(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021496
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/00 20060101AFI20230207BHJP
A45D 40/06 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A45D40/00 Z
A45D40/06 Z ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126387
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000140915
【氏名又は名称】株式会社カツシカ
(72)【発明者】
【氏名】久間 雅博
(57)【要約】
【課題】 本発明は、廃棄物を少なくできる環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器に関するものである。
【解決手段】 側壁に螺合突子を突設した紅筒と、この紅筒を上下摺動自在に内装し側壁に前記螺合突子が貫通するガイドスリットを軸線に長く穿設した収納筒体と、この収納筒体に回動自在に保持され内壁に螺合突子が螺合するラセン溝を螺設したラセン筒とが主な構成部材となり、構成部材全てを金属の同一素材により成形する。ガイドスリットのスリット幅は、ラセン溝の溝幅より広幅とし、螺合突子はガイドスリットに係合する広幅の規制凸部の上にラセン溝に螺合する狭幅の螺合凸部が乗った2段重ねであり、内側壁より外周方向に向け突出成形させる。ラセン溝は、内側壁より外周方向に向け突出させて成形する。この構成部材全ての素材を、アルミニウム素材により成形する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化粧料(1)を保持し側壁に螺合突子(24)を突設した紅筒(2,12)と、該紅筒(2,12)を上下摺動自在に内装し側壁に前記螺合突子(24)が貫通して紅筒(2,12)を回動不能に案内するガイドスリット(32)を軸線に長く穿設した収納筒体(3,13)と、該収納筒体(3,13)に回動自在に保持され内壁に前記紅筒(2,12)の螺合突子(24)が螺合するラセン溝(41)を螺設したラセン筒(4,14)とが主な構成部材となり、
構成部材全てが金属の同一素材により成形され、前記収納筒体(3,13)のガイドスリット(32)のスリット幅は前記ラセン筒(4,14)のラセン溝(41)の溝幅より広幅とし、前記紅筒(2,12)の螺合突子(24)は、前記ガイドスリット(32)の溝幅に対応した大きさでガイドスリット(32)に係合する規制凸部(241)と、前記ラセン溝(41)の溝幅に対応した大きさでラセン溝(41)に螺合する螺合凸部(242)より成り、規制凸部(241)の上に螺合凸部(242)が乗った2段重ねであり、内側壁より外周方向に向け突出成形させ、螺合凸部(242)の先端のエッジ部をシャープに成形したことを特徴とする環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項2】
前記ラセン筒(4,14)のラセン溝(41)は、内側壁より外周方向に向け突出成形して成ることを特徴とする請求項1記載の環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項3】
構成部材全てがアルミニウム素材により成形されたことを特徴とする請求項1若しくは2いずれかの項記載の環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅、スティックファンデーションなどの棒状化粧料を収納する棒状化粧料繰り出し容器に関し、棒状化粧料を使い終わった際など廃棄する際、簡単にリサイクル処分できる環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、環境に配慮した棒状化粧料容器としては、容器を廃棄する際に、樹脂部品と金属部品に分解し、分別廃棄する手法が一般的であった。また、特許文献1などの金属製棒状化粧料繰り出し容器が知られている。この種の容器を、例えばアルミニウム合金などの単一素材で成形すれば、分解・分別することなく、そのままリサイクル処分でき、廃棄物を少なくできた。
【0003】
これらの金属製棒状化粧料繰り出し容器の金属製部材は、主にプレス加工により成形されていた。このうち、棒状化粧料の端部を保持する紅皿は、収納される筒体の側壁に軸線方向に長く穿設された垂直誘導路を貫通し、この収納筒体外周に回動自在に保持されたラセン筒に螺設したラセン溝に螺合する突子を突設していた。そしてこの突子は、収納筒体とラセン筒の相対回転により、垂直誘導路により回動不能の状態で、回転するラセン筒のラセン溝に螺合した螺合作用により、紅皿を上下摺動させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この紅皿の突子の先端部分は、ラセン溝に螺合している部分であるため、縁部分がシャープにしたほうがラセン溝より外れにくくなる。この紅皿を成形する際には、突子は紅皿内側壁より外径方向に突出させて成形していた。そして、突子は収納筒体を貫通してラセン筒のラセン溝に螺合することから、肉厚の2倍弱の突出量が必要となる(紅皿、収納筒体、ラセン筒の肉厚が同一として)。その結果、突子部分の肉厚が薄くなり、縁部分をシャープにすると裂けてしまう危険性があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
棒状化粧料1を保持し側壁に螺合突子24を突設した紅筒2,12と、この紅筒2,12を上下摺動自在に内装し側壁に前記螺合突子24が貫通して紅筒2,12を回動不能に案内するガイドスリット32を軸線に長く穿設した収納筒体3,13と、この収納筒体3,13に回動自在に保持され内壁に前記紅筒2,12の螺合突子24が螺合するラセン溝41を螺設したラセン筒4,14とが主な構成部材となり、構成部材全てを金属の同一素材により成形する。前記収納筒体3,13のガイドスリット32のスリット幅は、前記ラセン筒4,14のラセン溝41の溝幅より広幅とし、前記紅筒2,12の螺合突子24は、前記ガイドスリット32の溝幅に対応した大きさでガイドスリット32に係合する規制凸部241と、前記ラセン溝41の溝幅に対応した大きさでラセン溝41に螺合する螺合凸部242より成り、規制凸部241の上に螺合凸部242が重なった2段重ねであり、内側壁より外周方向に向け突出成形させ、螺合凸部242の先端のエッジ部をシャープに成形する。
【0007】
また、前記ラセン筒4,14のラセン溝41は、内側壁より外周方向に向け突出させて成形する。また、この構成部材全ての素材を、アルミニウム素材により成形する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上のように、全ての構成部材の材質が同一の金属素材により成形しているため、容器を廃棄する際には、金属素材としてリサイクルできる。そのため、廃棄物を少なくでき、環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器と言える。特に、金属素材にリサイクルの優等生であるアルミニウムを使用した場合、効率よくリサイクルできる。
【0009】
また、前記収納筒体3,13に設けたガイドスリット32は、前記ラセン筒4,14に設けたラセン溝41よりも広幅とし、このガイドスリット32を貫通してラセン溝41に螺合する紅筒2,12の螺合突子24は、ガイドスリット32の溝幅に対応した大きさでガイドスリット32に係合する規制凸部241と、ラセン溝41の溝幅に対応した大きさでラセン溝41に螺合する螺合凸部242より成り、規制凸部241の上に螺合凸部242が重なった2段重ねであり、内側壁より外周方向に向け突出成形されている。従って、2段重ね形状の規制凸部241及び螺合凸部242それぞれの突出量は、金属素材の肉厚程度となる。そのため、余裕を持った成形が可能となり、螺合凸部242の先端縁部をシャープにするのに十分な肉厚を確保できる。その結果、螺合凸部242とラセン溝41の引掛りを強くでき、螺合をより強固にできる
【0010】
螺合突子24及びラセン溝41は、金属薄板の内側壁より外周方向に向けて突出させて塑性変形により成形しているため、螺合突子24をラセン溝41に螺合させると成形面同士が擦れ合い、回転操作感を悪化させる事はない。同様に、ラセン筒4,14のラセン溝41は、内側壁から径方向に向けて成形しており、ラセン溝41の凹凸はラセン筒4,14の外側壁に突出しても成形可能となっている。従って、ラセン溝41の溝深さはラセン筒4,14の肉厚以上の溝深さにすることも可能で、螺合凸部242とラセン溝41の引掛り量を大きくでき、螺合をより強固にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明実施例1の環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器の紅筒下降限状態の正面断面図である。
【
図3】本発明実施例1の環境に配慮した棒状決勝料繰り出し容器の紅筒上昇限状態の正面断面図である。
【
図4】本発明実施例1の環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器の分解半断面図である。
【
図5】本発明実施例1の紅筒の、他の実施例の部分断面斜視図である。
【
図6】本発明実施例2の環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器の紅筒下降限状態の正面断面図である。
【
図8】本発明実施例2の環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器の紅筒上昇限状態の正面断面図である。
【
図9】本発明実施例2の環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器の分解半断面図である。
【
図10】ラセン溝を他の方法で成形したラセン筒を使用した棒状化粧料繰り出し容器の螺合凸部部分の部分拡大断面図である。
【実施例0012】
本発明実施例1の環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器を
図1乃至
図5により説明する。本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器は、紅筒2、収納筒体3、ラセン筒4、中筒5、ハカマ筒6、及びキャップ7とからなり、全ての部材がアルミニウムなどの単一の金属素材より、プレス加工等により成形されている。
【0013】
紅筒2は、保持筒21と、この保持筒21の下端に止着される脚筒22とより成っている。保持筒21は、上下端が開口したパイプ状をしている。脚筒22は、天井部分221のあるキャップ状をしている。上部は外径が縮小しており、保持筒21の下部が止着される止着部222となっている。そして、保持筒21と天井部分221とで棒状化粧料1の下端を保持する保持部23を構成している。脚筒22の下部外側壁には、螺合突子24を突設している。
【0014】
この棒状化粧料1及び紅筒2は、収納筒体3内に上下摺動自在に内装している。この収納筒体3の中程外周には、係合リブ31を内周壁からから外側壁方向に突出して周設している。なお、この係合リブ31は、収納した紅筒2が下降限の時、紅筒2の上端より下に位置している。この係合リブ31の下方には、軸線方向にガイドスリット32を穿設している。このガイドスリット32は、収納筒体3の下端に開溝しており、紅筒2の螺合突子24を下端より挿入、係合させて、紅筒2を回動不能に規制しながら上下摺動自在に案内している。そして、
図3に示したように、ガイドスリット32の上端に螺合突子24が当接して、紅筒2の上昇限となる。なお、螺合突子24の先端部分は、収納筒体3の側壁より突出しており、ガイドスリット32に係合する部分が規制凸部241、収納筒体3の側壁より突出した部分が螺合凸部242となっている。
【0015】
この収納筒体3の下部は、ラセン筒4内に回動自在に挿入されている。このラセン筒4は、底部42を有した薄肉のコップ状をしており、内側壁に収納筒体3側壁より突出した螺合突子24の螺合凸部242が螺合するラセン溝41を螺設している。このラセン溝41は、上端に開溝しており、螺合凸部242を上端から螺合することができる。そして、
図1に示したように、紅筒2の下端がラセン筒4の底部42に当接して紅筒2の下降限となる。また、
図2に示したように、このラセン溝41は、内側壁より外側壁に突出させて成形している。
【0016】
なお、前記収納筒体3のガイドスリット32の溝幅は、前記ラセン溝41の溝幅よりも広幅になっている。これに合わせ、螺合突子24は前記ガイドスリット32の溝幅に対応した大きさでガイドスリット32に係合する規制凸部241と、前記ラセン溝41の溝幅に対応した大きさでラセン溝41に螺合する螺合凸部242より構成し、この規制凸部241の上に螺合凸部242が重なって突出した2段重ねになっており、
図2に示したように、内壁から外壁に向けて突設している。
【0017】
このラセン筒4は、中筒5内に下方より挿入止着されている。この中筒5は、両端が開口したパイプ状をしており、下部が有底筒状のハカマ筒6内に挿入止着されている。中筒5の上端は、ハカマ筒6の上端より突出してキャップ7が抜脱可能に嵌合する嵌合部51になっている。この嵌合部51の上端は、内径が前記収納筒体3の外径よりも僅かに大径に窄まった先端部52となり、この先端部52の内側には、前記ラセン筒4先端との間に、前記収納筒体3の係合リブ31を回動自在に脱落不能に保持する連結部53を構成している。
【0018】
以上が本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の構成である。ここで、収納筒体3を保持してハカマ筒6を回転操作すると、収納筒体3のガイドスリット32に、紅筒2の螺合突子24の規制凸部241が係合しているため、回動しない。そして、螺合突子24の螺合凸部242が、ハカマ筒6に中筒5を介して止着され回転するラセン筒4のラセン溝41に螺合しているため、螺合作用により紅筒2が収納筒体3内を上下摺動し、棒状化粧料1が収納筒体3の先端より出没する。
【0019】
なお、本実施例に於いては、紅筒2が保持筒21と脚筒22の2部品で成る構成を説明したが、
図5に示したように、紅筒2が1部品より成る構成も実施可能である。以下にその構成を説明する。紅筒2は、両端に開口したパイプ状をしており、中程の内周に内周リブ25を突設している。この内周リブ25より上方が、棒状化粧料1の下端を保持する保持部23となり、下方が前述した規制凸部241及び螺合凸部242から成る螺合突子24を設けた脚筒22となる。この構成の場合、紅筒2を1部品で構成できる利点がある。しかし、棒状化粧料1の下端部が当接する内周リブ25の突出量に限度があるため、棒状化粧料1の引掛りが少なく、正立落下した際など容器に下方向の衝撃が加わった場合、棒状化粧料1が潜り込んでしまう危険性がある。
このラセン筒14は、ラセン覆い18内に下方より挿入止着されている。このラセン覆い18は、ラセン筒14を覆い、上端は前記収納筒体13の上面まで覆っている。このラセン覆い18の上端には、棒状化粧料1及び紅筒12の上端部分が出没する出没穴81を穿設している。
また、収納筒体13の下部は、中筒15内に上方より挿入され、中筒15下部に止着されている。この中筒15は、底部を有したコップ状をしており、下部が有底筒状のハカマ筒16内に挿入止着されている。中筒15の上端は、ハカマ筒16の上端より突出してキャップ17が抜脱可能に嵌合する嵌合部51になっている。この嵌合部51の上端は、ラセン覆い18の下部を覆っている。
以上が本発明実施例2の棒状化粧料繰り出し容器の構成である。ここで、ラセン覆い18を保持してハカマ筒16を回転操作すると、ハカマ筒16に中筒15を介して止着された収納筒体13のガイドスリット32に、紅筒12の螺合突子24の規制凸部241が係合しているため、紅筒12も回転する。そして、螺合突子24の螺合凸部242が、ラセン覆い18内に止着されて回転しないラセン筒14のラセン溝41に螺合しているため、螺合作用により紅筒12が収納筒体13内を上下摺動し、棒状化粧料1がラセン覆い18の出没穴81より出没する。