(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021596
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】絶縁スペーサ、及びガス絶縁開閉装置
(51)【国際特許分類】
H02B 13/035 20060101AFI20230207BHJP
H02G 5/06 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
H02B13/035 341B
H02G5/06 351B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126549
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】生頭 広稀
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 力
【テーマコード(参考)】
5G017
5G365
【Fターム(参考)】
5G017AA01
5G017BB16
5G017EE01
5G017EE05
5G365DC02
5G365DD02
5G365DE10
5G365DF01
5G365DF02
5G365DF06
5G365DN02
(57)【要約】
【課題】検電用のハンドホールを備えなくても主回路の高電圧導体の電圧の有無を調べることができるガス絶縁開閉装置と、このガス絶縁開閉装置が備える絶縁スペーサを提供する。
【解決手段】本発明による絶縁スペーサ4は、電気的な絶縁部材で構成され、一端部に第1の金属製部材5を備え、他端部に第2の金属製部材6を備え、第1の金属製部材5は、第1の金属製部材5から突出する金属製の端子部10を備える。本発明によるガス絶縁開閉装置は、上記の絶縁スペーサ4と、絶縁ガスが充填されて接地された金属容器1と、金属容器1の内部に設置され、絶縁スペーサ4によって金属容器1に固定された高電圧導体2と、金属容器1に設置された絶縁部材8、9とを備える。絶縁スペーサ4は、第1の金属製部材5で金属容器1に固定され、第2の金属製部材6で高電圧導体2に固定される。絶縁部材8、9は、第1の金属製部材5を金属容器1から電気的に絶縁する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な絶縁部材で構成され、
一端部に第1の金属製部材を備え、
他端部に第2の金属製部材を備え、
前記第1の金属製部材は、前記第1の金属製部材から突出する金属製の端子部を備える、
ことを特徴とする絶縁スペーサ。
【請求項2】
前記金属製の端子部は、前記第1の金属製部材に接続された導線で構成されている、
請求項1に記載の絶縁スペーサ。
【請求項3】
前記金属製の端子部は、前記第1の金属製部材が備える金属製ボルトで構成されている、
請求項1に記載の絶縁スペーサ。
【請求項4】
請求項1に記載の絶縁スペーサと、
絶縁ガスが充填されて接地された金属容器と、
前記金属容器の内部に設置され、前記絶縁スペーサによって前記金属容器に固定された高電圧導体と、
前記金属容器に設置された絶縁部材と、
を備え、
前記絶縁スペーサは、前記第1の金属製部材で前記金属容器に固定され、前記第2の金属製部材で前記高電圧導体に固定され、
前記絶縁部材は、前記第1の金属製部材を前記金属容器から電気的に絶縁する、
ことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項5】
前記絶縁スペーサの前記金属製の端子部は、前記第1の金属製部材に接続された導線で構成されており、前記金属容器の外部に突出している、
請求項4に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項6】
前記絶縁スペーサの前記金属製の端子部は、前記第1の金属製部材を前記金属容器に固定する金属製ボルトで構成されており、前記金属容器の外部に突出している、
請求項4に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項7】
前記金属容器は、前記金属製ボルトが貫通する貫通穴を備えるとともに、前記第1の金属製部材に向かう面において前記貫通穴の周囲に凹部を備え、
前記第1の金属製部材は、前記金属容器に向かう面が前記凹部の存在位置に位置しており、前記金属容器から電気的に絶縁されている、
請求項6に記載のガス絶縁開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁開閉装置等の高電圧機器に用いられる絶縁スペーサと、ガス絶縁開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガス絶縁開閉装置(以下「GIS」と略称することもある。)等の高電圧機器では、メンテナンス等の作業を行う前に安全性を確保するため、GISの金属容器に配置した検電装置を用いて、主回路の電圧の有無、すなわち主回路の高電圧導体に電圧が印加されているか否かを確認する。従来は、GISの金属容器に設けられた検電用のハンドホールの中にある検電用の端子(検電用電極)に検電装置を接続することで、主回路の電圧の有無を確認するのが一般的である。検電用電極は、金属容器と高電圧導体とから電気的に絶縁されている必要がある。
【0003】
特許文献1には、従来のガス絶縁開閉装置の例が開示されている。特許文献1に開示されたガス絶縁開閉装置は、金属タンクの内部に絶縁スペーサを備え、絶縁スペーサが導電性テープ等で構成された検電用電極を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のGISでは、主回路の高電圧導体の電圧の有無を調べる検電を行うためには、金属容器の内部に、金属容器と高電圧導体とから電気的に絶縁された検電用電極を配置する必要があり、このためのハンドホールを金属容器に設ける必要がある。すなわち、従来のGISは、検電用のハンドホール等の検電のための構成を備える必要があり、検電のために部品点数が増えてコストが掛かるという課題を持つ。
【0006】
本発明の目的は、検電用のハンドホールを備えなくても主回路の高電圧導体の電圧の有無を調べることができるガス絶縁開閉装置と、このようなガス絶縁開閉装置等の高電圧機器が備える絶縁スペーサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による絶縁スペーサは、電気的な絶縁部材で構成され、一端部に第1の金属製部材を備え、他端部に第2の金属製部材を備え、前記第1の金属製部材は、前記第1の金属製部材から突出する金属製の端子部を備える。
【0008】
本発明によるガス絶縁開閉装置は、上記の絶縁スペーサと、絶縁ガスが充填されて接地された金属容器と、前記金属容器の内部に設置され、前記絶縁スペーサによって前記金属容器に固定された高電圧導体と、前記金属容器に設置された絶縁部材とを備える。前記絶縁スペーサは、前記第1の金属製部材で前記金属容器に固定され、前記第2の金属製部材で前記高電圧導体に固定される。前記絶縁部材は、前記第1の金属製部材を前記金属容器から電気的に絶縁する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、検電用のハンドホールを備えなくても主回路の高電圧導体の電圧の有無を調べることができるガス絶縁開閉装置と、このようなガス絶縁開閉装置等の高電圧機器が備える絶縁スペーサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1によるガス絶縁開閉装置の断面を示す模式図である。
【
図2】実施例1において、絶縁スペーサの一端部に設けられた埋込金具と、埋込金具により絶縁スペーサが固定されている固定カバーを示す拡大図である。
【
図3】本発明の実施例2によるガス絶縁開閉装置の断面を示す模式図である。
【
図4】実施例1において、金属製ボルトで固定カバーに固定されている埋込金具と、この埋込金具により絶縁スペーサが固定されている固定カバーを示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によるガス絶縁開閉装置は、検電用のハンドホールを備えずに、主回路の高電圧導体の電圧の有無(すなわち、高電圧導体に電圧が印加されているか否か)を調べることができる。本発明による絶縁スペーサは、ガス絶縁開閉装置(GIS)等の高電圧機器に備えられ、GISの金属容器に収納された高電圧導体を支持するとともに、高電圧導体の電圧の有無を調べる検電に用いられる。本発明による絶縁スペーサを備える高電圧機器では、検電用のハンドホールを備えなくても検電が可能である。
【0012】
本発明による絶縁スペーサは、径方向の一端部に埋込金具を備え、埋込金具が検電用電極として利用される。埋込金具は、検電時には、金属容器と高電圧導体の両方から電気的に絶縁されている。
【0013】
本発明によるガス絶縁開閉装置では、絶縁スペーサの埋込金具を検電用電極として利用することで、検電用のハンドホールを備えなくても、主回路の高電圧導体の電圧の有無を調べることができる。
【0014】
以下、本発明の実施例による絶縁スペーサとガス絶縁開閉装置について説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【実施例0015】
本発明の実施例1による絶縁スペーサとガス絶縁開閉装置について説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施例1によるガス絶縁開閉装置の断面を示す模式図である。ガス絶縁開閉装置(GIS)は、金属容器1と、高電圧導体2と、絶縁スペーサ4を備える。
【0017】
金属容器1は、円筒形状であり、接地されている。金属容器1には、絶縁ガス(例えば、SF6ガス)が充填されている。以下で述べる「径方向」とは、円筒形状の金属容器1についての径方向である。
【0018】
高電圧導体2は、円筒形状の金属(例えば、アルミニウムや銅)で構成された導体であり、金属容器1の内部に設置されており、GISの主回路を構成する。高電圧導体2は、絶縁スペーサ4によって金属容器1の内部に支持されており、金属容器1と電気的に絶縁されて固定されている。
【0019】
絶縁スペーサ4は、電気的な絶縁部材で構成されており、金属容器1の内部に設置され、高電圧導体2を金属容器1に固定する。絶縁スペーサ4の形状は、任意であり、例えば棒状(ポスト形)である。
【0020】
金属容器1は、開口部を有し、この開口部を塞ぐ固定カバー3を備える。この開口部は、固定作業用の開口部であり、高電圧導体2を絶縁スペーサ4で固定する作業を作業員が行うために設けられている。
【0021】
固定カバー3は、金属容器1の開口部に設けられた蓋であり、金属で構成されており、金属製のボルトで金属容器1に固定されている。固定カバー3は、金属容器1の一部である。
【0022】
絶縁スペーサ4は、径方向の一端部に埋込金具5を備え、径方向の他端部に埋込金具6を備えており、固定カバー3に固定されて金属容器1に固定される。埋込金具5は、絶縁スペーサ4の一端部を固定カバー3に固定するための金属製の部材である。埋込金具6は、絶縁スペーサ4の他端部を高電圧導体2に固定するための金属製の部材である。
【0023】
埋込金具5は、後述する絶縁部材8、9により、固定カバー3と金属容器1から電気的に絶縁されている。さらに、埋込金具5は、絶縁スペーサ4により、高電圧導体2から電気的に絶縁されている。
【0024】
図2は、絶縁スペーサ4の一端部に設けられた埋込金具5と、埋込金具5により絶縁スペーサ4が固定されている固定カバー3を示す拡大図である。
【0025】
埋込金具5は、絶縁ボルト7で締結されて固定カバー3に固定されている。すなわち、絶縁スペーサ4は、埋込金具5と絶縁ボルト7により固定カバー3に固定されている。絶縁ボルト7は、例えば、絶縁性の部材で構成されており、頭部が金属製でもよい。
【0026】
金属容器1の一部である固定カバー3には、絶縁部材8、9が設置されている。
図2に示すように、絶縁ボルト7の周囲で埋込金具5と固定カバー3との間に絶縁部材9が設置されており、絶縁ボルト7の頭部と固定カバー3との間に絶縁部材8が設置されている。絶縁部材8、9により、埋込金具5は、固定カバー3と金属容器1から電気的に絶縁されている。絶縁部材8、9は、例えば絶縁板で構成することができる。
【0027】
金属容器1の内部に充填された絶縁ガスが外部に漏れないように、絶縁部材9と接する埋込金具5の表面と、絶縁部材9と接する固定カバー3の表面には、それぞれオーリング11、12が設置されている。
【0028】
埋込金具5は、埋込金具5から径方向外側に突出する検電端子10を備える。検電端子10は、金属製の部材であり、固定カバー3に設けられた穴から金属容器1の外部に突出している。検電端子10は、例えば、埋込金具5に接続された導線で構成することができる。
【0029】
GISの運転時には、検電端子10は、接地電位を有するように、接地された金属容器1に電気的に接続されている。例えば、検電端子10は、GISの運転時には、固定カバー3を金属容器1に固定する金属製のボルトに導線で接続されている。
【0030】
高電圧導体2の電圧の有無を調べる検電時には、検電端子10は、金属容器1との電気的な接続が解除される。すなわち、埋込金具5は、検電時には、金属容器1と高電圧導体2の両方から電気的に絶縁されている。検電時に高電圧導体2が電位を持っていると、埋込金具5は、静電誘導により誘導電位が誘起され電位を持つ。このため、埋込金具5を検電用電極として利用することで、埋込金具5に備えられた検電端子10を用いて、高電圧導体2の電圧の有無を調べる検電を行うことができる。
【0031】
なお、検電端子10が突出する固定カバー3の穴は、
図2に示すように、埋込金具5と絶縁部材9により金属容器1の内部と連通しないように構成されているので、金属容器1の気密性を保つことができる。
【0032】
本実施例による絶縁スペーサ4は、径方向の一端部に埋込金具5を備え、埋込金具5が検電端子10を備える。このため、本実施例によるガス絶縁開閉装置では、埋込金具5を検電用電極として利用し、検電端子10を用いて検電を行うことができる。従来のガス絶縁開閉装置では、固定カバー3が塞ぐ開口部(固定作業用の開口部)とは別に、検電用のハンドホールを備え、検電用のハンドホールの中に検電用の端子を備える。本実施例によるガス絶縁開閉装置では、検電用のハンドホールと検電用のハンドホールの中の部品とが不要であり、検電のための部品やコストの増加を抑制できる。
本発明の実施例2による絶縁スペーサとガス絶縁開閉装置について説明する。以下では、本実施例による絶縁スペーサ4とガス絶縁開閉装置について、実施例1による絶縁スペーサ4とガス絶縁開閉装置と異なる構成について、主に説明する。
埋込金具5は、絶縁ボルト7または金属製ボルト15を備え、絶縁ボルト7または金属製ボルト15で締結されて固定カバー3に固定されている。すなわち、絶縁スペーサ4は、埋込金具5と絶縁ボルト7と金属製ボルト15により固定カバー3に固定されている。金属製ボルト15は、検電端子を兼ねており、固定カバー3と金属容器1から電気的に絶縁されている。絶縁ボルト7は、固定カバー3と金属容器1から電気的に絶縁されていなくてもよい。
埋込金具5は、絶縁スペーサ4により、高電圧導体2から電気的に絶縁されている。さらに、金属製ボルト15で固定カバー3に固定されている埋込金具5は、絶縁部材8と後述する凹部により、固定カバー3と金属容器1から電気的に絶縁されている。
凹部14は、固定カバー3の埋込金具5に向かう面から径方向外側に向かって凹み、埋込金具5に向かって開口する開口部を有する。凹部14の開口部の大きさは、固定カバー3の埋込金具5に向かう面において、埋込金具5の大きさよりも大きい。埋込金具5は、固定カバー3に向かう面が凹部14の存在位置に位置しており、固定カバー3に接していない。すなわち、埋込金具5は、凹部14があるために固定カバー3に接しておらず、凹部14に存在する空気によって固定カバー3と金属容器1から電気的に絶縁されている。
金属製ボルト15の頭部と固定カバー3との間には、絶縁部材8が設置されている。埋込金具5は、絶縁部材8と凹部14により、固定カバー3と金属容器1から電気的に絶縁されている。
本実施例では、絶縁スペーサ4は、固定カバー3に接している。金属容器1の内部に充填された絶縁ガスが外部に漏れないように、絶縁スペーサ4と接する固定カバー3の表面には、オーリング13が設置されている。
GISの運転時には、金属製ボルト15は、接地電位を有するように、接地された金属容器1に電気的に接続されている。例えば、金属製ボルト15は、GISの運転時には、固定カバー3を金属容器1に固定する金属製のボルトに導線で接続されている。
高電圧導体2の電圧の有無を調べる検電時には、金属製ボルト15は、金属容器1との電気的な接続が解除される。すなわち、埋込金具5は、検電時には、金属容器1と高電圧導体2の両方から電気的に絶縁されている。検電時に高電圧導体2が電位を持っていると、埋込金具5は、静電誘導により誘導電位が誘起され電位を持つ。このため、埋込金具5を検電用電極として利用することで、埋込金具5に設けられた金属製ボルト15を用いて、高電圧導体2の電圧の有無を調べる検電を行うことができる。
本実施例による絶縁スペーサ4は、径方向の一端部に埋込金具5を備え、埋込金具5に金属製ボルト15が設けられている。このため、本実施例によるガス絶縁開閉装置では、埋込金具5を検電用電極として利用し、金属製ボルト15を用いて検電を行うことができる。従来のガス絶縁開閉装置では、固定カバー3が塞ぐ開口部(固定作業用の開口部)とは別に、検電用のハンドホールを備え、検電用のハンドホールの中に検電用の端子を備える。本実施例によるガス絶縁開閉装置では、検電用のハンドホールと検電用のハンドホールの中の部品とが不要であり、検電のための部品やコストの増加を抑制できる。
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。