(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021486
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 13/00 20060101AFI20230207BHJP
F25B 39/00 20060101ALI20230207BHJP
F25B 41/26 20210101ALI20230207BHJP
F28D 1/04 20060101ALI20230207BHJP
F28F 1/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
F25B13/00 S
F25B39/00 D
F25B41/26 Z
F28D1/04 Z
F28F1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126370
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】川邉 義和
(72)【発明者】
【氏名】飯高 誠之
(72)【発明者】
【氏名】鶸田 晃
(72)【発明者】
【氏名】野間 富之
【テーマコード(参考)】
3L092
3L103
【Fターム(参考)】
3L092AA02
3L092BA12
3L092BA15
3L103AA37
3L103BB42
3L103CC23
3L103CC28
3L103DD03
3L103DD33
(57)【要約】
【課題】縮器においては冷媒出口流路断面積が小さいほうが望ましいが、蒸発器では冷媒入口流路断面積が小さいほうが望ましくなり、凝縮、蒸発とも対向流の熱交換器では冷媒流路断面積の調整を行うことができないという課題がある。
【解決手段】複数の伝熱フィンと、複数の伝熱管とで構成された熱交換器と、冷媒の流れる方向を調整する冷媒流れ調整手段を備え、熱交換器は、第一熱交換器区画と、第二熱交換器区画を備えることで、熱交換器が蒸発器若しくは凝縮器として機能するいずれの場合でも空気の流れ方向と冷媒の流れ方向を対向流とするとともに、冷媒流れ調整手段の数を減らすことができる冷凍サイクル装置を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱フィンと、複数の伝熱管とで構成された熱交換器と、冷媒の流れる方向を調整する冷媒流れ調整手段を備え、
前記熱交換器は、複数の第一熱交換器区画を有し、前記冷媒流れ調整手段は、前記第一熱交換器区画と接続し、前記第一熱交換器区画は、前記熱交換器が蒸発器として機能する場合も凝縮器として機能する場合も冷媒が風下側から風上側へ流れるよう前記冷媒流れ調整手段により調整されることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記熱交換器は、パス数の異なる複数の前記第一熱交換器区画を備えることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
さらに、前記熱交換器は第二熱交換器区画を備え、前記第二熱交換器区画は、冷媒の流れる方向が調整されていないことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
複数の伝熱フィンと、複数の伝熱管とで構成された熱交換器と、冷媒の流れる方向を調整する冷媒流れ調整手段を備え、
前記熱交換器は、第一熱交換器区画と、第二熱交換器区画を有し、前記冷媒流れ調整手段は、前記第一熱交換器区画と接続し、前記第一熱交換器区画は、前記熱交換器が蒸発器として機能する場合も凝縮器として機能する場合も冷媒が風下側から風上側へ流れるよう前記冷媒流れ調整手段により調整され、前記第二熱交換器区画は、冷媒の流れる方向が調整されていないことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記第二熱交換器区画は、前記熱交換器が凝縮器として機能する際に、冷媒が風下側から風上側へ流れるよう構成することを特徴とする請求項3または4に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記第二熱交換器区画は、並列に接続される前記伝熱管のパス数が風上のパス数よりも風下のパス数が多くなるよう構成することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記熱交換器の並列に接続される前記伝熱管のパス数は、前記第一熱交換器区画のパス数よりも前記第二熱交換器区画のパス数が少ないことを特徴する請求項3~6のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記冷媒流れ調整手段が逆止弁ブリッジ冷媒回路であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記冷媒が非共沸混合冷媒であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍およびヒートポンプサイクルを用いて空気調和を行なう空気調和機において、運転効率の向上を図る冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の熱ポンプ装置では、バイパス管と開閉弁を複数用いたり、四方弁を複数用いたりして、室外、室内の熱交換器が冷房でも暖房でも空気の流れ方向に対する冷媒の流れ方向が対向流となるよう構成している。
【0003】
図3は特許文献1の四方弁を複数用いた場合の熱ポンプ装置の構成で、暖房運転時の状態を示しており、その際に冷媒は、暖房運転時の冷媒流れ方向30の方向に流れる。圧縮機21を出た冷媒は、四方弁27から利用側四方弁28、利用側熱交換器22、再び利用側四方弁28、絞り装置26、熱源側四方弁29、熱源側熱交換器23、再び熱源側四方弁29、再び四方弁27から圧縮機21へ戻る。
【0004】
利用側熱交換器22には利用側ファン24が、熱源側熱交換器23には熱源側ファン25がそれぞれ外部流体である空気を送っていて、どちらの熱交換器も外部流体の流れ方向32に対する冷媒の流れ方向が対向流となる。
【0005】
冷房運転になると四方弁27、利用側四方弁28、熱源側四方弁29が切換り、冷媒は冷房運転時の冷媒流れ方向31の方向に流れるが、利用側熱交換器22、熱源側熱交換器23、どちらの熱交換器も外部流体の流れ方向32に対する冷媒の流れ方向が対向流となる。
【0006】
また、特許文献2では、開閉弁や四方弁を用いるのではなく、逆止弁ブリッジ冷媒回路を用いて利用側熱交換器の暖房時・冷房時共に空気と冷媒の流れ方向を対向流にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59-115945号公報
【特許文献2】特開平7-190528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、熱交換器が蒸発器若しくは凝縮器として機能するいずれの場合でも空気の流れ方向と冷媒の流れ方向を対向流とするとともに、冷媒流路断面積の調整を可能とすることで熱交換器の優れた性能を実現し、空気調和機の運転効率向上させることのできる冷凍サイクル装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示における冷凍サイクル装置は、複数の伝熱フィンと、複数の伝熱管とで構成された熱交換器と、冷媒の流れる方向を調整する冷媒流れ調整手段を備え、熱交換器は、複数の第一熱交換器区画を有し、冷媒流れ調整手段は、第一熱交換器区画と接続し、第一熱交換器区画は、熱交換器が蒸発器として機能する場合も凝縮器として機能する場合も冷媒が風下側から風上側へ流れるよう冷媒流れ調整手段により調整される。
【0010】
これにより、熱交換器が蒸発器若しくは凝縮器として機能するいずれの場合でも空気の流れ方向と冷媒の流れ方向を対向流とするとともに、冷媒の湿り度に応じた冷媒流路断面積を設定することができる。
【0011】
また、本開示における冷凍サイクル装置は、複数の伝熱フィンと、複数の伝熱管とで構成された熱交換器と、冷媒の流れる方向を調整する冷媒流れ調整手段を備え、熱交換器は、第一熱交換器区画と、第二熱交換器区画を有し、冷媒流れ調整手段は、第一熱交換器区画と接続し、第一熱交換器区画は、熱交換器が蒸発器として機能する場合も凝縮器として機能する場合も冷媒が風下側から風上側へ流れるよう冷媒流れ調整手段により調整され、第二熱交換器区画は、冷媒の流れる方向が調整されていない。
【0012】
これにより、熱交換器が蒸発器若しくは凝縮器として機能するいずれの場合でも空気の流れ方向と冷媒の流れ方向を対向流とするとともに、冷媒流れ調整手段の数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示における冷凍サイクル装置は、複数の第一熱交換器区画と、冷媒流れ調整手段を備えることで、熱交換器が蒸発器若しくは凝縮器として機能するいずれの場合でも空気の流れ方向と冷媒の流れ方向を対向流とするとともに、冷媒の湿り度に応じて冷媒流路断面積を設定することができる。そのため、優れた熱交換性能を実現することのできる冷凍サイクル装置を提供することができる。
【0014】
また、本開示における冷凍サイクル装置は、第一熱交換器区画と、第二熱交換器区画と、冷媒流れ調整手段を備えることで、熱交換器が蒸発器若しくは凝縮器として機能するいずれの場合でも空気の流れ方向と冷媒の流れ方向を対向流とするとともに、冷媒流れ調整手段の数を減らすことができる。そのため、優れた熱交換性能を実現することのできる冷凍サイクル装置を提供するとともに、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1における冷凍サイクル装置の構成図
【
図2】実施の形態2における冷凍サイクル装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本開示の基礎となった知見等)
近年は、地球温暖化防止の観点から空気調和機の運転効率が重要視されており、数多くの発明が提案されている。
【0017】
そして、冷媒と空気との間で熱交換を行う熱交換器は、空気調和機の運転効率に大きな影響をもたらす構成要素の一つである。その熱交換器の代表的な構成の一つに、熱交換を促進するためのフィンを有するチューブに冷媒を流すフィンチューブ式熱交換器がある。ルームエアコンなどにおいては、プレートフィンを複数積層し、複数のチューブがプレートフィンを貫通するように列を成して配置して構成したプレートフィンチューブが用いられ、そのチューブの列も複数となることが多い。
【0018】
凝縮器において、冷媒は過熱ガス状態から気液二相状態となり最後には過冷却液状態と変化していく。凝縮器の効率を考えた場合、風上側から風下側に向かって冷媒の温度が高くなる方が優れているので、冷媒は風下から風上に向かって流す対向流とするのが望ましい。蒸発器の場合も、凝縮器と同様に風下から風上へ冷媒が流れる方が性能を向上させることができるが、風上から風下へ冷媒を流した場合の性能低下は凝縮器の時ほど大きくない。
【0019】
これまで、ルームエアコンなどの空気調和機では多くの場合単一成分冷媒あるいは疑似共沸混合冷媒を使用してきた。熱交換器が凝縮器となる場合に、冷媒が風下側から風上側へ流れる対向流となるよう構成し、蒸発器においては冷媒の圧力損失を利用して、風下の冷媒温度が下がるように構成して、熱交換効率を上げている。
【0020】
蒸発器において冷媒の圧力が一定であれば、単一成分冷媒や疑似共沸混合冷媒では、ほぼ一定の温度で吸熱し蒸発していく。
【0021】
しかし、非共沸混合冷媒の場合は、蒸発が進むにつれて冷媒の蒸発温度が上昇するため、熱交換器の性能に大きな影響を及ぼす。
【0022】
そうした中で、非共沸混合冷媒における性能影響を考慮して、冷房、暖房どちらにおいても対向流となるような装置が提案されている。従来の技術では、冷房、暖房どちらの運転であっても熱交換器の対向流化を実現することができ性能は向上しているが、十分とは言えない。
【0023】
冷媒は気液の相変化に伴って密度が大きく変化し管内を流れる冷媒の流速が変化する。冷媒の流速が早ければ、管内表面での熱伝達と圧力損失の相反する特性値が上昇するので、湿り度によって望ましい流速が存在する。冷媒の流速の適正化は、パス数や管径を変更し、冷媒流路の断面積で調整され、湿り度が高くなるにつれて冷媒流路の断面積は小さくするほうが望ましい。
【0024】
しかしながら、凝縮器においては冷媒出口流路断面積が小さいほうが望ましいが、蒸発器では冷媒出口流路断面積が大きいほうが望ましくなり、凝縮、蒸発とも対向流の熱交換器では冷媒流路断面積の調整を行うことができないという課題があることを発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0025】
そこで、本開示は、第一熱交換器区画と、第二熱交換器区画と、冷媒流れ調整手段を備えることで、凝縮器でも蒸発器でも空気の流れ方向と冷媒の流れ方向を対向流とするとともに、冷媒流れ調整手段の数を減らすことができる冷凍サイクル装置を提供する。
【0026】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0027】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における冷凍サイクル装置の構成図を示すものである。
【0028】
[1-1.構成]
図1に示す冷凍サイクル装置は、複数の伝熱管1と、複数の伝熱フィン2で構成されるフィンチューブ式熱交換器を備える。熱交換器は、空気流れ方向8に対して、風上列12、風下列13の2列で構成されている。伝熱フィン2は伝熱管1と垂直な面を有し、
図1の奥行方向に多数積層されている。
【0029】
実施の形態1の熱交換器は、2つの区画を有しており、第一熱交換器区画3aと、第一熱交換器区画3bがある。第一熱交換器区画3aと第一熱交換器区画3bは、並列に接続される伝熱管のパス数が異なっており、第一熱交換器区画3aでは4つのパス、第一熱交換器区画3bでは2つのパスとなっている。
【0030】
第一熱交換器区画3aには、冷媒流れ調整手段5aである逆止弁ブリッジ冷媒回路が接続されており、熱交換器が凝縮器として利用される時も蒸発器として利用される時も、冷媒が風下列13から風上列12へ流れるようなっている。第一熱交換器区画3bには、冷媒流れ調整手段5bである逆止弁ブリッジ冷媒回路が接続されており、熱交換器が凝縮器として利用される時も蒸発器として利用される時も、冷媒が風下列13から風上列12へ流れるようなっている。
【0031】
冷媒流れ調整手段5aは4つの逆止弁11を環状に連結してなる逆止弁ブリッジ冷媒回路であり、第一冷媒接続口6、第一熱交換器区画3aの風下列13、第一熱交換器区画3aの風上列12、冷媒流れ調整手段5bと接続している。冷媒流れ調整手段5bは4つの逆止弁11を環状に連結してなる逆止弁ブリッジ冷媒回路であり、第二冷媒接続口7、第一熱交換器区画3bの風下列13、第一熱交換器区画3bの風上列12、冷媒流れ調整手段5aと接続している。また、冷媒流れ調整手段5a、5bとして開閉弁や切換弁を使用することもできる。
【0032】
第一冷媒接続口6は、熱交換器が凝縮器として利用される場合に冷媒の入口となる接続口であり、熱交換器が蒸発器として利用される場合には冷媒の出口となる。第二冷媒接続口7は、熱交換器が凝縮器として利用される場合に冷媒の出口となる接続口であり、熱交換器が蒸発器として利用される場合には冷媒の入口となる。
【0033】
熱交換器に使用する冷媒はその種類を限定されるものではなく、単一成分冷媒、疑似共沸混合冷媒、非共沸混合冷媒などを用いてもよい。
【0034】
[1-2.動作]
以上のように構成された冷凍サイクル装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0035】
熱交換器が凝縮器として機能する場合、冷媒は凝縮時冷媒流れ方向9のように、第一冷媒接続口6からガス冷媒が流入し、冷媒流れ調整手段5a、第一熱交換器区画3aを経て、冷媒流れ調整手段5aへ戻り、冷媒流れ調整手段5bへと流れる。第一熱交換器区画3aでは、並列に接続される伝熱管のパス数が4つにわかれ、冷媒は風下列13から風上列12へと流れる。そのあと、冷媒は冷媒流れ調整手段5bから、第一熱交換器区画3bを経て、冷媒流れ調整手段5bへ戻り、第二冷媒接続口7へと流れる。第一熱交換器区画3bでは、並列に接続される伝熱管のパス数が2つにわかれ、冷媒は風下列13から風上列12へと流れる。
【0036】
熱交換器が蒸発器として機能する場合、冷媒は蒸発時冷媒流れ方向10のように、第二冷媒接続口7から気液二相の冷媒が流入し、冷媒流れ調整手段5b、第一熱交換器区画3bを経て、冷媒流れ調整手段5bへ戻り、冷媒流れ調整手段5aへと流れる。第一熱交換器区画3bでは、並列に接続される伝熱管のパス数が2つにわかれ、冷媒は風下列13から風上列12へと流れる。そのあと、冷媒は冷媒流れ調整手段5aから、第一熱交換器区画3aを経て、冷媒流れ調整手段5aへ戻り、第一冷媒接続口6へと流れる。第一熱交換器区画3aでは、並列に接続される伝熱管のパス数が4つにわかれ、冷媒は風下列13から風上列12へと流れる。
【0037】
実施の形態1では、熱交換器が蒸発器として機能する場合も凝縮器として機能する場合も、第一熱交換器区画3a、3bは、冷媒が風下列13から風上列12へ流れる対向流となっており、良好な熱交換特性を得る。そして、ガス冷媒の割合が高くなる第一熱交換器区画3aでは4パス、液冷媒の割合が高くなる第一熱交換器区画3bでは2パスと、冷媒の状態に応じたパス数すなわち冷媒流路断面積を設定しており、良好な熱交換特性を得ることができる。
【0038】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷凍サイクル装置は、複数の伝熱フィン2と、複数の伝熱管1とで構成された熱交換器と、冷媒の流れる方向を調整する冷媒流れ調整手段5を備える。熱交換器は、複数の第一熱交換器区画3を有する。冷媒流れ調整手段5は、第一熱交換器区画3と接続する。第一熱交換器区画3は、熱交換器が蒸発器として機能する場合も凝縮器として機能する場合も冷媒が風下側から風上側へ流れるよう冷媒流れ調整手段5により調整される。
【0039】
これにより、熱交換器が蒸発器若しくは凝縮器として機能するいずれの場合でも空気の流れ方向と冷媒の流れ方向を対向流とするとともに、冷媒の湿り度に応じた冷媒流路断面積を設定することができる。従って、優れた熱交換性能を実現することのできる冷凍サイクル装置を提供することができる。
【0040】
本実施の形態のように、熱交換器は、パス数の異なる複数の第一熱交換器区画3を備えるようにしてもよい。
【0041】
これにより、冷媒の湿り度に応じた冷媒流路断面積を設定することができる。
【0042】
また、本実施の形態において、冷媒流れ調整手段5に逆止弁ブリッジ冷媒回路を用いるようにしてもよい。
【0043】
これにより、冷媒の流れを調整するために、制御手段が不要で電力を使用する必要がない。従って、優れた熱交換性能を実現するとともに安価で扱いの容易な冷凍サイクル装置を提供することができる。
【0044】
また、本実施の形態において、冷媒に非共沸混合冷媒を用いるようにしてもよい。
【0045】
これにより、温暖化係数の小さな冷媒が使用可能となり、また温度滑り特性を有する非共沸混合冷媒を使用しても、熱交換性能に優れた冷凍サイクル装置を提供することができる。
(実施の形態2)
以下、
図2を用いて、実施の形態2を説明する。なお、実施の形態2では、主に、実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する説明を省略する。
【0046】
図2は、実施の形態2における冷凍サイクル装置の構成図を示すものである。
【0047】
[2-1.構成]
実施の形態2の熱交換器は、2つの区画を有しており、第一熱交換器区画3と、第二熱交換器区画4がある。第一熱交換器区画3は、並列に接続される伝熱管のパス数が4つのパスであり、第二熱交換器区画4は、風下列13では2つのパス、風下列13と風上列12の間で2つのパスは合流して1パスとなり、風上列12では1つのパスとなる。
【0048】
第一熱交換器区画3には、冷媒流れ調整手段5である逆止弁ブリッジ冷媒回路が接続されており、熱交換器が凝縮器として利用される時も蒸発器として利用される時も、冷媒が風下列13から風上列12へ流れるようなっている。なお、第一熱交換器区画3は複数存在してもよく、それぞれの第一熱交換器区画3は並列に接続される伝熱管のパス数が異なっていてもよい。
【0049】
第二熱交換器区画4は、冷媒流れ調整手段5である逆止弁ブリッジ冷媒回路が接続されているが、冷媒の流れる方向が調整されておらず、凝縮時冷媒流れ方向9の場合では、冷媒が風下列13から風上列12へ流れ、蒸発時冷媒流れ方向10の場合では、冷媒が風上列12から風下列13へ流れるようなっている。
【0050】
冷媒流れ調整手段5は4つの逆止弁11を環状に連結してなる逆止弁ブリッジ冷媒回路であり、第一冷媒接続口6、第一熱交換器区画3の風下列13、第一熱交換器区画3の風上列12、第二熱交換器区画4の風下列13と接続している。
【0051】
[2-2.動作]
以上のように構成された冷凍サイクル装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0052】
熱交換器が凝縮器として機能する場合、冷媒は凝縮時冷媒流れ方向9のように、第一冷媒接続口6からガス冷媒が流入し、冷媒流れ調整手段5、第一熱交換器区画3を経て、冷媒流れ調整手段5へ戻り、第二熱交換器区画4、第二冷媒接続口7へと流れる。第一熱交換器区画3では、並列に接続される伝熱管のパス数が4つにわかれ、冷媒は風下列13から風上列12へと流れる。第二熱交換器区画4では、並列に接続される伝熱管のパス数が2つにわかれて風下列13を流れ、風下列13を流れ切ると2つのパスは合流して1パスとなり風上列12を流れ、第二冷媒接続口7へと流れる。
【0053】
熱交換器が蒸発器として機能する場合、冷媒は蒸発時冷媒流れ方向10のように、第二冷媒接続口7から気液二相の冷媒が流入し、第二熱交換器区画4、冷媒流れ調整手段5、第一熱交換器区画3を経て、冷媒流れ調整手段5へ戻り、第一冷媒接続口6へと流れる。第二熱交換器区画4では、冷媒は風上列12を1パスで流れ、風上列12を流れ切ると2つのパスとなり風下列13を流れ、第一冷媒接続口6へと流れる。第一熱交換器区画3では、並列に接続される伝熱管のパス数が4つにわかれ、冷媒は風下列13から風上列12へと流れる。
【0054】
実施の形態2では、第一熱交換器区画3は、熱交換器が蒸発器として機能する場合も凝縮器として機能する場合のいずれも、風下列13から風上列12へ流れる対向流となっており、良好な熱交換特性を得る。
【0055】
そして、ガス冷媒の割合が高くなる第一熱交換器区画3では4パス、液冷媒の割合が高くなる第二熱交換器区画4では2パス、1パスと、冷媒の状態に応じたパス数すなわち冷媒流路断面積を設定しており、良好な熱交換特性を得る。
【0056】
ここで、第二熱交換器区画4は、凝縮時は空気の流れ方向と冷媒の流れ方向が対向流となるが、蒸発時は並行流となっている。第二熱交換器区画4は、冷媒が蒸発開始の気液二相であり、蒸発終了部分となる第一熱交換器区画3に比べ、熱交換器全体の蒸発性能低下への影響は限定的である。また、
図2に示す第二熱交換器区画4では、風上列12から風下列13に流れるところでパス数が2倍、つまり冷媒流路断面積が2倍となり、大きく冷媒の圧力が低下し、これに伴って冷媒の温度は風上列12のほうが風下列13より高くなり、対向的な温度分布となり良好な熱交換性能が得られる。
【0057】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷凍サイクル装置は、複数の伝熱フィン2と、複数の伝熱管1とで構成された熱交換器と、冷媒の流れる方向を調整する冷媒流れ調整手段5を備える。熱交換器は、一つ若しくは複数の第一熱交換器区画3と第二熱交換器区画4を有する。冷媒流れ調整手段5は、第一熱交換器区画3と接続する。第一熱交換器区画3は、熱交換器が蒸発器として機能する場合も凝縮器として機能する場合も冷媒が風下側から風上側へ流れるよう冷媒流れ調整手段5により調整される。第二熱交換器区画4は、冷媒の流れる方向が調整されていない。
【0058】
これにより、熱交換器が蒸発器若しくは凝縮器として機能するいずれの場合でも空気の流れ方向と冷媒の流れ方向を対向流とするとともに、冷媒の湿り度に応じた冷媒流路断面積を設定することができ、さらに冷媒流れ調整手段の数を減らすことができる。従って、優れた熱交換性能を実現し、安価な冷凍サイクル装置を提供することができる。
【0059】
本実施の形態のように、第二熱交換器区画4は、熱交換器が凝縮器として機能する際に、冷媒が風下側から風上側へ流れるよう構成してもよい。
【0060】
これにより、熱交換器が凝縮器として機能するときは空気の流れ方向と冷媒の流れ方向が対向流となり、良好な熱交換性能が得られる。熱交換器が蒸発器として機能するときは空気の流れ方向と冷媒の流れ方向が並行流となるが、熱交換性能低下は凝縮器の時ほど大きくない。
【0061】
また、本実施の形態において、第二熱交換器区画4は、並列に接続される伝熱管1のパス数が風上のパス数よりも風下のパス数が多くなるようにしてもよい。
【0062】
これにより、冷媒流れ調整手段5を用いなくても、風上列12の伝熱管1を流れる冷媒温度が風下列13を流れる伝熱管1の冷媒温度よりも空気の温度に近づけることができ、熱交換効率を向上させることができる。従って、優れた熱交換性能を実現するとともに安価な熱交換器を提供することができる。
【0063】
また、本実施の形態において、熱交換器の並列に接続される伝熱管1のパス数は、第一熱交換器区画3のパス数よりも第二熱交換器区画4のパス数が少ないようにしてもよい。
【0064】
これにより、冷媒の状態に応じたパス数すなわち冷媒流路断面積を設定しており、良好な熱交換特性を得る。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明にかかる熱交換器は、冷凍およびヒートポンプサイクルを用いて空気調和を行なう空気調和機などに用いられ、良好な熱交換性能をもたらすもので、その技術は空気調和機だけに止まらず、冷却と加熱の両方を行う自動販売機やショーケースなどにも広く適用することができ、効果をもたらすものである。
【符号の説明】
【0066】
1 伝熱管
2 伝熱フィン
3、3a、3b 第一熱交換器区画
4 第二熱交換器区画
5、5a、5b 冷媒流れ調整手段
6 第一冷媒接続口
7 第二冷媒接続口
8 空気流れ方向
9 凝縮時冷媒流れ方向
10 蒸発時冷媒流れ方向
11 逆止弁
12 風上列
13 風下列