(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021465
(43)【公開日】2023-02-13
(54)【発明の名称】充電式バッテリー搭載機器、及びそのマネジメントシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20230206BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230206BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
H02J13/00 301B
H01M10/48 301
H01M10/48 Z
H01M10/42 A
H02J13/00 311Z
H02J13/00 301J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126356
(22)【出願日】2021-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】721004189
【氏名又は名称】伊藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋之
【テーマコード(参考)】
5G064
5H030
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064BA01
5G064CB08
5G064CB16
5G064DA11
5H030AA06
5H030AS08
5H030AS14
5H030FF27
5H030FF51
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バッテリー搭載機器において、機器の使い方に問題があったことが原因で発生した異常発熱、発煙或いは発火等による事故の際の原因特定を容易にする充電式バッテリー搭載機器及びそのマネジメントシステムを提供する。
【解決手段】バッテリーマネージメントシステムにおいて、バッテリー搭載機器(スマートフォン)内に加速度センサー、温度センサーなどの機器の使用環境を監視するデバイスを一つ以上搭載し、情報を該機器本体に格納する。遠隔のサーバも、そのデバイスから出力される信号値或いはその信号値に基づいて変換された機器の使用状態に関する情報を格納する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー搭載機器内に加速度センサー、温度センサーなどの機器の使用環境を監視するデバイスを一つ以上搭載し、そのデバイスから出力される信号値、或いはその信号値に基づいて変換された機器の使用状態に関する情報を遠隔のサーバ内の不揮発メモリに格納するバッテリーマネージメントシステムを有する携帯電子機器。
【請求項2】
請求項1項のバッテリーマネージメントシステムを搭載した、電動アシスト自転車、電動キックボード、電動スクーター、電動オートバイなどのモビリティ機器。
【請求項3】
請求項1項、2項記載の機器において、使用環境を監視するデバイスから出力される信号値が正常な使用環境を示す値を超過する信号値であった場合、機器使用者にその旨及び機器に搭載されているバッテリーの交換を促すメッセージを表示する携帯電子機器、及びモビリティ機器。
【請求項4】
請求項1項、2項記載の機器において、機器内部に搭載されて機器の使用環境を監視するデバイスから出力される信号値、或いはその信号値に基づいて変換された機器の使用状態に関する情報を、遠隔のサーバ内の不揮発メモリに格納するためのソフトウェア、前記信号値或いは前記情報を記録するための遠隔サーバにより構成されるバッテリーマネージメントシステム。
【請求項5】
請求項4記載の構成を有するシステムにおいて、機器製造業者が機器内部に搭載されて機器の使用環境を監視するデバイスから出力される信号値を監視し、正常な使用状態に相当する信号値を超過している場合、機器製造業者から機器使用者にその旨及び機器に搭載されているバッテリーの交換を促すメッセージをメールやショートメッセージ等により通知するサービスを行うシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全なバッテリー利用を目的としたバッテリーマネージメントシステムに対応した機能を有し、そのシステムが動作するスマートフォンやノートパソコンなど充電式バッテリー搭載可搬型電子機器、並びに充電式バッテリー搭載の電動アシスト自転車や電動キックボード、電動オートバイなどのモビリティ機器のバッテリーマネージメントシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン(以下スマホ)やノートパソコン(以下ノートPC)など可搬型電子機器にはリチウムイオン二次バッテリーなどの大容量の充電式バッテリー(以下、単にバッテリーと記載)が搭載され、高性能CPUの搭載や長時間のバッテリーによる機器利用が可能になっており、利用者の利便性向上が図られている。さらにこのようなバッテリーの大容量化によって電動アシスト自転車や電動キックボード、電動オートバイなどの電動系モビリティ機器の実現にも寄与している。
【0003】
一方でリチウムイオン二次バッテリーなどバッテリーが大容量化することにより、バッテリーの故障による異常発熱や発煙、火災などの事故の発生リスクが高まっている。
既にその対策として、特許5663053二次電池の保護装置の発明により、リチウムイオン二次電池の異常発熱や高温環境に露出される場合、リチウムイオン二次電池を放電させ安全な状態することで火災等の被害を未然に防ぐ技術や、特開平11-040205リチウム電池システムの発明により、バッテリー搭載機器の運搬時に生じる加速度を検知するセンサーを備え、加速度信号をバッテリーの異常診断に利用する方法などにより、火災等の被害を未然に防ぐ技術が存在している。
また、特開平09-212462携帯型電子装置の発明により、加速度センサー及びジャイロセンサの検出信号に基づいて、装置のいずれかの方向に所定以上の大きさの加速度が生じたときに、実行中の命令の退避、データの保護、および電源オフを行う制御を提供する技術などがある。
【0004】
しかしながらこのような技術を使用した場合でもリチウムイオンバッテリー搭載スマホやノートPC、或いはモビリティ機器のリチウムイオンバッテリーの異常発熱による発火事故が発生した際、その原因が機器の使い方にあるのか、或いは機器側に問題があるのか切り分けが困難になる可能性があり、これらの発火事故の中には、製造元に対して製造物責任法(PL法)に基づく損害賠償を求めた裁判も起きており、ある判例では発火原因が特定できなかったものの、使用方法自体は適正だったとみなされ、「発火が想定されないバッテリーパックが突然発火しており、通常有すべき安全性を欠いていたと推認できる」とのことで裁判所は製品の欠陥を認め、製造元に対して製造物責任法(PL法)に基づく損害賠償の支払いを命じたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5663053号公報
【特許文献2】特開平11―040205号公報
【特許文献3】特開平09―2112462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッテリー搭載機器のバッテリーは、バッテリー自体が正常であってもその使用条件が不適切な場合は、異常発熱、発煙、発火等の事故原因となり得る可能性がある。
機器が適切な使用条件で使用されていることを機器に内蔵される加速度センサー、温度センサーにより監視するバッテリーマネジメントシステムは従来技術として存在するが、その使用条件の履歴情報を機器本体だけに格納する従来技術では、異常発熱、発煙、発火等により機器の電子回路にダメージが加わった場合、その監視情報を事後的に取り出すことが出来なくなる可能性がある。つまり仮に機器のバッテリーにダメージが加わったことが原因で発火事故が発生した場合、その機器内部に記録されていた加速度データや温度データの履歴情報にアクセスできず、発火事故の原因特定が困難になる可能性がある。
【0007】
従ってこの発明が解決しようとする課題は、バッテリー搭載機器において、機器の使い方に問題があったことが原因で発生した異常発熱、発煙或いは発火等による事故の際の原因特定を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バッテリー搭載機器が正常な使用条件で使用されていることを加速度センサー、温度センサーにより監視し、その情報を機器本体だけでは無く遠隔のサーバにも格納するバッテリーマネジメントシステムである。そのシステムを備えた機器により課題を解決することが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるバッテリーマネジメントシステムを備えた機器において、仮に正常な使用条件を逸脱したという記録以降に機器の異常発熱、発煙或いは発火等よる事故が発生した場合、事故前に機器の使用条件を逸脱するする使われ方があったことを機器製造業者が証明することが可能になり、機器製造業者の事故原因調査の負担軽減を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明をスマホで実現する場合の構成例である。
【
図2】
図2は機器と遠隔サーバを接続するネットワーク全体のシステム構成例である。
【
図3】
図3は機器に使用条件超過加速度が検出された際、遠隔のサーバに対してその加速度データを送信するための処理フローである。
【
図4】
図4は機器に使用条件超過温度が検出された際、遠隔のサーバに対してその温度データを送信するための処理フローである。
【
図5】
図5は機器に使用条件超過加速度が検出された際、機器のディスプレイに使用条件超過メッセージを表示するための処理フローである。
【
図6】
図6は機器に使用条件超過温度が検出された際、機器のディスプレイに使用条件超過メッセージを表示するための処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に本発明を実現するための機器構成例として、スマホで本発明を実現するための構成例を示す。
機器内部に搭載された加速度センサー1から出力された加速度データをコントローラ2に入力して、コントローラ内で不揮発メモリ3内部に格納されている異常衝撃と判定すべき閾値と入力された加速度データを比較し、その閾値以上の加速度データが入力された場合は不揮発メモリにその加速度データ値と発生日時を記録し、さらにRF部4から遠隔のサーバに同様の情報を送信して遠隔サーバ内の不揮発メモリにその情報を格納する。
また加速度センサーは一軸方向のみの加速度データをサポートするものに加え、三軸方向の加速度データを一個のセンサーでサポートするものものあり、そのようなものを使用することでより正確な衝撃レベルを測定することが可能になる。
また本発明はスマホのような可搬型電子機器に加え、電動アシスト自転車や電動キックボード、電動オートバイなどのモビリティ機器にも適用可能であるが、
図1に示した加速度センサ、温度センサ、不揮発メモリ、RF部、そして全体を司るコントローラが必要な構成部位となる。
【0012】
機器内部の不揮発メモリ3に格納するデータ、及び遠隔のサーバに格納するデータは、必ずしも加速度データ値そのものでなくても、加速度データから変換された衝撃レベルを表す数値や指標であったり、異常な衝撃が検出されたと言う事象発生有無の記録であっても良い。いずれの場合でも発生日時も併せて記録する。要は機器にダメージを与えうるような衝撃が検出されたことを遠隔のサーバに格納することがポイントである。
従って、機器本体の不揮発メモリには格納せず、遠隔のサーバのみに格納するだけでも本発明の効果が得られる為、そのような方法でも良い。
【0013】
また、バッテリーは温度環境、特に高温環境に曝されることによってもダメージを受ける場合がある為、機器の周囲温度をモニタするための温度センサを搭載することでより一層正確な使用条件監視が可能になる。
機器内部に搭載された温度センサー5から出力された温度データをコントローラ2に入力して、コントローラ内で不揮発メモリ3内部に格納されている異常温度と判定すべき閾値と入力された温度データを比較し、その閾値以上の温度データが入力された場合は不揮発メモリにその温度データ値と発生日時を記録し、さらにRF部4から遠隔のサーバに同様の情報を送信して遠隔サーバ内の不揮発メモリにその情報を格納する。異常温度の記録については、その持続時間も読み取れる形で遠隔サーバ内に格納する。
ただし、本発明は機器のバッテリーにダメージを与えるような機器の使用条件の有無を機器製造業者が把握することを可能にすることを目的としているが、その為、加速度センサによる異常衝撃情報は必須情報であるが、温度センサによる異常温度情報は必須情報では無い。
遠隔のサーバに、機器にダメージを与えるような衝撃や温度が検出されたことを示すデータを格納する方法に関しては、機器から遠隔のサーバに定期的に送信する方法、データが更新されたタイミングで送信する方法、遠隔のサーバから機器側に定期的、もしくは不定期的にアクセスして、機器内部のメモリ上でデータが更新された場合にサーバに送信させるという手順などが考えられるが、遠隔のサーバ内の不揮発メモリにある程度タイムリーに格納する方法であれば、手段は特に限定されるものでは無い。
【0014】
図2は機器と遠隔の接続に関するネットワーク全体のシステム構成例である。この例では対象機器としてスマホを例にしているが、本発明はインターネットに接続可能なバッテリー搭載機器全般に適用可能である。
【0015】
図3は機器内部の加速度センサからの加速度データが使用条件を超過する加速度が検出された際に遠隔のサーバに対してその加速度データを送信するための処理フロー例である。
落下等により機器に加えられる衝撃は非常に短時間に発生する為、「加速度データ取得」の処理では周期処理のインターバル間で発生した加速度データの最大値を捕捉し、その最大値と「基準データ1」の比較を次の処理で行う。正常使用時の加速度範囲を表す「基準データ1」と比較して、その値より大きな数値が得られた場合は機器本体内部の不揮発メモリにデータを格納し、さらに遠隔のサーバに対してそのデータを送信する。尚、機器本体内部の不揮発メモリに格納することは必要条件では無い。
また本フローでは「取得加速度データ」を遠隔サーバに送信する処理となっているが、取得加速度データそのものである必要はなく、機器製造業者が機器に正常な使用条件を超過する加速度が加わったことが認識できる情報であればよい。
【0016】
図4は機器内部の温度センサから温度データを取得して、使用条件を超過する温度が検出された際に遠隔のサーバに対してその温度データを送信するための処理フローである。
機器に搭載される温度センサからの温度データは、それほど高速で処理する必要はない為、秒オーダ程度の周期処理で十分機器の温度は監視可能となる。その為、加速度データの取り扱い処理とは異なり、特段の最大値の捕捉処理は不要である。本フローでは正常な動作温度範囲を表す「基準データ2」と比較して、その値より高い数値が得られた場合は機器本体内部の不揮発メモリにデータを格納し、さらに遠隔のサーバに対してそのデータを送信する。尚、機器本体内部の不揮発メモリに格納することは必要条件では無い。また本フローでは「取得温度データ」を遠隔サーバに送信する処理となっているが、取得温度データそのものである必要はなく、機器製造業者が機器が正常な使用条件を超過する温度条件下におかれたことが認識できる情報であればよい。
【0017】
図5は機器内部の加速度センサからの加速度データが即座にバッテリーにダメージを与えるような値であった場合、機器の使用者にその旨、及びバッテリー交換を促すメッセージ(使用条件超過メッセージ1)を表示するための処理フローである。機器の使用者にバッテリーにダメージが加わっており、そのまま継続使用する場合は、異常発熱、発煙或いは発火等による事故のリスクがあること、及びそれを回避する為にバッテリー交換が必要であることを通知する為の処理である。その通知方法としては、機器のディスプレイに表示したり、機器使用者のメールアドレスや、携帯番号宛のショートメッセージなどによる方法がある。本フローには判定結果を不揮発メモリに格納する処理が含まれているが必ずしも必要な処理ではない。また、本処理と並行して
図3に示した遠隔のサーバに対して加速度データを送信するための処理も実行されなければならない。
【0018】
図6は機器内部の温度センサからの温度データがその持続時間も加味した上でバッテリーにダメージを与えるような値であった場合、機器の使用者にその旨、及びバッテリー交換を促すメッセージ(使用条件超過メッセージ2)を表示するための処理フローである。機器の使用者にバッテリーにダメージが加わっており、そのまま継続使用する場合は、異常発熱、発煙或いは発火等による事故のリスクがあること、及びそれを回避する為にバッテリー交換が必要であることを通知する為の処理である。その通知方法としては、
図5の処理同様に機器のディスプレイに表示したり、機器使用者のメールアドレスや、携帯番号宛のショートメッセージなどによる方法がある。本フローには判定結果を不揮発メモリに格納する処理が含まれているが必ずしも必要な処理ではない。また、本処理と並行して
図4に示した遠隔のサーバに対して温度データを送信するための処理も実行されなければならない。