱材65が設けられている。また、この内側断熱材65と被覆材62との間には隙間が形成されることになるが、この隙間にも内側断熱材64を充填してもよい(
図4参照)。連結スペース50の上方においても二重に内側断熱材66,67が充填されている。
【0106】
以上のように構成された居住用ユニット1(1A,1B)は、比較的過酷な環境下で使用することが想定されており、断熱性及び気密性に優れる。また、架台40に対して移動機構(本実施形態では橇部42a)を設け、牽引車両で牽引することで、環境変動に合わせて居住用ユニット1(1A,1B)を移動することができる。これにより、比較的過酷な環境下であっても快適な居住空間を形成することが可能となる。
【0107】
本実施の形態によれば、居住用ユニット1の上面における長辺方向両端部のそれぞれに、上方に突出する凸部29が形成され、複数の屋根用木質パネル5は、居住用ユニット1の上面における長辺方向一端部の凸部29から長辺方向他端部の凸部29との間に並べられているので、居住用ユニット1の上面における長辺方向両端部のそれぞれに形成された凸部29を、複数の屋根用木質パネル5を居住用ユニット1の上面に並べて載置する際の位置決め手段として用いることができる。これにより、居住用ユニット1の上面に複数の屋根用木質パネル5を設置する際の位置決めをずれなく、容易に行うことができる。
【0108】
また、居住用ユニット1の上面における長辺方向両端部には、凸部29から外側に、かつ複数の屋根用木質パネル5と連続して並べられる端部用屋根パネル6が取り付けられているので、複数の屋根用木質パネル5と端部用屋根パネル6によって居住用ユニット1の上面を広く被覆することができる。
さらに、端部用屋根パネル6の下面には、凸部29が収容される凹型の収容部(凹部6a)が形成されているので、凸部29を、端部用屋根パネル6を居住用ユニット1の上面に並べて載置する際の位置決め手段として用いることができる。これにより、居住用ユニット1の上面に端部用屋根パネル6を設置する際の位置決めをずれなく、容易に行うことができる。すなわち、居住用ユニット1の上面を広く被覆する複数の屋根用木質パネル5及び端部用屋根パネル6を正確に設置できることになる。
【0109】
また、居住用ユニット1の上面における長辺方向両端部のそれぞれに形成された凸部29は、居住用ユニット1の上面における短辺方向両端部の二か所に形成されているので、居住用ユニット1の上面における長辺方向両端部のそれぞれにおいて、複数の凸部29を位置決め手段として利用できる。これにより、居住用ユニット1の上面に複数の屋根用木質パネル5を設置する際の位置決めをより正確に、かつ容易に行うことができる。
【0110】
また、凸部29は、四隅の柱20の上方に位置しているので、凸部29自体を、居住用ユニット1における四隅の柱20の位置を基準にして設けることができる。これにより、凸部29が設けられる位置に誤差が生じにくくなるので、凸部29の位置を基準にして設けられる複数の屋根用木質パネル5の位置決めにおける正確性を向上できる。
【0111】
また、居住用ユニット1の長辺方向における天井梁21,22の上面には、屋根用木質パネル5を支持する支持金物30が、長辺方向の天井梁21に沿って設けられ、複数の屋根用木質パネル5は、自身の長辺方向が居住用ユニット1の短辺方向に沿うように配置され、かつ支持金物30間に跨って設けられており、当該支持金物30が断面ハット型であるので、屋根用木質パネル5の下面に対して接する箇所の数が多くなる。そのため、屋根用木質パネル5を、断面ハット型の支持金物30における接触部分に固定することで固定箇所の数を増やすことができるので、複数の天井梁21,22に対する屋根用木質パネル5の固定強度を向上できる。
【符号の説明】
【0112】
S 居住スペース
A 長辺框材
B 短辺框材
C 補助桟材
D 外側面材
E 内側面材
F 断熱材
1 居住用ユニット
1a 外装材
2 ユニット本体
3 フレーム材用パネル
4 壁用木質パネル
5 屋根用木質パネル
6 端部用屋根パネル
6a 凹部
7 床用木質パネル
8 木質柱
9 調整材
10 緩衝材
15 コーナー用被覆材
15c 凹溝部
20 柱
21 長辺天井梁
22 短辺天井梁
23 長辺床梁
24 短辺床梁
25 連結部
25a 上面プレート
25b 立ち上がり部
25d 連結ボックス
26 第一取付金物
27 第二取付金物
28 ボルト
29 凸部
30 支持金物
31 水平ブレース
32 床受けブラケット
33 床受け部
34 調整材受け部
40 架台
50 連結スペース
51 連結手段
52 可動機構
53 床フレーム
54 下面材
54a 吊部材
55 連結床部
56 第一床部
57 第二床部
61 被覆手段
62 被覆材
621 第一被覆材
622 第二被覆材
63 防水ファスナー
70 留付フレーム
71 第一フレーム
72 第二フレーム
75 被留付フレーム