(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021501
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】播種装置用補助具、これを備えた播種装置および播種機
(51)【国際特許分類】
A01C 7/00 20060101AFI20230207BHJP
A01C 7/04 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A01C7/00 D
A01C7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126396
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】521339968
【氏名又は名称】有限会社オオネ道下農業
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】道下 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】廣田 洋一
【テーマコード(参考)】
2B054
【Fターム(参考)】
2B054AA05
2B054BA01
2B054BB01
2B054CA04
(57)【要約】
【課題】 播種装置から種子を一粒ずつ播種させることができる播種装置用補助具、これを備えた播種装置および播種機を提供する。
【解決手段】 回転体12と、円盤状隔壁13と、開口部14と、差込具15とを有する播種装置10から種子を一粒ずつ播種させる播種装置用補助具1であって、貯留室13a側に開口され種子径の1倍以上2倍未満の径を有する種子導入口3と、種子導入口3と連通され他方側の空間13bに種子を収容する種子収容部4と、回転軸12a方向に向けて開口され種子収容部4から差込具15へ種子を排出する種子排出口5とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
播種装置から種子を一粒ずつ播種させるための播種装置用補助具であって、
前記播種装置は、略水平方向の回転軸周りに回転可能な中空円筒状の回転体と、前記回転体の内部空間を略鉛直方向に分断し一方側の空間を種子の貯留室とする円盤状隔壁と、前記円盤状隔壁の周縁部に沿って配置される複数の開口部と、前記回転体の外周面から放射状に突出して地面に差し込まれ前記開口部を通過した種子を播種する複数の差込具と、を有しており、
前記播種装置用補助具は、前記貯留室側に開口され種子径の1倍以上2倍未満の径を有する種子導入口と、前記種子導入口と連通され他方側の空間に種子を収容する種子収容部と、前記回転軸方向に向けて開口され前記種子収容部から前記差込具へ種子を排出する種子排出口とを有する、播種装置用補助具。
【請求項2】
前記種子収容部の内底面は円弧状に形成されている、請求項1に記載の播種装置用補助具。
【請求項3】
前記種子収容部の内側面は優弧状に形成されている、請求項1または請求項2に記載の播種装置用補助具。
【請求項4】
前記種子導入口は種子径の1.3倍以上1.5倍以下の径を有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の播種装置用補助具。
【請求項5】
前記種子導入口の開口縁部のうち前記回転体の回転方向における後方側が面取りされている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の播種装置用補助具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の播種装置用補助具を備えた播種装置。
【請求項7】
請求項6に記載の播種装置を備えた播種機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、播種装置から大根等の種子を一粒ずつ播種させるための播種装置用補助具、これを備えた播種装置および播種機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大根等の種子を所定間隔を隔てて地中に播種する播種装置が知られている。例えば、韓国公開特許第2001-0095400号公報には、略水平方向の回転軸周りに回転可能な中空円筒状の回転体(11)と、前記回転体(11)の内部空間を略鉛直方向に分断し一方側の空間を種子の貯留室とする円盤状隔壁(12)と、前記円盤状隔壁(12)の周縁部に沿って配置される複数の開口部(13c)と、前記回転体(11)の外周面から放射状に突出して地面に差し込まれ前記開口部(13c)を通過した種子を播種する複数の差込具(30)と、を有する播種装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国公開特許第2001-0095400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された播種装置においては、略扇形状に形成された各開口部(13c)のそれぞれに開閉シャッター(24)が揺動可能に設けられている。そして、回転体(11)の回転に応じて下方位置に来た開口部(13c)においては開閉シャッター(24)が開いて種子を取り入れる一方、開口部(13c)が上方位置に移動するのに伴って開閉シャッター(24)が閉じて種子を閉じ込めるようになっている。
【0005】
このため、開口部(13c)の開口面積が大きめに形成されており、一つの開口部(13c)に対して複数個の種子が一度に取り入れられてしまう場合が多い。そうすると、大根等のように、一箇所につき一粒ずつ播種することが好ましい種子であっても、複数個ずつ過剰に播種されてしまうため、種子に係るコストが増大してしまうという問題がある。また、種子が過剰に播種された分だけ、間引き作業が必要となるため、当該作業に係る労力やコストが増大するという問題もある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、播種装置から種子を一粒ずつ播種させることができる播種装置用補助具、これを備えた播種装置および播種機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る播種装置用補助具は、播種装置から種子を一粒ずつ播種させるという課題を解決するために、播種装置から種子を一粒ずつ播種させるための播種装置用補助具であって、前記播種装置は、略水平方向の回転軸周りに回転可能な中空円筒状の回転体と、前記回転体の内部空間を略鉛直方向に分断し一方側の空間を種子の貯留室とする円盤状隔壁と、前記円盤状隔壁の周縁部に沿って配置される複数の開口部と、前記回転体の外周面から放射状に突出して地面に差し込まれ前記開口部を通過した種子を播種する複数の差込具と、を有しており、前記播種装置用補助具は、前記貯留室側に開口され種子径の1倍以上2倍未満の径を有する種子導入口と、前記種子導入口と連通され他方側の空間に種子を収容する種子収容部と、前記回転軸方向に向けて開口され前記種子収容部から前記差込具へ種子を排出する種子排出口とを有する。
【0008】
また、本発明の一態様として、種子導入口から導入された種子を種子収容部内にて安定的に保持するという課題を解決するために、前記種子収容部の内底面は円弧状に形成されていてもよい。
【0009】
さらに、本発明の一態様として、種子収容部に一旦収容された種子が種子導入口から脱落し難くするという課題を解決するために、前記種子収容部の内側面は優弧状に形成されていてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様として、種子導入口に対する種子の入り易さを確保するとともに、複数個の種子が導入されるのを確実に防止するという課題を解決するために、前記種子導入口は種子径の1.3倍以上1.5倍以下の径を有していてもよい。
【0011】
さらに、本発明の一態様として、種子導入口の開口縁部に二つ目の種子が引っ掛かってしまうのを防止するという課題を解決するために、前記種子導入口の開口縁部のうち前記回転体の回転方向における後方側が面取りされていてもよい。
【0012】
本発明に係る播種装置は、播種装置から種子を一粒ずつ播種させるという課題を解決するために、上述したいずれかの播種装置用補助具を備えている。
【0013】
本発明に係る播種機は、播種装置から種子を一粒ずつ播種させるという課題を解決するために、上記播種装置を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、播種装置から種子を一粒ずつ播種させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る播種装置用補助具を備えた播種装置の実施形態を示す図である。
【
図2】本実施形態の播種装置用補助具を備えた播種装置の縦断面図である。
【
図3】本実施形態の播種装置用補助具を示す(a)平面図、(b)正面図、(c)背面図および(d)右側面図である。
【
図4】
図3における(a)A-A線断面図、(b)B-B線断面図および(c)C-C線断面図である。
【
図5】本実施形態の播種装置を搭載した播種機を示す写真である。
【
図6】本実施形態の差込具が地中に差し込まれた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態の差込具が播種する様子を示す図である。
以下、本発明に係る播種装置用補助具1、これを備えた播種装置10および播種機100の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
まず、本実施形態の播種装置10は、
図1および
図2に示すように、主として、種子を貯留するホッパー11と、略水平方向の回転軸12a周りに回転可能な中空円筒状の回転体12と、この回転体12の内部空間を略鉛直方向に分断し一方側の空間を種子の貯留室13aとする円盤状隔壁13と、この円盤状隔壁13の周縁部に沿って配置される複数の開口部14と、回転体12の外周面から放射状に突出して地面に差し込まれ開口部14を通過した種子を播種する複数の差込具15と、を有している。
【0018】
また、本実施形態において、播種装置10には、
図1および
図2に示すように、円盤状隔壁13における開口部14のそれぞれに本実施形態の播種装置用補助具1が設けられている。各播種装置用補助具1は、
図3および
図4に示すように、薄板状の基板2と、種子を導入する種子導入口3と、種子を収容する種子収容部4と、種子を排出する種子排出口5とを有している。
【0019】
種子導入口3は、種子を貯留室13a側から他方側の空間13bへ導入するものである。本実施形態において、種子導入口3は、
図1に示すように、基板2における貯留室13a側に円形に開口されており、種子径の1倍以上2倍未満の径を有している。これにより、種子導入口3は、種子を一粒ずつ導入するようになっている。
【0020】
種子導入口3は、より好適には、種子径の1.3倍以上1.5倍以下の径を有していることが好ましい。種子径の1.3倍以上の径であれば、種子導入口3に対する種子の入り易さが確保される。種子径の1.5倍以下の径であれば、複数個の種子が導入されてしまうのが確実に防止される。
【0021】
また、本実施形態では、
図3(c)および
図4(c)に示すように、種子導入口3の開口縁部のうち回転体12の回転方向における後方側が面取りされている。これにより、種子収容部4に一粒の種子が収容されている状態においては、種子導入口3の開口縁部に二つ目の種子が引っ掛かり難くなり、二粒以上の種子が種子導入口3から導入されることが防止される。
【0022】
種子収容部4は、差込具15と通ずる他方側の空間13bに一粒の種子を収容するものである。本実施形態において、種子収容部4は、
図3および
図4に示すように、有底の略円筒形状に形成されており、種子導入口3と連通した状態で基板2に設けられている。種子収容部4の内径は、一粒の種子を収容しうる寸法に設定されている。
【0023】
また、本実施形態では、
図4(a)および
図4(b)に示すように、種子収容部4の内底面4aが円弧状に形成されている。このため、種子導入口3から導入された種子が種子収容部4内にて安定的に保持される。さらに、本実施形態では、
図3(a)に示すように、種子収容部4の内側面4bが優弧状に形成されている。このため、種子収容部4に一旦収容された種子は種子導入口3から脱落し難くなっている。
【0024】
種子排出口5は、種子収容部4から差込具15へ種子を排出するものである。本実施形態において、播種装置用補助具1は、
図2に示すように、種子排出口5が回転軸12a方向に向けて開口された状態で円盤状隔壁13に固定されている。このため、播種装置用補助具1が、回転軸12aに関して下半分側に位置している間は、種子排出口5が水平方向に対して上向きに開口する。一方、播種装置用補助具1が、回転軸12aに関して上半分側に位置している間は、種子排出口5が水平方向に対して下向きに開口する。
【0025】
つぎに、本実施形態の播種装置用補助具1、これを備えた播種装置10および播種機100による作用について説明する。なお、本実施形態では、
図5に示すように、トラクタ101の後部にマルチャー102とともに播種装置10を取り付けたものを播種機100とし、マルチシートを張設しながら、マルチシートに穴を開けて播種する例について説明する。
【0026】
本実施形態の播種機100を用いて大根等の種子を播種する場合、圃場等においてトラクタ101を走行させる。これにより、マルチャー102が圃場の地表面にマルチシート103を張設するとともに、この張設されたマルチシート103に播種装置10が穴を開けながら種子を播種する。
【0027】
具体的には、播種装置10は、
図6に示すように、回転体12の最下位置にある差込具15が、マルチシート103を切り裂きながら地面に差し込まれると、開閉蓋15aを開いて内部空間にセットされている種子を地中に播種する。そして、トラクタ101の走行に伴って回転体12が回転することで、次なる差込具15が順次、地面に差し込まれ、等間隔で種子を播種する。
【0028】
播種装置10においては、
図2に示すように、ホッパー11から供給された一定量の種子が、まず貯留室13aに貯留される。これにより、下方位置にある播種装置用補助具1が、種子導入口3から種子を導入する。このとき、種子導入口3は、種子径の1倍以上2倍未満の径を有しており、より好適には、種子径の1.3倍以上1.5倍以下の径を有しているため、一粒の種子が確実に導入されるとともに、複数個の種子が同時に導入されることがない。
【0029】
また、本実施形態において、種子収容部4に一粒の種子が収容された状態では、種子導入口3が、面取りされた開口縁部によって、さらに導入しようとする種子を滑り落とす。このため、二粒以上の種子が種子収容部4に導入されてしまうことが一層防止される。
【0030】
種子導入口3から導入された種子は、円盤状隔壁13を挟んで他方側の空間13bにある種子収容部4に収容される。このとき、本実施形態では、円弧状に形成された種子収容部4の内底面4aが、種子を安定的に保持する。また、優弧状に形成された種子収容部4の内側面4bが、種子収容部4に一旦収容された種子を種子導入口3から脱落させ難くする。
【0031】
回転体12の回転に伴って、播種装置用補助具1が下方位置から上方へ徐々に移動し、回転軸12aよりも上方位置に達すると、種子排出口5が下向きに傾斜する。これにより、種子排出口5が、種子収容部4から種子を排出し、差込具15の内部空間に一粒の種子をセットする。
【0032】
種子を排出した播種装置用補助具1は、その後、回転体12の回転に伴って再び下方位置に来る度に一粒の種子を導入し、それを差込具15の内部空間にセットする。以上の動作を繰り返すことにより、本実施形態の播種装置10は、種子を一粒ずつ順次播種する。
【0033】
以上のような本実施形態の播種装置用補助具1、これを備えた播種装置10および播種機100によれば、以下のような効果を奏する。
1.播種装置10から種子を一粒ずつ播種させることができる。
2.種子に係るコストや、間引き作業にかかる労力やコストを低減することができる。
3.種子導入口3から導入された種子を種子収容部4内にて安定的に保持することができる。
4.種子収容部4に一旦収容された種子が種子導入口3から脱落し難くすることができる。
5.種子導入口3に対する種子の入り易さを確保するとともに、複数個の種子が導入されるのを確実に防止することができる。
6.種子導入口3の開口縁部に二つ目の種子が引っ掛かってしまうのを防止することができる。
【0034】
なお、本発明に係る播種装置用補助具1、これを備えた播種装置10および播種機100は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0035】
例えば、上述した本実施形態の播種機100は、トラクタ101の後部に播種装置10の他にマルチャー102を取り付けているが、この構成に限定されるものではない。具体的には、マルチシート103が不要な場合はマルチャー102を設ける必要はない。また、トラクタ101による牽引式ではなく、播種装置10を搭載した自走式の播種機100としてもよい。あるいは、エンジン駆動ではなく手押し式の播種機100としてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 播種装置用補助具
2 基板
3 種子導入口
4 種子収容部
4a 内底面
4b 内側面
5 種子排出口
10 播種装置
11 ホッパー
12 回転体
12a 回転軸
13 円盤状隔壁
13a 貯留室(一方側の空間)
13b 他方側の空間
14 開口部
15 差込具
15a 開閉蓋
100 播種機
101 トラクタ
102 マルチャー
103 マルチシート