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特開2023-21480磁性片通過位置検出装置と位置の推定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021480
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】磁性片通過位置検出装置と位置の推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20230207BHJP
   G01V 3/10 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
G01N27/72
G01V3/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126358
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】721002842
【氏名又は名称】中居 倫夫
(72)【発明者】
【氏名】中居 倫夫
【テーマコード(参考)】
2G053
2G105
【Fターム(参考)】
2G053AA13
2G053AB01
2G053BA02
2G053BB03
2G053BC10
2G053BC20
2G053CA03
2G053CA17
2G053CB21
2G053DB03
2G105AA01
2G105BB05
2G105DD02
2G105EE02
2G105HH05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被検査物の内部にある磁性片の位置を検出する装置と方法を提供すること。
【解決手段】同一方向の磁場ベクトルを有する均一な磁場強度を有した磁場領域と,この領域内部に配置された前記磁場ベクトルを法線とする面上に配置されてこの面内の同一方向を検出指向性の方向とした2つの磁気センサを使って,前記2つのセンサが設置された前記磁場ベクトルを法線とする面に対して平行な方向Lに直線移動する磁性片の通過に伴う磁場変化を検出する機能を有した磁場検出システムで,磁性片の通過に伴う2つの磁気センサの測定値の変化がそれぞれ最大値および最小値を示す時点での直線L上の一次元的な磁性片通過位置検知しその値を用いて,磁性片の移動軌跡を三次元的に演算する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一方向の磁場ベクトルを有する均一な磁場強度を有した磁場領域と,この領域内部に配置された前記磁場ベクトルを法線とする面上に配置されてこの面内の同一方向を検出指向性の方向とした2つの磁気センサを有し,前記2つのセンサが設置された前記磁場ベクトルを法線とする面に対して平行な移動方向Lに直線移動する磁性片の通過に伴う磁場変化を検出する機能を有した磁場検出システムであって,磁性片の通過に伴う2つの磁気センサの測定値の変化がそれぞれ最大値および最小値を示す時点での移動経路Lに対応した一次元的な磁性片通過位置を時系列で検知する機能を有し,磁性片の通過後にその移動軌跡を三次元的に演算する機能を有した磁性片通過位置検出装置。
【請求項2】
2つの磁気センサは磁性片の移動方向Lと平行な方向の磁場を検出値として測定し,この方向をXYZ座標のX軸に平行な方向と定めて,座標原点に設置したセンサ1で得られる磁性片の通過に伴う磁場計測値の最大値に対応した通過経路上のX位置をXS1MAX,最小値のX位置をXS1minとし,センサ2で得られた磁性片の通過に伴う最大値の位置をXS2MAX,最小値の位置をXS2minとした場合,磁性片の通過方向を向いた二次元面における左右位置をYM,この通過位置のセンサ設置面からの高さをZMとして,2つのセンサのY方向に対する距離間隔をDSと表記したとき,YM,ZMを以下の数式から導出する演算機能を有した請求項1の磁性片通過位置検出装置。
【数38】
【数39】
【数40】
【数41】
【請求項3】
磁性片通過に伴う時系列の三次元的軌跡を導出した後に,センサ1あるいはセンサ2の何れかで得られた磁性片通過に伴う磁場変動の絶対値の最大値|Bpeak|とこの最大値が発生する磁性片の座標(XS1,YM,ZM)から,以下の数式を用いて磁性片の有する磁化量mを相対的に推測する検算機能を有した請求項1および請求項2の磁性片通過位置検出装置。
【数42】
なお,ここでAはセンサ検出回路の増幅率によって定められる比例定数であり,あらかじめ既知の磁化量の磁性片を既定の位置を通過させることで定められる。
【請求項4】
2つの磁気センサの位置をX方向に既知の距離だけずらして配置して,請求項2に記載したセンサ信号のゼロクロス点から各々のセンサに磁性片が最近接したタイミングを検知して磁性片の速度を検出する機能を有した請求項1から請求項3に示した磁性片通過位置検出装置。
【請求項5】
磁気センサとして薄膜磁気インピーダンスセンサを用いた請求項1から請求項4に示した磁性片通過位置検出装置。
【請求項6】
薄膜磁気インピーダンスセンサの駆動回路として高周波発信器を用い,高周波信号の一方をセンサ素子を通過させ,もう一方を可変減衰器と可変移相器を通過させて,これらを対数アンプに差動入力した検波回路を用い,磁性片通過位置検知装置内に設置されたセンサのバイアス位置を適正位置に調整する際に,この可変減衰器の減衰率を最大に切り替える機能を有し,この機能を有効にした際の出力信号レベルを用いて磁場中におけるセンサの動作位置を調整する機構を有した請求項5に示した磁性片通過位置検出装置。










【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,磁場中を通過する磁性片の通過位置を推定する異物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非磁性の物品、粒状体、粉体、液体等において、磁性を有する不純物、設備の金属部品、微小な金属片、摩耗粉などの磁性異物が表面や内部に混入しているか否かを検査するために、異物検査装置が用いられる。
【0003】
このような磁性を有する異物の検査装置として、特許文献1には、磁界検出方向に指向性を有する磁界検出手段と、磁界検出手段の磁界検出方向に対して垂直方向から磁界検出手段へ向けて磁界を印加する垂直磁界印加手段と、磁界検出手段の磁界検出範囲に検査対象物を投入して磁界検出手段により検出された信号に基づき、検査対象物における磁性異物の存在を判定する判定手段とを具備する磁性異物検査装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、磁場発生手段、板状の軟磁性部材、磁界検出方向に指向性を有する磁気センサを備え、磁場発生手段は被検査物が存在する検査領域に磁場を印加し、軟磁性部材は一方の主面を磁場発生手段に接して配置し、磁気センサは軟磁性部材の他方の主面の側に配するとともに、他方の主面の接線方向に指向性を有するよう構成した、異物検査装置が開示されている。
【0005】
一方で、磁場を発生する小型装置の位置を検出する方法は、医療機器のカテーテル等、体内に挿入される医療器具の位置を非侵襲的に検出する方法が特許文献3に開示されている。ここでは、磁場を発生する基準コイルを用いて、この基準コイルに対する医療器具の位置を器具に装着した磁気センサで磁場を計測することで得ている。
【0006】
微少な磁場発生マーカの位置を検出する方法については,特許文献4にコイルで交流磁場を発生するマーカの位置検出手法が開示されている。また、特許文献5には、磁場が時間変動しない磁石を用いたマーカの位置検出方法が開示されている。いずれの方法も、小型の磁気マーカを磁気双極子と見立てて、方程式として公知になっている双極子が発生する磁場の分布式を用いて、所定の位置に配置した3軸磁気センサの計測結果を使って磁気マーカの位置を演算し推定している。
【0007】
磁気双極子の方程式から磁気マーカの位置を検出するためには,一般的には数値解析の繰返し計算で解を収束させる手法が用いられる。しかしながらこの計算方法では、正解とは異なる値に収束する可能性が排除しきれない。このため、解析的に確実に解が得られる解の方程式を導出できる幾何レイアウトに磁気センサを配置したり、検出する磁気マーカ(微少磁性片)の位置を所定の直線上に限定したりする方法が開示されている。
【0008】
特許文献6には,直線上に3個の2軸磁気センサを配置して磁気双極子と見なせる磁気マーカの位置を検出している。特許文献7では,所定の直線上で定められた距離に配置した1軸磁気センサを用いて同じ直線上の磁性体の発する磁場を検出、演算することでこの磁性体までの距離と磁性体の磁気モーメントを推定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-146323(門型)
【特許文献2】特開2020-165868(配列磁石)
【特許文献3】特表平9-512735(医療用位置検出装置)
【特許文献4】特開平9-84745(オリンパス交流マーカ)
【特許文献5】特表2001-524012(ルーセントメディカル磁石マーカ)
【特許文献6】特開2003-44217(JSTトーキン凌和 直線上2軸3センサ)
【特許文献7】再公表特許2018-181836(フジデノロ ハンディ距離&磁化検査機)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
磁気シールドが不要で,製造工程でコンベヤ等を流れる製品の全数検査が可能であり,磁気センサから被検査物まで距離のある大型部品等の内部に包含される磁性異物であっても高感度に検出できる異物検査装置が提案されている(特開2018-146323)。この発明は,薄膜磁気センサと磁場発生手段の間に軟磁性部材を配置して,薄膜磁気センサをこの軟磁性部材の表面接線方向に検出指向性を有するように構成した特徴を有する装置である。
【0011】
一方で,この装置を用いて,非磁性金属板や電気配線等の導電体を含有する部材の磁性異物を検査しようとする際には,これら導電性部材に生じる渦電流が磁場ノイズを発生させるため検出感度を著しく低下させる。特に,先願の異物検査装置を用いて検出感度を上げる目的で,より強い磁場を印加して異物検査した場合にこの渦電流の効果が強く現れる。この渦電流の発生を防ぎながら,より強い磁場を被検査物に印加して異物の検出感度を向上させることが可能な三次元的に均一で広い磁場領域を生成する機構も提案されている(特開2020-165868)。
【0012】
本発明は,これら均一な磁場発生機構と異物検査装置を基にして,被検査物の内部に含まれていて外部から見えない磁性異物の位置と大きさを非破壊的に推定することを可能にする装置構造と演算方法を示すものである。この発明により,従来は困難であった導電体内部の磁性異物の位置と大きさの検出を静磁気的な非破壊検査手法で実現することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
先願の異物検査装置,あるいは,磁場発生機構において,磁性異物等の磁性片が被検査物の内部に混入したり残置されたり,表面に付着したりしていることの有無を検出するだけではなく,その磁性片が被検査物のどの部分に存在して,大きさがどの程度であるかを検知することは,製品検査の精度向上と異物混入の原因対策に有益な情報になる。
【0014】
磁気センサを用いた磁性小片の位置検出については,特許文献3から特許文献7が公知文献になっている。
【0015】
本発明では,被検査物中に磁性異物を検出したい領域に導電体が含まれている場合や,導電体の内部に磁性異物がある場合など,交流磁場の電磁誘導や渦電流では検出が困難な磁性異物を,静磁場と磁気センサを用いて検出するものであって,これを検出する際に有効な磁性片の位置導出方法とこれを実現するための検出機構を有した磁性片通過位置検出装置を提案するものである。
【0016】
本発明の位置検出装置の概要を述べる。装置内部の磁性片検出領域には,均一でベクトルの揃った強い磁場が印加されている。この磁場の形成には公知の技術(特開2020-165868)が有効である。磁気センサは,この均一でベクトルの揃った磁場領域に設置される。センサの個数は最低で2個が必須であるが,2個以上のセンサを並列配置しても本発明の手法を拡張して使えるし,より広い範囲の検査が可能になる。センサは,磁場ベクトルを法線とする面内に配置される。2個あるいは2個以上の複数センサを設置する際には,これらのセンサが同一面内にあるように配置する必要がある。
【0017】
検出する磁性片を含んだ被検査物は,センサ設置面に平行,且つ,直線的に,当該検出領域の磁場の中を走査されるように樹脂製ベルトのコンベヤや,樹脂製テーブルの送り機構を使って検査領域を通過させる。磁気センサの検出指向性は,センサが設置された面内に向くように配置され,被検査物の走査方向の磁場成分を検出するようにする。センサの設置位置は,前記面内で磁性片の通過に伴う磁場変化が観測される位置であればどこでも良く,被検査物の走査方向に直角な直線上に配置する必要は無い。むしろ,このような直線上に配置しない方が被検査物の走査速度を測定出来るために望ましい。
【0018】
このようなレイアウトの検査装置を用いて,磁気センサは,検出すべき磁性片を含んだ被検査物の走査に伴う磁場変化波形を計測しこの波形を記憶する。2個の磁気センサから得られた磁場変化波形の特徴量(最大値や最小値)を用いて被検査物に含まれていた磁性片の三次元的位置を推定する。磁性片の通過軌跡が明らかになると,前述した磁場変化波形における極値の値から磁性片のサイズが推定可能になる。このサイズ推定については,事前に既知の磁化量のサンプルを通過軌跡が既知の上で測定しておけば,おおよそ磁化量に比例した出力となる。
【0019】
以上が,本発明の磁性片通過位置検出装置の概要である。このような機能を実現する装置の構造を請求項1に示す。請求項2は,この装置で得られた測定波形から磁性片の三次元的な通過経路を推定する方法である。請求項3は,これらの結果から磁性片のサイズを検知する方法である。請求項4は,あえて走査の進行方向にずらして配置したセンサを用いて被検査物の走査速度を推定するための方法である。
【0020】
以上のポイントを総括すると,本発明は,均一な強磁場中において,磁場ベクトルを法線方向とする面に対し平行な直線上に沿って被検査物を走査させ,この面上に配置された2つの磁気センサで被検査物の内部に混入した磁性片の通過磁場を計測することで磁性片の位置と大きさを非破壊的に推定することができる方法,および,これを用いた装置である。なお,ここで磁気センサは,均一な磁場で磁化された磁性片の磁場を選択的に検出するために,この均一な磁場の磁場ベクトルに対し直角方向に検出の指向性の向きを配置する構造にしてある。
【0021】
以下では,本発明の位置検出方法について説明する。
【基礎方程式と本発明の装置レイアウトにおける観測磁場の説明】
【0022】
最初に,本発明の磁性片の通過位置推定の基礎となる方程式について述べる。本発明の磁性片通過位置検出装置の概略図を図1に示す。検出対象となる磁性片は,小さな異物や破片であるため,これを磁気双極子と仮定できる。この場合,磁性片を磁化させる磁場をZ方向として,磁場を均一にするための磁場均一化板と磁石や電磁石を一体化させた磁極板とに挟まれた検査領域に対して,磁性片を磁化させるための磁場としてZ方向磁場が印加される。磁気センサの指向性方向をX方向とすると,センサに検出される磁場Bxは以下の数式で表現される。
【数1】
【0023】
この式で,mは均一磁場で磁化された磁性片の磁化の強さ,(x, y, z) は,センサを原点とした場合の磁性片の座標位置(三次元)である。
【0024】
この方程式から得られた結果と実験を比較した例を以下に示す。この例は,図2図3に示すレイアウトの磁性片通過位置検出装置を基に得られたものである。図2は装置の側面図,図3は正面図である。この装置は,紙面の上下にある磁場均一化板で挟まれた領域に均一な上下方向磁場を発生させてここを検査領域としている。磁場均一化板の検査領域の反対側には,磁場発生源である電磁石あるいは磁石が配置されるが,これは公知技術(特開2018-146323,特開2020-165868)の範囲である。以降の図では,磁極板の磁場発生源を省略して磁場均一化板のみを示している。磁気センサは下側均一板の直上に設置され,センサの位置は被検査物である磁性片の走査方向に直角な方向であり,磁場均一板の中央を通る線上に間隔60mmで中央と左右各1個の合計3個配置してある。
【0025】
この装置の寸法は図に示してあるが,磁場均一化板の寸法は,磁性片送り方向に沿った長さが120mm,これに直角方向の開口面の幅が200mm,2枚の均一磁場板の間隔が120mmである。磁気センサの検出指向性は磁性片走査方向と一致した均一磁場板の面内方向に設定してある。この磁性片通過位置検出装置において,被検査物の磁性片を速度70mm/sの一定速度で均一磁場板に平行に走査した。走査は開口面の手前から奥に向かって真っ直ぐで,高さはセンサ設置面から40mm,中央のセンサから右40mmの位置を通過するとした。なお,3つのセンサは図の左から順にCh1,Ch2,Ch3と呼ぶことにする。
【0026】
図4に磁性片を通過させた時の実測波形,図5に前述の解析式から得られた理論波形を示す。これらを比較して,実験値には周期的な外乱ノイズ信号が混じっているものの,良く一致していることがわかる。本発明の装置レイアウトで得られた測定磁場波形は,最大値と最小値を各々1個有しており,センサ設置ライン上でゼロクロスする波形になる。また,各センサのセンサ感度を同じに設定した場合には,測定波形の最大値,最小値の大小がセンサからの距離に対応した大小関係になる。但し,この信号強度と距離の関係は比例関係ではなく,前述の磁気双極子の磁場方程式に従った関係になる。
【0027】
前述と類似の装置レイアウトで,磁性片の走査ラインを変化させた場合に,センサで検出される磁場の最大値の位置がどのように変化するかを説明したものを図6図7図8図9に示す。図6は,検出する磁性片が均一磁場の検査領域を通過するイメージの側面図を示している。磁極S,Nはこの表面に均一磁場板があるものとしている。この図の磁性片の周りには磁化で発生した磁力線が示されている。磁気センサはこの磁力線の水平方向であるX方向成分を検出する。図7は下側均一板の直上に設置された磁気センサのレイアウトと磁性片通過経路の投影線が示されている。ここで,磁性片が通過する際に磁気センサに検出される磁場変化波形は,図4図5と類似の最大値と最小値を有した波形になる。
【0028】
ここで,磁性片の走査ラインの位置を変化させた際に磁気センサ検出波形の最大値がどのよう検出されるかを図8図9に示す。図8は,センサ設置面からの高さ100mmを磁性片が通過した場合にセンサ信号の最大値が検出される磁性片の位置である。ここで,センサ信号最大値とは,図4図5の検出波形の最大値のことである。ここでは,3通りのセンサ設置位置,すなわちセンサが設置されたライン上の座標軸をYとしてy=-50,y=0,y=+50について示している。図9は,センサ設置面からの高さ50mmを磁性片が通過した場合にセンサに最大信号が検出される磁性片の位置である。本図も3通りのセンサ設置位置,すなわちセンサの設置ラインの座標軸をYとしてy=-50,y=0,y=+50について示している。
【0029】
本発明の説明に用いたレイアウトから磁性片は図のX方向に沿って走査されているが,図8では高さz=100mm,y: 任意で磁性片を走査した際に各センサに観測される信号の最大値が観測される磁性片位置を示している。一例として,y=50のセンサの上を通過する磁性片の場合には,センサ1(x=0, y=50)に観測されるピークの発生位置は図のy=50を通る実線と曲線1が交わる点になる。同じ経路で通過する磁性片の磁場がセンサ2(x=0, y=0)に観測されてその観測値がピークとなるの磁性片位置は図のy=50を通る実線と曲線2が交わる点になる。同様に,同じ経路で通過する磁性片の磁場がセンサ3(x=0, y=-50)に観測されてその観測値がピークとなる磁性片位置は図のy=50を通る実線と曲線3が交わる点になる。
【0030】
図9は,図8と同じプロットを磁性片の通過高さz=50mmについて示したものである。検出する磁性片の通過高さが高くなるとセンサ信号の最大値が観測される磁性片位置がセンサから遠くなり,磁性片の通過高さが低くなるとセンサ信号の最大値が観測される磁性片位置がセンサに近くことがわかる。また同じ通過高さでも検出するセンサの位置が異なると,センサ信号の最大値が観測される磁性片位置が異なることがこれらの図からわかる。本発明は,ここで説明した磁性片の通過経路(座標(y, z)で規定されるYZ平面上の通過点を通る通過ライン)が,異なる位置のセンサで検出された各々の計測値の最大値・最小値の発生する磁性片位置に基づいて,この磁性片の通過経路(座標(y, z))を特定するものであり,通過経路が特定された後に信号の最大値,最小値を使って磁性片の磁化量を導出するものである。
【本発明の装置レイアウトにおける磁性片の通過位置の計算式】
【0031】
以下では,前記の基礎方程式と,異なる位置の磁気センサで観測された磁場が最大となる磁性片位置から「磁性片通過経路(座標(y, z))」を求める方程式。および,この結果から通過した磁性片の磁化量を求める計算方法を示す。
【0032】
磁気双極子が発生する磁場の方程式から本発明の検出装置レイアウトで磁気センサに検出される磁場は,磁性片の座標を(x, y, z)とすると以下の式になる。この式は前述の測定原理の説明の式と同じものである。
【数2】
【0033】
この式から観測磁場が極値を取る磁性片の位置を導出してこれを整理すると「磁性片通過経路(座標(y, z))」を導出する以下の数式が求められる。ここでは,発明の実施を考慮してセンサで観測される出力波形(オシロスコープ等の時系列波形)を用いる場合を想定してこの計算式の説明をする。
【0034】
図10は,図3と類似の磁性片通過位置検出装置の正面図である。ここでは,被検出物である磁性片を(y=10mm, z=40mm)すなわちCh2センサの上40mm,右10mmを通過するように走査させる。なお,ここではセンサ間の距離を60mmとする。図11は,この場合に各磁気センサで検出される磁性片の通過信号波形である。本図は実験で得られた値である。ここで,磁性片の走査に伴う磁場測定波形が最大値,最小値になる時間位置を以下のように記号で示す。座標原点にあるCh2センサの磁場波形の最大値の発生時間をTS1MAX,最小値の発生時間をTS1min,座標(y, z)=(DS, 0)にあるCh3センサの最大値発生時間をTS2MAX,最小値の発生時間をTS2minとする。この場合,センサはX方向に対して異なる位置であっても良い。なお,DSはこの場合60mmである。以下の式では,一般化のために記号DSを用いて表現してある。
【0035】
ここで,各センサの出力のゼロクロス点と最大値間の距離XSは,以下の式から導出できる。
【数3】
【数4】
【0036】
ここで、“Feed speed”とは,X軸に平行方向に試験片を走査した場合の走査速度である。
この値(XS)は,最大点と最小点の間の距離の1/2になる。ここで得られたXS1とXS2を用いて,磁性片の通過位置(y, z)は以下の式から導出できる。
【数5】
【数6】
以上が磁性片の通過位置の導出式である。
【0037】
本発明の位置推定では,2つの磁気センサは必ずしも被検査物の走査方向に直角なライン上に直線状に配置する必要は無い。なぜなら,本発明の導出式ではセンサの測定出力のピーク位置のみを用いているからである。すなわち,均一なZ方向磁場中を直線運動する磁性片が発生する磁場は,原理的に磁化ベクトルがZ方向を向いた磁気双極子の磁場に近似される磁場分布になるため,磁性片の通過方向であるX方向成分を検出する指向性を有した磁気センサに観測されるの測定値は,磁性片の通過経路の三次元位置に対応した最大と最小のピーク間隔を有することになり,これは均一磁場の領域内であれば変化しない。
【0038】
本明細書のここまでの説明では,センサ1を座標原点にあるとして説明しているが,このレイアウトは座標変換で一般化できるものであり,このレイアウトに限定されるものではない。
【本発明の装置レイアウトにおける磁性片の磁化量の計算式】
【0039】
前節で得られた磁性片の通過位置(y, z),および,センサ信号が最大値となる磁性片走査方向位置xを用いて通過した磁性片の磁化量が推定できる。ここで,2つのセンサの設置位置が走査方向Xについてずれている場合には,磁化量の推定に使うセンサの位置XSPを
以下の式で求めておく。以下では,センサ1とセンサ2の設置位置(各々をXSP1, XSP2とする)について導出式を示す。
【0040】
【数7】
【数8】
この計算式の意味するところは,センサ波形の最大値と最小値の中間にあるゼロクロス点がセンサの設置位置に対応していることを示している。
【0041】
本発明の磁性片通過位置検出装置のレイアウトでは,磁性片の通過波形は点対称な形状になるため,磁場波形を検出したセンサ位置を原点とみなした場合には,双極子磁場の方程式に代入する磁場最大値の位置xには,次式,
【数9】
【数10】
を用いることになる。
【0042】
この考察から本発明の磁性片通過位置推定の計算式は,波形測定の時間軸の原点がセンサ配置の原点と異なっている場合でも適用できる。更に,各センサの位置が磁性片の走査方向に対して同じ位置のライン上に設置される必要もない。すなわち,本発明は,複数センサを利用する場合に,センサ位置設定に冗長性がある検出装置を実現できるため実用性が高い。
【0043】
さて,上記の考察からセンサ1を原点とした場合に,このセンサで磁性片走査時の磁場波形を観測した際に信号がピークになる磁性片位置(x, y, z)は,前述の,
【数11】
【数12】
を用いて,
【数13】
【数14】
【数15】
【0044】
となり,これを磁気双極子の磁場の方程式
【数16】
を基に,これを変形して実測の磁場ピーク値|Bpeak|を代入した式である,
【数17】
から被検査物の磁化量mが求められる。
【0045】
実用的には,センサの感度が相対値となる場合が多いため,上記の磁化を求める式に比例定数Aを導入して
【数18】
【0046】
として,事前に通過経路と磁化量が分っている校正試験片を使い,装置内を通して得られた磁場ピークの実測値を代入して,あらかじめAの値を求めておく。この初期校正の後は,この比例定数Aを用いて検出した磁性片の磁化量の大小を判定できることになる。
【磁性片の通過速度の検出】
【0047】
本発明の磁性片通過位置検出装置を非破壊検査に用いる場合には,ベルトコンベヤ等の試験片搬送機構を本発明の検出装置に組み合わせて使用することになる。ベルトコンベヤ等の搬送装置には搬送速度の設定機能が付いているため,ここで設定された搬送速度を本発明の計算式の定数“Feed speed”に代入すれば良い。速度が未知の場合には,検出する磁性片を内包する被試験体の定められた部位の走査方向位置を検知して,磁気センサの信号ピーク時点での位置を検知してこの値を使えば良い。
【0048】
センサ1が最大値になる位置をXS1MAX,最小値になる位置をXS1min。センサ2が最大値になる位置をXS2MAX,最小値になる位置をXS2minとすると,
【数19】
【数20】
の式は以下のように書き換えられる。
【0049】
【数21】
【数22】
この値を使って計算しても良い。この場合も原点位置の設定は任意(相対位置)でも問題は生じない。
【0050】
以下では,搬送速度設定機能も位置検出機構も無い場合にセンサ信号から磁性片の通過速度“Feed speed”を検知する方法を示す。
【0051】
磁性片の磁化量の計算式について論じた節の前半において,センサ1とセンサ2の設置位置(各々をXSP1, XSP2とする)を導出している。この式を以下に再掲する。
【数23】
【数24】
【0052】
なお,これは,
【数25】
【数26】
と書き換えられる。
【0053】
ここで,センサの設置位置が既知の場合,特に,磁性片を内包した被検査物が走査する方向に沿った2つのセンサの距離LSが既知の場合には,
【数27】
となる。すなわち,
【数28】
これを整理して,
【数29】
で求められる。
【0054】
以上をまとめて,本発明の適用手順を示すと以下のようになる。本発明の磁性片通過位置検出装置を用いて磁性片の通過位置を推定する場合には,以下の物理量を事前に知っておく必要がある。
(イ) センサの設置位置
(ロ) 被測定物の走査方向
(ハ) センサの検出指向性の方向
【0055】
この上で,磁性片通過位置検出装置に磁性片が内包された被測定物を通過させて磁気センサの時系列信号を取得する。この際,センサ信号は被検査物の走査方向の磁場成分に変換する必要がある。次に,この時系列信号波形から最大点と最小点の発生時間を計測しておく。これは,2つの磁気センサ両方に行う。そして,これを以下の式に代入することで磁性片の通過経路が検出できる。
【0056】
計算式では,被検査物の走査方向をXYZ座標のX軸に平行とし,この方向成分のセンサ出力を用いる。なお,ここでは記号の末尾の数字が1のものは,XZ平面上でY=0の軸上に位置するセンサ1の計測値とこれに基づく演算値を示し,記号末尾の数字が2のものは,XZ面上でY=DSの直線上に位置するセンサ2の計測値とこれに基づく演算値を示す。
【0057】
なお,以下では,センサ出力波形をデータロガーやオシロスコープのような時系列データを取得する測定器で計測した場合を想定してパラメータを定めている。数式の記号を説明すると,TS1MAXはセンサ1の計測値の最大値が観測された時間,TS1minはセンサ1の計測値の最小値が観測された時間,TS2MAXはセンサ2の計測値の最大値が観測された時間,TS2minはセンサ2の計測値の最小値が観測された時間を示す。また,Feed speedはX方向に試験片を走査した際の走査速度である。
【0058】
【数30】
【数31】
を用いて,
【数32】
【数33】
【数34】
【0059】
もしも,ここで,被検査物の走査速度がわからない場合には,
【数35】
で求められる。
【0060】
検出する磁性片の磁化量を推定する場合には,
【数36】
から被検査物の磁化量mが求められる。
【0061】
実用的には,センサの感度が相対値となる場合が多いため,上記の磁化を求める式に比例定数Aを導入して,
【数37】
【0062】
として,事前に通過経路と磁化量が分っている校正試験片を使って装置内を通して得られた磁場ピークの実測値を代入して,あらかじめAの値を求めておく。この初期校正の後は,この比例定数Aを用いて検出した磁性片の磁化量の大小を判定できることになる。
以上が,本発明の磁性片通過経路,及び,磁性片の磁化量の導出方法である。
【発明の効果】
【0063】
【発明を実施するための形態】
【0064】
(実施例1)
磁性片が磁気センサの直上を通過した場合の通過高さ推定の実施例について述べる。
図12は,試作した実験装置の模式図である。上下各々2枚のネオジム磁石を用い,これらを間隔を空けて配置し,200 mm×120 mmの磁場均一化板(軟磁性体)を上下間隔120 mmで設置している。本装置は検査領域の中央部で約320ガウス(0.032 T)の垂直方向磁場が印加され,センサは磁場均一化板の長軸中央線近傍に60mm間隔で3チャンネル配置している。
【0065】
この実験装置を用いて,磁性片を含んだ被検査物がコンベヤ上を移動する様子を模擬して検出信号を観測した。磁気センサについては,下側磁場均一化板の表面に薄膜センサを,磁界センシング方向が軟磁性板表面の接線方向になるようにして配置した。ここで用いたセンサは薄膜磁気インピーダンスセンサであり,膜面法線方向磁場に対しては数千ガウス(数百ミリテスラ)の耐性を有し,しかも0.3 Tの法線磁場中で10-8T台の感度を実現しているものを使用した。
【0066】
図13図14は,本実施例における磁性片の通過位置と経路,そして通過速度ベクトルを示している。図13は装置の側面図で,センサは,磁場均一化板の走査方向のほぼ中央に設置してある。薄膜磁気インピーダンス素子は,センサとしての動作点を確保するために700A/m程度のバイアス磁界を必要とすることから,センサの設置点を中央から僅かにずらしてこのバイアス磁界を得ている。
【0067】
本装置では,3個のセンサ各々の位置で組み付け誤差等の影響により磁場分布が異なっており,この影響でセンサの設置位置は中央線からずれている。図14は磁性片の送り方向の背面から見た装置開口面の正面図である。本実施例の磁性片は正面図中央のCh2センサの直上を通る走査ライン上を高さを変えて走査させている。使用した磁性片は,工具鋼製で直径5mm,高さ4mmのものを用いた。磁性片の走査速度は,100mm/sとした。
【0068】
図15に観測された磁場波形の一例を示す。本図は,センサ面を基準にして高さ47mmを磁性片を通過させた場合のものである。磁性片の通過高さを変えて,本発明の請求項2の磁性片通過高さを推定する計算式を用いて,得られた磁場波形から通過高さを推定した結果を図16に示す。横軸が実際の通過高さ。縦軸は計算式からの推定値である。図の破線は実際の高さが推定値と一致した場合に乗る線を示している。
【0069】
この結果から,推定高さが約10%過小評価されることがわかるが,この原因は,実際の磁場が垂直方向の磁場ベクトルを有した理想的な均一磁場ではなく,高さ方向の中央部で若干膨らんだ磁場分布を有していることに起因する。よってここでは,補正係数1.1を掛けて高さを推定した。その結果を表1に示す。この結果から,観測された磁場波形のピーク位置から磁性片の通過高さが推定できることがわかる。以下の実施例では,この補正を施した結果を採用した。
【表1】
【0070】
(実施例2)
磁性片が磁気センサ面から同じ高さで異なる位置を通過した場合の通過位置推定の実施例を示す。
【0071】
図17に磁性片の通過位置を示す。本実施例ではセンサ面からの高さを54mmの一定にして,開口面の横方向で異なる通過位置での位置検出を行った。磁性片の走査速度は70mm/sである。その一例を図18図19に示す。図は,各々,開口面の中央位置をY=0として,磁性片の通過位置がY=10,Y=30の場合のセンサ信号の波形である。ここから分るように,この高さでも近接する2センサからの出力は明瞭に磁性片の磁場を観測しており,最大点と最小点を明瞭に判別できる。
【0072】
この測定で得た位置推定の結果を表2に示す。2つの磁気センサのいずれか片方に磁性片の通過経路が極端に近づいた場合には,遠い位置のセンサ信号が小さくなりY方向の推定誤差が大きくなる。しかしながら,誤差9mm以内で通過位置が推定出来ていることがわかる。Y位置の推定値は,2センサの中央付近で推定誤差が最大となるが,おおよそ3mm以下で推定出来ている。
【表2】
【0073】
(実施例3)
磁性片が2つの磁気センサの間にあって高さが異なる場合の通過位置推定の実施例を示す。
【0074】
図20図21に磁性片の通過位置を示す。本実施例ではY= ̶ 30mm,及び,Y= ̶ 10mmにおいて,高さ34mm,39mm,44mm,54mm(Y= ̶ 10mmでは61mm)で通過位置推定を行った。使用した磁性片は,工具鋼製で直径5mm,高さ4mmのもの,走査速度は70mm/s とした。通過位置の推定結果を表3に示す。この場合も,片方のセンサに偏って近いY= ̶ 10mmの条件では誤差が大きいものの,誤差9mm以内で通過位置が推定出来ており,Y= ̶ 30mmの条件では推定誤差が4mm以内である。
【0075】
ここで,本実施例の(y, z)=(̶ 30, 54)と(̶ 10, 54)の測定信号波形を図22図23に示す。これらの図を比較すると,波形の最大値と最小値の位置が入れ替わっていることがわかる。これは,磁気センサの信号極性が逆に設定されたのが原因である。しかしながら,本発明の方法は,信号極性にかかわらず,極値の位置を検出するだけで通過位置検出ができる方法であり,本実施例はこれを示している。本実施例は,個々のセンサの極性や増幅率の違いにかかわらず,磁場波形の極値発生点を検出するだけで磁性片の通過位置が検出できるという本発明の計算原理の有効性を示す例となっており,複数チャンネルのセンサにおいて,個々のセンサの極性や増幅率が異なる場合でも,本発明が適用できることを示している。

【表3】
【0076】
(実施例4)
同じ通過位置で磁性片のサイズが異なる場合の異物サイズ推定の実施例を示す。磁性片の通過位置は2条件,すなわち,(Y, Z)=(30, 44.5)及び(40, 54.5)。磁性片の大きさは,サンプル1:φ5×H4,円柱。サンプル2:φ6×H4,φ2の穴あり円柱。サンプル3:φ5×H10,円柱。であるいずれも材質は工具鋼である。体積を計算すると,サンプル1:78.5mm3,サンプル2:100.5mm3,サンプル3:196.3 mm3 である。軟磁性体の磁化量は,反磁界の影響でサンプル形状の影響を強く受けるために,一概に体積に比例するものではないものの,本実施例では,大小関係は逆転せずにサンプル1<サンプル2<サンプル3となる。本実施例の磁性片通過速度は,70mm/sとして実施した。
【0077】
通過位置の推定結果を表4に示す。(Y, Z)=(30, 44.5)と(40, 54.5)の何れの場合でも,通過位置は誤差5mm以下で推定出来ており,磁性片のサイズについても大小関係の判定は正解であることがわかる。
【表4】
【0078】
(実施例5)
通過位置と磁性片サイズの両方が未知である場合の,通過位置及び異物サイズ推定の実施例を示す。本実施例では3条件の異なる磁性片サイズと通過位置を設定した。磁性片サイズに関しては,実施例4のサンプル1,2,3と同じものを使った。以下に測定条件を示す。
条件1: (Y, Z)=(27, 49.5),サンプル2(体積100.5mm3
条件2: (Y, Z)=(̶ 25, 38.5),サンプル1(体積78.5mm3
条件3: (Y, Z)=(̶ 35, 66.0),サンプル3(体積196.3mm3
通過位置の推定結果を表5に示す。何れの条件でも,通過位置は誤差5mm以下で推定出来ており,磁性片のサイズについても大小関係の判定が正解であることがわかる。
【表5】
【0079】
本発明の磁性片通過位置検出装置は,上述した構造に限られず,様々に変形可能である。例えば,均一磁場構造と磁気センサの配置について公知の技術(特開2018-146323,特開2020-165868)を適用可能である。この際の磁場発生源としてハード磁石の他に電磁石の使用も可能である。上下の均一磁場板の間隔とこの間の検査領域の磁場強度も被検査物の大きさや磁性片の磁化特性や必要とされる検出感度に応じて適宜設定可能である。センサ素子の配置についても個数や配置間隔が実施例に限られるものではない。
【0080】
特開2020-165868にあるように異なる極性の距離が離れたバイアス点を利用して本発明の磁性片通過位置検出装置を校正してもよい。均一磁場板が不要の場合は,これを除くこともできるなど,様々に変形可能である。
【0081】
磁気センサで検出される磁場波形の最大値と最小値の検出方法についても,上述した方法に限らず,様々に変形可能である。観測される磁場波形において,検出する磁性片の通過に伴う理論波形の方程式や二次曲線などの方程式を利用して曲線フィッティングを実施することで極値の位置推定精度を高めることが可能である。また,磁性片の信号であることをニューラルネットワーク等機械学習の波形認識機能を用いて実施することで検出効率を上げる方法も適用可能である。
【0082】
(実施例6)
本発明に薄膜磁気インピーダンスセンサを用いた場合の高周波発振回路と対数アンプを用いた駆動回路の実施例を図24に示す。本発明においては,回路中のアッテネータの減衰率を最大に調整することで回路の出力がセンサ素子のインピーダンス値に対応した値になることから,本発明の装置においてこの回路出力を見ながら磁場中のセンサ位置を調整することでセンサ動作点を調整するモードに切り替えることができる。このことは,駆動周波数が数百メガヘルツの高周波で薄膜磁気インピーダンスセンサを駆動して高い感度を実現しつつ本発明の検出装置を実施するのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1.本発明の実施の形態による磁性片通過位置検出装置の斜視図である。磁性片の通過経路を白抜き矢印で示している。磁気センサの配置は通過方向に対して,ずれた位置で可能であることを示している。
図2.本発明の位置検出方法を説明するための磁場発生装置と磁気センサ,そして磁性片通過位置の側面図である。
図3図2に対応する本発明の位置検出方法を説明するための磁場発生装置と磁気センサ,そして磁性片通過位置の正面図である。
図4図2の磁性片通過位置検出装置を磁性片が通過した際に得られた磁気センサの実測波形である。
図5図4に対応した磁性片検出の理論解析から得られた磁気計測波形である。
図6.本発明の位置検出方法を説明するための磁場発生装置の磁場方向,磁気センサの指向性方向,そして磁性片通過方向を説明するベクトル図である。本図は側面図である。
図7図6の磁性片通過位置検出装置の磁気センサ設置面を上から見た,センサ配置と磁性片走査方向を示す図である。
図8.センサ設置面からの高さ100mmを磁性片が通過するときに設置位置がx=0の軸上で,y=-50, 0, +50と異なる3つの磁気センサが計測極値を示す磁性片の位置を示す図である。
図9図8と同じセンサ位置において,センサ設置面からの高さ50mmを磁性片が通過するときに,異なる3つの磁気センサが計測極値を示す磁性片の位置を示す図である。
図10.本発明の位置検出方法を説明するための,磁気センサから出力される信号波形を説明するための磁場発生装置と磁気センサ,そして磁性片通過位置の位置関係を示す正面図である。
図11図10に示す位置を磁性片が走査した際に磁気センサに観測される波形である。図には,最大値,最小値に丸いマークをつけて示している。マークに付けた記号は,数式の記号に対応している。
図12.本発明の実施例を示す磁性片通過位置検出装置の模式図である。
図13.本発明の実施例1に示される磁気センサCh2の直上を通過する磁性片の通過経路を示す側面図である。
図14.本発明の実施例1に示される磁気センサCh2の直上を通過する磁性片の通過経路を示す正面図である。
図15.本発明の実施例1に示される磁気センサCh2の上47mmを通過する磁性片の磁場を測定した磁気センサCh2の観測波形である。
図16.本発明の実施例1に示される磁気センサCh2の直上を通過する磁性片の通過位置(この場合は高さ)を推測した結果を示す図である。
図17.本発明の実施例2に示されるの磁性片通過位置検出装置において高さ54mmを通過する磁性片の通過経路を示す正面図である。この実施例においては,通過するY座標をパラメータとしてこれを推定している。
図18.本発明の実施例2に示される磁性片通過位置検出装置において高さ54mm,Y=10mmを通過する磁性片の磁場を測定した磁気センサの観測波形である。
図19.本発明の実施例2に示される磁性片通過位置検出装置において高さ54mm,Y=30mmを通過する磁性片の磁場を測定した磁気センサの観測波形である。
図20.本発明の実施例3に示されるの磁性片通過位置検出装置においてY=-30mmを通過する磁性片の通過経路を示す正面図である。この実施例においては,通過するZ座標をパラメータとしてこれを推定している。
図21.本発明の実施例3に示されるの磁性片通過位置検出装置においてY=-10mmを通過する磁性片の通過経路を示す正面図である。この実施例においては,通過するZ座標をパラメータとしてこれを推定している。
図22.本発明の実施例3に示される磁性片通過位置検出装置において高さ54mm,Y=-30mmを通過する磁性片の磁場を測定した磁気センサの観測波形である。
図23.本発明の実施例3に示される磁性片通過位置検出装置において高さ54mm,Y=-10mmを通過する磁性片の磁場を測定した磁気センサの観測波形である。
図24.本発明の実施例6に示される本発明のセンサ駆動回路の測定状態における回路状態を示す回路ブロック図である。
図25.本発明の実施例6に示される本発明のセンサ駆動回路のバイアス位置調整時に切り替えられた回路状態を示す回路ブロック図である。

表1.本発明の実施例1に示す通過位置推定結果を示す数表である。実測値と推定値を対比してある。センサ直上の高さ位置を推定した結果である。
表2.本発明の実施例2に示す通過位置推定結果を示す数表である。高さ54mmで通過するY座標をパラメータとして実測値と推定値を対比してある。
表3.本発明の実施例3に示す通過位置推定結果を示す数表である。Y=-30mmとY=-10mmの2条件において,高さZをパラメータとして実測値と推定値を対比してある。
表4.本発明の実施例4に示す通過位置推定結果を示す数表である。(Y,Z)が異なる2条件の定められた位置において,磁性片のサイズをパラメータとして実測値と推定値を対比してある。
表5.本発明の実施例5に示す通過位置推定結果を示す数表である。(Y,Z)及び磁性片のサイズが異なる3条件において,通過位置と磁性片サイズを求め,実測値と推定値を対比してある。


















図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図21
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図25