(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021463
(43)【公開日】2023-02-13
(54)【発明の名称】端子接続構造及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01R 4/34 20060101AFI20230206BHJP
H01R 9/18 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
H01R4/34
H01R9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123672
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉畑 幸洋
(72)【発明者】
【氏名】柳田 聡司
【テーマコード(参考)】
5E012
5E086
【Fターム(参考)】
5E012BA14
5E086CC22
5E086DD04
5E086JJ03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】端子の回転及び変形を防止することができ、製造コストを削減し、且つ、端子の取り付けや取り外しの際の利便性を向上させる端子接続構造を得る。
【解決手段】電子装置1では、基板側端子6の平板状の第1接続部61の下方側に締結部材7が配置され、第1接続部61の上方側に接続側端子9が配置される。そして、接続側端子9及び第1接続部61に形成された貫通孔63,92に雄ねじ部材8を挿通させて締結部材7の雌ねじ孔75に螺合させる。ここで、締結部材7は、基板側端子6の第1接続部61の側面を覆う側壁部72と第1接続部61の上面を覆う上壁部73を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板に電気的に接続される基板側端子と、
前記基板側端子に接続される接続側端子と、
雌ねじ孔を有する平板状の締結部材と、
前記雌ねじ孔に螺合される雄ねじ部材と、を備え、
前記基板側端子の平板状の接続部の一方側に前記締結部材を配置し、前記接続部の他方側に前記接続側端子を配置し、前記接続側端子及び前記接続部に形成された貫通孔に前記雄ねじ部材を挿通させて前記雌ねじ孔に螺合させることにより、前記基板側端子と前記接続側端子とを接続させる端子接続構造であって、
前記締結部材は、前記基板側端子の前記接続部の側面及び前記接続部の前記接続側端子が接続される他方側の面を覆う壁部を有する端子接続構造。
【請求項2】
前記締結部材の前記壁部は、前記接続部の他方側の面を覆う部位の一端が、前記接続側端子の側面に近接対向して配置される請求項1に記載の端子接続構造。
【請求項3】
前記締結部材の前記壁部は、前記接続部の他方側の面を覆う部位の一端に連続して設けられ、前記接続側端子の側面に沿って立ち上がる立上り部を有する請求項2に記載の端子接続構造。
【請求項4】
前記締結部材は、板金で構成され、
前記基板側端子の一方側の面を覆う下壁部と、
前記下壁部の一端に連続して設けられ、前記基板側端子の側面を覆う側壁部と、
前記側壁部の一端に連続して設けられ、前記基板側端子の他方側の面を覆う上壁部と、が板金の曲げ加工を経て一体に形成される請求項1~3のいずれかに記載の端子接続構造。
【請求項5】
配線基板と、
前記配線基板を収容するケースと、
前記配線基板に電気的に接続される基板側端子と、
前記ケースに設けられた端子台に配置され、雌ねじ孔を有する平板状の締結部材と、を備え、
前記基板側端子の平板状の接続部の一方側に前記締結部材が配置され、前記基板側端子と接続する接続側端子を前記接続部の他方側に配置し、前記接続側端子及び前記接続部に形成された貫通孔に雄ねじ部材を挿通させて前記雌ねじ孔に螺合させることにより、前記基板側端子と前記接続側端子とが接続され、
前記締結部材は、前記基板側端子の前記接続部の側面、及び前記接続部の前記接続側端子が接続される他方側の面を覆う壁部を有する電子装置。
【請求項6】
前記基板側端子及び前記締結部材は、前記端子台にインサート成形されている請求項5に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子接続構造及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリ(被接続体)の電極ポストを構成するボルト部にナットによって締結される端子の端子接続構造が開示されている。この端子接続構造では、ナットの締結によって端子が回転することを防止するために、端子の上方に回り止め部材を重ねてボルト部に挿通し、その上からナットを締結している。回り止め部材は、バッテリの上面から立設する立設面に沿って設けられた先端部を有し、ナットの締結力を受けた際に、先端部が立設面に当接して自身の回転を抑え、端子の回転を防止する構成となっている。更に、回り止め部材は、ボルト部が挿通した端子の接続部の上方に載置されるため、ナットの締結力による端子の変形を抑えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、端子の回転や変形を防止するために、締結部材と別体に構成された部品が必要であるため、部品点数が増え、製造コストが増加するという課題がある。また、端子の取り付けや取り外しの際に周り止め部材を紛失する可能性があり、利便性が良いとはいえない。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、端子の回転及び変形を防止することができる端子接続構造であって、製造コストを削減し、且つ、端子の取り付けや取り外しの際の利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る端子接続構造は、配線基板に電気的に接続される基板側端子と、前記基板側端子に接続される接続側端子と、雌ねじ孔を有する平板状の締結部材と、前記雌ねじ孔に螺合される雄ねじ部材と、を備え、前記基板側端子の平板状の接続部の一方側に前記締結部材を配置し、前記接続部の他方側に前記接続側端子を配置し、前記接続側端子及び前記接続部に形成された貫通孔に前記雄ねじ部材を挿通させて前記雌ねじ孔に螺合させることにより、前記基板側端子と前記接続側端子とを接続させる端子接続構造であって、前記締結部材は、前記基板側端子の前記接続部の側面及び前記接続部の前記接続側端子が接続される他方側の面を覆う壁部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る端子接続構造によれば、配線基板に電気的に接続される基板側端子と、当該基板側端子に接続される接続側端子とが平板状の締結部材と雄ねじ部材を用いて接続される。締結部材は、雌ねじ孔を有し、基板側端子における平板状の接続部の一方側に配置される。雄ねじ部材は、接続側端子と基板側端子の接続部に形成された貫通孔に挿通されて締結部材の雌ねじ孔に螺合することにより、基板側端子と接続側端子とを接続させる。
【0008】
ここで、締結部材は、基板側端子の接続部の側面と、接続部において接続側端子が接続される他方側の面と、を覆う壁部を有する。従って、雄ねじ部材の締結時、接続側端子を介して基板側端子にトルク力が作用すると、基板側端子の接続部の側面が締結部材の壁部に当接し、自身の回転を抑制する。また、雄ねじ部材から軸方向に作用する荷重成分により基板側端子の接続部が接続側端子側に変形しようとすると、接続部は、接続部の他方側の面を覆う壁部と当接し、自身の変形を抑制する。
【0009】
このように、上記端子接続構造では、締結部材によって基板側端子の回転と変形を抑制することができるため、基板側端子の回転と変形を規制するために、締結用の部品と別体に構成した規制用の部品を要しない。従って、部品点数が減り、端子の取り付けや取り外しの際における部品紛失のリスクが低減されるため、製造コストを削減し、且つ、端子の取り付けや取り外しの際の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本実施形態に係る電子装置に適用された端子接続構造の分解斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る基板側端子の平面側斜視図である。
【
図4】(A)は、本実施形態に係る締結部材の平面側斜視図であり、(B)は、締結部材の底面側斜視図である。
【
図5】(A)は、端子台の上下左右方向の断面を一部示す部分断面図であり、(B)は、端子台の部分平面図である。
【
図6】本実施形態に係る締結部材の第1の変形例であり、
図4(A)に対応する平面側斜視図である。
【
図7】本実施形態に係る締結部材の第2の変形例であり、
図4(A)に対応する平面側斜視図である。
【
図8】本実施形態に係る締結部材の第3の変形例であり、
図5(A)に対応する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について
図1~
図5を参照して説明する。本実施形態では、説明の便宜上、各図中に適宜示す上下、左右及び前後の矢印で示す方向を、それぞれ電子装置1の上下方向、左右方向及び前後方向と定義して説明する。また、各図中においては、図面を見易くするため、一部の符号を省略している場合がある。
【0012】
図1及び
図2に示されるように、電子装置1は、ケース2と、ケース2の内部に収容される回路基板3と、ケース2に装着される端子台4とを備える。回路基板3は、絶縁基板の表面や内部に導体の配線パターンが施された配線基板3Aと、配線基板3Aに実装された複数の電子部品とを備える。配線基板3Aには、複数の電子部品の一例として、CPU等の複数の回路素子を含む図示しない制御部と、複数の半導体素子3Bが実装されている。制御部と、複数の半導体素子3Bは、配線基板3Aに形成された配線パターンによって電気的に接続されている。複数の半導体素子3Bは、制御部の制御により、整流回路の整流素子や、インバータ回路のスイッチング素子等を構成可能である。
【0013】
ケース2は、上方に開口した箱状部材であり、一例として、アルミニウムや鉄などの金属で形成されている。ケース2は、前壁部2A、後壁部2B、左壁部2C、右壁部2D及び底壁部2Eを備えている。ケース2の後壁部2Bには、一つの端子台装着部5が形成されている。端子台装着部5は、後壁部2Bを前後方向に貫通し、上方に開口した溝部である。端子台装着部5には、端子台4が装着される。
【0014】
端子台4は、樹脂製の基台部40と、基台部40に設けられた五つの基板側端子6と、各基板側端子6の先端側(後端側)に配置された五つの締結部材7と、を有している。基台部40、五つの基板側端子6、及び五つの締結部材7は、インサート成形により一体に形成されている。
【0015】
基台部40は、縦壁部42と横壁部44を有し、全体として略L型のブロック体を成している。縦壁部42は、前後方向に所定の厚みを有する縦壁であり、縦壁部42の左右両側の側面には、端子台装着部5に嵌合する溝部43が形成されている。縦壁部42は、端子台4をケース2に装着した状態では、ケース2の後壁部2Bの一部となりケース2の内外を区画する。この縦壁部42には、インサート成形により、五つの基板側端子6が一体に設けられている。五つの基板側端子6のそれぞれは、縦壁部42を前後方向に貫通した状態で設けられている。基板側端子6は、縦壁部42から突出した一方の端部(
図1では前端部)が、ケース2に収容された配線基板3Aに電気的に接続される。また、縦壁部42から突出した他方の端部(
図1では後端部)は、ケース2の外部において、ケーブル90の先端に取り付けられた接続側端子9に接続される。この基板側端子6の詳細な構成については、後述する。
【0016】
基台部40の横壁部44は、縦壁部42の後面から後方へ突出しており、直方体のブロック体を成している。この横壁部44の上面側には、縦壁部42の後方(ケース2の外部)に突出した基板側端子6の後端部が配置される。横壁部44の上面には、複数の仕切り壁部46が立設されている。複数の仕切り壁部46は、それぞれが基板側端子6の間に形成され、端子間の絶縁を図ると共に、横壁部44の上面側に左右方向に並ぶ五つの収容空間Sを形成している。五つの収容空間Sのそれぞれには、締結部材7が収容されている。締結部材7は、それぞれが対応する基板側端子6に装着された状態で、インサート成形により、基台部40に一体に設けられている。
【0017】
上記構成の端子台4では、端子台装着部5を介して基台部40の縦壁部42をケース2に装着すると、ケース2の外部に突出した横壁部44の上面に五つの基板側端子6の後端部が露出する。これらの基板側端子6の後端部にはそれぞれ、端子台4に配置された締結部材7と、雄ねじ部材8を用いて、接続側端子9が接続される。接続側端子9は一例として、ケーブル90の先端に取り付けられた圧着端子で構成されており、基板側端子6と接続する先端部に雄ねじ部材8が挿通される貫通孔92を有している。本実施形態の雄ねじ部材8は、一例として、ボルトで構成されている。以下、基板側端子6と締結部材7の構成について詳細に説明する。
【0018】
図3に示すように、基板側端子6は、平板状の第1接続部61と、第1接続部61の一端側(
図3では前端側)に設けられた第2接続部62を有している。基板側端子6は一例として、板金を曲げ加工して形成されている。第1接続部61は、前後方向に長い平板状に形成され、上下方向に所定の厚みを有している。この第1接続部61は、基板側端子6が基台部40にインサートされた状態では、基台部40の縦壁部42を前後方向に貫通した状態で配置される。第1接続部61において、縦壁部42の後方に突出する後端部には、第1接続部61を上下方向に貫通する貫通孔63が形成されている。
図5(A)に示すように、第1接続部61に接続側端子9が接続された状態では、基板側端子6の貫通孔63と接続側端子9の貫通孔92とが同軸的に配置され、上方側から雄ねじ部材8が挿通される。
【0019】
第2接続部62は、第1接続部61の前端部側に一体に設けられている。第2接続部62は、左右方向を板厚方向とし、前後方向に長い長尺な板片であり、平板状の第1接続部61に対してほぼ直角に起立している。第2接続部62の先端は、第1接続部61の前端部から前方側に延在しており、基板側端子6が基台部40にインサートされた状態では、基台部40の縦壁部42の前方側に突出した状態となる。即ち、
図2に示すように、端子台4がケース2に装着された状態では、第2接続部62は、ケース2に収容された配線基板3A側に突出する。第2接続部62は、配線基板3Aの上面に実装されたクリップ状の接続端子32に挟み込まれた状態ではんだ付けや溶接されることにより、配線基板3Aに電気的に接続される。
【0020】
図4(A)及び
図4(B)に示すように、締結部材7は、平板状の下壁部71と、下壁部71の左右両端部から上方に延びる左右の側壁部72と、左右の側壁部72の上端部から下壁部71と対向するように延びる左右の上壁部73と、を有している。締結部材7は一例として、板金を曲げ加工して形成されている。締結部材7の下壁部71は、矩形板状に形成されており、上下方向に所定の板厚を有している。下壁部71の下面には、下方側に突出する円柱状の凸部74が形成されており、凸部74及び下壁部71には、凸部74の中心部を上下方向に貫通する雌ねじ孔75が形成されている。雌ねじ孔75は、下壁部71及び凸部74を上下方向に貫通する貫通孔であり、内側面に雌ねじ部が形成されている。
【0021】
締結部材7の側壁部72は、上述した下壁部71の左右両側の端部からそれぞれ上方側に延在している。締結部材7の上壁部73は、左右の側壁部72にそれぞれ設けられ、左右の側壁部72の上端から互いに近づく方向に延在し、下壁部71に対向して配置されている。
【0022】
図5(A)に示すように、締結部材7は、端子台4にインサート成形されおり、基台部40の横壁部44に形成された収容空間Sの内側に固定されている。この状態では、締結部材7の側面が、基台部40の縦壁部42と仕切り壁部46に当接して支持されている。締結部材7は、基板側端子6の第1接続部61の下方側に配置されており、下壁部71と左右の側壁部72と左右の上壁部73とで基板側端子6の第1接続部61を支持している。具体的に、下壁部71は、第1接続部61の下面を覆い、左右の側壁部72は、第1接続部61の左右の側面を覆い、左右の上壁部73は、第1接続部61の上面の一部を覆っている。
【0023】
ここで、左右の上壁部73は、先端側において左右方向に離間している。従って、左右の上壁部73の間から、基板側端子6の第1接続部61の上面の一部が露出している。この第1接続部61には、上方側から接続側端子9が載置され、接続側端子9の上方側から雄ねじ部材8が挿通される。左右の上壁部73の先端を構成し、接続側端子9の側面に対向する端部は、接続側端子9の外形線に沿って切り欠かれている。従って、接続側端子9の側面(左右の側面)には、左右の上壁部73の先端部が近接対向して配置されている。なお、
図5(A)及び
図5(B)では、左右の上壁部73の先端部と接続側端子9の側面が近接対向して配置された状態の一例として、左右の上壁部73の先端部と接続側端子9の側面が近接した位置で離間している状態を示しているが、これに限らない。左右の上壁部73の先端部と接続側端子9の側面が近接対向して配置された状態には、左右の上壁部73の先端部と接続側端子9の側面が当接した状態も含まれる。
【0024】
雄ねじ部材8の雄ねじ部は、基板側端子6の第1接続部61と接続側端子9の先端部に形成された貫通孔63,92に挿通され、締結部材7の雌ねじ孔75に螺合する。これにより、締結部材7がナットを構成し、雄ねじ部材8がボルトを構成することにより、基板側端子6と接続側端子9が締結固定により接続される。この際、接続側端子9を介して雄ねじ部材8のトルク力が基板側端子6に作用する。基板側端子6では、第1接続部61の側面が締結部材7の側壁部72当接して、自身の回転が規制される。
【0025】
接続側端子9側では、接続側端子9の側面が近接対向して配置した上壁部73の先端部に当接して自身の回転が規制される。このように、接続側端子9の回転を規制する手段を設けることは、複数の接続側端子9間の絶縁距離を確実に確保する点において有効である。
図5(B)に示すように、端子台4に対する接続側端子9の向きは、雄ねじ部材8から作用するトルク力や、作業者の組付けの精度により、バラつきが生じることがある。しかし、締結部材7によって接続側端子9の回転を規制することで、このような組付け時のバラつきにより、端子間の絶縁距離が損なわれることを防止することができる。従って、基板側端子6及び接続側端子9における端子間の距離を短く設定することが可能となり、端子台4の小型化を図ることができる。
【0026】
また、雄ねじ部材8のトルク力は、接続側端子9と基板側端子6を介して締結部材7にも作用する。締結部材7では、締結部材7の側面が端子台4の基台部40の縦壁部42と横壁部44、及び仕切り壁部46に当接して自身の回転が規制される。
【0027】
更に、樹脂製の端子台4に雌ねじ孔75を有する締結部材7が配置され、雄ねじ部材8が螺合する構成としたため、締結部材7及び雄ねじ部材8の端面が基板側端子6と接続側端子9にメタルタッチ(直接接触)している。このため、締結時の荷重が樹脂製の基台部40に作用されることが抑制され、基台部40のクリープ等による弛みを抑制することができる。即ち、本実施形態の基板側端子6と接続側端子9の接続構造を大電流回路に適用する場合、電子装置1の使用状況によっては、基板側端子6と接続側端子9の接続部が接触抵抗により、発熱する場合がある。このような場合でも、本実施形態では、締結時の荷重が基台部40に作用することを回避しているため、高温環境下で端子台4の基台部40にクリープが生じることが防止される。また仮に、基台部40にクリープが生じても端子間の締結荷重が低下することが防止される構造となっている。
【0028】
ここで、基板側端子6と接続側端子9の締結強度を高めようとすると、雄ねじ部材8から伝達される軸方向の荷重成分により、平板状の第1接続部61が反り返りを生じ易くなる。本実施形態では、第1接続部61の上面が締結部材7の上壁部73に当接して、自身の変形を抑制するため、基板側端子6の反り返りが抑制される。
【0029】
(作用並びに効果)
以上説明したように、本実施形態では、配線基板3Aに電気的に接続される基板側端子6と、当該基板側端子6に接続される接続側端子9とが平板状の締結部材7と雄ねじ部材8を用いて接続される。締結部材7は、雌ねじ孔75を有し、基板側端子6における平板状の第1接続部61の下方側(一方側)に配置される。雄ねじ部材8は、基板側端子6の第1接続部61、及び接続側端子9に形成された貫通孔63,92に挿通されて締結部材7の雌ねじ孔75に螺合することにより、基板側端子6と接続側端子9とを接続させる。
【0030】
ここで、締結部材7は、基板側端子6の第1接続部61の側面を覆う側壁部72と、第1接続部61において接続側端子9が接続される上面(他方側の面)を覆う上壁部73を有する。従って、雄ねじ部材8の締結時、接続側端子9を介して基板側端子6にトルク力が作用すると、基板側端子6の第1接続部61の側面が締結部材7の側壁部72に当接し、自身の回転を抑制する。また、雄ねじ部材8から軸方向に作用する荷重成分により平板状の第1接続部61が接続側端子9側に変形しようとすると、第1接続部61の上面が上壁部73と当接し、自身の変形を抑制する。
【0031】
このように、上記実施形態では、締結部材7によって基板側端子6の回転と変形を抑制することができるため、基板側端子6の回転及び変形を規制するために、締結用の部品と別体に構成した規制用の部品を要しない。従って、部品点数が減り、端子の取り付けや取り外しの際における部品紛失のリスクが低減されるため、製造コストを削減し、且つ、端子の取り付けや取り外しの際の利便性を向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態では、締結部材7の上壁部73は、先端(一端)が接続側端子9における左右の側面に近接対向して配置されているため、接続側端子9にトルク力が作用すると、接続側端子9の側面が上壁部73の先端に当接し、自身の回転を抑制する。これにより、組付け時のバラつきにより、接続側端子9と周囲の部品との間の絶縁距離が損なわれることを防止することができる。また、端子台4に複数の接続側端子9が接続される場合に、端子間の距離を短く設定して端子台4の小型化を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態では、締結部材7が端子台4(横壁部44)に配置されており、締結部材7及び雄ねじ部材8の端面が基板側端子6と接続側端子9にメタルタッチ(直接接触)している。これにより、締結時の荷重が端子台4に作用されることが抑制され、端子台4のクリープ等による弛みを抑制し、ひいては、大電流化の要求に対応することができる。
【0034】
また、本実施形態では、基板側端子6及び締結部材7は、端子台4にインサート成形されることにより一体に形成されている。これにより、基板側端子6及び締結部材7は、自身の側面を端子台4の壁部に確実に当接させて、回転を規制することができる。
【0035】
更に、本実施形態の締結部材7は、一枚の板金の曲げ加工を経て一体に形成することができるため、容易に製造でき、生産性に優れる。
【0036】
(締結部材の第1の変形例)
以下、
図6を参照して、上記実施形態に係る締結部材7の第1の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。第1の変形例に係る締結部材200は、下壁部202の左右両側の側面のうち一方の側面のみに側壁部204と上壁部206を連続して設ける構成とした点に特徴がある。その他の構成は上記実施形態と同一である。
【0037】
図6に示すように、締結部材200は、平板状の下壁部202と、下壁部202の片側一端に連続して設けられた側壁部204と、側壁部204の一端に連続して設けられた上壁部206と、を有している。下壁部202は、上記実施形態における下壁部71の構成に相当し、下壁部202の下面から突出する凸部208と凸部208を貫通する雌ねじ孔210とを有する。下壁部202、凸部208、及び雌ねじ孔210は、上記実施形態の下壁部71、凸部74及び雌ねじ孔75と同様の構成であるため、詳細な説明を割愛する。側壁部204は、下壁部202において、雄ねじ部材8の締結方向R側の一端(
図6では左端部)に連続して設けられている。上壁部206は、側壁部204の上端に連続して設けられ、下壁部202に対向して配置されている。上壁部206の先端は、接続側端子9の外形に沿って切り欠かれている。
【0038】
上記構成によれば、基板側端子6の下方側に締結部材200を配置して、基板側端子6の上方側に接続側端子9を重ね、基板側端子6及び接続側端子9の貫通孔63,92に雄ねじ部材8を挿通して雌ねじ孔210に螺合させることができる。この際、基板側端子6において、雄ねじ部材8締結方向R側の側面(左側面)が締結部材200の側壁部204に当接し、自身の回転を抑制する。また、基板側端子6の上面が締結部材200の上壁部206に当接し、自身の変形を規制する。更に、接続側端子9において、雄ねじ部材8の締結方向R側の側面(左側面)が上壁部206の先端に近接対向して配置され、上壁部206と当接することにより自身の回転を規制する。このように、上記実施形態に、上述した締結部材7に替えて締結部材200を適用しても、同様の作用及び効果を得ることができる。締結部材200は、下壁部202の片側のみに側壁部204及び上壁部206が形成される構成としたため、製造が一層容易であり、生産性に優れる。
【0039】
(締結部材の第2の変形例)
以下、
図7を参照して、上記実施形態に係る締結部材7の第2の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。第2の変形例に係る締結部材300は、上壁部306の先端(一端)に連続して設けられ、上方側に立ち上がる立上り部312を有する点に特徴がある。その他の構成は上記実施形態と同一である。
【0040】
締結部材300は、平板状の平板状の下壁部302と、下壁部302の左右両端に連続して設けられた左右の側壁部304と、左右の側壁部304の上端に連続して設けられた左右の上壁部306と、を有している。また、下壁部302には、下壁部302の下面から突出する凸部308と、凸部308を貫通する雌ねじ孔310とが形成されている。下壁部302、側壁部304、上壁部306、凸部308、及び雌ねじ孔310の構成は、上記実施形態の下壁部71、側壁部72、上壁部73、凸部74、及び雌ねじ孔75の構成と同様であるため、説明を割愛する。立上り部312は、上壁部306の後端側の先端に設けられ、上方側に延在している。この立上り部312は、基板側端子6の上方側に接続側端子9を重ねた状態で、接続側端子9の側面に沿って立上がり、当該側面に近接対向して配置される。接続側端子9にトルク力が作用すると、接続側端子9の側面が立上り部312に当接して、自身の回転を規制する。
【0041】
上記構成の締結部材300は、基本的には上記実施形態に係る締結部材7の構成を踏襲しているため、同様の作用及び効果を得ることができる。更に、締結部材300では、立上り部312を設けることで、接続側端子9の側面と接続側端子9の回転を規制する締結部材7の側面との接触面を増加させることができる。これにより、接続側端子9の回転を安定して規制することができるため、雄ねじ部材8のトルク力を高め、締結強度を高めることができる。
【0042】
なお、締結部材300では、下壁部302の左右両側の端部に連続して一対の側壁部304と一対の上壁部306を設ける構成としたが、上述した第1の変形例に係る締結部材200と同様に、下壁部302において、雄ねじ部材の締結方向側の一端(
図7では左端部)のみに側壁部304と上壁部306と立上り部312を設ける構成としてもよい、
【0043】
(締結部材の第3の変形例)
なお、上記実施形態では、基板側端子6と接続される接続側端子9は、ケーブル90の先端に取り付けられた圧着端子で構成されているが、本開示はこれに限らない。接続側端子は、基板側端子6と同様に平板状の端子部材であってもよい。この場合において、雄ねじ部材8から作用する軸方向の荷重成分によって、接続側端子が反り返りを防止する好適な態様として、上記実施形態の締結部材7に替えて、
図8に示す第3の変形例に係る締結部材400を適用することが可能である。
【0044】
図8に示すように、第3の変形例に係る締結部材400は、平板状の下壁部402と、下壁部402の一端に連続して設けられた左右の側壁部404と、左右の側壁部404の一端に連続して設けられた左右の上壁部406と、を有している。下壁部402は、上記実施形態の下壁部71と同様に、下壁部402の下面部から突出する凸部408と、凸部408を貫通する雌ねじ孔410とを有する。下壁部402の上方側には、平板状に形成された基板側端子6の第1接続部61と、平板状に形成された接続側端子500が配置され、基板側端子6及び接続側端子500の貫通孔63,502に雄ねじ部材8が挿通され締結部材400の雌ねじ孔410に螺合する。締結部材400において、下壁部402の左右両側の端部には、上方側に延在する左右一対の側壁部404が形成されている。一対の側壁部404は、基板側端子6の第1接続部61及び接続側端子500の側面を覆うように配置され、第1接続部61及び接続側端子500の側面の回転を規制する。左右一対の側壁部404の上端には、互いに近づくように延在し、下壁部402と対向する左右一対の上壁部406が形成されている。一対の上壁部406は、接続側端子500の上面を覆うように配置され、第1接続部61及び接続側端子500の変形を規制する。
【0045】
このように、第3の変形例に係る締結部材400を上記実施形態の締結部材7に替えて適用すると、基板側端子6に加えて、接続側端子500の回転と変形を防止することが可能になる。
【0046】
なお、上記実施形態では、基板側端子6及び締結部材7がインサート成形により端子台4と一体に形成される構成について説明したが、本開示はこれに限らない。基板側端子6及び締結部材7が、アウトサート成形により成形後の端子台4と一体に形成される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 電子装置
2 ケース
3A 配線基板
4 端子台
6 基板側端子
7 締結部材
8 雄ねじ部材
9 接続側端子
61 第1接続部(接続部)
63 貫通孔
71 下壁部
72 側壁部(壁部)
73 上壁部(壁部)
75 雌ねじ孔
92 貫通孔
200 締結部材
202 下壁部
204 側壁部
206 上壁部
210 雌ねじ孔
300 締結部材
302 下壁部
304 側壁部
306 上壁部
310 雌ねじ孔
312 立上り部
400 締結部材
402 下壁部
404 側壁部
406 上壁部
410 雌ねじ孔
500 接続側端子
502 貫通孔