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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021605
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20230207BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20230207BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230207BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/02
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126569
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河内 達磨
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】久保 厚
(72)【発明者】
【氏名】武田 恭英
(72)【発明者】
【氏名】武井 智行
(72)【発明者】
【氏名】古橋 資丈
(72)【発明者】
【氏名】仲曽根 歩
(72)【発明者】
【氏名】中根 淳志
(72)【発明者】
【氏名】林 裕二
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE24
5H126EE46
(57)【要約】
【課題】電極に生じた反応物を効率よく除去することができる燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料電池1は、電解質膜21、第一電極22及び第二電極23を有する膜電極接合体2と、第一電極22上に配置された第一セパレータ3と、第二電極23上に配置された第二セパレータ4と、を含んでいる。第一セパレータ3は、膜電極接合体2に当接する電極当接面31に設けられ、第一電極22に燃料及び酸化剤のうち少なくとも一方を供給可能に構成された第一流路32と、電極当接面31の背面33に設けられ、電極反応によって第一電極22に生じる反応物を燃料電池1の外部へ導くことができるように構成された反応物流路34と、第一流路32の側壁部321に設けられ、電極当接面31に開口を有するとともに、開口と反応物流路34とを連通する連通路35と、連通路35を拡縮可能に構成された駆動部36と、を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面上に形成された第一電極と、前記電解質膜の他方の面上に形成された第二電極と、を有する膜電極接合体と、
前記第一電極上に配置された第一セパレータと、
前記第二電極上に配置された第二セパレータと、を含み、
前記膜電極接合体における電極反応によって発電可能に構成された燃料電池であって、
前記第一セパレータは、
前記膜電極接合体に当接する電極当接面に設けられ、前記第一電極に燃料及び酸化剤のうちいずれか一方を供給可能に構成された第一流路と、
前記電極当接面の背面に設けられ、前記電極反応によって前記第一電極に生じる反応物を前記燃料電池の外部へ導くことができるように構成された反応物流路と、
前記第一流路の側壁部に設けられ、前記電極当接面に開口を有するとともに、前記開口と前記反応物流路とを連通する連通路と、
前記連通路を拡縮可能に構成された駆動部と、を有している、燃料電池。
【請求項2】
前記駆動部は、弾性体からなり、前記反応物流路に開口を有する筒状弾性体を有しており、前記燃料電池は、前記反応物流路に接続され、前記反応物流路内部の圧力を調整可能に構成された圧力調整部を有している、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記圧力調整部は、ポンプまたは音波振動を発生可能に構成された発振器である、請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記駆動部は圧電体を有しており、前記圧電体は、前記第一セパレータと、当該第一セパレータから電気的に絶縁された前記第二セパレータとのそれぞれに電気的に接続されている、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記連通路は、前記第一セパレータと前記第二セパレータとの並び方向に対して斜め方向に延在している、請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記第一電極はカソードとして構成されており、前記反応物流路の内表面には親水化処理が施されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記側壁部は、前記連通路としての細孔を備えた多孔質体を有している、請求項1~6のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記側壁部は、互いに積層された複数の板からなる積層体を有しており、前記連通路は、前記積層体における前記板同士の隙間である、請求項1~6のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記側壁部は、その一部に周囲よりも前記膜電極接合体側に突出した突出部を有しており、前記突出部に前記連通路の前記開口が設けられている、請求項1~8のいずれか1項に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池等の燃料電池は、電解質膜と、電解質膜の一方の面上に設けられたアノード電極と、電解質膜の他方の面上に設けられたカソード電極と、を含む膜電極接合体(いわゆるMEA)を有している。燃料電池は、MEAのアノード電極に燃料を供給するとともに、カソード電極に酸化剤を供給することにより、各電極において電極反応を生じさせることができる。そして、これらの電極反応の結果、アノード電極とカソード電極との間に起電力を生じさせ、発電を行うことができる。
【0003】
しかし、各電極において電極反応が起きると、水(HO)や二酸化炭素(CO)等の反応物が電極に生成する。これらの反応物が電極近傍に滞留すると、燃料や酸化剤と電極との接触面積が減少しやすくなり、発電効率の低下を招きやすい。
【0004】
かかる問題に対し、例えば特許文献1には、高分子電解質膜を挟んで配置した空気極および燃料極を、前記空気極に酸化剤ガスを供給排出し前記燃料極に燃料ガスを供給排出するガス流路溝を形成した一対のセパレータ板で挟持した高分子電解質型燃料電池において、前記燃料極、前記空気極または前記セパレータ板の少なくとも一カ所に、水除去用流路を配置した高分子電解質型燃料電池に関する発明が記載されている。特許文献1の水除去用流路には、例えば、親水処理を施した多孔質シリカが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-110432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の発明においては、水除去用流路内に進入した反応物としての水が、多孔質シリカにおける細孔の分岐や壁面との摩擦等によって細孔内に滞留しやすい。水除去用流路内に進入した反応物が水除去流路内に滞留すると、電極に生じた反応物の除去効率が低下し、発電効率の低下を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、電極に生じた反応物を効率よく除去することができる燃料電池を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、電解質膜と、前記電解質膜の一方の面上に形成された第一電極と、前記電解質膜の他方の面上に形成された第二電極と、を有する膜電極接合体と、
前記第一電極上に配置された第一セパレータと、
前記第二電極上に配置された第二セパレータと、を含み、
前記膜電極接合体における電極反応によって発電可能に構成された燃料電池であって、
前記第一セパレータは、
前記膜電極接合体に当接する電極当接面に設けられ、前記第一電極に燃料及び酸化剤のうちいずれか一方を供給可能に構成された第一流路と、
前記電極当接面の背面に設けられ、前記電極反応によって前記第一電極に生じる反応物を前記燃料電池の外部へ導くことができるように構成された反応物流路と、
前記第一流路の側壁部に設けられ、前記電極当接面に開口を有するとともに、前記開口と前記反応物流路とを連通する連通路と、
前記連通路を拡縮可能に構成された駆動部と、を有している、燃料電池にある。
【発明の効果】
【0009】
前記燃料電池の第一セパレータは、前記第一電極に燃料及び酸化剤のうちいずれか一方を供給するための第一流路と、第一電極において生じた反応物を燃料電池の外部へ導くための反応物流路とを有している。また、第一流路の側壁部は、電極当接面に開口を有するとともに、当該開口と反応物流路とを連通する連通路と、この連通路を拡縮加工に構成された駆動部とを有している。
【0010】
前記燃料電池において、電極反応によって第一電極から生じた反応物は、電極当接面の開口から連通路内に進入する。前記燃料電池は、連通路内に反応物が保持された状態において駆動部を拡縮することにより、連通路内の反応物を強制的に移動させることができる。その結果、連通路内の反応物を反応物流路に迅速に導き、反応物を燃料電池の外部へ効率よく排出することができる。
【0011】
以上のごとく、上記態様によれば、電極に生じた反応物を効率よく除去することができる燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1における燃料電池全体の構成を示す説明図である。
図2図2は、実施形態1における燃料電池の要部を示す一部断面図である。
図3図3は、図2における側壁部近傍の拡大図である。
図4図4は、実施形態1における膜電極接合体の平面図である。
図5図5は、実施形態1の第一セパレータにおける電極当接面の平面図である。
図6図6は、実施形態1の第一セパレータにおける電極当接面の背面の平面図である。
図7図7は、実施形態1の第二セパレータにおける電極当接面の平面図である。
図8図8は、実施形態2における、側壁部の一部の領域に連通路が設けられた第一セパレータの一部拡大平面図である。
図9図9は、図8のIX-IX線矢視断面図である。
図10図10は、実施形態3における、駆動部としての圧電体を有する第一セパレータの一部拡大平面図である。
図11図11は、図10のXI-XI線矢視断面図である。
図12図12は、図11における側壁部近傍の拡大図である。
図13図13は、実施形態4の第一セパレータにおける、連通路が斜め下方に延設された側壁部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
前記燃料電池に係る実施形態について、図1図7を参照して説明する。図1及び図2に示すように、燃料電池1は、電解質膜21と、電解質膜21の一方の面上に形成された第一電極22と、電解質膜21の他方の面上に形成された第二電極23と、を有する膜電極接合体2(以下、「MEA」という。)と、第一電極22上に配置された第一セパレータ3と、第二電極23上に配置された第二セパレータ4と、を含んでいる。燃料電池1は、MEA2における電極反応によって発電可能に構成されている。
【0014】
図2及び図3に示すように、第一セパレータ3は、MEA2に当接する電極当接面31に設けられ、第一電極22に燃料及び酸化剤のうち少なくとも一方を供給可能に構成された第一流路32と、電極当接面31の背面33に設けられ、電極反応によって第一電極22に生じる反応物を燃料電池1の外部へ導くことができるように構成された反応物流路34と、第一流路32の側壁部321に設けられ、電極当接面31に開口(図示略)を有するとともに、開口と反応物流路34とを連通する連通路35と、連通路35を拡縮可能に構成された駆動部36と、を有している。以下、燃料電池1の構成を詳説する。
【0015】
本実施形態の燃料電池1は、燃料としてギ酸を使用し、酸化剤として空気を使用する固体高分子型燃料電池として構成されている。燃料電池1に供給される燃料としては、ギ酸以外にも、例えば、水素ガスや、メタノール、エタノール等を使用することができる。燃料電池1に供給される酸化剤としては、空気以外にも、例えば、酸素ガス等を使用することができる。なお、燃料電池1の方式は固体高分子型燃料電池に限定されるものではない。
【0016】
図1及び図2に示すように、燃料電池1は、第一セパレータ3と、MEA2と、第二セパレータ4とを備えた単セル11を有している。燃料電池1は、1個の単セル11を有していてもよいし、2個以上の単セル11を有していてもよい。燃料電池1が複数の単セル11を有している場合、これらの単セル11は、互いに積層されることによりセルスタック12を構成していてもよい。また、燃料電池1が複数の単セル11を有している場合、各単セル11は、他の単セル11と電気的に直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。
【0017】
本実施形態の燃料電池1は、図1に示すように、複数の単セル11が互いに積層されてなるセルスタック12を有している。セルスタック12を構成する単セル11は、各単セル11の第一セパレータ3と、当該単セル11に隣接する単セル11の第二セパレータ4とが互いに当接するように配置されている。後述するように、本実施形態の第一セパレータ3及び第二セパレータ4は電気伝導体から構成されている。これにより、セルスタック12における複数の単セル11は、第一セパレータ3及び第二セパレータ4を介して電気的に直列に接続されている。
【0018】
セルスタック12における積層方向の両端には、セルスタック12を保持するための一対の保持板121(121a、121b)が配置されていてもよい。本実施形態の燃料電池1においては、一対の保持板121のうち一方の保持板121aに締結部材122が挿入されている。締結部材122は、セルスタック12を貫通しており、一方の保持板121aと他方の保持板121bとが締結部材122によって締結されている。これにより、セルスタック12が一対の保持板121の間に保持されている。また、本実施形態の燃料電池1における保持板121は、燃料電池1から生じた電力を外部回路に取り出すための端子123を有している。
【0019】
燃料電池1は、各単セル11に燃料及び酸化剤を供給することにより発電可能に構成されている。例えば、本実施形態の燃料電池1におけるセルスタック12は、各単セル11に供給するための燃料を貯蔵する燃料タンク131と、燃料タンク131からセルスタック12に至る燃料の経路上に配置された燃料ポンプ132と、セルスタック12から排出された燃料を回収する燃料回収タンク141と、各単セル11に酸化剤としての空気を供給するためのブロア151とを接続することができるように構成されている。燃料タンク131及び燃料ポンプ132は、燃料供給配管133を介してセルスタック12に接続される。燃料回収タンク141は、燃料回収配管142を介してセルスタック12に接続される。ブロア151は、酸化剤供給配管152を介してセルスタック12に接続される。
【0020】
本実施形態の燃料電池1において、燃料タンク131内の燃料は、燃料ポンプ132によって加圧され、セルスタック12に供給される。セルスタック12内に進入した燃料は、セルスタック12に設けられた燃料供給路13を介して各単セル11に分配され、単セル11内において電極反応に使用される。電極反応に使用された後、各単セル11から排出された燃料は、セルスタック12に設けられた燃料回収路14において合流し、燃料回収タンク141に回収される。
【0021】
また、本実施形態の燃料電池1において、ブロア151から送風された空気は、セルスタック12に設けられた酸化剤供給路15を介して単セル11に分配され、単セル11内において電極反応に使用される。電極反応に使用された後、各単セル11から排出された空気は、セルスタック12に設けられた酸化剤排出路16(図7参照)において合流し、セルスタック12の外部へ排出される。なお、便宜上、図1への酸化剤排出路16の記載は割愛した。
【0022】
燃料電池1は、電極反応によって各単セル11から生じる反応物を回収可能に構成されていてもよい。例えば、本実施形態の燃料電池1におけるセルスタック12は、各単セル11から生じる反応物を回収するための反応物タンク171を接続することができるように構成されている。反応物タンク171は、反応物回収配管172を介してセルスタック12に接続される。反応物タンク171は、例えば、セルスタック12に設けられた反応物回収路17を介して各単セル11の第一セパレータ3に設けられた反応物流路34と連通している。第一電極22での電極反応によって生じた反応物は、各単セル11の反応物流路34を通って反応物回収路17で合流し、反応物タンク171に導かれる。
【0023】
燃料電池1の単セル11は、図2及び図3に示すように、電解質膜21、第一電極22及び第二電極23を備えたMEA2と、第一電極22上に配置された第一セパレータ3と、第二電極23上に配置された第二セパレータ4と、を有している。本実施形態の単セル11においては、図2に示すように、MEA2の電解質膜21と第一セパレータ3との間、及び、電解質膜21と第二セパレータ4との間にシール材5が設けられており、シール材5によって、MEA2と第一セパレータ3との隙間及びMEA2と第二セパレータ4との隙間が封止されている。
【0024】
図4に示すように、MEA2は、その厚み方向から見た平面視において四角形状を呈している。図2及び図4に示すように、MEA2の外周部には電解質膜21が露出している。また、MEA2の外周部に露出した電解質膜21には、複数の貫通孔211が設けられている。これらの貫通孔211は、第一セパレータ3に設けられた貫通孔37、第二セパレータ4に設けられた貫通孔43及びシール材5に設けられた貫通孔(後述)とともに、図1に示す燃料供給路13、燃料回収路14、酸化剤供給路15、酸化剤排出路16、反応物回収路17及び締結部材122が挿通される挿通孔124の一部を構成している。
【0025】
MEA2に用いられる電解質膜21は、電気絶縁性を有し、水素イオン(H)等のカチオンを選択的に透過可能に構成されたカチオン交換樹脂からなる。カチオン交換樹脂としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸系ポリマー(例えば、デュポン社製「ナフィオン(登録商標)」)等を使用することができる。
【0026】
第一電極22及び第二電極23は、電解質膜21の中央部に配置されており、図2に示すように、電解質膜21上に層状に形成されている。第一電極22及び第二電極23は、電極反応を触媒可能に構成されている。例えば、第一電極22及び第二電極23には、パラジウム(Pd)や白金(Pt)などの貴金属触媒を担持した触媒担持カーボンが含まれていてもよい。本実施形態の第一電極22及び第二電極23は、触媒担持カーボンと、触媒担持カーボンを保持するバインダとを含んでいる。
【0027】
本実施形態のMEA2は、さらに、第一電極22上に設けられた第一拡散層24及び第二電極23上に設けられた第二拡散層25を有している。第一拡散層24及び第二拡散層25は、電気伝導性を有するとともに、微小な空隙を有している。第一拡散層24及び第二拡散層25として電気伝導性を有する材料を用いることにより、第一電極22と第一セパレータ3とを電気的に接続するとともに、第二電極23と第二セパレータ4とを電気的に接続し、MEA2で発電した電力を外部に取り出すことができる。
【0028】
また、第一拡散層24及び第二拡散層25に微小な空隙を設けることにより、単セル11内に供給された燃料及び酸化剤を第一拡散層24及び第二拡散層25内において拡散させつつ第一電極22及び第二電極23に導くことができる。その結果、燃料及び酸化剤を第一電極22及び第二電極23とより効率よく接触させ、発電効率を向上させることができる。第一拡散層24及び第二拡散層25としては、例えば、導電性炭素繊維からなるカーボンクロスやカーボンペーパーなどを使用することができる。
【0029】
第一電極22は、アノード、つまり、燃料と接触する電極として構成されていてもよいし、カソード、つまり、酸化剤と接触する電極として構成されていてもよい、第二電極23は、第一電極22とは異なる極性の電極として構成されている。より具体的には、第一電極22がアノードとして構成されている場合には第二電極23はカソードとなり、第一電極22がカソードとして構成されている場合には第二電極23はアノードとなる。本実施形態の燃料電池1における第一電極22はカソードとして構成されており、第二電極23はアノードとして構成されている。
【0030】
反応物を効率よく第一電極22から除去する観点からは、第一電極22はカソードであることが好ましい。カソードにおいては、電解質膜21を通過した水素イオン(H)と酸素(O)等の酸化剤とが反応することにより、反応物としての水(HO)が生じる。しかし、水は、比較的表面張力が高いため、カソードにおいて水が生じると、カソードやカソード上に設けられた拡散層に存在する微小な空隙に滞留しやすい。
【0031】
これに対し、本実施形態の燃料電池1においては、第一電極22や第一拡散層24中の反応物を、第一セパレータ3に設けられた連通路35及び反応物流路34を介して燃料電池1の外部に効率よく排出することができる。それ故、第一電極22をカソードとして構成することにより、反応物としての水を効率よく除去し、燃料電池1の発電効率をより向上させることができる。
【0032】
図2に示すように、第一セパレータ3は、MEA2における第一電極22を有する側の面上に設けられている。本実施形態における第一セパレータ3は、電気伝導体から構成されており、MEA2での電極反応によって生じた電子を集める集電体としての機能を有している。第一セパレータ3は、例えば、金メッキが施されたステンレス鋼等の金属材料や、導電性カーボンなどの導電性非金属材料、導電性複合材料等から構成されていてもよい。
【0033】
本実施形態の第一セパレータ3は平板状を呈しており、図5及び図6に示すように、その厚み方向から見た平面視において、MEA2と概ね同一の外形寸法を有している。第一セパレータ3の外周部には、複数の貫通孔37(37a~37f)が設けられている。これらの貫通孔37の位置は、セルスタック12を構成した状態において、MEA2の電解質膜21に設けられた貫通孔211の位置と同一である。第一セパレータ3の貫通孔37は、図1に示す燃料供給路13、燃料回収路14、酸化剤供給路15、酸化剤排出路16、反応物回収路17及び締結部材122が挿通される挿通孔124の一部を構成している。
【0034】
図5に示すように、第一セパレータ3は、第一電極22側を向いた面の中央に、MEA2と当接する電極当接面31を有している。本実施形態における第一セパレータ3の電極当接面31は、より具体的には、図2に示すようにMEA2の第一拡散層24に当接している。
【0035】
第一セパレータ3の電極当接面31には、第一電極22に燃料及び酸化剤のうちいずれか一方を供給可能に構成された第一流路32が設けられている。本実施形態の燃料電池1における第一流路32は、図5に示すように、第一セパレータ3における、酸化剤供給路15の一部を構成する貫通孔37aから酸化剤排出路16の一部を構成する貫通孔37bまでにわたって延設され、MEA2側に開口した溝である。これにより、第一流路32は、酸化剤供給路15によって分配された酸化剤を第一拡散層24及び第一電極22に供給することができる。
【0036】
第一流路32の形状や配置などは、種々の態様を採り得る。例えば、第一流路32の断面形状としては、矩形状、三角形状及び半円状などの形状が例示されるが、これらの形状に限定されるものではない。また、第一流路32は、例えば図5に示すように、互いに平行に並んだ複数の直線部322と、各直線部322の端部と当該直線部322に隣接する直線部322の端部とを接続する折り返し部323とを有しており、電極当接面31側から見た平面視において、酸化剤供給路15の一部を構成する貫通孔37aと酸化剤排出路16の一部を構成する貫通孔37bとの間を蛇行するように配置されていてもよいが、これ以外の配置も取り得る。
【0037】
第一セパレータ3における電極当接面31の背面33には、図6に示すように、反応物流路34が設けられている。反応物流路34は、第一電極22から生じる反応物を燃料電池1の外部へ導くことができるように構成されている。本実施形態の燃料電池1における反応物流路34は、具体的には、第一セパレータ3における電極当接面31の背面33に設けられ、反応物回収路17の一部を構成する貫通孔37cに接続された溝である。反応物流路34は、第一セパレータ3の厚み方向から平面視において、第一流路32の側壁部321の少なくとも一部と重なるように配置されていればよい。
【0038】
例えば、本実施形態においては、図3及び図6に示すように、反応物流路34の底面に第一流路32の側壁部321に設けられた多孔質体351及び筒状弾性体361(後述)が露出しており、多孔質体351の細孔からなる連通路35が反応物流路34に開口している。これにより、第一電極22から生じた反応物を、連通路35を介して反応物流路34に導くことができる。
【0039】
第一電極22がカソードとして構成されている場合、反応物流路34の内表面には、親水化処理が施されていることが好ましい。この場合には、連通路35内に存在する水が反応物流路34に到達した際に反応物流路34の表面に濡れ広がりやすくなるため、連通路35内の水を反応物流路34に引き込みやすくなる。また、第一電極22や第一拡散層24、連通路35内に存在する反応物としての水は、燃料電池1の運転時に気化し、水蒸気となることがある。反応物流路34の内表面に親水化処理を施すことにより、気化した水蒸気が反応物流路34内に集まりやすくなる。これらの結果、第一電極22等から反応物流路34への水の移動を促進し、反応物としての水をより効率よく第一電極22から除去することができる。
【0040】
反応物流路34の形状や配置などは、前述した作用効果を損なわない限り、種々の態様を採り得る。例えば、反応物流路34の断面形状としては、矩形状、三角形状及び半円状などの形状が例示されるが、これらの形状に限定されるものではない。また、反応物流路34は、例えば図6に示すように、反応物回収路17の一部を構成する貫通孔37cに直接接続された主流路部341と、主流路部341から分岐した複数の分岐流路部342とを有していてもよい。本実施形態の燃料電池1における主流路部341は、第一流路32の各直線部322における長さ方向の中央部と交差するように延設されている。また、分岐流路部342は、電極当接面31の背面33側から見た平面視において、主流路部341から左右両側に分岐しており、反応物の単セル11からの出口(つまり、貫通孔37c)が下方を向くようにして燃料電池1を設置した場合に、主流路部341に近づくほど水平方向に対して下方に傾斜した向きに配置されている。
【0041】
本実施形態の反応物流路34は、図6に示すように、反応物の出口が下方を向くようにして燃料電池1を設置した場合に、反応物の流れの下流側の鉛直方向における位置が、上流側の鉛直方向の位置よりも下方となるように構成されている。すなわち、本実施形態の反応物流路34は、反応物が下流に向かうほど下方に移動することができるように構成されている。反応物流路34をこのように構成するとともに、燃料電池1を反応物の出口が下方を向くように設置することにより、反応物流路34内に進入した反応物としての水を、重力によって反応物の出口に導くことができる。その結果、反応物流路34内の水の移動を促進し、反応物としての水をより効率よく第一電極22から除去することができる。
【0042】
図3及び図5に示すように、第一流路32の側壁部321、つまり、第一セパレータ3における、第一流路32の側面を構成する部分には、電極当接面31に開口(図示略)を有するとともに、開口と反応物流路34とを連通する連通路35が設けられている。連通路35は、第一流路32の側壁部321全体に設けられていてもよいし、側壁部321の一部の領域に設けられていてもよい。後者の場合、側壁部321に設けられる、連通路35を有する領域の数は、1か所であってもよいし、2か所以上であってもよい。なお、第一流路32の側壁部321における、第一流路32に面した表面には連通路35が開口していない。それ故、本実施形態の燃料電池1においては、第一流路32内を流通する燃料及び酸化剤が、第一電極22や第一拡散層24を介さずに、直接連通路35に進入することはない。
【0043】
連通路35は、第一電極22及び第一拡散層24に存在する隙間のサイズと同等以下のサイズを有する微小な隙間や細孔から構成されていることが好ましい。この場合には、第一電極22や第一拡散層24内に生じた反応物が連通路35に進入しやすくなる。その結果、第一電極22からより効率よく反応物を除去することができる。連通路35が細孔である場合、連通路35のサイズは平均細孔径で表すことができる。また、連通路35が隙間である場合、連通路35のサイズは相当細孔径で表すことができる。平均細孔径または相当細孔径の平均値のオーダーは、例えば10μm程度とすることができる。
【0044】
側壁部321に連通路35を設ける方法は特に限定されるものではないが、例えば、連通路35となる細孔や隙間を有する部材を準備し、この部材を第一セパレータ3の側壁部321として埋設する方法等を採用することができる。この場合、第一セパレータ3に埋設する部材としては、例えば、細孔を備えた多孔質体や、互いに積層された複数の板からなり、板同士の間に隙間を有する積層体などを使用することができる。すなわち、側壁部321は、連通路35としての細孔を備えた多孔質体を有していてもよい。また、側壁部321は、互いに積層された複数の板からなる積層体を有しており、連通路35が積層体における板同士の隙間であってもよい。また、積層体に用いる板の少なくとも一方の面には粗面化処理が施されていてもよい。
【0045】
本実施形態の燃料電池1は、側壁部321における第一流路32の直線部322同士の間の部分に、連通路35としての細孔を備えた多孔質体351を有している。多孔質体351は、第一流路32の直線部322に沿って延在している。多孔質体351は、例えば、セラミックスから構成されていてもよいし、ゴムやエラストマー等の有機物から構成されていてもよい。また、多孔質体351は、電気伝導体であってもよいし、絶縁体であってもよい。単セル11の電気的な内部抵抗を低減する観点からは、多孔質体351は、電気伝導性を有していることが好ましい。
【0046】
また、側壁部321には、連通路35を拡縮可能に構成された駆動部36が設けられている。駆動部36としては、例えば、弾性体からなる管状部材や圧電体等のように、圧力の変動や電圧の印加等によって変形することができるように構成された部品を使用することができる。これらの駆動部36を連通路35に隣接して設けることにより、駆動部36の変形に伴って連通路35を拡縮させることができる。
【0047】
本実施形態の燃料電池1における駆動部36は、図3に示すように、弾性体からなり、反応物流路34に開口362を有するとともに、電極当接面31側の端部363が閉鎖された筒状弾性体361である。筒状弾性体361は、側壁部321に設けられた多孔質体351に隣接して配置されている。また、図5に示すように、側壁部321における第一流路32の直線部322同士の間の全体に亘って延在している。筒状弾性体361を構成する弾性体としては、例えば、ゴムやエラストマーなどを使用することができる。
【0048】
本実施形態の燃料電池1は、反応物流路34に接続され、反応物流路34内部の圧力を調整可能に構成された圧力調整部173を有している。駆動部36としての筒状弾性体361は、反応物流路34に開口を有しているため、反応物流路34内の圧力が増大すると膨張し、圧力が減少すると収縮する。従って、反応物流路34に圧力調整部173を接続し、圧力調整部173によって反応物流路34内の圧力を変動させることにより、筒状弾性体361を拡縮させることができる。そして、筒状弾性体361を拡縮させることにより、筒状弾性体361に隣接した多孔質体351を変形させ、ひいては多孔質体351内に存在する連通路35としての細孔を拡縮させることができる。
【0049】
本実施形態の燃料電池1における圧力調整部173は、図1に示すように、セルスタック12と反応物タンク171との間の反応物回収配管172上に設けられている。圧力調整部173としては、例えば、ポンプや音波振動を発生可能に構成された発振器などを使用することができる。本実施形態の燃料電池1における圧力調整部173は、具体的には、反応物流路34内の圧力を調整可能に構成されたポンプである。
【0050】
図2に示すように、MEA2における第二電極23を有する側の面上には、第二セパレータ4が設けられている。本実施形態における第二セパレータ4は、第一セパレータ3と同様に電気伝導体から構成されており、MEA2での電極反応によって生じた電子を集める集電体としての機能を有している。第二セパレータ4は、例えば、金メッキが施されたステンレス鋼等の金属材料や、導電性カーボンなどの導電性非金属材料、導電性複合材料等から構成されていてもよい。
【0051】
第二セパレータ4は、第二電極23に、燃料及び酸化剤のうち、第一電極22に供給された物質とは異なる物質を供給することができるように構成されていればよい。本実施形態の第二セパレータ4は平板状を呈しており、図7に示すように、その厚み方向から見た平面視において、MEA2と概ね同一の外形寸法を有している。第二セパレータ4の外周部には複数の貫通孔43(43a~43f)が設けられており、これらの貫通孔43の位置は、セルスタック12を構成した状態において、MEA2の電解質膜21に設けられた貫通孔211の位置と同一である。すなわち、第二セパレータ4の貫通孔43は、図1に示す燃料供給路13、燃料回収路14、酸化剤供給路15、酸化剤排出路16、反応物回収路17及び締結部材122が挿通される挿通孔124の一部を構成している。
【0052】
第二セパレータ4は、第二電極23側を向いた面の中央に、MEA2と当接する電極当接面41を有している。本実施形態における第二セパレータ4の電極当接面41は、より具体的には、図2に示すようにMEA2の第二拡散層25に当接している。また、電極当接面41の周囲はシール材5に当接している。
【0053】
第二セパレータ4の電極当接面41には第二流路42が設けられている。第二流路42は、燃料及び酸化剤のうち第一電極22に供給されていない物質を第二電極23に供給可能に構成されている。本実施形態の燃料電池1における第二流路42は、図7に示すように、第二セパレータ4における、燃料供給路13の一部を構成する貫通孔43dから燃料回収路14の一部を構成する貫通孔43eまでにわたって延設され、MEA2側に開口した溝である。これにより、第二流路42は、燃料供給路13を介して分配された燃料を第二拡散層25及び第二電極23に供給することができる。
【0054】
第二流路42の形状や配置などは、第一流路32と同様に種々の態様を採り得る。本実施形態の第二流路42は、互いに平行に並んだ複数の直線部422と、各直線部422の端部と当該直線部422に隣接する直線部422の端部とを接続する折り返し部423とを有しており、電極当接面41側から見た平面視において、燃料供給路13の一部を構成する貫通孔43dと燃料回収路14の一部を構成する貫通孔43eとの間を蛇行するように配置されている。また、第二流路42の直線部422は、第一流路32の直線部322に対して平行な方向に延設されている。
【0055】
図2に示すように、MEA2における電解質膜21と第一セパレータ3との間、及び、電解質膜21と第二セパレータ4との間にはシール材5が設けられている。電解質膜21と第一セパレータ3及び第二セパレータ4との間にシール材5を設けることにより、これらの間の隙間を封止し、単セル11の内部から外部への燃料等の漏出を防止することができる。シール材5は、例えば、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)やエラストマー等の弾性体から構成されていてもよい。
【0056】
図には示さないが、本実施形態のシール材5は板状を呈しており、第一セパレータ3及び第二セパレータ4と概ね同一の外形寸法を有している。厚み方向におけるシール材5の中央には開口が設けられており、図2に示すように、MEA2とシール材5とを重ね合わせた状態において、第一電極22及び第二電極23が開口内に配置されるように構成されている。また、シール材5の外周部には、複数の貫通孔が設けられている。これらの貫通孔の位置は、セルスタック12を構成した状態において、MEA2の電解質膜21に設けられた貫通孔211の位置と同一である。シール材5の貫通孔は、図1に示す燃料供給路13、燃料回収路14、酸化剤供給路15、酸化剤排出路16、反応物回収路17及び締結部材122が挿通される挿通孔124の一部を構成している。
【0057】
次に、本実施形態の燃料電池1の動作について説明する。図1に示す燃料タンク131からセルスタック12に燃料を供給するとともに、ブロア151からセルスタック12に酸素を供給すると、各単セル11に燃料及び酸化剤が分配される。そして、各単セル11において、第一流路32内を流れる酸化剤がカソードとしての第一電極22に接触するとともに、第二流路42内を流れる燃料がアノードとしての第二電極23に接触することにより、発電が行われる。
【0058】
第一電極22において電極反応が起こると、反応物としての水が第一電極22に生じる。第一電極22に生じた水は、第一流路32と反応物流路34との圧力差や濃度勾配等により、連通路35内に進入する。この際、セルスタック12に接続された圧力調整ポンプを、周期的に出力を変動させながら運転することにより、反応物流路34内の圧力を周期的に変化させることができる。反応物流路34内の圧力が周期的に変化すると、これに伴って筒状弾性体361が周期的に拡縮する。これにより、筒状弾性体361に隣接した多孔質体351の連通路35を拡縮させ、連通路35内の水を強制的に移動させることができる。このような連通路35内の水を強制的に移動させる効果と、第一流路32と反応物流路34との圧力差や濃度勾配等による効果とが相乗的に作用することにより、連通路35内の水を速やかに反応物流路34へ導き、燃料電池1の外部へ効率よく排出することができる。
【0059】
(実施形態2)
本実施形態においては、側壁部321における連通路35を有する領域の配置の他の態様を説明する。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0060】
図には示さないが、本実施形態の第一セパレータ302は平板状を呈しており、その厚み方向から見た平面視において、MEA2と概ね同一の外形寸法を有している。第一セパレータ302の外周部には、セルスタック12における燃料供給路13、燃料回収路14、酸化剤供給路15、酸化剤排出路16、反応物回収路17及び締結部材122が挿通される挿通孔124の一部を構成する複数の貫通孔37が設けられている。
【0061】
第一セパレータ302は、第一電極22側を向いた面の中央に、図8に示すようにMEA2の第一拡散層24と当接する電極当接面31を有しており、電極当接面31には第一流路32が設けられている。また、第一セパレータ302における電極当接面31の背面33には、図9に示すように反応物流路34が設けられている。
【0062】
図8及び図9に示すように、本実施形態の第一セパレータ302においては、側壁部321における第一流路32の直線部322同士の間の部分に、円筒状のスリーブ381と、スリーブ381内に配置された多孔質体352と、多孔質体352に隣接して配置された筒状弾性体364と、を含む複数の連通路組立体38が埋設されている。図8に示すように、連通路組立体38は、第一流路32の直線部322の延在方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0063】
図9に示すように、連通路組立体38における多孔質体352は、電極当接面31及び反応物流路34の底面に露出しており、連通路35としての多孔質体352の細孔が、電極当接面31及び反応物流路34に開口している。筒状弾性体364は、スリーブ381内において多孔質体352に隣接して配置されており、電極当接面31側の端部が閉鎖されているとともに、反応物流路34側の端部が開口している。
【0064】
また、本実施形態の側壁部321は、図9に示すように、その一部に周囲よりもMEA2側に突出した突出部324を有しており、突出部324に連通路35の開口が設けられている。より具体的には、本実施形態においては、側壁部321に設けられた連通路組立体38における多孔質体352が周囲よりもMEA2側に突出しており、多孔質体352におけるMEA2側に突出した部分が突出部324を構成している。その他は実施形態1の第一セパレータ302と同様である。
【0065】
本実施形態の第一セパレータ302は、第一流路32の側壁部321に連通路35としての多孔質体352の細孔及び駆動部36としての筒状弾性体364を有するとともに、電極当接面31の背面33に反応物流路34を有している。そのため、本実施形態の第一セパレータ302を実施形態1の第一セパレータ3に替えて燃料電池に組み込む場合においても、実施形態1の燃料電池と同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
また、本実施形態の第一セパレータ302のように、側壁部321における連通路35の開口を有する領域をMEA2側に突出させることにより、MEA2と連通路35の開口を有する領域との接触面積をより広くすることができる。これにより、MEA2において生じた反応物をより効率よく連通路35に取り込むことができる。さらに、突出部324によってMEA2を押圧することにより、MEA2を第二セパレータ4側に撓ませ、側壁部321の角部とMEA2との接触を軽減することができる。その結果、側壁部321の角部との接触によるMEA2への応力の集中を軽減することができる。
【0067】
(実施形態3)
本実施形態においては、駆動部36としての圧電体365を有する第一セパレータ303の例を説明する。図には示さないが、本実施形態の第一セパレータ303は平板状を呈しており、その厚み方向から見た平面視において、MEA2と概ね同一の外形寸法を有している。第一セパレータ303の外周部には、セルスタック12における燃料供給路13、燃料回収路14、酸化剤供給路15、酸化剤排出路16、反応物回収路17及び締結部材122が挿通される挿通孔124の一部を構成する複数の貫通孔37が設けられている。
【0068】
第一セパレータ303は、第一電極22側を向いた面の中央に、図10に示すようにMEA2と当接する電極当接面31を有している。図10図12に示すように、電極当接面31には第一流路32が設けられている。また、図11及び図12に示すように、第一セパレータ303における電極当接面31の背面33には、反応物流路34が設けられている。
【0069】
図10に示すように、本実施形態の第一セパレータ303における連通路35は、第一流路32の側壁部321における、第一流路32の直線部322同士の間の部分に設けられている。より具体的には、側壁部321は、連通路35となる細孔を備えた2個の多孔質体353と、多孔質体353同士の間に挟持された駆動部36としての圧電体365と、を有している。2個の多孔質体353は電気絶縁性のセラミックスからなり、それぞれ、第一流路32の直線部322に沿って延在している。
【0070】
駆動部36としての圧電体365は、第一セパレータ303と、当該第一セパレータ303から電気的に絶縁された第二セパレータ4とのそれぞれに電気的に接続されている。本実施形態の圧電体365は、具体的には、図10に示すように、第一流路32の直線部322の延在方向における両端において第一流路32の側壁部321と接触している。これにより、圧電体365は、圧電体365が設けられた第一セパレータ303と電気的に接続されている。さらに、圧電体365は、図11及び図12に示すように、電気伝導性を有する第一拡散層24とも接触しているため、第一拡散層24を介して第一セパレータ303と電気的に接続されている。
【0071】
また、図12に示すように、反応物流路34に露出した圧電体365の端面366のうち、反応物流路34の主流路部341に配置された部分には、絶縁電線367の一端が接続されている。絶縁電線367は、図11に示すように、反応物流路34の主流路部341及び反応物回収路17を通り、圧電体365を有する単セル11の第二セパレータ4に接続されている。これにより、圧電体365が、圧電体365を有する単セル11の第一セパレータ303及び第二セパレータ4と電気的に接続されている。その他は実施形態2の第一セパレータ302と同様である。
【0072】
本実施形態の第一セパレータ303は、第一流路32の側壁部321に連通路35としての多孔質体353の細孔を有するとともに、電極当接面31の背面33に反応物流路34を有している。また、側壁部321には、駆動部36としての圧電体365が設けられている。
【0073】
ギ酸などを燃料とする直接型の燃料電池においては、連続運転による電池の起電力の低下を抑制するため、間欠的に発電を行うように構成されていることがある。このように間欠運転を行う場合、発電中に第一セパレータ303と第二セパレータ4との間に生じる電位差と、発電中断時に第一セパレータ303と第二セパレータ4との間に生じる電位差とは異なる値となる。従って、本実施形態の第一セパレータ303を燃料電池1に組み込む場合、発電中に圧電体365に印加される電圧と、発電中断時に圧電体365に印加される電圧とが異なる値となり、これらの電圧の差によって圧電体365の変形の程度が変化する。その結果、圧電体365によって連通路35を拡縮させ、連通路35内の反応物の移動を促進させることができる。
【0074】
(実施形態4)
本実施形態においては、連通路35の具体的な態様の例を説明する。連通路35は、電極当接面31と反応物流路34とを連通することができればどのような態様であってもよい。例えば、連通路35は、第一セパレータ3と第二セパレータ4との並び方向に対して斜め方向に延在していてもよい。本実施形態の第一セパレータ304においては、図13に示すように、第一流路32の側壁部321に設けられた多孔質体354が、第一セパレータ304と第二セパレータ4との並び方向に対して斜め方向に延在した細孔355を有している。その他は実施形態1の第一セパレータ3と同様である。
【0075】
本実施形態の第一セパレータ304を組み込んだ燃料電池1を、例えば第一セパレータ304と第二セパレータ4との並び方向が水平方向となり、かつ、連通路35としての細孔が、電極当接面31から反応物流路34に向かって斜め下方に延在するように配置することにより、連通路35内の反応物が重力によって反応物流路34側に移動しやすくなる。その結果、連通路35内の水の移動を促進し、反応物としての水をより効率よく第一電極22から除去することができる。
【0076】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、実施形態1における第二セパレータ4を、第一セパレータ3と同様に、第二流路42の側壁部421(図2及び図7参照)に連通路及び駆動部を有するとともに、電極当接面41の背面に反応物流路を有する構成とすることもできる。この場合には、第一電極22に生じた反応物を第一電極22から効率よく除去するとともに、第二電極23に生じた反応物を第二電極23から効率よく除去することができる。
【0077】
また、実施形態3においては、駆動部36としての圧電体365を、圧電体365を有する単セル11の第一セパレータ304及び第二セパレータ4に接続する例を示したが、例えば、燃料電池に圧電体を駆動させるための電源を別途設け、圧電体と電源とを絶縁電線などを介して接続することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1 燃料電池
2 膜電極接合体
21 電解質膜
22 第一電極
23 第二電極
3、302、303、304 第一セパレータ
31 電極当接面
32 第一流路
321 側壁部
33 背面
34 反応物流路
35 連通路
36 駆動部
4 第二セパレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13