(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021593
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】比重測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 9/00 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
G01N9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126546
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐樹
(57)【要約】
【課題】計測地点の水面からの深度を計測することなく、簡単な構成で懸濁液の比重を測定できる比重測定装置を提供する。
【解決手段】懸濁液の比重を測定する比重測定装置1であって、錘12が接続された牽体11に取り付けられ、懸濁液の水圧を計測する水圧計13と、水圧計13の鉛直方向の移動量を計測する移動量計測装置14と、異なる計測深度Aにおける複数の水圧計13の計測値(水圧P)を、移動量計測装置14によって計測された移動量に基づく異なる計測深度Aの測定間隔dと共に収集する収集部とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁液の比重を測定する比重測定装置であって、
錘が接続された牽体に取り付けられ、前記懸濁液の水圧を計測する水圧計と、
前記水圧計の鉛直方向の移動量を計測する移動量計測装置と、
異なる計測深度における複数の前記水圧計の計測値を、前記移動量計測装置によって計測された前記移動量に基づく異なる前記計測深度の測定間隔と共に収集する収集部と、を具備することを特徴とする比重測定装置。
【請求項2】
前記移動量計測装置は、前記牽体の送り出し量や引き込み量を、前記水圧計の鉛直方向の前記移動量として計測することを特徴とする請求項1に記載の比重測定装置。
【請求項3】
異なる2つの前記計測深度の前記計測値と前記測定間隔とを用いて、異なる2つの前記計測深度の中間地点の平均比重を算出する比重算出部と、
異なる2つの前記計測深度の前記計測値と前記測定間隔とを用いて、異なる2つの前記計測深度の前記中間地点の水面からの深度を中間深度として算出する深度算出部と、
前記比重算出部によって算出された前記平均比重と前記深度算出部によって算出された前記中間深度とを出力する出力部と、を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の比重測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積した泥水等の懸濁液の比重を測定する比重測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
泥水を使って地盤を削孔する工法において、掘削した孔や溝に堆積した泥水の性状を把握するために、比重の測定が行われている。また、原位置で地盤改良する工法おいて、ソイルセメント柱の性状や出来形を把握するために、比重の測定が行われている。さらに、場所打ちコンクリート杭工法において、掘削した穴に投入して孔壁を防護する泥水の性状を把握するために、比重の測定が行われている。
【0003】
比重の測定を地上に設置された測定装置(マッドバランス等)で行う場合、測定対象の懸濁液の採取作業が煩雑で、多くの時間を要する。そこで、懸濁液の比重を地盤中の原位置で計測する測定装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1、2では、測定する深度を挟んだ上下2点間の差圧を計測することで、懸濁液の比重を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61-82249号公報
【特許文献2】特開2013-24631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、目盛を付けたロープによって測定位置の深度を計測する煩雑な作業が必要である。そして、懸濁液の水面位置によっては、地上から水面を把握することができず、測定位置の深度を計測すること自体が困難である。また、特許文献2では、静水圧を計測する連通管等の複雑な機構が必要である。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消し、計測地点の水面からの深度を計測することなく、簡単な構成で懸濁液の比重を測定できる比重測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の比重測定装置は、懸濁液の比重を測定する比重測定装置であって、錘が接続された牽体に取り付けられ、前記懸濁液の水圧を計測する水圧計と、前記水圧計の鉛直方向の移動量を計測する移動量計測装置と、異なる計測深度における複数の前記水圧計の計測値を、前記移動量計測装置によって計測された前記移動量に基づく異なる前記計測深度の測定間隔と共に収集する収集部と、を具備することを特徴とする。
さらに、本発明の比重測定装置において、前記移動量計測装置は、前記牽体の送り出し量や引き込み量を、前記水圧計の鉛直方向の前記移動量として計測しても良い。
さらに、本発明の比重測定装置は、異なる2つの前記計測深度の前記計測値と前記測定間隔とを用いて、異なる2つの前記計測深度の中間地点の平均比重を算出する比重算出部と、異なる2つの前記計測深度の前記計測値と前記測定間隔とを用いて、異なる2つの前記計測深度の前記中間地点の水面からの深度を中間深度として算出する深度算出部と、前記比重算出部によって算出された前記平均比重と前記深度算出部によって算出された前記中間深度とを出力する出力部とを備えていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、異なる2つの計測深度の計測値と測定間隔とを用いて、異なる2つの測定深度の中間地点の平均比重と中間深度とを算出できるため、計測地点の水面からの深度を計測することなく、簡単な構成で懸濁液の比重を測定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る比重測定装置の第1実施形態の構成を示す構成図である。
【
図2】
図1に示す比重算出装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す比重算出装置による比重算出方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の比重測定装置1は、堆積した泥水等の懸濁液の比重を測定する装置であり、
図1を参照すると、ロープやテープ等の牽体11と、牽体11の一方端に接続された錘12と、牽体11に取り付けられた水圧計13と、水圧計13の移動量を計測する移動量計測装置14と、水圧計13によって計測された水圧を用いて比重を算出する比重算出装置20とを備えている。
【0013】
錘12は、牽体11によって懸濁液中に吊り下げられた状態で、牽体11の方向が鉛直となるように、測定対象の懸濁液よりも十分に比重が大きい材質(例えば、鉄等の金属)で構成されている。
【0014】
水圧計13は、懸濁液の水圧Pを計測する装置である。水圧計13としては、例えば、土に含まれる間隙水による圧力を計測する間隙水圧計や液体の圧力を測定するための圧力計などを用いることができる。
【0015】
移動量計測装置14は、牽体11の送り出し量や引き込み量を、牽体11によって懸濁液中に吊り下げられた水圧計13の鉛直方向(上下方向)の移動量として計測する。すなわち、懸濁液中に吊り下げられた水圧計13は、牽体11の送り出しによって下方向に移動し、牽体11の送り出し量が水圧計13の下方向の移動量となる。同様に、懸濁液中に吊り下げられた水圧計13は、牽体11の引き込みによって上方向に移動し、牽体11の引き込み量が水圧計13の上方向の移動量となる。
【0016】
図1に示す例では、滑車を介して牽体11の送り出しや引き込みが行われるように構成され、移動量計測装置14は、滑車の回転量を検出することで牽体11の送り出し量や引き込み量を計測する。なお、牽体11の送り出し量や引き込み量の計測は、牽体11を検尺テープ等の目盛付きのもので構成し、光センサ等で牽体11の目盛を読み取る方法を採用することもできる。
【0017】
比重算出装置20は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、制御部30と、キーボード等の入力部40と、フラッシュメモリ等の記憶部50と、ディスプレイやプリンタ等の出力部60とを備えている。
【0018】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータ等の情報処理部である。ROMには比重算出装置20がジョブを実行するための制御プログラムが記憶されている。制御部30は、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、収集部31、比重算出部32、深度算出部33として機能する。
【0019】
収集部31は、入力部40からの水圧計測指示を受け付けると、水圧計13の計測値を基準深度で水圧P0として収集すると共に、移動量計測装置14に移動量計測開始を指示する。
【0020】
移動量計測装置14は、水圧計13の鉛直方向の移動量が予め設定された測定間隔dに到達する毎に、水圧計測指示を収集部31に出力する。そして、収集部31は、移動量計測装置14から水圧計測指示が入力される毎に、水圧計13の計測値を水圧P1~Pnとして収集し、基準深度で水圧P0と共に計測結果51として記憶部50に記憶させる。
【0021】
これにより、
図3(a)に示すように、測定間隔dで深度が異なる複数の計測深度A
0~A
(n=4)での水圧P
0~P
(n=4)が計測結果51として記憶される。なお、収集部31が入力部40からの水圧計測指示や所定の間隔で水圧計13の計測値(水圧P
1~P
n)を収集し、収集時の測定間隔d
1~d
nを移動量計測装置14から取得するようにしても良い。この場合、
図3(b)に示すように、深度間隔が異なる複数の計測深度での水圧P
0~P
(n=4)と、計測深度間の測定間隔d
1~d
(n=4)が計測結果51として記憶される。
【0022】
入力部40からの算出指示を受け付けると、計測結果51(水圧P0~Pn)に基づいて、比重算出部32は、2つの計測深度間の平均比重ρを算出すると共に、深度算出部33は、2つの計測深度の中間地点の中間深度Hを算出する。平均比重ρは、中間深度Hにおける比重として算出される。そして、平均比重ρと中間深度Hとは、算出結果52として記憶部50に記憶されたり、出力部60から出力されたりする。なお、比重算出部32及び深度算出部33は、収集部31による計測結果51(水圧P0~Pn)の収集時に、平均比重ρ及び中間深度Hを自動的に算出しても良い。
【0023】
なお、
図3には、隣り合う計測深度間(A
0-A
1間、A
1-A
2間、A
2-A
3間、A
3-A
4間)の平均比重ρ
01、ρ
12、ρ
23、ρ
34及び中間深度H
01、H
12、H
23、H
34の算出例が示されているが、例えば、A
0-A
3間のように、2つの計測深度の選択は適宜設定することができる。以下、選択した2つの計測深度におけるそれぞれの水圧をP
上、P
下とすると共に、2つの計測深度間の測定間隔をdとして説明する。
【0024】
比重算出部32は、2つの計測深度におけるそれぞれの水圧P上、P下と、2つの計測深度間の測定間隔dと、重力加速度gとを用いて、以下に示す式1を演算することで、平均比重ρを算出する。
ρ=(P下-P上)/d/g ・・・式1
【0025】
深度算出部33は、2つの計測深度におけるそれぞれの水圧P上、P下と、比重算出部32によって算出された平均比重ρと、重力加速度gとを用いて、以下に示す式2を演算することで、2つの計測深度の中間地点の中間深度Hを算出する。
H=(P上+P下)/2/ρ/g ・・・式2
なお、式2では、算出された平均比重ρを用いているが、計測結果51(水圧P上、水圧P下)と、測定間隔dと、重力加速度gとを用いて、中間深度Hを算出しても良い。
【0026】
このように、比重測定装置1は、水圧計13の水面からの深度を管理することなく、2つの計測深度A間の中間深度Hにおける平均比重ρを測定することができる。従って、水圧計13を懸濁液中に吊り下げ、計測深度を変えて複数個所で計測するだけで、簡単に懸濁液の比重分布を測定することができる。そして、水圧計13を降下もしくは上昇させながら所定間隔で計測値を収集し、平均比重ρ及び中間深度Hを算出して出力部60から出力する場合には、懸濁液の比重分布をリアルタイム且つ連続的に測定することができる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態は、懸濁液の比重を測定する比重測定装置1であって、錘12が接続された牽体11に取り付けられ、懸濁液の水圧を計測する水圧計13と、水圧計13の鉛直方向の移動量を計測する移動量計測装置14と、異なる計測深度Aにおける複数の水圧計13の計測値(水圧P)を、移動量計測装置14によって計測された移動量に基づく異なる計測深度Aの測定間隔dと共に収集する収集部31とを備えている。
この構成により、異なる2つの計測深度Aの計測値(水圧P)と測定間隔dとを用いて、異なる2つの計測深度Aの中間地点の平均比重ρと中間深度Hとを算出できるため、計測地点の水面からの深度を計測することなく、簡単な構成で懸濁液の比重を測定できる。
【0028】
さらに、本実施形態において、移動量計測装置14は、牽体11の送り出し量や引き込み量を、水圧計13の鉛直方向の移動量として計測する。
この構成により、水圧計13の鉛直方向の移動量を地上で計測することができる。
【0029】
さらに、本実施形態において、異なる2つの計測深度Aの計測値(水圧P)と測定間隔dとを用いて、異なる2つの計測深度Aの中間地点の平均比重ρを算出する比重算出部32と、異なる2つの計測深度Aの計測値(水圧P)と測定間隔dとを用いて、異なる2つの計測深度Aの中間地点の水面からの深度を中間深度Hとして算出する深度算出部33と、比重算出部32によって算出された平均比重ρと深度算出部33によって算出された中間深度Hとを出力する出力部60とを備えている。
この構成により、懸濁液の比重分布をリアルタイム且つ連続的に測定することができる。
【0030】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0031】
1 比重測定装置
11 牽体
12 錘
13 水圧計
14 移動量計測装置
20 比重算出装置
30 制御部
31 収集部
32 比重算出部
33 深度算出部
40 入力部
50 記憶部
51 計測結果
52 算出結果
60 出力部