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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021543
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230207BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/165 301
B41J2/01 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126470
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】木下 元邦
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EC80
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA10
2C056FB10
2C056HA29
2C056HA44
2C056HA60
2C056JB02
2C056JB05
2C056JB07
2C056JB08
(57)【要約】
【課題】テスト印刷を容易に実施できるインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタ10は、被印刷物を支持する支持台20と、支持台20よりも上方に設けられ、支持台20上の印刷可能領域A1にインクを吐出可能な記録ヘッド35と、テスト印刷用のワーク7を支持可能なテスト印刷ステージ60と、を備える。テスト印刷ステージ60は、支持台20よりも上方であって平面視において少なくとも一部が印刷可能領域A1と重なる第1位置P1と、平面視において印刷可能領域A1の外方の第2位置P2と、の間を移動可能なように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物を支持する支持台と、
前記支持台よりも上方に設けられ、前記支持台上の印刷可能領域にインクを吐出可能な記録ヘッドと、
テスト印刷用のワークを支持可能なテスト印刷ステージと、を備え、
前記テスト印刷ステージは、前記支持台よりも上方であって平面視において少なくとも一部が前記印刷可能領域と重なる第1位置と、平面視において前記印刷可能領域の外方の第2位置と、の間を移動可能なように構成されている、
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
上下方向に延びる回動軸を有し、前記テスト印刷ステージを前記回動軸周りに前記第1位置と前記第2位置とに回動させることが可能な回動機構をさらに備えている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
水平面に沿った1方向に延びるガイド部材を有し、前記テスト印刷ステージを前記ガイド部材に沿って前記第1位置と前記第2位置とに移動させることが可能なスライド機構をさらに備えている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記記録ヘッドを拭うことが可能な払拭部を有するとともに、前記テスト印刷ステージに着脱可能に構成されたクリーニング部材をさらに備え、
前記テスト印刷ステージは、平面視において少なくとも一部が前記第1位置と重なるとともに前記第1位置とは上下方向の位置が異なり、かつ、前記クリーニング部材が前記テスト印刷ステージに装着された状態で前記払拭部が前記記録ヘッドに当接するような第3位置に移動可能に構成されている、
請求項1~3のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
被印刷物が載置される支持台を有する、いわゆるフラットベッドタイプのインクジェットプリンタが従来から知られている。フラットベッドタイプのインクジェットプリンタの支持台には、立体形状を有する各種の被印刷物を載置することができる。また、かかる支持台に、複数の被印刷物を支持させることも可能である。そのため、フラットベッドタイプのインクジェットプリンタにおいては、被印刷物を保持するとともに支持台に対する被印刷物の位置を決める治具がしばしば用いられる。例えば、特許文献1には、被印刷物を保持する印刷用治具が載置されるテーブルと、印刷ヘッドと、を備えたインクジェットプリンタが開示されている。特許文献1に開示された印刷用治具は、位置検出マークを備えている。特許文献1に開示されたインクジェットプリンタは、位置検出マークを検知する検知器と、検知器によって検出された実際の位置検出マークの位置情報に基づいて印刷データを変更する印刷データ作成部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-177578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタにおいては、テスト印刷用のワーク(例えば、テスト印刷用のシート状媒体)にテスト印刷を行いたい場合がある。テスト印刷は、被印刷物に対する印刷と同様に、支持台に載置されたテスト印刷用ワークに対して行われる。よって、既に被印刷物に印刷をするためのセットアップがされている状況でテスト印刷を行う場合には、支持台上にセットアップされた治具や被印刷物を支持台上から撤去しなければならない。かかる撤去作業、そしてテスト印刷後の復帰作業には、時間およびユーザーの労力を要する。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、テスト印刷を容易に実施できるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示するインクジェットプリンタは、被印刷物を支持する支持台と、前記支持台よりも上方に設けられ、前記支持台上の印刷可能領域にインクを吐出可能な記録ヘッドと、テスト印刷用のワークを支持可能なテスト印刷ステージと、を備える。前記テスト印刷ステージは、前記支持台よりも上方であって平面視において少なくとも一部が前記印刷可能領域と重なる第1位置と、平面視において前記印刷可能領域の外方の第2位置と、の間を移動可能なように構成されている。
【0007】
上記インクジェットプリンタによれば、テスト印刷ステージは、第1位置に移動させると、支持台よりも上方に位置し、かつ、平面視において少なくとも一部が印刷可能領域と重なる。そのため、テスト印刷ステージを第1位置に移動させた状態では、テスト印刷ステージに支持させたテスト印刷用のワークにテスト印刷を行うことが可能である。このとき、支持台の物は、第1位置のテスト印刷ステージよりも下方に位置するような高さに構成しておきさえすれば、支持台上から撤去しなくてもよい。よって、上記インクジェットプリンタによれば、テスト印刷を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図2】カバーを開けた状態のプリンタを示す正面図である。
図3】テスト印刷ステージの上方の部材を取り外した状態のプリンタを示す平面図である。
図4】テスト印刷ステージと回動機構とを模式的に示す斜視図である。
図5】一実施形態に係るクリーニングキットの斜視図である。
図6】クリーニングキットがテスト印刷ステージに装着された状態における、テスト印刷ステージ、クリーニングキット、および記録ヘッドを模式的に示す正面図である。
図7】テスト印刷ステージの退避位置がフラットベッド上に設定されたプリンタを模式的に示す平面図である。
図8】主走査方向にスライドする方式のテスト印刷ステージの構成を模式的に示す平面図である。
図9】副走査方向にスライドする方式のテスト印刷ステージの構成を模式的に示す平面図である。
図10】支持機構に着脱される方式のテスト印刷ステージの一例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、いくつかの実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0010】
[インクジェットプリンタの構成]
図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタと呼ぶ)10を示す斜視図である。以下の説明では、特に断らない限り、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。また、以下では、左右方向のことを主走査方向Yとも呼ぶ。前後方向のことを副走査方向Xとも呼ぶ。上下方向は、符号Zでも表す。主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zは、ここでは、互いに直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0011】
本実施形態では、プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。本実施形態において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。
【0012】
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成されたケース11を備えている。ケース11の正面側には、開口部11aが設けられている。開口部11aには、上下方向に開閉するカバー12が設けられている。カバー12は、窓部12aを備えている。窓部12aは、透明な材料、例えば透明のアクリル板によって形成されている。ユーザーは、窓部12aを通じてケース11の内部を視認することができる。図2は、カバー12を開けた状態のプリンタ10を示す正面図である。図2に示すように、ケース11の内部空間には、フラットベッド20と、ベッド移動装置25と、キャリッジ30と、記録ヘッド35と、光照射装置40と、キャリッジ移動装置50と、テスト印刷ステージ60と、が収容されている。
【0013】
フラットベッド20は、被印刷物5を支持する支持台の一例である。本実施形態に係るプリンタ10は、いわゆる、フラットベッドタイプのプリンタである。フラットベッド20は、ケース11の内部空間において、左右方向のほぼ中央に配置されている。フラットベッド20は、平板状の部材である。フラットベッド20は、略水平に設置されている。図示は省略するが、フラットベッド20には、被印刷物5などを固定するのに利用する貫通孔が複数形成されていてもよい。
【0014】
被印刷物5の形状は特に限定されず、平板状の他、様々な立体形状を有していてもよい。また、被印刷物5の材質も特に限定されず、被印刷物5は、例えば、木、金属、ガラス、紙、布などであってもよい。ここでは、フラットベッド20上には、複数の被印刷物5を保持する治具6が載置されている。治具6は、フラットベッド20に対して位置決めされた上で、フラットベッド20に固定されていてもよい。治具6は、例えば、フラットベッド20の貫通孔に挿通されたボルトと、ボルトに締結されたナットとによって、フラットベッド20に固定されてもよい。治具6の上面および被印刷物5の上面は、フラットベッド20の上面よりも上方に位置している。
【0015】
ベッド移動装置25は、フラットベッド20を上下方向Zおよび副走査方向Xに移動させる装置である。ベッド移動装置25は、フラットベッド20の下方に配置されている。フラットベッド20は、ベッド移動装置25によって下方から支持されている。ベッド移動装置25は、上下方向移動装置25Zと、副走査方向移動装置25Xとを備えている。上下方向移動装置25Zは、フラットベッド20を支持して、上方および下方に移動させる。上下方向Zは、ここでは、略水平に設けられた平板状のフラットベッド20に略直交する方向である。図2に実線で示すフラットベッド20は、上下方向移動装置25Zによる可動範囲のうち下方側のエンド位置E1に位置したフラットベッド20を示している。図2に二点鎖線で示すフラットベッド20は、上下方向移動装置25Zによる可動範囲のうち上方側のエンド位置E2に位置したフラットベッド20を示している。
【0016】
副走査方向移動装置25Xは、上下方向移動装置25Zを支持して副走査方向Xに移動させる。図3は、プリンタ10の平面図である。ただし、図3では、テスト印刷ステージ60(詳しくは後述)の上方の部材を取り外した状態のプリンタ10を図示している。図3に実線で示すフラットベッド20は、副走査方向移動装置25X(図2参照)による可動範囲のうち前方側のエンド位置E3に位置したフラットベッド20を示している。図3に二点鎖線で示すフラットベッド20は、副走査方向移動装置25Xによる可動範囲のうち後方側のエンド位置E4に位置したフラットベッド20を示している。フラットベッド20の副走査方向Xの可動範囲の前端(すなわち、前方側のエンド位置E3におけるフラットベッド20の前端)と後端(すなわち、後方側のエンド位置E4におけるフラットベッド20の後端)との中央付近には、仕切板13が設けられている。仕切板13は、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びている。仕切板13には、フラットベッド20が通り抜けるための切欠き13aが形成されている。
【0017】
ベッド移動装置25の構成は、特に限定されない。上下方向移動装置25Zは、例えば、ボールねじ機構と駆動モータとを備えていてもよい。副走査方向移動装置25Xは、例えば、ガイドレールと、ベルトと、駆動モータと、を備えていてもよい。ただし、ベッド移動装置25の構成はこれには限定されず、例えば、上下方向移動装置25Zおよび副走査方向移動装置25Xは、ともにボールねじ機構を備えていてもよい。
【0018】
図2に示すように、キャリッジ30は、フラットベッド20の上方に設けられている。キャリッジ30には、記録ヘッド35および光照射装置40が搭載されている。記録ヘッド35および光照射装置40は、フラットベッド20よりも上方に設けられている。記録ヘッド35は、フラットベッド20上の被印刷物5に向かってインクを吐出する。記録ヘッド35は、キャリッジ30の下面に設けられている。記録ヘッド35は、下方に向かってインクを吐出する。これにより、フラットベッド20上に載置された被印刷物5、または、テスト印刷ステージ60上に載置されたテスト印刷用ワーク7(後述)にインクを着弾させることができる。記録ヘッド35は、複数のインクヘッド36を備えている。複数のインクヘッド36は、それぞれ、副走査方向Xに延びている。複数のインクヘッド36は、主走査方向Yに並んで配置されている。各インクヘッド36の下面は、図示しない多数のノズルが形成されたノズル面を構成している。各ノズルからは、下方に向かってインクが吐出される。
【0019】
記録ヘッド35には、複数のインクカートリッジ45が接続されている。複数のインクカートリッジ45は、カートリッジ収容部46に装着される。図3に示すように、カートリッジ収容部46は、ここでは、フラットベッド20の左方かつキャリッジ30の後方に設けられている。記録ヘッド35とインクカートリッジ45とは、図示しないインク流路によって接続されている。記録ヘッド35から吐出されるインクは、ここでは、いずれも光硬化性のインクである。光硬化性インクは、ここでは、紫外線を照射されると硬化する紫外線硬化型のインクである。光硬化性インクの成分、特性等は特に限定されない。記録ヘッド35から吐出されるインクは、例えば、CMYKのプロセスカラーインクや、クリアインク、ホワイトインク等の特色インクである。だだし、記録ヘッド35から吐出されるインクの色も特に限定されない。
【0020】
光照射装置40は、記録ヘッド35から吐出されるインクを硬化させる光を下方に向かって照射する。これにより、フラットベッド20上の被印刷物5に着弾したインク、または、テスト印刷ステージ60上のテスト印刷用ワーク7に着弾したインクを硬化させることができる。光照射装置40は、例えば、紫外線硬化インクを硬化させる紫外線を生成するUVLEDを備えている。光照射装置40は、ここでは、キャリッジ30の左側面に配置されている。ただし、光照射装置40は、キャリッジ30の右側面または左右両側面に配置されていてもよい。
【0021】
キャリッジ移動装置50は、キャリッジ30を主走査方向Yに移動させるように構成されている。キャリッジ移動装置50は、これにより、キャリッジ30に搭載された記録ヘッド35および光照射装置40を主走査方向Yに移動させる。図2に示すように、キャリッジ移動装置50は、ガイドレール51と、ベルト52と、図示しない左右一対のプーリと、図示しないキャリッジモータと、を備えている。ガイドレール51は、仕切板13の前面に固定され、主走査方向Yに延びている。キャリッジ30は、ガイドレール51に摺動自在に係合している。キャリッジ30には、無端状のベルト52が固定されている。ベルト52は、図示しない左右のプーリに巻き掛けられている。一方のプーリにはキャリッジモータが取り付けられている。キャリッジモータが駆動するとプーリが回転し、ベルト52が走行する。それにより、キャリッジ30がガイドレール51に沿って主走査方向Yに移動する。ただし、キャリッジ移動装置50の構成は、上記に限定されない。
【0022】
図3に示すように、フラットベッド20上には、記録ヘッド35がインクを吐出することが可能な印刷可能領域A1が設定されている。図3に示すように、印刷可能領域A1は、平面視において、キャリッジ移動装置50による記録ヘッド35の移動経路とフラットベッド20とが重なる領域である。なお、フラットベッド20が副走査方向Xに移動することにより、フラットベッド20上での印刷可能領域A1の位置は移動する。印刷可能領域A1は、プリンタ10のケース11等に対しては固定された領域である。印刷可能領域A1は、ここでは、記録ヘッド35の移動経路とフラットベッド20とが重なる領域を意味するが、例えば、記録ヘッド35の移動経路とフラットベッド20とが重なる領域からフラットベッド20の周縁部を除いた領域(実質的に印刷不可能な領域を除いた領域)のことであってもよい。
【0023】
図3に示すように、フラットベッド20の左方であってカートリッジ収容部46の前方のエリアは、記録ヘッド35のメンテナンス等を行うためのメンテナンスエリアA2となっている。ガイドレール51は、キャリッジ30がメンテナンスエリアA2に移動可能なように、フラットベッド20よりも左方まで延びている。ガイドレール51は、また、キャリッジ30がフラットベッド20の主走査方向Yのほぼ全幅を移動可能なように、フラットベッド20の右方まで延びている。キャリッジ移動装置50は、ガイドレール51に沿って、フラットベッド20の主走査方向Yのほぼ全幅とメンテナンスエリアA2とにキャリッジ30を移動させることが可能に構成されている。
【0024】
テスト印刷ステージ60は、記録ヘッド35の状態を確認するテスト印刷を行うためのステージである。テスト印刷ステージ60は、テスト印刷用ワーク7を支持可能に構成されている。テスト印刷用ワーク7は、例えば、シート状の印刷媒体である。テスト印刷用ワーク7は、好ましくは、被印刷物5と同じ材質の媒体である。ただし、テスト印刷用ワーク7の形状、材質等は特に限定されない。テスト印刷ステージ60は、回動機構70によって、水平面に沿って回動可能に支持されている。テスト印刷ステージ60は、テスト印刷を行わないときには、図3に示す退避位置P2(二点鎖線で示す)に退避されている。テスト印刷ステージ60は、テスト印刷を行う前に水平面に沿って回動され、図3のテスト印刷位置P1(実線で示す)に引き出される。テスト印刷ステージ60および回動機構70の詳細については後述する。
【0025】
制御装置80(図2参照)は、ベッド移動装置25の上下方向移動装置25Zおよび副走査方向移動装置25Xと、記録ヘッド35と、光照射装置40と、キャリッジ移動装置50と、に接続され、それらの動作を制御している。制御装置80は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。なお、制御装置80は必ずしもプリンタ10の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ10の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。制御装置80の構成は特に限定されない。
【0026】
本実施形態では、制御装置80は、テスト印刷を行うモード(以下、テスト印刷モード)をユーザーが選択可能なように構成された処理部と、各部を制御してテスト印刷を実行する処理部と、を備えている。テスト印刷において、プリンタ10は、テスト印刷位置P1に引き出されたテスト印刷ステージ60上のテスト印刷用ワーク7に、所定のテストチャートを印刷する。テストチャートの画像は特に限定されないが、記録ヘッド35の各ノズルからのインクの吐出の有無を個別に確認できるように構成されていてもよい。テストチャートでは、各ノズルからのインクの吐出の有無が確認しやすいよう、各ノズルからのインクのインクドットを主走査方向Yに並べて配置してもよい。その場合、記録ヘッド35は、主走査方向Yに移動されながらインクを吐出する。
【0027】
制御装置80は、さらに、後述するクリーニングキット90(図5参照)による記録ヘッド35のクリーニングを行うモード(以下、クリーニングモード)をユーザーが選択可能なように構成された処理部と、各部を制御して記録ヘッド35のクリーニングを実行する処理部と、を備えている。クリーニングキット90および記録ヘッド35のクリーニングの詳細については後述する。
【0028】
[テスト印刷ステージの構成]
以下では、本実施形態に係るテスト印刷ステージ60について詳しく説明する。図4は、テスト印刷ステージ60と回動機構70とを模式的に示す斜視図である。図4では、テスト印刷ステージ60および回動機構70の周囲の一部の部材の図示を省略している。図4に示すように、テスト印刷ステージ60は、平板状の部材であり、略水平に設けられている。テスト印刷ステージ60の上面は、テスト印刷用ワーク7を載置する載置面61となっている。載置面61には、テスト印刷用ワーク7を固定する機構が設けられていてもよい。載置面61は、平面視において記録ヘッド35よりも大きいことが好ましい。ただし、テスト印刷ステージ60の形状、大きさ等は特に限定されない。
【0029】
回動機構70は、テスト印刷ステージ60を水平面に沿って回動可能に支持している。本実施形態では、回動機構70は、回動軸71と固定部材72とを備えている。回動軸71は、上下方向Zに延びている。回動機構70は、テスト印刷ステージ60を回動軸71周りに回動させることが可能に構成されている。回動機構70は、テスト印刷ステージ60を、前側のテスト印刷位置P1と、テスト印刷位置P1よりも後方の退避位置P2とに回動させることが可能である。ただし、退避位置P2は、テスト印刷位置P1よりも後方に限定されるわけではない。図3に示すように、回動軸71は、仕切板13の前方であってフラットベッド20の左方に設けられている。回動機構70は、テスト印刷ステージ60を、回動軸71周りに回動可能に支持している。図4に示すように、テスト印刷ステージ60の1つの隅の付近には、回動軸71が挿通される挿通孔62が形成されている。テスト印刷ステージ60は、仕切板13に設けられたフラットベッド20を通すための切欠き13aを通って、図3のテスト印刷位置P1と退避位置P2との間を回動できる。切欠き13aは、テスト印刷ステージ60の形状、大きさ、または回動方向によっては、なくてもよい。例えば、テスト印刷ステージ60の回動操作の操作性を向上させるために、退避位置P2をテスト印刷位置P1よりも前方に設定した場合には、テスト印刷ステージ60は、仕切板13と干渉しない。その場合、切欠き13aは不要である。挿通孔62は、テスト印刷ステージ60を上下方向Zに貫通している。貫通した挿通孔62により、テスト印刷ステージ60は、回動軸71に沿って上下方向Zに移動可能である。
【0030】
固定部材72は、回動および上下移動可能なテスト印刷ステージ60を回動軸71に固定する部材である。固定部材72を緩めることにより、テスト印刷ステージ60は、回動軸71に対して回動すること、および上下方向Zにスライドすることが可能となる。固定部材72を締めることにより、テスト印刷ステージ60は、回動軸71に固定される。固定部材72は、好適には、テスト印刷ステージ60をテスト印刷位置P1、退避位置P2、および、テスト印刷位置P1よりも下方のクリーニング位置P3(後述、図4参照)の3位置のうちのいずれかに位置決めした上で、テスト印刷ステージ60を固定できるように構成されているとよい。ただし、固定部材72は、テスト印刷位置P1、退避位置P2、およびクリーニング位置P3を含む任意の位置にテスト印刷ステージ60を固定できてもよい。固定部材72の構成は特に限定されない。固定部材72は、例えば、テスト印刷ステージ60に設けられたネジ孔に噛み合わされるネジを有していてもよい。その場合、回動軸71には、ネジが当てつけられる面が形成されていてもよい。固定部材72は、例えば、プランジャ(例えば、スプリングによってケース外部に突出するとともに、押されるとスプリングが縮んでケース内部に退避するボールを備える)を有し、テスト印刷ステージ60に取り付けられていてもよい。その場合、回動軸71には、ボールの先端部が挿入される凹部が形成されていてもよい。
【0031】
[テスト印刷ステージの位置]
本実施形態では、テスト印刷ステージ60は、少なくとも、テスト印刷位置P1、退避位置P2、およびクリーニング位置P3の3つの位置の間で移動させることが可能に構成されている。図3に示すように、テスト印刷位置P1は、平面視において、少なくともテスト印刷ステージ60の一部がキャリッジ移動装置50による記録ヘッド35の移動経路と重なるようなテスト印刷ステージ60の位置である。かつ、テスト印刷位置P1は、平面視において、テスト印刷ステージ60の少なくとも一部がフラットベッド20と重なるような位置である。テスト印刷位置P1では、テスト印刷ステージ60は、記録ヘッド35の移動経路のうちフラットベッド20上の部分、すなわち、プリンタ10の印刷可能領域A1と平面視において重なっている。ここで、「テスト印刷ステージ60の少なくとも一部が平面視においてフラットベッド20と重なる」と言うときのフラットベッド20の位置は、その上に載置された被印刷物5に印刷を行い得るようなフラットベッド20の位置を意味する。上記の意味におけるフラットベッド20の位置は、載置された被印刷物5に印刷を行い得ないような位置を含まなくてもよい。
【0032】
図2に示すように、テスト印刷位置P1は、記録ヘッド35よりも下方かつフラットベッド20よりも上方に設定されている。本明細書では、「テスト印刷ステージ60がフラットベッド20よりも上方に位置する」とは、フラットベッド20がとり得る上下方向Zの位置のうちの少なくとも一部では、テスト印刷ステージ60がフラットベッド20よりも上方に位置することを意味する。テスト印刷位置P1は、少なくとも、フラットベッド20の下方側のエンド位置E1よりも上方に設定されている。そのため、フラットベッド20を下方のエンド位置E1に位置付けた状態では、テスト印刷ステージ60をテスト印刷位置P1に移動させることができる。テスト印刷位置P1では、テスト印刷ステージ60は、フラットベッド20と記録ヘッド35の移動経路との間に位置する。テスト印刷位置P1が上記のように設定されることにより、テスト印刷ステージ60に支持させたテスト印刷用ワーク7に記録ヘッド35が吐出するインクを着弾させることができる。テスト印刷位置P1におけるテスト印刷ステージ60と記録ヘッド35との間の上下方向Zの距離は、テスト印刷に好適な距離、例えば、0.5mm以上2mm以下の距離に設定されている。ただし、テスト印刷位置P1におけるテスト印刷ステージ60と記録ヘッド35との間の上下方向Zの距離は、特に限定されるわけではない。
【0033】
本実施形態では、テスト印刷位置P1は、挿通孔62が形成されているテスト印刷ステージ60の隅が左前方の隅となるようなテスト印刷ステージ60の回動位置である。図3に示すように、これにより、テスト印刷位置P1では、テスト印刷ステージ60の多くの部分が、平面視において、フラットベッド20と重なる。
【0034】
退避位置P2は、平面視においてテスト印刷ステージ60がフラットベッド20の外方に位置するような位置である。ここでは、退避位置P2は、挿通孔62が形成されているテスト印刷ステージ60の隅が右前方の隅となるようなテスト印刷ステージ60の回動位置である。退避位置P2とテスト印刷位置P1とは、回動軸71周りに90度ずれている。退避位置P2では、テスト印刷ステージ60の全部が、平面視において、フラットベッド20の外方に位置する。なお、ここでは、退避位置P2の上下方向Zの位置はテスト印刷位置P1と同じであるが、異なっていてもよい。
【0035】
クリーニング位置P3は、平面視においてテスト印刷位置P1と同じ位置であって、テスト印刷位置P1よりも下方の位置である。ただし、クリーニング位置P3は、平面視においてテスト印刷位置P1と同じ位置でなくてもよい。クリーニング位置P3は、平面視においてテスト印刷ステージ60の少なくとも一部が記録ヘッド35の移動経路と重なる位置であればよい。クリーニング位置P3は、好ましくは、平面視においてテスト印刷位置P1と少なくとも一部が重なる位置であるとよい。図2に示すように、クリーニング位置P3でも、テスト印刷ステージ60は、フラットベッド20の下方のエンド位置E1よりも上方に位置する。すなわち、クリーニング位置P3でも、テスト印刷ステージ60は、記録ヘッド35とフラットベッド20との間に位置する。クリーニング位置P3は、テスト印刷ステージ60上に載置したクリーニングキット90(図5参照)によって記録ヘッド35をクリーニングするためのテスト印刷ステージ60の位置である。クリーニング位置P3では、テスト印刷ステージ60に装着された状態のクリーニングキット90の払拭部94(図5参照)が記録ヘッド35に当接する。クリーニング位置P3におけるテスト印刷ステージ60の上下方向Zの位置は、テスト印刷ステージ60上に載置したクリーニングキット90の払拭部94がちょうど記録ヘッド35に当接するような位置に設定されている。
【0036】
[クリーニングキットの構成]
以下では、クリーニングキット90の一例について、簡単に説明する。図5は、一実施形態に係るクリーニングキット90の斜視図である。図5の説明では、クリーニングキット90がテスト印刷ステージ60上に載置されたときの方向を適宜使用する。図5に示すように、本実施形態に係るクリーニングキット90は、プレート91と、複数の脚92と、弾性部93と、払拭部94と、押さえ部材95と、を備えている。プレート91は、平板状に構成されている。複数の脚92は、プレート91を支持している。複数の脚92は、それぞれ、プレート91から下方に向かって延びている。弾性部93および押さえ部材95は、プレート91の上面に設けられている。図5に示すように、弾性部93は、弾性を有し上方に向かって凸した複数の凸部93aを備えている。複数の凸部93aは、主走査方向Yに並んで設けられている。
【0037】
弾性部93の上方には、不織布94aが被せられる。不織布94aは、記録ヘッド35を拭うことが可能な払拭部94を構成する。不織布94aは、インクを吸収する素材で形成されている。不織布94aは、適時に新しいものに交換される消耗品である。押さえ部材95は、不織布94aを押さえて、弾性部93上に固定する。押さえ部材95は、ここでは、左側の端部を軸として上下方向に回動可能に構成されている。押さえ部材95を降ろすことにより、不織布94aが固定される。押さえ部材95を上げることにより、不織布94aが開放される。押さえ部材95は、弾性部93が通過可能な貫通孔95aを有している。不織布94aが被せられた弾性部93は、貫通孔95aを通って押さえ部材95よりも上方に突出する。
【0038】
ただし、上記したクリーニングキット90の構成は一例に過ぎず、これには限定されない。クリーニングキットは、記録ヘッド35を拭うことが可能な払拭部を有するとともに、テスト印刷ステージ60に着脱可能に構成されていれば足り、それ以上限定されない。なお、クリーニングキットのテスト印刷ステージ60への「装着」には、移動不能に固定することの他、単にテスト印刷ステージ60に載置することも含まれる。
【0039】
[テスト印刷のプロセス]
以下では、テスト印刷のプロセスの一例について説明する。テスト印刷を行っていないとき、ユーザーは、テスト印刷ステージ60を退避位置P2に退避させている(図3参照)。このとき、テスト印刷ステージ60は、副走査方向移動装置25Xによる可動範囲を含めてフラットベッド20の外方に位置している。そのため、テスト印刷ステージ60は、印刷その他のフラットベッド20上で行われる作業を妨げない。かかる状態では、ユーザーは、被印刷物5に印刷を行うために、フラットベッド20上に被印刷物5の治具6を装着しておくことができる。
【0040】
テスト印刷を行う場合、ユーザーは、まず、フラットベッド20を下方のエンド位置E1に移動させる。これにより、テスト印刷ステージ60をテスト印刷位置P1に引き出すことが可能となる。フラットベッド20を下方のエンド位置E1に移動させないと、テスト印刷ステージ60を引き出すときに、テスト印刷ステージ60とフラットベッド20、または、テスト印刷ステージ60と治具6とが干渉する可能性がある。治具6は、フラットベッド20が下方のエンド位置E1に位置している状態において、テスト印刷位置P1にあるテスト印刷ステージ60よりも下方に位置するような高さに構成されている。ただし、治具6の高さによっては、フラットベッド20が下方のエンド位置E1よりも上方にある状態で、テスト印刷ステージ60をテスト印刷位置P1に引き出してもよい。なお、治具6の上下方向Zの高さは、フラットベッド20が下方のエンド位置E1に位置している状態において、クリーニング位置P3にあるテスト印刷ステージ60よりも治具6が下方に位置するような高さにも設定されている。
【0041】
ユーザーは、続いて、テスト印刷ステージ60を回動軸71周りに回動させて、テスト印刷位置P1に移動させる。これにより、テスト印刷ステージ60は、フラットベッド20と記録ヘッド35の移動経路との間に位置する。この後、テスト印刷ステージ60には、テスト印刷用ワーク7が載置される。続いて、テスト印刷を開始すると、テスト印刷ステージ60上のテスト印刷用ワーク7にテストチャートが印刷される。
【0042】
テストチャートの印刷が終了すると、ユーザーは、テスト印刷用ワーク7を回収する。さらに、テスト印刷ステージ60は、回動軸71周りに回動され、退避位置P2に戻される。
【0043】
プリンタ10は、例えば、テスト印刷ステージ60がテスト印刷位置P1にあることを検出するセンサ、または、テスト印刷ステージ60が退避位置P2にあることを検出するセンサを備えていてもよい。制御装置80は、例えば、テスト印刷ステージ60がテスト印刷位置P1にあることが検出されないと、テスト印刷を開始できないように設定されていてもよい。制御装置80は、また、テスト印刷ステージ60が退避位置P2にあることが検出されないと、フラットベッド20を上下方向Zに移動できないように設定されていてもよい。
【0044】
[記録ヘッドのクリーニングのプロセス]
例えば、テスト印刷の結果得られたテストチャートに基づき、記録ヘッド35をクリーニングすることがユーザーによって決定された場合、引き続いて記録ヘッド35のクリーニングが行われてもよい。その場合には、まず、平面視においてクリーニング位置P3(本実施形態では、テスト印刷位置P1と同じ)と重ならない位置に記録ヘッド35を移動させる。これにより、クリーニング位置P3におけるテスト印刷ステージ60の上方が空き、クリーニングキット90をテスト印刷ステージ60上に装着することが可能となる。ユーザーは、この後、テスト印刷ステージ60をクリーニング位置P3に移動させる。テスト印刷ステージ60をクリーニング位置P3に移動させる作業は、記録ヘッド35を退避させる作業の前に行われてもよい。その後、テスト印刷ステージ60上にクリーニングキット90が装着される。
【0045】
図6は、クリーニングキット90がテスト印刷ステージ60に装着された状態における、テスト印刷ステージ60、クリーニングキット90、および記録ヘッド35を模式的に示す正面図である。図6に示すように、クリーニングキット90がテスト印刷ステージ60に装着された状態では、クリーニングキット90の払拭部94は、記録ヘッド35に当接する。記録ヘッド35とクリーニング位置P3におけるテスト印刷ステージ60との間の上下方向Zの距離は、テスト印刷ステージ60からの払拭部94の高さよりも僅かに小さく設定されている。
【0046】
続く記録ヘッド35のクリーニングでは、キャリッジ30を主走査方向Yに移動させることにより、記録ヘッド35を主走査方向Yに移動させる。これによって記録ヘッド35とクリーニングキット90とが相対的に動き、払拭部94により記録ヘッド35が拭われる。
【0047】
記録ヘッド35をクリーニングするタイミングは、特に限定されない。記録ヘッド35のクリーニングは、例えば、定期的に行われてもよい。プリンタ10は、例えば、テスト印刷ステージ60がクリーニング位置P3にあることを検出するセンサを備えていてもよい。制御装置80は、例えば、テスト印刷ステージ60がクリーニング位置P3にあることが検出されないと、記録ヘッド35のクリーニングを開始できないように設定されていてもよい。
【0048】
[実施形態の作用効果]
上記したように、本実施形態に係るプリンタ10は、テスト印刷用ワーク7を支持可能なテスト印刷ステージ60を備えており、テスト印刷ステージ60は、フラットベッド20よりも上方であって平面視において少なくとも一部がフラットベッド20と重なるテスト印刷位置P1と、平面視においてフラットベッド20の外方の退避位置P2と、の間を移動可能なように構成されている。かかる構成によれば、テスト印刷ステージ60に支持させたテスト印刷用ワーク7にテスト印刷を行うことが可能であり、かつ、テスト印刷の前にフラットベッド20上の治具6を撤去することが不要である。治具6は、テスト印刷位置P1にあるテスト印刷ステージ60よりも下方に位置するように構成されている。
【0049】
従来のインクジェットプリンタでは、テスト印刷は、被印刷物の支持台(例えば、フラットベッド)よって支持されたテスト印刷用ワークに対して行われていた。そのため、テスト印刷を行う前には、支持台上に載置されている部材、例えば被印刷物や被印刷物の保持治具を支持台上から撤去しなければならなかった。かかる撤去作業、そしてテスト印刷後の復帰作業には、時間およびユーザーの労力を要していた。それに対して、本実施形態に係るプリンタ10によれば、フラットベッド20に支持されている部材、例えば治具6をフラットベッド20上から撤去しなくてもよいため、テスト印刷を容易に実施することができる。
【0050】
本実施形態に係るプリンタ10は、テスト印刷ステージ60をテスト印刷位置P1と退避位置P2との間で移動させる機構として、回動機構70を備えている。回動機構70は、上下方向Zに延びる回動軸71を有し、テスト印刷ステージ60を回動軸71周りに回動させることが可能である。回動機構70は、テスト印刷ステージ60を、回動軸71周りのテスト印刷位置P1と退避位置P2とに回動させることができる。かかる構成によれば、テスト印刷位置P1と退避位置P2との間でのテスト印刷ステージ60の移動を簡易に実現可能である。
【0051】
なお、本実施形態では、回動軸71周りのテスト印刷ステージ60の回動はユーザーの手作業によって行われるが、プリンタ10は、テスト印刷ステージ60を回動軸71周りに回動させる駆動装置を備えていてもよい。駆動装置は、例えば、電動モータやロータリーアクチュエータであってもよいが、特に限定されない。制御装置80は、テスト印刷時またはテスト印刷終了時に駆動装置を制御して、自動でテスト印刷ステージ60を回動させるように構成されていてもよい。
【0052】
本実施形態では、テスト印刷ステージ60は、平面視において少なくとも一部がテスト印刷位置P1と重なるとともにテスト印刷位置P1とは上下方向Zの位置が異なり、かつ、クリーニングキット90がテスト印刷ステージ60に装着された状態で払拭部94が記録ヘッド35に当接するようなクリーニング位置P3に移動可能に構成されている。かかる構成によれば、クリーニング位置P3に移動させたテスト印刷ステージ60にクリーニングキット90を装着することによって、クリーニングキット90の払拭部94により記録ヘッド35を払拭することができる。かつ、その際、フラットベッド20上の部材(例えば、被印刷物5や治具6)をフラットベッド20上から撤去する必要がない。
【0053】
[他の実施形態]
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、上記の実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態では、テスト印刷ステージ60の退避位置P2は、平面視においてフラットベッド20の外方に設定されていた。しかし、退避位置P2は、平面視においてフラットベッド20の内方に設定されていてもよい。図7は、テスト印刷ステージ60の退避位置P2がフラットベッド20上に設定されたプリンタ10を模式的に示す平面図である。図7に示すように、この実施形態では、回動軸71は、テスト印刷位置P1にあるテスト印刷ステージ60の左後方の隅付近を支持している。このように、退避位置P2は、平面視において、プリンタ10の印刷可能領域A1の外方であって、テスト印刷ステージ60の少なくとも一部がフラットベッド20に重なる位置に設定されていてもよい。この実施形態によれば、平面視におけるテスト印刷ステージ60の回動軌道がフラットベッド20と重なる。そのため、図7に示すように(図3も参照)、プリンタ10のサイズ(ここでは、主走査方向Yの長さ)をコンパクトにすることができる。
【0054】
上記した実施形態では、テスト印刷ステージ60は、水平面に沿って回動されることにより、テスト印刷位置P1と退避位置P2との間を移動した。ただし、テスト印刷ステージ60の移動方式は、回動方式には限定されない。テスト印刷ステージ60は、例えば、水平方向にスライドされることによって、テスト印刷位置P1と退避位置P2との間を移動してもよい。図8および図9は、スライド方式のテスト印刷ステージ60の構成を模式的に示す平面図である。そのうち図8は、テスト印刷ステージ60が主走査方向Yにスライドする方式を示している。図9は、テスト印刷ステージ60が副走査方向Xにスライドする方式を示している。図8に示すように、本実施形態では、スライド機構75は、水平面に沿った1方向、ここでは主走査方向Yに延びるガイド部材76を有している。スライド機構75によれば、テスト印刷ステージ60を、ガイド部材76に沿ってテスト印刷位置P1と退避位置P2とに移動させることが可能である。図8に示すように、ここでは、テスト印刷ステージ60は、退避位置P2において、フラットベッド20よりも左方に退避する。ただし、テスト印刷ステージ60のスライド方向は、上下方向Zに交差する方向であればよく、主走査方向Yには限定されない。テスト印刷ステージ60のスライド方向は、例えば、図9に示すように、副走査方向Xでもよい。テスト印刷ステージ60のスライド方向は、例えば、水平面に沿った方向以外の方向であってもよい。図9の場合、退避位置P2は、平面視において、プリンタ10の印刷可能領域A1の外方であって、テスト印刷ステージ60の少なくとも一部がフラットベッド20に重なる位置に設定されている。図9のような場合にも、図7と同様に、プリンタ10のサイズ(ここでは、主走査方向Yの長さ)をコンパクトにすることができる。
【0055】
テスト印刷ステージ60のスライドは、ユーザーの手作業によって行われてもよく、例えば電動モータ等の駆動装置によって行われてもよい。制御装置80は、テスト印刷時またはテスト印刷終了時に駆動装置を制御して、自動でテスト印刷ステージ60をスライドさせるように構成されていてもよい。駆動装置は、例えば、テスト印刷ステージ60に固定され、駆動モータによって走行されるベルトを備えていてもよい。駆動装置は、例えば、テスト印刷ステージ60に固定されたナットと、ナットに噛み合うとともに駆動モータによって回転されるボールねじと、を備えていてもよい。
【0056】
また、テスト印刷ステージ60は、テスト印刷ステージ60を支持する支持機構に着脱自在に構成されていてもよい。テスト印刷ステージ60は、支持機構に装着されることによってテスト印刷位置P1に配置され、支持機構から取り外されることによって退避位置P2に移動されてもよい。図10は、支持機構に着脱される方式のテスト印刷ステージ60の一例を模式的に示す平面図である。図10に示すように、この実施形態では、テスト印刷ステージ60は、支持機構13bに係合されるフック63を備えている。支持機構13bは、ここでは、仕切板13に形成されたフック63の係合孔である。ユーザーは、フック63を支持機構13bの係合孔に引っ掛けることによって、テスト印刷ステージ60をテスト印刷位置P1に移動させることができる。ユーザーは、フック63を支持機構13bの係合孔から外すことによって、テスト印刷ステージ60をテスト印刷位置P1以外の場所、例えば、プリンタ10の外部に退避させることができる。ただし、支持機構の構成は、特に限定されない。図10に示すように、テスト印刷ステージ60のテスト印刷位置P1は、平面視において少なくともテスト印刷ステージ60の一部が記録ヘッド35の移動経路と重なり、かつ、記録ヘッド35よりも下方の位置に設定されていてもよい。テスト印刷位置P1は、平面視においてフラットベッド20と重ならない位置であってもよい。この場合、テスト印刷位置P1の上下方向Zの位置は、フラットベッド20よりも下方であってもよい。
【0057】
また、上記した実施形態では、テスト印刷ステージ60は、平面視においてフラットベッド20と重なるテスト印刷位置P1とフラットベッド20外の退避位置P2との間を移動するように構成されていた。しかし、テスト印刷ステージ60は、移動不能に構成されていてもよい。テスト印刷ステージ60は、平面視においてフラットベッド20の外方であって、少なくとも一部が記録ヘッド35の移動経路と重なり、かつ、記録ヘッド35よりも下方の位置に予め配置されていてもよい。テスト印刷ステージ60は、例えば、図3のメンテナンスエリアA2に固定的に設けられていてもよい。テスト印刷位置が平面視においてフラットベッド20の外方に設けられている場合であっても、テスト印刷ステージ60は、テスト印刷位置とその他の位置との間を移動するように構成されていてもよい。
【0058】
上記したプリンタ10の構成は1つの例示に過ぎず、インクジェットプリンタの構成は、特に言及がない限り、限定されない。
【符号の説明】
【0059】
5 被印刷物
6 治具
7 テスト印刷用ワーク
10 インクジェットプリンタ
20 フラットベッド(支持台)
35 記録ヘッド
60 テスト印刷ステージ
70 回動機構
71 回動軸
75 スライド機構
76 ガイド部材
90 クリーニングキット(クリーニング部材)
A1 印刷可能領域
P1 テスト印刷位置(第1位置)
P2 退避位置(第2位置)
P3 クリーニング位置(第3位置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10