(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021584
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】自動じゃが芋収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 21/04 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
A01D21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126532
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】521340193
【氏名又は名称】稲泉 孝一
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093506
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 洋二
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】稲泉 孝一
【テーマコード(参考)】
2B072
【Fターム(参考)】
2B072AA01
2B072BA01
2B072CA03
2B072CA12
2B072CB06
2B072CB07
2B072EA06
2B072EA16
2B072GA14
(57)【要約】
【課題】収穫容器の中に誤回収される耕土の塊や土粒を少なくし、これを除去するために人手を不要として農作業従事者の身体的負荷を低減する。
【解決手段】チェーンコンベア(収穫コンベア)の初期の移送においては進行角度が緩やかな状態で平行桟対の間隔が物理的間隔とほぼ同様の広い間隔として大サイズ耕土の大まかな篩い落しを行い、その後にカテナリー曲線状に沿った登り搬送によって残った細かな耕土を含めて自動的に十分な篩いを行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先導する牽引動力車に連結され、耕土層の内外にあるじゃが芋を収穫する自動じゃが芋収穫機であって、
前記自動じゃが芋収穫機は、掘り上げ部と、篩部、および収納部の連結体で構成され、
前記掘り上げ部は、先導する牽引動力車の牽引走行で耕土層内のじゃが芋を掘り上げる鋤部とこの鋤部の後方に設けられて前記牽引動力車から供給される回転動力を用いて前記鋤部で掘り上げられた耕土とじゃが芋を前端で拾い上げて前記篩部の一端に移載する取り込みコンベアを有し、
前記篩部は、前記掘り上げ部の外側板に一端を固定した篩部台車の両端にそれぞれ設置された駆動スプロケットと従動スプロケットの対からなるコンベア移動機構と、両端に前記篩部台車の両端の各スプロケットに係合するスプロケット係合部を構成して開放端側を平行桟固定板で固定した平行棒を1単位とする多数の平行桟の対の配置で形成され、前記一端が駆動スプロケットに掛け回されて前記取り込みコンベアの後端で当該取り込みコンベアの後端から放出される耕土とじゃが芋を受け取る位置に臨み、他端が前記一端よりも垂直方向で高い位置に設けられた従動スプロケットに掛け回されてじゃが芋を登り搬送する往路面が全体としてカテナリー曲線を描く如く両持ち配置されたチェーンコンベアを有し、
前記収納部は、前記篩部台車の後端で前記チェーンコンベアの前記他端から自然落下するじゃが芋を受け取って収容する移載自在の収穫容器と、前記篩部台車に載置された前記収穫容器と前記篩部の後端を支えて自由回転する車輪からなり、
前記駆動スプロケットは前記駆動力利用機構で駆動される駆動プーリーに固定され、前記従動歯車は前記駆動プーリーとの間に捲き渡された無端ベルトで回転される従動プーリーに固定されており、
前記牽引動力車の前進に伴って、当該牽引動力車から供給される回転力を前記駆動力利用機構を用いて前記掘り上げ部で掘り上げられた耕土とじゃが芋の混合物からじゃが芋を篩い残して前記収穫容器に連続的に落下させて収納することを特徴とする自動じゃが芋収穫機。
【請求項2】
前記チェーンコンベアを構成する前記平行桟の全てに、又は複数毎の一つに、その前記一対の平行桟の一方に沿ってじゃが芋の落下を抑止するに足る高さと幅の棚材を取り付け、当該チェーンコンベアに沿って登り搬送されるじゃが芋の落下を抑制する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の自動じゃが芋収穫機。
【請求項3】
前記棚材は板体もしくは棒状体であり、前記平行桟の3つごとの対の一つに定間隔で取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の自動じゃが芋収穫機。
【請求項4】
前記従動スプロケットの回転軸は、従動プーリーの回転軸に対して偏心した位置に固定され、前記従動プーリーの回転で前記従動スプロケットは前記チェーンコンベアを振動させることによって耕土の篩い落とし効果を高めることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の自動じゃが芋収穫機。
【請求項5】
前記駆動プーリーと前記駆動スプロケットの一体構造部と前記従動プーリーと前記従動スプロケットの一体構造部とが交換可能とされ、じゃが芋の種類、生育状態、耕土の状態に適した間隔の前記平行桟を有するチェーンコンベアを選択して装荷することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の自動じゃが芋収穫機。
【請求項6】
前記収穫容器の上方と底部の間に、前記チェーンコンベアの後端から落下するじゃが芋の落下による負傷を緩和する柔軟材からなる網もしくは胴袋を吊架してなることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の自動じゃが芋収穫機。
【請求項7】
前記収穫容器の底部に、前記チェーンコンベアの後端から落下するじゃが芋の落下衝撃を緩和するクッション材を敷設してなることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の自動じゃが芋収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の地中等に栽培した農産物を収穫するための自動機械に係り、特に基本的には収穫に要する人手を削減して省力化を図った自動じゃが芋収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
農業の分野では、圃場の前処理に始まり、耕土(作土)への播種から収穫にかけては多大の人手が要求される。近年は機械化も進んではいるが、人の手が必要とされる作業は無数にあり、農業従事者にとっては、身体能力の限界に挑戦するほどの労力要求を回避することはかなり困難である。その結果、体調不良、特に腰痛や膝の不具合を訴えるのは年配者に限らず、農作業従事者全てに共通する。
【0003】
特に、耕土の層中にできるじゃが芋などの収穫では、耕土中からじゃが芋などを耕土の上に目視可能に掘り出して置き、これを作業者が手作業で拾い上げて笊や籠あるいは麻袋などに収容するのが一般的である。このようなきつい作業を解消するために、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4などに開示されたような収穫作業機が種々開発されている。
【0004】
特許文献1は、走行輪7を軸着する車軸8に対して農作物収納タンク6を搭載した機体フレーム5を軸方向移動自在に支持させると共に機体フレーム5と車軸8とに亘り夫々止着連結したフレーム横移動手段9を具備し、且つ機体フレーム5の下側進行方向寄り前方から後方上向き傾斜状に配設した搬送コンベヤ3の前端に収穫部即ち、堀取り部10と拾上げ部11とを着脱交換自在に装着し得る様にし、ポテトディガーにより堀取られたじゃがいもを畦間の谷間から拾い上げて機体フレーム上の農作物収納タンクに搬送収容する収穫作業を行なうポテトピッカーを開示する。
【0005】
特許文献2は、作物を持上げコンベアへ移載すべく回転体上にきたときに、回転体の回転中心を中心とする同一円周上に位置するようにして、持上げコンベア上へ移載した作物を作物載置杆の載置部で傷をつけたり、割ったりすることを回避する。また、側板の下面を作物搬送方向前後に2区分し、後部面を姿勢制御部に当接した状態で前部面が回転体から前方へ漸次離れる傾斜面としているので、側板の回転体に対する乗上げ時の衝撃は小さく、後部面を姿勢制御部に円滑に当接でき、乗上げ時の衝撃により循環回送体が上下に大きく揺れて作物搬送体上の作物が転がり落ちるのを防止した収穫機における搬送コンベアを開示する。
【0006】
特許文献3は、傾斜搬送コンベヤを両端に軸孔が形成された内プレート及び外プレートを1ピッチ置きに位置ずらしして複数並列配置し、並列配置した内と外のプレート群を所定間隔おいて左右対称的に配置し、1ピッチおきに中間ピンを軸孔に軸挿してナットで螺着すると共に対向する内プレート間に棒状のコンベヤ桟を中間ピン間の軸孔に軸挿してナットで螺着して無端チェーンを構成する。この無端チェーンを従動軸及び駆動軸の両端に軸着したチェーン車及びスプロケット間に掛架して前端の厚さを45mm、後端の厚さを60mmに形成し、搬送途中の土の篩い落とし効果を損なうことなく畦土中又は畦土表の農作物を確実に掘り取り又は拾い上げ得る軽量な農作物掘り取り拾い上げ機を開示する。
【0007】
特許文献4は、じゃが芋収穫箱の前後側面の中にサポートロッドが回転できるように取り付けられ、前後両側の前記サポートロッドに土かき板が固定的に取り付けられ、動力機構の中の回転ロッドが回転して土かき板を回転連動させ且つ輸送板を上下に移動連動させる。土かき板と輸送板の土に入った部分の深さを調整し、土かき板が初歩的な土かきを行い、輸送板が初歩的に土かきされた後の泥とじゃが芋とを輸送機構により分離機構に送って、泥とじゃが芋とを分離機構の中で快速的に分離されることができるようにしたじゃが芋収穫機を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平05-17号公報
【特許文献2】実開昭58-194618号公報
【特許文献3】特許第4098053号公報
【特許文献4】特許第6752994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
じゃが芋のサイズや形状、耕土の粗さや粘度(湿り度、水分含有量)は、圃場の立地、収穫時の天候等の環境条件で異なるのが普通である。
前記した収穫期機では、耕土から掘り出したじゃが芋を収穫コンベアで拾い上げて収穫容器に搬送する途上で、収穫コンベアの隙間を利用して耕土を篩い落とすようになっている。一般的に使用されているコンベアは、いわゆるチェーンコンベアであり、コンベアの面に隙間を有して、この隙間を利用してじゃが芋と一緒に搬送されている耕土の塊や土粒を篩い落とすようになっている。
【0010】
耕土から掘り出されたじゃが芋は、収穫コンベアの先端で、あるいは収穫コンベアの前に設けた取り込みコンベアで耕土と共に取り込む。取り込まれたじゃが芋と耕土は、収穫コンベアによって収穫容器に運ばれる。収穫コンベアは斜め上方に向かって直線的に傾斜した搬送がなされるように装架されている。
この搬送の途上で耕土の塊や土粒が収穫コンベアの隙間から篩い落とされ、耕土の塊よりも固く土粒よりも大粒のじゃが芋が収穫コンベアの後端から収穫容器に落下するように構成されている。
【0011】
篩機能(じゃが芋と耕土や土粒の分離機能)を備えた収穫コンベア(以下、篩コンベアとも称する)は搬送路(収穫物搬送面)で耕土や土粒は落下させ、じゃが芋の落下は抑制する隙間を有している。チェーンコンベアを用いた篩コンベアでは、当該コンベアの搬送方向と交差する方向に延びる多数の棒状部材を配列した平行桟を用いるのが一般的である。この平行桟の間隔が篩目となる。
【0012】
上記のように直線状に傾斜させて装架した平行桟の水平面への投影間隔は物理的な間隔よりも重力方向に対して狭くなる。そのため、斜行搬送される耕土の塊や土粒に対する篩目は実質的に狭くなって、物理的間隔では通過して除去されるべき大きさの耕土や土粒が落下せずに収穫容器にまで至る可能性が大きくなる。
結果として、収穫容器の中に誤回収された耕土の塊や土粒が多くなり、これを除去するために人手を要することになって、農作業従事者の身体的負荷を低減するという機械化本来の目的を矮小化してしまう。
【0013】
本発明の目的は、自動じゃが芋収穫機における上記の課題を解消することにある。なお、本発明はじゃが芋の収穫機としてあるが、他の同様の農作物などの収穫にも適用できることは言うまでもない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る自動じゃが芋収穫機は、下記に記述する代表的構成としたことを特徴とする。なお、発明の理解を容易にするため、後述の実施例の説明における図面に記載の参照符号を付してあるが、本発明はこの参照符号を付した構成に限定されるものではない。
【0015】
(1)本発明に係る自動じゃが芋収穫機1は、先導する牽引動力車500(図示せず)に連結され、耕土(土塊や土粒、以下耕土)15の層内外にあるじゃが芋14を収穫する。
【0016】
この自動じゃが芋収穫機1は、掘り上げ部100と、篩(ふるい)部200、および収納部300の連結体で構成される。
【0017】
掘り上げ部100は、先導する牽引動力車500の牽引走行で耕土15層内のじゃが芋14を掘り上げる鋤部(プラウ)3とこの鋤部3の後方に設けられて前記牽引動力車500から供給される回転動力を用いて前記鋤部3で掘り上げられた耕土15とじゃが芋14を前端で拾い上げて前記篩部200の一端に移載する取り込みコンベア4(ベルトコンベア、ローラーコンベア、チェーンコンベアなど)を有する。
【0018】
前記篩部200は、前記掘り上げ部100の外側板2に一端を固定した篩部台車12の両端にそれぞれ設置された駆動スプロケット7aと従動スプロケット7bの対からなるコンベア移動機構と、両端に前記篩部台車12の両端の各スプロケット7a,7bに係合するスプロケット係合部76を構成して開放端側を平行桟固定板77で固定した平行棒を1単位とする多数の平行桟71の対(コンベアバー対)の配置で形成され、前記一端が駆動スプロケット7aに掛け回されて前記取り込みコンベア4の後端で当該取り込みコンベア4の後端から放出される耕土15とじゃが芋14を受け取る位置に臨み、他端が前記一端よりも垂直方向で高い位置に設けられた従動スプロケット7bに掛け回されてじゃが芋14を登り搬送する往路面(上昇側上面)が全体としてカテナリー曲線(富士山曲線と称される場合もある)を描く如く両持ち配置されたチェーンコンベア7を有する。
【0019】
前記収納部300は、前記篩部台車12の後端で前記チェーンコンベア7の前記他端から自然落下するじゃが芋14を受け取って収容する移載自在の収穫容器10と、前記篩部台車12に載置された前記収穫容器10と前記篩部200の後端を支えて自由回転する車輪11からなり、
前記駆動スプロケット7aは前記駆動力利用機構6で駆動される駆動プーリー9aに固定され、前記従動歯車7bは前記駆動プーリー9aとの間に捲き渡された無端ベルト9で回転される従動プーリー9bに固定されている。
【0020】
前記牽引動力車500の前進に伴って、当該牽引動力車500から供給される回転力を、前記駆動力利用機構6を用いて前記掘り上げ部100で掘り上げられた耕土15とじゃが芋14の混合物からじゃが芋14を篩い残して前記収穫容器10に連続的に落下させて収納する。なお、平行桟71の対は、断面が非円形の厚板などでもよい。
【0021】
(2)また、本発明に係る自動じゃが芋収穫機1は、前記チェーンコンベア7を構成する前記平行桟71の複数毎の一つに、その前記一対の平行桟71の一方に沿ってじゃが芋14の落下を抑止するに足る高さと幅の棚材72を取り付け、当該チェーンコンベア7に沿って登り搬送されるじゃが芋14の落下を抑制する構成とした。
【0022】
(3)また、本発明に係る自動じゃが芋収穫機1は、前記棚材72を板体(平行桟対と同様の断面が非円形の厚板など)もしくは棒状体で構成し、この棚材72を平行桟71の対の全てに、あるいは2つもしくは3つ毎などの複数の一つに所定の間隔または不定間隔で取り付けている。
【0023】
(4)また、本発明に係る自動じゃが芋収穫機1では、前記従動スプロケット7bの回転軸C2は、従動プーリー9bの回転軸C1に対して僅距離dだけ偏心した位置に固定され、前記従動プーリー9bの回転で前記従動スプロケット7bは前記チェーンコンベア7を振幅Dで振動させることによって耕土15の篩い落とし効果を高めている。
【0024】
(5)また、本発明に係る自動じゃが芋収穫機1では、前記駆動プーリー9aと前記駆動スプロケット7aの一体構造部と前記従動プーリー9bと前記従動スプロケット7bの一体構造部とが交換可能とされ、じゃが芋14の種類、生育状態、耕土の状態に適した間隔の前記平行桟71を有するチェーンコンベア7選択して装荷することを可能とした。
【0025】
(6)また、本発明に係る自動じゃが芋収穫機1では、前記収穫容器10の上方と底部の間に、前記チェーンコンベア7の後端から落下するじゃが芋の落下に伴うじゃが芋への負傷を防止または緩和する柔軟材からなる網胴、もしくは網袋を吊架した。
【0026】
(7)また、本発明に係る自動じゃが芋収穫機1では、前記収穫容器10の底部に、前記チェーンコンベア7の後端から落下するじゃが芋の落下衝撃を緩和するクッション材を敷設した。
【0027】
本発明は、上記の構成および後述する実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲を逸脱することなく種々の変更が可能である。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る自動じゃが芋収穫機によれば、搬送角度が緩やかな状態でのチェーンコンベア(収穫コンベア)の初期の移動においては、平行桟対の水平面への投影間隔は物理的間隔とほぼ同様の広い間隔なので、大サイズ耕土の大まかな篩い落しが行われる。このチェーンコンベアのカテナリー曲線状に沿った登り搬送の進行に沿って当該収穫コンベアの搬送角度が急峻になるに従い、所謂篩目の水平面への投影間隔は実効的に狭くなるが、大サイズの耕土は少なくなっているために、細かな耕土を含めた篩いが十分に行われる。
【0029】
篩目の実質的な狭小化(水平面への投影間隔が狭くなること)によって、じゃが芋を保持する平行棒の幾何学的な垂直方向間隔が少しずつ狭まり、地球重力によってじゃが芋が平行棒に多少挟まった状態になりそうになったとしても自重によってのけ反って平行桟の上に戻り、あるいは棚材に載って保持される。このように、篩い機能に不具合をもたらすことがなく、快適な自動じゃが芋収穫が可能となる。その結果として、農作業従事者の身体的負荷が大幅に低減される。
【0030】
また、チェーンコンベアを振動させる構成とした場合には、耕土の篩い落とし効果が高まり、湿った耕土や粘土質の耕土での篩効果が向上する。
【0031】
また、チェーンコンベアの駆動プーリー9aと駆動スプロケッ7aとの一体構造部と従動プーリー9bと従動スプロケット7bの一体構造部とを交換可能な構造としたものでは、じゃが芋の種類、生育状態、耕土の状態に適した間隔の前記平行桟を有するチェーンコンベアを選択して装荷することが可能となる。
【0032】
本発明に係る自動じゃが芋収穫機では、収穫容器の上方と底部の間に、前記チェーンコンベアの後端から落下するじゃが芋の落下衝撃を緩和する布や樹脂シート等の柔軟材からなる網胴、もしくは網袋を吊架し、あるいは収穫容器10の底部に、前記チェーンコンベア7の後端から落下するじゃが芋の落下衝撃を緩和するクッション材を敷設することで、収穫したじゃが芋に意図しない負傷(擦り傷や割れ傷)の発生を回避して高品質のじゃが芋を出荷することができる。
【0033】
なお、上記したチェーンコンベアのセッティングについて以下で更に詳しく説明する。チェーンコンベアに対して本発明のような観点での使用態様を具体化した例は現時点では見当たらない。
【0034】
富士山曲線とも称されるカテナリー曲線は指数曲線あるいは放物線に近似できる。2つの支点間に長手方向に均一な重さの有る紐状体を自由な状態に吊った場合に形成される曲線であり、典型的には送電線の垂下曲線を挙げることができる。2つの支点に高低差がある場合には、低い方の支点に近い部分の湾曲の度合いが強くなる。すなわち、接線と水平線のなす角度が小さく、水平線と同じになり、さらにはマイナス角(伏角)になる。
【0035】
2つの支点(一方のスプロケットと他方のスプロケット)に高低差を設けたチェーンコンベアに適用した場合に、チェーンコンベアにある程度の弛み(たるみ)を持たせて支点間にかけ渡した状態とする(低い方の支点に設けたスプロケット:歯車を駆動輪とする)。この弛みは無端コンベアの往路と復路でその背面同士が接触しない程度を最大の弛みとする。
【0036】
このように装架したチェーンコンベアは、低い方の支点の近傍での接線ほど水平線となす角度が小さく、又はマイナスになり、高い方の支点に近づくほどこの接線と水平がなす角度がプラス方向(仰角)に大きくなる。この仰角θの上限は、自動収穫機の常識的なサイズ、登り搬送されるじゃが芋の安定搬送などを考慮すると共に、作業実施の経験から10度ないし13度とするのが好ましい。しかし、この角度に限定されるものではなく、じゃが芋の種類、その大きさ、耕土の状態に応じたチェーンコンベアの搬送速度との兼ね合いで決めればよい。
【0037】
チェーンコンベアも全体として長手方向(チェーンの連続する方向)に沿って略均一に分布する重量をもっているので、低い方の支点に設けたスプロケットを駆動してチェーンコンベアの上面(往路側)を高い方の支点に設けた自由回転のスプロケット方向に移動させる(送り出しする)と、チェーンコンベアの上面が描く曲線はカテナリー曲線を形成するごとき湾曲状態を保持して移動する。なお、高い方の支点にあるスプロケットは自由回転に設定してある。
【0038】
このとき、チェーンコンベアの下面(復路側)は低い方の支点に設けた駆動スプロケットの駆動力(回転)で引っ張られる状態となって、低い方の支点と高い方の支点に設けたスプロケットの中心を結ぶ直線に近づくような状態(上記の上面側を移動するチェーンコンベアの背面に近づく状態)で移動することになる。「往路と復路の背面が接触しない程度」とした上記の意味がこれである。
【0039】
これにより、チェーンコンベアの上面(往路の端部:始点)に乗ったじゃが芋と耕土は初期のコンベア搬送の進行(搬送)角度が緩やかで、次第に急峻な角度で高い方に設置されたスプロケット方向に登るように移送される。進行角度が緩やかな状態での移送においては、耕土の大まかな篩い落しが行われ(大サイズの耕土除去)、進行角度が急峻になるに従い、所謂篩目は実効的に狭くなるが、残留した耕土は少なく小サイズがメインになっているために、細かな砂礫や耕土を含めた篩いが十分に行われる。
【0040】
同時に、篩面の実質的な狭小化(水平面への投影間隔が狭くなること)によって、じゃが芋を保持する平行棒の幾何学的な垂直方向間隔が少しずつ狭まり、じゃが芋が平行棒に多少挟まった状態になっていても、自重によってのけ反って平行桟の上に戻って棚材に保持されるため、篩機能への不具合が回避されると共に、じゃが芋が平行桟の間に挟まったまま搬送されることによる負傷も抑制される。
【0041】
このように、連続する2段階の篩搬送を行うことで、篩機能の不具合をもたらすことなく、耕土の篩い落としとじゃが芋の負傷を回避して収穫作業をスムーズに実行することができる。
【0042】
チェーンコンベアをかけ渡す一対のスプロケットに固定した各プーリーにベルトを掛け渡すことで、往路のチェーンコンベアの弛みを一定に維持して2段階搬送効果を維持することができる。
なお、チェーンコンベアの中間に中継スプロケットを設置して明確な2段階の篩い搬送を行う構成とすることも可能である。
【0043】
また、耕土の性質を考慮し、あるいは上記した二段の篩搬送を要しないような作物の収穫に好適であるなら、高い方の支点にあるスプロケットを駆動輪とすれば、チェーンコンベアの搬送斜面が直線状に近い往路となり、復路側のチェーンコンベアに弛みを持たせることでコンベアに付着した粘度の高い耕土の振るい落とし効果を向上できる。そして、このときにコンベアに振動を与えることで更なる耕土の振るい落とし効果を得ることができる。
【0044】
更にまた、じゃが芋の収穫でも、収穫作業後の機械清掃の際に、コンベアに振動を与えることで、コンベア付着の耕土振るい落とし、水洗を伴う清掃作業を容易に行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例の全体構成を模式的に説明する側面図
【
図2】本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例におけるコンベア部分の構成を拡大して示す側面図
【
図3】本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における駆動系の一例を説明する側面図
【
図4】本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における駆動系の一例を説明する上面図
【
図5】本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における掘り上げ部の一例を説明する上面図
【
図6】本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアの構成部材の一具体例を説明する斜視図
【
図7】
図6に示した本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアとスプロケットとの噛み合い部分の構成部材の具体例の要部を説明する部分図
【
図8】本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアの構成部材の他の具体例を説明する斜視図
【
図9】
図8に示した本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアとスプロケットとの噛み合い部分の構成部材の他の具体例の要部を説明する部分図
【
図10】本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアと噛み合うスプロケットの一構成例の説明図
【
図11】本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアの振動発生機構の一構成例の説明図
【
図12】本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアの交換機構の一例を説明する部分図
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施の形態について、実施例の図面を用いて詳細に説明する。
【実施例0047】
図1は本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例の全体構成を模式的に説明する側面図、
図2は本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例におけるコンベア部分の構成を拡大して示す側面図、
図3は本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における駆動系の一例を説明する側面図、
図4は本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における駆動系の一例を説明する上面図である。また、
図5は本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における掘り上げ部の一例を説明する上面図である。
【0048】
本実施例の自動じゃが芋収穫機1は、トラクターなどの牽引動力車500に連結して牽引され、同時に動力も供給されて、耕土(土塊や土粒)15の層内外にあるじゃが芋14を耕土と分離して収穫容器10に取り入れるように構成されている。
【0049】
この自動じゃが芋収穫機1は、掘り上げ部100と、篩(ふるい)部200、および収納部300の連結体で構成されている。掘り上げ部100は、先導する牽引動力車500に牽引手段(牽引シャフト)13で連結されており、これによる牽引走行で圃場の耕土(畑の土)15層内のじゃが芋14を耕土から掘り上げる鋤部(プラウ)3を備えている。
【0050】
また、本実施例の動力は、牽引動力車500に接続した駆動力伝達シャフト5から供給される。駆動力伝達シャフト5で受けた駆動力は、駆動力利用機構6で取り込みコンベア4と収穫コンベア7の駆動に用いられる。駆動力利用機構6はギアボックス16で回転変更されるチェーンと歯車システムで構成される。
【0051】
鋤部3の後方には、牽引動力車500から回転シャフトで供給される動力を用いて鋤部3で掘り上げられた耕土15とじゃが芋14をその前端で拾い上げて篩部200の一端(前端)に移載する取り込みコンベア4を備えている。この取り込みコンベア4は、ベルトコンベア、ローラーコンベア、チェーンコンベアなどでよいが、本実施例では篩目を有するローラーコンベアを採用した。
この取り込みコンベア4は、一対の掘り上げ部の外側板2に取り付けられた駆動輪4aと従動輪4bに掛け渡されて周回移動する。その先端から耕土15とじゃが芋14を取り込んで、その後端に待機している収穫コンベア(チェーンコンベア)7に移載する。
【0052】
篩部200は、上記の 掘り上げ部100の外側板2に一端を固定した篩部台車12の両端にそれぞれ設置された駆動スプロケット(チェーン駆動歯車)7aと従動スプロケット7bの対からなるコンベア移動機構を有している。参照符号8は篩コンベア支持部材で、篩部台車12に植立固定されて従動スプロケット7bと従動プーリー9bを支持している。参照符号17は篩コンベア支持部材8の補強部材である。篩コンベア支持部材7で選別されたじゃが芋14は当該コンベアの後端から収穫容器10に収集される。参照符号11は篩部200と収納部300を支えて移動するための車輪である。
【0053】
詳細な構成例は
図6乃至
図12で後述するが、収穫コンベア(チェーンコンベア)の架け渡し状態を強調して解り易いように図示した
図2に示したように、一対のスプロケット7a,7bに架け渡されて回転するチェーンで構成される収穫コンベア7は駆動スプロケット7aと従動スプロケット7bにはそれぞれプーリー9a,9bが取り付けてあり、プーリー9a,9bにベルト9が掛け渡されている。通常の収穫時には、プーリー9aは駆動プーリー、プーリー9bは従動プーリーとしてある。
【0054】
チェーンコンベアで構成される収穫コンベア7は、かけ渡されている一対のスプロケット7a,7bの中心を結ぶ直線が水平線となす角度(仰角)をθで示してある。角度θは、小さすぎると収穫機全体の長さが大きくなり、長いからと言って篩効果が格段に向上する訳でもなく、また、大きいと登り搬送されるじゃが芋の途中落下の発生を招く。当該分野における自動機械の経験的な3次元サイズ制限の中で治験した作業効率から、この角度θは10度ないし13度とするのが好ましい。
【0055】
収穫コンベア7は駆動スプロケット7aで往路面(図の上面側)を従動スプロケット7b方向にθが±0度前後から次第に登り上げるように移動する。したがって、チェーンコンベア7の復路側(図の下側)は駆動スプロケット7a方向に引っ張られるため、往路側(図の上側でじゃが芋と耕土が載置する面)は図示したように撓む。上記した角度θを考慮して、チェーンコンベア7の全体長さ(周回長さ)は上記の現象が起きるのに十分なものに設定される。
【0056】
この撓みによって、チェーンコンベア7の駆動スプロケット7aに近い部分は前記θよりも小さい角度(水平に対して±0程度、場合によってはマイナス:伏角状態)となり、従動スプロケット7b方向に登り上がるにしたがってプラス(仰角)方向に次第に大きくなる、すなわち、カテナリー曲線に近い状態となる。
【0057】
収納部300は、篩部台車12の後端でチェーンコンベア7の他端から自然落下するじゃが芋14を受け取って収容する移載自在の収穫容器10と、篩部台車12に載置された収穫容器10と篩部200の後端を支えて自由回転する車輪11を有する。
【0058】
駆動スプロケット7aは駆動力利用機構6で駆動される駆動プーリー9aに固定され、前記従動スプロケット7bは前記駆動プーリー9aとの間に掛け渡された無端ベルト9で回転される従動プーリー9bに固定されている。そして、牽引動力車500の前進に伴って、当該牽引動力車500から供給される回転力を、前記駆動力利用機構6を用いて掘り上げ部100で掘り上げられた耕土15とじゃが芋14の混合物からじゃが芋14を篩い残して収穫容器10に落下させて収納する。
【0059】
図5は本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における掘り上げ部の一例を説明する上面図である。この掘り上げ部は、縦に平行な一対の掘り上げ部外側板2の先端下部を連結する如く形成された鋤部(プラウ)3の中に取り込みコンベア4を備えている。掘り上げ部外側板2の上方に設けた連結部材13aに牽引シャフト13の一端が取り付けてあり、この牽引シャフト13他端は牽引動力車500に連結されている。
【0060】
また、掘り上げ部外側板2の上方には、ギアボックス16に接続する駆動力伝達シャフト5が牽引動力車の動力供給部に延びている。駆動力伝達シャフト5で伝達される回転駆動力はギャボックス16で駆動力利用機構6に伝達されて取り込みコンベア4や前記した収穫コンベア7の駆動力として利用される。
【0061】
図6は本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアの構成部材の一具体例を説明する斜視図で、(a)はラック(棚)無しの平行桟の対(コンベアバー)、(b)は板状ラック付き平行桟の対、(c)は枠状ラック付き平行桟の対、(d)は棒状ラック付き平行桟の対を示す。
【0062】
図7は
図6に示した本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアとスプロケットとの噛み合い部分の構成部材の具体例の要部を説明する部分図で、(a)はコンベアバーで構成したチェーンコンベアとスプロケットとの・み合い状態図で、スプロケットを平面展開して示してある。また、
図7の(b)は平行桟の対を連結してチェーンとするための結合部分を示す。ラックの有り無しの平行桟の対の連結部分は同じである。なお、チェーンコンベアと噛み合うスプロケットの一構成例は
図10で後述する。
【0063】
図6と
図7に示したチェーンコンベア(収穫コンベア)は、両端に篩部台車12の両端の各スプロケット7a,7bに係合するスプロケット係合部76(空間)を形成する階段部78を両端に有して、チェーンコネクタ74に設けた孔に通して溶接された平行棒を1単位とする多数の平行桟71の対(コンベアバー対)の配置で形成される。スプロケット係合部76はコンベア主要部(被搬送物載置面:チェーンコンベアの表面側)が搬送回転路よりも若干盛り上がるように上方屈曲した階段部78を有する。
【0064】
チェーンコンベア7は、一端が駆動スプロケット7aに掛け回されて前記取り込みコンベア4の後端で当該取り込みコンベア4の後端から放出される耕土15とじゃが芋14を受け取る位置に臨んだ位置に設置される。そして、他端が前記一端よりも垂直方向で高い位置に設けられた従動スプロケット7bに掛け回されてじゃが芋14を登り搬送する往路面(上昇側上面)が全体としてカテナリー曲線(富士山曲線)を描く如く両持ち配置される。
【0065】
このチェーンコンベア7を構成する平行桟71の対(コンベアバー対)のスプロケット(歯車)係合部76がスプロケット7aの歯75に係合して移動する。平行桟71の対(コンベアバー対)のスプロケット(歯車)係合部76の端部を溶接したチェーンコネクタ74の中央部はスプロケット7aの歯75に係合するスプロケット係合部74aで、スプロケット係合部74aのチェーンコンベアの長手方向一端には外側に屈曲した部分74bが形成され、隣接するスプロケット係合部74aと街道ピン79で連結されてチェーンを構成する。
【0066】
すなわち、チェーンコネクタ74は
図7の(b)に示したように、互いにチェーン形状を形成するごとく屈折されている。スプロケットと噛み合う側74aから外側に曲がった部分74bと隣接するスプロケットと噛み合う側74aとに連結孔を有し、この連結孔に回動可能なピン(回動ピン)79が挿通されて両者を連結している。スプロケットの歯と噛み合う部分が単純な構造なので、噛み合う部分に土や芋茎などが取り込まれることが低減し、作業の途中でコンベアから詰まったものを取り除く手間を省くことができる。
【0067】
また、
図6の(b)~(d)に示したように、チェーンコンベア7を構成する平行桟71の1または2などの複数毎の一つに、その一対の平行桟71の一方に沿って登り搬送されるじゃが芋14の落下を抑止するに足る高さと幅の棚材72が取り付けられている。この棚材72は
図7の(b)に示した板状、(c)に示した枠状、あるいは(d)に示した棒状体の何れでもよい。(d)に示した棒状体は平行桟71の一方に直付けして両端を若干の上方に曲げ上げた形状としてある。しかし、これに限るものではなく、
図6の(c)のように平行桟71の一方から高く立ち上げて任意の手段で固定することもできる。
【0068】
この例では、棚材72を平行桟71の3つごとの対の一つに定間隔で取り付けている。しかし、これは全ての平行桟に取り付けてもよいし、二つ以上で不定間隔に取り付けてもよいことは前記したとおりである。なお、参照符号73は平行桟の間隔変化を回避するための補強材で、必要に応じて2以上とすることもできるし、平行桟の剛性が高いものでは不要とすることもできる。
【0069】
図8は本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアの構成部材の他の具体例を説明する斜視図、
図9は
図8に示した本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアとスプロケットとの噛み合い部分の構成部材の他の具体例の要部を説明する部分図で、(a)は平面部分を、(b)は(a)の太矢印A方向から見た側面を示す。
【0070】
この構成例では、平行桟71は、
図6と同様に、篩部台車12の両端の各スプロケット7a,7bに係合するスプロケット係合部76となる階段部78を両端に有している。この平行桟71の両端(游端)を、平行桟固定板77に開けた固定孔に挿入して外側に突出させた状態で当該固定孔に溶接等で固定してある。
図8の(a)は棚材を有しない平行桟の基本構造を示す。
図8の(b)ないし(d)は種々の棚材を取り付けた平行桟を示す。他の参照符号で示す箇所、桟72の種類は前記の
図6で説明したものと同様で、任意に選択できるものである。
【0071】
平行桟固定板77に設けた孔から外側に突出した部分はコンベアチェーンを構成する回動ピン部9となる。
図9に示したように、
図8の回動ピン部9に平行桟固定板77と同様の孔(回動開口)を有するチェーンプレート71aの当該孔を通し、回転連結部材91で係止する。スプロケット係合部76はコンベア主要部(被搬送物載置面:チェーンコンベアの表面側)が搬送回転路よりも若干盛り上がるように上方屈曲した階段部78を有する様子を
図9(b)に側面で示す。
【0072】
図10は本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアと噛み合うスプロケットの一構成例の説明図である。
図10に示した駆動スプロケット7aは端数が9個としてあるが、これに限定されるものではなく、径のサイズや牽引駆動車からの動力の回転速度、コンベアの移動速度などの諸条件で設計される。参照符号70はスプロケットのセンター孔を示す。
【0073】
図11は本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアの振動発生機構の一構成例の説明図である。この構成では、(a)に示したように、従動プーリー9bの回転中心C1に対してその半径方向に若干のずれた位置に従動スプロケット7bの回転中心C2を位置させている。
図11では、従動プーリー9bの回転中心C1を通る垂直線をY1―Y1、水平線をX1―X1、とし、従動スプロケット7bの回転中心C2を通る垂直線をY2―Y2、水平線をX2―X2としたとき、Y1―Y1に対してY2―Y2を図の右方向にd1だけずらし、X1―X1に対してX2―X2を図の下側にd2だけずらした位置で従動プーリー9bと従動スプロケット7bを固定した一体構造を構成し、一緒に回転するようにしてある。
【0074】
このように従動プーリー9bと従動スプロケット7bを固定した一体構造とし、従動プーリー9bの中心を回転中心として半径がd
3[=(d12+d22)の平方根]で従動スプロケット7bの中心C2が偏心回転する。この状態を
図11(b)に示す。偏心量はd3である。なお、駆動プーリー9aと駆動スプロケット7aは各中心を一致させた状態で固定して一体構造としてある。
【0075】
従動スプロケット7bの上記偏心回転によってチェーンコンベア7は従動プーリーの回転中心軸に関して上下左右を含めた360度に亘って偏心回転することで振動は発生する。
図11には上下方向の振動のみを示したが、チェーンコンベア7には引っ張り力も働いて搬送面が上下に振動する。振動振幅をDで示す。この振動によって、搬送面に乗っているじゃが芋と耕土の篩効果が増大して、チェーンコンベアの往路終端付近では、耕土の残留は極端に少なくなる。
【0076】
図12は本発明に係る自動じゃが芋収穫機の実施例における篩部を構成するチェーンコンベアの交換機構の一例を説明する部分図である。本実施例の1変形例では、チェーンコンベアの駆動手段であるスプロケット(7a,7b)とプーリー9(9a,9b)が交換可能とされている。
【0077】
駆動手段とチェーンコンベアとは分離できるので、駆動手段の送り量(プーリーとスプロケットの直径あるいは歯数)の選定と平行桟の間隔が異なる多種のチェーンコンベアを組み合わせて目的とするじゃが芋(種類、生育状態、耕土の状態、あるいは、他の同様形状や耕土状態の根菜など)の収穫に最適化したもの用を取り付け可能とした。
【0078】
この支持機構は従動側の構造を示したが、駆動側にも同様の構造を取り付けることもできる。
図12において、篩コンベア支持部材8に設ける回転支持部81を情報に開口を有する落とし込み構造としてある。図示していないが、プーリーの回転軸C3を回転支持部81最低部に落とし込んだ状態を保持する既知のロック部材を設けるのが好ましい。
【0079】
なお、本実施例に係る自動じゃが芋収穫機では、収穫容器10の上方と底部の中間に、前記チェーンコンベア7の後端から落下するじゃが芋の落下速度を緩和する織布や不織布布、プラスチックなどの柔軟材からなる網胴、もしくは網袋などを吊架し、あるいは収穫容器10の底部に適宜のクッション材を敷設することで、チェーンコンベア7の後端から落下するじゃが芋の落下衝撃を緩和して、擦り傷や割れ傷の発生を防止するようにした。
【0080】
上記で説明した実施例で明らかなように、本発明に係る自動じゃが芋収穫機によれば、快適な自動じゃが芋収穫が可能となる。その結果として、農作業従事者の身体的負荷が大幅に低減される。
本発明はじゃが芋の収穫作業に好適であるが、じゃが芋と同様の収穫態様を要する他の根菜等の収穫、農業分野に限らず、他の一次産業、二次産業等における原材料の篩、収穫物や製造品の篩などにも適用できることは言うまでも無い。