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<図1>
  • 特開-サーマルプリンタ及び印字方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002157
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】サーマルプリンタ及び印字方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/32 20060101AFI20221227BHJP
   B41J 2/355 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B41J2/32 Z
B41J2/355 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103207
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】504123421
【氏名又は名称】日本プリメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100188156
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 義時
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小泉 湧
(72)【発明者】
【氏名】小林 巧
(72)【発明者】
【氏名】羽田 将基
【テーマコード(参考)】
2C065
2C066
【Fターム(参考)】
2C065AA01
2C065AB01
2C065CZ06
2C065CZ13
2C066AA18
2C066AC01
2C066DA04
2C066DA06
(57)【要約】
【課題】感熱紙を適切に搬送する。
【解決手段】サーマルプリンタ1は、発熱素子22を有し、感熱紙Sの被印字部に印字を行うサーマルヘッド20と、サーマルヘッド20との間で感熱紙Sを挟持し感熱紙Sを搬送するプラテンローラ30と、プラテンローラ30及びサーマルヘッド20の動作を制御する制御部54を備える。制御部54は、発熱素子22に通電パルスとする第1通電量を供給してサーマルヘッド20を予備加熱し、感熱紙Sを搬送路における一方向へ搬送する第1搬送を行い、感熱紙Sの被印字部を印字位置に戻すように、感熱紙Sを一方向の逆方向へ搬送する戻し搬送を行い、発熱素子22に第1通電量よりも多い通電パルスとする第2通電量を供給して発熱素子22を本加熱させて感熱紙Sに印字を行わせるように制御する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電を受けて発熱する発熱素子を有し、感熱紙の印字位置に位置する被印字部に印字を行うサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドとの間で前記感熱紙を挟持し、前記感熱紙を搬送するプラテンローラと、
前記プラテンローラ及び前記サーマルヘッドの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記発熱素子に通電パルスとする第1通電量を供給して前記サーマルヘッドを予備加熱し、
前記プラテンローラと前記サーマルヘッドに挟持され前記被印字部が前記印字位置に位置する前記感熱紙を、搬送路における一方向へ搬送する第1搬送を行い、
前記感熱紙の前記被印字部を前記印字位置に戻すように、前記感熱紙を前記一方向の逆方向へ搬送する戻し搬送を行い、
前記発熱素子に前記第1通電量よりも多い通電パルスとする第2通電量を供給して前記サーマルヘッドを本加熱させて、前記感熱紙に印字を行わせるように制御する、
サーマルプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1搬送において、前記サーマルヘッドを予備加熱させながら前記プラテンローラの回転を正回転して、前記被印字部が前記印字位置より搬送方向下流側に位置するように前記感熱紙を搬送方向下流側へ搬送し、
前記戻し搬送において、前記プラテンローラの回転を逆回転して、前記被印字部が前記印字位置より搬送方向上流側に位置するように前記感熱紙を搬送方向上流側へ搬送する第2搬送を行った後に、前記プラテンローラの回転を正回転して、前記被印字部が前記印字位置に戻るように前記感熱紙を搬送方向下流側へ搬送する第3搬送を行う、
請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1搬送において、前記サーマルヘッドを予備加熱させながら前記プラテンローラの回転を逆回転して、前記被印字部が前記印字位置より搬送方向上流側に位置するように前記感熱紙を搬送方向上流側へ搬送し、
前記戻し搬送において、前記プラテンローラの回転を正回転して、前記被印字部が前記印字位置に戻るように前記感熱紙を搬送方向下流側へ搬送する、
請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記プラテンローラにギアを介して動力を伝達するモータを更に備え、
前記制御部は、前記第2搬送において、前記第1搬送での前記感熱紙の第1搬送量よりも大きい第2搬送量に、前記モータの逆回転に起因した前記ギアの噛み合いにおけるバックラッシュ相当分の搬送量を加えた分だけ、前記感熱紙を搬送する、
請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記制御部は、前記第3搬送において、前記第2搬送量から前記第1搬送量を引いた第3搬送量に、前記モータの逆回転に起因した前記ギアの噛み合いにおけるバックラッシュ相当分の搬送量を加えた分だけ、前記感熱紙を搬送する、
請求項4に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記制御部は、
前記発熱素子の予備加熱を開始させてから所定時間が経過すると、前記第1搬送を開始させ、
少なくとも前記第1搬送が終了するまでは前記予備加熱を継続させる、
請求項1から5のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項7】
前記サーマルヘッドは、発熱した前記発熱素子によって前記感熱紙の発色剤を発色させることで印字を行い、
前記制御部は、前記発色剤が発色しない前記第1通電量を前記発熱素子に供給して、前記サーマルヘッドを予備加熱させる、
請求項1から6のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項8】
前記制御部は、所定のパルス幅を有する前記通電パルスを、パルス間隔毎に前記発熱素子に供給し、
前記パルス幅は、前記パルス間隔よりも小さい、
請求項1から7のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項9】
サーマルヘッドとプラテンローラの間に挟持された感熱紙の印字位置に位置する被印字部に印字を行う印字方法であって、
前記サーマルヘッドの発熱素子に通電パルスとする第1通電量を供給して前記サーマルヘッドを予備加熱するステップと、
前記サーマルヘッドを予備加熱しながら、前記プラテンローラと前記サーマルヘッドに挟持され前記被印字部が前記印字位置に位置する前記感熱紙を搬送路における一方向へ搬送する第1搬送を行うステップと、
前記感熱紙の前記被印字部を前記印字位置に戻すように、前記感熱紙を前記一方向の逆方向へ搬送する戻し搬送を行うステップと、
前記発熱素子に前記第1通電量よりも多い通電パルスとする第2通電量を供給して前記サーマルヘッドを本加熱させて、前前記感熱紙に印字を行わせるステップと、
を有する、印字方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタ及び印字方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱紙に印字を行うサーマルプリンタが利用されている。サーマルプリンタは、発熱素子が発熱することで感熱紙に印字を行うサーマルヘッドと、感熱紙を搬送すると共にサーマルヘッドとの間で感熱紙を挟持するプラテンローラとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-151010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のサーマルプリンタにおいては、サーマルヘッドによる印字が終了した後も、感熱紙がサーマルヘッドとプラテンローラに挟持された状態が維持される。このため、前回の印字後に放置されていると、感熱紙がサーマルヘッドにくっついてしまい、次回の印字の際に感熱紙を適切に搬送できないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、感熱紙を適切に搬送することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、通電を受けて発熱する発熱素子を有し、感熱紙の印字位置に位置する被印字部に印字を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドとの間で前記感熱紙を挟持し、前記感熱紙を搬送するプラテンローラと、前記プラテンローラ及び前記サーマルヘッドの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記発熱素子に通電パルスとする第1通電量を供給して前記サーマルヘッドを予備加熱し、前記プラテンローラと前記サーマルヘッドに挟持され前記被印字部が前記印字位置に位置する前記感熱紙を、搬送路における一方向へ搬送する第1搬送を行い、前記感熱紙の前記被印字部を前記印字位置に戻すように、前記感熱紙を前記一方向の逆方向へ搬送する戻し搬送を行い、前記発熱素子に前記第1通電量よりも多い通電パルスとする第2通電量を供給して前記サーマルヘッドを本加熱させて、前記感熱紙に印字を行わせるように制御する、サーマルプリンタを提供する。
【0007】
また、前記制御部は、前記第1搬送において、前記サーマルヘッドを予備加熱させながら前記プラテンローラの回転を正回転して、前記被印字部が前記印字位置より搬送方向下流側に位置するように前記感熱紙を搬送方向下流側へ搬送し、前記戻し搬送において、前記プラテンローラの回転を逆回転して、前記被印字部が前記印字位置より搬送方向上流側に位置するように前記感熱紙を搬送方向上流側へ搬送する第2搬送を行った後に、前記プラテンローラの回転を正回転して、前記被印字部が前記印字位置に戻るように前記感熱紙を搬送方向下流側へ搬送する第3搬送を行うこととしてもよい。
【0008】
また、前記制御部は、前記第1搬送において、前記サーマルヘッドを予備加熱させながら前記プラテンローラの回転を逆回転して、前記被印字部が前記印字位置より搬送方向上流側に位置するように前記感熱紙を搬送方向上流側へ搬送し、前記戻し搬送において、前記プラテンローラの回転を正回転して、前記被印字部が前記印字位置に戻るように前記感熱紙を搬送方向下流側へ搬送することとしてもよい。
【0009】
また、前記プラテンローラにギアを介して動力を伝達するモータを更に備え、前記制御部は、前記第2搬送において、前記第1搬送での前記感熱紙の第1搬送量よりも大きい第2搬送量に、前記モータの逆回転に起因した前記ギアの噛み合いにおけるバックラッシュ相当分の搬送量を加えた分だけ、前記感熱紙を搬送することとしてもよい。
【0010】
また、前記制御部は、前記第3搬送において、前記第2搬送量から前記第1搬送量を引いた第3搬送量に、前記モータの逆回転に起因した前記ギアの噛み合いにおけるバックラッシュ相当分の搬送量を加えた分だけ、前記感熱紙を搬送することとしてもよい。
【0011】
また、前記制御部は、前記発熱素子の予備加熱を開始させてから所定時間が経過すると、前記第1搬送を開始させ、少なくとも前記第1搬送が終了するまでは前記予備加熱を継続させることとしてもよい。
【0012】
また、前記サーマルヘッドは、発熱した前記発熱素子によって前記感熱紙の発色剤を発色させることで印字を行い、前記制御部は、前記発色剤が発色しない前記第1通電量を前記発熱素子に供給して、前記サーマルヘッドを予備加熱させることとしてもよい。
【0013】
また、前記制御部は、所定のパルス幅を有する前記通電パルスを、パルス間隔毎に前記発熱素子に供給し、前記パルス幅は、前記パルス間隔よりも小さいこととしてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、サーマルヘッドとプラテンローラの間に挟持された感熱紙の印字位置に位置する被印字部に印字を行う印字方法であって、前記サーマルヘッドの発熱素子に通電パルスとする第1通電量を供給して前記サーマルヘッドを予備加熱するステップと、前記サーマルヘッドを予備加熱しながら、前記プラテンローラと前記サーマルヘッドに挟持され前記被印字部が前記印字位置に位置する前記感熱紙を搬送路における一方向へ搬送する第1搬送を行うステップと、前記感熱紙の前記被印字部を前記印字位置に戻すように、前記感熱紙を前記一方向の逆方向へ搬送する戻し搬送を行うステップと、前記発熱素子に前記第1通電量よりも多い通電パルスとする第2通電量を供給して前記サーマルヘッドを本加熱させて、前前記感熱紙に印字を行わせるステップと、を有する、印字方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、感熱紙を適切に搬送できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一の実施形態に係るサーマルプリンタ1の構成の一例を説明するための模式図である。
図2】サーマルヘッド20、プラテンローラ30及び感熱紙Sの関係を説明するための模式図である。
図3】予備処理の際の発熱素子22の通電状態及びプラテンローラ30の回転状態を説明するための模式図である。
図4】発熱素子22への通電パルスPの供給を説明するための模式図である。
図5】予備処理の際の感熱紙Sの搬送状態を説明するための模式図である。
図6】予備処理の際の発熱素子22の通電状態及びプラテンローラ30の回転状態を説明するための模式図である。
図7】予備処理の際の感熱紙Sの搬送状態を説明するための模式図である。
図8】サーマルプリンタ1の印字開始時の第1動作例を説明するためのフローチャートである。
図9】サーマルプリンタ1の印字開始時の第2動作例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<サーマルプリンタの構成>
一の実施形態に係るサーマルプリンタの構成について、図1図2を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、一の実施形態に係るサーマルプリンタ1の構成の一例を説明するための模式図である。図2は、サーマルヘッド20、プラテンローラ30及び感熱紙Sの関係を説明するための模式図である。
【0019】
サーマルプリンタ1は、感熱紙Sに印字を行う印字装置である。感熱紙Sの表面には、熱で発色する発色剤が塗布されており、サーマルプリンタ1は発色剤を熱で発色させることで感熱紙Sに印字を行う。サーマルプリンタ1は、図1及び図2に示すように、搬送部10と、サーマルヘッド20と、プラテンローラ30と、制御装置50を有する。
【0020】
搬送部10は、感熱紙Sを搬送する。搬送部10は、感熱紙Sが搬送される搬送路12(図2)と、感熱紙Sを搬送するローラ等を駆動するモータ14(図1)とを有する。搬送路12は、感熱紙Sの搬送をガイドするガイド部材12aを有する。モータ14は、プラテンローラ30にギアを介して動力を伝達する。感熱紙Sは、ここではロール紙である。また、感熱紙Sは厚紙であり、例えば、感熱紙Sの厚さは180μm以上である。
【0021】
サーマルヘッド20は、感熱紙Sに印字を行うデバイスである。図2に示しように、サーマルヘッド20は、通電を受けて発熱する複数の発熱素子22を有する。通電は、パルスで供給される。例えば、パルス幅は150~250μmである。複数の発熱素子22は、例えば発熱抵抗体であり、平らな基板上に所定間隔で配置されている。具体的には、発熱素子22は、感熱紙Sの搬送方向と直交する方向(別言すれば、プラテンローラ30の軸方向)に所定間隔で配置されている。
【0022】
サーマルヘッド20は、感熱紙Sの表面(発色剤が塗布されている面)に接触している。サーマルヘッド20は、発熱した発熱素子22によって感熱紙Sの発色剤を発色させることで印字を行う。サーマルヘッド20は、一列に並んだ複数の発熱素子22の中から選択的に発熱素子22を発熱させることで、感熱紙Sの所望の位置に印字を行う。
【0023】
プラテンローラ30は、搬送路においてサーマルヘッド20に対向する位置に設けられたプラテンである。プラテンローラ30は、図2に示すように、サーマルヘッド20との間で感熱紙Sを所定の押圧で挟持している。このため、サーマルヘッド20は、プラテンローラ30との間で挟持されている感熱紙Sに印字を行う。
【0024】
プラテンローラ30は、感熱紙Sを搬送する搬送ローラとしての機能も有する。すなわち、プラテンローラ30は、回転することで、感熱紙Sを紙送りする。プラテンローラ30は、ここでは図1に示すモータ14(例えば、ステッピングモータ等)によって所定のギア比を介して駆動される。プラテンローラ30は、図2に示すC1方向に正回転することで、印字が行われた感熱紙Sを搬送方向下流側へ搬送する。また、プラテンローラ30は、図2に示すC2方向に逆回転することで、感熱紙Sを搬送方向上流側にも搬送可能である。
【0025】
図示されていないが、搬送路12においてサーマルヘッド20の下流側には、感熱紙Sをカットする切断部が設けられている。切断部は、例えば固定刃及び可動刃を有し、固定刃に対して可動刃が、例えば感熱紙Sに対して垂直方向に進退移動することで感熱紙Sをカットする。
【0026】
制御装置50は、感熱紙Sへの印字を行うサーマルプリンタ1の動作を制御する。制御装置50は、図1に示すように、記憶部52と、制御部54を有する。
【0027】
記憶部52は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。記憶部52は、制御部54が実行するためのプログラムや、制御用の各種データを記憶する。例えば、記憶部52は、前回の印字からの経過時間を記憶する。経過時間は、例えばタイマー等によって計測される。
【0028】
制御部54は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)である。制御部54は、モータ14を介してプラテンローラ30及びサーマルヘッド20の動作を制御する。例えば、制御部54は、プラテンローラ30による感熱紙Sの搬送距離又は搬送時間等を制御する搬送処理と、サーマルヘッド20の発熱素子22に電力及び通電パルス等を供給する加熱処理とを行うことで、感熱紙Sに印字を行う。
【0029】
ところで、サーマルプリンタ1においては、サーマルヘッド20による印字が終了した後も、感熱紙Sがサーマルヘッド20とプラテンローラ30に挟持された状態が維持される。このため、前回の印字後に放置されていると、感熱紙S(具体的には、感熱紙Sにおいて発色剤が塗布された表面側)がサーマルヘッド20にくっついてしまい(別言すれば、貼り付いてしまい)、次回の印字の際にプラテンローラ30が感熱紙Sを適切に搬送できないおそれがある。
例えば、サーマルプリンタ1が高温多湿等の環境下に置かれた場合において、印字後に長期間放置されると感熱紙Sがサーマルヘッド20にくっつきやすい。また、感熱紙Sが厚紙である場合にも、印字後に長期間放置されるとサーマルヘッド20の端部が感熱紙Sに押圧入されてくっつきやすい。
【0030】
上記の問題を解決すべく、本実施形態の制御部54は、詳細は後述するが、感熱紙Sへの印字を開始する前に、発熱素子22に通電してサーマルヘッド20を予備加熱しながら感熱紙Sの被印字部を所定量だけ搬送路の一方向に搬送した後に、感熱紙Sの被印字部を元の印字位置に戻す予備処理を行う。これにより、感熱紙Sへの印字を開始する前に、サーマルヘッド20にくっついた感熱紙Sをサーマルヘッド20から引き離すことができ、その後の感熱紙Sの搬送を円滑に行える。以下では、図3図5を参照しながら、予備処理の詳細について説明する。
【0031】
図3は、予備処理の際の発熱素子22の通電状態及びプラテンローラ30の回転状態を説明するための模式図である。図4は、発熱素子22への通電パルスPの供給を説明するための模式図である。図5は、予備処理の際の感熱紙Sの搬送状態を説明するための模式図である。
【0032】
予備処理として、まず、制御部54は、発熱素子22に第1通電量を供給してサーマルヘッド20の予備加熱を開始する。ここではプラテンローラ30は停止しており、感熱紙Sは搬送されない。制御部54は、発色剤が発色しない第1通電量を発熱素子22に供給して、サーマルヘッド20を予備加熱させる。具体的には、制御部54は、図3に示す時刻t1~t4の間、発熱素子22に通電し、サーマルヘッド20を予備加熱させる。サーマルヘッド20を予備加熱することで、サーマルヘッド20と感熱紙Sがくっついた部分の発色剤が溶融される。なお、第1通電量は発色剤が発色しない程度であるため、予備加熱によって感熱紙Sが発色(印字)されない。
【0033】
制御部54は、所定の通電パルスを発熱素子22に供給して、サーマルヘッド20を予備加熱させる。例えば、制御部54は、図4に示す所定のパルス幅を有する通電パルスPを、パルス間隔毎に発熱素子22に供給する。ここで、パルス幅(図4に示す幅L1)は、パルス間隔(図4に示す間隔L2)よりも小さい。すなわち、大きいインターバルを挟んで、通電パルスPが供給される。一例として、パルス幅L1は34(μs)に相当する幅であり、好ましくは20~50μsである。パルス間隔L2は6000(μs)に相当する間隔であり、好ましくは1000~10000μsである。また、制御部54は、予備加熱の際に、通電パルスPの回数を69回程度とし、好ましくは50回~150回程度供給する。これにより、予備加熱の際の通電量を小さくできるので、予備加熱の際に感熱紙Sの発色剤が発色することを防止しつつ、サーマルヘッド20から感熱紙Sを剥すことができる。
【0034】
制御部54は、予備加熱の際に、サーマルヘッド20の全ての発熱素子22に通電パルスを供給するのが好ましい。
【0035】
制御部54は、感熱紙Sをサーマルヘッド20から引き離すためにプラテンローラ30を回転し、感熱紙Sを搬送する。すなわち、制御部54は、サーマルヘッド20を予備加熱させながら、プラテンローラ30とサーマルヘッド20に挟持された感熱紙Sを搬送路12における一方向へ搬送する第1搬送を行う。サーマルヘッド20を予備加熱させることでサーマルヘッド20と感熱紙Sがくっついた部分の発色剤が溶融された状態となるため、サーマルヘッド20にくっついていた感熱紙Sが第1搬送によってサーマルヘッド20から引き離される。第1搬送は、サーマルヘッド20を予備加熱しながら搬送するのが好ましい。サーマルヘッド20から感熱紙Sを引き離された感熱紙Sは、所定量だけ搬送されることになる。
【0036】
制御部54は、サーマルヘッド20の予備加熱を開始させてから所定時間が経過すると、第1搬送を開始させる。例えば、制御部54は、図3に示すように、時刻t1から予備加熱を開始する。予備加熱を継続して時刻t1から所定時間が経過した時刻t2になると、図3に示すように、プラテンローラ30を正回転させて印字開始位置より移動させる第1搬送を行う。時刻t2-t4の時間は、予備加熱によって感熱紙Sの発色剤が溶融された状態になると想定される時間に設定される。
【0037】
制御部54は、少なくとも感熱紙Sの第1搬送が終了するまでは予備加熱を継続させる。ここでは、図3に示すように、制御部54は、感熱紙Sの第1搬送が終了した時刻t3から所定時間が経過した時刻t4になるまで、サーマルヘッド20の予備加熱を継続させる。ただし、上記に限定されず、制御部54は、第1搬送の終了と共に、予備加熱を終了してもよい。第1搬送が終了するまで予備加熱が継続するので、第1搬送が終了した際には感熱紙Sがサーマルヘッド20から引き離された状態になりやすい。
【0038】
制御部54は、サーマルヘッド20の予備加熱を開始してから第1搬送を開始するまでの所定時間を、設定可能である。ここでは、図3に示すように、制御部54は、サーマルヘッド20の予備加熱を開始させてから第1搬送を開始させる迄の所定時間(時刻t1~t2の間の時間)を、第1搬送を行う時間(時刻t2~t3の間の時間)よりも短くしてもよい。これにより、短時間で発熱素子22を予備加熱することになり、予備処理の時間が長くなることを抑制できる。
【0039】
また、制御部54は、前回の印字からの経過時間の長さに応じて、予備加熱の加熱から第1搬送を行う搬送開始タイミングを調整してもよい。ここでは、制御部54は、記憶部52に記憶された経過時間の長さに応じて、第1搬送の搬送開始タイミングを調整する。例えば、制御部54は、前回の印字からの経過時間が長い程、第1搬送開始前の予備加熱の時間を長くする。前回の印字からの経過時間が長い程、感熱紙Sのサーマルヘッド20にくっついた状態になる可能性が高まる。そこで、前回の印字からの経過時間が長い程、第1搬送開始前の予備加熱の時間を長くすることで、発色剤の溶融がより促進され、サーマルヘッド20にくっついた感熱紙Sを容易に引き離すことができる。
【0040】
制御部54は、第1搬送を行う際のプラテンローラ30の回転速度を、印字後の感熱紙Sを搬送する際のプラテンローラ30の回転速度よりも小さくする。これにより、第1搬送をする際に感熱紙Sがゆっくりと搬送されることで、感熱紙Sのサーマルヘッド20からの引き離しを円滑に行いやすくなる。
【0041】
(第一実施例)
次に、プレヒート制御の一連動作の第一実施例について説明する。
制御部54は、図5(a)に示すようにプラテンローラ30の停止状態で、サーマルヘッド20を予備加熱する。予備加熱時間は、例えば100msであり、好ましくは50~150msである。ここでは、感熱紙Sの被印字部S1が、印字位置に位置している。
【0042】
制御部54は、第1搬送として、図5(b)に示すように、感熱紙Sを搬送路12において搬送方向下流側へ搬送する。例えば、制御部54は、プラテンローラ30を方向C1に正回転させて、感熱紙Sの被印字部S1を印字位置より搬送方向下流側へ搬送する。サーマルヘッド20にくっついていた感熱紙Sが、第1搬送によってサーマルヘッド20から引き離される。サーマルヘッド20から感熱紙Sを引き離す第1搬送の第1搬送量L1は、例えば3mmであり、好ましくは1~10mm程度である。
【0043】
プラテンローラ30の表面には凹凸部が形成されており、プラテンローラ30が正回転する際にプラテンローラ30の表面の凹凸部と感熱紙Sの間に接触摩擦が発生する。プラテンローラ30が印字後の感熱紙Sを搬送方向下流側に搬送させる機能を適切に発揮するために、感熱紙Sを搬送方向下流側に搬送する場合に発生する接触摩擦が大きくなっている。このため、第1搬送として感熱紙Sを搬送方向下流側に搬送すると、大きな接触摩擦によって感熱紙Sのサーマルヘッド20からの引き離しをより円滑に行いやすくなる。
【0044】
第1搬送が行われた後、図5(c)に示すように、制御部54は、感熱紙Sの被印字部S1が印字位置より搬送方向上流側に位置するように、感熱紙Sの一方向の逆方向へ搬送する第2搬送を行う。ここでは、図3に示すように、制御部54は、予備加熱を終了した時刻t4から所定時間が経過した時刻t5(t4-t5間はプラテンローラ30の停止状態)になると、プラテンローラ30を方向C2に逆回転させて感熱紙Sの第2搬送を行う。第2搬送の際の感熱紙Sの第2搬送量L2は、第1搬送の第1搬送量L1よりも大きい。第2搬送量L2は、例えば7mmであり、好ましくは2~11mmである。
【0045】
第1搬送から第2搬送を行う際に、モータ14は逆回転することになる。第2搬送の際に、制御部54は、第2搬送量L2に、モータ14の逆回転に起因したギアの噛み合いにおけるバックラッシュ相当分の搬送量Laを加えた分だけ、感熱紙Sを搬送する。搬送量Laを加えるのは、モータ14を逆回転させる際に生じるギアのバックラッシュ(隙間や遊び)を調整するためである。搬送量Laは、例えば0.25mmであり、好ましくは0.08~0.42mmである。これにより、サーマルヘッド20から引き離された感熱紙Sの被印字部S1が、予備処理を開始する前の印字位置より搬送方向上流側に位置する。
【0046】
また、制御部54は、第1搬送時とは反対方向にプラテンローラ30を回転させて、感熱紙Sの第2搬送を行うが、第2搬送を行う際のプラテンローラ30の回転速度は、第1搬送を行う際のプラテンローラ30の回転速度と同じであってもよいし、これに限定されず、第2搬送を行う際のプラテンローラ30の回転速度は、第1搬送を行う際のプラテンローラ30の回転速度より速くてもよい。
【0047】
第2搬送が行われた後、制御部54は、図5(d)に示すように、感熱紙Sの被印字部S1が印字位置に戻るように、感熱紙Sを搬送方向下流側へ搬送する。すなわち、制御部54は、プラテンローラ30を方向C1に正回転させて、感熱紙Sを搬送方向下流側へ搬送する第3搬送を行う。これにより、感熱紙Sの被印字部S1を印字位置に戻すことができる。第3搬送の際の感熱紙Sの第3搬送量L3は、第2搬送量から第1搬送量を引いた量であり、ここでは第1搬送量L1よりも大きい。例えば、第3搬送量L2は、4mmである。
【0048】
第2搬送から第3搬送を行う際に、モータ14は逆回転することになる。第3搬送の際に、制御部54は、第3搬送量L3に、モータ14の逆回転に起因したギアの噛み合いにおけるバックラッシュ相当分の搬送量Lbを加えた分だけ、感熱紙Sを搬送する。搬送量Lbを加えるのは、モータ14を逆回転させる際に生じるギアのバックラッシュ(隙間や遊び)を調整するためである。搬送量Lbは、例えば0.17mmであり、好ましくは0.08mm~0.42mmである。
なお、第一実施例においては、第2搬送及び第3搬送が、第1搬送後の戻し搬送に該当する。
【0049】
第3搬送(別言すれば、予備処理)が終了すると、制御部54は、感熱紙Sに印字を行う。制御部54は、発熱素子22に第1通電量よりも多い第2通電量を供給してサーマルヘッド20を本加熱させて、第3搬送が行われた感熱紙Sに印字を行わせる。すなわち、制御部54は、サーマルヘッド20を本加熱させることで、感熱紙Sの発色剤が発色して感熱紙Sが印字される。
【0050】
制御部54は、サーマルヘッド20を本加熱させる際の発熱素子22への通電パルスの供給を、サーマルヘッド20を予備加熱させる際の発熱素子22への通電パルスの供給と異ならせる。例えば、制御部54は、本加熱の際の通電パルスのパルス間隔を、予備加熱する際の通電パルスのパルス間隔よりも小さくすることで、本加熱の際の通電量を多くさせる。制御部54は、本加熱の際の通電パルスのパルス幅も長くすることで、本加熱の際の通電量を多くしてもよい。また、通電パルスの間隔とパルス幅を最適に設定するのが好ましい。例えば、通電量はパルス幅を変える事で調整される。また、パルス幅は150~250μsである。
【0051】
(第二実施例)
次に、プレヒート制御の一連動作の第二実施例について説明する。
図6は、予備処理の際の発熱素子22の通電状態及びプラテンローラ30の回転状態を説明するための模式図である。図7は、予備処理の際の感熱紙Sの搬送状態を説明するための模式図である。なお、図6及び図7は、前述した図3及び図5に対応する図である。
【0052】
制御部54は、プラテンローラ30の停止状態で図6に示す時刻t1にサーマルヘッド20の予備加熱を開始させ、時刻t4まで予備加熱をする(図7(a))。予備加熱時間は、例えば、100msであり、好ましくは50~150msである。ここでは、感熱紙Sの被印字部S1が、印字位置に位置している。
【0053】
次に、制御部54は、予備加熱を継続しながら時刻t2~t3の間にプラテンローラ30を方向C2に逆回転させて、感熱紙Sの被印字部S1を搬送方向上流側へ第1搬送する(図7(b))。サーマルヘッド20にくっついていた感熱紙Sが、第1搬送によってサーマルヘッド20から引き離される。第1搬送の第1搬送量L4は、例えば4mmであり、好ましくは2~11mm程度である。
【0054】
第1搬送前は感熱紙Sを搬送方向下流側へ搬送しているので、第1搬送の際にモータ14が逆回転することになる。第1搬送の際に、制御部54は、第1搬送量L4に、モータ14の逆回転に起因したギアの噛み合いにおけるバックラッシュ相当分の搬送量Lcを加えた分だけ、感熱紙Sを搬送する。搬送量Lcを加えるのは、モータ14を逆回転させる際に生じるギアのバックラッシュ(隙間や遊び)を調整するためである。搬送量Lcは、例えば0.25mmであり、好ましくは0.08~0.42mmである。
【0055】
制御部54は、時刻t5~t6の間にプラテンローラ30を正回転させて、感熱紙Sの被印字部S1を印字位置に戻すように搬送方向下流側へ戻し搬送を行う(図7(c))。戻し搬送の戻し搬送量L5は、第1搬送量と同じある。戻し搬送量L5は、例えば4mmであり、好ましくは2~11mm程度である。
【0056】
第1搬送から戻し搬送を行う際に、モータ14は逆回転することになる。戻し搬送の際に、制御部54は、戻し搬送量L5に、モータ14の逆回転に起因したギアの噛み合いにおけるバックラッシュ相当分の搬送量Ldを加えた分だけ、感熱紙Sを搬送する。搬送量Ldを加えるのは、モータ14を逆回転させる際に生じるギアのバックラッシュ(隙間や遊び)を調整するためである。搬送量Ldは、例えば0.25mmであり、好ましくは0.08~0.42mmである。
第二実施例においても、感熱紙Sへの印字を開始する前に、サーマルヘッド20にくっついた感熱紙Sを引き離すことができる。
【0057】
また、上記では、制御部54は、感熱紙Sへの印字開始前に予備処理を行うこととしたが、前回の印字からの経過時間に応じて予備処理の実行を制御してもよい。例えば、制御部54は、前回の印字からの経過時間が所定時間を超えた場合には、予備処理(すなわち、発熱素子22を予備加熱させながらの第1搬送と第2搬送)を行った後に、感熱紙Sに印字を行わせる。一方で、制御部54は、前回の印字からの経過時間が所定時間を超えない場合には、予備処理を行わずに、感熱紙Sに印字を行わせる。経過時間が所定時間を超えない場合には、感熱紙Sがサーマルヘッド20にくっついていないと想定されるので、予備処理を行わないことで、処理時間を短縮できる。
【0058】
<印字開始時の動作フロー>
サーマルプリンタ1の印字開始時の動作例について説明する。以下では、前回の印字が完了してからサーマルプリンタ1が長時間放置されており、サーマルヘッド20とプラテンローラ30に挟持された感熱紙Sが、サーマルヘッド20にくっついているものとする。
【0059】
(第1動作フロー例)
図8は、サーマルプリンタ1の印字開始時の第1動作フローを説明するためのフローチャートである。図8のフローチャートは、制御部54が、感熱紙Sへの印字指令を受け付けたところから開始される(ステップS102)。例えば、制御部54は、サーマルプリンタ1に接続された端末等から印字開始の指令を受け付ける。
【0060】
次に、制御部54は、発熱素子22に通電してサーマルヘッド20の予備加熱を開始させる(ステップS104)。すなわち、制御部54は、感熱紙Sの発色剤が発色しないように、発熱素子22に所定の通電パルスを供給して予備加熱を開始する。発熱素子22を予備加熱することで、感熱紙Sの発色剤が溶融する。
【0061】
次に、制御部54は、サーマルヘッド20を予備加熱させながら、サーマルヘッド20とプラテンローラ30に挟持された感熱紙Sを、モータ14を正回転させてプラテンローラ30によって搬送方向下流側へ第1搬送する(ステップS106)。すなわち、プラテンローラ30は、予備加熱によって発色剤が溶融した感熱紙Sを、サーマルヘッド20から引き離しながら搬送方向下流側へ第1搬送する。これにより、感熱紙Sのサーマルヘッド20にくっついていた部分が、サーマルヘッド20から引き離される。
【0062】
次に、制御部54は、モータ14を逆回転させてプラテンローラ30によって感熱紙Sを搬送方向上流側へ第2搬送する(ステップS108)。すなわち、プラテンローラ30は、感熱紙Sの被印字部S1が印字位置より搬送方向上流側に位置するように、感熱紙Sを搬送方向上流側へ第2搬送する。制御部54は、第2搬送の際に、第2搬送量L2に搬送量Laを加えた分だけ感熱紙Sを搬送する。搬送量Laを加えることで、モータ14の逆回転時のバックラッシュに起因する印字位置のズレを調整できる。
【0063】
次に、制御部54は、感熱紙Sの被印字部S1が印字位置に戻るように、モータ14を正回転させてプラテンローラ30により感熱紙Sを搬送方向下流側へ第3搬送する(ステップS110)。制御部54は、第3搬送の際に、第3搬送量L3に搬送量Lbを加えた分だけ感熱紙Sを搬送する。搬送量Lbを加えることで、モータ14の逆回転時のバックラッシュに起因する印字位置のズレを調整できる。この結果、被印字部S1を印字位置に高精度に戻すことができる。
【0064】
次に、制御部54は、サーマルヘッド20を本加熱させる(ステップS112)。すなわち、制御部54は、予備加熱時の第1通電量よりも多い第2通電量を発熱素子22に供給して、サーマルヘッド20を本加熱させる。本加熱されたサーマルヘッド20の熱によって、感熱紙Sの発色剤が発色可能となる。
【0065】
次に、制御部54は、感熱紙Sへの印字を行う(ステップS114)。すなわち、制御部54は、サーマルヘッド20の本加熱を行いながら、感熱紙Sの間欠搬送を行うことで、感熱紙Sの所望の位置に印字を行う。サーマルヘッド20にくっついていた感熱紙Sを、印字前にサーマルヘッド20から引き離しているので、印字を行う際に感熱紙Sを適切に間欠搬送でき、この結果、所望の位置から位置ずれすることなく印字される。
【0066】
(第2動作フロー例)
図9は、サーマルプリンタ1の印字開始時の第2動作フローを説明するためのフローチャートである。第2動作例においては、感熱紙Sの第1搬送及び第2搬送の搬送方向が第1動作例と異なるが、その他の点は同様である。図9のフローチャートも、制御部54が、感熱紙Sへの印字指令を受け付けたところから開始される(ステップS102)。
【0067】
次に、制御部54は、発熱素子22に通電してサーマルヘッド20の予備加熱を開始させる(ステップS104)。そして、制御部54は、サーマルヘッド20を予備加熱させながら、サーマルヘッド20とプラテンローラ30に挟持された感熱紙Sをモータ14を逆回転させてプラテンローラ30によって搬送方向上流側へ第1搬送する(ステップS156)。すなわち、プラテンローラ30は、予備加熱によって発色剤が溶融した感熱紙Sの被印字部S1を、サーマルヘッド20から引き離しながら印字位置よりも搬送方向上流側へ第1搬送する。これにより、感熱紙Sのサーマルヘッド20にくっついていた部分が、サーマルヘッド20から引き離される。制御部54は、第1搬送の際に、第1搬送量L4に搬送量Lcを加えた分だけ感熱紙Sを搬送する。搬送量Lcを加えることで、モータ14の逆回転時のバックラッシュに起因する印字位置のズレを調整できる。
【0068】
次に、制御部54は、感熱紙Sの被印字部S1を印字位置に戻すように、モータ14を正回転させてプラテンローラ30によって感熱紙Sを搬送方向下流側へ戻し搬送する(ステップS158)。制御部54は、戻し搬送の際に、戻し搬送量L5に搬送量Ldを加えた分だけ感熱紙Sを搬送する。搬送量Ldを加えることで、モータ14の逆回転時のバックラッシュに起因する印字位置のズレを調整できる。この結果、被印字部S1を印字位置に高精度に戻すことができる。
【0069】
次に、制御部54は、発熱素子22を本加熱させ(ステップS112)、感熱紙Sへの印字を行う(ステップS114)。すなわち、制御部54は、発熱素子の本加熱を行いながら、感熱紙Sの間欠搬送を行うことで、感熱紙Sの所望の位置に印字を行う。
【0070】
なお、上述した第1動作フロー及び第2動作フローは、感熱紙Sへの印字が行われる度に実行されることが望ましい。
【0071】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態のサーマルプリンタ1は、予備処理として、発熱素子22に通電パルスとする第1通電量を供給してサーマルヘッド20を予備加熱し、予備加熱させながら感熱紙Sの被印字部が搬送路12における一方向へ搬送する第1搬送を行い、感熱紙Sの被印字部を印字位置に戻すように感熱紙Sを一方向の逆方向へ搬送する第2搬送を行う。予備処理が完了すると、サーマルプリンタ1は、発熱素子22に通電パルスとする第1通電量よりも多い通電パルスとする第2通電量を供給してサーマルヘッド20を本加熱させて、感熱紙Sに印字を行わせる。
これにより、印字の開始前に、上述した予備加熱と共に第1搬送を行うことで、サーマルヘッド20にくっついていた感熱紙Sをサーマルヘッド20から引き離すことができる。この結果、印字を行う際に感熱紙Sを適切に搬送することができるので、印字位置の位置ずれを抑制できる。
【0072】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0073】
1 サーマルプリンタ
12 搬送路
14 モータ
20 サーマルヘッド
22 発熱素子
30 プラテンローラ
54 制御部
S 感熱紙
S1 被印字部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9