(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002146
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】防護具
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20221227BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20221227BHJP
E04H 12/20 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G1/02
E04H12/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103186
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 智志
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】春木 一誠
(72)【発明者】
【氏名】野川 保次
(72)【発明者】
【氏名】タイ レ ホアイ ドゥック
【テーマコード(参考)】
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
5G352AC03
5G367AD06
5G367BB04
(57)【要約】
【課題】接触時に衝撃を緩和できる防護具を提供する。
【解決手段】防護具1は、上下に互いに平行に配置される天板2及び底板12を備えている。天板2及び底板12は、それぞれ、中央に上方貫通孔6a、下方貫通孔16aが形成された樹脂製の板材6、16の外周を金属製の枠材4、14で保持するよう構成されている。天板2及び底板12の間は、4本の支柱10によって支えられている。支柱10は、天板2及び底板12の外周縁4a、14aよりも小さい径の円環状に配列されている。そして、支柱10よりも外径側には、天板2及び底板12の外周縁4a、14aに沿って10本のロープ21が上下に渡されるように配置されている。天板2及び底板12はそれぞれ中央で2分割される2つのパーツで構成されており、一端を軸として開閉可能となる。天板2及び底板12はそれぞれ設けられた固定ピン11の脱着により容易に開閉できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被防護物が貫通配置される上方貫通孔が中央に形成された天板と、
前記天板に対して下方へ平行に配置され、中央に下方貫通孔が形成された底板と、
前記天板及び前記底板の外周縁に沿って配置される、可撓性を有した保護材と、
前記保護材よりも内側で前記被防護物の周りに円環状に配置され、前記天板及び前記底板の間を支える支柱と
を備えたことを特徴とする防護具。
【請求項2】
前記天板の上方貫通孔及び前記底板の下方貫通孔は、前記被防護物の周りを回転可能な程度に間隔を空けて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防護具。
【請求項3】
前記保護材は、前記天板及び前記底板の間を渡すように脱着可能に取り付けられる複数の細長い部材で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防護具。
【請求項4】
前記天板及び前記底板は、前記上方貫通孔及び前記下方貫通孔を割るように分割可能に構成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の防護具。
【請求項5】
前記被防護物は、電柱の支線であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の防護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱の倒壊を防ぐために用いられる支線を保護する防護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、水平方向に基準値以上の不均衡を生じる場合、電柱には支線が必要となる。架渉線からの張力に耐え得る設計を行う際、気象の変化等も考慮されるが、地震対策として耐震強度を高めるために大型の取付金具が用いられることが多くなっている。これに合わせて防護具も大型化している。
【0003】
図11は、従来の防護具200を示している。比較的大型の取付金具202を収容できるように、支線201を収容する上方の筒体210よりも下方側では空間に余裕を持たせた筒体211で構成されている。このような従来の防護具200については、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電柱の設置場所によっては、雑草が多く生い茂る場合がある。また、付近の支線やポールなどを伝って蔓草が伸びる場合もある。このような環境では、雑草を頻繁に刈り取る必要がある。草刈り作業では、作業効率向上のために、駆動力を備えた草刈り機が用いられることが多い。
【0006】
しかし、雑草に埋もれた支線やポールなどの近傍を刈り取る際、チップソーの刃が防護具と干渉する可能がある。このような場合、いわゆるキックバック現象などにより草刈り機が防護具に弾かれて事故が発生する恐れがあり大変危険である。また、防護具を突き破って支線やポールなどに損傷が生じる可能性もあり、不要なコストがかかってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、草刈り機等の工具との接触時に衝撃を緩和できる防護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の防護具は、被防護物を保護する防護具であって、前記被防護物が貫通配置される上方貫通孔が中央に形成された天板と、前記天板に対して下方へ平行に配置され、中央に下方貫通孔が形成された底板と、前記天板及び前記底板の外周縁に沿って配置される、可撓性を有した保護材と、前記保護材よりも内側で前記被防護物の周りに円環状に配置され、前記天板及び前記底板の間を支える支柱とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の防護具は、上記構成に加えて、前記天板の上方貫通孔及び前記底板の下方貫通孔は、前記被防護物の周りを回転可能な程度に間隔を空けて形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の防護具は、上記構成に加えて、前記保護材は、前記天板及び前記底板の
間を渡すように脱着可能に取り付けられる複数の細長い部材で構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の防護具は、上記構成に加えて、前記天板及び前記底板は、前記上方貫通孔及び前記下方貫通孔を割るように分割可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の防護具は、上記構成に加えて、前記被防護物が電柱の支線であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、天板及び底板の間を支える支柱よりも外周縁側に保護材が配置されているので、草刈り機の刈刃などが当たる際、先に保護材が接触する。このような場合、保護材は可撓性を有しているので、刈刃を弾くことなく搦め取るように刈刃と共に回る。これにより、キックバック現象による事故を防止できる。
【0014】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、天板の上方貫通孔、底板の下方貫通孔は、支線などの周りを回転可能な程度に間隔を空けて形成されているので、草刈り機の刈刃などが当たる際、全体の回転によって力を逃がすことができる。これにより、キックバック現象による事故を防止できる。
【0015】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、保護材は、天板及び底板の間を渡す複数の細長い部材で構成されており、しかも、脱着可能に設けられているので、草刈り機により切断されたり損傷が生じた場合は、部分的に交換することにより修復することができる。これにより、メンテナンスが容易になる上、コストも削減される。
【0016】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、天板及び底板が、上方貫通孔及び下方貫通孔を割るように分割可能に構成されているので、搬送や組立時の作業が容易になる。
【0017】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、電柱の支線に対しても取り付けることができるので、草刈り機によって切断されやすい線条類を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る防護具の全体斜視図である。
【
図2】
図1の防護具を開いて支線類を収容するときの様子を示した斜視図である。
【
図4】防護具と刈刃との位置関係を示した平面図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係る防護具の全体斜視図である。
【
図6】
図5の防護具を開いて支線類を収容するときの様子を示した斜視図である。
【
図7】ネットを天板に取り付けるための構造を示し、(a)は取付フックの斜視図、(b)は取付作業を示した部分拡大図である。
【
図8】本発明の第3の実施の形態に係る防護具の使用状態を示す斜視図である。
【
図9】
図8の防護具の長手方向から見た図であって、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る防護具について図を用いて説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る防護具1の全体斜視図である。防護具1は、上下に互いに平行に配置される天板2と底板12とを有している。天板2と底板12との間は、4本の支柱10で支えられている。天板2と底板12との間隔は、後述するように、支線を取り付ける金具を収容できる寸法に設定されている。4本の支柱10は、天板2及び底板12の外周縁よりも少し内側に円環状の配列で設けられている。そして、支柱10よりも外径側の外周縁に沿った位置には、可撓性を有する保護材として10本のロープ21が円環状の配列で設けられている。
【0021】
本実施の形態に係る構成では、ケブラー材によるロープ21が保護材として採用されている。ロープ21の両端は端子金具22を用いて、天板2及び底板12の間を渡すように設置されている。端子金具22は、ロープ21に対して圧着されており、端子金具22を固定しているボルト23を緩めると、端子金具22とともにロープ21を交換可能である。
図1から見て取れるように、天板2の外周縁4a、底板12の外周縁14aに沿ってほぼ等間隔に、10本のロープ21が設置されている。
【0022】
天板2は、金属製の枠材4で樹脂製の板材6の外周部分を保持するように構成されている。また、底板12も同様に、金属製の枠材14によって樹脂製の板材16の外周部分を保持するように構成されている。
【0023】
天板2の板材6の中央には、支線100aや支線100aを取り付けるための支線取付金具100b(後述の
図2参照)を貫通して配置できる上方貫通孔6aが形成されている。なお、以降、支線100a及び支線取付金具100bについては、両者を特に区別する必要がない場合は、説明の便宜のため、まとめて支線類100と呼ぶこととする。同様に、底板12の板材16の中央にも、支線類100を貫通して配置できる下方貫通孔16aが形成されている。これら上方貫通孔6a及び下方貫通孔16aは、後述するように、支線類100との間に相対回転を妨げない程度の間隔を空けることができる大きさに設定されている。
【0024】
天板2及び底板12は、それぞれ中央の上方貫通孔6a及び下方貫通孔16aの位置で分割されるように2つのパーツで構成されている。2分割構成のパーツは、外周縁4a、14a側の一端同士を互いに軸支されて開閉可能に構成されている。そして、外周縁4a、14aの他端側で固定及び解除できるように脱着可能な固定ピン11で固定されている。
【0025】
図2は、防護具1を開いて支線類100を収容するときの様子を示す斜視図である。本実施の形態に係る防護具1は、上述のように、天板2及び底板12にそれぞれ設けられた固定ピン11を抜き取るだけで容易に開くことができる。
【0026】
なお、天板2の上方貫通孔6aや底板12の下方貫通孔16aは、防護具1を閉じた状態で支線類100のすべての構成を自在に通過させるほどの大きさは必要ない。すなわち、収容した後に支線類100の周りに防護具1を回転させることができる程度の間隔を空けるように形成されている。具体的には、支柱10の配列されている領域(後に
図4に示す円環C2で囲まれる領域)よりも径が小さくなるように上方貫通孔6a及び下方貫通孔16aが形成されている必要がある。少なくとも、上方貫通孔6a、下方貫通孔16aの開口径は、支線100aの直径よりも大きく、且つ、支線類100の最大径よりも小さい構成が望ましい。これにより、支線100a又は支線取付金具100bの周りに防護具1を回転可能に設置でき、支線類100が支柱10と干渉することなく防護具1の略中央に安定して保持される。
【0027】
支線類100と接する部分には樹脂製の板材6、16が用いられているので、支線類1
00を損傷する恐れはない。防護具1が支線類100の周りに回転する際、金属部材と樹脂材との摩擦によって滑りやすくなるように構成されている。
【0028】
図3は、防護具1の使用状態を示した図である。設置場所によっては、
図3に示したように、支線類100及び防護具1の周辺に雑草Wが生い茂る場合がある。このように雑草Wに囲まれると、防護具1の位置が判別し難い。このような状況で、雑草Wを除去するために動力を備えた草刈り機を用いる場合、草刈り機の刈刃101(後述の
図4参照)との接触が問題となる。次に、この草刈り機の刈刃101が干渉するときの作用について説明する。
【0029】
図4は、防護具1と刈刃101との位置関係を示した平面図である。防護具1についてはロープ21の設けられている位置で切断した横断面を示している。刈刃101は点線で表している。また、ロープ21が配列される位置を円環C1で表し、支柱10が配列される位置を円環C2で表している。
【0030】
一般に草刈り機は、平面視において反時計回りの方向に刈刃101が回転する。そして、刈り取り作業も、同じ反時計方向に行う必要がある。
図4中に刈刃101の4分の1の領域に斜線を施して表している。この領域は、いわゆるキックバック現象の発生する回転域(以下、危険領域Rとする。)である。この危険領域Rで作業対象以外の固定物と接触すると反動によって刈刃101が弾かれて、後方へ弾き飛ばされるので非常に危険である。したがって、キックバック現象が生じないように、斜線の危険領域Rよりも左側前方の回転域で草を刈る必要がある。
【0031】
しかし、
図3に示したように、雑草Wの中に防護具1が埋もれていると、位置が把握し難いので、視認性が悪い中で上記の危険領域Rの部分が防護具1と接触する可能性がある。
【0032】
これに対して、上述したように、本実施の形態に係る構成では、最も外側にケブラー材のロープ21が保護材として配置されている。したがって、刈刃101と最初に接触するのは、このロープ21である。仮に、刈刃101の上記危険領域Rにロープ21が接触した場合であっても、ケブラー材のロープ21は可撓性を有しているので、刈刃101を跳ね返すような反動は生じない。そして、切断に強い素材であるため、容易に切断されずに刈刃101の回転に合わせて供回りするように逃げる。このような状態でさらに刈刃101が推し進められると、ロープ21が刈刃101の回転軸に絡みつく。この場合、昨今の草刈り機であれば、電動式に限らずエンジン式であっても、過度の負荷が掛かった場合、保護装置が作動するので、動力が即座に遮断されて刈刃101は安全に停止する。このように、本実施の形態に係る構成によれば、刈刃101の危険領域Rが干渉した場合であっても、キックバック現象を生じることなく、安全に刈刃101を停止させることが可能である。
【0033】
なお、常に上述のような具合に接触するとは限らない。そこで、ロープ21が切断された場合の防護具1の動きについて説明する。
【0034】
刈刃101が最初に接触したロープ21に搦め取られることなく切断した場合、刈刃101が円環C2の位置まで侵入して、内側に配列された支柱10と接触する可能性がある。このとき、支柱10に刈刃101が跳ね返される可能性がある。しかし、本実施の形態に係る防護具1は、土地に定着させる構成ではなく、上述のように、支線類100の周りに回転可能に設けられている。したがって、刈刃101の回転力の一部は、防護具1の回転により分散される。そして、回転することにより、切断されたロープ21に隣接するロープ21が刈刃101に接触可能な位置に移動してくる。このとき、刈刃101の回転力
は低下しているので、接近してきたロープ21が切断されずに絡みつく可能性が高い。うまく搦め取ることができれば、上述のパターンと同様に保護装置を作動させて、安全に停止させることが可能である。また、2番めのロープ21も切断されたとしても、防護具1の回転によってさらに次のロープ21が移動してくることに加えて、刈刃101の回転力も大きく低下しているので、安全に搦め取られる可能性が高くなる。
【0035】
保護材は、複数本のロープ21によって分割構成されているので、切断されてしまったロープ21だけを交換すれば、容易に修復することができ、修理費用も低く抑えられる。
【0036】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る防護具30の全体斜視図である。ここでは、第1の実施の形態において図を用いて示したものと同一の構成については同一の符号を付して説明を行うこととする。
【0037】
上下に天板2及び底板12を備えた構成は、第1の実施の形態に示した防護具1と共通である。また、天板2及び底板12の間を支える支柱10の構成も共通である。しかし、天板2及び底板12の外周縁4a、14aに沿って設けられる保護材は、第1の実施の形態の構成とは異なる。
【0038】
本実施の形態に係る構成では、保護材が、ロープ21ではなくネット31によって構成されている。天板2及び底板12の外周縁4a、14aに沿って10枚の細長いネット31が配置されている。それぞれのネット31は、後述する金具によって、天板2及び底板12の間を渡すように設けられている。これらネット31は可撓性を有し、引張方向の耐衝撃性に優れる高密度ポリエチレン材で形成されている。なお、一定の強度が得られるものであれば高密度ポリエチレン材に限らず、低密度ポリエチレン材を用いることもできる。低密度ポリエチレン材を用いる場合は、防護具を低コストで構成することができる。また、高密度・低密度ポリエチレン材を組み合わせて構成してもよい。
【0039】
図6は、防護具30を開いて支線類100を収容するときの様子を示す斜視図である。
図2に示した防護具1の構成と同様に、天板2及び底板12にそれぞれ設けられた固定ピン11を抜き取るだけで容易に開くことができる。
図6から見て取れるように、内側に円環状に配列された4本の支柱10とネット31との径方向の距離は、
図2の支柱10とロープ21との間の径方向の距離と同程度である。
【0040】
図7は、ネット31を天板2又は底板12に取り付けるための構造を示しており、(a)は取付フック32の斜視図、(b)は取付作業を示した部分拡大図である。
【0041】
取付フック32は天板2又は底板12のそれぞれの表裏面に掛け渡すように延びる2本の爪部32aを有し、基部32b側で一体に形成されている。基部32b側をボルト34で締結することで天板2又は底板12に固定することができる。また、ボルト34を僅かに緩めると天板2又は底板12に沿って半径方向外側へスライド可能となり、爪部32aと外周縁4a、14aとの間を開くことができる。
【0042】
図7(b)は、ボルト34を緩めて取付フック32が外径側へ引き出された状態を示している。このように爪部32aと天板2又は底板12の外周縁4a、14aとの間を開いた状態で、一部を引っ掛けるだけでネット31を容易に配置できる。引っ掛けた後は、半径方向の中心側へスライドにより戻してボルト34で締結すると固定が完了する。第1の実施の形態の防護具1に用いられるロープ21には、両端に端子金具22を圧着した上で、天板2及び底板12にボルト固定する必要があったが、本実施の形態に係る構成では、予めネット31側に加工を施しておく必要はない。
【0043】
以上のように構成されているので、防護具30の天板2及び底板12の間の領域に草刈り機の刈刃101(
図4参照)が当たる際、最初にネット31が接触する。本実施の形態に係る構成では、保護材はネット31状に形成されているので、一部が切断されても、他の部分で繋がっていれば、刈刃101に絡みつくことが可能である。また、ネット31状に形成されているため、伸縮性に富んでいる。したがって、刈刃101が接触した際の衝撃を柔軟に吸収しながら、刈刃101と供回りして搦め取ることが可能である。さらに、たとえ最初に接触したネット31が切断されたとしても、切断時の力や支柱10との接触に基づく反力によって防護具30全体が支線類100の周りに回転し、隣接のネット31で搦め取ることができる可能性が高い。このように、軟質材で柔らかく受け止めることによってキックバック現象を防止しながら草刈り機を安全に停止できる上、草刈り機に対するダメージも軽減することが可能である。また、第1の実施の形態のロープ21と同様に、保護材は複数のネット31に分割して構成されているので、メンテナンスの作業効率が向上する。
【0044】
(第3の実施の形態)
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る防護具50の使用状態を示す斜視図である。また、
図9は、
図8の防護具50の長手方向から見た図であって、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【0045】
図8に示すように、電柱の設置環境によっては、2本の支線100c、100dが必要になる場合がある。このような場合、2本の支線100c、100dは、異なる角度で張設される。これら異なる角度で張設される2本の支線100c、100dの接地位置はほぼ同じで、電柱を異なる位置で支持する形態が一般的である。
【0046】
図8には、上下の支線100c、100dの間の角度が約4度になるように設定されている例を示した。これら2本の支線100c、100dに対して防護具50が設置されている。防護具50は、枠材54及び板材56からなる天板52と、枠材64及び板材66からなる底板62(
図9(b)参照)を有している。
【0047】
図9(a)を参照すると、天板52の板材56に形成された開口径D1の方が、底板62の板材66に形成された開口径D2よりも大きくなるように設定されており、上記の第1及び第2の実施の形態の構成とは異なっていることがわかる。このように構成することによって、2本の支線100c、100dの間隔が広がった位置でも、比較的大きく形成された天板52の内側に収容することができる。
【0048】
また、上記の第1及び第2の実施の形態のような1本の支線100a(
図2参照)であっても、支線類100に比較的大きい部品が用いられている場合、天板52の高さと同程度であれば干渉する可能性がある。しかし、天板52の開口径D1が、支線類100と干渉しないような十分な大きさに設定されていれば、支線類100の高さ位置に関係なく防護具50を設置でき、刈刃101(
図4参照)が接触した場合に防護具50の回転を阻害することもない。なお、
図2に示したように、1本の支線100aであっても、比較的径の大きい支線取付金具100b等と防護具50とが干渉しない位置関係にある場合、防護具50では、開口の小さい側の底板62側が上方に配置されるように上下反転させて用いることも可能であり、汎用性が高い。
【0049】
以上に述べてきたような構成は本発明の一例であり、さらに以下のような変形例も含まれる。
【0050】
(1)上記の実施の形態では、保護材として分割配置されたロープ21又はネット31
を採用した構成を例として示した。しかし、刈刃101の衝撃を吸収できるような可撓性を有した保護材であれば、一体に形成されていても構わない。
【0051】
(2)上記の実施の形態では、4本の支柱10と10本の保護材(ロープ21又はネット31)が配置されている構成を例として示した。しかし、これらの数と異なる構成でも構わない。たとえば、支柱10の数の方が分割された保護材の数よりも多い構成でも構わない。また、保護材を、天板2及び底板12の周りに巻きつけることができる一体の構成でも構わない。
【0052】
(3)上記の実施の形態では、天板2及び底板12の中央側に樹脂製の板材6、16を用いた構成を例として示した。しかし、防護具が支線類100の周りに回転できる構成であれば、樹脂材に限定されない。例えば、回転自在となる構造を上方貫通孔6a又は下方貫通孔16aに設けても構わない。
【0053】
(4)上記の実施の形態では、保護材として用いたロープ21やネット31は、同一の形状に揃えられている構成を例として示した。しかし、個々に異なる形状で構成されていても構わない。また、ロープ21とネット31とを組み合わせて用いても構わない。
【0054】
(5)上記の実施の形態では、天板2及び底板12がそれぞれ中央で2分割される構成を例として示した。しかし、上方貫通孔6a及び下方貫通孔16aの位置で分割される構成であれば、3分割以上で構成されていても構わない。また、分割される構成のそれぞれは同一形状に揃っていなくても構わない。具体的には、分割される中心角が180度、90度及び90度のような組み合わせであってもよい。
【0055】
(6)上記の実施の形態では、上方貫通孔6aと下方貫通孔16aとが同じ大きさに形成されている構成を例として示した。しかし、大きさは異なっていても構わない。例えば、支線100aを貫通配置する側に対して大型の支線取付金具100bを貫通配置する方の径を大きく設定しても良い。
【0056】
(7)上記の実施の形態では、被防護物の例として電柱を支える支線やポールを示した。しかし、この被防護物は、支線やポールに限らず、地上に立設される線条の構造物を広く含むものとする。
【0057】
ここで「地上に立設される」とは、一端が地中に埋設されるものだけではなく、一端が地上に固定されるものが含まれ、設置角度も傾斜設置から垂直設置まで様々な形態が含まれるものとする。
【0058】
また「線条の構造物」とは、概形が長尺の構造物を指し、長手方向に均質な構造物だけを含むものではない。例えば、実施の形態に示したように、支線100aのような線条類と支線取付金具100bとを組み合わせた構造物をまとめて線条の構造物とする。
【0059】
さらに、地上に垂直に立設される電柱や積雪計、地面から一端が持ち上げられて固定されているような信号線なども上述の線条の構造物に含まれる。
【0060】
ここで、
図10に被防護物の一例を模式図として示しておく。上述のように、被防護物には、電柱を支える支線類が含まれる。
図10において支線類は、支線100aと支線取付金具100bとから構成されている。支線取付金具100bは、グラウンドGに埋設されたアンカーAに接続される支線ロッドとも呼ばれる構成である。また、
図10に示した支線100aは撚り線により形成された線条類であって、メッセンジャーワイヤー又は支線線条と呼ばれる構成である。このように本発明の対象物である被防護物には、
図2、8
に示したような支線類だけでなく、
図10に示すような構成も含まれる。
【0061】
上述の防護具1、30、50は、
図10中に点線で模式的に表されている。このように、防護具1、30、50によって、支線ロッドと線条類との連結部分を覆うように保護されるので、草刈り機などによって線条類が損傷を受けるのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の防護具は、草刈り機の刈刃との干渉において衝撃を安全に吸収できるように構成されているので、建築現場などに設置される仮設足場の保護などにも有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 防護具
2 天板
4 枠材
4a 外周縁
6 板材
6a 上方貫通孔
10 支柱
11 固定ピン
12 底板
14 枠材
14a 外周縁
16 板材
16a 下方貫通孔
21 ロープ(保護材)
22 端子金具
23 ボルト
30 防護具
31 ネット(保護材)
32 取付フック
32a 爪部
32b 基部
34 ボルト
50 防護具
52 天板
54 枠材
56 板材
62 底板
64 枠材
66 板材
100 支線類
100a 支線
100b 支線取付金具
100c、100d 支線
101 刈刃
C1、C2 円環
D1、D2 開口径
A アンカー
G グラウンド
R 危険領域
W 雑草